TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#918/10-Mar-08

先週行なわれた iPhone ソフトウェア開発キットの発表は、この一年間で最も重要なイベントの一つだったと言ってもよいだろう。Adam と Glenn が、Apple が何を述べたか、ソフトウェア開発者たちがどのような反応を見せたかを検討する。この iPhone SDK は、Apple のサクセスストーリーにおける最新のほんの一断片に過ぎない。その積み重ねが Apple を Fortune Magazine の Most Admired Companies リストの最上位に押し上げたのだ。ただし、Apple が無視してきた分野が一つある。まだ発生途上だが、電子ブックリーダーの市場だ。iPod touch という最高のプラットフォームと、iTunes Store という最高のオンライン販売環境を備えているというのに。Adam が、Steve Jobs に宛てた公開書簡という形で、Apple がこの市場に参入すべきだという議論を展開する。さて、アップデートのニュースとしては、AppleScript のサポートを追加した Aperture 2.0.1 と、Mac OS X 10.5.2 アップデートでの変更点を取り入れた“Take Control of Customizing Leopard”バージョン 1.1 を紹介する。最後に大切なことをもう一つ。Rich Mogull がちょっとコンピュータセキュリティの話題をひと休みさせて、自宅のオーディオ用ワイヤーを Rogue Amoeba の Airfoil を使って配線し直す。いやつまり、ワイヤレスで。

記事:


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Apple が Fortune's Most Admired Companies リストのトップに

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
  訳: 笠原正純<panhead@draconia.jp>

Fortune Magazine は Apple を America's Most Admired Companies listリストで Google(同 4 位)や Microsoft(同 16 位)を上回るトップに置いた。(Apple はさらに国外の企業を含む Global Top 20 リストでもトップに位置している。)このリストは、企業の革新性、人的マネジメント、資産運用、社会貢献、経営の質、財務の健全性、長期投資、製品・サービスの品質をランクしている。コンピュータ分野(ここにはIBM や HP、DELL といったハードウェア製造企業が含まれている)では、Apple は革新と、人的マネジメント、製品・サービスの品質において1 位にランクしており、社会貢献は 5 位、他の指標では 3 位だ。更に印象的なのは、Apple が調査全体の中で、Nike や Herman Mille、Walt Disney を打ち負かして最も革新性が高いとランク付けされていることだ。

Fortune の Apple を扱った追加記事にも注目したい。そこには Betsy Morris の "What Makes Apple Golden" と Peter Elkind の長い記事 "The Trouble with Steve Jobs" が含まれている。後者は Jobs 自身に焦点を当てており、彼の膵臓ガンやストックオプションの日付遡りスキャンダルを扱っている。これらの記事は私がこれまでに見たことのないレベルまで詳細に書かれている。


Aperture 2.0.1 アップデートが AppleScript 対応を拡大

  文: Jeff Carlson <jeffc@tidbits.com>
  訳: 笠原正純<panhead@draconia.jp>

メンテナンスアップデートは一般的にバグフィックス以上のものを提供はしないが、先週の Aperture 2.0.1 のリリースはそれに止まらなかった。そのアップデートで一連のパフォーマンスと安定性 (カテゴリについては声高に叫ぶのに、変更点を特定することはまったくないが)の改善を提供しただけでなく、Apple は AppleScript のサポートを拡張した。

同社のウェブサイトにある AppleScript セクションのページには、Adobe InDesign CS3 のようなページレイアウトプログラムが、InDesign で写真から生成されたプレビューを使って、Aperture のライブラリから直接イメージを取り込むデモがある。イメージが Apertureで編集されると、新しいバージョンを再度インポートしなくても変更はInDesign に反映される。ビデオは指紋付きプレビューについて説明している。これは一緒に使うプレビューやソースファイルのリンクを保つために一意の識別コードを使うという Aperture の新しいやり方だ。

(ところで、このことには初めて気づいたのだが、そのページで使われている二本のビデオは、人間の声の代わりに Apple の Victoria text-to speech voice をナレーションに使っていた。時々ある、短縮形の言葉や間違った発音から、何か"おかしい"ことに気づき、人工の声であると分かるのには数秒かかった。)

Aperture 2.0.1 はソフトウェア・アップデート経由か 43.9 MB の単独ダウンロードとして利用可能だ(単独ダウンロードを使うためには正式なシリアルナンバーが必要となる)。


Take Control ニュース: 最新の助言で Mac OS X 10.5.2 のカスタマイズ

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
  訳: 笠原正純<panhead@draconia.jp>

私達は Matt Neuburg の "Take Control of Customizing Leopard" の 1.1 バージョンをリリースした。これには Mac OS X 10.5.2 に加えられた新しいオプションを操作する上で重要な情報が盛り込まれている。例えば、メニューバーの透過性や Dock の反射をどのように切り替えるのか、stacks をどのように好みに合わせるのかといったことだ。また、Time Machine インターフェースのTime Machine インターフェースの新しい面についての議論やいくつかの新しいアドバイスも加えられた。アドバイスとは Finder を全ての spaces に置くための方法といった、私達が Leopard の市販バージョンを使うことで判明したことに関するものだ。もし最新バージョンの Leopard のカスタマイズについてもっと知りたいと思うなら、今すぐ1冊手に入れていただきたい。。

私達はこれをリリースできたことが特に喜ばしい(1.0 バージョンをお持ちの方には無料だ)。なぜなら、もしもこの本を伝統的な印刷物として作っていたとしたら、世界中のユーザや本屋の書棚に陳腐化した何千もの本が並べられたまま、Leopard の変化についてこれらの本をアップデートするエレガントな方法はないからだ。すでに 1.0 バージョンをお持ちなら最初のページの右上にある Check for Updates をクリックすることでアップデートをダウンロードすることができる。


Airfoil ホームオーディオをワイヤレスに鳴らす

  文: Rich Mogull <rich@tidbits.com>
  訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>

ユーザーでありかつソフトウェアのレビューをする者の立場から見ると、単一の仕事だけに集中ししかもそれを上手くやってのけるアプリケーションに行き当たるのは稀である。ソフトウェアが不必要な機能と幅広い聴衆にアピールするためのオプションとで膨れ上がってしまい、その結果複雑さが高まりそしてシステム資源を貪り食ってしまう例があまりに多い。Rogue Amoeba の Airfoil 3.1 はこの稀に見るプログラムであり、複雑な仕事を引き受け、それを極めて簡単にし、そして絶対に必要なものだけを取り入れている。Airfoil は、ほぼ完璧といえるアプリケーションで、その焦点はカミソリの様に鋭く、そして単純さにかけては禅の様である。

Apple の AirMac Express Base Station の特異な機能の一つに AirTunes があるが、これは iTunes が走っている如何なるコンピュータでも AirMac Express を付属したステレオへ音楽をストリーム出来る様にするプロトコルである。これが最初にリリースされた時、AirTunes は iTunes としか働かず、そして同時に一台の AirMac Express しかサポートしなかった。多くのユーザーが、私もその一人ではあったが、これを見て直ちに、本来数千ドルもする家中をカバーするホームオーディオシステムの機能を模擬するには、比較的安価な AirMac Express を使って家中に同期の取れた音楽をストリームしてやれば出来るではないかと思った。

Airfoil は、AirTunes に欠けている重要な機能に対する要求を満たすべく生まれた:iTunes 以外のアプリケーションからストリームする機能。最初のバージョンはまさにこれだけをやった - iTunes 以外のアプリケーションに AirTunes 似のストリーミング機能を付加した。次にバージョン 2 ではもう一つの大事な機能とのギャップを埋めた - 同時に複数のベースステーションにストリーム出来る機能。この後、Apple も複数機器ストリーミングサポートを追加したが、AirTunes は iTunes にしか対応せずそして AirMac Express か Apple TV へのストリームのサポートしかしない。現在の Airfoil 3.1 で、Rogue Amoeba は AirMac Express だけの領域を超えて、Mac 及び PC (クライアントソフトが必要)、Apple TV, そして AirMac Express ベースステーションへ同期されたオーディオをストリームすることを可能にした。

私は Airfoil 3.1 の初期導入者の一人ではあるが、ここではまともなレビュー記事 (Macworld の秀逸記事の様な) の焼き直しではなく、私の家で私が Airfoil をどの様に使っているかを説明しながらその機能を紹介していきたいと思う。これは、私が毎日のように使いそしてこれ無しでは困ると思うようなアプリケーションの一つである。事実、私は私の全ホームオーディオシステムをこれを中心にして設計したのである。

私は元々 AirMac Express 一台を、私が旅に出た時のアクセスポイントとして、そして音楽を iTunes から我々のステレオへとストリームするために購入した。私はかなり前からの XM Radio の受信加入者であり、この XM オーディオをストリームしたいという願望が私を Airfoil 1.0 の購入に駆り立てたというのが事の始めである。最初にやったのは、私の XM ラジオを Mac mini につなぐことであった。このために私は Griffin Technologies から出ている iMic USB オーディオアダプタと、そのオーディオを Airfoil に、そして最終的には我々の居間にあるステレオにつながった AirMac Express へと出力するための LineIn と呼ばれるやはり Rogue Amoeba から出されている無料アプリケーションを使った。

この組み合わせは上手く動いたが、幾つか制限があり足を引っ張られることとなった。最初に、Airfoil は手元でもオーディオを出力出来たが、遠隔のスピーカとの同期は取れていなかった。この結果、手元のスピーカは、遠隔のスピーカより一秒ほど早く曲を演奏することとなった。通常はこれは問題にならないが、もしお客さんが来ていたりしている時には、Mac mini 側のボリュームを下げるのを忘れないように気をつけていた、さもないとこの部屋の前を通る時に気障りな感じを与えてしまうからである。理想の形は、Mac mini は押入れに置いて、私がその時に使っている Mac にデスクトップスピーカをつないだものにストリームし、それ以外は私のシステムオーディオにも出力するというものである。私は在宅で働いていて、消音とボリュームは私のキーボード経由でやりたいと思っている。後に我々が二台目の AirMac Express を追加した時、私は接続が中断したり、オーディオの同調が切れたりするのを経験するようになった。

私はちょっとした簡単なプログラムを作ることで私の必要最小限のシステムの改善を図った。Airfoil は AppleScript をサポートしているので、音のソースの切り替えと、個々の AirMac Express へのストリームをオンオフ出来ることを可能にする AppleScript を書いて、これを実行できる Web ページを Mac mini 上に作ることが出来た。もし接続が切れた場合でも、家の中のどのブラウザからでも (私の Sony PSP も含んで) この Web ページに行ってリセットをかけることが出来る。

Airfoil 3.0 は、これまでのバージョンが持っていた殆ど全部の問題を解決し、かつかなりの新たな機能を追加している。同期の問題は改善され、どうもそのお陰で接続性も改善された様に見える。私は複数の AirMac Express ユニット間での同期問題に未だ直面していないし、接続もより安定している様に思える。Version 3.0 では、手元のオーディオと遠隔スピーカの間の完全同期機能も加えられているので、私の Mac mini からのオーディオはストリームされたオーディオと完全に同期が取れている。

3.0 の最も嬉しい機能は Airfoil Speakers の追加である - これは Mac 又は PC の上で動くスタンドアロンのクライアントアプリケーションで Airfoil からストリームされたオーディオを受信できる。この機能がまだない時には、私のデスクトップスピーカを私のホームオーディオシステムに組み入れることが出来なかった。押入れからたった 5 フィートしか離れていないラップトップにオーディオをストリームするために新たに AirMac Express を買うというのもばかばかしく思えて、働いている時間は XM ラジオを私の机の上に持ってきておいて、他の部屋にストリームしたい時は Mac mini の所に持っていってつなぎ込むというやり方をとっていた。この Airfoil Speakers を使って、私は今やラジオから私のラップトップへと直に XM をストリーム出来る、そして通常はこのラップトップは一対のデスクトップスピーカにつなげてある (XM はオンラインストリーミングも提供しているが、その品質は明らかに劣る)。

他の歓迎すべき機能に、バージョン 2.0 から提供されているものだが、自動接続のサポートがある。Airfoil の設定で、自動的に接続する相手を指定できる。このお陰で私のカスタム Web ページへのニーズも減った、と言うのも、Airfoil は今や起動時に私のラップトップや AirMac Express ユニットがネットワークに接続されていれば自動的につないでくれるからである。

私はあまり使ったことのない機能が一つある。それはビデオコンテンツの遠隔オーディオストリーミングである。オーディオをワイヤレスで送る遅延のために、DVD や他のソースからのオーディオとビデオを同期させておくのは困難である。(事実、iTunes は AirMac Express に対してビデオのためにオーディオをストリームしない、多分この理由のためである。) この問題の回避策として、Airfoil は自分のビデオプレーヤーを持っている。デフォルトの DVD Player は使えないが、この内蔵のプレーヤーは主流のビデオフォーマットは全部サポートしている。

しかし Rogue Amoeba はここでおしまいにはしなかった。Airfoil 3.0 のリリースのすぐ後で、バージョン 3.1 をリリースし、そこでは Apple TV へのストリーミングをサポートしている。もし Apple TV を使っているのであれば、あなたのステレオラックの後ろに AirMac Express を差し込む必要はもうない。勿論、Apple TV 単独で iTunes オーディオを演奏することは出来るが、これを使えば複数の部屋に対しても同期を確保できる。

自慢するわけではないが、昨年夏に我々が新しい家を建てる時、私は Airfoil と AirMac Express を頭において配線を決めた。ホームシステム全体を考えずに、我々のリビング・ダイニングと屋外パティオに天井スピーカを置き、そこから我々のファミリルームにあるエンターテインメントコーナーまで配線した。二階や寝室への予備配線は敢えてとばしてしまったのである、必要になればただ AirMac Express を追加すれば済むという理由で。我々はファミリルームに一個の AirMac を置いて一階のスピーカ全部をカバーし、二回のバーの所にもう一個置いて小さな棚置き型のステレオシステムにつないでいる。私はホームオートメーションソフトウェアも持っていて、これに iTunes に対する Web インターフェース (Perceptive Automation からの Indigo) があり、これと自作の AppleScript とを組み合わせて、私の iPhone や他のどの Web ブラウザからでもソースを変えたり、選曲したり出来るようにしている。一台の Mac mini (本当に古いやつ)、二台の AirMac Express ベースステーション、安物の天井スピーカを幾つか、そして Airfoil 3.1 のコストだけで、完全に同期の取れた家全体のオーディオで我々のお客さんをおもてなしでき、しかもその操作は私の電話から出来るのである。格好良いでしょう?

Airfoil はその上アプリケーションを光らせるこまごまとした気遣いで満ち溢れている。ソフトウェアそのものは、単純でスクリーンの占有面積にも敬意を払っている、そしてメニューバーに隠れることも出来る。個々の出力機器やコンピュータのためのアイコンもそのシステムの本質を表している;PC には PC アイコン、Mac にはその種類に応じてラップトップかデスクトップのアイコン、そして AirMac Express と Apple TV アイコンは異なっている。ボリュームは出力機器毎に制御出来るし、また全てをシステムオーディオにリンクさせることも出来、そしてイコライザーとしっかりした AppleScript サポートも含まれる。

私が気付いた唯一の問題といえるのは、自動ストリーミング機能に関する一貫性の欠如であろうか。Airfoil が最初に立ち上がった時は全ての機器に接続するのだが、時間経過の中でネットワークがオンオフする様な状態になると Airfoil Speakers 機器にしか再接続しなくなるのである。

この先は?iPhone SDK のリリースを機に、Rogue Amoeba はオーディオをあなたのポケットにストリームすることを考えているのはかなり知れ渡っていることである。これが出て来るような事態になれば、私もついに折れてあの高値の iPhone ドックを寝室用に買いたくなるのに十分であるかもしれない。

Airfoil 3.1 には Mac OS X 用の無料のお試し版があり、フルライセンスは $25、以前のバージョンからのアップグレードは $10 となっている。Windows 2000/XP/Vista 用のバージョンも出されている。


Steve Jobs へのオープンレター: iPod リーダーを支持します

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今年の 1 月、Macworld Expo キーノートの後、あなたは New York Times の John Markoff と David Pogue と話をしていた中で、Amazon の Kindle 電子ブックリーダーに対する懐疑的な態度を表明された。John Markoff によれば、あなたはこう言ったということだ:「この製品が良いか悪いかは問題ではない。重要な事実は、人々がもはや本を読まなくなったということだ。米国民のうち 40 パーセントは、昨年一年間に一冊以下しか本を読まなかった。人々がもはや読書をしないからには、この製品の概念そのものが間違っているということだ。」

新聞と書籍の形でその著作が何百万人もの人々によって読まれている著者たち二人を前にして、これは奇妙な発言だと言わざるを得ない。その 40 パーセントという数字をあなたがどこから持ってきたのかは知らないが、他の統計を見ればそれと矛盾した結果が出ているように思える。例えば、30 年間にわたって米国出版業界を追跡してきた Book Industry Study Group は、米国における 2006 年の書籍販売数が 31 億冊を越え、米国出版業界に 350 億ドルを越える純収入をもたらしたと見積もっている。収入額で言えば 2005 年に比べて 3.2% の増加だ。書籍業界は成長している。決して縮小してはいない。それに、米国民の 40 パーセントが年間一冊以下しか本を読んでいないのだとすれば、残りの 1 億 8,200 万人の私たちが平均して年間 16 冊の本を読んでいることになる。

本の読み方の習慣が変わってきたことも間違いない。私たちは、これまでなかったほどに多くの種類の娯楽・研究の手段を持つようになってきたからだ。そのうちいくつかは iPod や Apple TV のような Apple 製品や、iTunes Store のような Apple サービスのお陰で享受できるものだ。けれどもコンシューマのオンライン挙動を研究している IDC の調査によれば、最も大きな原動力は今のアメリカ人たちが平均して毎週 32.7 時間をオンラインで過ごしていることで、これはテレビを観ている時間(毎週 16.4 時間)の倍近く、新聞や雑誌を読む時間(3.9 時間)の8倍以上だ。トラブルを抱えた業界の例を挙げよと言われれば躊躇なく新聞社を挙げることができる。新聞の発行部数は急激に減少しているからだ。

重要な点は、オンラインで過ごした時間の大部分は結局読む(あるいは書く)ことに費やされているということだ。それは電子メール(IDC の推定によれば 2007 年内に約 57 億通のメッセージが送られた)かもしれないし、ブログ(Technorati によれば 7 千万以上、一日あたり 150 万の記事)や、あるいはもっと伝統的なオンラインニュースやエンターテインメントソースなどもある。インターネットのお陰で、人々は以前にもましてたくさんのものを読むようになり、ものを読むための新しい形が次々と生まれつつある。日本で流行している「携帯電話小説」、つまり今やいたるところに存在するモバイルフォンの上で連載小説の形で読むもの、を見るとよい。The Economist 誌の記事によれば、2001 年に登場して以来、このジャンルは 2006 年には 8,200 万ドルのビジネスに成長し、いくつかの電子本は一日あたり十万件以上ダウンロードされているという。

私がこうやっていろいろな数字を挙げてきたのは、Apple を促して、人々が膨大な量のテキストを読んでいるという事実を受け入れ、iPod や iPhone、また将来の機器の上で、もっと手軽にものが読めるようにするための努力をハードウェアとソフトウェアの両面で集中させるようにしてもらいたいと思うからだ。現在でも iPod や iPhone を使っていくらかのオンラインコンテンツを読むことはできるし、Mac から同期してきたちょっとしたテキストを読むこともできるが、今後、これにネイティブな PDF のサポート、保存されたテキスト書類へのより良いユーザーインターフェイスなどが加われば、その使用感はぐっと改善されるだろう。

けれども、読者であり出版者でもある私の立場から言わせてもらえば、私が一番望みたいのは、Apple が iPod touch の大型バージョンを作って、より良いビデオ視聴ができるのみならず最善の読書体験をも得られるようなものにしてくれることだ。Apple ならば、Amazon が Kindle を作った時には欠けていたハードウェアデザインとユーザーインターフェイスの鋭い切り口を持ち合わせているし、その上 iPhone や iPod touch を通じて積み重ねた知識、例えば基盤となるオペレーションシステムや物理的デザイン、ワイヤレスの能力なども兼ね備えている。また同じくらい重要なのが iTunes Store だ。ここには他に例を見ないブラウジングとショッピングの体験が、デジタルメディアについて提供されている。これをさらに拡張して、商用の電子本や、有料購読の定期刊行物、また無料のブログなどに、現在既にサポートしている商用のオーディオブックや、テレビ番組のシーズンパス、また無料のポッドキャストなどと全く同じ方法が使えるようにすることができるのではないだろうか。

そのような機器は Apple にとってもビジネス上良い意味を持っているだろう。iPod の売り上げは前年比の増加率ではこれまでで最も低い数字、たった 5% を記録した。これを見て Apple がこの市場を既に飽和させたというアナリストの見解もあるくらいだ。たとえ熱心な iPod ユーザーであっても、交換用の iPod をそうたびたび購入する人はいない。iPhone と同じような、より大きなフォームファクターを持った新しい“iPod reader”があれば、きっと Apple にとっても新たな市場を開くものとなるだろう。でも、iPhone とは違って、それは iPod nano や iPod shuffle に加えて購入すべきものとなるだろう。

John Markoff は、あなたがあえてアメリカ人の読書習慣を否定するような言い方をしたのは、まさにそのような新しい機器の登場のための計算し尽くされたお膳立てなのではないかと推測した。あなたは、iPod 以前からあった携帯電話や MP3 プレイヤーなどに対しても好意的な言葉を発したことはなかったが、それには確かに正当な理由がある。実際、そういう機器は猛烈に酷いものだった(し、今でも大筋ではあまり変わっていない。)

そういうわけで、Steve、来るべきスペシャルイベントでは、iPod reader の登場を私は心から期待している。私たちが iPod で慣れ親しんだ素晴らしいことがすべて出来る上に、あらゆる種類のテキスト書類、プレインテキストも、PDF も、Microsoft Word の .doc も、あるいは XML フォーマットも、すべてをダウンロードし、管理し、表示できるためのネイティブなサポートを追加した機器だ。

iPod では、ベートーベンからボブディランまで、自分の子供たちのスナップ写真から The Incredibles や Lost まで、既にアクセスが可能になっている。それに加えて、The Hobbit や Harry Potter、1984 や Catch-22、それから Dr. Seuss の全巻まで揃えば素晴らしいではないか。書籍の出版者たちはもう何年も前から電子ブックリーダーの大衆市場を待ち望んできたし、新聞各社は新しいオンラインのビジネスモデルを切望している。そして一般の人たちは、通勤途中の電車の中で本を読みたいと思っている。私としてはもちろん、既に何万人という Mac ユーザーたちに人気を博している私たちの Take Control 電子ブック全巻を、喜んで iTunes Store にアップロードさせてもらいたいと思っている。

--Adam Engst, TidBITS Publishing Inc.


Apple、iPhone 2.0 を発表、SDK をリリース

  文: Glenn Fleishman <glenn@tidbits.com>, Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
  訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

iPhone 2.0 ソフトウェア開発キット (SDK) が出たが、iPhone 2.0 ソフトウェア自身は初代の iPhone が出荷されてから一年目にあたる 2008 年 6 月まで出ない。Apple は 2007 年の末に、開発者たちが自分自身の iPhone ソフトウェアを開発できるようにする SDK を 2008 年 2 月までに出すと約束していた。まあ、友人どうしの約束では、一週間のずれなんてどうでもよい。とりわけ、Apple はどうやら予想されていた以上に iPhone の諸機能とネットワーキングへの直接のアクセスを提供してくれたようだから。この SDK で、セルラーおよび Wi-Fi 接続が利用でき、現在位置を嗅ぎ取ることもでき、iPhone のタッチスクリーンと加速度センサーに結び付くことで、ジェスチャーやタッチ、回転などに直接のアクセスも提供される。

この SDK は無料でダウンロードでき、2.0 ソフトウェアのベータ版のシミュレータが含まれている。このオペレーションシステムアップデートは iPhone でも iPod touch でも働く。(Apple のサーバは初期ロードのためにボロボロの状態だ。開発者たちは、その 2 GB のディスクイメージを入手するのにいったいどれだけ時間がかかるのかと苦情の声を挙げている。彼らは今すぐ欲しいのだ!)6 月になって正式リリースされれば、このソフトウェアはすべての iPhone オーナーには無料のアップグレードとなるが、iPod touch ユーザーは「わずかな料金」を支払わなければならない。この 1 月にメール、ロケーション、ウィジェットその他の機能追加のために支払った $20 と同じような扱いになるだろう。(Apple は、iPod については収益の計上を即時実施するので、収益の修正報告をするか、または重要な新機能に対応する処理手数料を課するかのいずれかが必要となる。一方 iPhone の収益は 24 カ月にわたって計上される。)

6 月のリリースには多数の企業向けネットワーキング機能が含まれ、そのデザインの骨子としてセキュリティの拡張、大企業のインフラのサポート、そして最も重要なこととしては Apple が Microsoft から獲得したライセンスを通じた Exchange サーバとの間での直接相互作用の実現が挙げられる。ひょっとして、この 6 月には 3G iPhone のリリースも組み込まれるのだろうか? そのことについて発表はまだ何もないが、私たちはそうなるのではないかと思っている。

iPhone SDK -- Apple の iPhone Software 担当副社長 Scott Forstall は、開発者たちがアクセスできる API やツールは Apple が iPhone アプリをビルドするのに使っているものと同じものになると述べた。これには Core OS レイヤー、Core Services レイヤー、Media レイヤー、それに Cocoa Touch と呼ばれる新しいアプリケーションフレームワークと、ソフトウェアを本物のハードウェアにインストールする前にあらかじめテストするためのインターフェイスシミュレータが含まれる。

開発者たちが私たちの質問に応えて確認してくれたところによると、このシミュレータは iPhone を偽装してネイティブなコードを走らせるハードウェアエミュレータではなく、ただプログラムを Mac OS X 用にコンパイルしてそれをインターフェイスシミュレータの内部で走らせるだけのものだという。それは少し奇妙なことのように感じられるが、ハードウェアを抽象化することによって、できるだけ電話のロックを外そうとする人たちに情報を提供しないようにしたいというのが Apple の意向だったのかもしれない。シミュレートされたハードウェアであってもアクセスが少なければ少ないほど、それだけ iPhone や iPod touch を脱獄 (jailbreak) するのは難しくなるだろう。

Core OS レイヤーは大体において Mac OS X のものと同じだが、ただ電源の管理が改善されている。Core Services レイヤーには、データベース保存のための SQLite や、セルラー基地局や Wi-Fi ネットワークデータを使って現在位置を決定する Core Location(現時点では Maps アプリケーションのみがこれを使っている)といったものが含まれている。Media レイヤーは iPhone がオーディオやビデオを再生できるようにするとともに、Mac OS X の Core Audio その他も含んでいる。それから最後に、Cocoa Touch はすべてのアプリケーションがその上でビルドされるアプリケーションフレームワークとして Cocoa を置き換えるものだ。Cocoa では入力源としてキーボードとマウスが前提となっているのに対し、Cocoa Touch ではすべての入力がタッチから来ることが前提となっている。シングルタッチ、マルチタッチ、それにジェスチャーだ。

でも、これは単なる基盤の話に過ぎない。iPhone アプリケーションが実際に作られる環境は、Xcode だ。これは Intel プロセッサと Mac OS X 10.5 Leopard を持つ Mac 上で走る。開発者たちは Interface Builder を使って iPhone アプリのインターフェイスのデザインと実装を行なうが、標準的なユーザーインターフェイス要素は既にそこに出来合いで用意されている。その他のツールとしては、開発者たちがメモリ使用量をチェックしてパフォーマンスの計測を行なう Instruments や、さきほど述べた iPhone Simulator などが含まれている。

Apple はデモ用のアプリケーションを二つ実演して見せた。一つは画像操作プログラムで、ユーザーが画像の上でタッチしたりひねったりするだけで写真を歪めたり、シェイクするだけで歪みを消したりすることができる。ちょうどお絵描きおもちゃの Etch A Sketch と同じ感じだ。もう一つは Touch Fighter、これはスペースシューターゲームで、iPhone の加速度センサーを利用してユーザーが宇宙船をコントロールし、スクリーンをタップすれば射撃ができる。Apple によれば、このソフトウェアを作り上げるのにかかった期間は二週間ということだ。

Apple は数週間前、外部の開発者たちを会社に呼び寄せて iPhone SDK で作業する機会を作った。発表によれば、その中にはこれまで一度も Mac でソフトウェアを書いたことのなかった人たちも含まれていたという。Electronic Arts は、同社から発売予定のゲーム Spore (胞子) の一バージョンをデモしたが、このゲームでは加速度センサーによって胞子のスクリーン上での動きをコントロールし、小さいものを食べて大きいものに食われるのを避け、一定の点数に達すればプレイヤーがタッチスクリーンで Evolution Editor を使い、カスタム胞子をデザインすることができる。Salesforce がデモしたアプリケーションは、売り上げデータベースからデータを読み込んで、営業マンが必要とするビジネスデータをリアルタイムで提供するというものだ。その次に登場したのが AOL で、iPhone 用に作られたバージョンの AOL Instant Messenger (AIM) をデモしたが、これは将来 SMS メッセージングに代わって多くの iPhone ユーザーたちが望むレベルのインスタントメッセージングを提供するものとなるだろう。Epocrates は医師向けの薬品データベースをデモし、最後に Sega が Super Monkey Ball をデモした。これは同社のコンソールゲームの一バージョンだが、皮肉なことに iPhone のスクリーン上ではもっとアーティストの手を借りてグラフィックスをスケールアップさせないと、と感じさせるものだった。

全体的に見て、iPhone で何が可能かということについて Apple は相当に気前良くカーテンを開いてみせてくれたという気がするが、それでもまだ Macintosh ほどオープンではない。言うまでもなく、SIM ロックをはずすソフトウェアは許されるはずがないし、Dock コネクタへのアクセスも、既存の“Made for iPod”プログラムで利用できるもの以外は禁止されるだろう。Bluetooth 経由で iPhone がラップトップ機へセルラーベースのインターネット接続を割り振る機能のサポートを Apple が許すかどうかについては何も発表がなかったし、Bluetooth ベースの外部入力機器のサポート、例えばキーボードのようなものが使えるのかどうかについても何も発表されなかった。

無料マーケットは 30% のコスト -- ユーザーが iPhone アプリケーションを入手できる唯一の方法は、Apple の新しい App Store を通じてだ。これは見かけが iTunes Store によく似ており、Apple が iTunes 経由で 40 億曲を販売した経験を通じて学んだことをすべて生かしていると思われる。無料のアプリケーションも App Store の中に無料でホストされる一方、販売用のアプリケーションから得られた収益は開発者との間で分配されて、開発者が 70%、Apple が 30% という取り分を得る。また、開発者が無料あるいは販売用のプログラムを App Store で配布してもらうためには $99 の手数料を払わなければならない。この手数料は個々のアプリケーションあたりのものではなく開発者一人あたりの金額だ。SDK をダウンロードしたり使ったりするだけならば、手数料は必要ない。

開発者コミュニティーにおけるこの収益配分に対する反応は、おおむね肯定的なものだった。60:40 の分配も予期していたけれど、もちろん 80:20 ならばもっとよかったと思うという声が多かった。私たちも 70:30 で完璧に妥当な数字だと思うが、その理由の一つはこれがいろいろな処理やバンド幅、ホスティング、マーケティングなどにかかる費用をすべて込みにした料金だからだ。例えば伝統的な書籍の業界では、出版者と書店との取り分は多くの場合 50:50 だ。また、e-コマースのプロバイダの多くでは、10% から 15% という手数料の代わりに、Apple が App Store のディレクトリやインターフェイスで提供することになるものに比べて低レベルのサービスを提供している。

当然ながら、開発者たちには製品に普通よりも高い価格を付けることでマージン分を取り戻すという選択肢もある。けれども、あまり高い値段を付けるのは避けなければならない。一つの考え方は、iPhone ソフトウェアは単純に無料でリリースし、そのソフトウェアがデスクトップ版のソフトウェアと共に働くようにデザインしておいて、デスクトップ版の方を一台ごとのライセンスで販売する、という方法だ。そうすれば、そうしたアプリケーションの売り上げが伸びたり、会社内で販売されるライセンス数が増えたりするかもしれない。

もっと心配な点は、はたして Apple がどのようなものを App Store で販売することを許すか、という問題だ。Apple が決して許さないであろうと思われる分野を挙げれば、ポルノに関係したものすべて、プライバシーの侵害のために作られたアプリケーション、大量のバンド幅を要して AT&T のデータネットワークに過大な負担をかけると思われるもの、悪意ある攻撃プログラム、その他非合法なもの(そういったソフトウェアが増え続けているのは一つには DMCA のお陰だが)すべても含まれる。Wi-Fi のバンド幅を大量に占有するものも感じが悪いが、それだけでは AT&T のデータパイプを一杯にするとして問題になることはないかもしれない。

表面的には、これらは理にかなったものに聞こえるかもしれない。ただ、開発者たちの間でささやかれている心配は、実際に Apple がどのようにしてそれを判定するか、また、Apple 自身のビジネスモデルを回避するように見えるアプリケーションを Apple が許すのかどうか、といった点だ。Rogue Amoeba の CEO である Paul Kafasis は、Apple が彼らのアプリケーションを iPhone 上に許容してくれるかどうか心配している。例えば、Airfoil が AirTunes プロトコルをリバース・エンジニアしたことを Apple は快く思わないかもしれないし、Radioshift のリスニング部分を使えばユーザーが iTunes Store から購入せずに楽曲を聴けることも、Fission を使えば iTunes Store から購入せずに着信音が作れることも、問題になるかもしれない。言うまでもなく、もしも Apple が開発が完了するよりも前にきちんとしたルールを提供してくれさえすればそれは結構なことだ。それなら、開発者たちは Apple が許可しないアプリケーションの開発に時間を浪費せずに済むのだから。

もう一つ、私たちの頭に浮かんだ問題がある。それは、Apple がアプリケーション以外のものも App Store に受け入れるかどうかということだ。例えば、ある開発者がゲームを書いたとして、そのゲームのための追加レベルを販売したいと思ったらどうだろうか? あるいは、誰かが電子ブックリーダーを書いて、別の誰かがそれと互換なフォーマットで電子ブックを販売しようとしたら? この分野で Apple が他にもできることの可能性については、今週号の Adam の記事“Steve Jobs へのオープンレター: iPod リーダーを支持します”(2008-03-05) を参照されたい。

それから、試用版についてはどうだろうか。多くの開発者たちは、自身のソフトウェアの 30 日間有効な試用版を提供するとか、あるいは一部の機能がロックされたりオフにされたりしたバージョンを提供するなどの方法を採っている。料金を払えば、ロックが外れたり機能が制限なく使えるようになったりする訳だ。Apple がすべてのプログラムの門番になりたがっているのだとしたら、この種の柔軟性ははたして許容されるのだろうか? ひょっとして、iTunes ムービーレンタル風に“30-day”ボックスが提供されて、開発者がそれをチェックしておけばユーザーが支払いをせずにその期間が過ぎればプログラムが消去される、といったことになるのだろうか?

もしも、問題があることが誰の目にも明らかであるようなものではないアプリケーションに対しても Apple が過度に用心深くなってしまえば、きっと活力たっぷりの iPhone ハッキングコミュニティーが再びその力を集中させて、Apple が App Store でホストしたがらないアプリケーションも受け入れられるように iPhone をハッキングし始めることだろう。

この SDK は無料でダウンロードできるが、iPhone Developer Program はまだすべての希望者を受け入れるようになっていない。Apple は開発者向けページに注意書きを掲載して、その中で「iPhone Developer Program は当面米国内の一部の開発者のみが利用できるようになっており、今後数ヶ月間内に次第に他の国にも拡張される予定です」と述べている。Apple が iPhone Developer Program をいつ、どのようにしてフルにオープンなものにするのかは、現時点では明らかでない。

iPhoneが仕事に -- iPhone は最初のリリースから、大規模ビジネスの IT(情報技術)インフラストラクチャ(ネットワーク、サーバ、ソフトウェア、コンピュータ、ハンドヘルド)、つまり一般に「エンタープライズ」という言葉で包含されるものに不可欠な多数の機能を欠いていると、広く批判されてきた。Apple が iPhone でエンタープライズユーザを対象としてはいないということは関係がなかった。問題は、ビジネス界の人々が iPhone を持ち込んで使うことができるだろうと考えたことで、それに対し企業の技術担当者が、彼らをサポートできないと考えたのだ。

エンタープライズでは、CIO(最高技術責任者)と IT 担当者は、あらゆる新しい機器に対して、既存の技術的決定事項と統合できることを求める。それにはしばしば、リモート接続に関すること(仮想プライベート・ネットワーク・クライアントの使用)、ネットワークのログインポリシーに関すること(たとえばデジタル証明書やキーチェーンフォッブを要求する)、さらにはメール、カレンダー、連絡先、ディレクトリサービスに関することが含まれる。

最近まで、エンタープライズユーザには、iPhone について法人アカウントで支払う方法すら与えられていなかった。iPhone は個人使用でしか利用できなかったのだ(2008-01-23 の "AT&T が iPhone を企業にも提供" 参照)。それにもかかわらず、iPhone はエグゼクティブや大企業の人たちに広く受け入れられてきた。iPhone 2.0 によって、Apple は iPhone を大企業のよき働き蜂とするべく、Microsoft Exchange の完全なサポートを含む 多数の新機能を加えることになるだろう

Apple が Microsoft から Microsoft Exchange ActiveSync のライセンスを受けたという発表は、多くの業界ウォッチャーを驚かせた。Apple が同社の目的にとって中核となるものをライセンスすることはめったにないからだ。しかし、エンタープライズでは、Exchange は大御所の1つであり、Apple がしっかりした同期と通信を実行するのに必要な駒を手に入れるためには、恭順の意を表するほかはなかった。Exchange を完全にサポートすることによって、Apple は Research in Motion(RIM)と同社の BlackBerry 通信機器と直接対決できる。Apple は RIM に照準を合わせ、すべての電子メールとメッセージが RIM のサーバを通過するという方法が単一障害点になっていると批判している。最近、 短時間の障害が2件起きたが、これが RIM の脆弱性を明らかにしている。Apple の方法では、iPhone は企業のサーバと直接通信する。

これにより、エンタープライズの iPhone ユーザには本当のプッシュサービスがもたらされる。これは BlackBerry の初期の大きな呼び物の1つであり、現在の iPhone では Yahoo Mail でしか利用できない。(Yahoo Mail の方法は、私が何か月か前に Macworld に書いたように、やや安全性に欠ける。)Exchange のプッシュサポートには、電子メールとイベント、連絡先が含まれる。たとえば、内部のアドレス帳に追加した連絡先は、ほとんど即座に、iPhone の連絡先リストにも現れる。

ほかにも、以下のような、重要な追加機能がある。

これが iPhone に加われば理想的だ。というのも、それによってセキュリティとシームレスなアクセスが組み合わされ、ユーザの混乱が減少する。Apple がそのような技術を組み込むことは可能だろうが、サーバの側にいかなる標準もないので、そのような技術を開発するかライセンスを受ける必要がある。もっと可能性が高いのは、SDK によってそのようなクライアントが作成され、その配布は大企業の顧客に限定するということだ。

企業は 299 ドルの料金を払って、企業が社内用アプリケーションをセキュアに配布できるようなバージョンの App Store を使い、作成したプログラムを社内使用専用として配布することができる。社内用 App Store は、大企業向けソフトウェア開発者が彼らのパッケージを配布する方法ともなるかもしれない。このようなパッケージは通常、顧客に対し、サイトごとにライセンスされるか、ユーザあたりまたはシステムあたりでライセンスされている。

現在地は Xcode -- Apple が Xcode を単一の統一された開発環境として展開することに決定したということが、Mac OS X で Unix に移行したことや、Intel プロセッサに乗り換えて最速のコンピュータを得ることが保証されたことと同じ程度に、同社の長期的成功にとって重要になっているということは明らかだ。開発者の Xcode に対する意見はさまざまだが、PowerPC から Intelプロセッサへの移行に際し、これだけすばやく展開を進めることができ、そして今モバイル機器へと飛躍するにあたって、プログラマが既存の知識を活用できるということは、Apple が、同社の既存の開発コミュニティ全体を、史上もっとも売れ行きのよいモバイル機器に投入できるということを意味している。

さあ、iPhone 開発者たちよ、シミュレーションのエンジン始動だ!


TidBITS Talk/10-Mar-08 のホットな話題

  文: Jeff Carlson <jeffc@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Powerbook G4 "ファン" クラブ -- ある読者の PowerBook では、ファンが動こうとしない。このラップトップ機のファームウェアを工場出荷状態にリストアすれば問題が解決するだろうか? (メッセージ数 2)

フランスでの dotMac 安売りは? -- .Mac アカウントの更新を Apple の定価よりも安い値段でする(例えば Amazon などのアウトレットで箱売りされているライセンスを買えばできる)のは、何も米国内の顧客のみに限られている訳ではない。(メッセージ数 3)

書類スキャンのソフトウェア -- 多数ある紙の書類をデジタルにアーカイブ保存するには、どんな方法があるだろうか? 検索可能な形で複製を作るには、PDF が安全な策なのか? (メッセージ数 30)

MS Publisher 用の代替製品 -- Microsoft Publisher ファイルを読み込んで、Mac 上で作業可能なフォーマットに変換できるソフトウェア製品を、読者たちが明らかにする。(メッセージ数 6)

Terminal アプリケーション -- 本当に、USB 経由で Mac から HP ハンドヘルド電卓へファイルを送るなんて、常識でしょ? こうすればできる。(メッセージ数 11)

Time Capsule 出荷、USB ドライブへのバックアップもサポート -- 多くの人々が待ち焦がれていたネットワークバックアップ法は、紙一重で手が届かなかった。Glenn Fleishman の記事で、Time Capsule が付属の USB ハードディスクにそのまま Time Machine バックアップをしていることが分かったというのに。どうしてなんだ、Apple! この機能を、普通の AirMac Extreme ベースステーションでも使えるようにしてくれないのか? 最低限でも、私たちが大声で文句を言うことはなくなるだろうに。(メッセージ数 1)

Steve Jobs へのオープンレター: iPod リーダーを支持します_ -- TidBITS Talk の読者たちが、電子的なブックリーダーの開発を求めた Adam の Apple に対する公開書簡に反応を寄せる。(メッセージ数 23)

iCal プラグイン -- メジャーな、あるいはマイナーな祝日を追跡した iCal 用カレンダーが、いくつか公開されている。そういうものを購読すれば、次の祝日を思い出す助けになるだろう。(メッセージ数 4)

Fortune: The Trouble with Steve Jobs -- Jobs と Apple を取り上げた Fortune 誌の特集記事を読んで、疑問が浮かんだ。良い CEO とは、専制君主でなければならないのか? (メッセージ数 2)

iPhone SDK で周辺機器への Bluetooth アクセスはできるか? -- iPhone や iPod touch で Bluetooth キーボード(あるいはその他の周辺機器)を使いたいと夢見た読者たちがいたが、今回の iPhone SDK ではまだそれは実現しない。(メッセージ数 4)

iPhoto より良いもの? -- iPhoto 6 で問題点に遭遇して以来、デジタル写真の管理がもっとうまくできる他のプログラムはないのかと考えている読者がいる。(メッセージ数 2)


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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2008年 3月 14日 金曜日, S. HOSOKAWA