TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#920/24-Mar-08

Mac プラットフォームだからと言って、ウイルスやその他の悪意あるソフトウェアに対して魔法のように免疫がある訳ではない。でも、ちゃんと保護されているためには本当にアンチウイルスソフトウェアをインストールする必要まであるだろうか? セキュリティ専門家の Rich Mogull が、アンチウイルスのツールが Mac ユーザーにとって必要となるのはどんな場合かについて論ずる。他のニュースとしては、Apple が最新の AirPort アップデートでついに AirPort Extreme ベースステーションに接続されたハードドライブにも Time Machine バックアップができるようにしたようだ。また、公式なキャリアが存在していない国においても iPhone が人気を得ていることについて Adam が情報をお伝えする。わがスタッフたちは他のメディアの場にもたびたび登場しているが、Adam が C4 カンファレンスに登場した Hacking the Press 講演のビデオはいかがだろうか。また Glenn Fleishman はポッドキャストで“Here Comes Everybody”の著者 Clay Shirky と対談し、Adam は MacNotables ポッドキャストで iPhone SDK について考えを述べる。今週号の他の記事では、Michael Ash がソフトウェアのアップデートが何メガバイトもの大きなダウンロードになりがちなのはなぜかを説明し、Adam が PDF ファイルの中にあるウェブリンクを検証するために彼が使っている手順を解説する。また、新バージョンの Safari 3.1 と Photoshop Elements 6 について検討するとともに、電子ブック“Take Control of iWeb: iLife '08 Edition”のリリースについてもお知らせする。最後に、今週の TidBITS 監視リストでは Airfoil、Audio Hijack Pro、Nicecast、PDFpen、Dejal Narrator、BeLight's Disc Cover、Toast 9 Titanium、1Password、それに Geophoto のアップデートについて、また Security Update 2008-002 のリリースについてもお伝えする。

記事:


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AirPort アップデートが Time Capsule を拡張し AirDisk を追加

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: 笠原正純<panhead@draconia.jp>

Time Capsule と AirPort Extreme Base Stationネットワークゲートウェイ用の 7.3.1 ファームウェアアップデートが先週リリースされた(日本では AirPort は AirMac、BaseStation はベースステーション。以下同様)。これには二つの目を瞠る改善が含まれているが、どちらも Apple のリリースノートでは触れられていない。今度は、Time Capsule の内蔵ドライブの中身を、AFP サーバを経由せずに、USB で外付けしたドライブに USB のフルスピードでアーカイブ(ネットワークシステムのバックアップイメージを含むコンテンツのコピー)できるようになったのだ。さらに、AirPort Extreme Base Station に USB 接続したドライブもMac OS X 10.5 Leopard で Time Machine のバックアップ用として使えるようになったらしい。

このファームウェアアップデート("Time Capsule and AirPort Base Station (802.11n) Firmware 7.3.1"と名づけられている)には本当のリリースノートはない。同様のことは、同日早くにリリースされた、これと対応するアップデート Time Machine および AirMac アップデート v1.0についても言える。先に書いたアップデートは三つのベースステーション(Time Capsule と二つの 802.11n モデル)をアップデートし、後者は Leopard をアップデートする。注意書には箇条書きも詳しい説明も一切抜きで、バグフィックスとドライブの修正、そして互換性の改良とだけ書いてある。ただ一つ、 AirPort Extreme Base Station with 802.11n(両モデル)にのみ影響する、悪意を持って巧妙に仕組まれた AFP パケットによってなされる脅威に対するセキュリティ上の改善については詳述されている。

AirPort Utility 5.3.1(Mac OS X 10.4 Tiger、Leopard、と Windows XP/Vista 用がダウンロード可能になっている)の Disks タブに見られる Archive オプションが Time Capsule にあった初期のほころびを繕うだろう。内蔵ドライブはあるが、以前は AFP 経由のネットワークでしかコピーができず、速度が遅くなりがちだった。新しいオプションでは、ドライブをアーカイブしコンテンツを USB でつないだドライブにコピーすることができるようになった。内蔵のドライブには、他のすべてのネットワーク接続された Time Machine のバックアップボリュームと同様、ネット接続された Lepard の Time Machine バックアップを含むスパースディスクイメージが置かれているが、Time Capsule の内蔵ドライブは通常の AFP ボリュームとして共有されているので、他のデータを置くことも可能だ。これらのイメージは通常のスパースイメージのようにマウントしたり、Time Machine によるシステムの復元や、Migration Assistant によるデータの移動に使ったり、Leopard インストール DVD でのシステムのセットアップにも使える。

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もう一つの改善についてはおおざっぱな説明しかできない。Leopard が出荷される前、Apple は Time Machine の機能として、Leopard のシステムを 802.11n AirPort Extreme Base Station に接続した USB ドライブにバックアップすることができるとしていた。しかし、Leopard が現れたときその機能は失われていた。その理由について Apple からの説明は全くなかった(2008-01-17 の")Time Capsule とそれが巻き起こす怒り"参照)。Time Machine を使ったネットワークバックアップは、Leopard Server か、Leopard クライアントで共有される AFP ボリュームでしか働かず、Time Capsule に USB 接続したドライブもターゲットとして使うことができるということが、まさに泣きっ面に蜂だった。

Apple はこのファームウェアのリリースで、ファンファーレもなく、AirPort Extreme の外付けドライブへのバックアップを追加したようだ。システム環境設定の Time Machine 設定ペインを開き Change Disk をクリックすると、全ての AFP ネットワークボリュームと Time Capsule ボリュームが見えるようになっている。最初に AirPort Extreme ゲートウェイから AFP ボリュームをマウントすると、Time Machine のために選択することが可能になっている。これはアップデート前には選べなかった項目だ。

これが意図するものかミスかは不明だ。もし意図的なものだとすれば、ベースステーションが Time Capsule のように見えないのはおかしい。もし意図しないものだとすると、ベースステーション購入者達による論争が忘れ去れているのはおかしい。

Adobe が Mac OS X 用の Photoshop Elements 6 を出荷

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳:上松慮生 <ryo.uematsu@gmail.com>

Adobe Systems は Mac OS X 向けの Photoshop Elementsの大きな改訂版の出荷を本日開始したとアナウンスした。バージョン 6 となった今回の改訂により、去年発表された Windowsの同じバージョンと同等のものとなった。Photoshop Elements 6 は Photoshop よりも単純なインターフェイス(Mac OS X と Windows でほぼ同一である)を提供し、Photoshopをマスターしたくない人々に役に立つ数々の新しい機能を備えている。

Photomerge は、同僚の TidBITS 編集者である Jeff Carlsonが使っているところを見るまでは信じることができなかった、魅力的な機能である。これは 2枚かそれ以上の似た写真の最も良い部分をマークすることにより、ソフトが自動的にシームレスな合成写真を生成してくれる機能である。Jeffはこれを使い、同時にじっとしていられなかった彼の甥と姪が一緒に写った合成写真を作っていた。Photoshop Elements 6は、マジックブラシ機能を選択範囲を色でぬれるように改良し、露出調整のためのよりよい自動化ツールを備え、さらに、バッチ修正オプションを備えている。

(ところで、Jeff は最近 "Windows のための Photoshop Elements 6: Visual クイックスタートガイドe"というのを書き上げた。Mac OS X と Windows のバージョンは機能面・インターフェイスにおいてほとんど同一なので、新しい Mac向けのバージョンを使用するためにこの本を買うのをためらう必要は無い。2つのプラットフォーム間での一番重要な違いは写真の整理方法にある。Windows 版では独立した Organizerというモードを使って写真の管理とタグ付けを行うが、Mac 版では Bridge CS3を使う。次に大きな違いだって?ドキュメントのタイトルバーの外観かな。)

Photoshop Elements 6 は PowerPC G4 または G5 あるいは Intel multi-coreプロセッサを搭載した Mac (Mac mini の 1 つのモデルが含まれていない?)と Mac OS X 10.4.8以降の環境で動作する。また、ユニバーサルバイナリで提供される。小売価格は $89.99 であり、Photoshop Elements(ひとつ前はバージョン 4)、Photoshop Album、Photoshop LE、あるいは Adobe PhotoDeluxe のどのバージョンからでも可能なアップグレードは $69.99 となる。


iPhone、大人気。どこでも…シリアでも?

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: 笠原正純<panhead@draconia.jp>

TidBITS 読者の Julian Allason の報告によると、iPhone は Apple がサポートしている国々より広範囲に広がっているらしい。それは Apple がマーケットを立ち上げようと思ってすらいないような場所、シリアのような国々にも広がっているということだ。「シリアにいたときに、どこででも一番ホットな話題といえば iPhone のことだったと聞けば面白いと思われるでしょう。ほとんど誰もが目ざとく私の持っているものを見つけてどっと押し寄せて飛び付いてきました。(もちろん女性は別です。彼女らは遠巻きに見て騒いでいました。)それは自由に使うことができて、思うには、ロックを解除された v.1.1.4 でしょう。価格は US$600 から $625 で「絶対安心保証付き」だそうです!シリアの二つのネットワークが安いサービスを提供していますが、ここでは Four Seasons Hotel の外側にあるものは何でも安価です。iPhone はどこから来るのか?一説によると、イラクにいる米軍兵士からで、空になって引き返してくる輸送車両部隊が運んでいるという話です。」と、Julian は書いている。

この手紙が Web にポストされ、私がそれについて Twitter でコメントをつけた後、他の国に住む読者からも同じことを聞かされた。ケニアでは $1,000 で売られており、ブラジル(伝統的に Macintosh が強い地域だが)では 1 万から 3 万台の iPhone が非公式に売られていると見積もられているそうだ。

全世界的に見ると、 BusinessWeek が 80 万台から 100 万台の iPhone がグレイマーケットで売られていると想定しており、Net Applications の Market Share のサイトによると、どの国でも、iPhone によるウェブブラウズは旅行者が行っていると想定される量を上回っているとのことだ。


DealBITS 抽選結果:IPNetMonitorX の 25% 引き

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: 笠原正純<panhead@draconia.jp>

先週の DealBITS 抽選で gmail.com の Gabriel Jolivet と gmail.com の Simon Horn が $60 の IPNetMonitorX に当選した。おめでとう!当選しなかったとしても、IPNetMonitorX の 25% 引きがあるのでがっかりすることはない。2008 年 4 月 3 日までに Sustainable Softworks でオーダーするときに、クーポンコード "TidBitsPromo" を使うと値引きが受けられる。ご応募頂いた 984 名には感謝します。そして、次回の抽選にもご応募ください。


MacNotables で iPhone SDK の重要性についての議論

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: 笠原正純<panhead@draconia.jp>

最近の二つの MacNotables podcast で、Chuck Joiner と私は iPhone SDK について話し合った。 最初のパートで私達が吟味したのは、Apple がその手に握ろうとしているコントロールのレベル、デベロッパーからのポジティブな反応、それに jailbreaking コミュニティの将来などについてだ。デベロッパーからのポジティブな反応とか、jailbreaking コミュニティの将来などについてだ。二番目のパートでは、iPhone App Store のビジネスモデル、この発表における企業向けの意義、それに iPhone が受け入れられたのがなぜ都市部が主だったのかについて話し合った。


Adam の "Hacking the Press" C4 講演を観よう

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

1990 年代の終わりごろ、私はあるアイデアを思いついた。プログラマーでない私でも、プログラマー向けカンファレンス MacHack でプレゼンテーションすることはできるのではないか、と。私はそれに“Hacking the Press”(報道をハックする) と名を付けた。それは、自分でビジネスを運営しているソフトウェア開発者たちを対象に、報道関係者とどのように付き合うべきかを説明する、という趣旨だった。この講演をするのはいつもとても楽しく、私はその後に何も予定のない時間割りのブロックを確保するように常に気をつけたので、私のセッションはたいてい少なくとも 3 時間は続くのだった。まあ、人々が質問を浴びせるのをやめなければの話だが。その後、私は講演内容の一部を一連の記事(報道をハックする、パート 1:なぜわざわざ関るのか|報道をハックする、パート 2:出版物の種類|報道をハックする、パート 3: 報道の種類)にまとめ上げた。ずっと後になってから何人もの開発者たちから聞いたところでは、彼らが製品を打ち上げるに際して私の講演や記事が役に立ったということだった。けれども MacHack が(そして ADHOC と改名されたその後継が)終焉を迎えたことにより、私が最後にこの講演をしてからもうかなりの時間が経ってしまった。

そんな時だった。私が Wolf Rentzsch から電子メールを受け取ったのは。彼と私はある年の MacHack で相部屋になったことがあり、彼こそ C4 カンファレンスの立役者その人だ。この C4 というのは独立の開発者たちのための集まりで、MacHack とほぼ同じ必要のために産み出されたものだ。(2007-08-20 の記事“C4 カンファレンスに MacHack を想う”参照。)Wolf は私にHacking the Press 講演を C4 でもして欲しいと頼み、私はこの願ってもないチャンスに飛びついた。C4 で私は素晴らしい時を過ごしたが、いろいろのセッションの内容を詳しく文章にする気はなかった。いずれにしてもたいていの講演の内容は私の手に負えるものではなかったからだ。けれどもそれ以来、Wolf は少しずつ講演のビデオを Viddler のサイトにリリースし始め、私の講演のビデオもここにアップされているので他のものと同様に観ることができる。マーケティングをテーマにした Wil Shipley の講演もぜひ観ていただきたい。中でも、彼が初めのところで飛ばした iPhone についての冗談は傑作だ。(私は Wil のアドバイスにすべて同意できる訳ではないが、講演自体はとても楽しい。)


Safari 3.1、パフォーマンスとウェブ標準サポートを強化

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

炎のようなパフォーマンスを誇りながら、Apple は Safari 3.1 をリリースした。同社の Mac OS X 用および Windows 用無料ウェブブラウザの最新版だ。Apple はプレスリリースの中で、少なくとも 2.4 GHz Intel Core 2 Duo ベースの iMac に 1 GB の RAM を積んで Windows XP 上で動かした場合、Safariは Internet Explorer 7 に比べて 1.9 倍速く、Firefox 2 の 1.7 倍速いと主張している。何ですと?あなたの iMac のメイン・オペレーティング・システムは Windows XP ではない?ご心配なく。Safari のメインページでは、Apple は Mac OS X 10.5.2 上で動かしたときのベンチマークも掲載しており、それによれば Safari はページの読み込みが Firefox 2 と比べて最大 3倍速く、JavaScript の実行は Firefox の最大 4.5 倍速い。ますます多くのサイトが JavaScript を使ったインターフェースでインタラクティビティを提供するようになっているので、JavaScript の性能はますます大事になっている。残念なことに、Apple は Safari 3.1 のパフォーマンスを Safari 3.0 と比較していないので、現在の Safari ユーザがどれだけの速度向上を得られるかは分からない。

Apple は最先端のウェブ標準のサポートについても大きく前進し、改良されたSafari 3.1 は、デザイナーが指定したフォントが必要に応じてその場でダウンロードされる CSS Web フォントや、CSS アニメーション、HTML 5 メディア、HTML オフラインストレージに対応している。Safari のダイナミック SVG(Scalable Vector Graphics)画像対応も改善された。(詳しくは Safari Product Overview PDF を参照。)これらの機能に加え、Safari 3.1 では数多くのセキュリティ上の脆弱性が修正されている。もちろん、ほかの多くのブラウザがこれらの標準をサポートしていないのだから、Safari のサポートは、将来のウェブ拡張に向けた道の、1つの歓迎すべき敷石にすぎない。

私たちにとって特に興味があるのは、 HTML 5 オフラインストレージのサポートで、これによって Google Docs や Zoho Writer のようなウェブアプリケーションがデータをローカルの SQLite データベースに格納し、オフラインでアクセスできるようになるはずだ。Google はすでに Google Gears でこの問題に対処し始めている。これはオープンソースのオフラインストレージで、Macでは Firefox でのみ動く。この2つは似ているが、互換性がない。ただし、 両者を統合する方法はいくつかあるだろう。

Safari 3.1 は Software Update 経由で、または 40 MB の独立ダウンロードとして入手できる。Panther ユーザはクリックして回るにはおよばない。というのも、Safari 3.1 には Mac OS X 10.4.11 以降が必要だからだ。おそらくは Safari の基盤になっている WebCore および WebKit フレームワークを修正するためだろうが、このアップデートでは再起動が必要だ。


インターネットの自己組織化: Here Comes Everybody

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

私がインターネットを使い始めたのは、その初期の時代、1980 年代の終わりで、1993 年に商用利用が始まるとすぐに仕事とするようになった。私が使い始めたときから明らかだったことは、人々をつなげる方法について制限のないメディアに何万人もの人々をまとめて放り込めば、まったく新しい行動様式が生まれるだろうということだった。言いかえれば、情報を交換したり、その情報を記録したり、その情報を活用したりということについて無限の能力を持った人々がとるであろうコミュニケーションの形態や新しい種類の相互作用を予測することなど、まったくできなかった。

Clay Shirky は、この問題について十年にわたり、ジャーナリストとして、コンサルタントとして、そして現在は New York University の教授として考察してきた。彼の著書 "Here Comes Everybody"(The Penguin Press、2008)は、企業も階層も外部からの働きかけもなしにグループを組織してゆく個人の力について彼の見解を説明している。国境もなく、制限もわずかで、社会的認可もほとんどないインターネットは、まさに現在理解されているような仕方で、破壊的だ。これは何も、MySpace や電子商取引、あるいは Google に限った話ではない。ベラルーシの学生の抗議、拒食症患者の相互自己非支援、元エホバの証人メンバーの会合といったものすべてが、この新しい混ぜこぜに含まれる。

この本の中で、Clay は、人々のグループがいかに新しい方法でふるまうようになったかという挿話を数多くあげ、統計、調査、観察を加えてそれらの物語を広げている。たとえば、Buffy the Vampire Slayer を放送していたテレビネットワークが、長く続いた Buffy 掲示板を閉鎖することにしたとき、コミュニティが独自の基金を作り、自分たちが存続できるようなシステムを構築したことに彼は注目する。Shirky が本の中で指摘しているのは、このグループには1つの要求「大きく変化しないこと」があったということだ。議論のためのシンプルでありながら効果的なツールを使ってコミュニケートすることを学んだこのグループは、その方法を手放したくはなかったのだ。

2008 年 3 月 14 日、私は Clay とひざを突き合わせ、この本について話した。それは Seattle Times の短い記事,を書くためのもので、彼の本のビジネスの側面に焦点を絞ったものだった。しかし、Seattle Times は、およそ 40分にわたる私たちの会話を ポッドキャストとして公開することを許可してくれた。

Shirky と私は Yale の同窓生で、どちらもアートを専攻していたが、Clay のほうが4年先輩だった。私たちは何度か顔を合わせ、ある劇に一緒にかかわったこともある(彼は照明、私は音響だった)。何年か前、私たちはどちらもこの分野に興味を持っていることを知って喜んだ。私はどちらかというとハウツーものや実証記事を書くことが多いが、Clay は大局を描いている。


なぜ簡単なアップデートなのに巨大なダウンロードを必要とするのか?

  文: Michael Ash
  訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>

[編者注:私は無謀にも Rogue Amoeba のソフトウェアエンジニアである Michael Ash に、同社はなぜ極めて小さなリリースの度に Airfoil の 10 MB ものアップデートを私に押し付けてくるのか聞いて見た。同社の製品に対するアップデートについての 同社のブログに対する私の投稿を見て、Mike は私を多少ぎょっとさせる内容の広範な説明を送ってきた。それで彼にお願いしてそれを基にしてこの記事を書いて貰った、我々はなぜあれ程沢山のダウンロードをする羽目になるのかを。これをソフトウェア開発のソーセージ工場の内側を見るという感じで見て欲しい。-Glenn]

我々が我々のソフトウェアのマイナーなアップデートをする時に、お客さんに対して小さなアップデートパッケージだけを送り出せれば良いのであるが、それは現実的ではない。その理由は、我々のシステムには Sparkle ソフトウェアアップデーターを組み込んでいるからで、我々の顧客そして我々自身に対する多くの使い易さのために余分のオーバーヘッドを受け入れたのである。これで所期の目的は達せられている。我々が選択できる組み込みのソフトウェアアップデーターには三つの異なったアプローチがあるが、我々はそのうちの一番最後のものを選んだのである。

選択肢の一番下に、変更されたファイルのうち変更された部分だけを含んだ真のバイナリ "diff" アップデートがある。これは新しいバージョンと古いバージョンの間での違いをプリプロセスすることで得ることが出来るが、この方法はあまり信頼性がなくかつ良い結果を出すには結構な骨折りが必要である。Leopard 上では、まだサインのされていないプログラムをファイアウォールリストに加えるとバイナリが変更されることになり、それが差分或いは差異ベースのアップデーターに対する問題を引き起こす原因となる。同じことが、そのプログラムに対する他の如何なる変更や不慮の破損にも当てはまる、というのはこのアップデータがもう整合しないファイルに対してもその変更を当てはめようとするからである。これに代わるアプローチに、サーバー側にもっと知性を与えることでアップデーターがチェックサムを利用してその場で差異を計算させるというのがある - 一連のデータを一義的に認識する一種の速記 - Unix ユーティリティの rsync がやる様に。この方法だと、ユーザーは常に我々が持っているものに確実に行き着くことが出来る。しかし、もっと多くのサーバー知性というのはより多くのサーバー資源とメンテナンスを必要とすることを意味する。この時点で、平易な HTTP を使ってアップデートを実行するのは止まってしまい、より進化したプロトコルを使う必要が出てくる、と言う事は失敗に至る原因がより多くなりそしてユーザーが助けを必要とする場面も増えるということを意味する。

中間レベルの一つに、ファイル単位のアップデートがあり、この場合はアップデーターは変更のあったファイルのみをダウンロードする。私自身も過去に他の会社で二つ程その様なシステムを書いたことがあり、それはそれできちんと動作する。サーバーはアプリケーションに対して個別のファイルを独立にダウンロードさせる機能、これだと通常の Web サーバー上で行なえる、そしてファイルのリストとチェックサムを与える。アプリはチェックサムをユーザー側に保存されたものと比較し、変更のあったもの全てをダウンロードし、あなたの手元にはアップデートされたプログラムが残るということになる。このアプローチの問題は、アプリケーションの中の一番大きいファイルは新しいビルドではまず間違いなく変更が加えられていることである:その実際のプログラムバイナリ自身である。この中間アプローチだと、一つのリリースから次のリリースにかけて変更のなかったファイルは再ダウンロードしなくてすむが、その効果は皆さんが思う程には大きくないのである。

そして最後に来るのが Sparkle の様な全アプリアップデーターであり、我々もこれを使っている (Sparkle に関する更なる詳細については "Sparkle がアプリケーションのアップデート体験を改善" 2007-08-20 を参照)。Mac 開発業界は、この頃では多かれ少なかれ Sparkle を中心に標準化されつつある様に見受けられる。アプリケーションを開くたびに、それが常に更新されている様にするために Sparkle を使っているということを発見する事例が多いことには目を見張るものがある。私自身でこれを埋め込んだプログラムはさておいても、ファイル単位のアップデーターを使ったアプリケーションを私が最後に見たのは何時なのか思い出せない。Apple でさえそのアプリケーションに対して巨大なアップデートを出しているように見える。一方で Apple はそのオペレーティングシステム自身に対する 経時的なアップデートにはファイル単位パッケージを間違いなく使っているが、時として、問題を引き起こす様に見えるものに対しては最新の Mac OS X コンボアップデーターを使って再インストールすることで対応しているように見える。


PDF ファイル中のウェブリンクを検証する

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

私たちの電子ブックは大量のウェブリンクをその中に含んでいる。そこでずっと以前から、それらのリンクが著者が原稿を執筆した時以来まだ有効のままであるかどうかを検証する仕事が、私たちの制作作業の最も退屈な部分の一つだった。この作業をできるだけシンプルにしたいといろいろ試みた結果、私は以下に説明するような手順を思いつくに至った。

同じことを試みてみようと思われる方には残念なお知らせだが、私の手順はある高価なプラグイン、ARTS PDF 製の $699 の Aerialist Pro に依存している。私が Aerialist Pro を買った時の動機は、これがページ番号をもとに PDF の中でそれに対応するページへの PDF リンクを作ることができるからだった。私はこれを使って iPhoto '08: Visual QuickStart Guide の電子ブック版の索引ですべてのページ番号にリンク付けをした。驚くほど出来の悪い Acrobat Professional 8 のリンク付けツールを使えばこの作業に何時間もかかっただろう。だから、私は高い値段に見合うだけのものが得られたと思った。Mac 上では、Aerialist Pro は Acrobat Professional 7 の中でしか働かない。だから、私はこのバージョンをまだ持っていて幸運だと思った。これはまだ今でも Amazon.com で入手できるようだ。

Aerialist Pro には他にも役に立つ機能がある。例えば、すべての外部リンクをリストにしたレポートを生成できる機能だ。この機能のお陰で、これから述べる私の手順を編み出すために必要なものが揃った。(悔しいことに、使いこなせればいいのにと思える Aerialist Pro のもう一つの機能、つまりズームレベルとか全体としてのアピアランスなどのリンクのプロパティを設定する機能は、使ってみるとバグがあって書類を連続モードで表示させた時に問題を起こすことが分かった。ARTS PDF はこのバグを認めているので、彼らがこのバグを修正するとともに Aerialist Pro が Acrobat Professional 8 の中でも動くようにしてくれることを願っている。)

Aerialist Pro の生成する外部リンクレポートはそれ自体 PDF なので、私の最初のステップはそのレポートを Acrobat からプレインテキストファイルとして書き出すことだ。このファイルは Dependency Report.txt と呼ばれる。(拡張子は必ず付ける。)でも私が最後に必要なのは .html ファイルなので、次にすべきは Noodlesoft の Hazel を設定して、指定されたフォルダの中にある Dependency Report.txt という名のファイルを探し、それを拡張子 .html の付いた、他と重複しない名前に改名し、それを BBEdit で開くようにする。

PDF-link-checking-Hazel

いったんそのファイルが BBEdit で開けば、そこで text factory を走らせる。Aerialist Pro から来たごく単純な出力をもとに、体裁上の部分を取り除いてから、すべてのリンクを適切な HREF に変える。ここの部分はかなり複雑な grep パターンマッチングだが、それを作るのは朝飯前とは言わないまでもそれほど極端に難しいものでもなかった。

PDF-link-checking-BBEdit

その次の一手は、すべてのリンクのチェックだ。いろいろ探し回ってテストしたあげく、私は Braxton's Link Tester (BLT) という $25 のユーティリティに行き当たった。これはなかなか見事にリンクのチェックを実行して、問題のあるものを報告してくれる。BBEdit で text factory を走らせてファイルを保存してから、私はこのファイルのプロキシアイコン(すべてのウィンドウのタイトルバーにある小さなアイコンのこと、単純にこれをクリックし、クリックをホールドして、ファイルの普通の Finder アイコンと同じようにドラッグして使える)を BLT の Dock アイコンの上にドラッグする。BLT が開けば、Check Links ボタンをクリックし、このプログラムがすべてのリンクを訪問し終えるまで数分間、何か他のことをしに席を外していてよい。

私が BLT で気に入っているのは、問題のないリンクをすべて集めた緑のチェックマークタブを簡単に選択から外せることだ。私はそれらには興味ない。壊れたリンクだけに注意を集中させたいからだ。(下に示したスクリーンショットでは、問題のないリンクが表示されている。)BLT は、単に良い・悪いだけをシンプルに表示するのみではない。接続に失敗したリンクと、アクセスを禁止されたリンク、タイムアウトしたリンク、robots.txt によって禁じられたリンク、サーバのエラー、手動で確認すべき電子メールリンク、それに BLT が認識できないプロトコル、をそれぞれ識別して振り分けてくれる。

PDF-link-checking-BLT

たいていの場合、壊れたリンクはあったとしてもせいぜい二・三個だ。だから、最後にすべきことは、元の Word 書類と作業中の PDF ファイルに戻って、それぞれ問題あるリンクを消去するか、または正しいリンクで置き換えるかするだけだ。

これがリンクの検証を自動化する唯一の方法だなどというふりをするつもりは毛頭ない。例えば AppleScript を使って、まずリンクを見つけ出してからそれらをチェックし、トラブルのあったものだけをレポートとして出力するようなスクリプトを書くことも可能かもしれない。でも、私のこの説明が、どのようにすれば目的通りにきちんと動作する PDF ファイルを制作するために手動のステップを減らせるのか、そのアイデアをほんの少しでも感じ取れる参考になるならば嬉しい。


Mac ユーザーはアンチウイルスソフトウェアを使うべきか?

  文: Rich Mogull <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

私がセキュリティの専門家だとわかると、人々が話しかけてくる会話の内容は必ず次の三つのうちのどれかだと、ほぼ間違いなく請け合える。その相手がテクノロジーに詳しくない人だった場合は、私は一生懸命に有価証券のことなんて何にも知らないと説明しなければならない。私の専門の「セキュリティ」は、売却目的有価証券 (trading securities) で金儲けするヒントは扱っていないのだ、と。その相手が Windows を使っている場合は、私はとにかくデータをバックアップしてシステムを再フォーマットしなさいと助言する。でも、その相手が Mac を使っている人ならば、たいていの場合そこから少々ややこしい議論が始まる。

セキュリティのコミュニティーには、Mac ユーザーたちはセキュリティに関心など持っていないという誤解が広く存在している。私は TidBITS に加わって以来、Mac ユーザーたちも Windows の同胞たちと同じくセキュリティのことを懸念しているということを知った。でも、どこまで知っていなければならないのかについては自信がない状態なのだ。Windows ユーザーなら、どんなに認識の甘い人であっても自分のシステムが常時アタックの集中砲火を浴び続けていることを理解している。けれども Mac ユーザーならば、ブラウザの裏側に時折飛び出してくる広告や、それにもちろんあのどっさりのスパムメール、そういうもの以上のアタックを受けることは現実にはあまりない。

私が Mac のセキュリティ専門家だとわかると、人々はこう尋ねる。「おお、それならば、私はこれ以上セキュリティについて心配する必要があるのか?」それからすぐに続けて、「アンチウイルスソフトウェアを使うべきなのか?」と尋ねてくるだろう。アンチウイルスの件に関しては、一言で答える訳には行かないが、答えはそれほど難しいものでもない。

現実が何かと言えば、現状の Mac プラットフォームは比較的安全だということだ。Windows には何十万個というウイルスやその他の悪意あるソフトウェアプログラムが飛び交っているが、Mac をターゲットにしたものは 200 個以下しか知られていない。しかもその多くは Mac OS X よりも前の Mac OS を狙ったものだ。(従って現代の Mac には何の影響もない。)

もちろんそれは、Mac OS X が現行バージョンの Windows に比べて本質的にウイルスに対してセキュアなものだと言っているのではない。(ただし、XP SP2 よりも前の Windows と比較すれば、よりセキュアであることが明らかだが。)近年報告されパッチされた数多くの脆弱性は、Windows で相応するものと同等に大きなセキュリティホールだった。しかしながら、これは多くのセキュリティ専門家の意見が一致するところだが、今日の悪意あるソフトウェアの多くは金銭上の動機で動いており、支配的なプラットフォームをターゲットにする方がはるかに金になる、ということは間違いない事実だ。

デスクトップのアンチウイルスソフトウェアが限定された防御しか提供できず、その一方で非常にコンピュータのリソースを多く占有する傾向にあることもまた事実だ。最も肯定的な評価によった場合でも、アンチウイルスソフトウェアがキャッチするのは既知の悪意あるソフトウェア(ウイルス、ワーム、トロージャンなど嫌らしいもの)で野に放たれているもののうち 85 から 95 パーセントに限られている。見過ごされてしまう部分も無視できないレベルだ。殊に、スケジュールで設定されたフルスキャンがいったん走り出せばあなたのシステムがすっかり屈服させられてしまうことを考えれば。アンチウイルスのツールは、ずけずけと立ち入ってくるのがその本来の性格で、広告しているレベルのセキュリティにははるかに及ばないものしか提供できず、長年にわたって保守管理するには相当の費用がかかるだろう。私は個人的に、悪意あるコードがそもそも私のコンピュータに到達することがないようにするための別の防御策を講じていて、今のところ(そう祈りたいが)私の Windows XP システムでもアンチウイルスソフトウェアが何かを発見したことは一度もない。私の Windows Vista システムではアンチウイルスソフトウェアを走らせたことすらない。こちらのプラットフォームではセキュリティがより強く、Vista をターゲットにした悪意あるプログラムはまだ数が限られているからだ。私が Macintosh 用のアンチウイルスプログラムをテストしてみた時、たいていの場合何かを発見するのは私のスパムメールフォルダの中にある添付書類だけだった。だから、到着したすべてのメールをゲートウェイでスキャンし、ブラウザでは安全なブラウジングの習慣を保つとともに一つ二つブラウザプラグインを使う、そういう方法の方がデスクトップのアンチウイルスソフトウェアよりもより効果的と言えるのだ。もう少し詳しく論じてみよう。

Mac OS X がもはやセキュアとは言えないとしても、私たち Mac ユーザーが現在直面しているリスクのレベルは Windows の人たちよりも低い。もちろんこの力関係は今後変わるものと考えるべきだが、少なくとも現状でのリスクのレベルと、たいていのアンチウイルスソフトウェアのリソース占有度の状況とを考え合わせれば、特定の限られた状況を除いてはアンチウイルスをお勧めすることは難しい。そこで、皆さんがアンチウイルスソフトウェアをお使いになる前に考慮しておくべき点をいくつか挙げておこう。

  1. 平均的な Mac ユーザーにはデスクトップのアンチウイルスソフトウェアをお勧めしない。それよりも、他の予防措置を実行すべきだ。デスクトップのアンチウイルスソフトウェアは必要ではない(私は使っていない)が、電子メールアカウントは必ずスパムやウイルスのフィルタリングをサポートするものを使うこと。例えば Gmail、Yahoo Mail、あるいは Hotmail などがサポートしている。スパムメールは悪意あるコードの伝播のための主要なベクトルの一つであって、ゲートウェイで防御を施せば電子メールベースの Mac ウイルスが現われてもあなたが受けるリスクは減る。ブラウザに関して言えば、Firefox ウェブブラウザNoScript プラグインを装備させたものを考慮してほしい。NoScript は、選択的に、かつ押し付けがましくもなく、すべてのスクリプト、プラグイン、その他ウェブページ上のコードで訪問中にあなたのシステムを攻撃する可能性のあるものをブロックしてくれる。また、常に目を光らせて、例えば TidBITS のようなニュースソースを購読し、もしも何か状況が変われば遅かれ早かれあなたも知ることができるように備えておくのがよい。
  2. もしもあなたがリスクの多いオンライン挙動をしているのなら、アンチウイルスソフトウェアを使うことと、それから必ず NoScript 装備の Firefox に切り替えるべきだ。リスクの多い挙動というのは、必ずしも仕事中に見るべきでないウェブサイトをブラウズするといったことだけではない。例えば標準ではない場所から取り寄せた見慣れないソフトウェアをインストールしたり、スパムメールのフィルタリングをしなかったり、手当り次第にソーシャルネットワーキングのプラグインをインストールしたり、インターネットの風変わりな片隅をこっそりと歩き回ったり、そういった挙動が、悪意あるコードの感染に結び付く可能性があるのだ。リスクの多い挙動をさらに挙げるとすれば、オンラインのギャンブル、ハッカーの研究、非合法のファイル共有(または合法のファイル共有であっても同じネットワークで非合法の活動が行われている場合)や、YouTube のような有名どころ以外のメディアヘビーなサイトをブラウズしたり、何かのフォーラムとか無名のサイトなどにポストされたソフトウェアをダウンロードしたりといったこともそうだ。どこからが危険だとはっきり線を引くことは難しいが、一般的なアドバイスをするとすれば、もしもあなたがたくさんのコンテンツをダウンロードしているなら、明らかにリスクがあると思われる挙動をしているなら、あるいは非主流のサイト(特にフォーラムのようなところ)で長い時間を費やす習慣があるなら、その場合は追加の予防措置を講ずるべきだろう。もしもモニターされていない Mac をあなたの子供たち(ティーンエイジャーを含む)に使わせているなら、その場合も同様の予防措置が必要で、また彼らが使うアカウントは必ず管理者アカウントでないものにしておくべきだ。
  3. もしもあなたが Windows ユーザーとの間でリスクの可能性のあるファイルを多数交換しているならば(中でも、別途スキャンされないままで添付書類の付いた電子メールを転送したりしているならば)しかもあなたの電子メールがあなたのメールサーバでスキャンを受けていないのならば、その保護のためにアンチウイルスソフトウェアを考慮する方がよい。あなたの電子メール受信箱に届いた冗談とかグリーティングカードとかをすべて友人たちに回すのが好きな人は、その習慣を改めるか、そうでなければアンチウイルスソフトウェアを使って、Windows 使いのあなたの友人たちに何かを広めてしまうのを防ぐべきだ。もしもあなたが送信時のフィルタリングを含んだ電子メールサービスを使っていて、しかも電子メール以外の方法では友人たちとのファイル交換をしていないのならば、デスクトップフィルタリングの必要はない。
  4. アンチウイルスのポリシーを備えた企業の環境であなたの Mac を使っている場合も、やはりアンチウイルスソフトウェアは必要だ。理想的には、会社の基準に合致して中央で管理されたソフトウェアが会社の IT 部門から供給されるべきところだ。企業環境でアンチウイルスソフトウェアの使用が必須とされることが多いのにはさまざまの理由がある。コンプライアンス上の理由や、会社内で感染が起こった場合に備えての反応機構として要求されることもある。たとえあなたの Mac が比較的安全であったとしても、それが Windows システムへの感染を広める道具として使われたり、コンプライアンス上の不備と見なされたりすることは避けたいだろう。もしもあなたが企業の IT 部門にいるのならば、メジャーなアンチウイルスツールで Mac をサポートし、しかもあなたの会社の Windows システムと一貫したポリシーを配備可能なものはいくつかある。企業内で Mac をサポートしたくない理由はあるかもしれないが、アンチウイルスソフトウェアが入手できないというのはその理由にあたらない。
  5. もしもあなたの Mac で Boot Camp または仮想化によって Windows を走らせているならば。Windows 用のアンチウイルスソフトウェアをインストールするのがよい。たとえ Mac 用のアンチウイルスツールを奔らせていても、それはあなたが Windows を走らている時には助けにならない。そのパーティション、あるいはその仮想マシンは、普通の Windows システムとまったく同様に保護してやる必要がある。

将来どこかの時点で、もしも Apple が引き続き魅力ある製品を作り続けるならば、私たち Mac ユーザーもより大きなターゲットとなり、その結果より高いレベルのリスクを負うことになることだろう。Cloudmark 社の Director of Emerging Technologies である Adam J. O'Donnell 博士は、最近ゲーム理論を駆使して Mac がどの時点で悪意あるアタックのターゲットとなる度合いが増えるかを分析した。彼は言う:「ゲーム理論によれば、マルウェアの作者が確実に PC のセキュリティを破ることのできる割合に Mac 市場におけるその割合が匹敵するものとなった時点が感染ポイントとなり、その時こそ、お金に絡んだ、利益の揚がる Mac マルウェアの出現が始まるだろう。」例えば、Windows Vista はその前身に比べて劇的にセキュア度の上がった製品だ。これがより広く使われるようになるに従って、Mac の市場シェアが成長すると共に私たちは一歩ずつ感染ポイントに近づいて行くだろう。Windows への攻撃が難しくなればなるほど、Mac がより利益を生むターゲットと見なされて行く訳だ。

これを避けるために、私たちは何をすべきか? それは大体において Apple 次第だ。Mac OS X 10.5 Leopard で、Apple は数々のアンチ攻撃テクノロジーを実装し始め、これはこのプラットフォームを攻撃する困難さのレベルを上げる役に立っているかもしれない。けれども、そのような機能の大部分はまだ完成の段階に到達していないし、アタックの効果を制限するのに必要な保護を提供できるレベルには達していない。(2007-10-22 の記事“Leopard はあなたのセキュリティをどう改善するか”参照。)もしも Mac OS X が Windows と同等のレベルのセキュリティをきっちりと保ち、それでいて Mac の市場シェアが二桁の下の方という現状のままならば、引き続き Windows が支配的なターゲットであり続けるに違いない。私たちとしては、今後もよりセキュアなプラットフォームとなるよう Apple に働きかけて、悪意あるソフトウェア市場の力関係がシフトする前にこれらのテクノロジーをフルに実装するように圧力をかけ続けなければならない。より良いライブラリのランダム化、サンドボックス機能、QuickTime と Safari のセキュリティ機能などが、Mac ユーザーたちを 保護するために大きな役割を果たすことになるのだから。

一言でまとめれば、現時点においては、平均的な Mac ユーザーにはデスクトップのアンチウイルスをお勧めしない。それが必要になるのは、リスクの多い挙動をする人、Windows の友人たちを保護する必要のある人、あるいは企業のポリシーに従う必要のある人たちだけだ。今後時が経てば状況が変わることは十分あり得るので、今あなたのすべきことは、あなたのまわりの世界に常に目を光らせて、道理にかなった予防措置をいくばくか施しておくことだ。しかしながら何よりも、今後も引き続きもっと強力なセキュリティをと Apple に働きかけて、将来にわたってリソース食いのデスクトップアンチウイルスを使わずに済むようにして行こうではないか。


Take Control News: iWeb でプロのようなサイトを作る

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: 笠原正純<panhead@draconia.jp>

Apple は iWeb '08 で Mac ユーザが洗練されたウェブサイトを作る手助けをしようと目論んでいる。しかし、iWeb のすべての機能を簡単に理解できるものではないし Apple による解説も十分ではない。新しい "Take Control of iWeb: iLife '08 Edition" は iWeb エキスパートの Steve Sande による 133 ページの電子ブックで、あなたが .Mac やそれ以外のウェブホストでウェブサイトを構築し公開することを手助けするステップバイステップでの説明と時間を節約する情報を提供してくれる。あなたは Steve がデザイナーの目を持って、マスクや反射、Instant Alpha といったツールを使って iWeb のテンプレートを拡張するところを彼の肩越しに見ることができる。Steve は、ブログやポッドキャスト、写真、動画ページといった様々なタイプの iWeb ページを作る最良の方法を教えてくれる。さらに、基本的な方法やオンラインヘルプを越えた話題についてもカバーしている。あなたは、特別な要素をあなたのサイトに追加する方法についても習得するだろう。例えば、iPhoto のアルバムやギャラリー、YouTube ビデオ、Google AdSense 公告、Google maps や Google Docs をフィードするためのフォームといったものだ。更にあなたは、サイトのロードを速くするためのグラフィックの編集方法、ポッドキャストやビデオのインポートの方法、イメージマップの作り方やオンラインストアを作るための CafePress、Google Checkout、Zen Cart との作業についてもカバーされていることに気づくだろう。この本は PDF フォーマットなら $10 で読める。電子ブックカバーにある Print リンクを使ってプロによる製本版を注文することもできる(追加料金は $10.99 だ)。

この新しい版は Steve の "Take Control of iWeb: iLife '06 Edition" を以前より多くの情報やアドバイス、テクニックを盛り込んでアップデートしたものだ。2007 年 8 月 1 日以前に前バージョンを購入した読者は、電子ブックの表紙にある Check for Updates ボタンをクリックしてアップグレードディスカウントが受けられる。それ以降に購入した皆さんで "Notify me" チェックボックスをチェックしていた方は無償のアップデートをダウンロードするためのリンクを受け取っているはずだ。お知らせを受け取るようにしていない人や、私達からの電子メールが届いていない人は [email protected] まで詳細を問い合わせていただきたい。


TidBITS 監視リスト: 注目のソフトウェアアップデート、24-Mar-08

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>


TidBITS Talk/24-Mar-08 のホットな話題

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Adobe Reader 作業の参考文献 -- TidBITS Talk のある読者が、Adobe Reader に関係した助言を求めている。(メッセージ数 2)

G3 iMac の問題 -- ちょっと古い Mac を復活させようとして、いくつか問題が起こった。ハードドライブを再パーティション分けする方法、古い AirPort カードが現代のワイヤレスネットワークでも働くようにする方法、マシンの内蔵電池を交換する方法などだ。(メッセージ数 8)

私が Time Machine で気に入らない点 -- Time Machine は、どうすれば手軽に継続的なバックアップができるかという、古くからなおざりにされてきた問題に対処している。でも、一時間に一回というのはやり過ぎではないか? (メッセージ数 11)

Drobo とネットワーク上の Time Machine -- Drobo ハードドライブストレージ機器は Time Machine のバックアップ先として理想的なものに思える。でも、その実際の動作はどうなのか、ある読者が詳しい情報を探している。(メッセージ数 3)

Bluetooth ヘッドセットを Mac で -- Bluetooth ヘッドセットは、デスクトップ Mac ではどの程度うまく働くか? (メッセージ数 3)

Safari 3.1 と Firefox 3 が夜ごと WebKit にやられる? -- Apple と Mozilla がそれぞれのウェブブラウザをアップグレードし、当然ながらいずれも大幅なパフォーマンスの向上を謳っている。でも、何かこれらをスローダウンさせているものがあるのではないか? それから、標準規格のサポートはどうなったのか? (メッセージ数 19)

AppleWorks に代わるもの -- Apple が AppleWorks を見捨ててから長い年月が過ぎたかもしれないが、このソフトウェアは依然としてたくさんの使い道がある。ある読者が未来を見据えて、この逞しい奴に代わることのできるソフトウェアがあるのかどうか、古い AppleWorks ファイルを開く方法を持ち続けるにはどうすればよいかと思案する。(メッセージ数 37)

Mac ユーザーはアンチウイルスソフトウェアを使うべきか?_-- アンチウイルスソフトウェアについて書いた Rich Mogull の記事へのコメントとして、読者たちが Firefox 以外のブラウザにもスクリプトをブロックする機能があることを指摘する。(メッセージ数 2)

MacBook Air のせいで目に青あざ -- PBS トークショウのホスト Charlie Rose は MacBook Air を持っていて転んでしまった。彼が自分の顔を守るよりもコンピュータを守る方を選んだことは何かと物議を醸したが、考えてみれば私たちは他のものを持っている時にも同じような行動をすることがある。(メッセージ数 4)

Finder ファイルマッピング -- Finder は、ファイルタイプに対してアプリケーションを割り当てる際に必ずしも首尾一貫した行動をする訳ではないらしい。(メッセージ数 15)

Google、Firefox と MacBook Pro -- Firefox がクッキーの割当てに関して奇妙な行動をするのは、ブラウザが悪いのではなくて Google のせいのようだ。(メッセージ数 2)

ネットワークにギガビット Ethernet で活を入れる -- Ethernet ネットワークのアップグレードについて書いた Adam の記事をきっかけに、配線(と価格)について、将来のネットワーキングに備える方法について、議論が起こる。(メッセージ数 10)


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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2008年 4月 1日 火曜日, S. HOSOKAWA