TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#948/06-Oct-08

今すぐ顧客たちに影響を与えるものではないが、今週の大ニュースは Apple がこれまで過度に強い制限を定めていた iPhone 守秘義務契約を撤廃しようとしていることだ。iPhone 用ソフトウェアの開発者たちは、今後自由に連絡し合うことができる(ゴーサインを待ち受けていた技術関係の書物もついに出版が許される)ようになり、このことはきっと将来より良いアプリケーションが生まれることにつながるだろう。その他のニュースとしては、AOL Instant Messenger (AIM) が Mac に驚きの復帰を果たし、Easy Wi-Fi が iPhone や iPod touch でホットスポットへのアクセスを簡単にし、フランスの新聞記事が古くなった Mac Pro が持ち主を毒で汚染するかもしれないと主張する。Joe Kissell は iPhone 用ゲームのレビュー記事を書き始めてそれが見かけほど単純な仕事でないことに気付き、Adam は活字体の素晴らしさの泉、Bravefont を楽しむ。[訳者注: font という単語には「泉」という意味もあります。]私たちはまた Take Control 電子ブックの五周年を心から祝い、大規模な半額セールを敢行する! TidBITS 監視リストでは、Apple TV 2.2、Firefox PDF Plugin for Mac OS X 0.9.9、iTunes 8.0.1、SousChef 1.0、OmniWeb 5.8、Quark Publishing System 8、Drive Genius 2.1、You Control: Desktops 1.3 のリリースをお伝えする。

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Extensis、フォントの駄洒落たっぷりの Bravefont 予告編

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Extensis 社が、リリース前ソフトウェア製品の宣伝に新たなスタンダードを打ち立てた。近日発売予定のフォント管理ツール、Suitcase Fusion 2 の宣伝のために、仮想上の「歴史的、ロマンチック、アクション・アドベンチャーのSFドラマ」Bravefont の傑作予告編を発表したのだ。登場する主役フォント名は Stone Serif (Citizen Kern)、Lucida Blackletter、Sean Symbol、それに Corvina Skyline (My Big Fat Greeking Wedding) という豪華さで、助演陣もそれにひけを取らない Gill Sans (The Fontographer's Wife) や Dom Casual (It's a Wonderful Ligature) といった面々だ。ぜひともビデオをご覧あれ。しっかりと目を凝らして、ジョークを一つも見逃すことなきように。


Take Control ニュース: 5周年を祝って5割引セール

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

ほとんど信じがたいことだが、もうすぐ私たちの Take Control 電子ブックシリーズがスタートしてから5年目の記念日がやって来る。これを祝うために、私たちはカタログにあるすべての電子ブックに 50% 割引(半額セール)を実施している。専用のリンクを使って 、まずは私たちのタイトルのリストを一覧して頂きたい。(すべてのタブをチェックすることをお忘れなく!)このリンクを使って開いたなら、必要なクーポンコードがあらかじめロードされているはずだ。すると、アイテムをカートに追加すれば、割引された値段が表示される。今回の半額セールは 2008 年 10 月 14 日の火曜日(米国時間)まで続く。(セールの対象は電子ブックのみだが、まず Take Control 電子ブックを購入してから PDF の最初のページにある Print リンクを使って印刷版を注文すれば、フルカバー価格を元に割引された価格で印刷本が購入できる。)

私たちが Take Control シリーズを始めたのは 2003 年 10 月のことだった。出版した最初のタイトルは Joe Kissell の“Take Control of Upgrading to Panther”だ。これが、Apple による Mac OS X 10.3 Panther のリリースと同時に出された。その後、2005 年 4 月になって Tiger が出る日が来ると、私たちも業界用語で言う“day and date”(同時発売) リリースとして四冊の電子ブックを出す用意ができていた。そして、2007 年 10 月の Leopard 発売日にも、私たちは五冊の電子ブックで同じ離れ業を繰り返した。

これらの年月を通して私たちは 58 冊の Take Control タイトルを出版し、私にはとうてい数える暇がないほど多数の無料アップデートも出した。また、改訂版も多数出して、その度に私たちは従来版のオーナーには割引価格を提供してきた。全部を合わせれば、8,000 ページ近くのテキストになる! 58 冊にのぼるこれらの本と、私の iPhoto Visual QuickStart Guide の電子ブック版や Macworld Superguide を私たちが再販した分を合わせ、すべての通算販売数を数えれば 155,000 冊以上になる。Harry Potter には遠く及ばないとしても、これらは私たちや著者たちが家賃を払ったり明かりを灯し続けたりできるために素晴らしい貢献をしてくれた。

でも、ここで本当に大切なことは、私たちの読者である皆さんが、私たちに示してくださった信頼だ。2003 年の時点では、PDF フォーマットのみで存在する電子ブックというものはせいぜい一風変わったものという目でしか見られていなかった。私たちの側でも PDF に対して一般的に、あるいは特に電子ブックに対し、寄せられた批判に対処するために一生懸命努力もしたが、これら初期のタイトルを購入してもよい、さらにまた次のタイトルも購入しよう(読者の中には全タイトルを揃えたという人までいる!)というところまで私たちを信用してくださったのは読者の皆さんだ。過去にほとんど誰も購入したことのない製品をもって新しいビジネスを始めるほど恐ろしいことはない。私たちが最初に出した数冊が当初の成功を収めたこと、さらには皆さんから寄せられたサポートの言葉、それらがあってこそ私たちはもっと多くのタイトルを出版し、時間や人手を注ぎ込んで Take Control をより良くして行こうという動機を持つことができた。私たちの最も人気あるタイトルたち、例えば Joe の“Take Control of Mac OS X Backups”や Glenn Fleishman の AirPort ネットワーキングに関する本といったものも、すべてはその結果として生まれたのだ。

私たちの試みがすべてうまく行った訳ではない。翻訳版には私たちも大きな期待をかけていたが、複数の言語で複数の市場にマーケティングをすることの困難は予想をはるかに上回った。コンピュータ業界以外の話題に最も遠くへ踏み出したのは Joe Kissell の“Take Control of Thanksgiving Dinner”は素晴らしい本だった(私たち家族は今でも毎年この本を参考にしている)が、商業的には失敗に終わった。それに、Cupertino に向けて発せられる強力な思念のビームは常時切れることがないにもかかわらず、Apple は今になってもまだ PDF ベースの電子ブックを読むのに適した iPod をリリースしてくれない。(iPhone や iPod touch でそのようなものを作ることも可能だろうが、それはまだ私たちの望む体験形態ではない。)

そうは言っても、注目は続けて頂きたい。私たちは常に新刊やアップデート版の電子ブックに作業を続けているし、実行に移してみたい新しいアイデアもたくさんあたためている。2003 年に Take Control が成し遂げたのと同様に、そうしたアイデアのいくつかは電子的な本の世界を変えるものとなるかもしれないのだから。


Apple、開発者が iPhone ソフトウェアについて語るのを許す

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Apple は先週その典型的な無記名の準ブログポストの一つに 爆弾を落とし、これまで iPhone と iPod touch 用のソフトウェアの開発者がその作品に関して公に論議することを禁じてきた守秘義務契約 (NDA) を、既にリリースされている iPhone ソフトウェアに対しては適用しないようにしたと記している。

Apple は、ほぼ一週間以内に新たな開発者契約をリリースするであろう。この契約によれば、未リリースの iPhone ソフトウェアや未発表の機能について語ることは禁じることになるが、妥当な線であろう。しかし、それ以外は自由でいいと言うことであろう、これは Apple にとってもこのプラットフォームにとっても賢い動きと言える。

この NDA は、ある著名な独立開発者から FNDA と婉曲的に呼ばれたが - この F が何を意味するかは想像して貰えるであろう - プログラマーがコミュニティを形成するのを阻止して来た。そうでなければ、お互いから学んだり、容易にヒントを共有したり、そして開発者が制約付き或いは制約無しでコードを一般にリリースすることを選択できたりするはずである。NewsGator の Brent Simmons は早速開発者のメールリストを立ち上げたが、時間が経てばもっと公なものに取って代わられることを彼は期待している。

開発者の中にはこの NDA のある部分を意識的に破るという選択をした人達もいたが、われわれの知る限りそれで罰則を科せられたという話は無いようである。

Apple はこの様な決定について話をすることは全く無いので、この NDA を取り除くのになぜこれほど長い時間を要したのかを知るのは難しい。それは次の様な話と関係しているのかも知れない、iPhone プログラミングの本がキャンセルされなければならなかったとか、あるプログラムが App Store から拒絶されたことを説明するメッセージが最後の所に NDA 告示を載せていたかとか、怒りの開発者の数が日に日に増加している、或いは重要な Apple パートナーが文句を言ったとかである。

その理由が何であれ、議論や協調が多くなると言うのは一般的にはより良いソフトウェアやより豊かなプラットフォームを意味する。Apple の次の動きは、App Store 向けのアプリケーションでは何が許されないのかをもっと透明性を持ったやり方でどう論議するかを考え出すことである ("開発者たちが iPhone App Store に背を向けるかも" 2008-09-25 参照)。この極めて非条理な NDA が取り除かれたことを考慮すれば、次は App Store の制約やレビュー方法に変化があってもおかしくない。


昔の Mac Pro は有害なのか或いは単に臭うだけなのか?

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

フランスの TidBITS の一読者が、匿名を希望している、Mac Pro ラインの旧型機にまつわる大騒動の兆しについて我々に注意を促してきた。どうも、これらのマシンから強い臭いが発せられているのに気づいたユーザーがいて、とりわけ新しいうちがそうだと言う、更にフランスの新聞 Liberation はつい最近、この放出ガスを分析したら揮発性の有機化合物が検出され、その中には発癌性物質の一つであるベンゼンが含まれていたと言っているラボ研究者の経験談の記事を掲載した。

我々の読者がコンタクトしたフランスの AppleCare の人は、この問題が 2008年以前に製造された Mac Pro に関わっていることは認めたが書いたものにすることは拒絶した。Apple のスポークスマンの Bill Evans は Macworld に対して次の様に語っている、"我々の調査ではこの指摘を支持するものは何も見つかっていないが、この顧客のために引き続き調査を継続している。"

Apple の討論フォーラムには、2007年にこの臭いを経験したユーザーからのポストがあり、その内の何人かは AppleCare の下でその Mac を交換したと言う。ある場合には、この臭いは電源に近い所にある シール 、アクセスドアに付いている 小さなプラスチックの帯に、或いはプロセッサのヒートシンク上の 伝熱コンパウンドに関係している可能性があると言う。

我々の読者によって開始された 討議スレッドは (噂によると Apple によって何回も消されようとしたと言う)、2007年のスレッド程沢山の "私も同じ" のポストを喚起しえていないが、この臭いの問題をまだ経験していない Mac Pro のユーザーからも懸念の声が挙がっている。

この問題に関して何を言えばいいのかを知るのは難しい。コンピュータから発せられる強い臭いと言うのは概して良いものではないが、注意深い分析無しでは、放出されている化合物が実際に有害なのか、そしてもしそういう場合でもその発生量が健康リスクをもたらす様な量なのかを知ることは不可能である。加えて、この争点の対象となっているマシンは少なくとも一年前のものであり、もし製造上の問題があったのであれば、Apple は間違いなく何ヶ月も前に手を打っているに違いない。現在の Mac Pro にもこの問題が存在するという可能性を示すものは何も無いが、2008 以前の Mac Pro を持ち、それが現在も強い臭いを発するとか、それが新品の時そうであったとか言う人は、Apple にコンタクトされた方が良いかもしれない。


AIM の帰還(ベータ版で)

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: 羽鳥公士郎 <http://www.ousaan.com/mail/>

AOL は、まだ存在していて数百万のユーザーがいることを私はいつも忘れてしまうのだが、1から作り直した AOL Instant Messenger(AIM)のベータテスト版をリリースした。2004 年 2 月以来の改訂版に向けたかすかな光である AIM for Mac 1.0 beta には、CNET の Webware によれば、iChat に差をつけるところがいくつかあるが、重要だと思われるものはないようだ。

インターフェースのデザインとアイコンは、Apple の iChat ソフトウェアでAIM に接続したときと似ているが、オーディオとビデオのオプションは現れない。インスタントメッセージング経由での画面共有は、Leopard の iChat に特有の機能だから、AIM では利用できない。AIM のベータ版ではまた、セッションのタブブラウジング機能が加えられているが、Apple も Leopard 版のiChat をリリースしたときにこの機能を加えている。

AIMMacScreenshot1

Buddy Listのエントリをハイライトすると、AIM は「フライオーバー」をポップアップし、そこには拡大されたメンバーアイコンと、(その人が詳細情報の公開を許可していれば)どれだけの時間オンラインでいるか、そしてその人の現在のステータスメッセージが表示される。

AIM では、コンピュータから離れているときの応答をより詳細に設定することができる。その際、あなたに連絡をしてきた人の名前を使用することもできて、非常に便利なように見える。さらにもっと徹底して、アニメーションのアイコンや壁紙にアクセスし、カスタムのエモティコンセットをダウンロードすることもできる。私は、こういうことに魅力を感じるほど若くはなくなってしまったが。

このソフトウェアは AOL Mail と「統合」されているというものの、それは単に、Buddy List の下にメールアイコンがあって、それをクリックすると、ウェブブラウザが開いて AOL Mail アカウントにログインできるというに過ぎない。


Easy Wi-Fi があなたに代わってパスワードを入力

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: 羽鳥公士郎 <http://www.ousaan.com/mail/>

iPhone には素晴しい機能が多数あるが、Apple が Mobile Safari でフォーム自動入力とパスワード保存を不可能にするという選択をしたため、退屈なデータの再入力を何度もしなければならなくなった。これには、とりわけホットスポットのアカウントを持っていると、いらいらさせられる。詳細情報を掘り出し、タップしながら入力しなければならず、その結果必然的に、私はしょっちゅうなのだが、操作を間違える。(Apple はセキュリティの理由でこの機能を削除したのかもしれないが、App Store のように、時間で制限されたセッションのあいだだけ有効なパスワードを入力させるというような方法も可能なはずだ。)

Devicescape は何年も前に、Mac OS X と Windows、そしてますます多くのモバイル機器(ほとんどはスマートフォン)上で動くソフトウェアで、この問題を解決した。このソフトウェアは、同社のサーバ上であなたが管理するアカウントと連係して働き、そのアカウントに、自宅のネットワークの暗号化キーも含め、ネットワーク関連の任意の情報を保持することができる。

1年前、私は Devicescape の Connect ソフトウェアについて書いたが(2007-09-17 の "iPhone でもっと手軽に Wi-Fi ホットスポット接続" 参照)、これには iPhone の牢屋破りが必要だった。このソフトウェアがついに、Apple の承認を受け、1.99 ドルの Easy Wi-Fiとして App Store でリリースされた。

devicescape_easywifi

Easy Wi-Fi の価格は予価ということになっている。以前は、Devicescape は製品に課金をしていなかったが、彼らはこの市場の瀬踏みをしていたのかもしれない。彼らが提供しているような製品はほかにないのだから。私なら、ホットスポットを使っているすべての iPhone ユーザーと iPod touch ユーザーはこの製品を買うべきだと言うだろうから、彼らはこれで何がしかの儲けを得ることができるだろう。

私は Boingo Wireless に登録しており、米国の数万地点に定額の月間料金でアクセスできるとはいえ、Boingo はまだ iPhone 用ソフトウェアを提供していないので、Boingo が集めているホットスポットのパートナーページでログイン情報を探して入力するという手間をかけなければならない。Devicescapeは数百のホットスポットネットワーク認証情報入力システムに対応しており、その中には Boingo も含まれるので、この素敵な組み合わせでは、Boingo によってお金が節約でき、Devicecape によって時間と手間が節約できる。

ホットスポットのパスワードを入力するほかに、自宅のネットワークのキーを入力したり、さらにそのキーをこのソフトウェアで自動的に共有する人のリストを選択したりすることができる。もちろん、友人や同僚にあなたのネットワークのパスワードを知らせることもできるが、Devicescape の方法では、友人に知らせずにネットワークのパスワードを変更したり、友人や同僚のアクセス権を削除したり、ほかの人がパスワード情報を入力せずにすむようにすることもできる。

Devicescape は、802.1X を介した企業向け認証設定 WPA/WPA2 Enterprise にまだ対応していない。Apple は iPhone 2.0 ソフトウェアリリースで、別の機能追加アプリケーションを使用した 802.1X のサポートを追加した。


iPhone ゲームのレビュー、これが実は難題

  文: Joe Kissell <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

私は iPhone/iPod touch 用に Ambrosia から出ているゲームを三つ選んで、それらの簡単なレビュー記事を書くつもりだった。これらのゲームを三つとも相当の回数プレイしてみて、私はこれらの長所も弱点も相当に詳しく解説できる自信がついたし、もっと総合的な提言もできるのではないかと思った。けれども、実際にレビューを書き始めてみると、そのためには解決しなければならない問題があることに気付かされた。それは、競合するゲームの数の多さと、iTunes App Store の動作の方法に関係したことだった。

ゲームについて具体的なことはすぐ後に書くが、その前に私がなぜこれら特定のゲームだけをレビューしようとしているのか、そして、iPhone 用のソフトウェアについて、特にカジュアルな類いのゲームについて、レビューすることに問題があるのはなぜか、簡単に述べておくべきだろう。

ゲーマーでない人のためのゲーム -- 私は自分がそれほどゲーマーと言えるほどの者ではないことをまず告白しておかなければならない。まあ、 冥王星が惑星でないのと同じようなものだ。私の Mac に入っているゲームは、そこに最初から付いていたものだけだ。(それは Chess だが、私は一度もプレイしたことがない。いや、チェスをプレイしたことはあるが、この Chess は使ったことがないという意味だ。)実際、私はどんな種類のゲームも、ボードゲームからフットボールまで、はっきりと嫌いだと公言しているし努めて避けるようにしている。けれども、問題を解くのは好きで、そのためいくつかの種類のパズルの類いならば私にも楽しめる。それに加えて、時々私は仕事からの逃避モードというか、緊急に迫ったプロジェクトを何が何でもできるだけ先送りしたいという気分になることがある。(例えば、締め切りを過ぎてしまった Take Control 電子ブックに最後の仕上げを施そうという時など。)そしてそんな時、自分に _あとほんの一時間だけ_ と言い聞かせながら文字を並べ替えて単語を作ったり宝石の色を合わせたりする、そんなことも十分あり得るのだ。

だから、私がゲームをプレイするそうした比較的稀な機会において、いわゆるカジュアルなゲームを私は主に選ぶ。つまり、シンプルで、一回限りの、一人遊びのパズルで、継続的に没頭することを要しないようなものだ。そういうものをプレイする時、私は二・三時間あるいは数日間夢中になってプレイするが、その後はいつの間にかすっかり興味を失って、何カ月も手を触れさえしなくなることが多い。

私の新しい iPhone に何かカジュアルなゲームを入れて、数時間必要になった時に備えようという気になった場合、私はあの有名で評判も高い Ambrosia Software の製品を三つ、ダウンロードすることにした。 Mr. Sudoku ($4.99)、Aki Mahjong Mobile ($4.99)、mondo Solitaire ($9.99) だ。(Ambrosia からは、mondo Top 5 Solitaire も出ている。これは最も人気あるソリテアゲーム5つだけを集めたもので、価格は $2.99 だ。私はこのバージョンを試してみていない。)

実際、私はしばらく前にこれら三つのゲームの初期のバージョンをレビューし始めていた。(その一つ、Aki Mahjong はもともと価格が $9.99 だった。)これら三つとも私が最初にプレイした時以降にそれぞれ少なくとも一回はアップデートされており、それもまた良いことだ。当初のバージョンでは三つのプログラムのいずれも何らかの深刻な不満を私に感じさせていたが、その後の無料アップデートで修正がなされた。

レビュー基準の問題 -- 通常、ソフトウェアのレビューではまずプログラムの機能やインターフェイスを説明し、長所と短所の概要を述べ、気付いた問題点に触れてから、最後に総合的に見てどういうことをお勧めするかを書いて結ぶものだ。結局最終的にイエス、あなたはこれを使うべきだとなるか、それともノー、あなたはそうすべきでないとなるかは、あなたの他の選択肢に大きく依存する。その分野で一つだけというプログラムなら、仕事を成し遂げるために他に良い方法がない場合にはたとえ重大な欠陥があってもそれを私は推薦するだろう。逆に、もしも私がレビューしているプログラムにはっきりした競合相手がある場合(例えばウェブブラウザなど)では、推薦する際に他のプログラムと切り離して考える訳には行かない。それの代わりに他のどんなものを使えるかということが必ず考慮の対象になる。だから、もしも私がそうした他のソフトウェアについて最小限でも一通り知った上で書くのでないとしたら、それは無責任というものだろう。また、価格も推薦する際の要素になる。その代わりになるプログラムが素晴らしい働きをするがものすごく高価なものだったなら、働きは並程度だが非常に安価なプログラムでも、私はその方がお買い得だと推薦するかもしれない。

Mac 用バックアップソフトウェアを集めた私の最新のリスト(2008-09-14 の記事“Mac 用バックアップソフトの膨大なリストをアップデート”参照)をサイトにポストした際に(ちなみにこのリストには実際の順位付けや推薦などは含まれていなかったが)私はこんな風に愚痴をこぼした。選択肢数が 100 個近くにもなれば、互いに比較して十分に情報に基づいた判断を下すのも難しくなる、と。けれども、少なくともバックアップソフトウェアの場合には、入手可能ないろいろのプログラムごとにその機能の範囲が大きく違っているので、比較の際に対象を簡単に狭めることができる。例えば、Amazon S3 をサポートするもの、あるいは暗号化を提供するもの、といった条件を付ければ、そのような機能を必要とする人にとっての考慮の対象はすぐに狭まるからだ。

ここまで書いてくれば私が何を言いたいのかもうお分かりだろう。私が検討しようとしているカジュアルな iPhone 用ゲームというのは、基本的にその性質上機能の範囲は非常に少なく、価格の点でも互いにそれほど大きく異なることはない。だから、選択肢の数が多ければ多いほど、どれを推薦するかを決めるのがより困難になる。さらには、実際問題として、レビューの妥当な判断基準を決めることすら困難になる。

まずは最も極端な例として、Sudoku (数独) について考えてみよう。このゲーム自体はこれ以上ないほど単純なものだ。初めに限られた数の鍵が与えられていて、それをもとに 9×9 のグリッドの中を 1 から 9 までの数で埋めてゆく。ただし、どの縦の列も、どの横の行も、また九個ある 3×3 のサブグリッドのいずれにも、すべての数がただ一度ずつ登場するようにするのだ。このゲームは紙と鉛筆さえあればプレイできる。だから、コンピュータ化された Sudoku ゲームにも、ほんの少数の基本的機能以外必要ないし、たくさん機能があっても何の役にも立たない。

2008 年の 7 月に、Dan Frakes が Macworld に iPhone 用 Sudoku アプリケーションの総まとめ記事を書いた時、彼が見つけた選択肢はたったの 18 個だった。(そして結局彼が深く掘り下げてレビューしたのはそのうち三つだけだった。)それからほんの二カ月ほど経った今では、私が App Store で数えただけでも 41 個の Sudoku ゲームがあり、その価格も無料から $5.99 までさまざまだ。

私は iPhone を「懐中電灯」にするアプリケーションが(現時点で)11 個あることさえ馬鹿馬鹿しいと思った。要するにどれもみな、iPhone のスクリーンを真っ白にするだけが主な機能のものだ。でも、Sudoku のアプリケーションが 41 個もあるなんて、これは馬鹿馬鹿しさをはるかに越えている。バックアップソフトウェアと同様、選択肢が多いのは必ずしも良いこととは言えない。

おそらく誰も、普通のユーザーも、筋金入りの熱狂的 Sudoku ファンも、職務に忠実なソフトウェア評論家でさえも、41 個の異なった Sudoku プログラムを一つ残らずダウンロードしてプレイし、すべてを比較しようと思う人は一人もいないと言って過言でないだろう。$5.99 のものでさえ大した投資ではないのだろうが、やはりたいていの人はお金を出す前に何が手に入るのか知りたいと思うだろう。残念ながら、現在のところ iTunes Store はアプリケーションを先に無料で試用してからあとでライセンス料を支払うという手段を提供していない。Mac OS X 用ソフトウェアではそれが一般的な方法だというのに。その結果、数多くの開発者たちが自分のプログラムに二つ(かそれ以上)のバージョンを提供して、たいていは片方を無料の、機能の限定されたバージョンとし、もう片方を完全機能の有料版とする方法を採っている。Sudoku アプリケーションの場合も、無料の九個はすべて何らかの機能限定版で(たいていの場合、それはサイズの小さな、種類の限られたパズルしか選べないことを意味する)対応する有料版へのデモとして機能する。もちろん、この九個の Sudoku ゲームをダウンロードするだけでも結構大変な仕事だし、いずれにしても競合相手の大多数(Ambrosia の Mr. Sudoku も含む)には無料版がない。

要するに私の言いたいのはこういうことだ: これはほんの狭いフィールドなのに、あまりにも多数のアプリケーションがひしめいていてそれらは皆基本的に同じようなことしかしない。どんなに才能ある評論家でも、これらを比較して良い推薦文を書くのは至難の業だろう。これほど極端でないにしても、似たようなことがソリテアゲーム (私が数えたところでは 31 個) や麻雀 (選択肢は 11 個)にも言える。私が世界中の iPhone 開発者たちに向けて、重複したゲームばかり作るのは止めてもっと有用なものを作りなさいと呼びかけることは実際的に無理だが、今後はぜひ、同じもののバリエーションが数え切れないほど現われるのではなく、本当に内容の違いに富む多くのものが出てくるようにと願わずにはいられない。

さて、これでようやく胸のつかえが取れたので、ここからは先ほど紹介した三つのゲームについて少し詳しく述べてみよう。結論を先に言わせてもらうと、三つはそれぞれに良いところがあって私はそれなりに気に入ったが、私はやはり他のゲームと比べてみなければと思ったし、いずれも足りないところがあると感じたし、結局皆さんにぜひこれを買うべきだと熱狂的に推薦する気持ちにはなれなかった。

Mr. Sudoku -- 私が Mr. Sudoku に第一歩でつまずいたことを、まず言っておかなければならないだろう。私が初めてこのゲームをプレイした時、これは自己紹介のつもりなのか、過度にフレンドリーな大声で“Mr. Sudoku!”と発音して私を(そして近くにいた人たちを)苛立たせた。一人遊びのゲームが静かにできるものだと思っていたのに。私は即座にサウンドをオフにする設定を探し出した。Sudoku 開発者の人たちすべてに言っておきたい: このゲームにサウンドは実際の役に立たないし、余計なサウンドは害になるだけだ。

四つの難易度レベルに分かれてあらかじめいくつか定義されているゲームのうちから、どれでも選ぶことができる。リストされているゲームをすべてプレイし終えたら、+ ボタンをタップして新しいゲームを(どの難易度レベルでも)追加し、それを選択すればそのゲームがプレイできる。(完成させたゲームをリストに残すかそれとも隠すかの設定も選べる。)このようにして、未完成のゲームを一度にまとめて経過を追跡することもできる(このアプリケーションは個々のゲームごとにあなたが使った時間と進展状況を記録している)のだが、そのやり方が必要以上に複雑なものだと私には感じられた。私なら、単に一つのボタンをタップすれば難易度が設定でき、一つのゲームのみを自分がそれを完成させるまで追跡するだけで十分だと思う。少なくとも、個々のゲームを完成させた後にリストが自動的に更新してくれるようになればと思う。その際に、同じか一つ上の難易度レベルに自動的に新しいゲームを加えるようになればさらに素晴らしいだろう。

他の iPhone 用 Sudoku と同様、正方形の枠の中に数を入力するには、まずその枠をタップしてからその後で数字をタップする。(機器を縦にしている時には数字が一列に並んで表示され、機器を横長にしている時には 3×3 のグリッドに数字が表示される。)奇妙なことに、数字が表示されるのは一つの枠が選択されている間だけで、数字を入力し終えると数字の表示は消えてしまう。私はこれが不必要に気を散らされるやり方だと思った。選択した正方形がハイライト表示されるのに加えて、Mr. Sudoku はそれを含む現在の行、列、3×3 ブロックをそれぞれハイライト表示する。これはプレイの際に役立つ援助機能と言えるだろう。

Mr. Sudoku の目玉となる機能は、どうやらボタンをタップする代わりにスクリーン上で数字を手書きすることもできるというオプションのようだ。けれどもこの方式の入力の方がずっと集中力が必要で、間違いの可能性もずっと高い。私に言わせれば、これはゲームの価値を高める追加機能というよりも、ゲームの価値を損なうものだと思う。

特定の正方形に入れるべき数字の候補を自分のためにメモしておきたい時は、数字をタップする(または手書きする)前に、鉛筆アイコンをタップしておく。また、どの正方形でも既に入力を済ませた数字をクリアできるボタンもある。あとは、サウンド効果(と音楽)がオン・オフできるのを別にすれば、間違いのリアルタイム表示をオン・オフできるオプション(これはコンピュータの Sudoku ゲームでは一般的な機能だ)があるだけだ。

そして、それ以上何も言うべきことはない。ゲームプレイ自体は私が試したことのある他の Sudoku と比べて良くも悪くもなかった。でも、プレイしながら、このアプリケーションがいろいろなことをやり過ぎだという感覚がどうしても私の頭から離れなかった。もっとシンプルなデザインにすればよかったのに、と思った。比較のための根拠を自分の目で確かめようと、私は無料の Sudoku アプリケーションを他にもいくつかダウンロードしてみた。試してみると、その大多数は状況がずっと悪かった。こんなにシンプルなゲームならばお湯を沸かすのと同じくらいに一本道で間違えようもないはずなのに、驚くべきことだ。ただ一つだけ、Mighty Mighty Good Games 製の Sudoku for iPhone は、私の目には他より格段に良い出来に映った。(ゲームをぶち壊す余計な仕掛けが少なかったことが大きな理由だろう。)結局、私はこちらを一番よくプレイするようになった。(有料版は $2.99 だが、360 個のパズルとさまざまのカラースキームを備えている。一方、無料版には 20 個のゲームと三種類のカラースキームしかない。)

私が試した iPhone 用 Sudoku ゲームは全部でおそらく六個か八個だけなので、はたして Mighty Mighty Good Games がベストなのかどうか(あるいは最もお買い得なのかどうかさえ)私に判断できる資格はない。ただ、私が確信を持って言えるのは、Mr. Sudoku が絶対にワーストに近いものではない(持って回った言い方だが、しかたがない)けれども、少なくともその競合相手の一つに比べればお買い得度に関しても劣るということだ。

Aki Mahjong -- Mahjong (あるいは mah-jongg) は、シンプルだが奥の深いタイル合わせゲームだ。コンピュータ化されたもので一般的に見られる一人遊び麻雀では、最初にたくさんのタイルが数多くあるレイアウトのうち一つで積み上げられている。あなたは、同じ絵を持つタイルを2つ、どちらも左右両側からブロックされていない状態のものに限り選んで、それらを積み木の山から取り除く。ゲームの焦点は、どの順番でタイルを取り除けばペアの片方がもう片方の上に乗った状態で行き詰まることなくすべてを取り除けるかを見極めることだ。[訳者注: 残念なことに、英語で Mahjong と言えば麻雀牌を積み上げたものから2個ずつマッチしたものを取り除く積み木崩しゲーム(日本でいわゆる「上海」ゲーム)という意味が定着してしまっているようで、四人で打つ高度なゲームである本来の麻雀のことはほとんど知られていないようです。]

Aki Mahjong には 12 種類のメインのレイアウト(「レベル」と呼ばれる)があり、一つのレベルを成功裏に完成させなければ次のレベルのロックが外れないようになっている。(ただし既に済ませたレイアウトには、その度にシャッフルし直されるが、いつでも戻ることができる。)レベルを選んだ後で、三段階ある難易度(それぞれ時間制限が課される)または時間無制限版から選べ、一番易しいものを完成させた場合にも次のレベルのロックが外される。だから、レベルが上がっても自動的に難易度が上がる訳ではない。このゲームにはその他に 25 のボーナスレベルもあり、それらについてはいつでも自由に選ぶことができる。(こちらもそれぞれ難易度が選べる。)このゲームにいったいなぜ「メイン」と「ボーナス」のレベルの区別があるのか、また、レベルと難易度に関連がないのならばいったいなぜ他のレベルに進む前にレベルのロックを外すことにこれほどこだわるのか、私には結局さっぱり理解できなかった。私なら、レイアウトをたくさん集めた大きなセットを一つだけ作っておき、その中から好きなレイアウトをいつでも選べる(難易度レベルも自由に選べる)ようにするか、あるいはスキルの進歩を証明できた後のみより拡張されたオプションが手に入るようにデザインされた漸進的プレイにするか、どちらかにしただろうと思う。

いったん一つのゲームを選択すれば、マッチするタイルを2つタップしてそれらをボードから取り除き、すべてを取り除くか、時間切れになるか、あるいはタイルが積み重なって失敗に終わるかするまで、その手順を繰り返すだけだ。バックグラウンドで音楽を演奏するオプションもあるし、サウンド効果もオン・オフの切り替えができる。

グラフィックス表示は一流の出来映えだ。タイルも、背景も、アニメーションも、すべて魅力的だ。良いことか悪いことかは分からないが、Aki Mahjong では現在ブロックされているタイルが薄暗い表示になる。これはゲームプレイの助けにはなるが、これをゲームの楽しみをそぐ余計な補助と感じる人もいるだろう。標準通りのつまんでドラッグするジェスチャーにより、ディスプレイをズームイン・アウトしたりパンしたりできる。ただし、表示の俯瞰角度を変えることはできないし、これが最もイライラさせられる点だが、機器本体を回転させても表示が回転してくれない。常時は常に横長モードに固定されていて、タイルを正方形に設定しても縦長タイルに設定してもその点だけは変わらない。

ゲーム自体は(少なくとも私の感覚では)あまりにも寛容すぎる。例えば、マッチが一つもない状態で行き詰まった(つまりゲームに負けた)場合にもこのゲームは終わらない。スクリーンをタップすれば、残ったタイルがその配置のままで再びシャッフルされる。(また、iPhone を振り動かせばいつでもタイルをシャッフルできる。)一方できないこともある。すべてのタイルを元の場所に戻して、正しい順序でプレイし直すために同じゲームを再開することができないのだ。どうやら、知的な挑戦を楽しむことよりも、とにかくゲームを終わらせることの方に重点が置かれているようだ。また、タイマー(つまり時間制限のあるタイプのゲーム)は奇妙に非線形だ。つまり、タイルをマッチさせれば残り時間が増えるし、ヒントを見たり再シャッフルしたりすれば残り時間が減る。初めに決められた時間が過ぎれば単純に時間切れになる訳ではない。いったいなぜこんな風に変に複雑にしたのか、私には意味が分からない。

私は他にもいくつか麻雀ゲームを試してみて、Aki Mahjong が他のものと比べてどんな高さに積み上がるか(ちょっと洒落てみた)調べてみた。ここでもまた、どんぐりの背比べだった。ある点ではこちらが良く、ある点ではこちらが良いという具合だ。ある無料のゲーム、Midnight Martian 製の Moonlight Mahjong Lite では、Aki Mahjong にない機能がたくさんあった。例えば、二本指のドラッグで俯瞰角度が変わったり、二本指でひねればボードが回転したりする。また、機器本体を回転させれば自動的にディスプレイも向きを変える。四つあるレイアウトのどれでも自由に選ぶことができる(Aki Mahjong と同じ $4.99 という価格の完全版ではもっと多くの種類のレイアウトがある)し、ゲームに負けても同じタイルの配置でもう一度トライできる。一方欠点を言えば、Moonlight Mahjong のグラフィックスは Aki Mahjong のものほど魅力的ではなく、ズームや角度の具合によっては縁のギザギザが目立ったりする。それでも、私は結局 Moonlight Mahjong の方を多くプレイするようになった。こちらの方が全体的にイライラさせられる度合いが少なかったからだ。だから結論は先ほどと同様、Ambrosia 製のこのゲームは全体の中でベストでもワーストでもなく、また私が一番にお勧めできるものとも言えない。

mondo Solitaire -- 最後に、mondo Solitaire の話をしよう。100 個以上の異なった一人遊び(ソリテア)トランプゲームがここには含まれている。昔からお馴染みの Klondike や Baker's Dozen などに加えて、私が一度も聞いたことのないようなものもどっさりある。そうしたゲームの多くはさまざまの設定を提供している。例えば、Klondike のプレイは試用するトランプのセットを2組から6組まで選べ、一度に何枚のカードをめくるかも変えられる。そのような多様なゲームがあなたのお望みなら、このアプリケーションにはそれがある。

ゲームの選択の際に機器本体を縦に持っていると、リストが表示される。もしも横長に持っていれば、Cover Flow 風にカードレイアウトのサムネイルの連続として表示される。けれども Aki Mahjong と同様、実際のゲームはすべて横長だ。このことは私を果てしなく悩ませた。ことに、私が以前持っていた携帯電話にはごく小さなスクリーンしかなかったにもかかわらず、縦長でのソリテアゲームをいくつか提供できていたのだから。この問題があるので、うまくプレイするためにはほとんど常時両手が必要になる。

Aki Mahjong と同じく、mondo Solitaire のグラフィックスも申し分ない。またこのアプリケーションは一振り(スワイプ)のジェスチャーで取り消し・やり直し、いかさま、プレイ可能なすべてのカードをプレイのコマンドをサポートしている。ゲームプレイ自体は単純だ。コンピュータ上のソリテアゲームをプレイしたことのある人なら、期待すべき機能を事実上すべてここに見つけることができるだろう。

しかしながら、それ以外で二点だけ、mondo Solitaire が私を悩ませた深刻な問題がある。まず第一に、一連のカードをまとめて別の場所に移動させる手順が変だ。まずカードを一つタップすると、そのカードからこちら側にあるカードすべてにクリップのアイコンが付く。それから、一番手前のカードをタップして、それを行く先までドラッグするのだ。セットの中で一番上になるべきカードを選ぶために厳密に正確な場所をタップしないと(つまりクリップが意図より多すぎる、あるいは少なすぎるカードを集めてしまうと)その位置を修正するためにスタック上で指をホールドして、そのまわりの領域を拡大表示させることができる。問題は、拡大されたこの領域が指の真下に来てしまうのでよく見えないのだ。それに、拡大表示にはクリップが見えない。だから、どのカードが選択されているのかが必ずしもいつも見やすい訳ではない。全体として、これほど基本的な操作をするためにこれはあまりにも複雑すぎる手順だ。

もう一つ、私が気に入らないのは mondo Solitaire のゲーム統計データだ。これは単純に勝ち数と負け数を表示するのではない。もしも、ゲームの最中のどこかの時点で、あなたが取り消し機能を使ったならば(たとえそれが単なるタップ間違いの修正のためだったとしても、実際、あなたが取り消しした直後にやり直しをした場合ですらも)そのまま続けてあなたがゲームに勝ったとしても、mondo Solitaire はその勝ちが「汚れた」ものだと呼ぶ。だから、あなたの Statistics スクリーンの中には、例えば「勝ち数: 4 (うち汚れた勝ちが 2)」のような行が表示される。おいおい何てこった、これは単なる一人遊びゲームじゃないか。単に暇つぶしのためだけのものだよ。それなのに、単にゲームの取り消し機能を使っただけでズルをしたと咎められるのか? 汚れた勝ちだって! 冗談じゃない!

先ほどと同じことだが、私は他にもいくつか無料のソリテアゲームをサンプルとして選んでダウンロードし、どんな競合相手があるのかと調べてみた。結果も先ほどと同じく、たまたま見つけた無料のプログラム、Smallware 製の Sol Free Solitaire の方が私の気に入った。Sol Free は縦長モードをサポートしている(実は縦長のみだが、これの方が私の好みだ)し、エレガントさは劣るにしてもそれなりに十分使えるグラフィックスを持ち、五つのゲームを選べる。(30 個のゲームを持つ有料版もある。)こちらのゲームプレイではより多くの回数のタップが必要になるが、全体としては mondo Solitaire を使うよりもこちらの方が私には使い勝手が良かった。

まだ問題は残る -- 紹介してきた三つのゲームはいずれも、それ自体としては完璧にプレイ可能で、最終的にあなたを何時間も仕事から遠ざけておける力があるだろう。だからこそ、私は皆さんに急いでこれらを買いに出るべきだとお勧めできたなら、と願わずにはいられない。けれども、たとえこれらがどれもそれほど高価でないにしても、無料のゲームでこれらより(私の意見では)もっと楽しいものがあると知っている以上、私はこれらを皆さんに強く推薦する気にはなれない。

もちろん、いずれのものについてもそれぞれの分野で競合するプログラムをほんの少数しか実際に試していないので、iPhone 用の Sudoku、麻雀、ソリテアそれぞれで何がベストなのかを私は言うことができない。それに無料であるのは素晴らしいことだが、これら三つの分野では有料のものたちもいずれもかなり安価なので、ほんの数ドルだけで世界最高の Sudoku ゲームが手に入るということもないとは限らない。難しいのは、それを発見することだ。

私としては、もっと多くのソフトウェア開発者たちが自分の iPhone ソフトウェアに無料の試用版も付けてくれるようになればと思う。でも、もしも Apple が何らかの形で完全版を期間限定で試用し後日ロックを外す方法を提供してくれるようになればもっと良いだろう。それが実現するまでは、ますます人気を博しつつあるが途方もなく値段が高くつく「ベストのゲームを探そう」ゲームを、私たちの多くがプレイし続けなければならないだろう。


TidBITS 監視リスト: 注目のソフトウェアアップデート、06-Oct-08

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>


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  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

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