TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#979/18-May-09

あなたは GPS を当てにしていますか? 今週の Adam の特別記事は、U.S. Government Accountability Office (米国政府説明責任局) による勧告が実施に移されない限り GPS システムの正確度がいずれ落ちることは避けられない、という話を検討する。さらに Adam はデスクトップで一回クリックしただけですべての Finder ウィンドウが前面に来ていた Mac OS 9 の挙動をどうすれば再現できるかについて説明し、MacSpeech Dictate に重要なアップデートが施されたというニュースも伝える。また、Mac OS X 10.5.7 での変更点について概観するとともに、Mac OS X 10.4 Tiger と Safari に施されたセキュリティアップデートにも簡単に触れる。それから Mark Anbinder が、iPhone 用の SlingPlayer アプリで Wi-Fi 上のストリーミングビデオしか使えないという事実にいら立ちを示す。Palm Centro や BlackBerry 用の SlingPlayer アプリにはそのような制限はないというのに。ソフトウェアアップデートの面では比較的静かな一週間だったが、Maperture Pro 1.2、Smart Scroll 3.0、Adobe Reader 9.1.1、Acrobat Pro および Standard 9.1.1、それに Things 1.1.2 を紹介する。来週は、休刊となる!

記事:

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5月25日の電子メール版は Memorial Day のため休刊

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Minori Goto <minorig@gmail.com>

今年は Memorial Day (戦没将兵追悼記念日) がいつもより早く来る。[訳注:Memorial Day は 5 月の最終月曜日となっており、その年により日付けが変わります。] この日は祝日でもあり、TidBITS のスタッフ一同には家族と約束した休日のプランも多くあるので、私たちは来週休暇を取らせていただくことにした。もちろんウェブ版の記事は引き続き出版するが、次回の電子メール版は2009 年 6 月 1 日の発行となる。


MacSpeech Dictate 1.5 が語彙エディタを追加

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

MacSpeech が MacSpeech Dictate 1.5 をリリースした。Mac 用音声認識および口述筆記ソフトウェアの、大きなアップデートだ。MacSpeech Dictate 1.5 における最も重要な変更点は新設された Vocabulary Editor で、これを使ってユーザーが単語を追加・削除・管理・訓練できる。また、ユーザーのプロファイルの中にある単語を MacSpeech Dictate がどのように扱うかをカスタマイズでき、大文字や空白の使用法、あるいは発音などの挙動に調整が施せる。

MacSpeech Dictate 1.5 では、音声認識の正確度も向上したとされる。同社の発表によれば、従来のバージョンよりも最大 20 パーセントの改善がみられるという。それは基盤となる認識エンジンの改良によるものでもあり、また地方訛りに対処するための新しいプロファイルオプションによる改善も期待できるかもしれないという。対象となる地方訛りには Inland North American、Southern North American と Latino North American がある。

今回のアップデートではまた、他のアプリケーションとの互換性や、インターフェイスの改良、大幅に改善されたマニュアルなども盛り込まれた。

既存の MacSpeech Dictate オーナーに対するアップデート価格は $54.95、新規購入価格は $199 となる。2009 年 4 月 1 日以降に MacSpeech Dictate の登録をした人には無料アップグレードの通知が電子メールで送られているはずだ。MacSpeech Dictate 1.5 は Mac OS X 10.5.6 かそれ以降と、Intel ベースの Mac を要する。


DealBITS 値引き: SuperSync が 30% 安くなる

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

先週の DealBITS 抽選で当選し、SuperSync の 5-pak 版($39 相当)を受け取ることになったのは、ncbiotech.org の Robert Peterson、me.com の Marty Gay、longlines.com の Tom Grell の3名だ。おめでとう! 残念ながら当選しなかった皆さんもがっかりすることはない。 SuperSync の特別提供ページから注文すれば、どのバージョンの SuperSync でも 2009 年 5 月 27 日までの間およそ 30 パーセント安くなる。今回の DealBITS 抽選に応募して下さった 750 名の皆さんに感謝したい。また今後の DealBITS 抽選もお楽しみに!


Apple、Mac OS X 10.5.7 と Safari のアップデートを公開

  文: Adam C. Engst <[email protected]>, Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Apple は先週 Mac OS X 10.5.7 を送り出し、幾つかのバグ修正とセキュリティ問題への対応を Leopard に施している。このリリースでは画期的なものは何もないが( Snow Leopard がもうすぐリリースされるという時に、そんなことを期待する人もいないだろうが)、Mac OS X 10.5.7 Update は、オペレーティングシステムの幾つかの分野に触れ、そして数多くのセキュリティ対応を提供している。

例えば、Mac OS X は今や幾つかの最新のカメラからの RAW 画像フォーマットをサポートしている (これらのうち幾つかは以前のカメラ RAW アップデートに含まれていた:しかし 10.5.7 アップデートではこれらをシステムレベルで取り込んでいると思われる)。このアップデートではまた、Gmail へのログイン、Yahoo とのコンタクトの同期、Mail でノートを同期および BCC アドレスを追加、サードパーティプリンタへの印刷、そして Dvorak キーボード配置の使用に関する問題に対処している。

その他の変更には、Spotlight 検索をサポートしないネットワークボリュームに対する Finder 検索結果の改善、iCal の CalDAV との信頼性そして MobileMe との自動同期の信頼性向上、そして Mac OS X Server 10.4 によってホストされたネットワークホームディレクトリに対する安定性向上が含まれる。Parental Controls 機能にも幾つか手直しがなされ、その中にはアプリケーション制限に関する一貫性の向上、フルスクリーンゲームと Fast User Switching に対する時間制限、そして非管理者ユーザーがプリンタを管理するのを許す新しいオプションが含まれている。

ハードウェア固有の変更も含まれている。Nvidia グラフィックスプロセッサを持つより新しい Mac では、ビデオのプレイバックとカーソルの動きが向上した (但し VMware は ATI ビデオカードを持つユーザーで VMware Fusion の 3D Acceleration 機能に依存している人はアップグレードしない様警告している)。加えて、Mac Pro 用の Expansion Slot Utility は今や正しい PCIe 構成を読み取る (いいえ、我々もこれがこの前にあったことも知らなかった - 更なる詳細については Apple の PCIe スロットのページを読まれたい)。ネットワーク性能もまた Flow Control が生かされた Ethernet スイッチに接続された時は向上している。

Mac OS X 10.5.7 ではまたセキュリティの向上も強調されており、"悪意を持って作られたウェブサイトを訪問すると..." という言い方で始まる問題 (従ってやらないように!) に対する数多くの修正がなされている。Apple の独自のコードと一緒に、Mac OS X の数多くのオープンソース要素がセキュリティ脆弱性に対応するためアップデートされている。

Mac OS X 10.5.7 Update は Software Update 経由で入手出来るが、ダウンロードサイズはあなたの Mac によって異なる。更に独立のダウンロードとして Mac OS X 10.5.6 からアップデートする人のためには、差分アップデートが出されている (442 MB)。Mac OS X 10.5 のどのバージョンからでもアップデート出来るコンボアップデートもある (729 MB)。

Leopard Server 10.5.7 -- Mac OS X Server 10.5.7 もまたリリースされ、10.5.7 のデスクトップ版に含まれた全ての修正のみならず多くの更なる改良が含まれている。我々の注目を引いたものに、AFP サーバーとクライアント、クライアント管理とディレクトリサービス、そして Mail サービスに関わる問題の解決がある。もしあなたがオープンソース要素とサードパーティライブラリに頼るプロダクションサーバーを走らせているのであれば、アップデートするのは後でインスタレーションを調べる時間が取れる時に計画することを強くお勧めする、と言うのも我々は以前のセキュリティアップデートでそれまで注意深く構築してきたサーバーを台無しにしてしまったのを見てきているからである。このアップデートを得るには Software Update を使うか、或いは個別のダウンロードを使えばよいが、この場合差分 (452 MB)コンボ (951 MB) の形がある。

Tiger のセキュリティアップデート -- Mac OS X 10.5.7 のセキュリティ修正を Tiger のユーザーにも適用するため、Apple は Update 2009-002 for Mac OS X 10.4 Tiger をリリースした。Software Update を使えばあなたの Tiger インスタレーションにあった物へと導いてくれるが、個別のダウンロードであれば Intel- (165 MB) そして PowerPC-based (75 MB) Mac 用がある。他に Mac OS X 10.4 Server 用もある: PowerPC (130 MB), Intel (165 MB), そして Universal (203 MB) である。

Safari のセキュリティアップデート -- この膨大なアップデートの締めくくりとして、Apple は Safari 3.2.3 - Leopard 版 (40 MB), Tiger 版 (26.3 MB), そして Windows 版 (19.7 MB) - と Safari 4 Public Beta Security Update をリリースした。双方とも、悪意を持って作られた Web サイトを訪れたり或いは悪意を持って作られた feed URL にアクセスしたりした時に、任意コード実行に導かれてしまう可能性を持つ三つの脆弱性に対処している。Apple の Support Downloads サイトには Safari 4 Public Beta Security Update 用のリンクは載っていないが、Software Update では出て来る。


iPhone、SlingPlayer で貧乏くじを引く

  文: Mark H. Anbinder <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

実現するまでに長い時間がかかったが、Sling Media から出た iPhone および iPod touch 用の SlingPlayer Mobile が、ようやく App Store で入手できるようになった。WWDC の会場で概念実証用バージョンを私たちが目にしたのはもう一年近くも前のことだった(2008-06-16 の記事“SlingPlayer Mobile が Slingbox オーナーを iPhone に導く”参照)が、ハンドヘルド機器用のこのプレースシフト・ソフトウェアを使えば、ユーザーがテレビから離れた場所にいながらにして自分の Slingbox 機器からのビデオを観ることができる。ところが、残念なことに、この $30 のアプリでは Wi-Fi ネットワーク経由でしかビデオが観られず、AT&T の 3G ネットワークのようなセルラー接続経由では観ることができない。

SlingPlayer_iPhone

Apple が実証してみせた通り、iPod touch と iPhone はビデオを観るためにも素晴らしくよく働く。これは、ハンドヘルド機でビデオを観ることに否定的な人たちには驚きだった。iMovie を使えば自作のビデオをハンドヘルド機に持ち込むのも簡単だし、こうしたプラットフォームでの最初のアプリの一つとして YouTube もあったし、それにもちろん iTunes を使えば、ビデオポッドキャストを、さらにはテレビ番組や映画さえも、レンタルあるいは購入で入手することができる。

既にたくさんのビデオを持ち合わせているけれども、例えばそれらが皆 Apple TV に保存されていたり、TiVo やその他の DVR に録画されているものばかりなので、家に帰らなければ観られないという人たちのために、SlingPlayer が自宅のテレビを遠隔地で観られる機会を提供している。(これは録画済みのビデオに限られている訳ではない。Slingbox と SlingPlayer があれば、テレビの前にいなくてもいろいろなライブのイベント、例えば最新のニュース番組や、地方局でしかやっていないようなスポーツ番組なども観ることができる。)

Sling からも Apple からも一言も説明がないが、iPhone へのビデオストリーミングが自社のネットワークを利用することを許さないと主張したのはどうやら AT&T らしく、同社が Apple との間で結んでいる独特の iPhone 提携関係を背景として主張したようだ。SlingPlayer Mobile が既に Palm OS、Windows Mobile、それに Symbian ハンドヘルド機器で、AT&T やその他の会社のセルラーネットワーク上で動作する状態で利用できていることを考えれば、同じソフトウェアがその同じセルラーネットワーク上で、別のハンドヘルド機では拒否されるという事実はどうにも我慢がならない。おそらく、AT&T が iPhone 上でこのような権力の行使に出た背景には、同社がこの種の問題について何らかの発言権を有しているのがこの iPhone プラットフォームのみだということがあるのだろう。

公式声明の中で、AT&T は SlingPlayer Mobile が「ワイヤレスネットワークの容量の大きな部分を使うおそれがある」ために「通信の混雑を引き起こすことにより他の顧客がネットワークを使う妨げになる可能性がある」と主張した。それに加えて「この種のアプリケーション、とりわけテレビ信号をパーソナルコンピュータへと出力先変更するものは、わが社の利用規約の中で明確に禁止されている」とも述べた。利用規約におけるこの禁止条項がごく最近になって追加されたものだという事実には触れようともしなかった。同社が「iPhone のようなスマートフォンはパーソナルコンピュータとみなせる」としているにもかかわらず、いったいなぜ BlackBerry や Palm Centro がその同じ分類に入らないのかの説明は一切なかった。

AT&T はまた、米国国内の iPhone オーナーたちが同社の 20,000 個所にも及ぶ Wi-Fi ホットスポットに無料でアクセスできるということをしきりに強調した。これらのホットスポットには多くの Starbucks、McDonalds や Barnes& Noble 店舗、あるいは多数のホテルや空港なども含まれている。けれども、右手のすることを左手が知らず、ということわざを実証するかのごとく、AT&T Customer Care のある担当者は、SlingPlayer の機能が制限されているという一人の顧客からの問い合わせに対し「この制限に関しては Apple にお問い合わせ下さい」と言ってのけた。

困ったことに、iPhone でビデオ・プレースシフト用アプリが Wi-Fi ネットワークに接続中にしか使えないというのは非常に窮屈な制限であって、「無制限」インターネットアクセスの使える「どこでもオンライン」のハンドヘルド機、という存在目的自体を揺るがすものになってしまう。列車やバスで通勤しながらしっかりした 3G セルラーのインターネットアクセスを利用している人たちが対象外となってしまうし、またコーヒーショップやホテルで時間単位あるいは日数計算の Wi-Fi 使用料金を払わないことにした人たちもこの機能が使えないことになる。Novatel から出ているバッテリ駆動の MiFi パーソナル・ホットスポット を利用して自前の Wi-Fi バブルを携帯している独創的なユーザーたちも、その機器に支払っている月額 $60 の Verizon Wireless サービス料金(同社のラップトップ向けセルラーブロードバンド料金と同額)がカバーできる毎月 5 ギガバイトという上限が、SlingPlayer Mobile のサポートできる 500 Kbps のストリーミング速度でテレビ番組を毎日ほんの一時間ずつ遠隔で観るだけで、ほとんど尽きてしまうことに気付かされるだろう。

iPhone 用の SlingPlayer Mobile と共に使えるのは公式には現行の Slingbox Pro、Slingbox Solo、それに Slingbox Pro HD の各機種のみに制限されると発表することにした Sling Media 社の決定に関しては、私はそれほど気にならない。非公式には、もっと古い機種でも動作する。同社の従来のスタンスが現行モデル以外でソフトウェアが動作しないようにするというものであったのに比べれば、これは一定の進歩と言える。Sling Media 社が旧機種でも将来のソフトウェアバージョンが常に動くことを確約しようとしないのは変わらないが、早くから Slingboxes 機器を導入した人たちがその機器を動き続ける限り将来も使い続けるのを恣意的に阻止することはしないという決断を下した訳だ。(同社はまた、旧機種のオーナーに対して新機種の価格を $50 値引きする Slingbox Upgrade Program, についても発表している。)

$30 という値札の付いた SlingPlayer Mobile for iPhone は、App Store の中でも最も高価なアプリの一つだ。これは BlackBerry、Palm OS、Windows Mobile、あるいは Symbian 用の SlingPlayer Mobile と同じ価格だが、一方 Mac OS X や Windows 用の SlingPlayer アプリケーションは無料だ。私はこのアプリケーションをこれまで見た限りではすっかり気に入っており、また私自身 Slingbox と iPhone を両方持っているので、両者はお似合いの組み合わせだと思う。その一方で、価格が高いことと、機能が制限されていることが重なれば、このソフトウェアを買おうと思った顧客も実際に手にすることには踏み切れないかもしれない。さらに悪いことには、Slingbox と iPhone の片方を持っていて両方は持っていないという人たちに、もう一方も買いたいと思う気持ちをくじく作用をしてしまうのではないだろうか。


Mac OS 9 のデスクトップ・クリック挙動を再現

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

大体の点においては、Apple が Mac OS X で過去のバージョンの Mac OS のやり方を変更する道を選んだ事柄について私はきちんと理解するに至っている。それでも、なかなか消せない習慣はいろいろあった。中でもいくつかのものはどうしても消えない亡霊となって残っている。最近そのうちの一つが私の意識の中によみがえってきて、やむにやまれず私は Twitter 界を頼みの綱として解決法を探すことにした。

それはどういう問題かというと、Mac OS X が異なったアプリケーションのウィンドウを互いに混ぜて配置するやり方について、私は理解もしているし大体においてありがたいと思っているものの、ただ一つのアプリケーションでだけはこのやり方が私の悩みの種となっている。それが Finder だ。具体的に言えば、デスクトップが見えている個所でクリックしただけで、私はすべての Finder ウィンドウが見えるようになって欲しいのだ。

確かに、Dock 上にある Finder アイコンをクリックすれば同じ結果が得られることは知っている。でも、私の場合、Finder の Dock アイコンは小さくて、私の右側の 24 インチモニタの右上の端近くにあるので、特にカーソルが左側の 24 インチモニタの下半分の中にある(私は Finder ウィンドウを主にそのあたりに置いている)ような場合にこれをターゲットとしてクリックするのはかなり難しい。けれどもデスクトップなら、結構あちこちに見えていることが多い。たとえデスクトップの大部分が他のウィンドウで覆われていたとしても、少なくとも正確さを心配しなくてよい程度の大きさの空いた場所は近くにあって、カーソルをそこへ動かしてクリックするくらいは簡単にできることが多いだろう。

もちろん、他のやり方もある。けれどもそういうものは違った相互作用の手段を用いている。私が欲しいのは、デスクトップのクリックなのだ。例えば、Command-Tab のアプリケーション・スイッチャーを用いて Finder に切り替えれば、すべての Finder ウィンドウが前面に来る。

また、古い Mac OS 9 のウィンドウ処理挙動をすべてのアプリケーションに実現してくれるユーティリティもたくさんある。ただ、私の希望は Finder だけについてなのだが。Paul Russo は無料の GoInFront を使うことを勧め、John Swift は無料のX-Assist を勧めた。それから、いつも大変お世話になっているわが TidBITS 日本語翻訳チームの Mark Nagata は、James Thomson の $29 の DragThing (これは素晴らしいユーティリティだが、私の作業のやり方にはうまくフィットしない) にあるオプションの一つを勧めてくれた。また、何人かの人たちは Proteron の LiteSwitch X にも触れていた。これは Mac OS X に Mac OS 9 風の挙動をもたらす目的でかなり以前から有名なユーティリティだが、残念ながら Proteron のウェブサイトはもはや繋がらなくなっているので、LiteSwitch X はもう瀕死の状態なのかもしれない。

私は当初この質問を Twitter に投稿したが、そういった方法の他に下記のような解決法を返事として受け取った。けれども、私が欲しかった挙動をそのまま実現してくれ、しかも私が既に持っているソフトウェア以外のものを必要としない解決法は、たった一つだけだった。

Keyboard Maestro -- そういうわけで、ここで一番の感謝を捧げたいのは、Stairways Software の Peter Lewis にだ。紹介してくれたのは彼の製品、$36 の Keyboard Maestro でごくシンプルなマクロを書くという方法だった。(私は現在このユーティリティを愛用していて、マクロ機能や複数クリップボード機能を使いこなしている。)この方法ならば、私の希望通りのデスクトップ・クリック挙動が得られるのだ。

Peter のマクロは、Finder がアクティブになることをトリガーとして呼び出される。(デスクトップをクリックすれば、Finder がアクティブになる。)そして、このマクロが実行するのは、すべてのアプリケーションウィンドウを前面に持ってくるというアクションのみだ。私の場合はこの挙動を Finder だけで動作させたいが、もしもあなたが他のアプリケーションについてもアプリケーション切り替えの際にすべてのウィンドウをまとめさせたいと思うならば、このマクロにもっと他のトリガーを追加すればよい。

Keyboard-Maestro-macro

他にも何人かの人たちが、わざわざこの特定の目的のために他の新たな方法を作り出してくれたので、ここにそれらを紹介しておかないわけにはいかない。

Klicko -- Rainier Brockerhoff は私の tweet に返事して、彼の作っている無料の Klickoユーティリティに私の望む挙動をさせるのも難しいことではないだろうと言ってくれた。もともと彼がこの Klicko ユーティリティを書いたのは“clickthrough”挙動(これもやはり Mac OS 9 から Mac OS X で変わった点の一つだ)をなくすためだった。私はその点はあまり気にならなかったのだが、Matt Neuburg はこの挙動を非常に嫌がっていた。(2008-12-01 の記事“Klicko でクリックを正す”で、Matt の Klicko に対する賛辞が読める。)驚いたことに、そのすぐ次の日に Rainier は Klicko 1.1 をリリースして、デスクトップをクリックする際に(ユーザー設定可能な)修飾キー組み合わせを押していれば Finder ウィンドウが前面に来るというオプションを追加してくれた。Rainier はいろいろなユーティリティを出しているが、Klicko はその中でも素敵なものの一つで、現在のバージョンは 1.1.1 だ。

FinderFront -- コードを使うことによってこの問題を解決しようとしたのは Rainier だけではなかった。Dejal Systems の David Sinclair (彼のモニタリングユーティリティ Simon を私は使っていて、大いに気に入っている。また、彼はつい最近 iPhone の世界にも首を突っ込んで、SmileDial を作っている。)もまた、新しく無料のアプリケーションを引っ提げて登場してくれた。彼の作品は、FinderFrontという。これも、デスクトップ上のクリックを捕捉してすべての Finder ウィンドウを表示させたら便利だろうと私が願った通りのことをしてくれる。ただ一つだけ注意点があって、これはデスクトップ上のクリックをすべて捕捉してしまうため、デスクトップ上のアイコンで作業したい場合に備えて使用後 60 秒間は使えなくなるようにしてある。


GPS 精度は 2010 年に落ち始めるかもしれない

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Minori Goto <minorig@gmail.com>

私たちは皆、iPhone、カーナビ、ハンドヘルド GPS ユニット、さらに Garmin Forerunner シリーズのような腕時計型機器などを介して、全地球測位システム(GPS) を使う事に慣れてしまった。GPS システムは 1993 年 12月に全面稼働を始め、1996 年にはビル クリントン大統領によって軍事と民生の二重利用システムとして宣言された。そして 2000 年には、民生利用の精度を向上するために、精度劣化操作(Selective Availability) が排除された。GPS は 24 機から 32 機の中高度軌道人工衛星に依存している。これらの人工衛星の中には 19 年近くも作動しているものもある。その他の国家衛星ナビゲーションシステムとは違って、GPS は全世界の人たちが利用でき、アメリカ空軍第50宇宙航空団によって管理維持されている。

今のところまでは、これは順調だ。しかし、TidBITS の読者 Mike Craymer が最近、GPS システムの精度に将来起こりうる問題についてのある報告書に僕の注意を喚起した。Mike Craymer は地球の大きさ、かたち、そして時間的変動を研究する測地学者だ。彼とカナダ天然資源省で働く彼の研究チームは 北アメリカで使用される座標系を定義し、維持する仕事を担っており、GPS が利用する全地球座標系にも寄与している。そのために、一年に 1mm 以内の誤差という正確さで地球の動きを測定しようと、超高性能 GPS 受信機と特殊データ処理技術を使用しているのだ。言うまでもなく、Mike は、GPSが高いレベルの精度を維持することに非常に関心がある。

ここで問題なのは、2009 年の 4 月に米国政府説明責任局(GAO) が、アメリカ空軍によるGPS の近代化および維持について懸念を表す報告書を発表したことだ。特に、二十年近い年月の間宇宙で作動しているハードウェアがあるので、人工衛星の絶え間ない交換とアップグレードは必要なのだ。

GAO の報告書は、GPS 人工衛星を一定の費用とスケジュール内で製造し打ち上げるために、空軍が請負業者と事業に取り組む上で持ってきた問題点に注意を喚ぶ。これらの問題の幾つかは、費用やスケジュールの超過の原因となる必要条件を増やし、十分な監視の余地を与えない政府の購買方法による。

GAO はさらに、業界での一連の企業合併(Boeing の Rockwell 買収、Boeing とMcDonnell Douglas の合併、Boeing による Hughes Electronics Corporation の宇宙通信事業の買収)が、幾度も GPS 事業の請け負いを移し、知識豊かな労働者を失う結果を生んだ原因の一端としている。

新しい人工衛星の打ち上げの遅れ(次回の打ち上げは、三年遅れの 2009 年の11 月に予定されている)は、古いハードウェアが機能異常を起こし始めれば、問題となる。GAO は(作動中の人工衛星それぞれの信頼度曲線を使い)2010 年には24 機の人工衛星を軌道中に維持できる確率は 95% に落ちると計算した。これは、2011 年と 2012 年には 80% まで落ちるかもしれない。さらに、空軍がもし次世代のGPS III 人工衛星の目標に達する事ができない場合には、この確率は 2017 年には10% あたりまで下がってしまう。(GPS III 人工衛星は、特に都市部での正確度を向上するための新たな軍用と民生用信号、そして既存の GPS 受信機に役立つ現在の民生用信号の出力向上などの新機能をもたらす。)

たとえこれらの人工衛星が 24 機以下になっても、GPS サービスが全く機能しなくなるわけではない。これは、軍事用と民生用のユーザが慣れてしまった精度レベル(実際には約束された以上に高いのだが)が著しく低下する事を意味する。

GAO は、GPS システムの運営上での問題に対処するために幾つかの勧告案を出した。その中で一番顕著なものは、開発を監督するために単一の機関を設定する事だ。どうやら、空軍が人工衛星と地上管制の責任を担っている一方で、アメリカ軍の他の部門がそれぞれ独自の使用機器を開発しているらしい。このことは、技術がアップデートされ向上される度に、調整面での問題となる。

もう一つの解決策は国際協力という形を取るだろう。GPS は世界中で利用可能なのだが、欧州連合は Galileo と呼ばれる全地球ナビゲーション人工衛星システムをすでに提案している。このシステムは現在準備進行中であり、2013 年に稼働開始が予定されている。Galileo は軍事紛争の際に、米国政府の好き勝手に操作されない、大部分が民生用のシステムとされている。しかし、2004 年に同意された妥協案で将来米国が Galileo の周波数を妨害したり、Galileo と米国軍の GPS システムを相互運用できるようにした。Galileo はさらに、GPS 以上の精度を提供することを目的とし、次世代GPS III 人工衛星と合わせれば精度をさらに向上することが可能かもしれない。

ロシアと中国も人工衛星ナビゲーションシステムを持っており、ロシアの GLONOSSシステムが GPS や Galileo と互換性を持つよう何度か話し合いが行われてきた。これらの話し合いから公式な発表は出ていないが、GLONOSS は 2007 年に民生開放された。GLONOSS には数奇な歴史がある。1995年に運用開始したものの、ロシアの経済問題のためにまもなく破損してしまった。このシステムの復興をロシアは2001年に誓約した。全世界のカバーレッジのために必要な、全24機の人工衛星をもって 2010 年までには稼働するとのことだ。

米国に住む一般人の観点から言えば、この件については見守りながら待つ以外には何もできることはない。機会があれば、私たちの投票によって選ばれた代議士が上記の状況を知っておくようにする。GPS をベースにしたサービスが、精度劣化操作が排除されて以来の数年間に、社会全体にとっていかに必須になったか考えれば、この先 10 年間でこれらの機能がさらに重要になっていくと想像できるだろう。

個人的にいって、私は GPS の精度が落ちるのを空軍が許すとは思えない。特に、兵士が暗闇の中で軍事目的物を見つけたり、ミサイルやその他の精密誘導兵器の正確な標的を設定するなど、ありとあらゆることに米国軍が GPS に依存している事を考えればなおさらだ。もし、(国防総省が同意している)GAOの勧告が GPS に直面する問題を解決しないのならば、空軍はさらに多額の費用をかけて、暫定的にこのシステムをパッチ修正しなければならないだろう。


TidBITS 監視リスト: 注目のソフトウェアアップデート、18-May-09

  文: Doug McLean <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Ubermind の Maperture Pro 1.2 は、同社から無料で出ている Aperture 用プラグイン Maperture を、ジオタグ機能を追加して拡張したものだ。Aperture は Apple のプロ向け写真管理アプリケーションだ。Maperture Pro は数多くの GPS 機器からトラッキングデータを読み込むことができ、標高の情報を追加したり、キーワードをカスタマイズしたり、ジオタグデータをコピー・ペーストしたりもできる。また、このプロ版では逆ジオタグ機能も使える。すなわち、撮影地情報を読み込んで他のメタデータを追加できる。(例えば都市名や州の名前をフィールドに加えたりできる。)(新規購入 $39.95、15.6 MB).

Marc Moini の Smart Scroll 3.0 は、書類をスクロールするユーティリティの最新版だ。今回の大きな変更点は Cocoa アプリケーションで使える Hover Scroll 機能で、ポインタをウィンドウの上の端や下の端に置くことでスクロールできる。また、Grab Scroll にトリガーのオプションが追加され、Super Scroll にはトラックパッドで指を持ち上げると惰性で進むオプションが加わった。さらに、アプリケーション個別の設定や、環境設定パネルのアップデート、いくつかのバグ修正が施され、Mac OS X 10.5.7、Safari 4、Camino 2、Firefox 3.5 beta にも対応した。(新規購入 $19、アップデート無料、2.4 MB).

Adobe の Adobe Reader 9.1.1Acrobat Pro and Standard 9.1.1 は、長年来の PDF ソフトウェアのセキュリティおよび安定性のためのアップデートだ。いずれのアップデートも、それぞれのアプリケーションをクラッシュさせることによりアタッカーがそのシステムを乗っ取ることが可能になるという重大な脆弱性に対処している。(アップデート無料、Reader/Acrobat: 2.2/4.5 MB)

Cultured Code の Things 1.1.2 は、Getting Things Done にヒントを得たタスクマネージャの、メンテナンス・アップデートだ。今回のバージョンでの新機能は、AppleScript サポートの拡張、タスク代理システムの改訂、キーボードショートカットの見直し、同期メカニズムの拡張、ソフトウェアアップデート機能の改善などだ。また、いくつかの問題点にも対処が施された。例えば、ほんの少ししか実際の to-do 項目が含まれないリストで非常に長いノートやタイトルを入力しようとした際に起こった表示のバグや、期限を過ぎた項目を別の日の Next リストに移すことができなかった問題が修正された。(新規購入 $49.95、アップデート無料、4.5 MB)


ExtraBITS、18-May-09 版

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Minori Goto <minorig@gmail.com>

Joe Wilcox 「なぜ、Apple は成功するか」について --「人と違う考え方をしろ(Think Different)」というのは単に、マーケティング用語ではない。Steve Jobs が 戻って以来の(また、彼が失脚する前に代表していた当初の)Apple の成功は他社のルールではプレーせず、その代わりに自分たちでルールを作り上げるという事実による。(リンク投稿 2009-05-17)

Snow Leopard Developer Preview が WWDC で登場 -- Apple は 6 月初めのWorldwide Developers Conference の出席者に Mac OS X Snow Leopard の Developer Previewリリース最終版を手渡すと発表した。これは、我々一般人には、Snow Leopardが今年後半に出荷されることを暗示する。過去のリリース日から言って、10月リリースという予想が有力だろうか。(リンク投稿 2009-05-14)


TidBITS Talk/18-May-09 のホットな話題

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

中小企業向けにシンプルな Mac で使える (PPTP) VPN 機器は? -- 自身の小規模なビジネスで VPN をどう設定すべきかと質問した TidBITS 読者がたくさんの助言を得る。(メッセージ数 12)

複数のキーチェインを使う -- Mac OS X がキーチェインを適切に利用できていないように見えることがある。リセットするには Terminal コマンドを使わなければならないかもしれない。(メッセージ数 5)

最近の Mac とディスプレイの向き? -- Nvidia グラフィックスを装備した Mac は、ディスプレイの回転(横長でなく縦長の表示)をサポートしているのか? (メッセージ数 1)

Mac OS 9 のデスクトップ・クリック挙動を再現 -- Finder 部分のどこでもクリックすればすべての Finder ウィンドウが前面に来るようにする方法を、読者たちが提案する。(メッセージ数 5)

GPS 精度は 2010 年に落ち始めるかもしれない -- iPhone 3G は、現在位置を特定するために、GPS と、セルラー基地局からの信号、それに Skyhook ワイヤレスデータの組み合わせを活用している。iPod touch や初代の iPhone のような GPS 非対応の機器では、どのようにして Skyhook に Wi-Fi ネットワークの位置を知らせているのだろうか? (メッセージ数 8)

Mac OS 10.5.7、Snow Leopard、どうすればまたお家に帰れる? -- 今回の Mac OS X 10.5.7 統合アップデートは、Mac に Mac OS X 10.5.0 をインストールしたものに適用すれば完全に最新の状態にアップデートしてくれるのか? (メッセージ数 3)

カーソルが突然機能を停止 -- 読者の報告によれば、カーソルが突然反応しなくなり、マシンの再起動が必要になるという事態が二台の eMac で起こったという。(メッセージ数 4)


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