TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#928/12-May-08

自分の生活を整理するための Getting Things Done モデルは非常に人気があるが、それをカプセル化しようとするソフトウェアには成功した部分とそうでない部分がある。Matt Neuburg が、彼の試してみたものの中で OmniFocus が、いくつかの変なところはあるものの一番良いアプリケーションだと報告する。また今週号では、Jeff Porten がデジタル著作権管理がテクノロジーを失敗に陥らせている状況について説明し、これが将来に向けて何を意味するかを論じる。Glenn はオンラインの Apple Store で iPhone が奇妙にも品切れになっていることを伝えるとともに、新たな iPhone キャリヤの合意と、AT&T による Starbucks 店舗内での Wi-Fi サービスについてについても概観する。それから Adam が Canon 製コンパクトカメラに追加の機能を与えるユーティリティの CHDK について手短かに語り、Glenn がある女性の盗まれたラップトップ機が Back to My Mac 機能のお陰で戻ったという最近のニュースを取り上げる。今週の TidBITS 監視リストでは、Parallels Desktop Build 5600、MacGourmet 2.3、Comic Life Magiq 1.0、FoxTrot Professional Search 2.0b3、Quay 1.1、Freeway 5.1、Fusion 2.0 Beta 1、CopyPaste Pro 1.0、Opal 1.2、Caboodle 1.1.4、それに DocHaven 2.0.5 のリリースについてお知らせする。

記事:

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「どこでもMy Mac」は盗まれたMacの回収へ導いた

  文: Glenn Fleishman <glenn@tidbits.com>
  訳: 湯本 敬<ymo@big.or.jp>

ラップトップを盗まれた賢いMacユーザーの彼女は、「どこでもMy Mac」を利用して、家宅侵入窃盗犯の容疑者を 警察に導いた。 N.Y. の White Plains に住んでいるルームメートの3人は、 27-Apr-08 に5,000ドルに相当するコンピュータと娯楽機器を盗まれた。そして、先週の火曜日に、アップルストアで働く被害者の1人の Kait Duplaga さんは、友人から、iChatで彼女を発見して、コンピュータを回復したのだと思ったというメッセージを受け取った。

彼女は友人にノーと言って、そして、「どこでもMy Mac」のリモートスクリーン共有を使って、彼女のラップトップの内蔵 iSight カメラをモニターし、容疑者の内の1人の写真を撮った。それから彼女は、遠隔ファイル共有もやってみ手、ラップトップに保存されているもう片方の男の画像を見つけた。

2人の男は、家宅侵入窃盗の容疑で告訴され、彼らのアパートで盗んだ機材と一緒に逮捕された。伝えられるところによれば、彼女達の機器を盗んだのは、ルームメートの友人の友人だそうだ。

Duplaga にとって幸いだったのは、犯人が UPnP (ユニバーサルプラグアンドプレイ)または NAT-PMP (ネットワークアドレス変換Port Mappingプロトコル)によるルーティングをオンにしておいたということだ。そして、それなしでは「どこでもMy Mac」はめったに機能しない。更に、犯人達は、被害者のラップトップを、.Mac にサインインしたままにしておいた。

私は「どこでもMy Mac」の本を仕上げているところだ。そして、私が発見したのは、このサービスを稼働可能にすることと、システムから削除することの両方が非常に難しいということだ。(私は、本で両方について述べている。)

許可なくあなたのコンピュータを使う、誰かのイメージをキャプチャーするために、 iAlertU のようなツールを使用している人々について耳にしてきたが、実際には今回の事件が、私が「どこでもMy Mac」を耳にしてから、初めての遠隔追跡だ。

BoingBoing にこの話へのコメントを載せた人 は、「どこでもMy Mac」は両刃の剣ではないかと考えている。そしてそれは実際、きわめて妥当かつゾッとするような脅威だ。「どこでもMy Mac」はあなたが .Mac にログインしたコンピュータと問題の .Mac アカウントを制御すると仮定する。容疑者の窃盗犯達は、もしも彼女が .Mac にログインして、別の Macで「どこでもMy Mac」を稼働させていたとすれば、彼女が彼らをモニターしたのと全く同様に、簡単に彼らも Duplaga をモニターすることができたはずだ。

あなたがこの問題に前もって対処したいのであれば、.Macの環境設定を使って、.Macアカウントをログアウトして、それからユーティリティの中のアプリケーションのキーチェーンアクセスを走らせなさい。すべての .Mac の証明書とログインアイデンティティーに付随するパスワードを見つけ、それらを削除することだ。


Canon 製コンパクトカメラの機能を拡張

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
   訳: 笠原正純<panhead@draconia.jp>

私はいつも、クールな記事を書くことで誰かに先を越されると少し凹んだ気持ちになる。今回もそうだった。ただ、今回 Lifehacker のAdam Pash がコンシューマーグレードの Canon 製コンパクトデジタルカメラに対する素敵なハックを解説した記事 は本当に素晴らしい仕事だった。CHDK(Canon Hacker's Development Kit。以下 CHDK)は非破壊型のファームウェア拡張で六つのカテゴリの機能を追加する。

  1. RAW フォーマット画像のサポート、ビデオ記録時間の延長、ビデオ圧縮オプションの追加といった記録方法の拡張。
  2. ヒストグラムや、電池残量計、被写界深度表示等といった、カメラの液晶画面に表示されるデータの追加。
  3. 長い露光時間、より高速なシャッタースピード、自動ブラケット撮影といった撮影に関する拡張。
  4. 様々なカメラの機能を自動化するスクリプト。スクリプトは BASICの一バージョンで書かれる。スクリプトによって複数の写真を異なる露出で撮ったり、カメラが動きを察知した時に写真を撮るようなことまでできる。
  5. カメラの USB 接続を通じての遠隔操作(写真撮影やスクリプトの実行)。
  6. メモリカードの中身を見るためのファイルブラウザや Reversi といったゲーム等々といったカメラに新しい可能性を付け加える。

CHDK は多くの Canon のモデルで動作するが全てのモデルではない。なので、試す前に 対応リストをチェックする必要がある(私の知る限りでは、CHDK のようなハックが使えるようなカメラを出しているメーカーは他に一つもない)。CHDK について特に素晴らしいのは、それが提供する機能的な利便性に加えて、それが明示的にロードしたときにだけカメラのファームウェアに変更を加え、次回に電源を入れた時には全てが標準に戻っているということだ。ハッキングを楽しもう!


iPhone 総まとめ:AT&T Wi-Fi、品切れ、国際キャリア

  文: Glenn Fleishman <glenn@tidbits.com>
  訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>

TidBITS の中では iPhone についてはあまり夢中になりすぎないようにしようということにしている - 世の中にはこれをやっているメディアは山程ある。そうではあるが、最近色々なことが話題に上って来ておりこの辺でまとめをして置くのも良いのではと思える。中身は、iPhone の現時点での有用性と米国及び世界中でのその将来に関するものである。

Wi-Fi: 見える、見えない、混乱そのもの -- AT&T はここ二週間程の間、その集合ホットスポットネットワーク上で iPhone 加入者に対する無料 Wi-Fi を提供する方法の予見とも言うべきものを見せて、その顧客の情熱をもてあそんだ。AT&T は 2008年2月に Starbucks の Wi-Fi ネットワークを T-Mobile から買取る契約を結んだ ("Starbucks が AT&T と淹れた契約に Apple の香り" 2008-02-12 参照)、そして数週間前に AT&T の本社都市である San Antonio, Texas を最初としてその変換作業を始めた。2008年内には 7,000 にのぼる Starbucks の会社保有の独立店全部の変換作業を完了するとしている。

しかし鷹の目を持つ Wi-Fi ユーザーが新しいネットワークの名前 - "attwifi" - を見つけた。これは Starbucks の店で T-Mobile ネットワーク - "tmobile" - のゲートウェイのページの右上隅に AT&T 顧客を歓迎する四角いリンクとして同時に現れたものである。これは予想外でも奇妙なことでもない。どうも最初にこれを報告したのは MacRumors の一読者であるようで、30-Apr-08 に iPhone 専用のゲートウェイ・ログインページが現れ無料アクセスのために加入者の電話番号を要求してきたとしている。

数日後にはそのゲートウェイページは消えてしまった。07-May-08 に MacRumors は、AT&T の iPhone プランのページはアップデートされ全米 17,000 のホットスポットに対する無料アクセスが AT&T 経由で提供されることが記されていたとする特種を再度ものにしたようだ。それから二日後には、このテキストは消えてしまった。AT&T は Fortune の Philip Elmer-DeWitt に対して、これら全ては人為的ミスであるが、究極的にはこれまでずっと期待されていた様に iPhone ユーザーに対しては無料の Wi-Fi を提供する計画であると話した。

(7百万の AT&T の住宅顧客は - ダウンストリーム 1.5 Mbps かそれより速い DSL 又はファイバサービスを受けている人なら誰でも - 既に AT&T Wi-Fi Home に対する無料アクセスを持っている、これは一連の 17,000 の U.S. ホットスポットで 9,500 の McDonald's の店そして 7,000 の Starbucks が含まれるが - そして増加中 - AT&T のより広範な Premier ローミングパッケージに含まれる殆どのホテルや幾つかの空港は除外されている。Premier サービスには全米全てのホットスポットと 53,000 の国際地点が含まれ、前記の無料サービスに該当する人に対しては月に更に $10 で、その他の人に対しては月額 $20 の上乗せとなる。)

AT&T Wi-Fi は間違いなく究極的には無料で iPhone ユーザーに対して提供されるが、AT&T がなぜこの Starbucks 移行全体でへまをしたり、もっと単純にそのネットワークを前から提供しなかったのかに関してはちょっと理解しがたい所がある。これは同社によるその顧客維持のための長期的な忠誠心劇の一部なのであろうし、そしてあなたが必要な時に追加料金無しでより高速な Wi-Fi ベースのアクセスを提供することによってあなたの iPhone 体験を改善するかも知れない。

iPhone 2.0, iPhone SDK, 3G iPhone, そして iPhones の品切れ -- 私がこの記事を書いたのは 10-May-08 であったが、米国のオンライン Apple Store 及び Apple の英国のパートナーである O2 経由では iPhones が品切れ状態であった。これはどう見ても奇妙である。Apple は次の様に言ってきた:改定された iPhone 2.0 ファームウェアと iPhone SDK (software developers kit) のリリースバージョンは 2008年6月、多分 Worldwide Developers Conference (WWDC) において、リリースする予定である ("Apple、iPhone 2.0 を発表、SDK をリリース" 2008-03-06 参照)。

これは、期待の第三世代 (3G) iPhone、AT&T のより高速の HSPA (high speed packet access) を利用する、が発表されるかリリースされると誰もが予想していた時である。HSPA ネットワークは、AT&T の報告によれば、現状の 2.5G iPhone の 100 から 200 Kbps の下り速度に対して、平均すると 600 Kbps から 1.4 Mbps の下り速度を持つと言う。

従って、Apple とそのパートナーがたまたま今在庫を切らしてしまうというのは大変奇妙である。ではこれは 3G iPhone は既に出来上がっていて、来週にでもびっくりの発表があると言う事であろうか?答は分からない。その間に電話の作りすぎを避けるためだけに 4 週間分にも及ぶ売上げを Apple が諦めるなどということは極めて信じ難い。いつもの通り、同社は何らのヒントも与えてくれないので、我々は時が来るのを待つしかない。

Europe, Latin America, Asia/Pacific に於いてキャリアとの関係を拡大 -- iPhone は米国及び英国で品薄となっている様だが、Apple はより広い関係を目指してキャリアとの契約に進めている。Vodafone は、AT&T の競争相手である Verizon Wireless の少数株主でもあるのだが、今年の後半から数十億人をカバーする地域で iPhone を販売する と言う:Australia, the Czech Republic, Egypt, Greece, India, Portugal, New Zealand, South Africa, そして Turkey である。Apple はイタリアで Vodafone と Telecom Italia の両社に iPhone を販売させる、そして SingTelは (子会社や系列会社経由で) Australia, Singapore, India, そして the Philippines で iPhone を扱う。これは、Apple のこれまでのプロバイダー一社主義からの決別を意味する、と言うのも Italy, India, そして Australia では複数のキャリアがサービスを提供することになるからである。

西に行くと、America Movil SAB は Puerto Rico に加えて Mexico 及びその他の 15 のラテンアメリカ諸国の顧客に対して iPhone を販売する。同社はこの地域で 37% の市場を有している。

Apple は、最初の機器の販売から 2008年末までに合計で 一千万台を売ると言う目標を達成できるように見える。事実、Apple はその最大の問題は iPhone に対する潜在需要があまりに高く 、これで売られた iPhone のひょっとすると半分にも達する量が未だ地元のキャリアが iPhone を提供していない地域で使える様ロック解除されて或いは後で改造されて売られているのではないかと思っているように見える。Apple の COO である Tim Cook は 2008年4月に、"我々はこの現象を iPhone に対する興味が全世界的に強まっているしるしだと見ており、その意味では嬉しい問題だと思っている。" と話している。

iPhone よ永遠に -- 続編は時折つまらないだが、iPhone 2.0 と 3G iPhone は - これらは同時に、或いは違っても非常に近い間隔で現れるであろう - 製品を良くしそして使われ方も広がると思われる。私は、Apple がこの世の中に iPhone を出したその日の夜から持っているが、そしてそれが完全であるなどとはどう見てもいえるはずもないが、まず私がこれまで所有した電子製品のどれよりもイライラ度と歓喜度の比率が低いと言え、携帯電話で言えばこれまで私が所有したりテストしたりしたどれよりも大雑把に言えば 100倍は良い。次のリリースを待ってるよ!


OmniFocus、Get Things Done の補助を申し出るも、まだ本物ではない

  文: Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

最近私は町内会のメンバーとの会合に出席した。現在私は町内会の会計担当という不運を背負わされているのだ。その会合からの帰り道、私の頭はクラクラしていた。私がしなければならない複雑な処理事項がいくつか持ち上がっていて、どうやってそれらを全部こなせばよいのかさっぱり分からなかったからだ。悪いことに、二週間後に私は Portland(マニュアル著者たちのコンベンションで講演するため)と Seattle(旧友を訪問するため)に旅することになっていて、そのどちらのためにもたくさんの準備をしておく必要があった。それらすべての作業に、加えて町内会の雑事、これらを全部期限までに済ませることなんて本当に可能なんだろうか?

大丈夫、問題ない。私は家に帰ると早速、Omni Group の OmniFocus の中へと自分の頭脳の中身をどっさりと放り込んだ。するとたちまち、私の気持ちは安らいだ。ストレスがすべて消え去ったのだ。それだけではない。Portland へ出かけるまでの二週間のうちに、私は必要な作業を _すべて_ 済ませた上に、さらに追加の生産性を発揮することができた。何の重圧もなく、働き過ぎもせず、心配を感じることもなしに。

OmniFocus の目標は、Getting Things Done (GTD) の哲学とテクニックを実装することにある。これがその目標を達成していることは私の経験が証明するところだ。実際、OmniFocus は私がこれまで使ってみた中でベストの GTD 実装だと言える。それにもかかわらず、私はまだこれを一般目的の使用にお薦めすることはできない。なぜなら、私が思うに、そのインターフェイスにある問題点のために、現実に大多数のユーザーにとって自分のデータに自由にアクセスし処理することができなくなってしまっているからだ。

ちょっぴり背景を -- 今ではきっと皆さんも GTD とは何かをご存知だろう。そうでない方々は、Jeff Porten による Mac 用 GTD アプリケーションの議論(2006-07-24 の記事“あなたの Macintosh で Getting Things Done(第一部)”)あるいは私が Thinking Rock をレビューしたもの(2006-10-09 の記事“Thinking Rock を拾い上げてみたら”)をお読みになるとよい。

そのレビュー記事で、私は Ethan Schoonover の Kinkless GTD に触れた。これは、 OmniOutliner Pro を GTD アプリケーションとして「乱用する」ために AppleScript を利用する、という試みだった。そのアイデアは、OmniOutliner のインターフェイスと機能におけるいくつかの重大な限界のために失敗に終わった。ただ、両者の側からの試みは続いた。Ethan は引き続き OmniOutliner の限界というドアをハンマーでノックしたので、Omni も、明らかに彼の努力に触発されたのだろうが、そのドアを少しずつ広げて行き、OmniOutliner に調整を加えて彼を受け入れることを目指した。それから何年も徒労が続いた後、ついに Omni は彼らが初めからやっておくべきだったことを果たした。つまり、彼ら自身の本格的な GTD アプリケーションを開発することに決めたのだ。その結果が OmniFocus だ。(そして、ついでに言えば、彼らは Ethan Schoonover を雇い入れた。)

GTD の構造 -- GTD の考え方は、個々のタスクを複数の側面で分類することに基盤を置いている。主な側面は二つだ。一方では、アトミックなひとつのタスク(OmniFocus では _action_ と呼ばれる)は通常何らかの _project_ の一部分でもある。つまり、そのタスクはより大きな目標の達成に向けての一歩であるわけだ。そして、ひとつの action は通常何らかの _context_ を持っている。つまり、その action が達成されるために必要となる物理的実在性だ。

例えば「Portland への旅の準備をする」(これが project だ)ために、私は「一時的に郵便の配達を止める」とか「カバンに荷物を詰める」のような action を実行しなければならない。実際、カバンに荷物を詰めるのはかなり大変で不明瞭な作業だったので、私はさらにこれを分解して詰めるのを覚えておくべきもののリストを作らなければならなかった。このように sub-action を持つ action を、OmniFocus では _group_ と呼ぶ。郵便の配達を止める方は「村の中で」(これが context、郵便局は村にあるから)できるし、荷作りは「家の中で」(これがまた別の context)できる。つまり大事なのは、次にどの action を実行するかを選ぶ際に context を調べて決められるということだ。例えば、私が村に出かける時に、私はそのついでにすべての project から「村の中で」という context を持った action を集めて実行すればよいわけだ。

これを表現するために、OmniFocus のウィンドウは互いに補完し合う大きな二つのモードの間を行き来する。Project モード(これは私の呼び名だが、OmniFocus はこれを "Planning mode" という私に言わせれば間違った名前で呼ぶ)では、すべての project とその group、その action たちが階層構造を成して表示され、それぞれの action の context がカラムに副次的に示される。また(iTunes に似た)サイドバーに project が「フォルダとして」集められるので、分類やアクセスが簡単にできる。一方、Context モードでは、context とその action が階層的に表示され、個々の action に対する project がカラムに副次的に示される。サイドバーは context 同士の間の階層関係を整理する。

実際には三種類の project や group がある。まず、_sequential_ な project や group においては、その action はすべて順番に実行されなければならない。他方、_parallel_ な project や group においては、action を好きな順序で実行できる。それ以外に、_個別の action のリスト_ というタイプの project もある。これは実際には project でも何でもなく、互いに無関係なタスクをただ便宜上束ねておくためだけのものだ。これら三種の違いは何をすべきかという問題に対処する際に重要になる。例えば sequential な project や group では、一つの action が未達成ならばそれがその後すべてのものを「ブロック」してしまう。(つまりそれらは全く実行できない。)

時の流れに -- OmniFocus には inspector ウィンドウもある。このウィンドウは action、group、project、それに context という四つのパネルから成る。この inspector ウィンドウの存在理由の一つは、メインウィンドウのインターフェイスでは見えていないような細かい設定(例えば「この project に新しい action を作った際に自動的に context を割り当てるか、割り当てるとすればどんな context か」といったようなこと)にアクセスできるようにするためだが、もう一つの存在理由は _時間_ の側面を表現できるようにするためだ。それぞれの action、group、project は、予定期間、開始の日付、期限の日付、それに完了した日付を持つことができ、また定期的に、あるいは繰り返して起こることもできる。

さらに、予定期間、開始の日付、期限の日付を表わすためのアウトライン・カラムもある。ただし残念ながら完了した日付を表わせるカラムはない。そのため、ある日にどの action が完了したかを手軽に見ることができない。もっと悪いことには、このアウトライン表示では繰り返す action が繰り返していることが一切示されない。その結果、繰り返しの action を完了したとしてオフにしても、次にまた同じものが再登場して繰り返し続けることになってしまう。これは inspector ウィンドウで調べない限りなぜそうなったかが分からない。

私の意見を言わせてもらえば、この inspector ウィンドウの役割そのものがここでは問題なのだと思う。メインウィンドウは、すべての action について重要なことをすべて何らかの方法で表現すべきだ。そして、inspector ウィンドウはそれに対する手軽な副次的インターフェイスとして機能して欲しい。ただし、何かを知ったりしたりするために inspector を見ることが _必要だ_ という風にはなって欲しくない。追加のカラム、それにできれば何かバッジのようなもので繰り返しの action を示すようにするだけで十分だろう。

もう一つの問題は、時間的な側面を表わすためにやはりカレンダーのコンポーネントが必要だと思われる点だ。カレンダー表示と、何らかのリマインダ警告システムがあればと思う。(OmniFocus は iCal と同期できるが、action は iCal の to-do 項目になってしまい、イベントにはなってくれないので、iCal のカレンダーには登場しない。これでは同期がほとんど意味を成さない。手本にすべき先行技術として、Omni は In Controlを参考にすべきだろう。これはもう長く打ち捨てられた、けれど今でも他に匹敵するもののないカラム形式のアウトライナーのお手本とも言うべきもので、検索、フィルタ付け、それに素晴らしいカレンダー同期も備えている。)

物事を持ち込む -- Thinking Rock と同様、OmniFocus にもブレインストーム用モードがあって、あなたが何かを思い付く度にそのまま action として入力できるようになっている。そうやってできた action は Inbox と呼ばれる特別の領域に入れられる。早撃ちスタイルで action を直接打ち込む(action をタイプしては Return を押し、また別の action をタイプしては Return を押す)こともできるし、別の場所から間接的に入力することもできる。いずれにしても、入力はどんなアプリケーションからでもグローバルなキーボードショートカットで呼び出せる“quick entry window”というウィンドウから行なえるし、または好きなアプリケーションで選択したテキストに対しサービスを使ってそれを Inbox にコピーすることもできる。

そこでの基本的な考え方は、あなたが時折 Inbox をチェックしてその内容を処理するだろうということだ。一つの方法は、個々の Inbox action にそれぞれ project と context を割り当ててから、Clean Up を選ぶことだ。すると、その action は素早く Inbox から払い除けられ、割り当てられた project の中に入る。別の方法として、Inbox action をそのままドラッグして、どれかの project の action たちの中で「正しい」場所へと持ち込むこともできる。(第二のウィンドウを開けば簡単だ。)

残念ながら、崇高でありながら現在は実現可能でない action(「俺は世界を制覇するぞ」)もある。私はそういう種類の action を置いておく場所も欲しいと思う。そうすれば、そういったアイデアは私の頭脳を離れつつ、何らかの形で私の目の前に盛られていることになる。Thinking Rock では、こういった action を“future items”と“information items”という二種類のシンプルなリストにまとめておくことができる。けれども OmniFocus ではそれができない。私は“Unfeasible”(実現不可能)という project を作ってみたが、困ったことにその action たちは他の実現可能な action たちと混じって現われてしまった。私の苦肉の回避策は、その“Unfeasible”project を“On Hold”(保留中)とマークすることだ。

さらに深刻な問題は、Inbox が奇妙な地位にあることだ。私にとって、Inbox の action は、action だ。けれども OmniFocus はそう思わないらしい。例えば、私が Inbox action に context を割り当てたとして、それをどうするか決めかねてそのままの場所に置いておいたとしよう。そこで Context モードにすると、そのような action が全く表示されない。これはどう見ても間違っていると思う。

物事を持ち出す -- Getting Things Done アプリケーションを使う理由は、物事を成し遂げるため (to get things done) だ。そのために、あなたはまずすべてのことの進行状況、そこにどんな action があるか、しなければならないどんなことが残っているか、といったことを把握していなければならない。一言で言えば、何をすべきかがすぐに分かる必要があるということだ。その上で、あなたが何かをし終えたら、それが済んだことを何らかの方法で明記できるようになっていなければならない。

何をすべきかを見つける手助けとして、OmniFocus はさまざまの方法であなたのいろいろな action をグループ分けしたりフィルタ付けしたりする。(実際、あなたの大体において action をフィルタ分けしている。既に完了した action や project を眺めていたいと思うことはめったにないからだ。)そうしたグループ分けやフィルタ付けの方法のうちいくつかは、ちょっと奇妙なものだ。例えば、すべての project あるいは group の中でそれぞれ「Next Action」だけが見えるようにアウトラインをフィルタ付けすると:

私はこの parallel な project の挙動は直観に反していると思う。けれども実は、別のフィルタ付けをすれば私の予期した挙動をしてくれるのだ。そのためには、「Available」な action だけが見えるように指示すればよい。このことを発見するまでに相当な熟考と試行錯誤が必要だった。これでは、多くのユーザーが思い違いをしたり混乱してしまったりするのではないかと思う。

さらに気がかりなのは、自分は今フィルタ付けされたバージョンのアウトラインを見ているのだということに気付きさえもしないユーザーも多いのではないかということだ。このインターフェイスのどこにも、現在すべての action が見えているわけではないことを警告するものがない。これでは誤った印象を与えかねず、その挙動が不可解なものと受け取られかねない。例えばウィンドウのタイトルを変えるとか、あるいはアウトラインの背景にウォーターマークを入れるとか、何らかの対策が欲しいところだ。あるいは OmniFocus が Opalの挙動を真似するというのはどうだろうか。Opal では、フィルタ付けされたアウトラインのウィンドウの一番下に“Filtered”という文字が表示される。

すべての action や group にはチェックボックスが付いており、project は Active または Complete の状態を持つことができる。その意図は、あなたが個々の action を完了する度にそこに済みの印を入れられるようにということだ。それならば、ある group 内のすべての action に済みの印が入ったら、その group にも自動的に済みの印が入るようになって欲しいと思わないだろうか。また、ある project 内のすべての group や action に済みの印が入ったら、その project も自動的に Complete の状態に変わって欲しいと思わないだろうか。けれども残念ながら、そのどちらも実際には起こらない。明らかに OmniFocus は、あなたが自分でその group や project の中にあるすべての action がチェック済みになったことを見つけて、その状況を手で処理する(group には済みの印を入れ、project は Complete とマークする)ことを期待しているのだ。でもそれなら、コンピュータを持つ目的っていったい何だろう? これじゃあ、鉛筆とノートの方が使いやすいインターフェイスと言えるのではないか? すべての action が完了している group や project を検索する手段もないし、いったいどうやってこれを判断せよというのだ?

それからもう一つ。私が Project モードから Context モードに切り替えると、そこには私の action が一つも見えないことがよくある! 一瞬心臓が止まったかと思えるようなパニックが過ぎた後、この Context モードが何か説明のつかない理由ですべての context ヘッダを _収縮させた_ 状態で開いたのだ、という事実に私は気付く。個々の context の左にある三角形が下でなく右を向いているからだ。個々の三角形をクリックしさえすれば、あるいはメニューで View > Expand all を選べば、action たちが戻ってくる。これと同じようなことが「グループ分け」を使う時にもよく起こる。例えば、どの action が未決着の期限の日付を持っているかを調べたければ、project を“Due”によってグループ分けする。でも、その結果の“Due within the next week”(来週までに期限が来るもの)という見出しが収縮されているので、うっかりすると来週までに期限が来るものは何もないと誤って思い込んでしまう。実際、この収縮されたヘッダの問題自体が、そもそも OmniFocus のようなタスクリストがきわめて重要である環境において、階層の収縮表示を許すのが正しいことだろうか、という疑問を起こさせる。考えてみれば、フル機能のアウトライナーは本来、GTD に適した媒体ではないのではないだろうか。

こうして見てきたように、あなたが見ているアウトラインがフィルタ付けされていることを警告する代わりに、OmniFocus はあなたが自分でそれを見つけ出すことを強要する。完了した group を見つけたり group の完了をマークしたりする代わりに、OmniFocus はあなたにすべてを手作業でさせる。あなたが見たい action を表示する代わりに、OmniFocus はヘッダの収縮表示で隠してしまう。一言で言えば、情報を引き出すことについて、あなたの action を _見出して_ 何をすべきかを _知る_ ということに関して、OmniFocus はすべてをそのあるべき姿よりも困難なものにしている。実際問題として、OmniFocus はあなたを誤り導いてしまうし、物事を成し遂げたいという重圧の下にあるあなたにとって、それは良くないことだ。インターフェイスに誤り導かれないようにと、あなたは常に注意していなければならない。経験を積んだ、粘り強いタイプの人には、あるいは比較的少数の action や project しかない場合にはそれほど深刻な問題ではないだろうが、大多数のユーザーにとっては、特に action のデータベースが大きなものになればなるほど、こんな OmniFocus を効果的に使いこなすのは相当に骨の折れる仕事になると私は思う。

インターフェイスの苦痛 -- OmniFocus のインターフェイスの多くは標準と違うものだ。ウィンドウ内で標準の Cocoa ウィジェットを使う代わりに、Omni の人たちは、私には見当もつかない理由によって、自分たち独自のウィジェットを使っている。そして、そういうものたちはあまりうまく働かないのだ。その結果、私にとっては、インターフェイスが全般的に予測不能の、非妥協的な、あるいは人を悩ますものとなっている。でも、この記事をこれ以上細々とした説明で埋め尽くすのはやめて、私は 別途ウェブページを作ってスクリーンキャストを二つ置き、そこに議論を移すことにした。(スクリーンキャストはどちらもデモのムービーになっているので問題点を簡単に理解して頂けると思う。)私が OmniFocus のインターフェイスについてさんざん文句をしゃべり散らすのをお聞きになりたければ、ぜひそちらへどうぞ。

オンラインヘルプのプレゼンテーションはまずいし、そのナビゲーションも不十分だ。あなたが今どこにいるかを示すブレッドクラム機能もない。文章のスタイルは不必要にもったいぶった感じだ。(「ちょいと矢印風に見えたりするボタンをクリック」という調子だ。)

結論 -- こうして不満ばかり書いてきたので、皆さんは私が OmniFocus に対して全般的に否定的な評価をしているとお思いになるかもしれない。でもそうではない。OmniFocus が、私がこれまで使ってみた Mac 用の GTD 表現法の中でベストだという私の考えに変わりはない。これが存在してくれたお陰で、ストレスが取り除かれ、より少ない時間でより多くのことが達成できる助けになった。少しずつだが、私もその使い方に比較的熟練しつつあり、その奇妙なところにもだいぶ慣れてきた。

もしも OmniFocus が公開ベータ版だったとしたら、私はためらわずに「使ってみよう!」と叫んだことだろう。「ベータチームに加わって、たくさんフィードバックを送って、このインターフェイスの改良を助けよう!」と。でも、OmniFocus はベータ版ではない。また、価格は現在の開発段階の状態と不釣り合いなものだと思う。過去に、私は Omni のインターフェイスを激賞したことがある。OmniGraffle は図式の作図に素晴らしい働きをするし、OmniPlan は度肝を抜くほどの素晴らしい仕上がりだ。インターフェイスの精巧さが光っているし、私が少しでもまともに理解できた、初めてのプロジェクト管理アプリケーションとなった。このような優秀さの伝統があるのだから、きっとそれが OmniFocus にも施されることになることを、私は信じて疑わないし、ぜひともそうなって欲しいと願っている。OmniFocus が Omni 社の他のアプリケーションに匹敵する流麗な使い勝手を身に付けた日が来れば、その時こそ私は喜んでこれを皆さんにお薦めしたいと思う。

OmniFocus の価格は $79.95 だ。Mac OS X 10.4.8 かそれ以降を必要とする。 試用版が 6.7 MB のダウンロードで入手可能だ。


悲しきデジタル著作権: テクノロジが意図的に役立たずにされるとき

  文: Jeff Porten <civitan@jeffporten.com>
  訳: 羽鳥公士郎 <http://www.ousaan.com/mail/>

今年 1 月、私が Las Vegas から CES をレポートしていたとき、ショーの会場を離れホテルの部屋に戻ったあとに、より興味深い技術的体験をすることとなった。長い夜のあいだほとんど寝なかった私は、少しテレビでも見ようかと思った。どうやらこれは Vegas ではありふれたことのようで、私が泊まっていた安ホテルの、カウチも快適な椅子も省略された部屋ですら、42 インチプラズマテレビが標準設備と見なされていた。

(日本語)CES 2008 1日目: まずは私の立ち位置を | CES 2008 1日目: キーボード、電源、めがね、その他 | CES 2008 2日目: iPod から iShoes まで | CES 2008 3日目: ロボット、そしてまとめ

メニューには、数十のローカルおよびケーブルのチャンネルがあり、それに飽き足らないとしても、多数のオンデマンド映画から選ぶこともできた。もっともおかしかったのは、1日 40 ドルのパッケージに、無線インターネットと、おびただしい数の、何というか、成人向けエンターテイメントが含まれていたことだ。これを組み合わせたとは、ターゲットとする顧客、つまり社用族というものをよく考えたものだ。

しかし、私には、そういったものが何もないときのために、あるいはリモコンがベッドから遠いところにあったときのために、別の選択肢があった。私の新しい Palm Centro には、SprintTVMobiTV の両方がインストールされており、月数ドルで、およそ 100 のチャンネルをとらえることができた。一方、私の MacBook がナイトテーブルの上にあって、ハードドライブには映画が何本かと1シーズン分の The Simpsons が入っていた。

そのとき私は、私が _料金を払っている_ ケーブルテレビが 2,000 マイル離れたところにあることに気がついた。もし私に Slingbox を買うほどの先見の明があったなら、自宅の Comcast のどのチャンネルでも、MacBook か Palmで見ることができた。

私はテクノロジが大好きだ。しかし、それは _最悪_ だ。

素晴しい新デジタル世界 -- これらすべてのことは、Consumer Electronics Association(CEA:全米家電協会)が配布している "DTV 101" というビデオを見ると、とりわけ興味深くなる。あなた自身でこれをみるには及ばない。これは想像できるかぎりもっとも退屈なビデオだ。CEA があなたに知ってほしいことをまとめると、以下のようになる。

* 2009 年 2 月 17 日をもって、米国のアナログテレビ放送は終了し、デジタルのみの送信に置き換わる。

* それにより、現在法と秩序に従う番組とそれに相反するコマーシャルとで使われているアナログ放送の周波数帯がすべて解放される。CEA は、この周波数帯が警察と消防で使われ、家電産業で数億ドルを生むために使われるのではないことを強調している。

* CEA は、テレビ放送を引き続き無料で見られること、そしてそのためには古いテレビに変換機をつけるだけでよいことを、いやというほど繰り返している。変換機の価格はおよそ 50 ドルほどになる見込みだが、連邦政府から 40 ドルのクーポンが配布される予定だ。これは 2008 年のうちに始まる。Uncle Samがみんなにおもちゃを買ってあげるから、と言って共和党に投票させようという、あからさまな手だ。

しかし、あなたが典型的なアメリカ人家族の一員なら、あなたの家には人数よりも多くのテレビがあるだろう。それら古いテレビのそれぞれに変換機が必要だ。さらに面白いことに、変換機をつけたとしても、古いテレビの縦横比はおそらく適切でないため(古いものは 4:3 であるのに対し、一般的になっているのは 16:9 で、さらに混乱させられることに Mac のワイド画面は 16:10だ)、画面の 25 パーセントはほとんどの時間、スリル満点の黒い帯で占められることになる。

行間を読むなら、来年新しいテレビを1台ないしそれ以上買うことを強制されることはないにしても、おそらく買わざるをえないことになるだろう。最終的には、あなたのアナログテレビは UHF ダイアルつきのテレビと同じ運命をたどることになる。若い TidBITS 読者のために説明すると、「UHF チャンネル」というのは、私たちがかつて、深夜につまらない映画や連続コメディー番組の再放送をみていたものだ。それこそが、あなたよりもあなたの両親がケーブルテレビが気が利いていると今でも思っている理由であり、あなたがたがTV Land やつまらない映画を見ることについて私たちがうれしく思う理由だ。

事実を述べれば、新しい技術によって、あなたは大幅に進歩した体験をすることになるだろう。私たちはこれまで、白黒からカラーへ、そして放送されるチャンネルという選択肢から同軸ケーブルのはるかに大きな帯域幅へのアップグレードを目撃した。デジタルテレビも同様に、最終的には昔はどうして生きていけたのか不思議に思うようになる類の変化だ。

残念ながら、このアップグレードにはコストが伴う。そしてそのコストは、新しいピカピカのテレビの価格のみにとどまらない。

意図的な複雑さ -- たとえば、CEA のビデオからキャプチャした画面を見てみよう。標準的なデジタル−アナログ変換機の設置の場面だ。右のリモコンをよく見てほしい。これは変換機のためだけのものだ。古いテレビにしがみついている人たちは、統計的にいって、100 のボタンがあるリモコンがもう1つ増えてそれを使いこなすなんてことがもっともできそうにない人たちなのだが、これらのボタンが彼らに付きまとうことになる。私の両親は、テクノロジの選択については私の正気を失わせることを楽しんでいるようなのだが、私が買ってあげた汎用リモコンはあまりに複雑すぎると決めつけ、その代わりに、三角形のアクリルブロックに3つのリモコンをマジックテープで固定している。このような家庭にとっては、もっと大きなブロックを買わなければならないというわけだ。

CEA-video

致命的な問題は、私の両親にとって、多くの人にとっても同様だが、400 のボタンがあるリモコンというのは煩わしく不便なもの以外の何物でもないということだ。私たちの文化の中でテレビがいかに中心的な位置を占めているかを考えれば、これは非常に奇妙なことだ。アメリカ人は平均して1日 4 時間以上テレビを見ており、ほとんどの人にとって、テレビはニュースや政治、そして高度に細分化された文化の中で残された共有体験の主要な情報源だ。これはすべての近代的な社会においてほとんどそのまま当てはまる。それでも、理由は分からないが、私たちがテレビを _コントロール_ するために用いる技術について議論するのは、いまでも取るに足らないことだと考えられている。

重要な技術によって自分が不適格だとか無力だとかと感じるのであれば、それは自分が悪いのだ、と信じるように、私たちは注意深く組織的に訓練されている。私たちは、デジタル的に持たざる者というカテゴリを創設することを受け入れている。つまり、技術に明るい友人や家族に頼るか、技術なしでやってゆく人たちだ。

これは偶然ではない。個人からしだいにコントロールが失われれば、そのコントロールは自然と、メディアの提供者やテクノロジの製造者の手に渡ることになる。

その完璧な例が、私が先に示した変換機の画面キャプチャを撮ったときのことだ。私が CEA の DVD を Apple の DVD Player でみていると、Mac OS X のGrab アプリケーションは次のようなエラーメッセージを表示した。「Screen grabs are unavailable during DVD playback.(DVD 再生中は画面取り込みは利用できません。)」商用 DVD の製作者と Apple を含むコンピュータメーカーとのあいだの合意により、Mac の標準機能が、この特定の状況において、著作権侵害を防ぐために無効になっている。別の言い方をすれば、Grab は意図的に役立たずであるように設計されているのだ。デジタル的に「持つ者」の中でも筋金入りの私は、この問題を簡単に解決できることを知っていた。同じDVD を Videolan の VLC でみれば、自動的に役立たずになるということがない。

ここで少し立ち止まって、いったい何が起きているのか考えてみよう。家電産業が、1枚の DVD を、私のようなライターがこのような記事を書くというはっきりとした目的で作成したが、しかし私の家電製品は、それをそのように使うことを妨げるように設計されている。そして、それにもかかわらず私はそれを使う方法を見つけることができたが、それはわたしが技術に精通していたためにほかならない。

出荷に使用された技術の中に実装された CEA の方針が、CEA 自身の伝達手段の使用を制限しているというのは、こっけいなことと言うほかない。そして、こっけいというのは、笑ってしまうとか、取るに足りないとかということではない。テクノロジは、私がこのメディアを使う方法をコントロールしようとしている。そして多くのジャーナリストを含むほとんどの人にとって、そのコントロールは成功するのだ。

コントロールとはカネだ -- おそらくあなたはすでに、業界が技術的コントロールを使って収入を生み出している方法の一つをよく知っているだろう。たとえば、ホテルの部屋に戻ったとき、突然 Spider-Man 3 をみたくなったとしよう。Sprint TV でみることもでき、その場合は3日間のレンタルで 5.99 ドル、320 × 172 の解像度でのストリームとなる。iTunes Store でこの映画を9.99 ドルで買って(数週間前の話なので、レンタルはできなかった)、MacBook でみることもできる。ホテルの部屋でオンデマンド・レンタルをすることもでき、その場合はプラズマ画面でみることができるが、24 時間で11.99 ドルかかる。あるいは、MacBook と MasterCard が手元にあるのだから、街へ出てちょっと歩けば 1.99 ドルですべての付録つきの DVD を借りることのできる店があるだろう。もちろん、私がすでにその DVD を持っていたとしても、それを家に置いてきた以上、何の意味もない。もう1つ借りるための値段は変わらない。

30 秒ほどかけて違法インターネットダウンロードを設定すれば、永続的なコピーを、任意の高解像度で(忍耐力さえあれば Blu-ray まででも)入手することができ、物理的なメディアを購入したかどうかにかかわらず、あるいはそれが手元にあるかどうかにかかわらず、どこでもみることができるが、それはもちろん別の話だ。

私たちのほとんどは、ある意味で、すでに Spider-Man 3 を含め数百の映画に対してすでに支払いをしている。つまり、それらはケーブルテレビでみることできる山のような番組の中に含まれている。しかし、何らかのデジタル録画システムを設定しない限り、そしてそれらのビデオをコンピュータに移す方法を見つけ、それを別のフォーマットに変換する方法を会得しない限り、それらのビデオは壁に囲まれた中庭に閉じ込められたままだ。私たちの多くがそのようなことをしたことがあるが、大多数の人には経験も能力もない。そのために、Columbia Pictures は _メカニズム_ が _コンテンツ_ と同じように重要だと言うことができ、それこそが、同じ映画がある場所では 12 ドルでも別の場所では 2 ドルで買えたり、どこででも時間制限があったりすることの理由だ。

これはスタジオにとっては素晴しいことだが、消費者が考える(あるいは考えるべき)商品のありかたではない。ある形態のコンテンツに代金を払ったら、それに相当する本当の価値を直接取得できるべきだ。つまり、映画館での映画の上映であったり、インタビューが追加されシーンが削られた DVD であったり、そしてもちろん、適切な場合には、オンデマンドで入手できる便利さであったりということだ。しかし、あまりに多くの場合「価値」は、すでに支払ったメディアを使いにくく、あるいは使えなくするための間接的共謀に基づいており、結果として技術を持たざる者に負担を強いている。

さらに言えば、この状況はしだいに悪くなる方向に向かっている。以前述べたように、デジタルテレビ画面にはトロイの木馬が潜んでいる。新しいハードウェアには HDCP のような著作権保護メカニズムが不可避的に組み込まれているのだ。すでに明らかなように、技術エリートであれば、いつでもそのようなメカニズムを回避できるだろうし、できないとしても、金では買えない自由を保証するようなフォーマットでコンテンツをインターネットから「借りる」ことが引き続きできるだろう。

無料のビールより言論の自由を -- 私が話しているのでは _ない_ ことは何かということをはっきりさせておきたい。私たちはあらゆるメディアに対して無制限の権利を持っているわけではないし、持つべきでもない。私は著作権を廃止せよといっているのではない。作品をパブリックドメインや Creative Commons の形で発表している作者たちですら、それを選択し続けるための権利を主張するだろう。

同様に、私の議論を単に経済的コストの観点に押し込めてしまうのも脱線というものだ。もちろんコストも問題だが、主な問題というわけではない。映画をホテルの部屋で見るのに Columbia Pictures が 12 ドルを課金しようとしたとしても、倫理にもとることは何もない。倫理にもとるのは、私の考えでは、その 12 ドルの負担を技術に明るくない人に押し付けるためだけの目的で、テクノロジに足かせがはめられているということだ。私たちが自分自身に問わなければならない問題は、どのようにしてコンテンツ創作者を守るのかということではなく、むしろ、テクノロジが可能にするほかの用途から映画を守ることに私たちが価値を置いているためにテクノロジが _意図的に役立たずに_ されていることによって、私たちがどれだけの社会的コストを支払っているのかということだ。

私たちがどのようにメディアとかかわってゆくべきかということについて、合意を形成する方法があるべきだ。制限的なテクノロジ、役立たずであるように設計されたコンピュータ、そしてそのようなテクノロジを支えている懲罰的な法律といったものは、そのような議論、あるいは社会一般を発展させることはない。私たちがそのような動きに寛容になるたびに、そして文句も言わずにそのような製品を購入するたびに、21 世紀が私たちの言論の自由を打ち負かす企業のコントロールを育む危険性が大きくなる。これには続きがあるので、今後に注目していただきたい。

[この記事の草稿に貴重なコメントを寄せてくれた Adam Engst、Tarleton Gillespie、Peter Hirtle、Fred von Lohmann に特別の謝辞を述べたい。Jeffはこの話題について、2008 年 5 月 20 日に IEEE Philadelphia で講演をする予定 だ。]

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