TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#910/14-Jan-08

私たちは今サンフランシスコの Macworld Expo の会場に来ていて、火曜日の開幕を待ち構えているところだ。(だから、今週はぜひ私たちのウェブサイトをチェックしよう。ショウの最新情報はそちらにて。)でも、キーノートやその後に続くショウの大騒ぎに入る前に、お伝えしたいニュースがたくさんある。まず、Apple が先週新しい 8コアの Mac Pro と Xserve を発表して私たちを驚かせた。それなら明日は何が発表されるのか、ますます期待が高まる。Adam は Amazon MP3 がさらに多くの DRM フリー楽曲を得たという最近のニュースを検討して、iTunes Store にも変化が迫っているのではないかと思い巡らす。サンフランシスコに来る人、あるいは一般に旅行の予定のある人は、飛行機に搭乗する際のコンピュータやカメラのバッテリに関する新しい規則についての記事をぜひお読み頂きたい。また、ショウの会場でワイヤレス接続を保護する方法について Glenn Fleishman の助言もある。リリースのニュースとしては Parallels Server のベータ版、NetNewsWire 3.1 (今回から無料になった!)、Interarchy 9、Airfoil 3 があり、また CD 上のソフトウェアの最新版を配付するために作られた Rogue Amoeba の Live Disc ユーティリティについても少しだけ触れる。最後にもう一つ、今月のテクノロジー関係のビッグイベントは Macworld Expo だけではない。勇猛果敢な私たちの特派員 Jeff Porten が、ラスベガスで先週開かれた Consumer Electronics Show (CES) を取材して、最新の機器、面白い装置や、さまざまのがらくたなどについて報告する。

記事:

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Macworld に飛んでくる?電池は手荷物に!

  文: Mark H. Anbinder <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>

Macworld Expo 参加者で (そしてその他の誰でも) 米国へ或いは米国内で飛行機を利用する人は、最近 U.S. Department of Transportation によって施行された電子機器のための予備のリチューム電池をどの様にそしてどこへ持ち込めるかに関する 一連の新しい規則の影響を受ける。01-Jan-08 から有効となった規則では、予備の電池を預ける荷物の中に入れることを禁じ、手荷物に入れて機内に持ち込む予備の電池にも制限を課している。

DOT は、電子機器は機内持ち込みをするよう薦めているが (我々も同じ様におすすめするが、理由は預けた荷物はしょっちゅう行方不明になってしまうからである)、もし預ける荷物の中に電子機器を入れたい場合は、電池を入れた状態で入れることは _許される_ - 但し機器は安全に電源オフになっていなければならない。手荷物に入れて予備電池を持ち込む場合は短絡を避けるためその電極を保護しなければならない;DOT は そのやり方についても触れており、例えば電池を買った時についてくるプラスチックのカバーを使うとか、電気絶縁用テープで端子部を覆ってしまうとかである。

この電池に関するガイドラインでは、特に携帯電話とラップトップの予備電池に言及しているが、他にもデジタルカメラ、カムコーダー、携帯 DVD プレーヤーやビデオゲーム等に良く使われるリチューム電池とリチュームメタル電池にも適用される。電池当りのリチューム含有量に規制があり長時間電池をお使いの方には特に重要なので DOT Web サイトをご覧頂きたい。

Sony 製のラップトップの電池のオーバーヒートに端を発し、2006年の Apple, Dell, そしてその他幾つかのラップトップメーカーによる電池のリコールにまで発展した事に対する心配から、ここ数年の間で飛行機による旅行者に関係する旅客荷物に関する規制としてはもっともまともでかつもっとも独断的でないものとなった。(このリコールの詳細については "Apple 180万個のラップトップ用バッテリをリコール" 2006-08-26 を参照。)


Amazon MP3、DRM フリー楽曲を得る: では Apple は?

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

最初に来たのは EMI で、デジタル著作権管理 (DRM) の入っていない音楽を販売するテストを Yahoo と共に実施した。それから Steve Jobs がオープンレター“Thoughts on Music”を野に放ち(2007-02-12 の記事“Steve Jobs、DRM を謗る”参照)それから数カ月後 Apple が iTunes Store で EMI による DRMフリーの楽曲を販売すると発表してこれに続いた。(2007-04-02 の記事“Apple と EMI、iTunes で DRM フリー楽曲を提供”参照。)その次にこの騒動に加わったのが Amazon.com で、Amazon MP3 で EMI と Universal による DRM フリー楽曲をダウンロードできるようにした。(2007-09-25 の記事“Amazon MP3 が iTunes Store に挑戦”と 2007-10-16 の記事“Apple、iTunes Plus の価格を 99 セントに値下げ”参照。)

EMI と Universal が DRM フリー楽曲を提供する一方、Warner Music Group と Sony BMG は足を踏み出さずに残っていたが、ここ数週間内にこれら両社もついに屈服した。2007 年 12 月の末に、Amazon は Warner Music の DRM フリーのトラックも Amazon MP から入手できるようになると発表 した。そして、2008 年 1 月 10 日になって、Amazon は Sony BMG についても同様の内容を発表 した。これで、メジャーなミュジックレーベルの四社目が加わったことになる。(そしてこの会社こそ、CD のコピーを防ごうという狂気の試みとして Windows PC にスパイウェアを意図的にインストールした、あの会社なのだ。)

Amazon MP3 はこれで 310 万トラックを保有したと公言しているが、そのすべてが DRM フリーの楽曲だ。Apple は iTunes Store に 600 万曲以上を持っているというが、Apple の FairPlay DRM に縛られないのは EMI による iTunes Plus トラックのみだ。2007 年の 4 月に iTunes Plus トラックについて発表した際、Steve Jobs は「今年の末までに iTunes 上にある楽曲の半数以上が DRM フリー版になるようにしたい」と述べた。

今はもう 2008 年になっているが、私は喜んで Apple にあと二週間の猶予期間を与えて、Macworld Expo での画期的な発表の一つとして iTunes Store のすべての楽曲が DRM フリーのフォーマットになるという話が聞けることを願いたい。そうでなければ、Apple があの“Thoughts on Music”オープンレターとそれに引き続く iTunes Plus トラックの宣伝で達成したかのように見えた高潔なる倫理的立場は、あえなく Amazon にその座を明け渡したことになってしまうだろう。

そう、もちろん私はその決断が Apple 独りで一方的に下せるものでないことを知っている。そして、もしも Apple がただ Macworld Expo 基調講演のために発表を控えているだけなのでないとしたら、その後でスポットライトが当たるのは、ミュージックレーベル各社が Apple から Amazon に乗り換えようとしているのだという論調でしかないのではないだろうか。


Parallels Server が Leopard Server にも仮想化をもたらす

  文: Joe Kissell <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>

Parallels は Parallels Server の最初のベータのリリースを発表した。これは新しい仮想化プログラムで、Parallels Desktop の様に、一つのオペレーティングシステムを他のオペレーティングシステムの中で仮想化プログラムとして走らせるようにするものである。しかし、Parallels Server は、単に Leopard Server をゲストオペレーティングシステムとして走らせられるだけでなく、他にも注目すべき新しい機能を導入している。Apple の最近改定されたライセンス条項のお陰で ("Apple、Leopard の仮想化を認める" 2007-10-31 参照)、Leopard Server の所有者はそれを仮想マシンとして走らせることができる - それも複数コピーを一台のコンピュータ上で走らせられる - それぞれのコピーは別々に購入されかつライセンスされておりそしてホストコンピュータは Apple 製である事という条件付ではあるが。(Parallels Server 自身は Mac OS X, Windows, 或いは Linux 上で走る。)

この二つ以上の Leopard Server コピーを (他のオペレーティングシステム、例えば Windows Server そして Linux の様な、と合わせて) 例えば新しい 8 コアの Xserve ("新しい Xserve も 8 コアに" 2008-01-08 参照) の様な格好いいマシンの上で走らせるというオプションは、数に限りのあるマシンから最大限のフレキシビリティを引き出さねばならないサイトにとっては大変興味あるものとなる可能性を秘めている。

Leopard Server のゲストサポートに加えて、Parallels Server は、ついにゲストマシンの中でマルチプロセッサ或いはコアに対する (制限つき) サポートを提供している。そして同社によればこの機能は将来 Parallels Desktop にも採用されるであろうという。その他の新機能の一つに、ホストオペレーティングシステムへの依存を不要にする "bare metal" ハイパーバイザーを使ってゲストオペレーティングシステムを走らせるオプションがある。私自身これをこの目でまだ見たことがないので、これが実際にどの様に働くのか想像するのに多少戸惑っているが、少なくとも間違いなく良さそうに思える。

Parallels Server のベータテストプログラムは特定用となっているが、つまり 登録が必要という意味、どうも Parallels は誰にでも門戸を開いているようである。


NewsGator が NetNewsWire を無料で解き放つ

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

NetNewsWire 3.1は、RSS および Atom フィード用の長い歴史を持つニュースアグリゲータの最新リリースであり、そして今や無料になった。2005 年に Seattle の開発者 Brent Simmon の NetNewsWire ソフトウェアを買収し Simmon を雇った NewsGator は、 同社の主要なニュースリーディング・アプリケーションのアップデートを発表し、その結果同社のアプリケーションはすべて無料で入手できるようになった。以前は、NetNewsWire には有料でフル機能の Pro 版と無料の Lite 版があった。

NewsGator のアプリケーションには、FreeDemon 2.6、NetNewsWire 3.1、Inbox 3.0(ベータ版)、Windows Mobile 2.0 用の NewsGator Go!、そして一般的な携帯機器用のウェブベースのリーダーとそれを iPhone 用にカスタマイズしたものがある。NewsGator はプログラムやサービスをまたいでニュースリーディングを統合している。ユーザーがアカウントを作れば、それを使ってフィードを同期し、既読項目を管理することができる。

NewsGator の創設者にして CTO の Greg Reinacker が彼のブログに書いているところでは 、同社は、市場を同社のクライアント製品で満たすことによって、NewsGator Enterprise Server を含む同社の企業向け製品にとってよい環境を作り出すことに集中している。このサーバはコンテンツを外の世界から集めてきて、それを内部の従業員向けコミュニケーションと組み合わせる。シングルソースのサーバソフトウェアがすべてのデスクトップとモバイルのオペレーティングシステムと機器に対応し、ユーザあたりのライセンス料金はない。これは、NewsGator が、大規模だが通常のユーザにとって使いやすいソフトウェアを欠いている競争相手に挑戦するための強力な武器となるだろう。

話は変わって、NetNewsWire の最新版には便利な新機能もいつくか含まれている。ユーザインターフェースは新しくなり、パフォーマンスも向上し、HTML Archive オプションではニュース項目を標準的なウェブ形式で保存できる。パフォーマンスの向上ははっきりと感じられる。私がバージョン 3.0 を捨てて3.1 をインストールし、起動したところ、新規項目の取得やそのほかの動作が劇的に改善されるのを目にした。

また、Simmon が、私が何年ものあいだ静かに要望していた機能を 3.1 ベータの段階で加えていたということにも触れておきたい。その機能とは、どのニュース項目からでもコンテキストメニューでフィードの購読を解除するというものだ。私はあまりに多くのニュースフィードを購読しており、フィードというのはマンネリになったり、多すぎて手に負えなくなったり、あるいは単に腹立たしくなったりする傾向があるので、ニュースフィードをクリックして選択し、おさらばできるというのはすばらしい。以前は、購読リストを表示するオプションを選択し、フィードを選んで、Unsubscribe を選択する必要があった。

NetNewsWire 3.1 は最高機能 RSS ニュースリーダーの1つだと一般的に見なされているが、それが無料で入手可能になったことで、ほかの RSS ニュースリーダーのすべて(Safari を含む)にとっての基準が引き上げられた。Bare Bones が高機能テキストエディタ TextWrangler を無料でリリースしたときにRich Siegel が TidBITS に語ったように、「これに乗るにはこの線よりも背が高くなければなりません。」


Nolobe、Interarchy のメジャーアップデートを出荷

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

Nolobe は Interarchy 9 を出荷した。最古参の Macintosh 用インターネットアプリケーションの1つのメジャーアップデートだ。この新しいリリースでは、セキュアなファイル転送モードが1つ、新しく加わった。これは SSH 暗号化を使用し、Perl 4 以降が動作しているサーバを使用する必要がある。Nolobe は、新しいミラーリングモードでパフォーマンスがかなり改善されると約束している。このモードでは、ファイルが変更されたときはいつでも、それが自動的に、典型的にはウェブサイトを含むフォルダのようなリモートディレクトリに、複製される。

見た目の変更も多数施されている。新しいメインウインドウは Leopard のFinder ウインドウと似た表示で、サイドバーの情報をカテゴリごとに分類することができ、それには Bonjour でアクセスできるローカルボリュームも含まれる。ベテランユーザなら、 リリースノートを読んで、よく使う機能がどこに移動したのかを調べる必要があるかもしれない。特に、以前のバージョンにあったネットワークのテスト機能はどうやら削除されたようだ。私は、Editメニューに加わった Copy Public URL コマンドが特に気に入った。これは、FTP のパスと、そのパスにウェブサイトからアクセスするための対応する URLとのあいだのマッピングを作成し、FTP 階層のどのファイルからでも公開 URLをコピーし、それを電子メールや書類にペーストできるというものだ。

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バージョン 9 は、ファイルの拡張子とアプリケーションとのマッピングを、独自のマッピングを管理するのではなく、Mac OS X の設定と結びつけている。そのために驚かされることがあるかもしれない。たとえば、以前のInterarchy で .html ファイルを BBEdit で編集するように設定していて、Mac OS X では .html のマッピングを、そのファイルを OmniWeb で開くように設定していたとすると、そのようなやり方を Interarchy 9 で再現することはできない。Edit With コマンドがコンテキストメニューにも追加されているので、指定したファイルを編集するアプリケーションを、適切なアプリケーションの中から選択することができる。このリリースではアップデート用にSparkle を採用しており、プログラムが動いている最中でも改良が洗練された方法でよどみなく適用される(2007-08-20 の "Sparkle がアプリケーションのアップデート体験を改善" 参照)。

Nolobe は、2007 年 2 月に Interarchy(もともとは Anarchie)の開発権をPeter Lewis の Stairways Software から取得した。Nolobe の創設者はInterarchy の開発者のリーダー Matthew Drayton だ(2007-02-05 の"Nolobe、Interarchy を買い取り、8.5 を出荷" 参照)。これは、Nolobe がこのソフトウェアを取得して以来最初の「.0」リリースとなる。

Interarchy 9 は 2008 年 2 月 29 日までは 39 ドルで、それより後では 59ドルに値上げされる。Interarchy 8.5.4 以前の登録ユーザーは 29 ドルでアップグレードできる。Mac OS X 10.4.11 以降が必要だ。


Airfoil 3、音楽ストリーミングを AirPort Express を超えて拡げる

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>

Rogue Amoeba は Airfoil 3 をリリースした。これは同社の $25 のソフトウェアパッケージに対する大幅なアップデートで、元々単に iTunes にとどまらずいかなるアプリケーションでもオーディオ源でも、AirPort Express Base Station につながれたスピーカを通してオーディオを再生することを可能にするよう設計されたものである。

最新バージョンでは、これが Airfoil Speakers software (このリリースに含まれている) が走っている遠隔の Mac を通してもオーディオを再生できる。更に、このパッケージの一部となっている新しい Airfoil Video Player を使ってあなたのコンピュータでビデオを再生する時、遠隔のオーディオと同期を取ることが可能となる。Rogue Amoeba は、Airfoil による同期を取るのは今や "完璧" だと言っている:オーディオを受けている個々の遠隔 AirPort Express は全く同じ時間に受け取るのであるが、これは以前のバージョンでは可能ではなかった。

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以前のリリースからのアップグレードは $10 である。Airfoil 3 は Mac OS X 10.4.0 かそれ以降を必要とし、そして Mac OS X 10.5 Leopard 下でもきちんと働く最初の Airfoil リーリースでもある。全ての機能が働く試行版もあるが、連続で聞いていると 10分後にはオーディオストリームの上に雑音を重畳してくる。これは 9 MB のダウンロードである。


Rogue Amoeba の Live Disc によって無駄な CD を無くす

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳:上松慮生 <ryo.uematsu@gmail.com>

あなたが Macworld Expo に出展していて、ソフトのデモバージョンを CDに収めて配りたいと考えているとする。マスターディスクとラベルを作って、印刷と複製に出すのは簡単だ。ただ、大口の注文には発注から納品まで長い時間がかかる可能性があり、最新の製品をショーで出品するのが困難であり、また、配られなかったCD はすぐに時代遅れになってしまい、結果的にお金と資源の無駄遣いとなる。

この問題に対して、Rogue Amoeba の賢い若者たちは彼らが Live Disc と呼んでいるすばらしい解決方法を考え出した。基本的にLive Disc というのはユーザに Finder に似たウィンドウを提示するアプリケーションで、Finderと同じようにドラッグしてコピーしたりダブルクリックして実行したりできる Rogue Amoebaの製品のデモを提示している。どこがすばらしいかというと、そのソフトのより新しいバージョンが Rogue Amoebaのサーバに存在しているときには Live Discがシームレスに最新バージョンをダウンロードし、コピーないし実行する。インターネットへの接続がない環境では、Live Disc は CDにあるコピーを使用する。

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今のところ Live Disc は購入できるような製品の形態をとっていないが、皆が十分な興味を示せば Rogue Amoebaも製品化を考え始めるだろう。内容が時代遅れとなってしまったという理由であまりに多くの CD が捨てられているが、Live Discと少しの計画で、ほとんどすべての宣伝用の CDが著しく長い寿命を有することになる可能性が高く、そもそも最初の段階で実用的なら、ますます増加しているごみの流れに加わらなくなるだろう。


新しい Mac Pro は Macworld Expo の前に 8 コアに

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

Steve Jobs が Macworld Expo の舞台にあがるより1週間前に、Apple はプロフェッショナルレベルの Mac について話す必要を消し去って、より興味深い発表になるだろうと私たちが考えるものに集中できるようにした。Apple が「史上最速の Mac」と宣伝する新しい Mac Pro(もちろん、最新のプロ向けMac は常に史上最速であるわけだが、それでも・・・)が Macworld Expo の基調講演枠に入れなかったとなれば、私たちがどんなにへとへとに疲れていようと、よだれがわいてくるというものだ。

新しい Mac Pro は、2.8 GHz または 3.0 GHz、3.2 GHz で動く Intel の新しい 45 ナノメートル Quad-Core Xeon プロセッサ2基により 8 コアの処理能力を誇る。実際には、2.8 GHz Quad-Core Xeon プロセッサ1基だけの BTO オプションがあるが、これはローエンド Mac Pro の価格を低く保つための試供品のように感じられる。方向性としては明らかに、全面的に 8 コアの方向に向かっているのだから、私は通常このような変わりものの構成は避ける。

Apple が言うには、新しい Mac Pro は、Maya や Logic Pro などプロセッサに負荷をかけるアプリケーションを使ったときに、これまでの最上位機種2.66 Quad-Core Mac Pro と比べ最大で2倍速い。パフォーマンスの向上は、プロセッサあたり 12 MB に引き上げられた L2 キャッシュと、高帯域幅のハードウェアアーキテクチャ、独立したデュアル 1600 MHz フロントサイドバス、最大 32 GB(8 スロット)までサポートされた 800 MHz DDR2 ECC FB-DIMM メモリによるものだ。

ストレージの拡張性について言えば、新しい Mac Pro は4つの内蔵ハードドライブベイに SATA ドライブを直接、ケーブルなしで取りつけることができ、最大 4 TB の内蔵ストレージに対応している。SuperDrive の2層対応も標準となり、2つ目の光学ドライブベイが空いているので、SuperDrive をもう1台、あるいは将来的にひょっとしたら Blu-ray ドライブを取り付けることができる。

プロフェッショナル連中にとっては、グラフィック性能も重要だ。私はその世界に深く踏み込んでいるわけではないが、仕様を見ると圧倒される。標準のビデオカードは ATI Radeon HD 2600 XT で 256 MB のビデオメモリがつくが、BTO オプションで Nvidia 8800 GT と 512 MB のメモリか、Nvidia Quadro FX 5600 と 1.5 GB のメモリが選べる。さらに、それらのカードのうち1枚だけ(1枚で DVI モニタを2台駆動できる)にとどまる必要もない。Mac Pro には合計4つの PCI Express スロットがあるから、1台の Mac Pro で合計8台の 30 インチモニタを、それぞれ 2560 × 1600 で動かすことができる。3200万以上のピクセルを扱えるとなれば、Spaces の必要があるだろうか。どうやら Apple はスタジアムディスプレイの市場に参入することを目論んでいるらしい。

通信の面をみると、Mac Pro には標準で2基のギガビット Ethernet ポート(ジャンボフレーム対応)と Bluetooth 2.0+EDR、オプションで 802.11n AirPort Extreme(日本では AirMac Extreme)カードと Apple USB Modem が付属する。しかし、このマシン用にモデムを買うような青二才がいたら、締め上げてやろう。

ほかの仕様としては、2基の FireWire 800 ポート(1基は前面、1基は背面)、2基の FireWire 400 ポート(1基は前面、1基は背面)、5基の USB 2.0 ポート(2基は前面、3基は背面)、フロントパネルのヘッドフォンミニジャックとスピーカポート、光デジタルオーディオ入出力用の Toslink ポート、アナログステレオのライン入出力用のミニジャックがある。

Apple によれば、新しい Mac Pro はすぐに購入可能で、価格は 2,799 ドルからとなっている。この価格のモデルには、2基の 2.8 GHz Quad-Core Xeon プロセッサ、2 GB の RAM、ATI Radeon HD 2600 XT グラフィックカード、320 GB SATA ドライブ、SuperDrive とそのほか標準的なものがすべて付属する。ちょっと失望したところが1つだけあるとすれば、外見のデザインが変わっていないことで、5年近く前に Power Mac G5 で導入された「チーズおろし」筐体に悪いところは何もないのだが、新しくかっこいい筐体デザインをぜひ見てみたいものだ。


新しい Xserve も 8 コアに

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

Apple が Macworld 前に新しい Mac Pro を発表したのにすぐ引き続き、同社の 1U ラックマウントサーバ Xserve の待ち焦がれていたアップデートが発表された。Xserve が通常スーパーコンピュータや大企業のデータセンターでラックに収まっていることを考えれば、ハードウェアのアップデートがMacworld Expo の基調講演で言及されるという保証は、いずれにしてもほとんどない。そのため、Apple が、Xserve のアップグレードが基調講演のお株を奪うことのないように、すぐに仕様を公開し注文を受け付けたということは、驚くにあたらない。

新しい Mac Pro と同様、Xserve のハイエンドモデルは、2.8 GHz または 3.0 GHz の Quad-Core Xeon プロセッサ2基による 8 コア処理性能を誇る。2.8 GHz Quad-Core Xeon プロセッサを1基だけ搭載した基本モデルもある。すべてのモデルにプロセッサあたり 12 MB の L2 キャッシュと高帯域幅のハードウェアアーキテクチャ、独立したデュアル 1600 MHz フロントサイドバス、最大 32 GB(8 スロット)までサポートされた 800 MHz DDR2 ECC FB-DIMM メモリが含まれる。

拡張性について言えば、Xserve には SATA ドライブと SAS ドライブに対応したドライブベイが3つあり、2つの PCI Express 2.0 拡張スロットにはマルチチャネル 4 ギガビット Fibre Channel カードと 10 ギガビット Ethernetカードを取り付けることができる。

標準機能には、最高で 23 インチの Apple Cinema Display までのあらゆるモニタを駆動できる内蔵グラフィックサポート、デュアルギガビット Ethernet端子、2基の FireWire 800 ポート(ただし FireWire 400 ポートはない)、3基の USB 2.0 ポート、そしてもちろん、Mac OS X Server 10.5 Leopard の無制限クライアントライセンスが含まれる。基本的な Xserve 構成は、すぐに入手可能で、1基の 2.8 GHz Quad-Core Xeon プロセッサ、2 GB の RAM、1つの 80 GB SATA Apple Drive Module を含み 2,999 ドルだ。

Apple が自慢するところでは、新しい 45 ナノメートルの Intel Quad-Core Xeon プロセッサによりエネルギー効率が改善され、プロセッサが消費するのは最大で 80 ワット、アイドル時には 4 ワットまで低下するという。

Xserve の外見のデザインは、Mac Pro と同様にほとんど変わっていない。これは一部の人たちを失望させるだろう。データセンターのオペレータから、Xserve の 30 インチ(76.2 cm)という奥行きは標準的なラックにうまく合わないという不満の声を、私たちは耳にしている。(最初の Xserve は 28 インチ(71.1 cm)の奥行きだった。)また、Xserve のドライブスレッドをドライブと一緒でしか販売しないという Apple のポリシーのおかげで、Apple 以外のベンダから購入したドライブでストレージをアップグレードしようとすると高くついてしまう。これも変わっていないようだ。

これは良し悪しだが、Apple はフロントパネルから FireWire 400 ポートを取り除き、USB 2.0 ポートに置き換えた。これはよい方向への一歩だ。トラブルシューティングのためにキーボードやマウスを接続するのが簡単になった。しかし十分ではない。ラックにマウントされたサーバというのは通常、トラブルシューティングのためにはモニタも接続する必要があるが、ビデオポートは相変わらず Xserve の背面にある。

ホスティング会社 digital.forest の技術運用担当副社長 Chuck Goolsbeeは、次のように提案している。「ユーザ関連の」ポート、たとえば USB やビデオ、FireWire はフロントパネルからアクセスできるようにして、Ethernetや Fibre Channel のような「システム関連の」ポートと電源は背面に追いやっておけばよい。(もちろん、USB と FireWire は両方の面にあるべきだ。)その理由は、理想的なデータセンターの設計には暖気通路と冷気通路を設けることが必要で、そのためにはサーバの温かい背面と冷たい前面とをそれぞれ向かい合わせに配置する必要があるからだ。そうすれば、暖気通路が囲まれて効率的に冷却されるようになる。しかし、ビデオポートが背面にあるXserve のように、スタッフがトラブルシューティングのためにサーバの背面に頻繁にアクセスしなければならないとしたら、それを実現するのは難しい。

そうは言っても、私たちはしばらくのあいだ新しいサーバハードウェアを必要としていたのだし、これは私たちが注文しようと待ち構えていたユニットに違いないように思われるのだ。


Macworld Expo でも、その後も、iPhone 接続をセキュアに

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

何千人もの iPhone ユーザーたちがいて、何十ものネットワークに何百という Wi-Fi ノードがある場所で、ネットワークセキュリティが何もなかったらどんなことになるだろうか? どこを探すのかを知っているろくでなし連中がほんの片手で数えられる人数いただけで、たくさんのパスワードがそいつらの手に落ちてしまうことだろう。

もしもあなたが iPhone ユーザーで、今回の Macworld カンファレンスと Expo に行こうという人なら、私はぜひ会場であなたにお目にかかりたいが、あなたのパスワードが空中を飛び交っているのを目にするようにはならないことを願いたい。iPhone は、また Mac OS X やその他パーソナルコンピュータやモバイルフォンのためにデザインされたメジャーな各種オペレーティングシステムは、いずれもデフォルトでは Wi-Fi で送られるデータにセキュリティを施していない。その代わりに、オペレーティングシステムやハードウェアのメーカー各社は、あなた自身があなた独自のセキュリティをその上に重ねることを前提としているのだ。

大多数のユーザーは自分が輸送しているデータの上にセキュリティを追加する必要があることを認識していない。そこで私は、自ら Johnny Wi-Fi Security Seed となってセキュリティの種を蒔こうと心に決めて(あの Applejack 王の評判におんぶし過ぎていないことを願うが)人々が歩き回る間にパスワードやデータを読み取られないようにする簡単な方法を広めてまわろうと努めてきたのだった。[訳者注: Johnny Appleseed は、アメリカの開拓時代に各地にリンゴの種を配ってまわり、リンゴ農業の基礎を築くとともに、有名なリンゴ酒 Applejack を生み出した偉人です。]詳しいことは、 数カ月前に私が Macworld に書いた解説記事に iPhone とそのセキュリティの限界について説明してあるのでお読み頂きたいが、以下にざっと述べる助言を読んで頂くだけでもお役に立つと思う。(その解説記事は去年の夏に書いたものだが、その後 iPhone のアップデートがいくつか出たため、記事で触れた数件の微妙な VPN の欠陥は既に修正されている。)

基本的に、自宅から離れている時に Wi-Fi によって iPhone あるいはラップトップ機にするネットワーク接続は、あなたが使っているその特定のプログラムまたはそのネットワーク接続が特に暗号化を含むようにデザインされているか、あるいは何らかのセキュアな要素がその上に被せられているかしない限り、すべてセキュアでないものと考えなければならない。(自宅においては、あなたのネットワークに WPA パーソナル暗号化を使えば、ネットワークパスワードを持たない覗き屋からデータを安全に保護してくれると思ってよい。)

電子メールのパスワードと内容を保護 -- iPhone は礼儀正しい。あなたが iPhone の Mail 環境設定で出来合いのパートナー電子メールホストオプションを使って新しい電子メールアカウントを設定すれば、あるいはあなたが手動で電子メールアカウントを追加すれば、その際には暗号化接続を(それが利用できないのでない限り)利用するというのが Apple の流儀だ。(Yahoo Mail の iPhone 用 push サービスでは、パスワードはセキュアになるけれどもあなたのメッセージの内容は外から見える状態で送られる。)

電子メールのパスワードはしばしばデフォルトでは外から見える状態で送られる。つまり、その上に暗号化を被せない限り、誰かがあなたのパスワードにアクセスできてしまうかもしれない。メールプログラムやメールサーバはウェブサーバと同様に SSL/TLS を使ってデータをトンネルするので、送られているものを覗き屋が傍受することはできない。Apple の iPhone Mail や Mac OS X Mail を含むほとんどすべてのメールソフトウェアは SSL/TLS 接続のサポートを含んでいる。

電子メールの送信 (SMTP) と受信 (POP3/IMAP) には、ほとんどのインターネットサービスプロバイダが SSL/TLS を提供しているが、すべてのプロバイダがそうという訳ではない。もしもあなたの ISP 自身の持つメールサーバが暗号化をサポートしていないならば、旅行中の電子メールについては暗号化された POP、IMAP、SMTP を提供するサービス、例えば Gmail のようなところに転送して使うのがよいかもしれない。(セキュアな電子メールの仕組みと、なぜそれを使う方がよいのかの説明についてはこちらの詳細記事を参照されたい。)

電子メールのパスワードだけならば、APOP (Authenticated POP) を(それをサポートする ISP で)使うことで保護ができる。APOP を使えば、あなたがメッセージを取り込む度に、メールクライアントがあなたのパスワードに対し毎回固有のハッシュ値を算出し、あなたのパスワードを知っているサーバの方ではそのハッシュ値を確認することができる。iPhone は APOP のサポートを提供していないが、多くのメールプログラムがこれを古くからのオプションとして内蔵している。

もしもあなたの ISP が電子メールを外へ送り出そうとする際にパスワードを要求するのならば(大多数の ISP はそうしているが)そのパスワードは SSL/TLS が使われていない場合しばしば外から見える状態で送られる。

セキュアでないウェブサーフィンをプライベートに -- セッションを保護するための暗号化を使っていないウェブサイトでブラウズしている際には、同じネットワークにいる盗聴者ならばあなたの活動をすべて監視できてしまう。銀行のサイトならばほぼ常に全セッションに SSL/TLS を使っている一方、e コマースのサイトは SSL/TLS をあなたのアカウントログインとチェックアウト段階のみにしか使わないかもしれない。

昔なら、私には秘密などない、と楽天的な気分でうそぶいていてもよかった。サイトへのログインで私のパスワードを保護してくれれば、現に Yahoo や Google など多くの会社がそうしているが、セッションそのものが外から見えても何の問題があるだろうか? でも、この態度が許されていたのはサイドジャッキングが登場するまでのことだった。

あなたがページをリクエストするに従ってブラウザが連続的にセッションを保てるようにとの目的で Google などのサイトがあなたに送ってくるアカウントトークンというものがある。これを傍受する方法が、サイドジャッキングだ。このトークンはクッキーとして保存され、あなたのブラウザが各処理ごとに送り出すので、外から丸見えのウェブサーフィンでは容易に傍受されてしまう。これは財務情報や医療情報、その他プライベートな情報処理を扱うようなサイトを除いて、他の一般的なサイトの多くで成り立つことだ。そのトークンの使用される寿命が数分間か数日間か、それとも数年間かは、そのサイトの開発者が選んだセキュリティモデルによって決まる。

アカウントトークンを入手した誰かがあなたのパスワードを読み取ることはないが、トークンを入手した誰かはあなたの現在のセッションにアクセスすることが可能となるので、セッションが秘かにハイジャックされてしまうかもしれない。すると彼らは、あなたのアカウントから来たかのように見える電子メールを送り出すこともできるし、あなたが書いたメッセージを受け取って読むこともでき、さらにセキュリティの弱いサイトではほんのちょっとした小細工で彼らの電子メールアドレスにあなたのパスワードを送らせるようにできるかもしれない。(さらに詳しいことについては、2007-08-27 の私の記事“開いた Gmail、その他サービスを Sidejack 攻撃がこじ開ける”を参照のこと。)

ウェブセッションをセキュアにし、その Mac でサイドジャッキングを防ぐには、Secure-Tunnel サービスを使えばよい。(サービスには Gold と Platinum の二種類があり、それぞれ月額 $7.95 と $9.95 だ。)これはウェブリクエストのための暗号化されたプロキシとして働く。

けれども、あなたが iPhone を使っているならば、その方法は働かない。不当にも iPhone はウェブやその他のネットワークプロキシが個々の Wi-Fi ネットワークごとに個別に設定されることを要求する。それに対して Mac OS X やその他大多数のオペレーティングシステムがプロキシサービスを処理する方法では、Wi-Fi アダプタや EDGE ごとにプロキシが設定できる。

だから、ラップトップ機を使ったブラウジングでは Secure-Tunnel が選択肢となるが、iPhone ユーザーがこの種の保護を望む場合は VPN を考慮することが必須となる。ところがこの VPN も iPhone 上ではまた別の制限事項がある。次にそれを説明しよう。

VPN を雇おう -- VPN (virtual private network, 仮想プライベートネットワーク) 接続では、あなたのコンピュータまたは iPhone と遠隔ポイントとの間で出入りするすべてのデータが暗号化される。VPN サーバを走らせている会社に勤めている人にとっては、その遠隔ポイントは会社のネットワークの内部にある。一方、いくつかの会社が販売している VPN サービスでは、遠隔ポイントはその会社のサーバ、つまりどこかのデータセンターの中に位置している。このような遠隔ポイントはあまりセキュアとは言い難いが、通常あなたは Wi-Fi リンクとローカルネットワークにおいてデータの保護を図ろうとしているだけだ。そこのところを、これら VPN サービスプロバイダが提供するという訳だ。

こうしたサービスのうちで Mac フレンドリーなものとしては、 publicVPN の同名のサービスや WiTopia の personalVPN サービスなどがある。publicVPN で月額 $5.95 または年額 $59.95 を払ってサインアップすれば、シンプルな説明書が届き、そこには publicVPN のサーバに接続するためにどうやって iPhone(単に L2TP と呼ばれている)と Mac OS X 10.3 かそれ以降に内蔵されている VPN クライアント L2TP-over-IPsec をセットアップすべきかの説明が書いてある。

WiTopia は年額 $39.99 で SSL ベースの VPN サービスを提供しており、オープンソースの TunnelBlick 接続クライアントを、必要なデジタル証明書をあなたに合わせてカスタマイズしたものを伴ってインストールできる、完結したパッケージを供給している。残念なことに、iPhone は今のところ SSL VPN もサードパーティのソフトウェアもサポートしていない。また、TunnelBlick は Leopard でフリーズを起こすことがある。(私は TunnelBlick をアンインストールせずにこのフリーズの問題を解決することができなかった。ただ、Tiger では何の問題もなく働く。TunnelBlick の開発者たちは現在この Leopard での問題の修正に向けて作業中だ。

けれども WiTopia は、この iPhone の制限事項と現時点での Leopard 下のクラッシュとを両方同時に回避する策を持っている。それは数カ月前、あなたのサービスの一部として第二の VPN アカウントを無料で追加することによって達成された。WiTopia は広範にサポートされている PPTP (Point to Point Tunneling Protocol) を提供したのだが、これは iPhone でも Leopard でも使える。PPTP は旧式の VPN プロトコルで、あまり良くないパスワードの選択をした場合に弱点がある。WiTopia は、強力なパスワードをあなたのために選ぶことによってこれを回避しようとした。(他にも制限事項があるため大多数の会社は PPTP を避けて IPsec や SSL ベースの VPN を選ぶようになった。)

iPhone では、Settings > General > Network > VPN を選び、WiTopia では PPTP 用に、publicVPN では L2TP-over-IPsec 用に提供されている情報を入力する。情報を入力し終えると、メインの Settings スクリーンの Wi-Fi スイッチの下の方に VPN ボタンが現われるので、VPN のオン・オフを切り替えるのが手軽にできる。すぐ後でもう少し説明する。

Panther と Tiger では、Internet Connect を使って VPN の設定をする。Leopard では、VPN サービスは Network 環境設定パネルにおけるオプションに過ぎず、他のネットワークアダプタと同様に表示される。(アダプタのリストに VPN が出てこない場合は、左下にある + (プラス記号) をクリックしてから Interface メニューで VPN を選び、VPN Type メニューで必要に応じて L2TP over IPsec または PPTP を選べばよい。)

けれども、iPhone ではここからが難しいところだ。VPN は全体的にはベストの解決法なのだが、Apple はあなたがネットを行き来する間、手軽に VPN をアクティブにし続けておけるようにしてくれていない。つまり、ブラウズしているうち知らぬ間に VPN がオフになっていたということもあり得るのだ。iPhone は、あなたが先に選んで加わっておいた Wi-Fi ネットワークと EDGE との間でのローミングならば非常によく働くが、あなたが VPN 接続をしようとすると、そうしたネットワークの切り替えの際にいつ接続が切れてもおかしくない。モバイル機器で働くようにデザインされたある会社のソフトウェアは、あなたがどんな接続メディアを使っていても、例えば Ethernet、Wi-Fi、セルラー、その他何でも、いつもその会社のネットワークにおける連続的な接続に戻るように作られている。でも、Apple と AT&T はまだこの種の柔軟性までは提供できていない。2008 年 2 月になって iPhone にサードパーティのソフトウェアの追加が可能になれば、開発者たちの努力でこの柔軟性が iPhone にも及ぶようになるかもしれない。

でも現在のところは、私がこの記事で挙げたような問題点が気になるあなたならば、個々のブラウジングセッションごとに VPN 接続に注意を払っておかなければならない。私はあるセキュリティの専門家に相談してみたが、彼の意見は EDGE ネットワークは全般的にセキュアだというものだった。その暗号化を破るには相当に大がかりなリソースを注ぎ込むことが必要になるし、それをしても破れるのはたった一台の機器のみだからだ。でも、Wi-Fi は違う。Wi-Fi は、開けっぴろげで無防備なのだ。

Macworld 楽観論 -- この 2 月には iPhone 開発キットがリリースされる予定だし、今回の Macworld Expo 基調講演ではその一部が iPhone 開発キットのプレビューにあてられると思う。だから、私としては今回のショウの会場で不用心にしている人たちのデータやパスワードが日の目に晒される危険性をひき起こしかねない iPhone の未完成な側面も、将来はきっとサードパーティのソフトウェアの登場のお陰で修正され、例えば Macworld のようなイベントで、あるいは自宅の近所にあるホットスポットでも、ネットワーク上のデータ転送をプライベートに保つことがずっと簡単にできるようになるのではないかと願わざるを得ない。


CES 2008 1日目: まずは私の立ち位置を

  文: Jeff Porten <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

[編集者ノート: 勇猛果敢な移動特派員 Jeff Porten が、先週ネバダ州ラスベガスで開催された今年の Consumer Electronics Show (CES) の会場で奮闘してくれた。会期中、朦朧とする意識の中からものを書く力を振り絞れるタイミングを見つけて彼がまとめてくれた一連のレポートは、何回かに分けて私たちのウェブページに掲載された。]

CES の会場からこんにちは。これは、世界最大のコンシューマ向けエレクトロニクス・ショウで、人間の忍耐力の上限をテストすることに専心するためにあり、参加者たちにはその上限を超えることを強要するところだ。

いや、本当はそうではない。私は今、ラスベガスの The Venetian/Sands Expo and Convention Center で CES の初日を過ごしてきたところで、今日はここの会場のショウのフロアのうち半分ほどを制覇できたと思う。あとは、このフロアの残り半分と、あと三階分の展示、それから、えり抜きの会社を集めた Tower Suites 会場と、もう一つ隣の Wynn 会場にも追加の展示があって夜の 10 時までやっている。

明日はそれらをすべて制覇したあとで、私は Las Vegas Convention Center に向かう。私が今いる Venetian 会場ではサテライト・ショウだけをやっていて、大部分の展示とイベントは実はその LVCC の方にある。全部合わせると、CES には 180 万平方フィート (16 万平方メートル) の展示場があり、延べ 250,000 人ほどの聴衆が今週そこを歩くと見込まれている。全部の会場をカバーするには折り畳みの地図が七つも必要だ。

別の言葉で説明しよう。このようなトレードショウをアタックする時、私はいつもグリッドスタイルで会場を歩き回る。(つまり、一つの廊下を端から端まで歩いてから、また次の廊下を端から端まで歩いて戻る方式だ。)その上大多数の展示者たちが木の薄板で作ったような紙のパンフレット類を次々とくれるので、私は最大 40 ポンド (18 kg) にも達するカンファレンスバッグを抱えながら毎日 10 マイル (16 km) もハイキングする羽目になるのだ。(トレードショウに対する私の Getting Things Done アプローチを知りたい方は、私のサイドバー記事をご覧あれ。)

現在私はそうしたパンフレット類で膨れ上がったバッグを持っていて、まだその中身を読んでもいないのでそれについて書くことはできないが、とりあえずここではこれから TidBITS 記事にどんなことを書くつもりであるかを手早く書き留めておきたい。ざっと見渡してみたところでは、今回いくつかの会社はそれぞれの分野である程度ユニークだと言える製品を展示しているし、私の目を惹いた興味深い製品もいくつかある。でも、その他大多数の展示では、競合相手の製品とほんの少ししか変わらない機器を出しているだけのようだ。だから、私の記事では競合する他社との違いが真の意味でターゲットの観衆の心を捉えたと言えるような製品のみに焦点を絞っていきたいと思う。

その考え方の典型的な実証となるようなものがここにいくつかある。一番手前に写っているのが、 Solio(ソーラーパワーのアクセサリを作っている会社)のメディアキットだ。これをフラッシュドライブに取り付ければ、持ち運びもしやすく将来私にとって DVD にはできないやり方で役に立ってくれるだろう。その隣に写っている丸くて赤いペンは Genius で配っていたものだ。ショウの会場では他にもいろいろなペンが配られていたが、このペンならば鞄の底で見当たらなくなってしまうこともない。最後にもう一つ、World Series of Poker 公式ライターは私が昨日買ったものだ。これはロゴが気に入って買ったのではなく、フォームファクターが気に入ったのだ。平らで薄く、どんなポケットに放り込んでも無理なくフィットする。

CES-swag

できるだけ礼儀正しくしたい私としては、その競合的機能が負の方向を向いているような製品を出している会社にはなるべく触れないようにしたいとは思っているものの、一つだけはどうしても書いておきたい。名刺大の mini-CD に情報を詰め込んで配るという過ちを犯している会社が、今回もたくさんあった。そういうディスクは、私の MacBook のスロットローディングドライブで間違いなく即時却下となる。彼らがそれ以外の方法で情報を配付していないのならば、それはすなわち会社としての Mac コミュニティーに対する友好的態度の欠如以外の何物でもない。Mac Pro デスクトップ機を抱えて会場に来ている人でない限り、mini-CD ディスクは読めないのだから。

では次の記事に続く! 実際の製品についてのことは、そちらの記事にて。


CES 2008 1日目: キーボード、電源、めがね、その他

  文: Jeff Porten <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

ラスベガスにいて、その日最高の経験が新しくてホットな新製品のキーボードを見たことだったと断言できるなら、あなたは間違いなくギークの仲間入りができる。

Art Lebedev は本物の、決してベイパーウェアなどでない、実際に原子でできた Optimus Maximus キーボード を展示している。このキーボードでは、一つ一つのキーがそれぞれごく小さい OLED ディスプレイを内蔵している。キーボードのレイアウトを QWERTY から Dvorak に切り替えれば、キー上の表示がそれに応じて変わる。たぶんこちらの方が便利な機能かもしれないが、特別のファンクションキーや標準の Fkey などが、それぞれのアプリケーションアイコンを表示できて何をするキーなのかを思い出させてくれる。

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ポンと大枚 $460 という値段なので、この Optimus Maximus はたいていの人にはぜいたく品だろうが、例えば国際的なグループが使う共用のコンピュータなどでは便利だろうと思う。私はいくつものカンファレンスで、参加者たちが目の前のキーボードの上に自国のレイアウトを頭の中で描き出しながらタイプしなければならない様子を何度も目にしてきた。それに、どこかの頭の良いウェブサイトがこの種のことを応用して、これを素晴らしい生産性ツールと化する方法を思い付くのはきっと時間の問題だろうと私は思う。考えてもみて欲しい。AppleScript やマクロなどがあって、ダイナミックにキーの機能を切り替えて _同時にそれがどう変わったかを表示できる_ キーボードがあれば、あなたのワークフローを自由自在に一つか二つのキーストロークに自動化できるのではないか?

ここ CES には非常に興味深い電源アクセサリもいくつかある。 Powercast は電気コードなしに電源を転送するさまざまの方法をデモ実演している。携帯電話やラップトップ機をプラグなしに充電できれば素晴らしいだろう。Aqua PowerSystem(日本の会社)は、水で動作するバッテリをアメリカで販売する代理店を探している。そう、_どんな_ 水でもよいらしい。「アルコールの入った飲み物、ビール、コーラ、コーヒーなど、さらには手許に水がない場合などには唾液や尿でさえ動作する。」どうやら、燃料電池をデモしているブースもショウのフロアのどこかにあるらしい。これは明日探してみよう。

ベスト Geordi LaForge iPod アクセサリ賞を授けたいのは、 i-Vue のビデオ眼鏡だ。[訳者注: Geordi LaForge は『新スタートレック』の人物です。]ディスプレイもなかなか良く、ヘッドフォンも内蔵されているので、飛行機の機内で映画を観るのに最適だ。ただし、800 * 600 以上の解像度ではテキストの表示が崩れがちなので、ポータブル生産性を上げるのにはあまり役立たない。

iVue

こいつはクールだが、本当に役立つだろうか? SanDisk の Cruzer Titanium Plus は 4 GB のメモリを備えた USB フラッシュドライブだが、一捻りが施されている。新しい工夫は、あなたがこのドライブに入れたものがすべて、自動的にオンラインのストレージにも同時にアップロードされることだ。(アップロードはあなたのコンピュータを通じてだ。ドライブ自体がオンラインに繋がる訳ではない。)もちろん余分の保存をするプランがあるのは結構なことだが、現実に私が同じファイルを三カ所に、しかもそのうち一つを身に付けて持っている必要を感じる時があるとは思えない。なぜなら、一つを身に付けて持ち歩くということは、その時にはオンラインへのアクセスが _ない_ ことが多いからだ。このドライブの価格は $60 もして、オンラインのストレージは最初の半年間は無料でその後は年額 $30 となる。(正直言って、無料でいろいろの展示ブースから貰ったフラッシュストレージ合計 20 GB を持ち歩いていると、市場価格の感覚も安値に向いてしまうものだ。)

もう一つ、なかなか凄いアイデア - だと思う - のが、PhoneCasting だ。これを使えば、電話を通じてポッドキャストを録音したり、オーディオのブログ項目を入力したりできる。ややこしい作業のプロセスが手軽にこなせる訳だ。PhoneCasting ではそこで録音したポッドキャストそれぞれに電話番号が割り当てられるので、あなたのポッドキャストのリスナーたちもそこに電話をかけるだけでいつでもあなたの最新のポッドキャストが聴ける。(かなりテンションの高い PhoneCasting プレスリリースによれば世界中で 32 億 5 千万人の携帯電話による購読者がいるそうだ。このプレスリリースは 702-553-2764 で聴ける。)ポッドキャストの番組を人々に知らせる SMS メッセージもあるし、PhoneCasting ではラジオ番組風の広告をポッドキャストに挟み込んで収入を発生させることもできる。でも、きっと高額になる電話料金を払ってまで長時間のポッドキャストを聴いてくれる人たちがどれほどいるだろうか? まあ、iPod nano を自宅に忘れてきた私としてはあまり強く批判もできないが、でも大きな疑問は残ると思う。ポッドキャストをする人は 250 MB のストレージが無料で使え、それを超える分はたぶん有料なのだろう。奇妙なことに、そうした通話をする際の料金については、有料なのかどうかも含めて、私に渡されたプレスキットにも同社のホームページにも何も書かれていない。


CES 2008 2日目: iPod から iShoes まで

  文: Jeff Porten <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

驚嘆するほど多岐にわたる色とりどりの製品やサービスで、CES はまだまだ私たちの心を驚かせる。2日目に目立ったのは以下のようなものだった。

ifrogz は“thumpz”という興味深い iPod ケースで私の目を惹いた。ほとんどイヤーバッドと同じくらいのサイズのスピーカーが内蔵されている。残念ながら私の耳はこのスピーカーの音質についてレポートできるほど良くないので、防音ブースでのデモを聴くのは止めにした。3G iPod nano 用のバージョンが 2008 年 1 月 14 日に $24.99 で出荷され、iPod classic 用のバージョンもその後続く予定だ。

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イヤーバッドか宇宙飛行士か? 聞こえにくいことの話のついでに、耳の状態を健康に保っておきたいあなたは、あるいはあなたの子供たちにそうさせたいなら、 American Speech-Language- Hearing Association (ASHA) の Listen to Your Buds キャンペーンのことを知っておくべきだろう。登場するキャラクターが擬人化されたイヤーバッドか、はたまた Lego の宇宙飛行士なのかは見方によって変わるかもしれない。ともあれこれは、ヘッドフォンの使い方次第であなたの聴力に恒久的なダメージが発生するかもしれないという話だ。そして、子供たちが特に影響を受けやすいのだ。騒音の大きい場所で相手の唇を読むようになってしまう(実は私もそうなっている)のを避けたいなら、ここのサイトに立ち寄ってみよう。

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単調な一色のみの MacBook や iPod のケースに飽き飽きしていませんか? Gelaskins の各種カスタム・スキンケースはそのデザインにおける目配りの的確さで私の心を捉えた。特に私が気に入ったのは MC Escher(エッシャー)の Drawing Hands ラップトップケースと Hokusai(葛飾北斎)の The Great Wave iPod ケースだ。それでも満足できないという人には、 Digiskin がキオスク店を展示していた。説明によれば、_どんな_ 機器からでも(携帯電話からでも)この店でカスタム画像を作って印刷できるとのことだ。価格を尋ねるのを忘れてしまったが、これこそまさに顧客一人一人のためにカスタマイズしたケースを販売するビジネスの方法だろうと思う。ご自分でそういう店を見つけられない人は、近所のショッピングモールで探してみるとよい。

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デザインの話といえば、LaCie が幅広い種類のストレージ機器を有名なデザイナーによるケースで提供している。今回は、Little Disk シリーズの製品をさらに小型のモデルにまで拡げ、今後登場する 1.3 インチの 30 または 40 GB ハードドライブを収めるものにはドライブのケースというよりむしろ Zippo ライターのように見えるものまである。それでも、まだ内蔵の USB ケーブルが付いている。より大型のモデル(とは言っても Altoids キャンデーの缶程度の大きさだが)では最大 250 GB を提供し、FireWire のオプションもある。LaCie のプレスリリースによればすでに出荷されているとのことだが、同社のウェブサイトはまだアップデートされていないし、ブースには「来月」と掲示してある。

LaCie-Little-Disk

TechForward には何もテクノロジーのデモはなかったが、その代わりにエレクトロニクスの保険に対する興味深い見方を示していた。彼らの言う“buyback plan”なるものを購入すると、未来のある時点で彼らがあなたのハードウェアと引き換えにある設定された金額を払うことを保証するというのだ。例えば、今日 MacBook を買ったあなたが彼らに $39 を払っておくと、あなたは一年後ならば $460 で、あるいは二年後ならば $380 で、その時の市場価格とは関係なく彼らにあなたの MacBook を売ることができる。面白いことに、iPod 用のプランは提供しているのに、Zunes 用のプランは提供していない。これはなぜだろうか。彼らは直接あなたに販売することもあるし、他のベンダーからの店頭販売時の購入として提供することもある。(彼らはそうしたベンダーに対して割り前を約束しているので、賢いバイヤーならば価格交渉のポイントになるかもしれない。)基本的な考え方は、将来あなたが実際のコストよりも安い値段で装備のアップグレードができるようになるということだ。その時に支払われる金額が保証されているからだ。eBay を使えば時にはもっと得をすることもあるだろうが、こちらは間違いなく手間要らずの代替方法と言えるだろう。

Woz が Segway に乗っているみたいに格好良く街を疾走して回りたいけれど、その道具はバックパックに入る程度のものがいい、とお思いの方には、iShoes がお薦めだ。どうやってこれを思い付いたのかは謎だが、これはバッテリ駆動のローラースケートで、一回充電するごとにおよそ 3 マイル (5 km 弱) 走れ、最高速度は毎時 13 マイル (時速 21 km) ほどになる。どの程度安全に使えるのかはわからないが、空中浮遊するスケボーでも売り出されない限り、これ以上クールなものはないように思える。どうやらこれは既に入手可能のようで、価格はたったの $599 プラス送料 $20 だ。これを買った人は、ぜひ私たちにその使用感を教えて欲しい。

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最後に、Opera Software の人たちに敬意を表しておこう。(彼らのソフトウェア製品は他にもあるが)携帯電話や Java 対応機器用の素晴らしいブラウザ、Opera Mini の作者たちだ。彼らのうち何人かと屋外の喫煙エリアで出会った私は、冗談めかしてこう自己紹介した。「おいおい、君たちのせいで俺の電話が今クラッシュしたみたいだぜ。」驚いたことに、彼らは本当に親身になってくれて、私が携帯電話を使う方法についてあらゆる種類の質問を尋ねた上で、私が彼らの製品をどう思うか、アメリカ国内でもっと多く使われるようにするにはどうすればいいと思うか、と質問してきた。(私はこう返事した: 残念ながら、彼らのソフトウェアを最も必要とする人々は、彼らのソフトウェアのことを耳にするチャンスが最も少ない人々に他ならないのではないかと思う。)もしもあなたが Opera 社のウェブサイトやフォーラムを見て、この会社が本当に素敵なノルウェー人たちの集まりだなと感じたのなら、私はあなたのその直感が正しかったと断言できる。


CES 2008 3日目: ロボット、そしてまとめ

  文: Jeff Porten <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

ラスベガスというものは、我々人類のうち男性だけの上に強い心理的効果を持っていると言われる。他の場所では良識と経験とによって避けるべきと分かっていることも、ここに来れば思わず言ったりしたりしてしまうのだ。

それを踏まえた上で、ベガスの長い歴史の中でも、Playboy のプレイメイトに近づいて「ねえ君、ちょっと Taser 銃(スタンガン)のことを教えてもらえないか」と話しかけたのは、たぶん男性では私が最初なのではないかと思う。

本当の話、これは完全な実話だ。私には何の言い訳もない。そう、私は彼女とその同じテーブルに座っている他の三人の女性たちとが、遠目から見ても断然目立つ美人であることに気付いていた。でも、なぜか私は、彼女たちがそこにサイン会のために座っているのであって、製品情報を配るためではないことに気付かなかったのだ。

さて、ショウに展示された実際の製品の話に戻ると、全体的には期待したほどでなかったと言わなければならない。私が CES に期待しているのは、五年後に普遍的なものとなるであろう新しいテクノロジーに、初めての出会いができることだ。今年のショウにはそう思えるものがあまり見られなかった。本当に大型のテレビを 100 種類の違ったブランドで比較したいなら、あるいは耳を張り割くばかりのスピーカーを 350 種類の違ったブランドで比較したいなら、この CES は間違いなくそのためにあるような場所だったと言える。でも、私はこれまで飛び飛びながら 20 年間このショウに通っているが、初めて私が DVD を買ったのも、Wired の創刊号を手に入れたのも、ここ CES の会場においてだった。今では、これほどまでにショウの規模が大きくなったせいで私が大切なものを見落としたということは十分考えられるけれど、それでも本当に画期的だと思えるようなものが飛び出してくることは起こらなかった。

たぶん一つだけ例外と思えるものがあった。それは、 iRobot ConnectR という奇妙な代物だった。今年のうちには出てくるというこの製品は、お掃除ロボットの Roomba を作っている人たちの作品だ。この ConnectR もまた丸くて背の低いロボットだが、その目的はあなたが家族とのコミュニケーションをとることだ。あなたが外出している時、インターネット経由で ConnectR にログインすれば、旋回する台の上にマウントされたカメラと双方向オーディオを使って子供たちと(あるいは、たぶんとてもしんぼう強いあなたの配偶者と)話ができる。このロボットが可動式になれば、家の中を動かして子供を追いかけることもできる。[編集者注: それは興味津々だが、実際に子供の親としての私たちの意見は、別の記事のためにとっておこうと思う。 -Adam]

stayconnected

とにかくクールなギアだという理由だけでもこの ConnectR については書いておかざるを得ないが、それだけでなくこれは今後大ブレイクするかもしれない。仮に、私たちが今日インターネットを使って互いの仮想の距離を短くしているのと同様、もしも 21 世紀の中盤になって私たちがこぞってテレマティックス(移動体通信技術によって情報をやりとりすること)の機器を使って物理的に仮想の存在を作り出すようになったとすれば、この ConnectR こそがその最初の製品化の実例の一つとなっていることだろう。その一方で、確固たるものとして根付くには、これはちょっと主流から外れ過ぎているのかもしれない。私には頻繁に家族を離れて旅行をするかなりのギークと言える友人たちが何人かいるが、その一人がこれを使っている様子を頭に思い描くことはまだできない。

今回の CES には“intelligent transportation systems”(高度道路交通システム, ITS) についての情報も溢れていた。アメリカ運輸省の同じ名前の局が、なかなか良い概要説明を提供していた。ITS がカバーするのは、広い意味で、あなたが車に搭載したいと思う情報テクノロジーとおおまかに同等のものだが、その中にはこれがあれば自動車旅行をするやり方が変わってしまうと思えるようなテクノロジーもいくつかある。中でも私が興味深いと思ったのは Vehicle Infrastructure Integration (路車協調システム, VII) と呼ばれるもので、基本的にこれはすべての個々の自動車をピア・ツー・ピアのネットワークにおける一つのノードに変貌させる。初期の段階ではリアルタイムの渋滞状況データの追跡などに用いられるだろうが、それはまだインターチェンジのランプウェイを登っているだけの段階で、いずれは未来の完全自動運転システムへと向かっているのかもしれない。そうなれば渋滞を伴うこともなく既存のアスファルトの上により多くの自動車をフィットさせることができるだろうし、自動車の運転をコンピュータに任せて安全に電話で会話をすることもできるだろう。また、同じ目標を目指した別の道としては“smart highway”もあるが、何十億ドルも注ぎ込んですべての道路を改良するのと、個々の自動車を徐々にアップグレードして賢い機能を取り入れていくのと、どちらが道理にかなった方法だと思われるだろうか?

(今気付いたが、ドメイン名の中に“dot”という _単語_ を含めた URL で従業員を苦しめるなんて、政府だけにしか考えられないことだろう。もしもそこに勤めていたら、自己紹介をする際に「私は dot dot gov の Jeff です」なんて言わなければならないのだから。)

他にも注目すべきものはいくつかあった。

Vonage ではラップトップ用の $39.99 の製品 V-Phone を配っていた。基本的にこれはただの 250 MB USB フラッシュドライブに 2.5mm のヘッドフォン・マイクロフォンジャックが付いたものだ。電話をかけるために使う Windows ソフトウェアが付属していたが、Mac 版は付属していなかった。(ドライブにはたっぷり空きがあるというのに。)そういうわけでサウンド品質についてはまだコメントすることができない。Mac 用ソフトウェアをダウンロードして 30 日間有効の試用アカウントを使えば試してみることができる。USB ドングルは要らない。Mac のオーディオ入出力もちゃんと動作する。ただし、これは私の経験から言うことだが、Vonage やそれと同種のソフトウェアを使う際には、専用のハードウェアポートがある方が望ましい。

vphone

あなたがまだワイヤレスでない家庭用エレクトロニクス機器をたくさんお持ちなら、そしてあなたが部屋から部屋へと 100 フィート (30 m) ものケーブルを張り巡らすのに飽き飽きしているなら、MoCA (the Multimedia over Coax Alliance) をチェックするのがよい。家庭内ネットワーキングのために既存の家庭内同軸ケーブルを利用することを目指した規格を作っている業界団体だ。

Wacom の出していた $999 の Cintiq 12WX 外部タッチスクリーン・モニタも印象的だった。これを外付けモニタとして Mac に接続すれば、タッチセンサーのタブレットにビデオも表示できるものが手に入る。プロモーションでは、これで Photoshop と Wacom ペンという組み合わせを使ってみせていた。ただし、この 12.1 インチの Cintiq 12WX は外付けコントロールボックスを必要とするので、たくさんのハードウェアを持ち運ぶのが好きな _誰かさん_ みたいなハードウェア狂(2007-02-05 の記事“自分だけの 23 インチ MacBook を作ろう”参照)でもない限り、そう簡単にタブレットのコンピューティングの代用品ができたと喜ぶわけにも行かないだろう。

Cintiq12WX_3

その場で実際に使ってみることはしなかったが、 Moxi のホームデジタルメディアレコーダーシステムの短いデモも印象に残った。Tivo 風の機能に加えて、このハードウェアとソフトウェアの組み合わせはあなたのホームネットワークとの間で幅広い双方向の作用が提供できる。

私は新しく登場した Myvu パーソナルメディアビューワー・ヘッドギアのデモも見逃してしまった。前の記事“CES 2008 1日目: キーボード、電源、めがね、その他”(2008-01-09) で触れた i-Vue のビデオ眼鏡と同様に、これも体に装着して使うモニタのテクノロジーで非常に興味をそそられる。ただ、実際に試してみていないので、装着した状態でこの Myvu ビデオ眼鏡の方がまわりがよく見えるのかどうか確認することはできない。

Myvu-video-eyewear

最後に、この CES でのベスト悪ふざけ賞は、Macworld の Dan Frakes で決まりだろう。私は Zoombak ブースの前で彼に出くわした。このブースでは $199.99 の製品“LoJack for dogs”(実際は“Advanced GPS Dog Locator”(高性能 GPS 犬探知器) という名前だ)のデモをしていた。ポケベル大のこの機器を、犬にでも、スーツケースにでも、その他同じくらいのサイズでどこかへ行ってしまう可能性のあるものに取り付けておけば、行方が分からなくなっても同社のウェブサイトで追跡することができる。

でも、私にはそのことがすぐにははっきりとのみこめなかった。そこで Dan が説明してくれたのだが、彼の説明を聞いて、私はてっきり Zoombak が無料で配っている犬のぬいぐるみがその製品 _そのものだ_ と勘違いしてしまった。つまり、このぬいぐるみの中に GPS 探知器チップが入っていて、これを持ち帰れば自分の子供たちが追跡できるのだと思ってしまったのだ。(正直言って、これはとびきりクールなアイデアだと私は思った。もちろん、親たちが自分の子供の皮下にチップを埋め込んでも何とも思わない時代が来ればそれは行き過ぎだと思うが。)真面目な話、その後私とブースの宣伝担当の人たちとの間でどれほど混乱した会話が交わされたことか!

これは Dan が意図的に私をかついだのか、それとも私が今週あまりにも疲れきっていて彼の完璧に善意の説明を一足飛びに誤った結論に結び付けてしまったのか、私は今でも判断できないでいる。2004 年の Miss June だった彼女と Taser 銃について話した会話を考えれば、おそらく私が彼を責めることはできないのだろう。


TidBITS Talk/14-Jan-08 のホットな話題

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Intuit -- Intuit がユーザーを疎外しているという Rich Mogull の記事を読んで、ある読者はこの会社が Mac に敵意を持っているというのは間違いだと考える。この会社は、口には出さないがすべての顧客を憎んでいるのだ。(メッセージ数 1)

Eudora について質問 -- Eudora を有料モードに切り換えれば、あのたくさんの煩わしいエラーは消えてなくなるのか? それとも、ただ待っていさえすれば問題は勝手に消え去るのか? (メッセージ数 16)

Intuit、QuickBooks の大失敗で Mac ユーザーを疎外 -- Intuit のプログラムで顧客がひどい体験をしたという実例がさらに届くのを見て、ある読者が Mac 用の財務ソフトウェアパッケージを 30 個集めたリストを作ってみた。(メッセージ数 4)

データベースのバックアップと Time Machine -- 巨大なデータベースファイル(例えば Entourage のメールデータベース)をバックアップする際、Time Machine は非常に遅くて非効率的になりがちだ。最近の変更部分だけでなく、ファイル全体をバックアップするからだ。ある読者が、その対策を提案する。それらのファイルを定期的にバックアップはするのだが、Time Machine の一時間ごとのスケジュールを使わないのだ。(メッセージ数 4)

Endnote、Bookends、Sente、Zotero、いやはや -- 高額のアップグレード料金を払ってもパフォーマンスの問題に悩まされるのに嫌気がさして、読者たちが Endnote を使うのをやめて別のプログラムにしようと話し合う。(メッセージ数 3)

Aperture がクラッシュ -- あるユーザーが Leopard にアップデートすると、Aperture がクラッシュするようになってしまった。クリーンなテスト用アカウントでもそうなってしまう。(メッセージ数 1)

新しい Mac Pro は Macworld Expo の前に 8 コアに_ -- 先週発表された Apple のプロ向けハードウェアの技術仕様や発表のタイミングについて読者たちが議論する。(メッセージ数 4)

誰か助けて下さい: MacBook でサウンドの問題 -- MacBook でサウンド出力が止まってしまうのは、いったいなぜ? 読者たちがいくつか修正の方法を提案する。(メッセージ数 8)

Parallels - Mac を Tiger にするとドラッグ&ドロップが壊れる? -- ドラッグ&ドロップで Parallels 環境にファイルのコピーができるという便利な方法が、Tiger では壊れてしまうようだ。ただ、ファイルを移動させるための他の方法はある。(メッセージ数 8)

Time Machine リストアをバックアップ -- Time Machine バックアップを使ってリストアを実行した後、Time Machine は次に動き出した時にまたバックアップの複製を作ろうとする。これではディスク容量を大きく食ってしまう。(メッセージ数 4)

ロケーション対応の印刷 -- Leopard は、あなたの Mac が接続されているネットワークに応じてあなたのいる場所を認識し、自動的にローカルプリンタを使うように切り替えてくれる。ただし、うまく行くのは時々だけだ。もっときちんと動作してくれるロケーション対応アプリケーションは他にないだろうか? (メッセージ数 7)

Mail が遅い -- Leopard 下で Mail のパフォーマンスが悪いと読者たちが嘆く。(メッセージ数 2)

Widget の問題 -- あるユーザーのマシンでは、Dashboard を呼び出してもなぜか Dashboard ウィジェットが現われない。どうすればよいか? (メッセージ数 2)

Amazon MP3、DRM フリー楽曲を得る: では Apple は?_-- Apple にも DRM フリーの楽曲を販売することができるかどうかという Adam の記事に、読者たちが反応を寄せる。Apple はミュージックレーベル各社から排除されつつあるのか? それとも、Macworld Expo をもって iTunes Store がより開かれたものとなるのか? (メッセージ数 3)

新 8800GT ビデオカード -- 先週発表された Mac Pro 各モデル用の新しいビデオカードは、どうやらこの最新の Mac のみで動作し、従来の機種では動作しないようだ。(メッセージ数 1)


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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2008年 1月 23日 水曜日, S. HOSOKAWA