TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1013/08-Feb-2010

今週も、iPad が私たちの頭の中の大きな部分を占め続けている。Glenn Fleishman は、iPad が Amazon の Kindle を駆逐してしまうものになるのかどうかという問題を詳しく検討するとともに、彼自身の 3G データ使用量を振り返りつつ iPad の 250 MB データプランが十分なものかどうか考える。また Jeff Carlson は Glenn が iPad の Keynote アプリでプレゼンテーションを作成し表示させている様子を撮影したビデオを寄稿する。そして Steve McCabe が再び登場し、彼の Mac のうちいくつかだけで発生していた訳の分からないカラー表示の問題を解決するまでの顛末を物語る。電子ブックの話題としては "Take Control of Screen Sharing in Snow Leopard" のリリースと "Take Control of Back to My Mac" のアップデートをお知らせする。今週注目すべきソフトウェアリリースは FontExplorer X Pro 2.5、Espresso 1.1.1、iPhone OS 3.1.3、iTunes 9.0.3、27-inch iMac Display Firmware Update 1.0 だ。

記事:

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iPad で Keynote 編集を実行中

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

iPad のお披露目となった Apple のメディアイベントで(2010 年 1 月 29 日の記事“iPad を手にしてみた印象”参照)Glenn Fleishman と私は、これで実際に Keynote プレゼンテーションを作ってみたらどんな感じなのかやってみたいと思った。Fraser Speirs のブログ記事 ("iPad Fallacy #1: 'It's not for content creation'") にも触発された私は、Glenn がオブジェクトを操作(リサイズ、再配置、回転など)したり、Keynote のプレゼンテーションモードで注釈コントロール機能を使ったり(レーザーポインタまである!)しているところを撮影した短いビデオを作った。(YouTube のビデオページに行けば高解像度バージョンが観られる。)

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遠隔サポート、共同作業、そしてアドミンを手助けする新しい電子本

  文: Tonya Engst <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

あなたはスクリーン共有を使っていますか?我々は使います、それもしょっちゅう。編集者として、私はスクリーン共有を私の著者達との共同作業のため使う、何故ならば同じドキュメントを実時間で議論するのは便利だし、これは議論している仲間が別の大陸にいてもやれるからである。更にこれは、私が著者の Mac をコントロールして私がやっていることを示させてくれるし Microsoft Word の奇妙な振舞いを説明するにも役立つ、素晴らしい教育とテックサポートのツールでもある。

しかし何と言ってもリモートコントロールの王者は Glenn Fleishman で、彼はスクリーン共有をこの様な使い方だけでなく他の色々なことに使っている、遠隔サーバー管理はその一つである。Glenn のこの話題に対する情熱はすごいもので、二冊のスクリーン共有関連の電子本 - "Take Control of Screen Sharing in Snow Leopard" と "Take Control of Back to My Mac" をアップデートする傍ら全ての最新のオプションもおさらいしている。これらの本は個別にはそれぞれ $10 で、二冊一緒では $15 で入手可である (この割引リンクに関しては、どちらの本でも良いがその Web ページの左端を見て欲しい):

何故別個の二冊の本?我々がこの話題について絡まった糸をほどいて行くにつれて、Back to My Mac は多くの固有の特性を持つことが明らかになってきた、そこにはファイル共有と遠隔ディスクアクセス (ある特定のハードウェア)、そして特別なセキュリティ方策と配慮等が含まれる。更に、Back to My Mac ユーザーの中には他の形のスクリーン共有には必要のないややこしいルーター構成情報について知っておく必要がある人がいる。それで、我々は "Screen Sharing" 本では Back to My Mac については本当に基本だけを扱い、更に深くは "Back to My Mac" 本で詳しく扱うことにしたのである。

もし Mac OS X スクリーン共有の全てを手中にしたいのであればこの二冊は一対として役立つが、一冊ずつ入手可である。もしどちらか一冊を買い、その後もう一冊も欲しいとなった場合でもその本のカバーにある Check for Updates ボタンを使えばもう一冊に対する大幅値引きへのアクセスが得られる。

(これらの電子本の古いバージョンをお持ちの方はメールをチェックする - 或いは電子本の 1 ページ目にある Check for Updates ボタンをクリックする - のをお忘れなく、そこにはアップグレードの情報がある。"Back to My Mac" は以前のバージョンをお持ちの方には無料;"Screen Sharing" はアップグレード割引がある。)

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あなたは毎月 250 MB のデータ量でやって行ける?

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Wi-Fi と 3G を装備した iPad 機種では、ユーザーが AT&T に 3G データサービスの料金を払うかどうかを一月単位で選ぶことができ、またサービスは二つのレベルから好きな方を選ぶことができる。無制限プランは月額 $29.99 で、これは iPhone のデータ料金と同じだ。毎月 250 MB(アップロードとダウンロードの合計)の制限が付くプランは月額たったの $14.99 だが、はたしてこれで十分だろうか?

当初、私はそんな少量のデータではお話にならないと思った。私は iPhone をひっきりなしに使っているし、そこを通して大量のデータを送らなければならない。iPad ならばさらに多くのデータを使うことになるだろう、そう私は思った。でも、同僚の Tom Negrino に Twitter で指摘されるまで、私は iPhone が 3G の利用を Wi-Fi 経由で送られるデータとは別個に追跡していることをすっかり忘れていた。

Tom はこう書いてきた:「iPhone の 3G データ使用量を調べてみた。カウンタをリセットした 9 月以後、外向き 35 MB、内向き 171 だ。iPad の 250 MB プランでも OK だ。」

これを見て、私も自分の使用量をチェックしてみた。あなたにもこれはできる。Settings アプリで General > Usage をタップし、それから下にスクロールして Cellular Network Data セクションに行き、そこにある2つの数字を足し算すればよい。私の知る限り、まだ一度も私はこの携帯電話の使用量統計をリセットしたことがない。見てみると、7 ヵ月間の私の総合計は 1.9 GB、一月あたりにすれば平均 270 MB で、ほんの少し限度を超えただけだった。自分の AT&T アカウントを調べてこの 1 月(この月はラップトップ機を持たずに iPhone だけ持って旅をしていた)の合計が、たった 150 MB だったことが分かった。平均的 iPhone 3G 使用量が一ヵ月に 500 MB と報告している調査もある。[私の場合、2009 年 7 月に iPhone 3GS を購入して以来の合計はたったの 589 MB、つまり一月あたりにすれば 250 MB よりはるかに下だ。-Adam]

Cellular-data-usage

AT&T も Apple も、一月あたり 250 MB の制限を超えた場合に何が起こるのかは説明していない。道理にかなったやり方としては、単純にその月に $29.99 を課金してその月の残りは無制限のデータが使えるようにするということが考えられるが、何と言ってもこれは携帯電話業界だ。ここでは道理にかなったやり方など通用しない。Apple が AT&T に対し、ネットワーキングの契約を続けるための条件として強硬に主張してくれでもすれば別だが。(iPad は米国の T-Mobile ネットワークでも働くかもしれないが、これは 3G の速度ではない。iPad は、T-Mobile が 3G ネットワーキングに使用している周波数帯を使わないからだ。)

ある読者が指摘してくれたところでは、AT&T のプランは _プリペイド_ 方式になると Steve Jobs が述べたという。これは、いわゆる別納 (postpaid) 方式と対極にある。別納プランでは、一ヵ月分のサービス料金をその前の月に支払っておくが、超過分の使用量も蓄積することができてその料金は翌月の請求書に加算される。これとは対照的に、プリペイド方式ではあなたがあらかじめ支払った分のサービスしか使うことができず、そのためあとから追加料金を請求されるおそれがない。(別納方式はクレジットチェックやクレジットカードに依存するが、プリペイド方式では普通さまざまの支払い方法が許され、提供されるサービスはあらかじめ支払った分までのみに限定される。)

もしも AT&T がそのプリペイドと称する方法で課金する一方で、超過料金の請求もするのならば、結果として料金が高額になることもあり得る。たいていの携帯電話キャリアは制限のあるプランにおいて MB あたり 5 セントきざみで超過料金を取る。つまり GB あたり $50 だ! キャリアによってはデータ量の上限が近づいた際にテキストメッセージや電子メールメッセージ、時には電話でそれを知らせてくれるところもある。上限に達した際にカットオフも、警告も、あるいは無制限プランへの移行もしてくれない場合には、iPad の出荷後最初の数ヵ月間のうちに知らずに非常な高額のデータ料金請求書が届いてしまった顧客たちの悲惨な物語が、きっとそこいらじゅうに現われることだろう。

AT&T は iPad 3G プランの双方のタイプともに 20,000 ヵ所以上のホットスポットでの無料 Wi-Fi アクセスを含めることになる。私は、iPhone を Starbucks やその他の無料 Wi-Fi ロケーションでしょっちゅう使っているし、私の自宅や仕事場の Wi-Fi ネットワークでも使っている。(ちなみに McDonald's の店内 Wi-Fi は現在誰でも無料で使え、AT&T の 20,000 ヵ所のロケーションのうち 12,000 近くを McDonald's が占めている。2009 年 12 月 23 日の記事“Find Free and Inexpensive Wi-Fi”参照。)

また、通勤者用の Wi-Fi も広く普及してきている。多くの場合無料で、あるいは低価格プランの一部として利用できる。例えば電車、フェリー、バス、それから、そうそう、サンフランシスコ Bay Area の BART システムでも使えた。大多数の空港も、ローミング協定を通じて既に AT&T のネットワークに含まれている。

もしも私が iPad を買うとしたら、きっと $129 余分に出して 3G 版を買うだろう。必要とする時に、どこへ行っても、アクセスがあるというのは利点だからだ。私が実際 iPhone の 3G プランで使用量を超過していなかったというのは有益な事実だった。$14.99 のプランを使いこなせるためには、いつもよりちょっとだけ注意してメーターを見る習慣をつけさえすればよいのだろう。

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Universal Access の色問題を解決する

  文: Steve McCabe <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

夏休みで出来た自由時間 - 疑いなく教師であることの最も素晴らしいことの一つ - を使って私の Web サイトをアップデートする機会が出来た。私は静的な HTML から WordPress への転換をしていた (そのこと自体は別の記事の題材である;作業自体は思っていた程難しくはなかった)。私はスタイルシートを突っつきまわしていた、そして私のやや年老いてきた iMac のモニタ上で見る色が気になっていた。(ええ確かに、これが Joe Kissell の記事 "Photoshop Elements の色ずれ問題を解決する" 19 December 2009 を読んだ直後に起こったのは多少因縁めいている - しかしながら、事情は全く異なっている。)

私のサイトに来て頂ければ分かるが、私のデザインでは両側に一対のサイドバーを置いており、そして私は、強いて言わせて貰えば、結構微妙な色合いのグレーを選んだ - #F0F0F0。しかし私の iMac のスクリーンでは、これらのサイドバーのグレーは見間違いようのない、明白な白なのである。そこで私は、私のこれ程には古くない MacBook Pro を引っ張り出してそして同じページを開いてみた;そのサイドバーはまさに私が望んだ通りの色合いのグレーであった。私の妻の iMac では - 彼女は実際のデザイナーでありより新しいマシン、光沢あるスクリーン付きの昨年の iMac、を持っている - 私の iMac が表示していたものと同じものが見えた。私の Mac mini の Cinema Display を見てみた。グレーである。私の iPhone も見た。グレーである。

私はこの時点で狐につままれた感じがした、そこで私は TidBITS Talk メーリングリストに助けを求めてみようと決心した、そこの人達は極めて物知りで、手を貸してくれるし、それに通常は万能で格好いい連中である。誰もが - 十人を超える人達が親切にも私のサイトを見てくれそして報告してくれた - 見えたのはグレーであると言うのである (かなり多くの人が "grey" を正しく綴れていなかったが、私は見なかったことにした)。一人の人はただ単に私の XHTML は間違っていると指摘してきたが、私はそれは Dreamweaver と WordPress のせいだとした。

では一体全体何が問題なのか?明らかに問題は私のサイトにあるわけではない (XHTML 問題にも拘わらず)。私が言えることは、これはハードウェアの問題の様なのだが、何よりも私を訳分からなくしているのはこの問題は二台の iMac には共通しているのだが、どうも、その他のどのマシンにも関係ない様に見える事実であった。居ても立ってもいられなくなって (そして、率直に言って、 Windows を立ち上げるのはやけくそにならないと出来ない)、私は両方のコンピュータで Parallels Desktop を起動した。ラップトップ上の Internet Explorer 6 は期待された色合いのグレーを表示したが、私の iMac 上では同じページのエレメントが白に表示された。私の混乱度は、この時点で完全に危険域に入っていた。私は Art Directors Toolkit を使ってみることにした (極めて有用なユーティリティである、どうもアポストロフィは信じないようではあるが)、そして両方の私のコンピュータとも表示しているのは #F0F0F0 であると思っていることが分かった。これでいよいよ問題はこれらの個々のコンピュータの問題であるらしいことがはっきりしてきた;では、何故二台の極めて異なったコンピュータが同じ問題を持つようになったのか?

私は私の制限の多いインターネット接続で出来る限り ("ビットに支払う: ニュージーランドでのインターネットアクセス" 15 January 2010 参照)、iMac に関するビデオ問題のニュースを探し回った。問題のコンピュータは ATI Radeon X1600 グラフィックスカードを持っている;私はこの X1600 に関わる問題の報告は何も発見出来なかった、いや実際はそのカード用のドライバアップデーターは見つけた - これは通常 Apple が Mac OS X 自身のアップデートに取り込む種類のものである。

私は私の Mac mini に戻り、Safari で私のサイトのスクリーンショットを撮り、そのファイルを私の iMac にコピーし、それを Photoshop で開いた、そして、再び白を見た。私は Photoshop でブランクのドキュメントを開きそれを #F0F0F0 で染めた;私が見たのは白だった。そこで写真を適当に選んで開いてみた、そしてそれらの写真が奇妙にポスタライズされた様に見えることに気付いた。更に Photoshop の色選択板上の色も左上隅の白から一番底の黒まで段階的に、それがあるべきように変化していないことにも気付いた;代わりに、明度がおよそ 90 以上のものは単純に白として現れていた。私は私のお気に入りの色のグレーを指示して見た;それは間違いなく白の領域にあった。

私は勝ち目のない戦いをしていると思い、私のサイトの中身をもう一度調べ直してみることにした。そしてちょっと驚かされてしまったのだが、私は次の様なこと発見した。リストアイテムのために青と白の背景を交互に使う Fetch の様なプログラムで作業をしている時、ウィンドウの大部分は真っ白な背景を持つが、たまたま前面のアプリケーションの後ろの背景にその様なウィンドウがある様な状態になったりすると、その前面のアプリケーションウィンドウが影を落とし - そして、その影の中に、背景のウィンドウの縞模様が見えるのである。そして、奇妙なことに、私の妻の iMac も、ひょっとして覚えておいでかと思うが、古さから言えば全く違うレベルなのだが、同じ振舞いを示しているのである。

私は再び TidBITS Talk リストに戻った。多くの人が私のディスプレイを再キャリブレートするよう勧めてきた;皆が私を助けようとして時間をとってくれた事に私は感謝するものではあるが、ここまで来ているとこれはあたかも ISP テックサポートに電話をしたら "あなたのモデムはつながっていますか?" と聞かれている様な感じであった。私はそれまでに既に 5、6 回も私の iMac のディスプレイを再キャリブレートしたが、しばらくして縞模様っぽい背景の上にあるあの小さな Apple のロゴを見つけようとするのは極めて鬱陶しいと感じる様になったこと以外には何ら役に立たなかった。

しかしその後、本当の賢者である Paul Durrant からの返事を受取ったのである: "Universal Access コントロールパネルをチェックして 'Enhance Contrast' の設定が Normal になっていることを確かめると良い。" System Preferences の Universal Access ペインに早速行ってみた - これは恐らく Mac OS X 10.2 Jaguar の時以来私にとっては初めてであると思う;私はその機能を必要としないで済むだけ幸運であったと言うことで、私の記憶の限り長いことそれを開いたことがない - そしたらその Enhance Contrast スライダーは実際に一目盛りだけ右にずれていたことが分かった。私はそれを左一杯まで戻した、そしてまるでベールが私の目から取り除かれた様に感じた。

私は Safari を立ち上げ、私のサイトの URL をタイプした、そして - あら不思議! - 出て来たのは完全であった。私はサイトの全てのページを開いてみた、中間色グレーを満喫するためだけに。次に Photoshop で適当に選んだ写真を何枚か開いてみた;私は私の最初の眼鏡をかけた時突然全てが正当に見え出した日の事を思い出してしまった。

でも、謎は残ったままであった。私は如何にして強調コントラストをオンに出来たのだろうか、もしこのコントロールは普段私が使う必要も無いオペレーティングシステムの一部に埋め込まれているのだとしたら?思うに、その答えはこの機能はキーストロークの組み合わせでオンにすることが出来るという事実に隠されているようである - Command-Control-Option-ピリオドだとコントラストを増す;同じ三つの修飾キーとコンマの組み合わせだとそれを戻す。(これらのキーを繰り返し押して見られたし:それは興味深い効果をもたらす。しかし、終わった時は Universal Access 設定ペインでリセットするのをお忘れなく。) いったん Paul の解が表に出てからというもの、複雑なキーストロークの組み合わせに関係するアプリケーションが Enhanced Contrast の様な機能に偶然に関わってしまうのではないかという仮説が提示された。しかし、私も私の妻もゲームファンではないので、これは当てはまらないと思う。

しかし私の妻は猫を飼っている。(我々二人は犬を一匹飼っている;でもこの猫は彼女のものである。) 猫は、他の猫もやる様に、私の机の上を闊歩していく。その結果色々な嫌なことが起きるが、例を挙げるとハードディスクが外される、各種キットがバラバラにされてしまう、そして私には今や確信がわいてきているが、不必要な動作が引き起こされたのは - 私にはあのちびの嫌なやつがやっている様子を目に浮かべることが出来る - 後ろ足で三つの隣り合わせのキーを押し、そして前足が伸びて四番目のキーを押したに違いないのである。

私のコンピュータは今や完全に言うことを聞き、あの猫は仕事場から消え、そして私は私を助けようとしてくれた皆さん全てにお礼を述べなければならない、とりわけ Paul Durrant は格別で、この問題を実際に指摘してくれた。さて、今度は XHTML を直さねば...

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iPad は Kindle キラーか?

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

メディア会社とは情報をざるのごとくに漏らすもの、だから iPad が発表されるよりずっと前から、Apple が書籍、新聞、雑誌の出版社を相手にどんな機器やどんなソフトウェアを各社が理想とするかを話し合っていたことが既に知れ渡っていた。こうした話し合いの成果の最初の現われが、iPad 発表会の会場で私たちが目にした、New York Times のデモしていたにわか作りのアプリであり、また Apple の組み込んだ iBooks アプリであった訳だ。

Apple は雑誌や新聞の購読方法について何も述べなかったが、New York Times のデモから垣間見えたところでは Apple が既存のアプリのやり方にアプリ内部からの購読や、一回払いの料金を組み合わせることで十分購読モデルとしてやって行けると考えていることは明らかだった。

けれども書籍については、まったく新しいアプリ、iBooks が存在している。このプログラムは書籍販売店と書棚とを組み合わせていて、この機器の中から書籍を購入してダウンロードできるようになっている。(2010 年 1 月 27 日のメディアイベントの時点ではまだ iBookstore が iPad 上で有効になっていなかったので、テストしてみることはできなかった。)

iPad が Amazon の Kindle 2Kindle DX を時代遅れとしてしまう可能性を秘めていることは否定できないが、Amazon の出す Kindle ブックの利用は何も Kindle 自体のみに限られている訳ではない。特別のソフトウェアを使えば Kindle 用の本はすべて iPhoneWindows システムでも読むことができる。(Mac OS X 用のソフトウェアは「近日登場予定」とされながらもう何ヵ月も経っている。BlackBerry 用ソフトウェア も、まだ登場していない。)

出版物の購読と書籍の販売の両面で、iPad は直接 Amazon と競合することになる。これは、Amazon が Kindle ハードウェアリーダーの販売から得ている利益と、コンテンツの販売から来る収入の両方を含んでいる。

iPad が iPhone 用の Kindle アプリを走らせることができるのは確実だから、Amazon は Apple に対して書籍の価格を切り札にしてくるかもしれない。シアトルを拠点とするこの書籍・メディア販売業者は、これまで低マージンあるいは負のマージンで電子ブックを販売する(つまり販売により現金で損をする)コスト補助によって全体の売上げを高く保つという手法を用いてきた。けれども Apple による収益分割方法(どうやら App Store と同じく 70/30 で出版社に多く割り当てられるらしい)が、Amazon の現行の 50/50 という大規模出版社向けの一般的な分割方法を上回る切り札となりそうな勢いだ。

私としては入手可能なカタログ、購入体験、価格といった観点から iBooks を評価することができないので、ここでは四つの要素だけに注意を集中することにしよう。読むことやインターフェイスの体感、スクリーンのテクノロジー、ネットワーキングとインターネットアクセス、そして出版社各社が Amazon が Kindle モデルで提供しているものと見比べてより多くのコントロールができより多くの収益を電子ブックの販売から手にすることができる望みを持てるかどうか、以上の四点だ。

ハードウェアを一対一で比較するために、ちょっとしたスプレッドシートを作ってみた。(これは Google spreadsheetとしても見ることができる。)

kindle_killer_comparison

(情報開示: 私は 1996 年から 1997 年にかけて六ヵ月間 Amazon で上級管理者として働いたことがある。私は株式授与を受ける前に退職したし、Amazon の株も Apple の株も所有していない。Jeff Bezos を除いて、当時私が同社で一緒に働いた人のうち今も同社の社員である人がいるかどうかさえ知らない。)[翻訳者注: Jeff Bezos は Amazon.com の創設者であり最高経営責任者]

読む -- これはもともと電子ブックリーダーの話なのだから、まず考えるべきなのは単純に実際の読書そのものだ。あなたが文章を読んでいるのが Kindle 機器であろうと、iPhone 用の Kindle アプリであろうと、iPad で読むのであろうと、文章を構成する文字とあなたとの間にほとんど摩擦はない。

_同期、保存、ライブラリへのアクセス_。Kindle リーダーも、iPhone ソフトウェアも、それぞれあなたがダウンロードしたメディアのリストを保持している。購入済みだが現に保存していないメディアは、追加料金なしにダウンロードできる。また USB 経由の同期にも料金はかからない。どんな Kindle ソフトウェアやハードウェアでも、あなたの Amazon アカウントに登録してさえあれば、あなたが購入した本あるいはメディア購読をダウンロードして読める。(ただし曖昧模糊とした制限条項がある。)

iBooks はライブラリの管理に iTunes を使うのかもしれない。iTunes は音楽やポッドキャスト、ムービーを管理し、フォトギャラリーのコンジットとしても働いているからだ。現在のところ、Apple は iTunes が書籍の管理もするのかどうか、はっきりとは述べていない。それでも、Apple は必ずや何らかのソフトウェアを提供して複数の iPhone OS 機器があなたのコントロールの下であなたの購入あるいはロードした書籍を同期できるようにするだろう。Amazon とは違い、Apple はあなたのメディアライブラリを管理しバックアップするのはあなた自身の責任だと考えているからだ。あなたが失ってしまった楽曲やビデオを再ダウンロードすることはできない。もちろん、iPhone OS 機器がコンピュータに接続する度にバックアップをすることを考えれば、データが失われる可能性は低くなるだろう。

読みたい本を iPad に保存されているものの中から選び出すためのインターフェイスは、おそらく Kindle が直面している問題をいきなり実証するものとなるだろう。最初の画像で、本の表紙が Kindle DX でどう見えるかを見て頂きたい。それを、iPad での画像と比較してみよう。iPad では本棚のメタファーを利用して、フルカラーの表紙の並んだブラウズ可能な棚が示される。

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ipad_ibooks_bookshelf

(ここで、Delicious Monster の Delicious Library ソフトウェアが用いる本棚のルック&フィールを、Apple が大幅に借用していることに触れない訳にはいかない。本棚を使う方法をこのアプリケーションが発明したという訳ではないのだが、iBooks アプリがビジュアルなインスピレーションをどこから得たのかは一目瞭然に思える。)

Delicious-Library

Amazon と Apple は、別の機器や別のソフトウェアで本が読まれるのを防止するために、互いに異なったデジタル著作権管理のシステムを用いている。ただ、どちらのプラットフォームも、暗号化されないファイルが多数のメジャーな電子ブックフォーマットで読める。Amazon では、そうしたファイルは USB 経由で転送したものか、または追加料金を払って個々の Kindle 専用の特別な電子メールアドレス経由で入手したものに限られる。

Apple は購入していない電子ブックをどうやって iBooks に加えるのかをまだ説明していない。Apple は iPhone OS で PDF の表示をサポートしているが、それは電子メールの添付ファイルか、または GoodReader、AirShare、Dropbox といった保存済みのファイルを開くためのプログラムの内部からに限られている。もしも iBooks が PDF ファイルを管理してそれらを読むことができるのならば、とても素敵なことだと思う。

_読むためのインターフェイス_。Kindle の主たる機能は読むことで、Amazon はそれをシンプルな手順でできるようにした。レビュー記事の著者たちは(かく言う私も含むが)初代の Kindle のデザインをこぞってこき下ろした。特に前ページ/次ページのボタンが位置も大きさも良くないことが大きかった。Kindle 2 になってデザインははっきり向上し、Kindle DX でもその点は引き継がれた。

読みたい本を選べば、Kindle 2 ではそれが縦長表示でディスプレイに開き、画面が大きくなった Kindle DX では縦長にも横長(シングルコラム幅)にも自動的に回転する。Amazon はあなたがその本を読むのに前回どんな機器あるいはソフトウェアを使っていようと、最後に読んでいた場所の追跡ができる。たとえあなたが Kindle リーダーから iPhone アプリに移り、その後 Windows の Kindle に移ったとしても、あなたがその前にどこまで読んだかが分からなくなる心配はない。

Kindle ハードウェア上では、ページを移ろうと思えばハードウェアボタンを押して前後にページを移動することになる。別のメニューを使えば目次を見ることもできる。この E Ink ハードウェアでは、ページをめくる度に再描画で画面がちらついてイライラさせられる。小さな変化、例えばメニューが出る程度ならば、スクリーンの一部が再描画されるだけでちらつきもそれほど目立たず、一時的に Kindle が速くなったかのようにさえ感じられる。

太くて短いジョイスティックをちょっとぎこちない風に使うことで単語の選択ができ、それを辞書で調べることもできる。また、本全体の中で語句を検索することもできる。

選択したテキストに注釈をつけることもでき、その注釈は保存されてあなたの持つどんな機器にも同期される。ただし、注釈を Kindle から他のフォーマットに抽出することはできない。タイプする文字は6種類のサイズの中から選べる。本の表示で、ページいっぱいに行の両端を揃える(白い川が残る)か、それとも行の右端を揃えずに残すかは、どうやら元の出版社の好みに従うのみで、ユーザーが変更することはできないようだ。

iPhone 用の Kindle アプリでは本の中の移動にスワイプのジェスチャーも、また位置インジケータをドラッグする方法も使え、タイプする文字のサイズは5種類の中から選ぶ。

iBooks もこれと同じくらいシンプルだが、マルチタッチのインターフェイスを中心としてデザインされている。本棚にある本の一つをタップすれば、それが以前読んだところで開く。最後に読んだ位置の情報を Apple があなたのアカウントに登録された複数の機器の間で同期するようになるのかどうか、私たちにはまだ分からないが、従来からポッドキャストやオーディオブックを聴く際にはその挙動が採用されてきた。本の中で前後に移動するにはタップまたはスワイプを使う。ゆっくりとスワイプすれば、ページが丸まってめくられるのが見える。本を読むための文字は5種類のフォントと数種類のフォントサイズの中から選べる。また、表紙や目次にも素早くナビゲートできる。

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iBooks は1ページを縦長に示すことも、横長にして2ページを並べて示すこともできる。白黒やカラーの画像も、あるいはビデオも、本の中に埋め込むことができる。ただし、私が目にしたサンプルの中にビデオを含むものはなかった。フォーマットはページいっぱいに行の両端を揃える表示のみのようだ。

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私が目にした iBooks ソフトウェアのバージョンは当然ながら出荷の際のものとは異なるが、発表イベントの会場では抜けているものがいくつか目についた。注釈機能もテキスト選択機能も、参照文献を調べる方法もなく、ブックマークもなかった。検索アイコンはあったが、検索機能はまだ有効でなかった。

Amazon は「本の中で自分は今どこにいるのか?」という問題に対処するため、参照位置を用いた本の索引付けをした。これらの参照ユニットは複数の機器の間で同期させることができ、どんなフォーマットや文字を選んだ場合にも同一のユニットが参照される。

現時点では、Apple は現在選択されているフォントとフォントサイズから決まる絶対的ページ番号を使っている。これでは、iBooks の本の中で正確な位置を参照することが難しい。例えば教科書を電子ブックと印刷版の両方で利用し教室内で同じ生徒たちが使うような場合に大きな問題となるだろう。それでも、大多数の読者にとってこれはどうでもよいことだ。なぜなら、現実世界でページ番号を使う主な目的は本の中でどこまで読んだかを記憶するためで、その点は iBooks アプリがきちんとあなたのために追跡してくれるのだから。

スクリーン対スクリーン -- E Ink スクリーンのテクノロジーは以前にも Sony Reader に使われていたが、Amazon はこのスクリーンを Kindle にうまく生かした。LCD ディスプレイに比べて、E Ink には大きな利点が二つある。バッテリを浪費することなく働き続けられることと、バックライトの必要がないことだ。

ピクセルが一つの色調から別のものに変わるとき、このテクノロジーではある決まった物理的な変化が起こる。それに対して、LCD ディスプレイでは加えられる電荷の量が変わる。つまり、E Ink ディスプレイでは画像がそのままの状態に留まっている限り追加の電力は一切消費されない。これだけで、バッテリ消費が大幅に削減できる。

バックライトの必要なしに比較的高いコントラストが得られることで、人にもよるが、本は読みやすくなる。私たちの友人の多くがこの E Ink スクリーンはバックライト付きの LCD より電力消費が少ないのに目が疲れなくなった、と Twitter 上で発言している。紙に印刷した書物と同様、このスクリーンがどんな角度から見ても読めるということもある。

けれども、今やこれら二つの利点はどちらも意味を失いつつある。iPad の使用するカラー LCD は広範囲の視野角を持っている。私は、iPad 発表会の会場でこの角度の点に気付いた。iPad は極端に傾くように回してもずっとスクリーンが鮮明に見え続けるのだ。それは数フィート離れた場所からでも変わらないし、目の前に持っていろいろ動かしてもスクリーンはくっきりとしたままだ。

バッテリ消費に関しては今のところ Steve Jobs の言葉しか判断材料がない。彼は 10 時間保つと言ったが、彼が説明した通りサンフランシスコから東京へのフライトでずっと映画を観ていたとすれば、現実的な使用で 10 時間保つということになる。もしそれが本当なら、これは同等のサイズと機能を持つ機器に比べて大きな改善だ。

Kindle 機器は、ワイヤレス 3G モデムを入れた状態で一週間、モデムを切った状態では二週間持つと約束しているが、Kindle 機器では実際にそれを動かす場面がはるかに少ない。私の想像では、ワイヤレスをオフにしてただ本を読んでいるだけならば、iPad は言われている 10 時間よりもはるかに長く持つだろうと思う。また、iPad ではバックライトの光量を調節してバッテリ消費を減らすこともできる。この点は iPhone や iPod touch と同じだ。

LCD を使うことにより、本の中にビデオやフルカラーの画像を入れることもできる。本の種類にもよるが、これでより正確に本の内容が再現されることになる。例えば漫画本や、解剖学の教科書などなら、Kindle のグレイスケールのスクリーンでは使いものにならないだろう。

私はバックライト付きのディスプレイで一日中本を読んでいても何の問題もないが、先ほども触れたように Kindle の方が好きだという人は多い。特に、日中の光の下で Kindle リーダーは素晴らしくうまく働く。LCD は、直接の光の下で、あるいはまぶしい場所で、うまく使えないことが多い。Kindle スクリーンのこの利点が大きなものかどうかは、あなたの使用パターンによる。もしも砂浜で読書することが多いなら、これは重要な利点だ。一方室内のソファの方が好きだという人なら、これはどうでもよい問題になる。反面、ベッドに横になって Kindle を読むには補助照明が必要だが、バックライト付きの iPad には必要ない。

スクリーンサイズとピクセルの密度に関しては、それほど大きな違いはない。

iPhone やそれに似たスマートフォンはおよそ 167 ppi のディスプレイを持ち、もっと新しい携帯電話、例えば Droid などはさらに高い解像度を誇る。解像度が高くなればなるほど、ディスプレイは紙の見栄えに近づく。文字もグラフィックスも滑らかに見えるようになる。

低密度の iPad でその副作用と思えるものに私が気付いたのは、iBooks でページが丸まっている部分だけだった。

ネットワーキング -- Amazon は、すべての Kindle 機にセルラーモデムを組み込むことによって電子ブックリーダーというものが影の薄い状態を打ち破ってみせた。最近になって、同社はそのキャリアパートナーとモデムテクノロジーを、米国のみで採用されたネットワーク規格を使う Sprint から、全世界的に優勢な GSM 標準を使う AT&T へと切り替えた。現行の Kindle 2 と DX 各バージョンは GSM モデムを使い、全世界で 100 以上の GSM ネットワーク(配送価格はさまざまだが)で動作する。

Amazon はあなたがセルモデムを利用できる範囲をコンテンツの購入とダウンロード、それと有料コンテンツの購読のみに限っている。無料のコンテンツを変換したりネイティブなフォーマットで読み込んだりして Kindle 2 や DX で読むには、Kindle を USB 経由でコンピュータに接続した状態で転送するしかない。その際 Kindle は USB ドライブとしてマウントされ、同期は手動で行なわなければならない。その一方、Kindle を特定のマシンと同期させる必要はない。また、あなたの Kindle 機に電子メールで書類を送信することもできるが、これにはメガバイトあたり 15 セント(ただしメガバイト未満を切り上げ)の料金がかかる。

Amazon が Wi-Fi を避けているというのは奇妙なことだ。今や Wi-Fi ネットワークはいたる所にあるし、しかもそのますます多くが何かを購入すれば無料、あるいは完全無料で使えるようになっているからだ。(2009 年 12 月 23 日の記事“Find Free and Inexpensive Wi-Fi”参照。)

iPad には二つのバージョンがある。低価格版(価格は内蔵ストレージ量によって決まる)には 802.11n Wi-Fi のみが付く。これは現在入手できる最も高速のワイヤレスネットワークで、2007 年以後にリリースされた三種類の Apple ベースステーションのすべてが対応しているものだ。iPhone や iPod touch と同じく、Wi-Fi 上でのメディア同期はできず、その代わりに USB を使って一つだけの iTunes に接続させなければならないようになるのは間違いないと思われる。

Apple はそれに加えて 3G テクノロジーをサポートした iPad 機種も提供する。こちらは iPhone と同じく GSM を使い、iPad の価格がそれぞれ $130 ずつ高くなるが、購入時にサービスプランは必要なく、米国で使うのにサービス契約は必要ない。

Amazon は個々のダウンロードのコストを同社が販売する書籍や購読の価格に組み入れている。Amazon が示しているメガバイトあたり 15 セントという一般価格を考えれば、おそらく個々のダウンロードのコストは数セントずつ程度だろう。それに対して Apple は、AT&T との間に毎月 250 MB までの制限付きで月額 $14.99、利用量無制限で月額 $29.99 という提携を実現させた。当然ながら、汎用の機器としては、これは立派に筋の通ったプランだ。(AT&T の 3G サービスには同社の持つ 20,000 カ所以上のホットスポットでの無料 Wi-Fi アクセスも付くが、そのうち 12,000 カ所以上が McDonald's レストランにあり、これは既に 2010 年 1 月中旬時点で無料サービスに切り替わっている。)

Apple がインターネット転送のコストを iPad 購入者たちに支払わせている以上、Apple にはネットワーク運営者たちに二次的支払いをする必要がない。これは、書籍の価格を決める際にほんの少しだが余分の収益を手にすることができることをも意味している。

アメリカ合衆国の外では、Kindle はネットワーク関係の価格でさらに不利な立場に立つ。米国の Kindle を外国に持ち出して書籍をダウンロードする場合、Amazon はちょっとした一財産を要求してくる。本一冊あたり数ドルということさえある。米国以外の Kindle を使って、その Kindle を購入した国の中で書籍を購入した場合にも同じようなことになる。(2009 年 10 月 8 日の記事“Amazon が Kindle を米国以外に拡張”参照。)

Apple にはそのような問題は起こらない。3G の代わりに、いつでも Wi-Fi を使うことができる。Apple は年内にも iPad 用の 3G プランを米国以外に拡張して行く予定だが、その際は AT&T 相手のものと同種の提携を個別のキャリアごとに結ぶことになる。

出版社たち -- 四つの要素の最後は一番微妙な点だ。これは(あなたがメディア会社の経営者あるいは従業員でない限り)あなたに関することではなくて、書籍、雑誌、新聞を出版する各社が、自分たちの業界の将来について心配する、そちら側の気持ちに関することだからだ。

その通り、これらの業界の巨大会社たちは、これまで膨大な利益を得て、自分たちの富を制御し続けてきた。ところが今や、特に新聞社たちは急激な下り坂に直面して破産の危機に瀕し、衰退の一途を辿っているように見える。それだからこそ iPad が不釣り合いとも思えるほどの関心の的になったのだし、その典型が新聞各紙が Apple を盛んに取り上げた記事だったのだ。

Amazon は創設者 Jeff Bezos の言葉によれば「何百万台もの」Kindle を販売したかもしれないが、電子機器製品全体から見れば大海の中の一滴に過ぎない。Kindle がいくら浸透しても、たとえ電子ブックから何百万ドルという収入を得ているとしても、購読の側から十分な収入を得ることはあり得ないだろう。(Bezos は何百万もの人たちが Kindle を持っていると言うが、彼のその言い回しは Kindle を持つ家庭の家族の全員を「持ち主」として数えているのかもしれない。家庭用電化製品のアナリストたちによれば現時点で Kindle の販売台数累計はおよそ百万ユニットだという。一方 Amazon はおくゆかしくも具体的な販売台数を語ろうとはしていない。)

出版社たちも、購読や書籍価格についての Amazon の条項が気に入らない。購読については Amazon が収入の 70 パーセントを取るが、これは寄与している仕事に比べて多過ぎるように見える。Kindle で購読できるものが(世界中で出ている定期刊行物全体に比べて)非常に少ない理由は、Amazon がこれといって魅力的な条件を提示できていないからだ。

メディア会社たちは、不利な収入分割の状況の中に取り込まれることを望まない。それに各社は既にそれぞれのサイトで訪問者たちを受け入れており、そこで広告を表示し直接の収入を生み出している。Wall Street Journal によれば、2008 年に New York Times はオンライン広告で一億ドルを稼ぎ出したということだ。

Apple は収入の分割を反転させようと計画している。ただ、現時点では新コンテンツを自動的にダウンロードできるようにする方向には向いていないようだ。Kindle 購読では、新たなメディアコンテンツがリリースされるに応じてダウンロードされるようになっているので、あなたが最新の New York Times 記事を読みたいと思ったその時点でネットワーク接続が必要となる訳ではない。

iPad 発表イベントで New York Times の担当者が示して見せたにわか作りの iPhone アプリは、大きくなったスクリーンの利点を生かしてより良いレイアウト、ビデオの統合、その他の要素を盛り込んでいた。Apple が推し進めようとしているモデルは明らかに、定期刊行物の出版社各社が iPad 用にデザインされた iPhone OS アプリをそれぞれ独自に作るというものであって、Apple は現在アプリ内購入および定額のアプリ売上げで適用しているものと同じく、購読の 30 パーセントを得ようとしているようだ。

Apple はまだ定期購読に関する具体的な情報を一切公表していないので、当然ながらここで私が述べていることは単なる臆測や推定に過ぎないのだが。

さて、書籍の販売による収入の方はもっと微妙だ。大手の出版社に対しては、現行の最も安い印刷版書籍に対する定価の 50 パーセントを Amazon が支払っている。ハードカバーのみで発行されている書籍、例えば超ベストセラー作家 Dan Brown の新刊書などは、定価が $30 で Amazon が $15 を支払うということもあるかもしれない。後日その本がペーパーバックの形で $12 で売り出されれば、Amazon はたった $6 しか払わなくなる。

しかし、Amazon は電子ブックをできるだけ安くしたいと望んでいるので、まだハードカバーのみで売られているものについても $9.99 という価格をつけている。こうしてそのような本を身銭を切って販売することで全体的な価格を低く保ち、その一方で、より安価な本については 100 パーセントのフル価格(時によってはそれ以上)をつけることで利鞘を稼いでいる。Amazon は電子ブック販売者の中で支配的な位置を占めているので、より安価な本については卸売価格の二倍以上の価格さえもつけられる立場にいるのかもしれない。

iPad が発表されるほんのすぐ前に、Amazon は小規模の出版社に対する新条項を発表して、そうした出版社に 70 パーセントを支払うようにする代わりに、そのためにはその本の価格が $2.99 から $9.99 までの間で、他の電子ブックストアでより安く売られていることがなく、しかも最も安価な印刷版より少なくとも 20 パーセントは安くなければならない、と要求した。(2010 年 1 月 21 日の記事“Amazon、Kindle を開発者に開き、印税も変更”参照。)

報道によれば Apple は購読および電子ブックの双方でたった 30 パーセントだけの取り分を望み、本の価格に口出しはしないという。ただし、実際には Amazon が保とうとしている $10 程度のラインと違って $13 から $15 程度の範囲がメインになるのではないかと予想されている。

私がこの記事を書いている時点で、Amazon は米国最大の出版社の一つである Macmillan を相手に公開バトルを戦っている最中だ。Macmillan 側は、新刊書が電子ブックの形で入手できるようにようになり次第より高額な定価(先ほど述べた $13 から $15 程度)を設定し、Amazon にはその定価の 30 パーセントを支払うようにしたい。もしも Amazon がこの新しい条項が気に入らないのならば、Macmillan は 2010 年 3 月に新しい電子ブック価格システムがスタートする時点で提供する本のカタログを大幅に縮小するというのだ。(Macmillan は、Apple が iPad 発表の際に契約を結んだと発表した五つの出版社のうちの一つだ。)

Macmillan 側の動機としては、目玉の新刊書をハードカバーで大きく押し出すことによって収益が目減りするのを防ぎたいということもある。もし Amazon がその種の本を(たとえ身銭を切ってでも)$9.99 で売れたとすれば、たとえ Macmillan がその価格で売った Amazon から $15 を受け取れるとしても、それは誤った期待値を設定することになり、ベストセラー本にもミッドレンジの本にも経済的意味を転覆させてしまうだろう。(ベストセラー本による収益こそが、非常に少数しか売れないけれどもっと興味深い内容の本の刊行を可能にする力となっているのだ。)

Amazon はその要求に応じず、すべての Macmillan の電子ブックタイトルをカタログから引き揚げたのみならず、一時的に Macmillan の印刷本の販売も中止してしまった。れっきとした会社がこんな大がかりにかんしゃく玉を破裂させるなんて、私はこれまで見たことがない。Macmillan の代表者は 著者たちとイラストレーターたち(および彼らのエージェント)にあてた書簡の中で、Macmillan が望むのは自らの会社の行く末に対するコントロールだ、と述べた。私はまた作家 John Scalzi が見解を記した "Amazon.fail" にもうなずけた。その文章の中で、彼はこの Amazon という会社がこれまで示してきた侮辱的な行為を列挙している。

表面的には、これは消費者にとって有利なことにならないように見える。本の定価は、もちろん $15 より $10 の方が望ましいじゃないか? それはそうだ。けれども長い目で見れば、Amazon がすべての書籍の価格を事実上支配するという事態になるだろう。そうなれば、小さな出版社も大きな出版社も、ともに傷つくだろう。また、安い価格に慣れ切ったユーザーたちを縛り付けることにもなるだろう。

でも、Macmillan は必ずしも永遠に $13 から $15 で本を売り続けたいと言っているのではない。むしろ「価格は時に応じて動的に変わるものだ」と書簡の中で明言している。つまり、Macmillan は需要に応じて本の価格を選びたいのであって、Amazon が課したいと考える価格システムに縛り付けられることを望まないだけだ。また、Macmillan と Amazon の双方が価格を印刷本の定価に従って決めるという枠組みから解放されたいという点もある。

供給者側がより大きなコントロールをできるようになれば、Macmillan が需要の低下に従って価格を下げるということが可能になる。どうしてもその本が欲しいという人たちは発売直後に $15 を払うことになるかもしれないが、その際 Macmillan が印刷本と電子ブック版とを同時に出すことを保証できるようになるだろう。そして、待てば待つほど、だんだん安い値段で入手できるようになる訳だ。

SF作家の Charlie Stross(彼も Macmillan から印刷本を出していて、彼の本も今回引き揚げられた)はこう書いている:「そのようなシステムは彼らが需要による弾力的な価格を定めることを可能にするものであり、その結果彼らが本の売上げを最大限にできるように小売価格が選ばれることになる。」

そのようなシステムは、読者にも、著者にも、出版社にも、さらには Amazon や Apple を含む電子ブック配布業者にも、恩恵をもたらす。これによってより多くの本が売れ、収益のより大きな部分が中間業者でなく創作者の手許に届くようにもなる。

Amazon の側は、これはただ Macmillan が「不必要に高い」電子ブックの価格を設定しているだけのことだ、 と主張している。けれども Amazon は同時に、「ベストセラーの電子ブックに $14.99 を支払うのが妥当なことと思えるかどうかは、Amazon の顧客たちがその時点で自分自身で選ぶだろう」とも述べている。その通り、選ぶのは顧客たちだ! それが市場というものだ。それに、Kindle アプリが iPad 用にアップデートされることは避けられず、それを使って読む Kindle 電子ブックを Amazon は販売できるのだから、iPad というこの機器の上で、まさに市場による直接選択の結果が出るのを私たちは目撃することになるだろう。

Amazon は Macmillan の価格構成に抵抗するのはやめると述べたが、私がこれを書いている時点ではまだ Macmillan の印刷版のタイトルのみが購入用に復旧しているだけで、電子ブックはまだ「棚上げ」状態のままだ。

この分野に対する私の興味の一つは、Amazon、Sony、Barnes & Noble といったところから入手できる電子ブックの「発売中」カタログが、すべての発売中の書籍のカタログに比べてあまりにも薄っぺらなことだ。輸入された本と米国内の出版社の本を合わせて入手可能な本はおそらく三百万冊くらいあるだろうが、Amazon がそのカタログで提供している電子ブックはその 10 パーセントにも満たない。収益分割の方法もその理由だろうし、また市場をコントロールしたいという興味もその理由の一つだろう。

これは私の想像だが、電子ブックの市場に Apple が参入してきたことも、今回 Amazon がこれほどひどいかんしゃくを起こした一因となったのではないだろうか。Apple は出版社たちが望むことを Amazon より多く提供できるかもしれない。だから、Amazon はパニックになったのではないか。結局のところ、Apple は音楽にしろ、ビデオにしろ、アプリの売上げにしろ、そういったものを収益の中心とは位置づけていない。その代わりに、この Apple という会社は、メディアの再生に卓越した機能を持った iPad や iPhone のような機器を(より高いマージンで)販売するのが商売のやり方なのだ。(Amazon の今回の態度で私が真っ先に思い出したのは、2007 年 11 月に Crazy Apple Rumors サイトに出たパロディー記事 "Apple e-Book Reader Captures the Market" だった。[職場で聞かれてまずい言葉が満載なので注意。])

競合 (Kindle competition) か、心優しい協調 (kind cooperation) か -- 結局のところ、Amazon は書籍販売業者であって、ハードウェアへの進出は同社がマシンを作るよりもメディアを動かす方を得意とすることを示している。Kindle は、なかなか素敵なハードウェアへと進化を遂げ、それを使っている人たちからは素晴らしく良い感想を得ている。

でも、あからさまに言ってしまえば、Kindle DX を iPad と比べてみればバッテリ寿命と直射日光下でのスクリーン視認性以外に優れたところは何一つない。Kindle 2 ならばより小型で値段も安いという利点がある。それから Kindle 電子ブックのライブラリはタイトル数の多さと値段の安さで秀でているかもしれないが、Amazon がこの点をあきらめざるを得なくなる可能性もある。

iPad が出荷されれば、それがどのように受け入れられるか、もっとはっきりしたことが分かるようになるだろう。もしも多くの人たちがこれを見かけ倒しのブックリーダーでオマケとしてウェブブラウザが付いただけのものと考えるのならば、iPad における電子ブックの位置づけはこの上なく重大な意味を持つものとなるだろう。けれどももしも多くの人たちがこれを新しい種類のコンピューティングデバイスだと見なすようになれば、電子ブックは単にその機能のうちの一つにしか過ぎなくなるだろう。

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ここで思い出しておきたいことが一つある。Apple がダウンロード可能なデジタル音楽の市場で支配的な位置を占めるようになった結果、音楽出版元の各社が Walmart、Microsoft、そして Amazon などと協定を結んで、音楽のフルカタログをデジタル著作権管理なしで提供するに至ったことだ。その大きな要因は、Apple が価格の面で妥協するのを拒んだことだった!

音楽出版業界は、デジタル音楽の世界にくさびを打ち込み、それに伴って私たちには音楽からデジタル著作権管理 (DRM) を取り除いて欲しいという望みが叶うこととなった。それだけでなく、さまざまの範囲の楽曲やアルバムの平均価格が、従来均一料金のモデルで決まっていたものよりほんの少し高い程度の値段に落ち着くという状態に至っている。

Amazon は、ここに詩的な兆候を感じ取らないのだろうか。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2010 年 2 月 8 日

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

FontExplorer X Pro 2.5 -- Linotype が、プロ向けフォント管理ツール FontExplorer Pro のメジャーアップデートをリリースした。ユーザーインターフェイスをアップデートして効率化が図られたほか、新設のワイドスクリーンモードでユーザーが Preview 領域を右の方に置くことができるようになり、新設の透明モードでウィンドウを重ね置きしつつ作業中の書類の中でフォントのプレビューができるようになり、印刷機能が有効になった。また、ユーザーがフォントにタグ付けして手軽に整理ができるようになった。さらに、Apple のフォントパネルに関係したいくつかのバグが解決し、Adobe の InDesign CS3 と CS4 に対するサポートが向上し、詳細は示されていないがさまざまのクラッシュのバグも修正された。フルのリリースノートは Linotype のウェブサイトで読める。(新規購入 $79、アップデート無料、28 MB)

FontExplorer X Pro 2.5 へのコメントリンク:

Espresso 1.1.1 -- MacRabbit がウェブ制作アプリケーション Espresso にいくつかのマイナーな調整と修正を加えてアップデートした。バージョン 1.1.1 では Image Preview のピクセル寸法表示、プロジェクトのリストに隠されたファイルを表示する機能、プレビューでのいくつかの JavaScript コマンドのサポートが追加された。また、正規表現による検索が Find in Project でサポートされ、Sugars のロードが高速化し、複数のタブをワークスペースの外へドラッグした際のウィンドウサイズ管理が改良され、SFTP 出版に関係したクラッシュのバグが修正された。変更点のフルリストは MacRabbit のウェブサイトにある。(新規購入 $79.95、アップデート無料、10.3 MB)

Espresso 1.1.1 へのコメントリンク:

iPhone OS 3.1.3 -- Apple が iPhone OS 3.1.3 をリリースし、パフォーマンスの改善を二カ所に施すとともにいくつかのセキュリティの危険に対処した。主な変更点としては、iPhone 3GS におけるバッテリレベル表示の正確度向上と、サードパーティのプログラムの起動を妨げていたバグの修正、それに日本語の仮名キーボードを使用した際にアプリケーションがクラッシュすることのあった問題点の修正などがある。

さらに、アプリケーションがクラッシュして任意のコードが実行される可能性のあったセキュリティ脆弱性が三つ取り除かれた。一つは悪意を持って作成されたオーディオファイルを再生した場合、一つは悪意を持って作成された TIFF 画像を表示した場合、もう一つは悪意を持って作成された FTP サーバにアクセスした場合のものだ。さらに別の修正はリモートイメージの読み込みが無効になっていても Mail がリモートオーディオおよびビデオコンテンツを読み込んでしまう問題を解決した。それから、ロックされた iPhone や iPod touch に物理的にアクセスできるアタッカーがリカバリモードを使って個人的データにアクセスできてしまう脆弱性も今回のアップデートで塞がれた。このアップデートは iTunes 経由でのみ入手できる。(無料、291 MB)

iPhone OS 3.1.3 へのコメントリンク:

iTunes 9.0.3 -- Apple が iTunes に小さな、しかし重要な、バグ修正アップデートをリリースした。バージョン 9.0.3 では“購入用パスワードを保存する”の設定内容が無視される問題を修正し、いくつかのスマートプレイリストやポッドキャストを iPod に同期する際に生じる問題に対処し、iPod を接続した際の認識に関するバグを解決している。Apple はこのアップデートが全般的な安定性とパフォーマンスも向上させたと言っている。このアップデートはソフトウェア・アップデートから、また Apple のウェブサイトからも入手できる。(無料、90.82 MB)

iTunes 9.0.3 へのコメントリンク:

27 インチ iMac ディスプレイ・ファームウェア・アップデート 1.0 -- もしもあなたが 27 インチ iMac を持っていて、あの厄介なスクリーンのちらつきの問題に悩まされているのなら、Apple の 27 インチ iMac ディスプレイ・ファームウェア・アップデート 1.0 がきっと救いの手となるだろう。このアップデートはその iMac のファームウェアを修正してディスプレイが正しく動作するようにすると主張している。多くの 27 インチ iMac のディスプレイに影響を及ぼしていたちらつきの問題は広範囲にわたった(2009 年 12 月 10 日の記事“新しい iMac のスクリーンが壊れそしてちらつく”参照)が、これで問題が解決するとのことだ。インストールの際には「アップデート中に、iMac の電源を妨げたり、切ったりしないでください」という Apple の警告を必ず守ること。インストール関係の詳しい情報は Apple のウェブサイトでも読める。このアップデートはソフトウェア・アップデートから、また Apple のサポートダウンロードページからも入手できる。(無料、294 KB)

Read/post comments about 27-inch iMac Display Firmware Update 1.0.


ExtraBITS、2010 年 2 月 8 日

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週の話題の焦点が iPad であることは驚くにあたらない。Adam と Tonya が Andy Ihnatko とともに出演したポッドキャストへのリンクがあり、Macworld の Chris Breen が iPad は毎日の生活の中でこんな風に使われるというシナリオを提案した興味深い記事もある。また、Amazon が Kindle にタッチスクリーン機能を加えることを検討中というニュースもある。AT&T は 3G で転送できるものについての制限を緩めようとしており、ストリーミングビデオや voIP 通話も許容されるようになる。それから、Apple が iPhone アプリを iTunes Preview ウェブサイトに加え、あるセキュリティ会社が iPhone OS における理論的な脆弱性を見つけ出し、Mac が $1,000 以上のコンピュータの市場で圧倒的な地位を占めていることが判明した。

ポッドキャストで iPad、Amazon と電子ブックについて議論 -- 二部構成のこの MacNotables ポッドキャストで、Adam と Tonya、そしてかの比類なき Andy Ihnatko が、ホストの Chuck Joiner とともに Amazon と Macmillan の間に巻き起こった騒動について語り合う。話はさらに続いて Kindle や、電子ブックの市場、それから iPad 全般に関する話題にも広がる。夕方の通勤電車の中で聴けるよう、ぜひ iPod に入れておくべきポッドキャストだ。

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Apple、ウェブベースの App Store プレビューをスタート -- Apple の iTunes Preview ウェブサイトが拡張され、App Store にあるアプリの多くについてウェブベースのプレビューができるようになった。例えば Tap Tap Revenge 2.6 をプレビューできるリンクもある。これで、ユーザーとしてはブラウザを離れて iTunes を起動させる手間をかけずともアプリを試してみることができるようになったが、Apple としてはウェブ検索エンジンが App Store をリンクするようにしたいという動機が間違いなくあったのだろう。そう考えれば、iTunes Preview サイトが相変わらず隙さえあればあなたを iTunes に送り込もうと試みるのも納得できるというものだ。

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iPhone フィッシング攻撃を警戒せよ -- セキュリティ研究グループの Cryptopath が、iPhone OS が認証の証明書を処理する方法に関する脆弱性を発見した。それにより、アタッカーがユーザーデータにアクセスを得てしまう可能性が生じる。この欠陥を突くために、アタッカーはユーザーを騙して悪意あるファイルを正当なアップデートだと見せかけ、それをダウンロードさせなければならない。このセキュリティ欠陥を突いた攻撃が現在出回っているという報告はないが、公式なセキュリティアップデートがリリースされるまでの間は、信憑性の確認できないリンクやファイルを開く際には十分な注意を払おう。

コメントリンク:10984

iPhone 用 Slingbox は 3G でも働く -- AT&T と Sling Media が提携に合意し、iPhone 用の SlingPlayer Mobile アプリが個人の SlingPlayer デジタルビデオ録画機からのコンテンツを 3G ネットワーク経由でストリームできるようになった。AT&T はまた 3G ストリーミングビデオのガイドラインを改訂したことも発表し、これにより他の開発者たちも 2010 年の第2四半期にはアクセスを得られるようになる。このアップデート版はまだ Apple からの認可を得て公開されるには至っていないが、ここで新たな障害に行き当たる可能性は少ないと思われる。

コメントリンク:10982

Amazon、Kindle にタッチスクリーン機能を検討中 -- New York Times 紙の記事によれば、Amazon がごく小さな新興企業 Touchco を買収したという。この企業が開発していたのは次世代のタッチスクリーンテクノロジーで、現在のタッチスクリーンに比べてはるかに安い価格でフルカラーのタッチスクリーンディスプレイを作れるようになるものだと言われている。おやおや、これは、Amazon が鈍足の E Ink スクリーンでは iPad に対抗するに不十分だと自ら認めたということなのだろうか?

コメントリンク:10952

Skype、次期 iPhone リリースで 3G での VoIP を計画 -- Skype がブログ記事(短いビデオインタビュー付き)で述べたところによれば、Apple の iPhone OS 3.2(現在開発者たちの間でテスト中)アップデートにより 3G 接続を使った voIP (voice-over-IP) 通話が可能となる変更が提供されるという。従来 Apple はこれを許していなかったが、合衆国当局からの強い要求もあり、Apple もこの変更に至った。Skype は、同社のソフトウェアの機能で高品質の通話が実現できることが確認され次第、新リリースを出す予定だという。

コメントリンク:10978

Chris Breen、iPad の将来性を考察する -- さて、iPad は、いろんなハイテク機器たちの世界の中で、どんな位置を占めているのだろうか? Macworld の Chris Breen が、あなたの自宅の部屋の一つ一つで、あるいはあなたが旅行中や外出中の際に、iPad をどんな風に使いこなせるのか、具体的な考察を巡らす。彼の洞察力は、iPad についてはそれを私たちの生活に溶け込ませるためにサードパーティのアクセサリが必要となる程度が iPhone や MacBook に比べてずっと大きいことを予想する。

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$1,000 コンピュータの 90% は Mac -- Betanews の Joe Wilcox の記事によれば、2009 年第4四半期に販売された千ドル以上のコンピュータの 9 割が Mac であったことを調査会社 NPD の統計データが示しているという。これは、Apple が Mac を高級ブランドと位置づけることに成功したことの証拠となっているが、NPD は同時に PC 市場で成長を見せているのはほとんどが五百ドル以下の部分であることも指摘している。ただ、Apple が毎回四半期ごとに記録的な売上げや利益を報告していることを考えれば、私たちとしては Apple がローエンドの市場をそれほど気にしているはずはないと思う。

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