TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#930/26-May-08

ラップトップ機はますます小さく、かつパワフルになってきた。それでもまだまだ他のもので済ませたいと思うこともある。これを持たずに旅行することはできないか? Rich Mogull は自ら認めるテクノロジー愛好家だが、思い切って iPhone だけを持って休暇旅行に出かけるという冒険に挑んで生還し、その体験を物語る。Rich はまた、iCal のセキュリティ脆弱性の情報が開示されたことについても検討する。Mac ユーザーたちにもたらすリスクはほとんどないとはいうものの、Apple はまだこれをパッチしていない。また今週号では、盗人たちを「どこでも My Mac」機能を使って捕まえた女性のニュースが最近伝わったのを受けて Glenn Fleishman が盗まれた Mac を取り戻すための方法について考えを巡らせ、Adam は Nisus Writer Pro 1.1 の新機能をお知らせしつつ Word の機能一式を模倣するだけでは競争に打ち勝てないのではないかと考える。GarageBand ユーザーのあなたには、GarageBand '08 に関する2冊の新刊電子ブックがお薦めだ。最後に TidBITS 監視リストでは、SpamSieve 2.7、TextExpander 2.2、KeyCue 4.2、Airfoil 3.2、それに Logic Pro 8.0.2 について情報をお伝えする。

記事:

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Nisus Writer Pro 1.1、コメント、メールマージ、その他を追加

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Nisus Writer Classic の確立した水準に到達し、さらにはそれを越えることを目指した旅を続ける Nisus Software 社が、Nisus Writer Pro 1.1 をリリースした。この新バージョンで最も特記すべき追加機能は、見たところしっかりと考え抜かれたコメント機能だ。書類の左側欄外に、並列したパネルを置いてそこにコメントが表示される。コメントは見出しのみに畳むこともでき、+ ボタンを押せば返事や追加が書き込め、- ボタンを押せば消去される。ただ一つの欠点は、複数個の追加が付属したコメントを一挙に展開して議論の行き来を一覧することができないらしいことだ。Nisus によれば、これらのコメントは Microsoft Word と互換だという。

Nisus-Writer-Pro-comments

1.1 での他の新機能としては、ソースの書類にアドレスブックのデータまたはコンマ区切りのテキストファイル内容を差し込んでカスタマイズされた書類を作ることのできるメールマージ機能だ。また、Perl のコード断片を追加してさらに書類をカスタマイズすることもできる。

より細かな新機能 としては、マクロコマンドの追加、ステータスバーでのページ番号表示、長い書類でナビゲーションが楽になる“Go to Page”機能、現在の選択域に基づいてスタイルを再定義できる機能、選択された部分だけに働く Page Borders パレット、挿入ポイント線の幅を調整できる環境設定、書類を開こうとする Mac には存在していないフォント情報をその書類に保持、「開く」ダイアログにリッチテキストコマンドを無視するオプションを追加したことにより HTML 書類を(解釈せず)プレインテキストとして開けるようになったこと、などが挙げられる。Nisus Writer Pro 1.1 には、また数多くのバグ修正やパフォーマンスの拡張も盛り込まれ、特に Mac OS X 10.5 Leopard においてタイピングや表示レンダリングがスピードアップされるはずだ。

こうした変更を装備に加えた Nisus Writer Pro は、本格的なワードプロセッシングのために Microsoft Word と競合できる地位へさらに一歩近づいたとも言える。しかしながら、Nisus Writer に変更履歴追跡ができる日が来るまでは、複数の人々の間で書類を共有して編集したりコメントを加えたりする協同作業のワークグループにおいて Word の地位を奪うことは不可能だ。たとえ将来のバージョンの Nisus Writer Pro に変更履歴追跡機能が加わったとしても、私は Nisus が十分な努力を注いで現代的なワードプロセッサならば何ができるべきかを考え直せるだけの余力を持っているかどうか、心配せざるを得ない。ただ単に Word の機能一式を模倣しただけでは十分ではないのだ。たぶん間違いなく、今の世の中で書かれる文章の大部分は究極的にウェブを目的地としている。そして、協同作業が(順次処理される場合もリアルタイムにも)スムーズに進むことこそが、ますます重要な点となりつつある。もしも Nisus のような小さな会社が、比較的短期間のうちにそのような必要を満たすものを作り出せなかったとしたら、きっとこの分野における支配権はオンラインのワードプロセッサたち、例えば Google Docs, Zoho Writer, Buzzword, また新参者ながら将来性の感じられる TextFlowのようなものたちに、ほどなく取って代わられてしまうだろう。

Nisus Writer Pro 1.1 は Universal Binary で、Mac OS X 10.4 かそれ以降を必要とする。今回のアップグレードは既存の Nisus Writer Pro オーナーには無料だ。新規購入価格は $79 で、個人、家族、あるいは小規模オフィスなどで使える 3 ユーザー用の“family pack”は $99 で入手できる。Nisus Writer Express からのアップグレード価格は $45 だ。15 日間有効のデモ版もある。


iCal に未対応のセキュリティ欠陥。リスクは小さい

  文: Rich Mogull <[email protected]>
  訳: 笠原正純<panhead@draconia.jp>

2008 年 5 月 22 日、Core Security Technologies のリサーチ部門が iCal に関する三つの新しいセキュリティ上の脆弱性について詳細を公開した。公開された脆弱性のうち二つは脆弱なシステムをクラッシュすることが可能で、三つ目はアタッカーにコンピュータを乗っ取ることを許してしまう可能性があるということだ。Core の公式な勧告に付けられた注釈によると、脆弱性の詳細が公開される前に Apple はパッチをリリースする予定だったが、パッチが遅れてしまったらしい。これら三つの脆弱性は特別巧妙に仕組まれた .ics カレンダーファイルをユーザが開くことを利用する。(訳者注: このセキュリティ欠陥に対処したセキュリティアップデートが 5 月 29 日に出ました。)

先の二つの脆弱性は null-pointer dereference として知られているバグに類するものだ。このタイプの欠陥はつい最近までアタッカーによって利用されることは無いと考えられていた。なぜなら、それはシステムや動いているプログラムをクラッシュさせるかもしれないがコンピュータを誰かに明け渡す可能性はないと思われていたからだ。この状況は 2008 年 3 月に、CanSecWest カンファレンスの Pwn2Own コンテスト の際にセキュリティ研究者の Mark Dowd が フルにパッチを当てられた Windows Vista ラップトップを攻撃するために Adobe Flash player に存在する null-pointer dereferencing バグを使ったときに変わった(このコンテストは、Charlie Miller が MacBook Air に侵入することでもある。"Apple、ハッキングコンテストで最初の犠牲者に" 2008-03-28 参照)。

Dowd のテクニックは怖ろしく複雑だ。そして _これが iCal の脆弱性に使えることを示す要因は何もない_。Core 自身の勧告では、これらの脆弱性は .ics ファイルを開いたとしても iCal をクラッシュさせること以上の何事かをすることができるとは思えないと述べている。

三つ目の脆弱性はアタッカーに対してリモートで利用されうるが、発動するに要する手順のためにリスクは少ない。最初に悪意のあるカレンダーエントリをインポートしなければならない。次にそれを iCal でダブルクリックし Edit をクリック、その後でアラームを変更するためのフィールドをクリックしなければならないのだ。攻撃用コードはアラームフィールドを Edit モードでクリックしたときにだけ実行される。

これら三つ全てのケースにおいて、アタッカーが悪意のあるカレンダーエントリをあなたが購読しているカレンダーに挿入したら、それは自動的にあなたのシステムに取り込まれ iCal をクラッシュさせることができるようになるだろう(悪意のあるエントリのアラームをクリックしない限り、アタッカーがあなたのシステムを乗っ取ることはできないが)。これらのアタックが野に説き放たれようにはまだ見られないが、Core のセキュリティ勧告には動作する実証コードが含まれていて、悪人が簡単にアタックを組み立てることが可能になる。

このことはセキュリティの脆弱性を開示することについての複雑な倫理上の問題を惹起した。Apple が欠陥にパッチを当てる前に詳細な情報を公開することによって、Core は全ての Mac ユーザを危険に晒したのだ。一方で、勧告に記された Report Timeline を読めば、最終段階になってやり取りが途切れるまで、Core は Apple と一緒にパッチをリリースするよう調整を重ねていたことが分かる。

私の個人的な意見では、研究者はパッチがリリースされた後、あるいは悪人がすでに脆弱性について知っていてそれを使った攻撃が野放しになっているという明白な証拠があるときでなければ、脆弱性の詳細については公開すべきではないと考える。しかしながら、何人かのリサーチャーは私の考えに賛同せず、ベンダーからの反応が無かったり妥当な期間内に修正を行わなかったりするなら詳細を公開すべきと感じている。私は私の考えを広めようとしたが詳細をパッチの公開より先に公開することはユーザより悪人にとって好都合だ。以前は私もその意見に賛成だったが、その後私はここ 5 年か 10 年のあいだに状況が変化したと思うようになった。脆弱性についての勧告の数時間内にはもう攻撃が現れるようになったからだ。パッチ公開の前に詳細をリリースすることは、ユーザより悪人を手助けすることになる。ほとんど場合、これらの状況はベンダーと研究者の利己的な争いを生む。そして、その間ユーザは集中砲火を浴びるのだ。

今回のケースに限ってだが、ユーザに課せられたリスクが低いことは良いニュースだ。攻撃に使われる二つの簡単な脆弱性は iCal をクラッシュするだけで、それも悪意のある .ics ファイルをインポートするか汚染されたカレンダーを購読したときだけだ。三つ目の脆弱性はもっと危険だが悪意のあるエントリのアラームフィールドをクリックしない限り実行されることはない。

いつものように、私達は安全なコンピュータの使用法に従うようアドバイスする。iCal にインポートするものに注意すること。そして、目を離さないようにして、Apple が私達の期待するアップデートをリリースしたらアップデートすることだ。皆さんのリスクは少ないので、パッチを当ててなくても、この脆弱性は私が夜眠れなくなるほどのものではない。

(完全な開示:Core Security Technologies は現在、私のコンサルタントクライアントである)


Take Control ニュース:GarageBand '08に関する新刊2冊

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: 湯本 敬<ymo@big.or.jp>

我々は GarageBand'08 について一対の電子ブックのリリースをお知らせする。これらの本は、前の版をベースにしているが、-- Visual EQ 、 Magic GarageBand 、テンポオートメーション、アレンジトラック、その他多くのGarageBand の最新機能の全てをカバーするために、完全に改訂されたものだ。それぞれを購入する場合は10ドルだが、一緒ならわずか17.50ドルで購入することが出来る。あなたがちょうど GarageBand を始めたばかりの初心者なのか、プログラムを最大限に利用しようとしている経験豊富なプロなのかということには関係なく、これらのタイトルはあなたが必要とする手助けをする。

"Take Control of Making Music with GarageBand '08"では、シアトルのミュージシャンの Jeff Tolbert による段階的なインストラクションが初級、中級ユーザーを導いて、GarageBand のビルトインループを使って曲を3曲作ることを通じて、耳を喜ばせる作曲をしている間に、GarageBandの編集とミキシングの機能の利用方法だけではなく、お茶目でクリエイティブな曲作りについても説明している。この110ページの電子ブックでは、歌を設計する方法、Magic GarageBand を最大限に利用する方法、グラフィカル表示と譜面表示の両方を使ってループを編集する方法、エキサイティングなミックスを創り出す方法、歌または iPhone の着信音としてあなたの傑作を出力する方法を学習する。この本では、トラックボリューム、テンポ、パニングをダイナミックに変える方法と GarageBand のエフェクトの扱い方についてもカバーしている。あながた電子ブックを読むときには、リンクしている音声で具体例を聞ける。更にボーナス!本には、パフォーマンスの問題を解決する7つの提案と、音楽関連専門用語に関する5ページの用語解説が含まれている。

あなた独自の音楽を録音したくはありませんか? "Take Control of Recording with GarageBand '08"では、あなたが持っている既存の装置を最大限に利用するか、あなたの予算とスタイルに最適の新しい機材を購入するかを考えるために、Jeff が彼の GarageBand のノウハウと長年のレコーディング経験を公開した。あなたは現実のレコーディングスタジオの技術を見つけ、マイクを使う際のヒントを学習し、プロのようなエフェクトをかける方法を発見するだろう。明確なステップと実際的なアドバイスは、あなたが、レコーディングセッションを計画したり、すぐに複数トラックの録音をしたり、簡単に間違いを修正するのに役立つ。2つの例題となる曲は論じられているテクニックの多くを説明してくれていて、あなたはオーディオの実例と突き合わせながら本を読み進めることができる。

GarageBand タイトルの前版を購入された方で、01-Aug-07 以前に購入した方はいずれのタイトルでも、電子ブックの最初のページの Check for Updates ボタンをクリックすれば、アップグレード割引として特別に50%オフとなる。 01-Aug-07当日ないしはそれ以降に購入された方は、全て無料アップデートのダウンロードリンクを送らているはずだ。もし我々からの電子メールが届かない場合は、 [email protected] へ連絡して欲しい。


助けて! 私は監禁されて、手許にあるのは Wi-Fi ネットワークだけ!

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

二週間前、ある驚くべき Mac オーナー(まだ十代の Apple Store 従業員)が、Leopard の機能を巧みに応用して彼女の盗まれた Mac ラップトップ機へと警察を導くことができたというニュースが話題になった。(2008-05-10 の記事“「どこでもMy Mac」は盗まれたMacの回収へ導いた”参照。)彼女がこれを取り戻した方法があまりにも巧みなものだったので、5 月 17 日に放送された NPR/Chicago Public Radio の番組“Wait Wait... Don't Tell Me!”の最後のところで連続スピードクイズ の問題に使われたほどだった。

この事件を聞いて、何人かの読者たちから、自分も同じような離れ業をやってのけるにはどうしたらよいのかという質問が電子メールで届いた。自分の Mac が既に盗まれているという人もいた。「どこでも My Mac」(Back to My Mac) 機能はすべてのネットワーク状況をコントロールできなければ使いこなすのが難しいものだが、手始めとしては悪くない。私は他にも2つの方法を思い付いたし、それ以外のアイデアについてもいくらか考察を加えてみよう。

Back to My Mac よ、私の Mac を取り戻せ! -- 19 歳の Kait Duplaga と同じくらい賢くありたいと思うなら、たとえあなたが1台しか Macintosh を持っていなくても「どこでも My Mac」(Back to My Mac) 機能をオンにしておけばよい。これは Mac OS X 10.5 Leopard に内蔵された機能だが、.Mac 購読を必要とする。通常の購読でも、5ユーザーファミリーパックの一部としての購読でも構わない。ただし低価格の追加サービスとしての電子メール専用購読では使えない。

Leopard の .Mac システム環境設定パネルで、Account タブを使って .Mac にログインし、それから Back to My Mac タブをクリックすればこのサービスがスタートする。Back to My Mac では、Leopard の走る他のコンピュータからアクセスする際にあなたの .Mac ユーザ名とパスワードが要求される。ネットワーク情報が変更される度に、自動的に .Mac サーバがあなたのコンピュータの情報でアップデートされる。

もしもあなたのコンピュータが盗まれたら、あなたの .Mac アカウントと Back to My Mac を他のコンピュータ上で設定すればよい。Duplaga が手掛かりをつかめたのは、友人の一人が彼女の名前が iChat に現われたのに気付いたからだった。そうしておいて、遠隔マシンにアクセスする。Finder ウィンドウのサイドバー上で、あなたの盗まれたコンピュータが共有リストの中に登場するだろう。それを選んで、Share Screen あるいは Connect As をクリックすれば、遠隔スクリーンや遠隔ファイルにアクセスできるようになる。Duplaga はここで Applications フォルダから Photo Booth を起動させて、いくつかスナップ写真を撮り、素早くその写真と、そのマシン上にあった他のいくつかの写真とを、彼女のコンピュータにコピーした。

この盗人たちは、もしも十分知識があったなら、コンピュータをネットワークから切り離すことも、.Mac からログオフすることも、さらに言えば Back to My Mac を使って Duplaga のスクリーンを共有して見ることもできたはずだ。

Back to My Mac 機能は、ネットワークのルータが自動化ポートマッピング・プロトコル2種類のうち片方、Apple の NAT-PMP か、またはより広く使われている UPnP かのいずれかを使っていることを要する。だから、盗まれたコンピュータがサイドバーの共有リストに登場したとしても、結局 Back to My Mac でアクセスすることはできないことも十分考えられる。

可能性としては、Back to My Mac が .Mac に登録している IP アドレスを抽出してそれを警察に伝えることもできるはずで、もしも警察がサイバー犯罪専門部署を持っていたとしたら、その情報を使って ISP を割り出し、その ISP に依頼するか、あるいは召喚状を送るかすることで、その IP の所在地の詳細情報をつかむことができるかもしれない。(ただしその IP が静的または割り当てられたものである場合に限る。)私は、Back to My Mac マシンから IP アドレスを抽出しようとしていくつか違った方法を試してみたが、Apple は Back to My Mac を IPv6 (次世代のインターネットアドレッシング) のトンネルの中に包み込んでおり、私には IPv4 (現行のアドレッシングの仕組み) アドレスも利用できるようになっているのかどうか判断できなかった。

Undercover は深く潜る -- Orbicule の製品 Undercover ソフトウェアおよびサービスは、最小限のリソース利用であなたのコンピュータを追跡し続けるために作られた、巧みなかわいらしいパッケージだ。$49 するこのアプリケーションは、Universal Binary で Leopard 用にアップデートされているが、まず最初インストールした際に固有の ID 番号を生成する。あなたは、その ID をずっと他人に知られないようにして持ち続けなければならない。いったんインストールされれば、Undercover は 6 分に一度ずつこの会社のサーバにごく軽量のリクエスト(500 バイト)で連絡し、そのコンピュータが Orbicule の盗難マシンデータベースに載っていないかどうかをチェックする。この会社によれば、このリクエストの際に ID 情報は一切送られないということだ。

もしもあなたのコンピュータが盗まれたら、あなたはオンラインフォームを使って Orbicule にそのことを知らせ、その際にあなたの個人用 ID コードを使う。これで同社のデータベースがアップデートされ、次にあなたのコンピュータがオンラインになった時に、その Undercover プロセス(これはマシンのブート時に走り、ユーザーが誰もログインしていなくても構わない)が、ホストマシンが盗まれたことを認識して、報告モードに入る。

すると Undercover はデスクトップのスクリーンショットを撮り始め、また内蔵あるいは外付けの iSight カメラがある場合はカメラでのスナップ写真も撮る。このソフトウェアは連続的にそれらの情報を Orbicule に転送する。同社はそのラップトップ機を盗んだ者が接続している ISP に連絡するとともに、その地域の警察関係機関とも協力してその情報を伝える。

あなたが設定した一定の期間が過ぎれば、Undercover はあるトリックを仕掛ける。これは、Macintosh での悪ふざけやイタズラを集めた古い本から採ったトリックだが、スクリーンを少しずつ薄暗くすることによって、盗人にマシンを修理するか売り払うかしたいという気を起こさせようとするのだ。(古い本とはどの本か、とお尋ねの方もあるかもしれない。はっきりとは覚えていないのだが、Bob LeVitus の“Stupid Mac Tricks”か、それとも Owen Linzmayer の“The Macintosh Joker”かのどちらかだったと思う。どちらの本にもフロッピーディスクが付属していて、例えば再起動ごとにスクリーン両側で実用上のスクリーンサイズを1ピクセルずつ次第に縮める、といったようなイタズラを実行してみることができた。)

Orbicule 社では Apple Store や各種の修理店の IP アドレスを集めたデータベースを作っていて、もしもそのコンピュータがそのようなネットワークのどこかで電源を入れられれば、すぐにあなたのコンピュータの画面にフルスクリーンのメッセージが現われて、消そうとしても再び現われ続け、このコンピュータが盗まれたものであり、発見した人には報奨金が支払われること(支払いは会社がする)や、その他あなたが指定したどんなカスタムメッセージでも表示できる。

でも傑作なのはその後だ。Orbicule はなかなかのユーモアのセンスを持っているようだ。あなたのコンピュータは、音量を最大設定にしてから、テキスト読み上げ機能を使って上と同じ情報を大声で叫ぶ。

Orbicule のソフトウェアで私がたった一つ気付いた欠点(ただし私はこれを実際にインストールした訳でも、テストした訳でもないのだが)は、もしもあなたのコンピュータが 60 日間以上インターネットに一度も接続しなければ、第2段階(“Plan B”)が自動的に発動されることだ。例えば、あなたがコンピュータを家に置いたままで、三ヶ月間の休暇旅行に出かけたとしよう。旅行から帰ってみると、何たることか、コンピュータが、自分が盗まれたものだと叫び続けている! この Plan B をオフにするには、あなたの個人用 ID コードを持って会社に連絡しなければならない。同社では、この 60 日という期間を変更できるようにする方法を現在考慮中とのことだ。

Orbicule ではそのソフトウェアにさまざまな値札を付けている。年間購読料のようなものは必要ない。シングルユーザの販売ライセンスは $49 で、家庭用(最大 5 台の Mac)は $59、最大 25 台の Mac で使えるサイトライセンスが $249 となっている。フルタイムの学生はシングルユーザライセンスが $10 値引きに、家庭用ライセンスが $5 値引きになる。教育機関が 100 台以上の Mac で使う場合には1台あたり $8 となる。

Get Back to Where You Once Belonged -- BAK2u 社は、さまざまのプラットフォームや機器用に盗品追跡用のソフトウェアを作っている。その Mac 用の製品 Verey I for Mac は、ちょっとシンプルな造りで、回収サービスは付いていない。ソフトウェアの価格は $39.90 で、Universal Binary であって Leopard で動作し、更新料金はない。

Verey I は、ネットワークに接続する度に毎回あなたがパスワードを入力することを要求する。もしも正しくないパスワードが入力されれば、Verey I は内蔵の iSight カメラがもしあればオーディオとビデオの録画を開始し、ネットワーク情報と近くの Wi-Fi ネットワークのスキャンを含んだ警告を、いろいろなサービス(インスタントメッセージング、電子メール、Twitter、ウェブページ上など)を通じてあなたに送ってくれる。

Verey I はマシンの回収のために会社が介入することを一切しないし要求もしない代わりに、すべてをあなたに処理させてくれる。これは利点であるかもしれないしそうでないかもしれない。すべてはあなたの置かれた状況とあなたの好みによる。

また、Computrace LoJack for Laptops という、よく出来た名前の製品もある。これはあの有名な自動車盗難予防・回収サービスとは名前以外に何の繋がりもなく、メーカーの Absolute Software 社はライセンスを受けてこの名前を使用している。同社のウェブサイトに載っている最小限の情報から判断する限り、このソフトウェアは定期的に同社のサーバにコンタクトして、もしもあなたが Absolute Software 社にあなたのコンピュータが盗まれたことを知らせれば、同社はあなたや警察関係機関と協力してネットワークアクセス経由で追跡の作業をする。こちらは購読ベースのパッケージで、価格は年額 $49 または 3 年間で $99 となっている。

分散的、非集中的な識別 -- Engst 家の友人である Cornell 大学の Oliver Habicht(彼の写真に写っているラップトップ機にはとびきりクールなエッチングが施されている)が教えてくれたところによれば、米国とカナダの多くの警察署で使われている非常にローテクな解決法があるということだ。その名を Operation ID と言い、このプログラムでは、個人、教育機関、あるいは会社単位で、保護すべき対象物にそれぞれ他とは異なる識別子を彫り込みあるいはエッチンク処理を施して、消せないようにしておく。(混同しないで頂きたいが、この Operation ID は北アメリカで未成年へのアルコールとタバコの販売について販売店を教育しようという同名のプログラムとは無関係だ。)

この ID には左から右へ順に、地理的に広い範囲から狭い範囲へと人が読み取れるコードが並ぶ。最初は州の名前の略語(例えば MN や NY)またはそれに対応する数で、次に郡、その次に警察署を示す数が続く。最後に来る数桁の数字は警察署によって割り当てられた他とは異なる数で、これによってその個人あるいは団体が特定できる。場所によっては、この ID をよりシンプルに作成したいという意図から単にその州の2文字の郵便用略語に運転免許証番号を続けるだけにしている警察署もある。

Oliver は Cornell 大学の購入したラップトップ機に Operation ID 番号でラベル付けさせるに先立ってこのプログラムをよく調べてみたが、彼も私もこのプログラムに関してどこに中央権力があるのか、ウェブサイトはどこか、権威ある情報がどこで見つかるのか、結局分からずじまいだった。私が出した結論は、この Operation ID というのは実際のプログラムではなく、単なるミーム、つまりある種の心情的ウイルスのようなものだろうということだった。

このプログラムについて書いた各地のウェブサイトを何十と見て回っても、公式の中央情報源も、このプログラムがどのようにして始まったのかということさえも、どこにも引用されていない。あるサイトでは、これが 30 年も前からあると書いている。これは思うに、警察で州の階層構造の下にすべての番号を割り当てる習慣があったというお役所仕事の実態と、1970 年代に誰かが思い付いた利口なアイデアとが組み合わさり、それがそのまま引き継がれた結果なのではないだろうか。まるで口伝えの伝承が仕事の手続きに交わったかのように。これは警察の都市伝説だ!

この ID に比較的標準化された形式が使われているということは、これがシステムとして自身を保持し続けていることを意味する。また、多くの警察官たちや管区の人たちがこれに十分馴染んでいるはずだ。“Operation ID”にあなたの町あるいは大学の名前を組み合わせて Google 検索を走らせれば、あなたの地区の警察が彫り込み用のペンを貸し出しているか、あるいは ID を彫り込む援助をしているか、またあなたの ID を受け付けてもらえるかどうかが、たぶん分かるだろう。ミネソタ州立大学では同大学でのこのプログラムの実行方法についてなかなか良い説明を公開している。学部によっては Operation ID ステッカーを配って部屋の窓に貼るようにしているところもある。盗人たちへの抑止力になればということなのだろう。

Oliver によれば、Operation ID ポリシー には財物が「コンピュータによって大学へと」辿ることができるようになっていると書かれている。けれども彼が言うには実態はそうではなく、彼のものに割り当てられた番号はただ紙に書かれて書類キャビネットにしまわれているだけだという。

回収段階について -- もちろん、盗まれた機器とその持ち主とを結び付ける関連をもっと提供する余地はある。大多数の電気製品と同様、Mac には一つ一つ他と異なるシリアル番号が付いている。そして、大多数の電気製品とは違って、オペレーションシステムの中からシリアル番号を読むことができる。ならば、個別の番号の付いた Mac と、そのオーナー、それにそのコンピュータの現在位置を結び付ける方法はあるはずだ。

私が思うに、Mac のソフトウェア開発者が Skyhook Wireless と連携して盗品回収サービスを開発することは可能だろう。コンピュータの近くにある Wi-Fi ネットワークとそれぞれの信号強度をスキャンして、一連の位置座標を計算することができるはずだ。Skyhook は既にウェブページを使って同社のシステムに外部からアクセスする API を持っていて、例えば iPhone 上では Apple と提携して(Google のセルラー三角測量と合わせて)GPS 風の結果を提供するところまで来ている。Skyhook は既に Wi-Fi 位置測定を使った Windows ベースの盗品回収サービスについて The CyberAngel との提携を結んでいる。

どうやら、盗まれた Mac が自宅に電話をかけてきて「助けて! 私は盗まれて、Santa Rosacrucia にある倉庫の中に閉じ込められている!」と言えるようになるのも時間の問題のようだ。そうなれば残る問題は、システムの所在地を見つけるために霊能者を使ったりなんかしていないことを、どうやって警察に分かってもらえるかだけだ。


iPhone サバイバル: ラップトップを持たず旅行

  文: Rich Mogull <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>

自分自身で挑戦したいというのは人間が本来持っている欲求である。それはまるで、進化そのものが一つとなって肉体化し、私たちを前へと突き動かすようなものだ。それは私たちの背中にまつわりついて甘い言葉をささやき、私たちがこの地球上で自分の場所を占める価値あるものであることを証明せよと誘惑する。人によっては、そうした誘惑がクリエイティブな衝動となって噴き出し、芸術や文学、あるいは起業家精神という形で実を結ぶ。また別の人では、ことに若い男性たちならば、そうした誘惑がビールにまつわる危険な身体的愚行に結び付くこともある。そして、特に優れたスキルや経験、能力を持った人たちならば、もっともっと過激な挑戦に挑みたくなるものだ。つまり、自分自身の生き残りを賭けた挑戦である。

私は、この世で戦闘を除けば最も厳しい、最も危険な状況下で生き残れるように訓練を受けてきた。山岳レスキュー隊で十年以上救命救急士兼消防士として働いたことがある私は、自然の大災害から、大海の上や砂漠の中、あるいは山の中でよくあるサバイバル状況まで、あらゆることに対処できる自信がある。けれども、最近私が挑戦したことは、これはもうどうやって心の準備をすればよいのかさえ見当もつかないものであった。それは、カリフォルニアへの五日間の休暇旅行に、私の iPhone だけを持って、私の忠実なる MacBook Pro を家に置いたままで、はたして自分が生き残れるかどうか、という挑戦であった。

馬鹿にするのならどうぞご自由に。けれども私は自分のテクノロジーへの熱中の度合いについて弁解をする気は全くない。私は仕事上の旅行をたびたびするので、その際には自分のラップトップを世界の果てまでも携えて持ち運び、欠くことのできない旅行の必携ツールとしてこれに依存してきた。私の初代の MacBook Pro は、メキシコの浜辺で私たちの結婚式にさえも参加した。(お陰で当地のバンドに頼んで演奏してもらう手間が省けた。)でも、今回妻と私が結婚記念日にサンフランシスコで長い週末を過ごすことに決めた時、私はこれこそ自分自身への挑戦ではないか、これほど過酷な状況を自分が生き残れるかを見てみたい、という衝動に突き動かされた。それに、結婚記念の旅にラップトップを持参したりすれば、私の運命はもっと別の、より直接的な手段によって、終焉を迎えたかもしれなかったのである。

一日目:Phoenix, Arizona -- iPhone をクレードルから取り上げて、ラップトップのリッドを閉じながら、私は恐怖の身震いを感じる。私はこんな冒険に立ち向かえるのだろうか? 私のメンタルな健康を危険にさらすだけの価値があるのか? 私は努めて恐怖を振り払いながら iPhone をポケットに滑り込ませる。そして背中に上着以外何も背負わずに玄関を歩み出る。あと、搭乗券も忘れてはいけない。あと、五日分の衣類と洗面道具類の入ったローラーバッグ。あと、本と雑誌も二冊ずつ。でも、テクノロジー的に言えば、私は全くの手ぶらで無防備な姿である。

一日目続き:San Francisco, California -- 空港で iPhone はよく役に立った。退屈極まるセキュリティチェックの行列に並んで待つ間も、最新のニュースや Twitter のアップデートを読んで楽しめた。アップグレードのお陰で、航空会社がファーストクラスのシートと称するものに気持ちよく詰め込まれ、私は合法的に TiVo から転送しておいたテレビ番組をいくつか観ながらフライト時間を過ごした。まだ旅行は始まったばかりだが、今のところは自分の電子メール・ニュース・Twitter・テレビ中毒を満足させることに成功していた。

着陸後、私たちはレンタカーのデスクに向かう。元々の予定では次の日に車を借りることにしていたのだが。デスクにたった二人しか係員がいないのに長い行列が出来ているのを見て、カウンターに向かって突進しながら、私は自分の予約番号をオンライン旅行ツールの TripIt でチェックする。私は iPhone を取り出し、レンタル会社のウェブサイトをブラウズして、数クリックでサービスデスクを呼び出す。空いている車はない。そこで私たちは別のレンタル会社に向かって走り、その間私はオンラインで料金をチェックする。元の行列がまだ途切れないうちに、私たちはもう自分たちの車に向かっている。

さて、私たちは今 Maps を使いながらディナーの場所に向かっているところである。もう 4 時間ほど市内をさまよった挙句に。ホテルの受付の女性が地図はいかがですかと申し出てくれたのを私は笑って断わった。あえて不安に直面し、私の iPhone を信頼することにしたからである。今のところ、ラップトップが恋しくなるほど長い時間立ち往生してしまうこともなく、iPhone を使って電子メールは完璧に最新のものが手に入っている。私は自営業なので、平日に完全にオフラインになることは難しい。ラップトップなしで旅行することの不安がこれほど大きいのも、その理由の一つはそこにある。

二日目:Alcatraz Island, California -- 私たちは何とか一夜の身の寄せどころを見つけ、サンフランシスコ湾岸地域の強風と寒さを生きながらえることが出来た。けれども部屋にコーヒーメーカーが無かったので、夜が明けて間もないというのに私たちはさっそく原野に足を踏み出すこととなった。iPhone 上で手早く Maps 検索をして一番近い朝食レストランを見つけてから、ライブの地図に導かれて Lombard Street の命知らずの坂道を越え、反対側に降りてフェリーに乗って Alcatraz 島に渡った。

私は今、その昔 Al Capone が収容されていた独房の外に立ちながら電子メールに返信している自分に、何となく困惑した気持ちを感じている。あの伝説の犯罪王は、その昔この中に座って、彼の EDGE データ接続経由で YouTube をブラウズしたりしていたのだろうか? たぶんそんなことはないだろう。そこで私は自分の電話機でスナップ写真を撮り、それから歩いて食堂区域に進む。他の住人たちが隠れて飛び出してくるのではないかと目を配りながら。

三日目:Sonoma, California -- 私は今食用植物に囲まれた広場の真ん中にある差し掛け小屋の中に座っている、しかしながら、それに触れることは私の存在そのものを危険にさらす事になる。"ワイン造り" と呼ばれている地元の人は、これら植物は神聖なものであり、"収穫" として知られている祭礼の時だけに触るべき物と思い込んでいる。これらのワイン造りの一人が我々をもてなしてくれていて、"テースティング" として知られている儀式に 5時間も参加した後では、私は完全に頭がぼんやりしてしまっているが幸福そのものでもある。この Colin Lee Vineyards and Winery は、私が逆らえない様に感じる人を惹きつける香りを持った大変強力な飲み物を製造している。

私は電話のノートパッドを使って住所と電話番号を書き留め、と言うのも彼らはメールは使わないので、そして我々の夕食のための狩猟のオプションの研究を始める。私のスクリーンはぼやけているように見える - 多分このあたりの気象の影響なのであろうか?もしそうであれば、この気候は私の周りのもの全部に影響を与えている様である、なぜならば何でもぼやけているように見える。

四日目:Sonoma, California -- 私のラップトップからの別離に対する不安は完全に根拠のないものであった様である。この挑戦を始めて四日目に入って、単に凌げるだけでなく楽しめるという確信が増してきた。私は、仕事上のメールメッセージにも、その添付資料も含めて、完全に取り残されないでやって来ている。ドキュメントの編集は出来ないが、少なくとも標準の Microsoft Word, Excel, そして Adobe PDF ドキュメントは読める。理想にはまだ程遠いが、状況を鑑みれば実用にはなる。将来、もしかしたら、これらのファイルを直接編集することが出来るようになり、おまけに読取り専用の PowerPoint サポートが付けば、カンファレンスコールをしながらプレゼンテーションを追いかけることが出来るようになり極めて有用である。勿論本格的なドキュメントの仕事にはラップトップが常に好みの選択ということではあっても、コンピュータがない時の予期しないニーズには、必要最小限の編集機能は役に立つであろう。

私が旅に出る時いつもラップトップを持参する主な理由の一つは Web ブラウザへのアクセスである。私はこれを、旅程を見る、フライトの変更、更に映画の時間、ニュース、おすすめのレストランといったものに対する地元の地図、そして一般的な検索といったように何にでも使う。iPhone の Web ブラウザとメールクライアントは、Mac OS X の同じアプリケーション程にはしっかりしていないが、私の生き残りのための必要条件は超えており、大抵のニーズは満足出来る。このブラウザとメールは私の旅には欠かせない二つのアプリケーションである。

一つ欠けているものがあって、それは当然あるものだという前提でいるといざという時に冷や汗をかくに違いないと思えるもので、コピーとペーストの機能である。アプリケーション間で、いや同じアプリケーション内でもコピーとペーストが出来ないというのは、火をおこすのにマッチやライターが使えず弓と錐でやれと言われるのに近い悲惨なものである。生存は出来るが、大変な努力と不安さの代償を払ってである。

今日は Sonoma での我々の最後の夜でもあり、私はテーブルの真ん中に iPhone をおいてそのスピーカーから Jimmy Buffett の曲が流れてくる中で素晴らしいワインとチーズを楽しむ。この厳しい環境の中で生き延びていけるのは、私の持ち前の不屈の精神と期待を上回る iPhone の組み合わせのお陰である。

五日目:Phoenix, Arizona への帰途 -- 着陸に備えて、私は iPhone が飛行機内モードになっていて、万が一にも地面に激突しワイヤレスの引起した火の玉とならない様になっていることを確認する。今回の旅を振り返って、私の今回の挑戦に思いを走らせる。シェルターを探す、そして食料を取りに行くことから自分を楽しませ、世の中の情報に後れを取らない様にすることまで、iPhone はその代行の対象となったラップトップよりももっと有用であることに気付く。

地図と、ほぼ機能完備の Web ブラウザとメールクライアント、写真、ビデオ、カレンダー、そして何と呼ばれているんだっけ... 電話、これだけで私が仕事以外の旅で使用する基本機能の殆どを提供している。これにもうほんの少しの機能、例えばコピーとペースト、PowerPoint が見られる、そしてちょっとした Office ドキュメントの編集が付けば、これはもう軽量級の出張にも十分と言えるかもしれない。私の昔の Blackberry と較べると、大きなスクリーンと機能的な Web ブラウザは勝っているし、添付書類もはるかに見易い、そして Blackberry とは違って、Web ブラウジングの感じは、大抵の使い方に対しては十分以上と言える。一言付け加えておくと、私には皆さんに対して多少の強みがあることは認めなければいけないかも知れない。と言うのも、私は iPhone のキーボード上で親指二つで、普通の人が標準のデスクトップキーボードを使ってやるよりも早く通常のメールメッセージを書くことが出来るからである。

iPhone だけで中身の濃い出張をこなすのは無理だと言うのはおいておいて、この挑戦期間中私は MacBook Pro が無くて寂しいと思わなかっただけでなく、ラップトップでは到底なしえない偉業を達成できた。私のラップトップは技術的に言えば、現在位置を元にしたマッピング (外付け GPS を使って)、写真 (iSight 経由で)、そして電話をする (Skype) ことは出来るが、私はそれに合わせたとてつもなく大きなズボンが必要で、その上にポケットに入れるスペアの電池も買わねばならないであろう。

そしてこの挑戦の旅が終わりに近づいて私は勇敢な男でなどない事に気付いた。私が本当に私自身に挑戦したい思うのであれば、ラップトップを手元において iPhone 無しでやれるのかやって見るべきであろう。でもこれは私よりも勇敢な人達の挑戦用に残すこととしよう。そんなことはさておき、これが我々の結婚記念の旅であることを思えば、そもそも MacBook Pro の存在そのものが私の変わらぬ健康のためには良くないことであったろう。


TidBITS 監視リスト: 注目のソフトウェアアップデート、26-May-08

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>


TidBITS Talk/26-May-08 のホットな話題

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

フォルダの暗号化 -- ある読者は、仕事用のファイルがいつもセキュアに暗号化されていている必要があるという。FileVault が解決を提供してくれるだろうか? それとも、サードパーティの暗号化製品が答なのか? (メッセージ数 10)

Spam が iPhone に -- iPhone のメモリとストレージ量は限られているので、送りつけられた電子メールをこの機器上でフィルタリングする良い方法を見つけるのは難しい。その代わりに、ゴミメールがこの電話機に達する前に取り除いてしまおう。(メッセージ数 2)

Mail への不満 -- 以前 Eudora を使っていたユーザーが Mail の限界に行き当たる。そこから、訴訟に備えてオリジナルのメッセージを保存することについて議論が盛り上がる。(メッセージ数 6)

Skype ビデオを使う -- Skype の High Quality Video 設定は、特別の Logitech ハードウェアを購入しなくてもその利点が生かせるものなのか? (メッセージ数 2)

DirecTV DVR を Mac に -- DirecTV の提供する non-TiVo DVR は、ビデオを Mac に転送することができないように見える。ならば、代わりの方法はあるのか? (メッセージ数 3)

モニタのお薦めは -- 交換用のディスプレイを購入するためのアドバイスを求めていた Kirk McElhearn が、そのお返しに入手とセットアップについてのアドバイスを語る。(メッセージ数 1)

(交換用の電源とファン -- Power Mac G4 で古くなった電源回路と冷却ファンを新しいものに交換すれば、パフォーマンスが向上し騒音が減るだろうか? (メッセージ数 2)

iPhone サバイバル: ラップトップを持たず旅行_ -- ラップトップ機を自宅に置いたままサンフランシスコへの旅行に出かけたという Rich Mogull の記事に、読者たちが反応を寄せる。(メッセージ数 4)


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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2008年 6月 1日 日曜日, S. HOSOKAWA