TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#988/27-Jul-09

今週は Apple 関係の記事が、見事にどっさりと集まった。中でもぜひお読み頂きたいのは、時としてでたらめなテキストが表示されるという、非常に微妙なフォントキャッシュのバグについて Matt Neuburg が探索した記事だ。Doug McLean は Adobe の Flash における深刻な脆弱性について報告し、また Apple による Logic Studio のアップデートを概観する。Glenn Fleishman は新しい Skype 2.8 for Mac をレビューする。このバージョンでは限定的なスクリーン共有機能と、数多くのホットスポットでの分単位での Wi-Fi アクセスが盛り込まれた。それから Jeff Carlson が、Apple の記録的な Q3 期業績について考察する。また、Joe Kissell の“Take Control of MobileMe”に新バージョンが出版された。今週の注目すべきソフトウェアリリースは、Final Cut Pro Studio Update、iPhoto2Twitter 1.5、それに Sandvox 1.6.3 だ。[訳者注: 今週号から各記事の末尾に、その記事へのコメントを読み・書きするためのリンクと、Twitter でその記事を取り上げるためのリンクが付きました。ただし、これらはいずれも英語のみです。ご了承下さい。]

記事:

----------------- 本号の TidBITS のスポンサーは: ------------------

---- 皆さんのスポンサーへのサポートが TidBITS への力となります ----


Adobe、重大な Flash 脆弱性を警告

  文: Doug McLean <doug_mclean@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Adobe が、重大なセキュリティの脆弱性について発表した。これは、最新バージョンの Flash Player (v.9.0.159.0 および v10.0.22.87) の Mac OS X 版、Windows 版、および Linux 版、それから Mac、Windows、および各種の Unix オペレーティングシステムにおける Adobe Reader および Acrobat v9.x に埋め込まれた authplay.dll コンポーネントの中にも存在している。

この脆弱性によりクラッシュが引き起こされ、アタッカーがそれを利用してそのシステムをコントロールできるようになる可能性がある。そして実際、この弱点を突いての攻撃が現在野に放たれているという報告がある。ただし現在知られている例は Windows 用の Adobe Reader 9 をターゲットにしたものだけだ。アタッカーはこの脆弱性を利用するため、ユーザーを導いて悪意ある SWF ファイルをホストしたウェブサイトを訪れさせたり、あるいは SWF ファイルの埋め込まれた PDF ファイルを作ったり、といった方法を採っている。

Adobe によれば、Flash Player の脆弱性に対する修正は 2009 年 7 月 30 日までに、また Adobe Reader と Acrobat に対する修正は 2009 年 7 月 31 日までに、それぞれリリースできる予定だという。それまで当面の間は、同社は Flash Player のユーザーたちに対して信用できないウェブサイトを訪れる際には注意するように呼びかけている。ただ、問題を確実に避けるための方法は Flash を無効にすることしかない。さまざまの場所で、いろいろのオペレーティングシステムで、Flash を無効にするための手順の説明は US-CERT のページ Vulnerability Note VU#259425 で読める。Firefox を使っている場合は、NoScriptプラグインを使えば特定のウェブサイトの Flash コンテンツのみホワイトリストに載せることができる。Safari を使っている場合は、Click to Flash の出番だ。

コメントリンク10430 about this article | Twitter リンク10430


Apple の Q3 決算、12 億 3 千万ドルの純益

  文: Jeff Carlson <jeffc@tidbits.com>
  訳: Minori Goto <minorig@gmail.com>

2009 年度第 3 四半期の決算に、Apple は感謝祭やクリスマスのある四半期以外では記録的な売上高と利益を報告し、83 億 4000 万ドルの売上高に対して 12 億 3000 万ドルの純利益、または一株利益 1.23 ドルを誇った。(これらの数字と比較できる前年同期の売上高は 76 億 4000 万ドル、純利益は 10 億 7000 万ドル。)従来の iPod モデルの売り上げは落ちたものの、決算結果はノートパソコン、iPhone そして iPod touch の好調な販売によって押し上げられた。(会計上の理由で、Apple の決算年度は 2009 年 9 月 27 日で終了する。)

Apple は 260 万台の Mac を販売したのだが、これは 2009 年度第 2 四半期の 220 万台からの上昇だ。同社は、販売業績をモデル別にして報告しないのだが、四半期業績発表の電話会見で、CFO (最高財務責任者)Peter Oppenheimer は、現在ではノートパソコンが Mac の全販売数の3 分の 2 を占めると述べた。MacBook の全製品群が 6 月に刷新され、Oppenheimer によるとこれが販売を促進させた。(詳細は "Apple、WWDC で MacBook 製品群を刷新、2009-06-08" を参照)

驚くまでもなく、iPhone は好調な業績を挙げた。Apple は今四半期、520 万台の iPhone を販売したが、この売り上げ台数を iPhone 3G と iPhone 3GS に分けて公表しなかった。しかしながら、Oppenheimer によると Apple の iPhone 3GS の製造はまだ需要に追いつかないとのことだ。最高執行責任者 Tim Cook もまた、Fortune 100 企業の内 20% が iPhone を 1 万台以上購入し、その一方でいくつかの大企業や政府機関はそれぞれ 2 万 5 千台以上購入したと言及した。

Apple は iPhone (および Apple TV) からの収入をこれらの機器の経済的耐用年数を通して計上するため、収入額は実際の売上高すべてを含むわけではない。非 GAAP ("Generally Accepted Accounting Principles"一般に公平妥当と認められた会計原則) による結果、つまり実際入ってきた金額では、97 億 4 千万ドルの売上高に対して、 19 億 4 千万ドルの利益となる。ここでまた留意する価値のあることは、Apple が 2009 年 3 月 17 日(iPhone OS 3.0 が発表された日)と 2009 年 6 月 17 日(このソフトウェアがリリースされた日)の間の期間の販売収益を認識しなかったということだ。

今四半期では、iPod touch が特に好評で、前年同期に比べ 134% 販売を増加した。しかし、この増加は他のiPod モデルの販売の落ち込みによってオフセットされ、結果的には iPod 全販売台数は1 千 20 万台にとどまり、前年同期に比べ 7% 減少した。Apple は iPod touch の売り上げが第 4 四半期に伸びると期待しており、これはこの機器がアップデートされると示唆するものである。(iPod は通常この時期にアップデートされてきた。)

コメントリンク10422 about this article | Twitter リンク10422


Take Control of MobileMe、iLife '09 と iPhone 用にアップデート

  文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
  訳: Minori Goto <minorig@gmail.com>

Apple の MobileMe は、年間 $99 払うだけの価値があるサービスを広い分野で提供している。しかしこれは、MobileMe が提供するすべてを利用するために十分な知識があれば、ということなのだ。Joe Kissell による "Take Control of MobileMe" の新バージョン 1.1 は MobileMe の利点を 124 ページにわたって紹介し、メール、写真と動画のオンライン共有、コンタクト管理、カレンダーのトラッキング、iDisk を介してのファイル共有などの主要機能について教えてくれる。Joe がこの新バージョンを書き始めた時、彼の第一目的は iLife '09 に関する新しいステップを織り込むことだったのだが、彼が執筆を仕上げようとしていたところで、Apple が iPhone OS 3.0 をリリースした。そのため、彼は iPhone OS 3.0 の詳細も統合することができた。特に、Fine My iPhone 機能について Joe は説明しており、Apple の iDisk アプリのリリースを前に、iDisk の携帯アクセスについてできるだけ書いている。

もしあなたが、あるいはあなたの知る誰かが、MobileMe をもっとうまく活用することで益を得られるのなら、この $10 の電子ブックを見ていただきたい。

バージョン 1.1 はバージョン 1.0 からは無料のアップデートとなる。バージョン 1.0 をお持ちであれば、あなたのメールの中にダウンロードリンクが添付されたアップデート通知があるか見ていただきたい。または、PDF の表紙(第 1 ページ) を開いて、Check for Updates ボタンをクリックし、無料ダウンロードにアクセスしていただきたい。

以前に出版された Joe の "Take Control of .Mac" を持っていれば、第二版からは無料でアップデートできる。(第 1 ページから、Check for Updates をクリックする。そして、Blog タブをクリックして、該当するダウンロードを探していただきたい。)"Take Control of .Mac" の初版をお持ちの場合は、Check for Updates ウェブページ上にあるアップデート割引提供を探していただきたい。(これは Downloads タブの中にある。)いずれの場合も、あなたのメールにアップデート情報を含んだメッセージも届いているのではないだろうか。

コメントリンク about this article | Twitter リンク


Skype 2.8、スクリーン共有と分単位の Wi-Fi を追加

  文: Glenn Fleishman <glenn@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

別のコンピュータのスクリーンを遠隔接続で見られるプログラムのリストに、Skype 2.8 が加わった。このインターネット電話とビデオチャット用プログラムの Mac OS X 互換最新版のリリースでは、メンバーのスクリーンを遠隔観察できる機能と、商業的ホットスポットでの Wi-Fi アクセスに興味深い分単位の料金体系が加わった。いずれの機能も、リリース版では Mac 用のみでしか利用できない。現在、Windows 4.1 ベータ版では スクリーン共有が提供されている。

スクリーン共有 -- Skype 2.8 のスクリーン共有では、あなたのスクリーンを相手と共有できる。相手はあなたのスクリーンを見ることができるが、それに干渉することはできない。(Star Trek ファンは Prime Directive を思い出して頂きたい!)何かを示して見せたり、質問に答えたりするだけならばこれで十分かもしれないが、技術サポートや共同作業に使うには不十分だろう。

スクリーン全体を共有することはしない。その代わりに、Skype のやり方ではスクリーンの一部だけをフローティングウィンドウの中で共有させ、アクティブなセッションの最中でもこのウィンドウをリサイズできるようにする。スクリーン共有を開始するにはまず相手を選び、それから Call > Share Screen メニューで Share Full Screen か Share Selection のどちらかを選ぶ。もしも既に誰かとセッション中ならば、歯車の絵のプルダウンメニューからもスクリーン共有の開始ができる。

tn10432_skype_screen_sharing.jpg
Image

私たちのテストでは、Skype のスクリーン共有機能はきちんと動作した。ベータ期間中でさえも問題なかった。iChat がスクリーン共有セッションを開始できない(どちら側の人が開始しようとしても、どちら側がコントロールを持っていても、いずれもうまく行かない)場合でさえも Skype のスクリーン共有機能は使えた。(iChat のスクリーン共有は常にスクリーンを眺めている側にコントロールを追加する。この点は LogMeIn Free for Mac も同じだ。Timbuktu Pro は observe と control の両モードを持ち、それぞれ別々のアクセス権が設定できる。)

ホットスポットへのアクセス -- Skype 2.8 はまた、あなたの Mac に Wi-Fi ホットスポットアクセスを世界中の有料ロケーションでもたらしてくれる。料金は分単位で、あなたの Skype アカウントに課金される。この機能は Skypeアクセス と呼ばれ、Skype によれば世界中の 100,000 カ所のホットスポットで、Boingo Wireless の提供するアクセスが使える。

このソフトウェアのサポートするホットスポットに行けば、メッセージが現われてアクセスを申し出てくる。私は Starbucks の店内でこのメッセージが出るのを見たことがある。Starbucks ネットワークは AT&T によるもので、この通信会社の運営するおよそ 20,000 カ所の米国内ロケーションの一部だ。

tn10432_skype_access.jpg

料金は 常識はずれに高い。米国通貨圏では毎分 19 セント、ユーロ圏では毎分 14 ユーロセントだ。(国により付加価値税が加算されることがある。)換算すれば一時間あたり $11.40 (税別) となるが、AT&T の米国内ネットワークがどこでも 一日あたり $4、ヨーロッパの最も高価なホテルでさえも一日あたり $30 程度なのと比べればその常識はずれの度合いがわかるだろう。一般的なホテルや空港でならば一晩で $8 から $15 が普通だ。 Boingo の直接購読者が払うのは北アメリカでの無制限アクセスで月額 $10、世界中で使えるものならば毎月 2,000 分までで月額 $59 だ。どちらのプランも一ヵ月を超える契約義務はない。

時たま使う程度ならば、例えばどこかのロケーションに行ってちょっと 5 分か 10 分使ってみるような場合には、Skype の料金設定が大多数の日毎計算の料金に比べてはるかに値打ちがあると言える。

Skype はまた、この最新リリースにおいて音声やビデオの品質が改善されたと述べている。ただ、私が使ってみた限りでは特に違いは感じられなかった。

コメントリンク10432 about this article | Twitter リンク10432


Apple、Logic Studio を改版

  文: Doug McLean <doug_mclean@tidbits.com>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Apple はそのプロ仕様の音と音楽の編集バンドル Logic Studio に対する大幅なアップデートをリリースした。この最新版には Logic Pro 9, MainStage 2, Soundtrack Pro 3, Compressor 3.5, そして WaveBurner 1.6 が含まれる。Apple は 200 を超える新しい機能があると誇っているが、その中で Logic Studio の刷新を注目に値するものとするのはほんの一握りしかない。

時間と労力を節約 -- Logic Pro 9 には、まとめて Flex Time と呼ばれる一式の機能が追加されていて、これは複雑なタイミングとテンポの編集を簡素化することであなたの手間と労力を減らそうと意図されたものである。これらツールの中で主体となるのは Flex Tool と Audio Quantize である。

Flex Tool は波形オーディオの一部分をあなたの好みの所何処へでもドラッグ&プッシュするのを可能にさせてくれ、通常だとこの様な作業をするのに必要となる面倒でイライラのつのるスプライス作業を無用なものとする。

Audio Quantize はオーディオ領域を、そのリズム品質を修正或いは改善するために、音楽グリッド或いは他のトラックに一致させるのを可能にしてくれる。例えば、あなたのギター奏者がその独奏部分を熱演したが途中でちょっとテンポを外してしまった部分が少しあった場合でも、これらビートを外した音だけを対象にしそれらを本来あるべき所に収める事ができる。

疑いなくこの種の補正ツールは昔からの音楽家に苦言を呈させることになるであろうが、まず間違いなく今日の苦闘を続けるアマチュア達を喜ばせるであろう。

ギターの神を念頭に -- このアップグレードの主な狙いの一つはギター音仮想化の拡張と改良である。このアップデートでは Amp Designer と呼ばれる機能が導入され、これによりギター奏者には 25 の異なるアンプモデルと 25 の異なるスピーカーキャビネットを自由に組合させてくれ、そしてその結果得られるセットアップを三つの異なる仮想マイクの一つと組み合わせて録音させてくれる。

加えて、ユーザーは Pedalboard 機能を通して 30 のストンプボックス効果ペダルを使え、そして好きなだけ多くを合わせて濃密かつ複雑なギター音を作ることができる。

最後に、Apogee GiO に対するサポートの登場で、ユーザーは Logic Pro 9 と MainStage 2 の両方で新しい USB オーディオインターフェースとコントロール機器経由で Pedalboard をハンズフリーでコントロール出来る (通常ギター奏者の手は一杯なのでこの機能は欠かせない)。

ライブをやる -- Logic Studio のライブパフォーマンスプログラムである MainStage には、拡張パフォーマンスオプションに二つの新しいプラグインが加えられた。Playback はその名の通りの働きをし、USB か MIDI コントローラでトリガーされた時、事前に録音されたトラックを演奏する。これは独奏パフォーマンスで、バックボーカルや音楽をその場でハンズフリーで合わせる事を目的としている。

もう一つのプラグインは Loopback で、これは音楽家がライブトラックを録音し、そしてそのトラックにループする次のパスを新しいレイヤーを追加するのを可能にする (Loopback は 1970年代に流行ったテープベースのループ機器である EchoPlex に似た動作をすると言う)。

プロダクションツール -- 上記の粋な新しい機能に加えて、刷新された Logic Studio には全般的なパフォーマンスとコントロールを改善するべく意図された一連の重要なプロダクションツールも導入されている。新しいプロダクション機能には次のものが含まれる、Selective Track Import、これはプロジェクト間で特定のトラックやセットアップを移動出来るようにする;Drum Replacer、これは満足いかないドラムトラックをトリガーしたサンプルと容易に入れ替えさせてくれる;ギターのタブと楽譜を作成するための新しいコード表記グリッド;そしてあなたの Take Folder 内での拡張された編集能力。

Logic Express -- 機能削減版の入門オーディオパッケージ Logic Express 9 には、Flex Time 機能と、Selective Track Import, Bounce-in-Place レンダリング、コード表記グリッドなどのプロダクションツールが加えられた。更に追加されたものに、Amp Designer, Pedalboard, そして Apogee GiO サポートがある。

事実のみ -- 新しい Logic Studio は $499 であり、そして Intel プロセッサを持つ Mac で Mac OS X 10.5.7 かそれ以降が走っている事を必要とする。以前の Logic Studio, Logic Gold 5, Logic Platinum 5 そしてその後継者の Gold, Platinum, そして Pro 版からのアップグレードは $199 である。Logic Express 所有者は Logic Studio 2 へ $299 でアップグレードできる。

Logic Express 9 は $199 するが、以前の Logic Express 版又は Big Box からのアップグレードは $99 である。こちらもまた Intel プロセッサを持つ Mac で Mac OS X 10.5.7 かそれ以降が走っている事を必要とし、出荷は 2009年 8月が予定されている。

コメントリンク0426 about this article | Twitter リンク0426


フォントキャッシュのバグに原因判明か?

  文: Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp> コメント数: 7

ある日、私は TextMate を使って簡単な Ruby スクリプトを走らせていたが、変なことが起こった。突然、そのスクリプトがデタラメを吐き出し始めたのだ。そのスクリプト自体には何も悪いところがなかったが、どうやら TextMate が正気を失ったかのように見えた。スクリプトの結果として出て来た実際の文字列、例えば“ogopogo”を表示する代わりに、その中の文字のいくつかを省略したもの、例えば“gpg”だけを表示するようになったのだ。コンピュータを再起動してから試してみると、その後は何も問題が起こらなくなった。でも、私の頭の中には、いったい何が起こったのだろうかという疑問が残った。

私は TextMate ユーザーのニュースグループに質問を投稿してみた。すると、ある人からこんな返答が届いた:「HTML 出力ウィンドウのレンダリングに使われる WebKit は、時々変な挙動をすることが知られています。もう一つの可能性として、あなたのフォントキャッシュが壊れたということも考えられます。いずれの場合も、再起動すれば直るはずです。」ああ、そうだった、フォントキャッシュのバグだ。私はこれをすっかり忘れていて、TextMate の出力と結び付けて考えてみることもなかった。でも、確かに、私はフォントキャッシュのバグについて知っていた。実際、何年も前に、私は Smasher のレビュー記事で(2005-09-26 の記事“Insider がスーツケースをこじ開ける”参照)このバグについて暗黙のうちに触れたことがある。

Mac OS X のフォントキャッシュのバグは、Mac OS X のフォントが時折不正な挙動を示す問題だ。多くの場合、ウェブページを内蔵の WebKit エンジンを使って表示するアプリケーション(Safari、OmniWeb、TextMate、BBEdit、CSSEdit などが代表的なもの)に影響を及ぼす。また、このバグは PDF の表示も損なうことがあると私は思う。ちょっと Google で探してみたところ、この問題を扱ったページがいくつか見つかった。ウェブページの表示が変になった画像を示しているページや、 文字がランダムに消えたり現われたりする様子を示した YouTube ビデオ(私が体験したものとよく似ている)もあった。Rob Griffiths も、 最近の Macworld 記事でこのバグに触れている。さらに、ずっと時を遡れば、John Gruber が 2005 年にこれについて広範囲にわたるシリーズ記事を書いている。

私のマシンでフォントキャッシュが壊れるバグが発生する件数は、近年その頻度が低くなっている。実際、私はそれが Leopard で起こるのを見たことがあるかどうか自信がない。(先日バグが起こった時は TextMate を Tiger で使っていた。)それでも、いったい何が実際にこのバグを引き起こしているのかという疑問は残る。

その答が、どうやら見つかったようなのだ。予期されることではあろうが、問題は二つのことが組み合わさって起こるらしい。一つは挙動の正しくないフォント、そしてもう一つが Apple によるフォントキャッシュのメカニズムだ。でも、挙動が正しくないとは、いったいどういう意味か? また、フォントキャッシュのメカニズムの、何が悪いのか? その詳しい内容が、Mac OS X の世界の意外な区域から、顕わとなってきた。TeX ユーザーたちだ。

TeX (「テク」あるいは「テフ」のように発音する) をご存じない方のために説明しておくと、これはかの尊敬すべき Donald Knuth によって作られたタイプセット用プログラムだ。科学技術、あるいは数学の書籍や論文を制作する際にはこれがよく用いられる。Mac OS X 用の TeX 実装にはいろいろのものがあり、私はそれに関係したウェブページを眺めていて、 TeXShopMacTeX について書いてあるものを読んでいる時に、フォントキャッシュのバグについて書いたページへのリンクに気付いたのだった。私はそのページを読み、とたんに私のあごはあんぐりと開いた。ある TeX パワーユーザーが、見事な賢さの上に断固たる決意に後押しされた探偵仕事の結果、pdftex と呼ばれる TeX ユーティリティがフォントキャッシュの壊れる問題の原因となっていることを、最近になって指摘したのだ。この pdftex は TeX 実装の核心に位置し、TeX の出力を直接 PDF へとパイプするために使われている。もしもあなたが pdftex によって作られた PDF を受け取ってそれを開いたら、あなたは自分のマシンでもフォントキャッシュのバグを引き起こすリスクを冒していることになる。

以下がその理由だ。(基本的に、ここで私は TeXShop の作者 Richard Koch による説明をそのまま引用している。)PDF ファイルには、そこで使われるフォントのコピーが埋め込まれて含まれている。これらのコピーは、そのフォントの文字を描くための数学的命令から成っている。(そもそも PDF とはそういうものだ。)それらの数学的命令は、多くの場合、複数の文字で共有される部分的形状を描くための PostScript サブルーチンとして表現される部分を持つ。例えばこんな具合だ:

dup 372 {
    11 5 div
    6 38 5 div
    41 5 div
    0 61 5 div
    rrcurveto
    closepath
    endchar
}

さて、こんなもの読んでも分からないとおっしゃるかもしれない(私たちのうちどのくらいの人が PostScript に堪能だろうか)が、実は、このサブルーチンにはバグがある。“endchar”行の後で、このサブルーチンには“return”命令がなければならないはずだが、それがない。このようなサブルーチンが、当時のバージョンの pdftex により誤って形成されてしまっていたのだ。

けれども、このように誤って形成されたサブルーチンも、結果として出来上がった PDF ファイルの中では明らかな兆候を何も示さなかった。なぜなら、pdftex がこれらを誤って形成していたのは、フォントの一部とはいえ、実際にその特定の PDF においては一度も使われないような文字についてのみだったからだ。その PDF に使われて _いる_ 文字については、pdftex はサブルーチンを正しく形成していた。こうして、問題点が直接探知されることは一度もなかった。

ところが、問題は次のようにして起こった。そのような PDF が Mac OS X で開かれると、Apple のフォントキャッシングメカニズムが動き出し、何はともあれそのサブルーチンも保存してしまった。(何しろそれがフォントキャッシュの役割なのだから!)そのフォントの文字が、_後になって_ 登場した際に、どのようにその文字を描くのかを知っていられるようにというわけだ。そして、もしもそのフォントのその文字に _実際に_ 遭遇した場合には、これらのサブルーチンが呼び出されることとなり、そのサブルーチンが壊れているので、そのフォントの描画手続きが間違ったものになってしまうのだ。

こうして、このバグは「悪い PDF」を開くことによって _誘発_ されたのだが、その「悪い PDF」自体には何の影響も及ぼしていなかった。影響が出るのは、後になってから、たまたま同じフォントの別の文字がどこか他のところに存在していて、その際システムがフォントキャッシュを呼び出して開いた(例えばプレビューや、WebKit に依存するアプリケーションを通じて開いた)場合に限り、破損が出現してしまう。そして、ここがすごいところだが... 私があの現象を TextMate で目撃した日、その同じ日のずっと早い時間に、私は確かに TeX で生成された PDF ファイルを読んでいたのだった!

では、エンドユーザーたるあなたにとって、この話の要点は何だろうか? まず最初に、時折存在する「悪い PDF」ファイルをあなたが入手する、あるいは既に持っている可能性はあるので、あなたがそれを開けば、あなたもフォントキャッシュのバグを誘発してしまうことはあり得る。その症状は、後になって文字が壊れてしまうことだが、コンピュータを再起動したり、あるいは他の何らかの方法でフォントキャッシュを再構築すれば症状は消える。Spotlight でファイル内容に“pdfTeX”を含むものを検索すればそのようなファイルを特定できるかもしれない。(検索結果をファイルの種類で並べて、PDF が“Adobe PDF Document”または“Portable Document Format”のいずれかに分類されていることに注意すればよい。)テキスト内容で pdftex に _言及_ した PDF を避けるためにもっと詳しい検索をしたければ“エンコーディングソフトウェアが pdftex を含む”で検索をすればよい。(検索基準で“エンコーディングソフトウェア”にアクセスするには、2007-11-01 の私の記事“Spotlight の逆襲: Leopard になって、素晴らしく働く”で説明したように“Other”ポップアップメニューを使う。)これらの「悪い PDF」を修正することはできないが、少なくともどの PDF ファイルがバグを引き起こす可能性があるかの目安は得られるだろう。

第二に、TeX で生成された PDF ファイル以外にもフォントキャッシュが壊れる原因は十分あり得る。だから、TeX ユーザーたちだけを非難するのはやめよう。何と言っても、pdftex に問題の根源があることを _見つけた_ のは彼らなのだから。

第三に、最近になって TeX で生成された PDF ファイルが問題の原因となる可能性は低い。なぜなら、TeX の人々も pdftex で問題を _修正した_ のだから。

第四に、Apple は Leopard でフォントキャッシュのメカニズムを変更した。けれども、どうやら問題はやはり起こっているようだ。(ただし、私の印象では起こる頻度は減っているようだが。)いずれにしても、そのルーチンを書き直して悪いフォントにもより頑健に対処できるようにするのは、結局のところ Apple 次第だ。今では、TeX のパワーユーザーたちのお陰で、このバグがどのように引き起こされるのかを Apple にきちんと示せるようになったので、ひょっとしたら Apple もこれを修正することができるかもしれない。

コメントリンク10433 about this article | Twitter リンク10433


TidBITS 監視リスト: 注目のソフトウェアアップデート、27-Jul-09

  文: Doug McLean <doug_mclean@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple の Final Cut Pro Studio Update はプロ級のビデオ・オーディオ編集用バンドルのメジャーなアップデートで、新バージョンの Final Cut Pro 7、Motion 4、Soundtrack Pro 3、Color 1.5、Compressor 3.5、DVD Studio Pro 4 (これはもう何年もアップデートされなかった!) を含んでいる。Final Cut Pro 7 には新しいバージョンの ProRes コーデックが3つ追加され、それぞれさらに高速で高品質の編集機能、プロジェクトを Blu-ray ディスクに焼く機能のサポート、それに共同作業における共有をより手軽にする iChat Theater のサポートを提供する。Motion 4 には3次元シャドウと反射、新しい被写界深度機能、テキストタイトルツールなどが追加された。Soundtrack Pro 3 にはプロジェクト全体で音声レベルを一貫したものに調整できる音声レベルマッチ機能が新設され、オーディオファイルエディタがドラッグ&ドロップ機能を加えて改良され、ノイズリダクション機能が強化され、新しいマルチトラック編集ツールも加わった。変更点のフルリストは Apple の Final Cut Studio ページで読める。Apple はまた価格を $300、アップグレード料金を $200、それぞれ値下げした。(新規購入 $999、アップグレード $299)

Blue Crowbar Software の iPhoto2Twitter 1.5 は、写真を Twitter で共有できるようにする iPhoto プラグインの最新バージョンだ。今回のアップデートではこのプラグインの共有機能が(従来は TwitPic でのみ動作し、写真しか共有できなかったが) Mobypicture を使えるように拡張された。これは、写真やムービーを一度アップロードしておけば、そこからさまざまのソーシャルメディアサイトに共有ができるというオンラインサービスだ。Mobypicture のサポートするサイトとしては Twitter、Facebook、YouTube、Flickr、Blogger、Vimeo、WordPress、LiveJournal、Tumblr、Jaiku、Hyves、それに Brightkite がある。(4.95 ユーロ、アップデート無料、230 KB)

Karelia Software の Sandvox 1.6.3 は、テンプレートベースのウェブサイト作成ツールのメンテナンス・アップデートだ。この最新版では Safari 4 と Safari 4 WebKit のフルサポートが提供され、Snow Leopard に対する予備的サポートも加わった。また、このアップデートでは Sandvox 書類の中へ直接書類をドラッグして新しいページを作ろうとする際に起こっていた問題が修正され、Movie Page RSS フィードのコンテンツが拡張され、メディアの処理が改善され、最新版の Karelia iMedia Browser フレームワークが組み込まれている。($57 Regular/$97 Pro、アップデート無料、26.4 MB)

コメントリンク10425 about this article | Twitter リンク10425


ExtraBITS、 27-Jul-09 版

  文: TidBITS Staff <editors@tidbits.com>
  訳: Minori Goto <minorig@gmail.com>

AirPort 10 周年 -- ちょうど 10 年前の Macworld Expo New York で、Apple は AirPort Wi-Fi ネットワーキングを公開した。そして、Phil Schiller が初代 iBook を抱え壇上から空気でふくらんだ大きなクッションの上に飛び降りて行く当時の様子を、このビデオで再度見ることができる。Steve Jobs が基調講演で述べたところによると、このシステムを開発するために Apple は 18 ヶ月以上の期間 Lucent と協力したそうだ。これで、なぜ Airport がその先何年にもわたり、どの 802.11b システムよりもよりよく機能してきたかわかる。(リンク投稿 2009-07-24)

Apple、高価格 PC 市場売上高の 91% を占める -- NDP Group の調査研究の報告によると、2009 年 6 月に Apple は価格 $1000 以上のコンピュター市場売上高の 91%を収益した。これは、2008 年第 1 四半期 での 66% を大幅に上回ったもので、 BetaNews はこの驚くべき調査報告を分析している。これは主として、Windows をベースとした PC の平均価格が $515 であるのに対して、Mac の平均価格は $1400 であるためであるが、すべての大手 PC メーカーもまた高価格 PC を製造しているのだ。明らかに、Apple にとってこれらのメーカーを圧倒するのは朝飯前なのだ。(リンク投稿 2009-07-24)

Amazon CEO、Kindle Book 削除の件で謝罪 -- Amazon.com の創立者および最高執行責任者である Jeff Bezos が Kindle から本を除去した件について短いが簡潔で的を射た謝罪を掲示した。Amazon はこれらの本の販売権を持っていなかったのだが、削除は「愚行で、思慮に欠け、弊社の道義にひどく外れているもの」とBezos は認めた。この件の詳細は、"二重プラスの ungood: Amazon が Orwell を un-出版、2009-07-19" で参照していただきたい。(リンク投稿 2009-07-23)

AT&T、将来の iPhone 独占権終了を認める -- AT&T の CEO はあるカンフェレンスで将来いつか、同社が米国で iPhone を提供する唯一のキャリアではなくなるだろうと認めた。彼はまたネットワークの問題を軽くあしらおうとし、自らが出張中には iPhone で「ウェブ閲覧、アプリ使用、その上に電子メール」という乱用をして問題点は見つけようとしていると主張した。もちろん、そこまでする加入者は誰一人いないのだから。(リンク投稿 2009-07-23)

David Pogue、携帯電話キャリアを非難する -- New York Times のコラムニストであるDavid Pogue はなぜ Verizon Wireless で使える iPhone がないのかと質問する手間をここですぐ省いてくれた。それから、米国でのセルラーキャリアによるいかがわしい商法五つを列挙しながら容赦なく非難した。これをあなたの選挙区の代議士に送っていただきたい。(リンク投稿 2009-07-23)

Clearwire、WiMax サービス用 Mac ドライバーをリリース -- Clearwire は Mac OS X ドライバーを同社のいわゆる第四世代 WiMax ワイヤレスネットワークサービス用に、2009 年 8 月 17 日に提供すると言っている。現在のところ、Clearwire のマルチ Mbps ネットワークはアトランタ、ボルチモア、ラスベガス、オレゴン州ポートランドのみで利用可能だ。(リンク投稿 2009-07-21)

Universal、ブルーレイディスクと iPhone アプリを統合 --Universal Studios Home Video が映画 "Fast & Furious" (日本公開題名、ワイルドスピード)を近日ブルーレイでリリースすることについて Macworld は報告している。このリリースは、ユーザが iPhone アプリを介して特典ディスクの機能をコントロールできるようにしており、ブルーレイと iPhone を初めて統合したものとなる。この機能はそれほど大したものではない。(車を 360度の視点から見えるようにコントロールしたり、技術仕様が見られるようにしている。)しかし、Universal は将来、ユーザによる再生コントロール、映画情報アクセス、さらには Twitter や Facebook で映画についてチャットすることさえも可能にする予定だ。(リンク投稿 2009-07-21)

Barnes & Noble、リーダーハードウェア無しで電子ブックを提供 -- Barnes & Noble は Mac OS X、Windows、iPhone、そして BlackBerry 用の eReader ソフトウェアで読むことができる 70 万冊(うち、50 万冊は Google Books より)を提供し、電子ブック市場を少しだけ開放した。ベストセラーには $9.99 の値がついている。同社の電子ブックは次期リリースされる Plastic Logic eReader 上で読むことが可能だが、 Sony Reader、Amazon Kindle 機種、あるいは Kindle ソフトウェアでは不可能だ。(リンク投稿 2009-07-21)

コメントリンク10435 about this article | Twitter リンク10435


TidBITS Talk/27-Jul-09 のホットな話題

  文: Jeff Carlson <jeffc@tidbits.com>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Safari 4.0.2 が Acrobat 9.1.2 にアップデートされない? -- Safari の中で PDF を表示させると問題が起こる。これは、Acrobat プラグインでなく Safari が PDF ファイルを処理しているからではないか? (メッセージ数 6)

iPhone 用の設定マネージャ -- iPhone 用に Location Manager があれば素敵だろうとは思うが、それに近いソフトウェアが使えるのは jailbreak された機種だけだ。(メッセージ数 2)

二重プラスの ungood: Amazon が Orwell を un-出版 -- Orwell の2つの小説を Kindle 機からこっそりと削除した Amazon の行為について読者たちが話し合い、これが Amazon の評判に傷をつけることになるのかどうか議論する。(メッセージ数 14)

セキュアでないネットワークと通信する -- セキュアでない Wi-Fi ネットワークを使っている人たちにどうやってそれと知らせてあげるか、という話から始まり、議論はさまざまのルータでのセキュリティ方策の強度を検査する話にまで広がる。(メッセージ数 23)

プレゼンテーション中のノート取り -- プレゼンテーションのタイムスタンプ付きでノートを取れるユーティリティは? 最も有力な候補は Pear Note だ。(メッセージ数 3)

Mac Pro とサイズの違う2つのモニタ -- サイズの異なった2つのディスプレイにミラーリングすることはできるか? 答はイエスだが、その結果は質問者の意図していたものとはかなり異なる。(メッセージ数 5)

スクリーンからビデオキャプチャするソフトウェア? -- ある読者が、良いスクリーンキャスト用プログラムを探している。(メッセージ数 4)


tb_badge_trans-jp2

TidBITS は、タイムリーなニュース、洞察溢れる解説、奥の深いレビューを Macintosh とインターネット共同体にお届けする無料の週刊ニュースレターです。ご友人には自由にご転送ください。できれば購読をお薦めください。
非営利、非商用の出版物、Web サイトは、フルクレジットを明記すれば記事を転載または記事へのリンクができます。それ以外の場合はお問い合わせ下さい。記事が正確であることの保証はありません。告示:書名、製品名および会社名は、それぞれ該当する権利者の登録商標または権利です。TidBITS ISSN 1090-7017

©Copyright 2009 TidBITS: 再使用は Creative Commons ライセンスによります。

Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2009年 8月 1日 土曜日, S. HOSOKAWA