TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#915/18-Feb-08

今週号には3つのテーマがある。Mac OS X 10.5.2 と、iTunes ムービーレンタル、それと Apple ユーザーたちの生活の中で増大し続ける AT&T の役割だ。まず、Mac OS X 10.5.2 Leopard がリリースされたので Glenn がそのあらましを説明し、それから Matt が以前に書いた記事“私が Leopard を嫌う6つの理由”を見直してどこが改善されどこがまだ壊れているかを調べる。次に Glenn は、iTunes ムービーレンタルの新しい方式が、働き過ぎで報われることの少ない人々の階層、つまり小さな子供たちを持っている疲れ切った両親たちにとって、あまりにもその必要とはかけ離れたものだと不満をぶちまける。新たに執筆スタッフに加わった Mark Boszko は、このレンタル期間を規定の 24 時間より長くする方法を検討する。これで Glenn の不満も少しは和らぐだろうか。でも Glenn は Starbucks の店舗内で新たに AT&T が Wi-Fi サービスを提供するというニュースには喜びを隠せない。また、3G セルラーデータ接続のための新しい AT&T ExpressCard も嬉しいニュースだ。そうそう、小さな子供を持つ親といえば、Jeff も何とかそうっと抜け出して Mac の前に座り、Apple の Aperture 2 で何が新しくなったかの記事を書くことができた。

記事:

----------------- 本号の TidBITS のスポンサーは: ------------------

---- 皆さんのスポンサーへのサポートが TidBITS への力となります ----


Apple Aperture 2 を発表

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳:上松慮生 <ryo.uematsu@gmail.com>

1月の終わりの PMA (Photo Marketing Association)会議で、Apertureの新しいバージョンについての言及が無かったことから、写真家たちはアップルの写真管理アプリケーションの計画について心配し始めた。バージョン1.5 が発表されてから 1 年以上経過していることと、Adobe Photoshop Lightroom との健全な競争により、Aperture のメジャーアップデートが出るのはもう遅すぎるとも思えた。

アップルはついに Aperture 2 の枠組みに戻ってきた。新しいバージョンはバージョン 1.5で起こった批判の数々(中でも最も重要な点はパフォーマンスだが)に答えると共にインターフェイスを改良し、さらにいくつかの新しい機能を追加している。

Aperture 2 の多数の新機能のうちいくつかの重要なものはすぐに目に飛び込んでくる。プロジェクト、メタデータ、調整パネルはひとつのインスペクタとHUD(ヘッドアップディスプレイ)にまとめられている。すべてのプロジェクト表示では iPhotoのような画像表示によりプロジェクトのすばやい参照を可能にしている(マウスのポインタをキー写真に重ねると、プロジェクトの他のサムネイル写真を表示します)。パフォーマンスの向上のためにAperture 2 はインポートのときには絶えず RAW ファイルを生成するのではなく、埋め込み JPEG プレビューを使用し、JPEGプレビューを参照するときはクイックプレビューモードを提供する。 RAW のことについて言えば、このバージョンでは色のにじみ補正のためにMoire と Radius スライダーが追加され、Hue Boost といった RAW 2.0 の機能がサポートされる。さらに、最新のMac OS X 10.5.2 と 10.4.11 アップデートのおかげで、最新のデジタルカメラの RAW 出力をサポートする。

画像処理のためには、新しいリペアブラシ、クローンブラシ、ヴァイブランシー調整ツール、ビネットコントロール、そして、画像のホットあるいはコールド(真っ白または真っ黒)な箇所を表示する機能がある。その他の改善点としてはカスタマイズ可能なキーボードショートカット、直接接続撮影機能(カメラを直接つないでAperture に取り込む)、エプソンとキヤノンの 16 ビットプリンタドライバのサポート、GPS データを含んだ画像と Google Maps の統合、調整パラメータといったより広範な基準による画像検索、そしてそれ以外にもまだたくさんある。

Aperture 2 は $199 でもう入手可能であり、バージョン 1.0 以降を持っている人なら $99 でアップグレード版が購入できる。30 日限定の試用版が 77.2 MB のダウンロードファイルで提供されている。もし Aperture 1.5 がアプリケーションフォルダに入っているなら、試用版をインストールする前にそのファイルを移動もしくはそれの名前を変える必要があり、次回起動時には1.x のシリアルナンバーを再入力する必要があるかもしれない点に注意すべきである。


AT&T、MacBook Pro に ExpressCard 3G セルデータオプションを追加

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

これまで MacBook Pro のオーナーたちは第三世代 (3G) セルラーネットワークを使うためには USB ベースのモデムに頼る必要があることが多かった。確かに Nova Media から出ている ExpressCard HSUPA を使うという方法はあって、これがあれば MacBook Pro 上で AT&T の米国での 3G ネットワーク(およびヨーロッパでの多数のネットワーク)が使えたが、その価格は 299 ユーロ ($438) もした。ExpressCard の利点は実際そのフォームファクターにあり、その機器ではアンテナ以外の大部分が隠されている。時には外部ブースターが取り付けられることもある。

AT&T は今回、機器メーカー Option 社製で全く同じもののように見える製品を導入したが、これは完全に資金援助を伴った支配下のものだ。AT&T の GT Ultra Express は Mac OS X 10.4.10 かそれ以降で動作し、AT&T のデータサービスを二年間購読してさえいれば(二件の払い戻しを受ければ)何も費用はかからない。その購読は使用無制限で月額 $60 となっている。ただし二件目の払い戻しは期間限定のキャンペーン用のものなので、その期間が過ぎれば同じ契約条項でカードに $49 かかる。

LR_GT_Express_401

それとは全く無関係な動きだが、時を同じくして Nova Media は同社の launch2net ソフトウェア (75 ユーロ/$110) が他の無料でダウンロードできる Mac OS X ソフトウェアに比べてより多くのコントロールをこれらの AT&T の「新しい」機器に対して提供できると発表した。この Nova Media のソフトウェアは帯域幅のレートや使用状況をモニターする統計情報を提供するとともに、さまざまの接続コントロールも提供する。

l2n_main_back_en

これは良いタイミングだ。これらの新しいカードの登場と、AT&T によるアップロード速度の向上と米国内 3G ネットワーク展開への 80 都市の追加(これで 350 都市が対象となる)に関する発表とが時を同じくしたからだ。(2008-02-06 の記事“3G iPhone への道に更なる里程標”参照。AT&T のネットワークに使われるさまざまなテクノロジーについての説明は 2008-02-12 の記事“Starbucks が AT&T と淹れた契約に Apple の香り”を参照。)

この GT Ultra Express カード、ならびに同じ価格の PC Card 版である GT Ultra カードは、3G 用には tri-band、EDGE 用には quad-band だ。そのため、AT&T はこれが 140 ヵ国で動作すると言っている。ただし、国際ローミング料金には注意すること!

Mac OS X ソフトウェアは一つのバージョンが 10.4.10 用で、もう一つのバージョンが 10.4.11 および 10.5.0 かそれ以降用となっている。いずれも、AT&T のサポートサイトからダウンロードできる。


Leopard、10.5.2 の出荷でベータから抜け出す

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

こんな見出しを掲げたからといって、つらく当たるつもりもないのだが、Apple による Mac OS X 10.5.2 のリリースは、私にとっては Leopard の本当の出発点となった。もっとも、それを確かめるためにテストをする必要があるだろう。私は自宅の古い PowerBook G4 で常に Leopard を使っているが、これまでが荒削りであったために、夢中になることはなかった。

私は Leopard のベータテストもした。10.5.0 リリースの際には、最後の最後で多くの修正が加えられて適切に動くようになったが、10.5.0 や 10.5.1 を使っていると、時折、これがベータプログラムの延長であるような気がした。もっともはなはだしきは、起動時に Setup Assistant を回避できないことに起因する既知の問題のせいで、私は Leopard を再インストールする羽目になった(2008-02-01 の "一つのファイルが欲するもののせいで、オペレーティングシステムを失う" 参照)。10.5.2 になって、私が仕事で使っているメインのコンピュータをアップグレードする準備が整ったのかもしれない。

10.5.2 リリースは Software Update 経由で、10.5.1 を 10.5.2 にアップデートするユニバーサル増分リリースとして入手できる。サイズは私のPowerPC ベースの PowerBook で 180 MB だったが、Apple によればマシンによってサイズは変わる。執筆時点では、Apple のサイトには増分アップデートが用意されていない。ユニバーサル Combo アップデートは 10.5.1 と 10.5.2を合わせたもので、デスクトップ版は 343 MBLeopard Server 用は 382 MBだ。49 MB の Leopard Graphics Update 1.0 もインストールできるが、これは 10.5.2 をインストールしてコンピュータを再起動した後でなければインストールできない。グラフィックアップデートには、安定性と互換性を向上するという、何の変哲もない説明がついている。

Apple は、10.5.2 のリリースによって、私やほかの評者、そして実際のユーザの大勢が不満を述べていたことの多くを修正した。加えて、10.5.2 によって、それ以前のリリースにあった問題を回避するために開発者や Terminal レベルの賢者たちが作成したユーティリティやハックを使わなくてもすむようになった。

このアップデートはインストールするのにやたらに時間がかかる。私のPowerBook G4 では 30 分近くもかかったし、なぜかは分からないが、ラップトップは完全に充電されていて電源に接続されていたにもかかわらず、電源が切れた。起動を完了するには、そこからさらにまるまる 10 分かかった。

さて、長大なリリースノートを、大きなことから順に見てゆこう。

Setup Assistant とログインの問題を修正 -- Apple のリリースノートはかなり簡潔だが、多くを物語っている。「Mac OS X 10.5 を起動するたびに、『設定アシスタント』が予期せず表示される問題を解決しました」というのが1つ、そしてもう1つは「ログイン時の安定性とパフォーマンスを改善しました」だ。

最初のものは私が経験した問題を解決する。特定の設定ファイルが正しく更新されず、そのために Setup Assistant が起動時に繰り返し立ち上がるというものだ。Apple は Safe Boot を使ってこの問題を修正する方法をテクニカルノートに掲載していたが、それは私の場合うまくゆかず、同じ問題を報告してくれた読者も何人かいた。ほかの多くの人にとっては、Apple の方法で確かに問題が修正された。

このリリースノートから明らかなことは、コンピュータの状態、特にアップグレードに失敗したかどうかについて、ログインルーチンがより詳細に確認するようになったということだ。その点こそが無限 Setup Assistant バグの根源だった。

AirPort 着陸装置をやっと格納 -- Apple やそのほかのサイトの掲示板で、多くの人が、Leopard を使えば使うほど Wi-Fi ネットワークが不思議にもどんどん遅くなるという声を寄せている。私にはまだこの原因を見つけたり特定したりすることはできていないが、Apple は 10.5.2 で「接続の信頼性と安定性が向上し」「特定のカーネルパニックを解決し」たと約束している。これが言葉通りであることを願おう。

リップスティックに変更 -- Apple の2つのうわべ飾りが、TidBITS 編集者を含め多くの人をうんざりさせていた。Matt Neuburg の記事 "Transparent Menu Bar, Die Die Die!"(2007-11-16)の題名にある「死ね、死ね、死ね!」というのは、彼の感情を直接表したものとしてはおそらく不十分だろう。Matt、本当の気持ちを知らせてくれたまえ。

半透明のメニューバーというのは、アルファ透明度を見せびらかすという心得違いの努力か何かだろう。これが正確に何なのかは分からないが、これによってメニューバーが使いにくくなったことは間違いない。10.5.2 には、この機能を無効にするチェックボックスがある。System Preferences、Desktop &Screen Saver、Desktop タブの順に選択して、Translucent Menu Bar のチェックをはずす。ああ、この方がずっとよい。

もう1つうんざりさせられた変更は、ドックに入れられたフォルダをクリックしたときに単純に項目をリストすることができなくなったということだ。このStacks という機能は、すべてを一目で見るためのものだったはずなのだが、フォルダも書類の山として表示してしまい、たくさんのものを見渡すためにはどのモードにしても効率的な方法とはいえなかった。(Matt がこれについての不快感を、2007-10-26 の "私が Leopard を嫌う6つの理由" で、やや穏やかな言葉で説明している。)

10.5.2 リリースは、Tiger のよい点を回復した。フォルダを(スタックとしてではなく)そのままフォルダとして表示し、その中の項目をリストとして表示するオプションが加わったのだ。Tiger 風モードでも、項目を種類で並べ替えたり、追加日、変更日、作成日で並べ替えたりすることができる。

folder_options_1052
folder_list_1052

いや、本当に私の Mac へ帰ろう -- 私が Leopard で特に注目しているのはBack to My Mac だ。これは風変わりに動作するか、人によってはまったく動作しない。特定のルータとインターネット接続業者の設定を必要とするためだ。(私はこれについて 2007-11-17 の "Back to My Mac のための風穴を開ける" で書いた。)

バージョン 10.5.2 は、より多くのルータをサポートし、互換性が向上したと書かれているが、これが現実の使用にどのような意味を持つのかはまだ明らかでない。読者の皆さん、どうか報告を寄せてほしい。

細かな物事 -- Time Machine は、システムメニューバーに、バックアップのステータスを表示し、最終バックアップの日付と時刻を示し、バックアップをすぐに開始し、環境設定パネルを開くメニューを表示するようになった。Option キーを押しておくと、メニュー項目が変わって、ほかの Time Machineバックアップディスクを参照することもできる。もし最終バックアップが数日前なら、それを強調するため、メニューのアイコンに感嘆符が表示される。

10.5.2 にはセキュリティに関連した修正も多くあり、それらは非常に重要なので、Apple は Mac OS X 10.4 Tiger ユーザ向けにも Security Update 2008-001 として用意した。これは Software Update 経由で、または PowerPCベース Mac 向け(16.7 MB)および Intel ベース Mac 向け(28.8 MB)の単体ダウンロードとして入手できる。

ほかにも細かなバグ修正が数多くあり、Apple はリリースノートに 100 を超える変更点を挙げている。これによって、それぞれのプログラムやサービスでクラッシュを引き起こしていたりうまく動いていなかったりしていた多くの細かな点が改善されるはずだ。リリースノートを読んで、あなたを悩ませていたことが直っているかどうか確かめることには価値がある。

しかし、どうか Apple よ、「他社製アプリケーションを実行する際の全般的な安定性が向上しました」という以上の詳細を私たちに伝えてくれないだろうか。ぜひともお願いしたい。「全般的な安定性」なるものが「一般保護違反」と一緒に街を歩いているのを見かけたときには、私は喜んで彼に挨拶しよう。

まだ直っていないこと -- Matt は、2008-02-12 の比較記事 "Leopard 10.5.2: TidBITS の不平を、Apple が聞き入れた、少しだけ" で、彼が嫌っていた6つの点のどれが直ったのかを一つ一つ検討している。

彼がもともと言及していなかった項目が1つあって、Jeff Carlson と私の両方が、そのことについての Apple の説明を聞いたときに耳を疑った。iCal のカレンダーイベントについて詳細を表示して編集するには、イベントをダブルクリックしてポップアップメニューを開く必要があるというのだ。Tiger では、iCal に Info パネルがあり、現在選択されているものがカレンダー全体であれ個々の約束であれ、何であってもそれに応じた詳細が表示され、ローカルのカレンダーであれば編集することができた。この「バグ」はまだそのままだ。


Leopard 10.5.2: TidBITS の不平を、Apple が聞き入れた、少しだけ

  文: Matt Neuburg <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

最近出た 10.5.2 アップデート(Glenn Fleishman の記事“Leopard、10.5.2 の出荷でベータから抜け出す” (2008-02-11) を参照)で、Leopard はどの程度私の記事“私が Leopard を嫌う6つの理由”で指摘した批判に対抗してくれたのだろうか。最初のリリースから四ヵ月近くを経て、Leopard はその嫌な点を少しでも減らし、(Glenn がいみじくも表現したように)一部の人にとってはまるで公開ベータ版であるかのように感じられていた状態からゆるやかに脱出することができたのだろうか?

その答はイエスでもありノーでもある。別の言葉で言えば、6つのうち2つは合格といったところだろうか。まあ、6つのうち2つならば悪くはない。いや、完全に正直な気持ちで言えば、その6つのうち1つ(つまり Classic の喪失)は全く望みがないと私も思っていたのだが、それでもまだ残っている3つのうち1つはあまりにも強烈にひどいものなので、依然として Leopard は使っていて苦痛を感じるしろものだ。その上、あの“6つの理由”記事でわざわざ取り上げるほどでもないと思っていたいくつかのバグの中にも、やはりまだ残っているものがある。

喜ばしき不透明性 -- まず、今回修正された2つの点から始めよう。第1に、メニューバーの半透明性だ。私のコンピュータのデスクトップは私自身が撮影した写真で飾られているので、メニューバーが半透明になったためにメニューバーがただただ読みにくいだけのものとなってしまっていた。メニューバーに書いてある文字が、その後ろから透けて見える写真の色模様に埋もれてしまうからだ。私はこの災難をただ耐え忍ぶしかないと覚悟を決めて永遠とも思える長い時間を過ごしたが、その後、頭の良いハックが発見されてこの半透明なメニューバーを無効にすることができるようになった。この素晴らしい偉業を、私は記事“Transparent Menu Bar, Die Die Die!”(2007-11-16) で報告し讃えた。けれども 10.5.2 になって、もっと簡単な手段でメニューバーの半透明性がオフにできるようになった。チェックボックスが提供されたのだ! そう、今はそういう設定項目が実際にある(システム環境設定の「デスクトップとスクリーンセーバ」パネルだ)が、そもそもこれは最初からそうなっているべきだった。

私があの“Die Die Die!”記事で報告したハックを実際に適用した人は、忘れずに今回の 10.5.2 アップデートに先立ってまずそのハックを取り除いておく必要がある。そうでないと、システムを不快な形で正常でない状態に帰してしまう可能性が僅かながら残る。取り除く方法はあの記事でも述べておいたが、念のためにここでも繰り返しておこう。以下の3行を使う:

sudo defaults delete
/System/Library/LaunchDaemons/com.apple.WindowServer
'EnvironmentVariables'

これを TextEdit にコピーしてから、注意深く行の最後の Return 文字を削除してこれらの文言がすべて1つの行に収まるようにする。ただし語と語の間には空白文字を入れる。(つまり、“delete”の直後と“WindowServer”の直後とにはそれぞれ半角空白文字が来て、その後には改行文字が無いようにする。TextEdit のウィンドウをずっと横に長くして、すべてがちゃんと1行になっていることを確かめるとよい。)それができたら、その行をコピーして、それを Terminal にペーストする。必要ならば、Return を押す。要求されればパスワードを入力する。その後即座に、コンピュータを再起動する。これでOKだ! その後ならば、安全に 10.5.2 がインストールできる。

Dock、Dock、Dock ちゃん -- 次に、Dock の中のスタックについて述べよう。この“スタック”というのは Dock に新たに加わった不愉快な挙動だ。旧来の快適な挙動とは、Dock に置いたフォルダはちゃんとフォルダのように見えて、そのメニューにはそのフォルダの内容の階層的な表示が含まれ、またそれをクリックすれば実際のそのフォルダが開くというものだった。私はこの旧来の挙動を取り戻す回避策を記事“Quay、Stacks をペシャンコに”(2007-11-27) で書いた。けれども今回の 10.5.2 アップデートのお陰で、その回避策はもはや不要となった。Dock 中のフォルダが、再びちゃんとフォルダとして挙動するようになったのだ。すでに Glenn が説明してくれたように、Dock 中のフォルダを Control-クリックすると階層メニューが現われ、Sort by Name (名前順に表示)、Display as Folder (フォルダとして表示)、View Content as List (内容をリストとして見る) という選択肢から選べるようになった。これで、フォルダはフォルダとして見えるようになり、クリックすれば(マウスボタンを押し続けなくても)その内容の階層メニューが開き、Command-クリックすれば実際のフォルダが Finder で開く。これは Leopard 以前の挙動と厳密に同じではないが、それでもちゃんと用が足せる。どうも、本当にありがとう。

さて、以上が“6つの理由”のうち今回の 10.5.2 アップデートで修正されたたった2つだ。ピカピカ光る、反射した影を伴った Dock は依然として公式には修正されておらず、あなたがスクリーンの下の縁に素敵な、暗色の、読みやすい、コンパクトな、反射しない Dock を欲しいと思うならば、私が“6つの理由”記事で紹介したハックを使い続けなければならない。非常に小さくて読みづらい Finder サイドバーの中のテキストやアイコンも、依然として非常に小さくて読みづらく、これには回避策が見当たらない。そして最後の1つ、あのどうしようもなくひどい、フラストレーションだらけの、何を考えて作ったのか正気とは思えないような Help ウィンドウは、やはり依然としてどのアプリケーションにも属さずにすべての上にフロートし続け、知りたいと思う肝心のアプリケーションの部分が見えるのを妨げている。これは Leopard 全風景の中で引き続き一大汚点だとしか言いようがない。

それらに加えて、たくさんのバグがまだ修正されずに残っている。例えば、私のコンピュータがスリープから目覚めた後、ワイヤレスネットワークに自動的に接続してくれるのか、それとも手動で、再起動やその他の強硬な手段に頼ることなしに、接続することがそもそも _可能なのか_ どうかは、引き続き全くの行き当たりばったり、予想がつかない。その他にも、私がアップデート後の Leopard をもうしばらく使ってみないと修正されているかどうかが分からないような状況不明のバグがたくさんある。例えば、しばらくの間コンピュータを使わずに放っておいた後でテキストフィールドの中に最初に押したキーがランダムに無視されることがある問題が修正されているかどうか、Spaces が時折不合理な挙動をしてウィンドウが消えてしまったり別の space に切り替えた際に正しくないウィンドウが前面に来たりすることがある問題がまだ残っているのかどうか、それからいくつかのアプリケーション、例えば Photoshop Elements などが引き続き実用的に使い物にならないのかどうか、そういった問題については、もうしばらく調べてみないと判断がつかない。当然ながら、皆さんもきっとそれぞれに気になっている Leopard のバグがあって、今回のアップデートをインストールする際には懸命に念じる気持ちを込めながら指を交差させておられることだろう。[訳者注: 上記の「最初に押したキーがランダムに無視されることがある問題」に対処したアップデータが 2 月 19 日に Apple から出ました。]

さて、この記事を何としても明るい話題で終わらせようと必死になって探した結果、私は最後にメニュー自体も以前に比べてはっきりと透明度が減ったことを指摘しておきたい。これは間違いなく非常に嬉しい改善点だ。また、Time Machine のステータスメニューが装備され、そこには現在および最近のバックアップ状況に関するいくらかの情報が表示されるとともに、2つのメニュー項目、Back Up Now と Enter Time Machine が付いたので、これでめでたく安心して Dock から Time Machine アイコンを取り除くことができるようになった。これまでこのアプリケーションの Dock メニューが提供していた機能に、ちゃんとアクセスできる保証が出来たからだ。


Linotype FontExplorer、10.5.2 で壊れ、もう修正された

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

もしもあなたが Linotype のフォント管理ユーティリティ FontExplorer X for Leopard を使っていて、Mac OS X 10.5.2 アップデートをインストールしたなら、Word と InDesign が起動時にハングしてしまうという問題に遭遇したかもしれない。当然ながら Linotype のプログラマーたちは必死で Leopard 互換性を確保するアップデートに取り組んでほぼ完成にまでこぎ着け、10.5.2 の登場後間もなくバージョン 1.1.3 をリリースした。このバージョンでこのプログラムは Leopard とより良く働くようになり、あの 10.5.2 での問題もうまく修正できているようだ。TidBITS 読者 Peter Trinder が電子メールで知らせてくれたところによれば、バージョン 1.1.3 アップデートによって彼の Word と InDesign での問題は解決したとのことだ。

iTunes、子供の親にはレンタルが不向き

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Steve Jobs が Macworld Expo の基調講演で Apple がダウンロードによるムービーレンタルを提供するという発表を聞いた時、私の最初の反応は、こりゃいいぞ、妻と私はやっとこれで、Netflix 購読で実際に映画を観ているふりはしていても現実には借りたディスクが毎度ただ埃をかぶっているだけ、という状態から脱することができるぞ、というものだった。(2008-01-15 の記事“iTunes ムービーレンタルと Apple TV 第2章”参照。)でも、その条項、つまりダウンロード後 30 日の期間内ならば好きな 24 時間の枠を選んでその間だけ(何度でも無制限に)観ることができるという条件を聞いた途端に、ちくしょう、これじゃ俺たちには使えないじゃないか、と思った。

その日他の人たちからも同じ意見が聞こえていた通り、そもそも映画を最初から最後まで一気に観るというのは若くて独身の人たちの専売特許で、小さな子供たちとか、もう少し成長した子供らを持っているような人たちには、到底不可能なことだ。二人の子供たち(10 ヵ月と 3 歳半)を持つ親として、妻と私は毎晩ベッドの中にぶっ倒れるより前に自分たちの時間が持てるとしてもそれはせいぜい 2 時間から 3 時間までで、2 時間の映画を観るとしたら最低でも 2 晩か 3 晩はかかる。

私の妻がずばりと言い当てた通り、私たちは Apple のターゲットとする視聴者層ではないのだ。

便宜のために、Apple は映画業界がすべてのオンデマンド・レンタルに課した奇妙な条件を受け入れた。一般的に映画はまず劇場公開され、次に DVD になり、それからホテルでの有料視聴に回され、それから HBO などの有料テレビ放送、そしてずっと後になってから一般のテレビで(通常コマーシャルが入って)放映される。デジタルダウンロードはこの枠組みの中では有料視聴に区分されるので、さまざまの制限事項や奇妙なライセンス慣行が付いてくる訳だ。

これらのリリース区分はそれぞれに、通常それぞれの区分において最大の収益をあげられることを唯一の目的に設定される。ここ数年来、劇場公開と DVD リリースのタイミングの差はますます短くなりつつあり、かつて数カ月の差であったものが今ではほんの数日ということもある。有料視聴のためのリリースは、通常 DVD が店頭に並んでからおよそ 30 日後だ。(ブラックアウト期間が設定されることもある。最大手のケーブルテレビなどで流される映画は、それに先立って時には一年間も有料視聴やダウンロードサービスで利用できないこともある。)

デジタルダウンロードに通常は「特典映像」の類いが何も付かないのもそれが理由の一つだ。技術上の理由もあろうし、ファイルやダウンロードのサイズの問題もあろう。でもダウンロードに対するライセンスの仕方が例えば DVD に対するものとは違っているというのも大きな理由なのだ。ホテルでの有料視聴でもディレクターのコメントが付いたりノーカット版が流されたりすることはないし、iTunes Store、Vudu、Amazon Unbox、あるいは CinemaNow などいろいろなサービスで入手したものも同様だ。

誰もが知っているように、Apple が業界をリードして実質的にいろいろな条項を決めてしまうことは多い。iTunes の楽曲についての権利は当初最大 3 台までの認証されたコンピュータのみで演奏でき、同じプレイリストで最大 10 回までしか焼くことができなかった。その後これは 5 台のコンピュータと同じプレイリストで最大 7 回までに変更された。そして現在は、保護の付かない楽曲の販売に向けた大きな動きがあり、Apple と Amazon がそうした楽曲の最大の収集者となるべくつばぜり合いを続けている。(2008-01-10 の記事“Amazon MP3、DRM フリー楽曲を得る: では Apple は?”参照。)

ちなみに、この「24 時間」というのは厳密に正確な数字ではないということを私たちの同僚の二人が発見した。つまりそれは Apple の持つ交渉力の強さを示しているのかもしれない。Mark Boszko の記事“iTunes 映画レンタルを 24時間を越えて延長する”によれば、サポートされたその機器でその 24 時間が終了するより前に再生を一時停止すれば、24 時間が過ぎた後でも再生を再開することができるという。だから、少なくとも 23 時間 59 分で時間切れとなってその度に再度購入して _かつ_ 映画全体を丸ごとダウンロードし直さなければならない、というほどまでには事態は恐ろしくないということだ。

(ついでに不満をぶちまけておくと、2006 年にリリースされ 2007 年半ばまで販売された 30 GB と 80 GB の第 5 世代 (5G) iPod では、ムービーレンタルの再生ができない。できるのは 2007 年 9 月以降の機種、nano、classic、それに touch のみだ。これは公式ページ“iTunes Store movie rental usage rights”に記載されている。iPod 各機種の Apple による一覧ガイドを参照されたい。この事実に気付かなかったのは、私の一人の友人、彼の娘の 3 歳の誕生日のために“Herbie”をレンタルで入手して彼女の 30 GB 5G iPod で見せてあげようとした友人だけではなかった。彼が問い合わせをした Apple 技術サポートもまた、彼女の iPod がどの機種なのかという質問を思い付くまでにとてつもなく長い時間を要したのだった。その iPod も、これがサポート外の機種だという情報を彼女に知らせてはくれなかった。ただし、ファームウェアをどこかいじれば知らせてくれるようにはなるのかもしれないが。)

願わくは、Apple がおよそ 150 本のレンタル用映画という品揃えの現状を脱して、他のサービスが提供しているような何千本というレベルに達したなら、きっとそういう販売業者たちの中で最大ともなることだろうし、そうなればより良い条項を求めて交渉を進めることもできるだろう。私としては、映画の再生に 48 時間とか 72 時間の余裕を与えてくれるのならば有効期限が 15 日間あるいは 10 日間という短さになっても構わないと思う。あるいは 72 時間の余裕を得るために 50 セントの追加料金がかかっても構わない。あるいはもっと変な条件、例えば「限定回数の巻き戻しを許して一度限りの再生のみ、ただし 30 日の間は一時停止の回数無制限」のようなものでもいっこうに構わない。だいたい、映画を「何度でも無制限に」観る必要のある人なんているのか?

それはそれとして、私にはっきりと言えるのは、もしも Apple が Netflix のシェアを食いちぎって他のサービスと対等につばぜり合いをしたいのならば、ただ単に Apple TV とポータビリティを提供しただけでは視聴者層全体を惹き付けたことにはならないということだ。私と同様の立場の親たちは何百万人もいる。そして、妻も私も、自分にも引き金を引くチャンスが来ることを、今か今かと待ち構えているのだ。


iTunes 映画レンタルを 24時間を越えて延長する

  文: Mark Boszko <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>

最初に、iTunes Store から出された Apple からの新しい映画レンタルオプションについての概観 ("iTunes ムービーレンタルと Apple TV 第2章" 2008-01-15 参照)。映画レンタルの経験は、例え Apple TV が無くとも良いと言える。その解像度は HD ではないにしてもピクセルサイズから言えば DVD 標準よりもほんの少し良い - 私の見た一つのフィルムは 933 x 470 ピクセルであり、しかも全部が画で黒い空き空間なしである。残念なのは、これが低いデータレートの H.264 コーデックで高度に圧縮されていることで相殺され、この映画は解像度の割にはちょっとソフトに見えた。(私は、我々非-Apple TV オーナーは HD 度に関してなぜ冷たくあしらわれているのか知りたいと思っているが、きっと映画会社側での違法コピーリスクに対する思い込みと関係しているに違いないと私は確信している。) しかしながら、レンタルの手続きそのものは面倒さも無く期限切れとなるまでの残り時間も iTunes の Rented Movies セクションに明確に表示される 。

携帯機器との (少なくとも私のテストした iPhone では) 転送のやり取りも、その機器用のあなたのメディア同期設定の Movies タブの中に明確に表示される。唯一経験した痛みは、ほぼ 1 GB のファイルが USB 経由でコピーされるのを待つことであった。これはその携帯機器から Mac へ逆転送する時ですらも同じである。

使いやすさの一つの例外をあえて挙げれば、あなたのレンタルには Front Row からは到達出来ないことであり - あなたの Mac mini ジュークボックスから大画面で見たい場合は、まず iTunes で再生を始めそれから Command-F を押して全画面モードに変えなければならない。それだけではない、映画が終わっても iTunes は自動的に全画面モードから戻ってはくれない - クレジット表示が終わった後の真っ黒のスクリーンのままじっとしているだけで、通常のウィンドウに戻るにはあなたが Escape を押さなければならない。しかしこれは些細な苦情に過ぎない。

レンタル期限ウィンドウを見通す -- 私は数人の人が最低でも 27時間のウィンドウが必要だと苦言を呈しているのを聞いたことがある。その理由は、夜の 9時に借りた映画を見始めたとしても何らかの理由で (子供とか、睡眠が必要だとか) 中断せざるを得ず、そしてもう一度見られるようになったのは結局次の日の夜の 9時で、その時は時既に遅しで期限切れとなっているというような状況があるからだという。この問題を検証してみるため、私は借りた映画を 24時間のレンタルウィンドウの期限切れ約 30分前に二回目を見始めた。Glenn Fleishman がこの問題について "iTunes、子供の親にはレンタルが不向き" (2008-02-04) でもっとブツブツ言っている。

映画を見始めて優に 70分は経過したが、それでもまだ続いている。と言う事は、映画を見始めるまでに 24時間あるということなのか?そして一旦見始めれば、それが終わるまで見続けられるということなのか?途中で止めたり或いは巻き戻ししようとしたりすれば、期限切れとなるのか?これらは皆良い質問である。兎に角取りあえずこの映画を最後まで見させてくれるのか見てみることにしよう...

素晴らしい。映画の最後まで見ることが出来た、クレジット表示等々全て、そして通常の様に真っ黒なスクリーンで止まった、如何なる警告も出てこない。私が全画面モードを解除するために Escape を押したところで、もし映画に戻らなければ、映画は消去されますという警告のダイアログが出てきた。言葉を変えれば、映画を見続けることで 24時間のウィンドウを越えることになっても問題なく最後まで見終えることが出来たのである。

iTunes-rental-stop-resume

次は別の映画で、映画を途中で止めて 24時間のレンタルウィンドウが閉じてしまった _後で_ それを再開できるのかという問題を試してみた。結果は、レンタルが期限切れとなる _前に_ 止めるのであれば、その途中で止められた映画に期限時間後でもアクセス出来るのであるが、その映画のウィンドウが開いたままであればという条件が付く。このウィンドウを開いたままにするということは、その映画の再生を再開するのを選択するまでは iTunes を他のメディアの再生には使えないということであるが、開いたままであれば好きな時に映画を再開して見続けることが出来る。しかしながら、一旦終了してしまえば、本当にそれまでである、iTunes はそのファイルを消去してしまう。

iTunes-rental-ended

もし期限切れとなった後にもう一度止めようとすれば、映画は止まることなく継続し iTunes の方であなたのレンタルは期限切れとなったので、選択肢は再開するかレンタルを削除するかのどちらかですというダイアログを示してくる。しかしながら、期限時間が過ぎた後でも再生中の映画を巻き戻すことは出来るので、鑑賞時間を多少延ばすことは出来る (或いは、期限時間後の鑑賞途中でトイレに行きたくなった場合にも元に戻れる)。

Macworld の Chris Breen も TV 再生の付いた 3G iPod nano にレンタルを転送した場合は同様の鑑賞時間延長が出来ることを発見している。それなら同じことが他の iPod/iPhone でも出来るのではないかと思われるかもしれないが、聞く所によると 5G iPod が映画レンタルに対応していないのはレンタルを延長するために時計をリセットすることが可能だからだと言う (これは iTunes では出来ないらしい)。

これら全ての結論は、Apple はとも角納得の行くユーザー経験を提供しようと一生懸命になっている様に思えることである。一方でレンタルしたものを見られる時間を制限したいという要求も満たさなければいけないわけで、これは映画会社から iTunes を通してそのコンテンツを見られるようにするライセンスを得るのに必要な何らかのものという意味なのであろう。Apple がなぜこの動作を書いたものにしていないのかについては、少なくとも Knowledge Base の記事の中に記載していないのがなぜかは、読者のための宿題として残しておく。

[Mark Boszko は放送テレビ編集者で、映画狂、そして Mac 中毒者でもある。Washington, DC 郊外の Maryland に在住。彼の "有り余る余暇時間" に、ポッドキャストのやり方楽しい技術編 HowTube と、技術とメディアニュースの活発な隔週ディスカッション BeerMediaTech を主宰している。]


Starbucks が AT&T と淹れた契約に Apple の香り

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

私は決してぶどう酒マニアではないが、ワインは好きだ。専門用語の oaky、brawny、tannic といったものをマスターしたことはないが、それでも私は香りを吸い込んむごとにそこにフルーツの香りの感触を感じ取ることはできる。Starbucks が店舗内の Wi-Fi プロバイダをこれまで長年パートナーであった T-Mobile から AT&T に切り替えるという最近の発表を聞いた時も、私はそこにはっきりと Apple の香りを感じ取ることができた。(このイベントを私が取材して書いたものは、私の Wi-Fi Networking News サイトでも、また 私が The Seattle Times に投稿した記事でも読むことができる。)

実際、ここには噂の 3G iPhone が一つの役割を果たしているのだと私は思う。また、3G iPhone がデビューする際にはもっと大きな筋書きの一部となって、そこでは Starbucks の店内で AT&T の新しいネットワークを使って映画をダウンロードするというようなことも含まれてくるのではないだろうか。そうだとすれば、3G iPhone のデビューは 2008 年の 3 月から 6 月の間ということになる。まず最初に、少し説明させて頂こう。

AT&T は Starbucks に何百万という購読者をもたらす -- この契約によって、米国内に 7,000 店ある Starbucks の直営店舗の Wi-Fi に、何ら追加のコストをかけることなく 7 百万人の AT&T DSL および U-Verse 光ファイバー購読者(すべての DSL 顧客は 1.5 Mbps かそれ以上の下り方向接続速度を持っている)と、AT&T から遠隔アクセスサービスを受けている 5 百万人のビジネス顧客たちがもたらされることになる。また、Starbucks Card(同社の IC チップ付きカード)を使って何かを購入する度に、その後 30 日間にわたって毎日二時間ずつの無料 Wi-Fi 利用が付いてくる。

その都度払いのサービス価格は二時間で $3.95 となり、これは現行の T-Mobile での一時間 $6.00 あるいは一日 $10.00 に比べて値下げと言えるだろう。

月ぎめの無制限サービスもあるが、これには少し説明が必要だ。AT&T は そのホットスポットネットワークを Basic と Premier の二つのレベルに分けている。現在 Basic ネットワークには McDonald (8,500 店舗)、Barnes & Noble、いくつかの空港でのものなどがあり、Starbucks もこのレベルに加わることになる。条件を満たす DSL およびすべての光ファイバー顧客は、無料で Basic サービスが受けられる。

Premier レベルでは米国内で 1,000 カ所近くのロケーション、例えばホテルや、他のプロバイダが運営している空港、コンベンションセンターなどと、それに加えて 53,000 カ所の海外のローミングロケーションへのアクセスが得られる。Premier の価格は月額 $19.95 だが、条件を満たす DSL および光ファイバー顧客ならば追加の月額 $9.95 を払うことで Premier にアップグレードできる。

Boingo Wireless のようなアグリゲータのホットスポットサービスで既に AT&T との間でローミング関係を持っているところの講読者も、やはり追加のコストなしで Starbucks でのアクセスが得られる。Boingo は $21.95 で無制限の米国内アクセスを提供しているが、これには事実上ほとんどすべての国内の空港や何万というその他の国内ロケーションが含まれるので、最高のお買得と言えるだろう。(Boingo はそのソフトウェアをまだ Leopard 用にアップデートしていないが、同社の広報担当者が数ヵ月前私に語ったところによればほとんどすべての Boingo パートナーロケーションで Boingo 認証を伴うウェブページログインができるとのことだ。)

このキャンペーンはいくつかの大都市において 2008 年の第二四半期に始まり、その後年内ずっと引き続いて拡大して行く予定だ。(この協定が実施されるのは米国法人所有の Starbucks 店舗のみであって、空港のキオスクや、例えば Barnes & Noble のような場所にあるライセンス提携店などには適用されないし、また国外の Starbucks 店舗において T-Mobile と契約しているような場合にも適用されない。)

Starbucks が公の場で T-Mobile に対する不満を表明したことは一度もない。T-Mobile は 2002 年の初頭に破産した会社の資産を買い取って Starbucks の Wi-Fi 増築を引き継いだ。明らかに Starbucks は既存の T-Mobile HotSpot 講読者たちが AT&T への切り替えの際に接続できなくなるような事態が起こらないよう万全を尽くす努力をしている。T-Mobile データ購読をしている人で、その契約に Wi-Fi が含まれている人、あるいは特別のハンドセットを用いて Wi-Fi・セル両用プランを契約している人はすべて、どこの Starbucks ロケーションにおいても無制限の長期間アクセスが享受できる。

おそらく実際の問題は、T-Mobile 側が Starbucks に対して何ら特記すべきものを申し出ることができず、Apple との関係を何ら深化させることができなかったということなのだろう。Apple がその発表の中で、今後 iPhone と iPod touch 上で、また iTunes 内部からは iTunes Wi-Fi Music Store を拡張するものとして、Starbucks が特別ブランドのサービスパートナーとなると述べた時、そのプレスリリースの文中には T-Mobile の名前も、また米国内における Apple の複数年間独占 iPhone リセラーである AT&T の名前も一切触れられていなかった。

圧倒的なる 3G -- AT&T は 3G(第三世代)セルラーネットワークを運営しており、このテレコム企業は先週の発表の中で同社が今年中にそのネットワークを拡張しアップグレードすると表明した。(2008-02-06 の記事“3G iPhone への道に更なる里程標”参照。)この会社はまた銅線および光ファイバーケーブルについても膨大なものを所有しており、そのカバーする範囲は(南西部に若干の空白はあるものの)カリフォルニアからフロリダまで広範なものとなっている。(Qwest は北西部と山岳部標準時帯、それに中西部をカバーし、Verizon が北東部からバージニアまでをカバーしている。)

この会社は Wi-Fi を有線サービスとの間のブリッジとして用いており、そこには近隣における光ファイバー接続やワイヤレスサービスもますます増え続けている。銅線やガラス繊維を通過させれば膨大な量のデータを送ることができるし、基本的にその量は作れば作るだけいくらでも増やせる。その一方でワイヤレスのスペクトラムには限りがあり、好きなだけたくさんのデータを送るなどということはできない。

間もなく終了しようとしているアナログテレビ放送の周波数帯に対して現在進められている競売の数々を見ただけでも、そこにどれだけの関心が寄せられているかが分かる。良い帯域に付いた価格は二百億ドルを越えようとしているし、その中でブロードバンドワイヤレスの国内ライセンスを1セット運営するために必要な部分だけを取り出しても五十億ドル近くに達する。AT&T はつい最近、前回のオークションでそれを獲得した会社から現在競りに出されている全国スペクトラムのほぼ半量に当たる部分を別途購入する交渉を決着させたところだ。

3G と Wi-Fi のどちらが「より良い」かという議論は、ずっと以前から続いているものだが、そこでは Wi-Fi の方がはるかに大きな輸送容量を持っているという事実が無視されているようだ。たいていのホットスポットでのバックホールはせいぜい下り速度で 3 から 6 Mbps を越えず、下り速度 768 Kbps から 1.5 Mbps に近いのが現実となっていることが多いが、802.11g Wi-Fi ネットワークならば単独のベースステーションでも 20 Mbps をたたき出すことができ、新しい new 802.11n 規格ならば最大で 90 Mbps を越えることもできる。(生のデータレートとしては G と N でそれぞれ 54 Mbps と 300 Mbps となっているが、上で述べたレートはベースステーションに近接した場所においての現実的なスループットの値だ。)

AT&T の現行の 3G 実装である HSPA では、下り速度でたったの 3.6 Mbps、上り速度でそのほぼ半分、という数字しか出ていない。その到達領域内にある電話やその他の機器ならば実際の下り速度は数百 Kbps の上の方、上り速度でその半分、連続した転送のピークレートならばもう少し高速、という程度だろう。さらに多くの人々が 3G 接続を使うようになるに従って、ピーク速度が上がるのも難しくなって行くだろう。

報道によれば、現行の iPhone 各機種がリリースされた際に、第二世代と第三世代に跨がる中間的な速度の“2.5G”ネットワークである EDGE の使用量が、サンフランシスコのような大都市では一挙に三倍に膨れ上がったということだ。もしも 3G iPhone がリリースされれば、AT&T の未だ拡張途上の 3G ネットワークがどんな状態になることか、想像に難くない。

だからこそ Starbucks が重要になるのだ。AT&T と Apple は、Starbucks がデジタルメディアのハブとなることによって十分な利益を得られるように配慮しつつ協定を結んだに違いない。将来は、人々がそこに集まって Wi-Fi を使い、その料金は彼らが既に AT&T に支払っている月ぎめサービス料金(そのことは昨日はまだ発表されなかったが、間違いなくそうなるだろう)であって、そこで彼らは Apple からメディアをダウンロードする、Starbucks はそのような場所となるのだ。

EDGE ではない、これは edge (速度争い) の問題 -- ここで話はすべて一つとなる。Starbucks は既に、店舗内にメディアサーバを備えている。これらのサーバは Starbucks 店内で流れる音楽を供給する。けれどもそれは単なるジュークボックスではない。そこには魔術が備わっていて、Starbucks カフェの顧客がたった今聴いたばかりの楽曲や最近聴いた覚えのある楽曲を購入して、それを _ローカルに_ ダウンロードする、つまりインターネット経由で Apple の iTunes Store からダウンロードしたりするのではなく、店内のマシンから入手できる。その意味するところは、Apple がその楽曲を DRM (digital rights management, デジタル著作権管理) に包んで個々の店内での保護を要求しようとしているということだ。これまで Starbucks も Apple も公の場でそのことに触れたことはないが、私は The Seattle Times の記事のために Starbucks の技術部門主任 Chris Bruzzo と昨日会ってインタビューすることができた。

今回の提携では Apple の名前はどこにも触れられていないが、Bruzzo と私は Starbucks 店舗内での iTunes Wi-Fi Music Store との協定について話をした。店舗内にメディアサーバを置くようにする予定はないのかと彼に尋ねてみたところ、彼はこう言った。「現在 iTunes Wi-Fi Music Store を備えている店舗で、どうぞそこで今現に流れている曲を購入してご覧なさい。その転送速度がどれほど速いか、お分かりになるはずです。」

彼は別にもったいをつけている訳ではない。これについては明確に語らないというのが会社の方針なのだ。けれども彼は言ってくれたのは、店舗内で最近演奏された楽曲と、Apple の一般的な iTunes カタログに載っている楽曲とで、転送速度を比べればその差は歴然だというのだ。

彼はさらに iTunes Wi-Fi Music Store について説明を続けた。「これは高度に状況対応可能なロケーションベースのサービスの理想的な実例と言えます。そして 802.11g のより高速な速度を利用して、特定の環境に関係あるファイルを提供することができる実例ともなっています。」これはもう微妙な表現とは言えない。彼らは、店舗内にサーバを持っているのだ。

もしもそのサーバに、例えば数テラバイトのストレージ容量(今どき $2,000 から $3,000 程度の出費で手に入る)を備え、そこに 100,000 曲の最も人気ある楽曲と、500 本の最も貸し出し数の多い映画、それから数百の最も最近で人気あるテレビ番組を取り揃えさえすれば、即座に人々はそれらのファイルをローカルネットワークの速度でダウンロードできるようになる。インターネット接続の速度とは比較にならない高速で。

例えば私が自宅のホームネットワークで下り速度 3 Mbps で 1.3 GB のムービーファイルをダウンロードしたとすれば、所要時間はおよそ一時間で、そう悪くはない。その代わりに同じファイルを普段はそれほど混んでいない 802.11g ネットワークを通じて購入・ダウンロードすれば、突然そのダウンロード時間が _九分_ 程度に短縮されるだろう。仮にそのネットワークが AT&T によって、例えば 802.11n を使うようにアップグレードされたとしたら、その同じファイルを私のピカピカの MacBook、MacBook Air、あるいは MacBook Pro に 802.11n (Core 2 Duo バージョン) でダウンロードするのは...ちょっと待って...たぶん、 _二分_ くらいだろう。

来るべき 3G iPhone には新しい低消費電力タイプの 802.11n チップが装備されるらしいことに、私は触れただろうか? まだ言っていなかったって? ほぼ間違いなく生産の遅れはそれが原因の一つだろうと思う。その種のチップはまだ市場に出回り始めたばかりだから。

このシナリオにおいては、この edge ネットワーク、つまりデータをローカルに、ローカルネットワークの速度で供給できるネットワークこそが、何よりも重要な要素となるのだ。

あなたの新しいリビングルーム -- Starbucks はこれまで常に人工的なリビングルームを作り出すことを目指してきた。おそらく本物の私たちのリビングルームよりも(もしもそういう部屋を持っているとすればだが)もっと快適で寛げる場所であろうとしてきた。X世代の人たち[訳者注: 1960 年代から 1970 年代ごろに生まれた、いわゆる無気力世代とも呼ばれた人たち]にとっては、自分たちが生まれ育ったけれども今では資金がなくてとても手が出ない、理想のランチハウスを思い起こさせるものかもしれない。

既に大規模な音楽制作者かつ販売者であり、コーヒー提供という本来の使命から若干外れかけた数年間を経て、その経営を再び活性化させようとしている Starbucks が、たとえコーヒーが好きでない人であってもやって来て集まり、ネットワークを使ってメディアを詰め込みつつ寛げるような場所となるというアイデアを喜んで受け入れるのは、別に驚くべきことでも何でもないだろう。

米国内の Starbucks 全店舗は今月内に三時間だけ閉店し、より良いコーヒーを淹れるために一斉にスタッフの再教育を実施するという。朝食用の「サンドイッチ」を焼くオーブンも、いよいよその覆いを取り外されつつある。そこに今回の提携も加わった。これは決して偶然ではない。

Starbucks では 3G iPhone のスタートにおけるパートナーとなる準備が整った。リビングルームの掃除をきちんと済ませて、どっと押し寄せる人々の群れに備えているのだ。


Hot Topics in TidBITS Talk/18-Feb-08 のホットな話題

  文: Joe Kissell <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Alltop で Mac ニュースヘッドラインを一覧 -- Alltop で一覧できる Mac ニュースの選択肢について、ある読者がコメントする。(メッセージ数 1)

ビーチボール症候群 -- 「死の回転ビーチボール」が頻繁に現われる原因は何なのか、読者たちが議論する。(メッセージ数 6)

3G iPhone への道に更なる里程標_ -- 大都市圏以外に住んでいる人たちにとって、最近出された AT&T の発表は何を意味するのか? (メッセージ数 4)

Eliana Wren Carlson をどうぞよろしく -- TidBITS ファミリーの最も若いメンバーであるこの子が、生まれて初めての電子メールメッセージを受け取る。(メッセージ数 3)

10.5.2、待つべきか、試すべきか? -- ついに誰もが安全に Leopard をインストールできるようになったのか、それとも、依然として問題が残っているのでもう少し後のリリースまで待つべきだと人には勧めるべきなのか? (メッセージ数 23)

Leopard 10.5.2: TidBITS の不平を、Apple が聞き入れた、少しだけ_ -- Mac OS X 10.5.2 における改良点のプラスの側面とマイナスの側面とが綿密に調査検討される。(メッセージ数 7)

Starbucks が AT&T に淹れた契約に Apple の香り_ -- 新しい Starbucks と AT&T の提携に、読者たちからさまざまの憶測やコメントが寄せられる。(メッセージ数 14)

Leopard、10.5.2 の出荷でベータから抜け出す_ -- Mac OS X 10.5.2 でも依然として続く厄介な問題に読者たちが解決策を求めている。(メッセージ数 8)

半透明メニューバーなんか、死ね、死ね、死ね! -- 半透明メニューバーに十分満足している読者が少なくとも一人ここにいる。(メッセージ数 1)

スライドショウによるプレゼンのソフト -- ビデオコンテンツを含むスライドショウを作るためにベストの Mac 用ソフトウェアは何だろうか? (メッセージ数 8)

Mac OS X 10.5.2 アップデート: Dock Stacks よさらば -- Apple はどうやら、ユーザーの声を聞いてくれることが少なくとも時によってはあるようだ。読者たちが、Dock に本来の形でのフォルダが戻ってきたという歓迎すべきニュースについて話し合う。(メッセージ数 9)

キーボードの文字がおかしい -- ある読者のキーボードでは不思議なことに文字の並びが変わってしまい、(他のこともあるが何よりも)パスワードがタイプできなくなってしまった。(メッセージ数 5)

AirTunes が Apple TV に加わる -- 新しく改良された Apple TV にはどうやら AirTunes のサポートが付いたようだ。ただし、一つ二つ注意点はある。(メッセージ数 1)

Apple の DVI-to-ADC アダプタで気まぐれな挙動 -- MacBook Pro のリッドを閉じていると外付けディスプレイが働かないのはなぜか? Apple は働くと言っているのに。(メッセージ数 1)

Time Machine のデータセット・ドライブをバックアップ・移動 -- Time Machine ボリュームを別のディスクに移そうとする作業には、大きな危険が待ち構えている。(メッセージ数 2)

AT&T Express Card -- 新しい 3G の AT&T Express Card は素敵だ。でも、既にお金を払って iPhone プランを使っている人には割引きか何かが適用されるのか? (メッセージ数 1)


tb_badge_trans-jp2 _ Take Control Take Control 電子ブック日本語版好評発売中

TidBITS は、タイムリーなニュース、洞察溢れる解説、奥の深いレビューを Macintosh とインターネット共同体にお届けする無料の週刊ニュースレターです。ご友人には自由にご転送ください。できれば購読をお薦めください。
非営利、非商用の出版物、Web サイトは、フルクレジットを明記すれば記事を転載または記事へのリンクができます。それ以外の場合はお問い合わせ下さい。記事が正確であることの保証はありません。告示:書名、製品名および会社名は、それぞれ該当する権利者の登録商標または権利です。TidBITS ISSN 1090-7017

©Copyright 2008 TidBITS: 再使用は Creative Commons ライセンスによります。

Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2008年 2月 23日 土曜日, S. HOSOKAWA