TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#982/15-Jun-09

Apple の WWDC での発表による興奮が収まってきたので、またいつも通りいろいろな話題を飛び回ることにしよう。Rich Mogull が長年セキュリティのアナリストとして働いた経験をもとに、Mac と iPhone のセキュリティを改善するために Apple がすべき5つのことを提案する。ちょうど、Apple が 9 カ月前から存在していた Java の脆弱性を今日ようやく修正したので、まさにタイムリーな記事となった。Rich はさらに、iPhone 3G S へのアップグレードをもっと安くできるかもしれない方法を説明する。Doug McLean は、新機種の 13 インチおよび 15 インチの MacBook Pro が新設された SD カードスロットから起動できることを明かし、また芸術的 iPhone 写真の世界を検証する。Glenn Fleishman は Eye-Fi から出た最新の Wi-Fi SD カードを概観し、Adam は iPhoto から写真のリンクを Twitter にポストできるツールをレビューする。それから、Microsoft Office 2008 12.19 と 2004 11.5.5 のリリースを報告するとともに、Firefox 3.0.11、Script Debugger 4.5.3 と 1Password 2.9.19 のリリースも紹介する。

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Apple、9 カ月前以来の Java 脆弱性をパッチ

  文: Glenn Fleishman <glenn@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Mac OS X 10.4 と 10.5 に含まれるそれぞれのバージョンの Java に存在していた多数の深刻な脆弱性への修正が、今日 Apple から出された。これは、Sun Microsystems 社が Sun のサポートする他のプラットフォーム(Windows も含む)すべてに アップデートしたパッケージをリリースして からおよそ 6 カ月経った後ということになる。Apple は、Mac OS X 用に独自にアップデートされたバージョンの Java をリリースしているのだ。

記事“Mac OS X の Java 脆弱性から自分の身を守る”(2009-05-20) の中で Rich Mogull が議論した通り、この欠陥のために悪意あるウェブサイトで走る Java アプレットがあなたのコンピュータで任意のコードを実行できる可能性が生じる他、いくつかの脆弱性があった。この問題を回避するために、Rich は Safari や Firefox で Java を無効にする手順を説明した。Rich はまた、Apple がこんなに大きなセキュリティホールをこれほど長い期間パッチせずに放置していたことに対し苦言を呈した。

今回の Java アップデートはソフトウェア・アップデートから、または Apple のサポート・ダウンロードサイトから入手できる。アップデートは Leopard と Tiger それぞれの最新バージョン用、つまり Mac OS X 10.5.7 用 (158 MB)Mac OS X 10.4.11 用 (80 MB) が別々に出されている。再起動の必要はないが、これらのアップデートをインストールする前にすべてのブラウザを終了させておかなければならない。


Office 2008 12.1.9 および Office 2004 11.5.5 更新プログラム

  文: Doug McLean <doug_mclean@tidbits.com>
  訳: 細川秀治 <hosoka@ca2.so-net.ne.jp>

Microsoft は、 Office 2008 および Office 2004 の更新プログラムをリリースした。同様に Open XML File Format Converter の更新プログラムもリリースし、各プログラムでの重要なセキュリティ問題が修正されている。Microsoft によると、三つのすべての更新プログラムにおいて、特別に細工された悪意のある Word ファイルを開いたとき、リモートコードが実行される可能性のある、Word での二つの脆弱性に対処している。

これらの更新プログラムでは Word がファイルを開いて解析する方法を変えることで、この脆弱性をブロックしている。Office 2008 更新プログラムではまた、「Microsoft Entourage 2008 for Mac Web Services Edition をインストールする準備を整えます。この更新プログラムは、Entourage 2008 Web Services Edition をインストールする前にインストールする必要があります」とある。これは当該バージョンの Entourage では、Exchange 2007 Service Pack 1 かそれ以降の実行下で WebDAV に代えて Exchange Web Services に接続することにより、サービスに互換性の向上がもたらされる。Entourage 2008 Web Services Edition は、現在ベータ版で、最終版のリリースは今年後半に予定されている。

Microsoft Office 2008 for Mac 12.1.9 更新プログラムには、Mac OS X 10.4.9 かそれ以降が必要で 12.1.0 更新プログラムが既にインストールされている必要がある(この更新プログラムはコンボアップデータで、つまり 12.1.0 以降のすべての修正が含まれている)。Microsoft の Web サイトから 268 MB のダウンロード、またはどれかの Office 2008アプリケーションから Check for Updates を選択して Microsoft AutoUpdateユーティリティを起動しても入手できる。

Microsoft Office 2004 for Mac 11.5.5 更新プログラムには、Mac OS X 10.2.8 かそれ以降が必要で Microsoft Office 2004 for Mac 11.5.4 更新プログラムが既にインストールされている必要がある。Microsoft の Web サイトから 59 MB のダウンロード、また Office 2004 の Microsoft AutoUpdate を使っても入手できる。

Microsoft Open XML File Format Converter for Mac 1.0.3 では、Mac OS X 10.4.9 かそれ以降が必要で、かつ Office 2004 11.4.0 かそれ以降、または Office X 10.1.9 かそれ以降が実行されている必要がある。Microsoft では、Open XML Converter をインストールする前に、Office 2004 11.5.5 更新プログラムをインストールしておくことを推奨している。Microsoft の Web サイトから 45 MB のダウンロード、また Office 2004 の Microsoft AutoUpdate を使っても入手できる。


新 MacBook Pro を SD カードから起動する

  文: Doug McLean <doug_mclean@tidbits.com>
  訳: 細川秀治 <hosoka@ca2.so-net.ne.jp>

Apple は、15インチ MacBook Pro では、ExpressCard スロットに代えて、SD(セキュアデジタル) メモリーカードスロットが装備されると発表して、然るべくがっかりした ExpressCard 対応周辺機器(少なくとも SD カードリーダーは除外して)ユーザーはあまりいなかっただろう。(Apple は MacBook Pro のユーザーで、ExpressCard スロットを使用しているのは、わずか1桁パーセントだと言っている。)殆どの人々にとって、SD スロットの追加は歓迎されるもので、これはコンシューマー向けデジタルカメラの大半で保存用に SD カードが使用されているためだ。とは言っても、そのこと自体はたいしたことではないように思われるかもしれない。

しかし、最近の Apple KnowledgeBase の記事は、とても役に立ち、以前は言及されていない SD カードスロットの機能が書かれている:ユーザーは Mac OS X を、SD カードにインストールして、そこから Mac を起動できるのだ。

起動可能な SD カードを作るには、まずディスクユーティリティを使用してデフォルトのパーティションテーブルを GUID に変更し、(FAT32 ファイルフォーマットではなく)Mac OS 拡張ファイルフォーマットを使えるようにカードをフォーマットする必要がある。それから、Mac OS X を SD カードにインストールすると、これを Mac の起動に使えるようになり、トラブルシューティングなどの状況でとても便利だ。

MacBook Pro の SD カードスロットでは、SD 1.x および 2.x に準拠した SD カードを使用できる。標準 SD (4MB〜4GB) と SDHC (4GB〜32GB) カードが使えるほか、MMC も使用できる。スロットの寸法仕様に準拠したアダプタを使えば、MiniSD や MicroSD、それに MiniSDHC や MicroSDHC なども使用できる。MacBook Pro では、ほとんどの SD カードで標準の FAT32 ファイルフォーマットを使用したカードから読み込むことができるが(ただしシステムの起動は不可)、exFAT システムを使用したカードからは読み込むことができない。


Eye-Fi Pro カードが raw アップロードとコンピュータ転送を追加

  文: Glenn Fleishman <glenn@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Eye-Fi 社の Secure Digital (SD) Wi-Fi カードシリーズがアップデートされ、raw フォーマットの画像ファイルのサポートを追加した Eye-Fi Pro が出た。この新機種(4 GB カードで $150)では随時ネットワーキングも使えるようになり、Mac OS X やその他すべてのデスクトップオペレーティングシステムでサポートされるコンピュータからコンピュータへの Wi-Fi 転送を利用できるようになった。

Eye-Fi-Pro

最初の設定作業のために、まずこのカードを付属の USB カードリーダー経由で Mac または Windows のシステムに接続する。すると、環境設定を設定したり Wi-Fi ネットワークのパスワードを入力したりできる。Eye-Fi Pro を含むいくつかの機種では、米国内に 10,000 カ所ある AT&T Wayport ホットスポットのどれにでも接続できるよう自動的に設定されている。(一年間のサービスが含まれており、それが過ぎれば年額 $15 の料金がかかる。)

このカードはカメラと独立に働く。実際、カメラはこれが普通のカードと異なるものだとは気づきもしない。Eye-Fi の5つの機種(それぞれ機能が違い、価格は廉価版 Home の $50 から)はいずれも、そのカードのプロファイルにあるものと一致した Wi-Fi ネットワークを探知する度に自動的にファイルを転送する。

プロの写真家は(それに普通の写真家の多くも)raw 画像フォーマットを使うことを好む。なぜなら、raw 画像はカメラのセンサーの捉えたデータをできる限り保持しており、口当たりの良い何かに変換するという処理が加えられていないからだ。この raw フォーマットは厳密な意味での標準とは言えないが、メジャーな画像編集ソフトウェアならばこれを読み取って、カメラのメーカー各社の使うさまざまの(多くの場合独自の)フォーマットへと変換することができる。今回の新機種 Eye-Fi Pro を除き、他の Eye-Fi カードは raw 画像の転送ができないが、カード上に普通に保存することはできる。

もう一つの新機能である随時ネットワーキングを使えば、近くにベースステーションがなくても Eye-Fi Pro から Mac あるいは他のコンピュータへと画像を送ることができる。この随時ネットワーキングというのは 802.11 プロトコルにおける特別のモードで、中心的な調整用ハブがなくてもコンピュータやその他の機器どうしのコミュニケーションを可能にできるものだ。Mac OS X は、この随時ネットワーキング (AirPort メニュー > Create Network) と、ハードウェアベースステーションをシミュレートする Wi-Fi 上のインターネット共有 (Sharing 環境設定パネル > Internet Sharing) の双方を兼ね備えているという点でユニークな存在だ。随時ネットワーキングのサポートを加えることによって、Eye-Fi Pro では Wi-Fi ネットワークから遠く離れた場所で撮影している人が写真を Mac に送り込むのが便利にできるようになる。

Eye-Fi はまたすべてのカードを、古い機種も新しい機種も、Selective Transfer を含めるようアップグレードした。これは、画像あるいは(ビデオのアップロードをサポートするカードでは)ビデオの中からどれを転送するか選択できるようにする機能だ。従来は、すべての写真やビデオが自動的に転送された。この新しいオプションが加わったことによって、カメラの(機種にもよるが)保護あるいはロックのフラグで画像にタグ付けしてから、ロックされた(保護された)写真だけをアップロードすることができる。

これらの変更を施すことにより、どうやら Eye-Fi は TidBITS 出版者の Adam Engst が 2008-08-18 の記事“私が Eye-Fi Share ワイヤレス SD カードを嫌う理由”で述べた苦情のいくつかに対処を施したようだ。

私は同じ時期に Adam の意見とは対照的な記事を書いた(2008-08-18 の記事“私が Eye-Fi Explore ワイヤレス SD カードを好きな理由”)が、その中で私がただし書きとして触れた問題点のほとんどすべてを今回 Eye-Fi は改良してくれたようだ。

Adam のリストにはまだたくさんの問題点が残っている。その中にはカメラのメーカーが Eye-Fi と協力してこのカードのオプションをカメラのファームウェアに統合させなければ実現できないと思われるものも多い。カメラのメーカー各社は、ユーザーたちが Wi-Fi を使うやり方をあまりよく理解していないようにも見える。どんなに賢い Wi-Fi 機能付きカメラでさえ、この Eye-Fi カードのどの機種と比較しても、使ってみればフラストレーションそのものだから。


iPhoto2Twitter で写真の Tweet を手軽に

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

iPhone 用で私が見たことのある Twitter クライアントはすべて、手軽に写真を撮ってそれを Twitter に(例えば TwitPic のようなサービス経由で)ポストすることができる。それに対して、Mac 上の Twitter クライアントにも、写真をポストする機能を持っているものは多いが、ここではファイルを選択する手順が中心で、写真がすべて iPhoto にある場合にはあまり簡単な作業とは言えない。それに、普通のデジタルカメラで撮った写真を iPhoto に読み込んでから、ただ Twitter にポストするためだけに iPhone へ同期させるというのもちょっと馬鹿げた話だ。

(ヒント: iPhoto の中で、特定の写真のファイルを Finder で見たい場合は、その写真を Control-クリックして、出てきたコンテクストメニューから Show File を選ぶ。それから、例えばそのファイルのアイコンを Open ダイアログの中へドラッグして TwitPic にアップロードしたりすることができる。でも、何をするにせよ、そのファイルを移動したり改名したりしてはいけない!)

Blue Crowbar Software から、この問題に対するもう一つのシンプルな解決法がごく最近出た。iPhoto2Twitterは iPhoto 書き出し用プラグインで、選択されている写真を Twitter へ TwitPic 経由でポストしてくれる。

いったん iPhoto2Twitter をインストールしておけば、Twitter にポストしたいと思う写真を選択してから、File > Export (Command-Shift-E) を選び、iPhoto2Twitter ボタンをクリックして、メッセージを入力し、書き出しサイズを選んでから、Export ボタンをクリックするだけだ。iPhoto2Twitter はあなたの写真を TwitPic にポストし、あなたのメッセージは、その写真へのリンクを付けて、Twitter にポストする。

iPhoto2Twitter

もちろん、初めて iPhoto2Twitter を使う時には、まず Setup ボタンをクリックしてあなたの Twitter ログイン認証情報を入力しなければならない。その際、あなたのキーチェーンから Twitter ログイン認証情報を引き出すこともできるので、複数のアカウントで切り替えるのも手軽にできる。

実際のところ、これで全部だ。iPhoto2Twitter は、一つの芸しかできない。でも、もしもあなたがiPhoto とうまく統合されていないからという理由でこれまで Twitter に写真をポストするのを避けてきたなら、あるいは iPhoto にいる間は写真のことだけに集中したいと思うのなら、iPhoto2Twitter こそ理想のツールだろう。

iPhoto2Twitter は Mac OS X 10.5 Leopard を必要とし、iPhoto '08 とも iPhoto '09 とも働く。価格は 4.95 ユーロで、ダウンロードサイズは 566 KB だ。Blue Crowbar Software からこれとは別に Aperture2Twitter も出ている。こちらは同じ機能を Aperture 2 に提供し、価格は 5.95 ユーロだ。


Apple に5つの提案: Mac と iPhone のセキュリティ改善

  文: Rich Mogull <rich@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple がセキュリティに対処するやり方に関して、ここ数週間、私たちは肯定的・否定的双方の面で大きな進展を目撃してきた。否定的な面では、Apple が 9 カ月も前からあった Java 脆弱性になかなかパッチを提供せず、他のメジャーなプラットフォームでは 6 カ月前に修正されていたというのに、ようやく今日になって出したという問題がある。(2009-05-20 の記事“Mac OS X の Java 脆弱性から自分の身を守る”と 2009-06-15 の記事“Apple、9 カ月前以来の Java 脆弱性をパッチ”参照。)肯定的な面では、最近 Apple が Ivan Krstic を雇い入れるという決断をした。彼は、One Laptop Per Child (OLPC) プログラムの中で尊敬を集めたセキュリティ基本設計概念の背後にいるエンジニアだ。

これら二つの進展はほとんど互いに矛盾するようにさえ思える。ソフトウェアベンダーの直面する最も基本的なセキュリティ問題の一つを管理できずにいる一方で、ソフトウェアセキュリティのエンジニアリングにおけるトップ頭脳の一人を雇おうというのだから。明らかに、Apple はセキュリティを重要視している。けれども、その同じ会社が、実際にセキュリティの課題に直面すると、有効な対策をうまく実行できずにいるというわけだ。

オペレーティングシステムの次期バージョンリリースが Mac OS X にも iPhone にも迫ってきた今こそ、Apple がそのセキュリティプログラムをどのようにすれば改善できるのかを、あらためて評価しておくべき好機ではないだろうか。特定の脆弱性とか出来事とかいう視野の狭い問題に集中するのではなく、また単なる批判を浴びせるためにするのでなく、私としてはあくまでも謙虚な立場から、Apple が長い目で見てコンシューマ向けコンピューティングにおけるセキュリティのリーダーとなるにはどうすべきなのかを考えてみたい。

Chief Security Officer (CSO) を任命し権限を与える -- Apple は現在、外部的に会社のセキュリティに関する活動の顔となるべき人も持たず、内部的にもセキュリティ専門の重役はいない。でも、役職は二つも要らない。Apple ほどのメジャーなソフトウェアベンダーでの Chief Security Officer (最高セキュリティ責任者、CSO) ならば、外向きには伝道者となり同時に内向きにはセキュリティの管理者となれるだろう。だから、Apple は今すぐそのような人物を雇い入れるべきだ。

Apple の CSO は数多くの役割を担うことになるだろう。Apple としてのセキュリティに関する活動を外に向けて伝え、新たに発見された脆弱性やその他のセキュリティの問題に対してはその対処を指揮し、会社内部でのセキュアな開発作業を統括し、さらには製品開発にも参加して新製品の中にセキュリティが適切に考慮され組み込まれるように努める。

もしもその CSO が単なる名目上の地位に過ぎなければ、今述べたようなことは一つもうまく行かないだろう。これは十分な予算とスタッフ、それに権限を伴った経営管理の地位があってこそ初めて実現するものだ。理想的には、その CSO は Apple 経営陣の中枢にいて会社を推し進める一員であるべきだろう。そうあってこそ、この地位が社内政治の駆け引きの中で過小評価されてしまう事態も防げるのだ。

セキュアなソフトウェアを開発するためのプログラムを導入する -- ソフトウェアというものは、セキュアにデザインしプログラムするのが驚くほど難しいものだ。現代のソフトウェアではすべてを一から作り上げることは稀だ。さまざまなフレームワーク、コードライブラリ、あるいはサードパーティのコンポーネントなどに大きく依存することが多い。たとえそのソフトウェアが基礎からすべてデザインし直されるとしても、セキュリティに重きを置く開発者は少ないし、セキュア開発のトレーニングをしっかりと受けたことのある人もほとんどいない。その上、たとえ十分なトレーニングを受けた開発者がいたとしても、人為的ミスというのは起こり得るものなので、完璧にセキュアな製品が生まれることはあり得ない。

こうした難問に対処するため、特別のセキュリティ開発プログラムやプロセスを導入するソフトウェアベンダーが登場してきた。(よく「セキュアソフトウェア開発」あるいは「セキュアソフトウェア開発ライフサイクル」などと呼ばれる。)このようなテクニックは、セキュリティの脆弱性に繋がるバグの個数や重大性を減らすために非常に大きな効果がある。それゆえ、これは大きな組織や大手の製品ベンダーの間で少しずつ標準的な技法の地位を獲得しつつある。セキュリティ開発プログラムには、ソフトウェア品質の全般的な向上や、コストのかかるパッチやベンダーリリースの回数の削減が、その付加的利益として得られることが多い。

さまざまの情報源から判断するに、Apple は正式のセキュリティプログラムを持ち合わせていない。だからこそ、製品リリースに先立って予防できるかもしれない脆弱性を探知し損ねるという事態に陥っているのだろう。

この欠陥に対処するため、Apple はセキュアソフトウェア開発をすべての内部的な開発活動の中に組み込むべきだ。そこにはプログラマーのトレーニングから、開発における基準、デザインにおける要件、脅威のモデリング、コードの点検、セキュリティテストツールの使用、特化されたリリース前テスト、さらにはリリース後に発見されたバグに対する主因分析なども含まれる。

予防型のセキュリティ対応チームを設立する -- Apple は確かに専門のセキュリティエンジニアを持っており、小規模ながら製品セキュリティチームもある。けれども、外部から報告された脆弱性や、その他のセキュリティの問題を一貫した、きちんとしたやり方で管理できるような、公開されたセキュリティ対応チームは存在していない。いくつかのセキュリティ問題を公式にどのように処理してきたかを見て判断できる範囲では、どうやら現状での製品セキュリティチームは十分な人的資源を持ち合わせておらず、Apple のセキュリティ問題を一貫した、きちんとしたやり方で効果的に管理できるだけの影響力も持っていないように思える。

Apple のセキュリティ対応チームがもっと拡充されれば、脆弱性を報告してくる外部の研究者たちと、修正を開発する内部の開発者たちとのコミュニケーションを管理することもできるだろう。Apple はサードパーティのソフトウェアに非常に大きく依存しており、その多くはオープンソースなので、セキュリティ対応チームはそうした製品についてのセキュリティ対応も追跡・調整しなければならない。そのような体制が実現すれば、Apple は最近の Java や DNS の欠陥のようなセキュリティ問題にも積極的に対処して行くことができるだろう。そうなれば Apple ユーザーたちも、そのコンポーネントのプログラマーたちが修正を施した後もまだ問題点にさらされ続けるという事態に陥らずに済む。

私は長年研究者たちとベンダーたちの双方ともと協力して仕事をしてきたので、コミュニケーション能力のあるセキュリティ対応チームが存在すれば、バグを報告する研究者たちの側にも好意が生まれることが多いと体験的に知っている。そしてそれこそが、醜い暴露合戦を回避し、結果的に多くのユーザーをリスクにさらす危険を減らす役に立つのだ。

同梱されたサードパーティソフトウェアの脆弱性を管理する -- 何度も述べてきたように、Apple の最も重大なセキュリティ問題の一つは、Apple 製品に含まれているサードパーティソフトウェア(その多くはオープンソース)のさまざまのバージョンをパッチすることだ。Apple は、このようなコンポーネントが他のプラットフォームで修正をリリースした後も長い期間をおいた後にしかパッチを出さないという前歴を持っている。(主な例を挙げれば、Java、Samba、 Apache、DNS、さらには Apple 自身のオープンソース WebKit と mDNS もある。)

これでは、アタッカーたちに道筋が開かれているどころの騒ぎではない。まるで、妨げるもののないハイウェイが真っ直ぐあなたの Mac へと続いているようなものだ。例えば、世界で一番有名な無料の侵入テスト(ハッキング)ツール、 Metasploit ならば、Mac OS X を特定して標的とすることができ、新しいパッチがリリースされればほんの数時間か数日のうちに有効な攻撃が(どんなプラットフォーム用にも)Metasploit に組み込めるようになるのだ。

新たな脆弱性への攻撃に対する障壁はますます低くなっているので、Apple としても自社の顧客たちを危険にさらしたままにしておくことは絶対にできない。これを解決するには、サードパーティのコンポーネントに報告された脆弱性を追跡するための公式プログラムを作り、内部の開発チームと協力して、修正が入手できるようになる度にそれを統合できるようにすることだ。それら外部の開発者たちと積極的に交流して、Apple がタイムリーなやり方で修正をリリースできるよう保証する役割は、Apple の CSO と、セキュリティ対応チームが担うことになる。

攻撃に対処するテクノロジーの実装を完備させる -- Mac OS X 10.5 Leopard のリリース以来、Apple は「攻撃対処テクノロジー」として知られているものをいくつか収集し始めた。たとえ、私がこれまで述べてきた提案を Apple がすべて採用したとしても、それだけではまだ私たちのシステムのセキュリティ脆弱性がすべてなくなるわけではない。第一、仮に Apple ソフトウェアがすべて完璧にセキュアになったとしても、私たちはまだ自分の Mac や iPhone のために購入した Apple 以外のソフトウェアの中に脆弱性を抱えていることだろう。

攻撃対処テクノロジーは、脆弱性が不可避であることを前提とする。そして、アタッカーがそれを利用して私たちのシステムに害を加えるのを予防することを目指す。サンドボックス、ライブラリのランダム化、実行不可フラグ(これは Intel ベース Mac の内部にある特殊なハードウェアフックと結び付いている)やスタック保護などが、すべて部分的には Mac OS X に実装されている。けれども、それらの実装は不完全か、またはセキュリティの利点をほとんど相殺してしまう程度の欠陥があるか、というものばかりだ。

Microsoft が学びつつあるように、これらのコントロールをただオペレーティングシステムのレベルだけでなく個々のアプリケーションにおいても強化することが重要だ。そうすれば、例えば Flash や Java のようなウェブブラウザプラグインが単独で攻撃対処テクノロジーをすり抜けてしまうようなこともなくなる。Apple は Microsoft よりも、こうしたルールをアプリケーションに強制するという面ではより強い立場にある。それによって、Mac や iPhone のユーザーをより良く保護できるだろう。噂によれば、来たるべき Snow Leopard リリースの Mac OS X では何らかの意味でこの種の進展がみられるかもしれない。そうなれば一歩前進と言えるだろう。

今日 Apple 製品を使うのが比較的安全だということに議論の余地はないだろう。けれども、もしも Apple がセキュリティの方策や基盤構造をより良くして行く努力をしなかったならば、私たち顧客がいずれより大きなリスクを負うことになるという予兆はすでに見え始めている。私がこの記事を書いたのは、決して私が自分の Mac のセキュリティを毎日毎日気に病み続けているからではない。そうではなくて、予知できる範囲の将来において、今後も安全なコンピューティングを楽しみ続けたいからなのだ。この種の提案を採用することによって、きっと Apple は高いセキュリティを持つという(実際完璧にそうであるかどうかは別として)現時点での評判を今後も受け続け、コンシューマにとってのコンピューティングのセキュリティ分野で長期的なリーダーとなれることだろう。


AT&T に電話して、ベストな価格でアップグレード

  文: Rich Mogull <rich@tidbits.com>
  訳: Minori Goto <minorig@gmail.com>

新 iPhone 3G S の価格は iPhone 3G の発売時価格と同じだと Apple が発表した時、拍手が Worldwide Developers Conference の会場ホールのかなり外からでも聞こえた。昨年、最初の iPhone から iPhone 3G へ移ったユーザには契約期間半ばでも、アップグレードの為の罰金は課されなかった。だから、ピカピカの真新しい iPhone が早期導入者の手に入るよう、Apple が AT&T とある種の密約をしたと、多くの人が思っていた。しかし、発表後数時間のうちに、ほとんどの iPhone 3G 所有者が発売日には割引価格を受ける資格がない、あるいは多くの場合、この先少なくとも6ヶ月はこの資格を持たないのだと私たちは知った。

$199 (16 GB 機器)あるいは $299 (32 GB 機器)の価格を受ける資格のない、AT&T のiPhone 既存ユーザのほとんどが $399 か $499 の「早期アップグレード」価格で iPhone 3G Sを購入できる。iPhone 3G を購入してあまりに日が浅いため、このアップグレード価格の資格さえ持たないユーザは、$599 か $699 の小売り値全額を支払ってアップグレードできる。ところがこの状況はさらにややこしくなっていて、アップグレードの様々な価格層への資格は、単に iPhone をどれだけの期間使ってきたかによるだけではないのだ。その上、場合によってはAT&T の資格を決定するシステムが間違いをおかすこともある。

ワイヤレス販売奨励金と iPhone の価格 -- 米国とその他多くの国において、携帯端末の全額を支払うことは稀だ。現在至る所にある、これらのコンピュータ機器は驚くべき技術量をそのポケット大の筐体に詰め込んでいる。iPhone や BlackBerry のような強力なスマートフォンはまさにそれだ。携帯サービス提供会社はユーザが毎月支払う料金で収益のほとんどを上げているので、より高額なサービスプランに繋がる技術を私たちが導入するよう端末費用を割引く補助をしているのだ。時が経つと、これらの端末機器は新しい機種にくらべ、最先端技術を持つという魅力を失う。だから、携帯キャリア会社は契約が切れそうになると、更なる端末費補助で顧客をまた釣ろうとするわけだ。携帯キャリア会社が端末を実費以下で私たちに売る場合、その損した分を取り戻したいのは当然だ。(実費以下の値段で売られている機器は、携帯端末だけではない。Microsoft Xbox 360 や Sony PlayStation 3のようなほとんどのゲーム機プラットフォームが、当初は製造経費以下の価格で売られている。メーカーはゲームの売り上げの残余収益によって、穴埋めをしているのだ。

最初の iPhone は価格補助なしで販売されたので、2008 年 7 月に iPhone 3G がリリースされた時、AT&T はアップグレードを希望する(そして、新たに 2 年のサービス契約にロックインしたい)誰にも、奨励価格を提供することができた。最初の iPhone すべてが、小売価格全額で売られたため、AT&T には埋めなくてはならない損失はなかったのだ。

しかし、iPhone 3G は価格奨励を受けていたため,AT&T は端末にかかった費用を取り戻したいのだ。これを理由に、同社は既存の iPhone ユーザすべてには奨励価格全額を提供していない。ここでは、AT&T が Apple との独占契約を失う前に AT&T へのブランド忠誠心を築く絶好の機会を逃している、あるいはAT&T は iPhone 3G S がサポートする MMS、テザリング、より高速なネットワークの欠如の埋め合わせをするべきではないのかなどど議論できるかもしれない。けれどもその一方で、奨励割引された端末への資本投資を取り戻したいという AT&T は不公平だと議論することはできない。しかし、ユーザに端末アップグレードの資格があると決定するために、AT&T は契約加入からの期間以外のものも考慮している。iPhone 狂の大衆が、たった一日で iPhone 3G S へと乗り換える準備をする中、このことが混乱を起こしている。

二つの iPhone 家族の話 -- 多くの iPhone 狂達のように、iPhone 3G S が発表されるいなや、自分も一台予約しようと、私は Apple のオンライン iPhone ストアへ急いでログインした。私は自分が 32 GB 機種の $499 の早期アップグレード価格への資格しかないと知り、がっかりしてため息をつき、そして予約をした。アップグレード価格は私が加入してからの期間に直接関連していると思っていたが、契約満期日には直接関係していないらしいという報告を目にし始めた。二日後、私は気がついたのだ。我が家では、iPhone を二台使っており、妻が私の最初の、価格補助なしのiPhone を使っているので、たぶんそちらの iPhone の方をもっと早く私たちはアップグレードできるかもしれないと。

私は直接 AT&T に電話をしてステータスをチェックしようと決めた。このおかげで、何百ドルもの節約ができたのだ。iPhone のオンラインストアでは、単に一本の携帯電話線における現在のアップデート価格を表示しており、同じアカウントの他の電話のアップデート価格がいくらになりうるか、また、いつアップデートの価格奨励全額への資格を持てるかは表示していない。私は、妻の iPhone が直ちにアップグレードの資格を持ち、(2008 年 7 月の発売日に購入された)私のiPhone 3G は 2009 年 7 月 12 日 に資格を持つようになると知った。つまり、購入してから12 ヶ月の iPhone 3G が今から一ヶ月未満で資格を得られたこととなる。私は、発売日に iPhone を一台アップグレードでき、(その後、SIM カードを交換する、というのも私の妻は私ほどコンピュータマニアではないからだ。)そして、二台目の携帯をその数週間後にアップグレードできるというわけだ。私たちには、最近子供が生まれたばかりなので、iPhone 3G S の改善された写真とビデオ撮影機能が楽しみだ。子供の撮影をしたいというのでなければ、私の現在の iPhone 3Gはそのまま使い続けることにしたであろう。

TidBITS 寄稿者の Chris Pepper はこれとは全く違った状況に遭遇した。私のように、彼もまた iPhone を二台持つ家庭にいるのだ。彼自身は iPhone 3G を使っていて、彼の奥さんがお下がりの最初の iPhone を使っている。(私たちの妻がどうして時折、私たちのこのような勝手にがまんできるのか不思議に思う。)私たちは、ほぼ同じ時期に AT&Tに加入しているが、私は最初の 5 ヶ月間は BlackBerry を使っていた。私たちはそれぞれ違う AT&T のファミリープランに加入しているが、毎月の料金の差は $20 にもならない

Chris が電話した時、AT&T の顧客担当者は、彼の iPhone のいずれも契約満期までアップグレードの資格を持たないと報告した。彼の最初の、奨励価格なしの iPhone 機器にさえ、より高額な早期アップグレード料金が課されていた。ある時点で、Chris と私は同時に別々のAT&T の担当者と電話で話をしながら、iChat 上で情報を交換し合っていた。私たちの状況は非常によく似ているのにもかかわらず、私たちのアップグレード資格は大変違った。

更なる調査 -- Chris と情報を交換した後、私は他の人たちの経験はどんなものだろうかと、Twitter やメールを通して聞いてみることにした。結果は、それぞれあまりにも違うもので、(月額が同じプランの)大変似た状況のもとでのユーザが、全く違ったアップグレードの資格日を報告してきた。TidBITS 編集者で、同僚の Glenn Fleishman と私が情報交換を始めて見ると、契約日、一番最近のアップデート日、そして価格プランだけが、iPhone のアップグレード価格を決定する要素ではないことがわかった。

私は、AT&T 顧客担当者の Seth Bloom に連絡を取ってみた。彼は、混乱を解消するためすぐに答えてくれた。その結果わかった事はこうだ。iPhone あるいは如何なる他のハードウェアにおいても、端末のアップグレード資格は、アカウントの利用記録全体に関連していて、多くの要因を参考に決められる。Seth の言葉によれば、

「主な要因は、契約期間がどれだけ残っているかです。残りが半分以下なのならば、アップデートの資格を得られやすいのです。また、お客様が料金を速やかに支払うか、一番最近買われた奨励価格の端末の購入日はいつかなどを弊社では参考にしております。留意していただきたいのは、これらすべての要因が単に合計され、(既存の契約が満期になる前の)どれくらい早い時期に AT&T が iPhone のお客さまに奨励価格の機器をまた一台提供できるかが決定されております。」

[お客様には http://www.att.com/iPhone あるいは、弊社の販売店どこででも資格をチェックしていただけるようになっております。現在資格をお持ちでなくとも、資格が有効となる日をお知らせしております。また、お客様の端末より、*639# をダイヤルしてお客様のアップグレード資格の情報をテキストでお受け取り頂く事もできます。」

間違いがあった -- これはもっともだ。どの企業でもあるように、AT&T にも高益となる顧客と低益にしかならない顧客がある。高益客はその企業の顧客とあり続けるよう、更なる奨励価格を受ける傾向にある。私は、Chris より平均して年間 $240 以上支払っていたので、私の方が早くアップグレードできることは妥当だ。しかし、これはなぜ Chris の補助無し価格の iPhone でさえ、発売時にアップグレードできないのかという説明にはならない。AT&T はこの iPhone には一銭も払っていないのだから、取り戻さねばならぬ費用などまったくないのだ。

Chris が AT&T に三回目の電話をした時、顧客担当責任者と話をすることができた。彼はChris のアカウントになんらかの問題があると気付いた。AT&T 自身の規則から言っても、Chris の奥さんの古い iPhone にはアップグレードの全額割引が適応されるはずだ。責任者は Chris の アカウントの件を彼の上司の責任者に送ったので、Chris には二日以内に AT&T から連絡がくるはずとのことだ。

私たちの誰も AT&T の資格決定アルゴリズムにアクセスする事はできないので、AT&T に直接チェックしなければ、iPhone の割引資格があるのか予想する手はない。個人的には、私の契約が満期にならないと、この資格はもらえないと思っていた。だから携帯一本にはすぐ割引資格があり、もう一本にも一ヶ月弱で資格がもらえる事がわかり、電話をしてよかったと思っている。Chris は、自分のアカウントに問題があり、少なくとも古い iPhoneには発売時のアップグレード資格をもらえるらしいと知った。

電話をして最低価格を得よう -- もし、$199 か $299 の価格資格があるかどうか不明なときは、AT&T に電話するか、販売店に寄るか、あるいはオンラインのシステムでチェックして、あなたのアップグレード資格日を知る事を私たちはお勧めする。もし、アップグレード資格に何かおかしな点があるのなら、(特に、最初の iPhone機を持っている場合)顧客担当責任者と話せるよう希望し、あなたのアカウントにミスがないかどうか確認していただきたい。

そして、もしあなたが 6 月 19 日に Phoenix にいるのであれば、Biltmore Apple Store で、朝早くから並んでいる私を探していただきたい。


iPhone 写真の芸術

  文: Doug McLean <doug_mclean@tidbits.com>
  訳: 羽鳥公士郎 <http://www.ousaan.com/mail/>

誰でも知っていることだが、iPhone の 2 メガピクセルのカメラというのは、決して特別なものではない。登場したときもたいした印象を与えなかったし、最近のコンパクトカメラと比較すると、あるいは最新のカメラ付き携帯電話と比較しても、日に日に見劣りするようになっている。ユーザーが欲しいと思う一般的な機能は長いリストになっており、多くの人が、より高い解像度、ビデオ撮影機能、ズーム、オートフォーカスを渇望している。このカメラの便利なことは確かに評価されているが、最近のデジタルカメラで期待されているような、息をのむ写真といったものを撮影するには向いていない。(もちろん、iPhone 3G S のカメラは 3 メガピクセルになるので、改善されるだろう。実際にどうなるかは、もうすぐ分かる。)

しかし、iPhone カメラは便利なので、多くの携帯電話のカメラと同様、単にビジュアルテキストメッセージとでもいうべきものとして使われることも多い。その場合、写真のできがすばらしくなくとも、言いたいことを伝えることができる。たとえば、「このでっかいハンバーガーに、今からかぶりつきます」とか「見てよ、ハドソン川に飛行機がいる」などといったことを伝える画像を、電子メールや Twitter で送信すれば、効果的に使うことができる。さらに Evernote を使えば、非常に便利な視覚的メモとなる。

しかし、これから見てゆくように、iPhone カメラに技術的な制約があるからといって、それを使ってアーティストがすばらしい芸術作品を作れないということはない。ちょうど、彼らが以前から、古いカメラや普通でない写真機を使って、驚くべきイメージを生み出してきたように。

iPhone 写真のパイオニア -- 写真家が、ピンホールカメラHolga といった、原始的ないしローテクの写真機を使って、美しく印象深い写真を撮るということには、豊かな歴史がある。iPhone 写真のブームを先導している人たちは、多くの点に置いて、この伝統を受け継いでいる。ただし、皮肉なことに、彼らの「原始的」ツールは、実は高価で洗練された技術の結晶なのだが。その中でもここで紹介するのは、1人のプロの写真家と、自称アマチュア、そして熱心な趣味人が集まったオンライングループだ。

Chase Jarvis はワシントン州 Seattle を拠点とするプロの写真家だ。彼は、多くのメディアに関わり高い評価を受けている写真スタジオを経営するかたわら、iPhone を使って、iPhone で撮ったとはとても思えないイメージを作成している。

Jarvis

「最高のカメラとは、今ここにあるカメラだ。そういうわけで、私は iPhoneで毎日、1 枚から 1000 枚の写真を撮っている」と Jarvis は書いている。さらに続けて、編集には、普通に考えられるような Photoshop ではなく、iPhone 用のアプリしか使っていないという。彼の写真の、くっきりとしたエッジ、大胆な色使い、ダイナミックな構図を考えれば、この言葉は信じがたい。

Greg Schmigel は、メリーランド州に住む自称アマチュアだが、iPhone 写真の世界ではその名がよく知られている。彼はこの分野での活動について謙遜しているが、彼のウェブサイト Just What I See は大きな注目を集めている。そのサイトは、数百枚の iPhone 写真を誇っており、そのほとんどは公共の場所で人々に注目したものだが、日常のはかない美しさを凝視している。

schmigel_site

ほかにも iPhone 写真の才能ある人たちが、Flickr の iPhone Photography Group に集っている。この Flickr グループには世界中から 250 人以上のアクティブメンバーの 6000 点近い写真が集まっており、iPhone 写真がどういうものでありうるかということについての観念を広げるのには最適な場所だ。

7つ道具 -- ざっと見ただけでは、これらの写真のうちどれだけが iPhoneで制作されたのか分からなかったが、これらのサイトを読んでみると、その多くは iPhone の写真アプリで編集し効果を加えたものだということがはっきりした。もちろんこれはよい報せだ。あなたも、iPhone から1度も離れることなく、Mac 用の高価な写真編集アプリケーションを購入することもなく、これらと似た結果を得ることができるということだから。

なかでもよく使われており、Flickr グループで何度も言及され、効果がすぐに見て取れるアプリとしては、CameraBagToyCameraPhotonasisPhoto fxTiltShift がある。これらを使うと、さまざまなフィルタを適用して、写真の見た目を変えることができる。たとえば、CameraBag には、写真を「古く」するフィルタがいくつかあって、たとえば 1980 年代の Polaroid 風とか、1960 年代のメリハリの利いた白黒写真の感じなどを再現できる。同様に、ToyCamera では、その名の通り安物のトイカメラで撮ったような、暖かみのあるローファイの効果が模倣できる。

TiltShift は、 ティルトシフト写真の効果を再現するという1つの効果しか提供しないが、これには興味がひかれる。その効果というのは、まるで実物をミニチュア模型にして写真に撮ったようになるというものだ。

tiltshift

このような、さまざまなカメラの効果や美学をまねることができるアプリは、非常に人気がある。実際、少なくとも1つのアプリが、一連のプロプライエタリなカメラ効果をあまりにうまく再現するために、App Store の許可を得られなかった。それは、Paul Ladroid が開発した Poladroid 写真アプリで、「Polaroid 写真に似た」機能を含んでいたために却下された。似たような機能を持つ多くのアプリが許可されていることを考えれば、この1件は、しばしば不透明な Apple のレビュープロセスにその責を帰するべきだろう(2008-09-25 の "開発者たちが iPhone App Store に背を向けるかも" 参照)。

最後にもう1つ触れておく価値のあるアプリは、Stepcase の Darkroom(以前は Steadycam という名だった)だ。これが興味深いのは、iPhone の加速度計を使って、より鮮明な写真を撮れるようにしてくれるところだ。iPhone のシャッターボタンを押したとき、Darkroom は、加速度計の読みがある程度安定するまで待ってから写真を撮る。その結果として、特に光量が低い場合に、よりきれいな写真が撮れる。もう1つ、Night Camera というアプリもまったく同じことをしてくれる。

iPhone 写真の世界とそこで見られるアプリについてのより詳しい情報については、iPhoneography Blog を参照してほしい。

カメラでタイムトラベル -- 数百枚の iPhone 写真を見て気付かされたことの1つに、古い写真の形式、技術、機材を模倣することへの願望が明らかだということがある。すでに述べたように、CameraBag のようなアプリは、写真を別の時代からのイメージであるかのように変えるものだ。

この現象は次のように簡単に説明できるかもしれない。iPhone で撮影した低解像度の画像は、ローエンドの写真形式をまねるのに適していると。あるいは、その理由はもっと深いところにあるのかもしれない。ありふれた画像を、あっという間に、魔法のように変化させて、歴史の重みを加えることができる。ここにはタイムトラベルの驚きという要素があるのかもしれない。タイムマシンを作ることはできないかもしれないが、私が 1970 年に 25 才だったように見せることはできる。あるいはまた、これは私たち皆が持っているであろう子供時代への郷愁の一側面にすぎないのかもしれない。

理由はどうあれ、これらの効果が、最近登場したもっとも革新的で未来を向いた技術的機器のユーザーに、これほど広く利用されているということは興味深い。

私にとって特に興味深いのは、私が見かけた画像の多くが Polaroid インスタントフィルムの見た目を再現していることだ。その即席の簡便さは、iPhone写真の先祖としてふさわしい。しかし、Polaroid 社が昨年、インスタントフィルムの製造を打ち切ると発表したことを考えると、この関係は奇妙なものにも感じられる。デジタルカメラは確かに、物理的なインスタントフィルムの需要をなくしてしまった。それでも、人々は、新しい機器によって隠退させられてしまったものの美学を、いまだに求め続けているようだ。これは、新しいテクノロジが古いものを破壊しても、結局はその古いものに似てしまうという不思議なことの、1つの例だ。すると、面白い問題が頭に浮かぶ。10 年後のアーティストは、2 メガピクセルの iPhone カメラによる、現在のほとんどの人が逃れたいと思っているぼやけた画質を、再現しようとするだろうか。


TidBITS 監視リスト: 注目のソフトウェアアップデート、15-Jun-09

  文: Doug McLean <doug_mclean@tidbits.com>
  訳: 細川秀治 <hosoka@ca2.so-net.ne.jp>

Mozilla の Firefox 3.0.11 は、人気の高いウェブブラウザのセキュリティと安定性に関する更新プログラムだ。任意のコード実行に悪用されるいくつかの重要な セキュリティ上の脆弱性は修復されている。他のよりマイナーなセキュリティ上の脆弱性も対処されている。同様に、ブックマークデータベース破損を引き起こす問題も対処されている。最後に、 SQLite 内部データベースに関するいくつかの問題も修正されている。(無料アップデート、17.2 MB)

Late Night Software のScript Debugger 4.5.3 は、AppleScript オーサリング環境のメンテナンスアップデートだ。変更点には、オブジェクト指定子をペーストする際、ひとつのオブジェクト参照としてではなく、一連のネストされた tell ブロックとしてペーストされるようになったこと、改善された Balance コマンド、AppleScript ブロックの自動クロージング、Script Debugger がライブラリから来る重複シンボルを検出したとき継続する能力、などがある。また、InDesign 辞書を表示したときにハングするバグ、--で始まるコメントの中に対応のとれていない文字があるときの、ブロックの自動クローズ・バランスに関するバグ、tell ブロックの外側で“path”を参照すると間違った4文字コードを生成するバグなど、幾つかの問題が解決されている。(新規 199 ドル、アップデート無料、10.8 MB)

Agile Web Solutions の 1Password 2.9.19 は、パスワード同期ユーティリティとのマイナーな互換性アップデートだ。この最新バージョンにより Mac OS X 10.4 Tiger や 10.5 Leopard での Safari 4 に対する完全サポートがはかられている。(新規 39.95 ドル、アップデート無料、11.8 MB)


ExtraBITS、15-Jun-09 版

  文: TidBITS Staff <editors@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

iPhone 用のプリペイド GoPhone プラン、今後は提供されず -- TUAW に載った Erica Sadun の記事によると、AT&T のプリペイド GoPhone プランを使って 2 年契約をせずに済ませている人も、今後 3G データアクセスを使い続けようと思えば通常契約に切り替えざるを得ないという。面倒な手間が必要だったにもかかわらず GoPhone プランを手に入れてこれまで iPhone を使ってきたユーザーがどの程度の人数いるのかは不明だが、もしもあなたがそれに該当するのなら、2 年契約を強制される見返りが少しでもある道をということで iPhone 3G S にアップグレードするのも一つの手かもしれない。(リンク投稿 2009-06-15)

Adam、Cowtown MUG のビデオチャットで WWDC を総括する -- 3部から成る MacNotables ビデオポッドキャストで、Adam と番組ホストの Chuck Joiner がテキサス州 Fort Worth の Cowtown Macintosh User Group のメンバーたちと話し合う。話題は、今回の Worldwide Developers Conference で Apple の発表した内容についてだ。(ダウンロードの便宜のために3つの部分に分けられている。)(リンク投稿 2009-06-15)

Apple の WWDC App Wall -- どんなニュースでも全部自宅にいて手に入るというのに、いったいなぜ俺はわざわざ WWDC に行ったのか? それは、Apple の超クールな App Wall (アプリの壁) をこの目で見るためさ! TechCrunch が、アプリたちが脈打つこの壁の、写真とビデオを公開している。30 インチ Cinema Display を4×5のグリッド状に並べて壁を作り、そこにぎっしりと膨大な数の iPhone アプリのアイコンが並ぶ。どれかのアプリがストアで売れる度に、そのアイコンが壁の上で脈動する。(リンク投稿 2009-06-12)

Glenn と Adam、MacVoices 対談で AirPort ネットワーキングを語る -- Glenn Fleishman と Adam Engst が MacVoices ホストの Chuck Joiner と対談する。話題は Apple の AirPort ワイヤレスネットワーキングの最新の進展状況と、Wi-Fi セキュリティの世界での最新ニュースについてだ。(リンク投稿 2009-06-12)

Adam、Your Mac Life で WWDC のニュースを徹底分析 -- 今週の Your Mac Life では、Adam が番組ホストの Shawn King と対談し、Worldwide Developers Conference で出てきたことすべてを語り合う。それと、あの Twitter 騒ぎは本物だ。Shawn は実際、Adam に放送で悪態をつかせることに成功した。(リンク投稿 2009-06-11)

iPhone 3G S の仕様が明らかに -- Wired の記事によれば、(オランダの) T-Mobile が iPhone 3G S の技術仕様に関して秘密を明かしてしまったという。この新しい電話機のチップセットの詳細情報について Apple はこれまで秘密を守ってきたが、今や私たちも情報を知ることとなった。OS 用に 256 MB の RAM (これは初代の iPhone の2倍にあたる) と、600 MHz のプロセッサ (従来は 412 MHz) だ。(リンク投稿 2009-06-11)

Apple の WWDC キーノートビデオが入手可能に -- 今年の Worldwide Developers Conference における Apple のキーノートプレゼンテーションについて、きっと皆さんはすでにたくさんの記事を読んでいるだろう。でも、実際どんな感じだったのかを知りたいなら、またはたくさんの iPhone OS 3.0 アプリのデモを見てみたいなら、Apple がプレゼンテーションの QuickTime ビデオを公開しているのでどうぞご覧あれ。(リンク投稿 2009-06-09)


TidBITS Talk for 15-Jun-09 のホットな話題

  文: Jeff Carlson <jeffc@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Microsoft の Bing:“トリック”1つと変なところ1つ -- Microsoft の新しい検索エンジン Bing について、体験談や意見を読者たちが交換する。(メッセージ数 43)

iTunes 8.2 から iPhone へポッドキャストの同期が正しく働かない -- ポッドキャストの同期が奇妙な挙動をする原因は、iTunes 8.2 のスマートアルバムで説明できる。(メッセージ数 4)

新 iPhone 3GS、パワーと機能アップだけじゃない -- AT&T による iPhone 3G S への不明瞭なアップグレード方針を読者たちが解明しようと試みる。(メッセージ数 5)

Apple、9 月リリース予定の Snow Leopard をプレビュー -- Snow Leopard でサイズがスリムになったことや、嬉しい $29 というアップグレード価格に議論が集まる。(メッセージ数 4)

iPhone 3.0 -- アイコンの制限 -- iPhone 3.0 ソフトウェアでのありがたい改善点の一つが、より多くのアプリケーションスクリーンがサポートされることだ。(メッセージ数 5)

Safari 4 で“お気に入り” -- Safari 4 の Top Sites 機能は便利かもしれないが、お気に入りのサイトに行くためのシステムを既に持っている場合にはそうでもない。(メッセージ数 2)

6 月 8 日、Apple の“もう一つの”発表 -- Apple が適応型の HTTP ストリーミングを使うようになったことで、現在 QuickTime がコンテンツをストリーミングする方法とはどう違うのかという話題が出る。(メッセージ数 3)

MobileMe カレンダー同期の問題 -- MobileMe が混乱に陥ると、どうも大事になりがちなようだ。ある読者が、カレンダーを同期させようとしてうまく行かなかった体験を詳しく語る。もう一人の読者が、Apple の助けを受けてうまく解決できたことを報告する。(メッセージ数 2)

新型 MacBook Pro に残念な欠陥一つ -- 新型の MacBook Pro は、ケースを開けて RAM やハードディスクをアップグレードしようという際に、さまざまな長さの多数のネジを外さなければならないという、以前のデザインに戻ってしまった。(メッセージ数 3)

Internet Explorer を要求するウェブサイトに Mac をどう使うか -- ウェブサイトが Internet Explorer を必要とするとき、Mac でそこにアクセスする最良の方法は何か? (メッセージ数 7)


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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2009年 6月 22日 月曜日, S. HOSOKAWA