TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1017/08-Mar-2010

Apple が iPad の(米国での)発売日を 4 月 3 日と発表したのは大きなニュースだが、今週号にはそれ以外にもたくさんの内容がある。Glenn Fleishman は、Apple が新たに発表した Mac Developer Program が以前とどう変わったかを整理して説明するとともに、私たち皆が DRM のせいで体験する悪夢のような使い勝手の問題を扱った漫画を2つ紹介する。また、ゲスト寄稿者の Chris Pepper が、電子ブック市場では小説家たちがゾンビたちと競争しなければならないことに起因する影響について掘り下げて考える。Adam は iPhone アプリの WeatherBug Elite をレビューするとともに、Apple がはっきりした理由もなくクレジットカードに $1.00 を課金したのはなぜだったのかを説明する。今週注目すべきソフトウェアリリースは、DEVONthink と DEVONnote 2.0、BusyCal 1.2.2、Default Folder X 4.3.6、Mactracker 5.1、Mailplane 2.1.5、それに ProKit 5.1 (Leopard および Snow Leopard 用) だ。

記事:

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iPad、米国への到来は 4 月 3 日

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple が、Wi-Fi 専用モデルの iPad の米国における発売日を、2010 年 4 月 3 日と発表した。同社は 2010 年 3 月 12 日からオンラインの Apple Store と Apple リテール店で注文の受け付けを始める。Wi-Fi と 3G 両方を持つモデルの発売は 4 月後半になる。

プレスリリースの中で、Apple は iBooks アプリと iBookstore もやはり同じく 2010 年 4 月 3 日から利用できるようになると述べたが、これは米国国内のみに限られる。奇妙なことに、無料の iBooks アプリは iPad に含まれず、別途ダウンロードしなければならない。

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Apple は 4 月後半に iPad を双方のネットワークモデルともにオーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、スペイン、スイス、英国で発売する。各国での販売価格はまだ公表されておらず、4 月に発表される。

Apple は今年後半にはさらに他の国でも iPad を発売することになる。ただし、Wi-Fi モデルの iPad は世界中で動作できるし、3G 付きのモデルにはロックされていない、交換可能な micro-SIM スロットが付く。(しかしながら、この micro-SIM フォーマットはまだ広く入手可能ではない。)

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漫画が明かす DRM への不満

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

私は最近、2つの漫画に感銘を受けた。いずれも、デジタル著作権管理の付いたメディアに対するよくある不満を伝えたものだ。出来の悪い、意図的に不満を感じさせるように作ってあるインターフェイスを使うのがあまりにも困難で、自分が正当なアクセス権を持っているメディアの、その海賊版バージョンの方をダウンロードして再生する方がずっと易しいという状況になっているのだ。

第1の漫画は、 Geekologie が PowerPoint 風形式の概要図表にまとめたもので、DVD をプレイヤーに挿入してから映画が観られるようになるまでの過程を、映画制作会社のマーケティング・著作権担当の天才たちがどれほど台無しにしてしまったかを訴えている。

私も、最近いくつかのディスクにアクセスしようとして、実際に本編が観られるようになるまでに数分間もかけさせられたために、こんなディスクは電子レンジに放り込んでやろうかと思ったことがある。こんな風にしなければならない理由なんて一つもない。FBI やら Interpol やら、その他いろいろなところから次々と警告が出るけれど、明らかにそんな警告では誰が何をするのも止められない。絶対的に、これらは、ただこちらをイライラさせるだけのものだ。その上、飛ばして見ることのできない予告編もますます数多く売り込みしてくるので、映画館で矢継ぎ早に予告編の一斉砲撃を受けるのと何も変わらない。

他に方法はないのか? 簡単だ。リッピングして焼いたディスクをドライブに入れるか、あるいはリッピングしたファイルを開くかすれば、何の前置きもなしにすぐに映画が観られる。

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さて、第2の漫画は、スーパーギークの二人組のウェブデザイナー The Brads (Brad Colbow と Brad Dielman) の作品だ。これはまさにグサリと心に突き刺さった。Brad D. が近所の図書館からデジタル形式のオーディオブックをチェックアウトして聴こうとする様子が描かれている。(この漫画は大き過ぎてこのページには表示できない。リンクをクリックして見て頂きたい。)

Matt Neuburg が、この漫画と同じ恐怖の体験を言葉による物語にまとめている。2009 年 3 月 5 日の記事“図書館からオーディオブックをダウンロード: とっても馬鹿げた物語”だ。Brad Dielman の方の物語は、結局 BitTorrent からオーディオをダウンロードするところで終わっている。

どちらの漫画も、「さあ、みんなで作品を盗んで、著作権所有者のお金をだまし取ろう!」などということを言っているのではない。そうではなくて、私たちが既に代金を支払って、完全に合法的にアクセスできるコンテンツに対して、各会社がそのアクセスをどれだけ困難なものにしているかを描いたところに、漫画のユーモアがある。メディア会社たちはどうやらアクセスの過程を困難なものにするところに大喜びを感じているようだが、それこそがこの「市民としての反抗」という形での「海賊行為」の原因となっているのだ。

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Apple、より安価な Mac 開発者プログラムを提供

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple Developer Connection (ADC) はもはや存在しない。今回、この開発者用プログラムは Mac Developer Program と改名されて、iPhone Developer Program と相並ぶようになった。新しい Mac Developer Program のメンバーシップ価格は、ハードウェアの価格割引なしで、一律の $99 (年額) となる。利用可能な特典の限定された無料版のプログラムも、今まで通り提供される。[訳者注: この記事の内容はすべて米国でのものです。日本における「Mac デベロッパプログラム」の内容や価格は異なります。]

今回の変更は Apple が iPhone Developer Program に将来の iPhone OS ベータ版を受けられるようにするため年額 $99 のメンバーシップ料金を必須とした後、間もなく実施された。これは、iPhone 3.2 ベータがリリースされるまでの間は無料でメンバーに加入できるが、自分のソフトウェアを App Store を通じてリリースしたければ料金を支払わなければならないというものだった。(この iPhone Developer Program 料金は、ベータ期間のみに適用されるものかもしれない。Apple は、別の発表の中で iPhone SDK は無料で入手できると述べたことがある。)

従来 ADC のメンバーシップは さまざまな段階に分かれていた。主に、その違いは Mac OS X アップデートや新バージョンのベータ版が含まれるかどうかにあった。無料版のメンバーシップには技術書類へのアクセス ($199 を払った会員には同じ技術書類が収録されたディスクが郵送される)が含まれ、有料のレベルには Mac OS X のベータ版が含まれていた。

$499 の Select レベルには Mac OS X ビルドと、年間2件までのテクニカルサポート (開発者が詳細にわたるトラブルシューティングの援助を得られる)、それに年間1件のハードウェアの購入割引が付いていた。このハードウェア購入割引では Mac が大幅な割引価格で購入でき、場合によってはそれだけで Select レベルの料金に見合うこともあった。

$3,499 の Premier メンバーシップには WWDC (Apple の Worldwide Developer Conference) のチケットと、年間 10 件のハードウェアの購入割引、さらに年間 8 件までのテクニカルサポートが付いていた。いずれのプログラムでも、Apple のサイトにあるコンパチビリティラボ、マーケティングヘルプ、その他の情報源にアクセスできた。

Student メンバーシップは価格が年額 $99 で、ハードウェア購入割引とオペレーティングシステムのビルドのみが含まれていた。

これらに対し、今回新しくなった Mac Developer Program は単純そのものだ。 年額 $99 で、Mac OS X リリース(サーバ版も含む)にアクセスできる。この価格には年間 2 件までのテクニカルサポートが含まれ、追加のテクニカルサポートは 2 件パックが $99、5 件パックが $249 となる。この年額 $99 の均一料金は個人にも、どんな規模の企業にも同等に適用される。

Apple は WWDC 関係の内容やハードウェア購入割引を新しいプログラムから削除してしまった。少し以前には、Mac の値段が今よりずっと高く、開発者たちはいつもテスト用に新しいモデルを必要としていた。そういう時代にはハードウェア購入割引のために高いメンバーシップ料金を支払う価値があった。ハイエンドのコンピュータに Apple が課していた開発者向け料金と一般市販価格の差よりも、開発者プログラムを購入する方が得なことが多かった。ところが今や、毎年ハードウェアを購入する必要のある開発者はそう多くない。(それに、Apple の入門レベルの機種でさえ十分パワフルでソフトウェア開発にも使える。)ただ、テクニカルサポートだけは今も必要だ。

多くの開発者にとって、これは大幅な値下げとなる。Red Sweater Software の Daniel Jalkut は tweet でこう書いた:「ワーォ! 俺が毎年 Apple に払う税金が $600 から $200 に下がったって?」(彼は、iPhone と Mac の開発者メンバーシップ料金を合計して言っているのだ。)

無料版という選択肢は残る。これは従来の ADC の無料レベルと同じもののようで、Apple の Xcode 3 開発者ツールやオンラインリソース、バグ報告などへのアクセスが含まれる。

Apple の意図は明らかに、従来の $500 (プラス消費税) という値札を外して、Mac OS X 開発の中に足を踏み入れるのをもっと無理なくできるようにしたいということだろう。それは同時に、私たちのように Mac OS X について記事を書いたり、あるいはウェブアプリケーションを開発したりする人々にとっても、以前よりずっと安価に将来のリリースやアップグレードにアクセスでき、Apple が出荷するよりも前にテストできるようになることを意味している。

Apple は FAQ ページを公表して、既存の ADC メンバーの移行がどうなるかを説明している。彼らのさまざまの特典、例えば譲渡可能資産(アカウントを持つ他の者がハードウェア購入割引や Mac OS X のプレリリースにアクセスできる権利)などは、現在のメンバーシップの有効期限が切れるまで保持できる。最近メンバーシップを得たり更新を購入したりした人は返金を受けられることがある。

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あの Apple による $1 の MobileMe 課金は何なのか?

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

会議中、私の iPhone に電話がかかってきた。知らない 866 番号からだったので、私は無視した。けれどもあとで留守番電話をチェックしてみると、それは Citibank からと称する自動化メッセージで(私は Citibank を使うクレジットカードをいくつか持っている)それによればクレジットカード不正使用の疑いがあるのでこれこれの番号に電話して欲しいのだという。私は、その種の電話番号には決してかけないという原則を固く守っている。相手が詐欺師であるかどうか確かめる方法がないからだ。でも、クレジットカードの裏に書いてあるカスタマーサービスの番号に電話してみたところ、係の人があの自動化通話の内容を確認してくれた。

奇妙なことに、Citibank が心配していた課金はちょうど $1.00 のもので、課金主は MobileMe だった。Tonya と私は二人とも、しっかりと確認をした。最近、私たちは iTunes で私たちのアカウントにログインして何かを注文したこともないし(第一、iTunes でちょうど1ドルきっかりという値段が付くなんて見たこともない)Apple Store でも注文していない(Apple Store の注文は Apple Store Order Status ページを確認したし、iPhoto の注文は Apple Internet Services Order Status ページを確認した)もちろん MobileMe で追加のストレージを購入したことも、二人ともこれまで一度もない。でも、私たちが Apple に何かを注文したというのは十分あり得る話に思えたので、私は Citibank の人たちにこちらで調べてみるのでこのカードを少し保留にしておいてもらいたいと頼んだ。

自分の MobileMe アカウントにログインしてみたが、何も変わったところはなかった。そこで私は Contact Support (MobileMe サポート) をクリックし、続いて Account & Billing (アカウントと請求)、さらに Renew & Reactivate (アカウントの更新と再有効化) をクリックした。請求に関する問題についての情報がありそうに見えたのはそこしかなかったからだ。でもそこには何も役立つ情報がなかった。でもそのページには MobileMe Advisor とチャットできる窓口が提供されていたので、私はさっそく Chat Now ボタンをクリックした。

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サポートの係員は適切な質問をいくつかしたが、その中で鍵となったのは私が他にも MobileMe アカウントを持っているかどうかという質問だった。Tonya のアカウントも同じカードを使っていたので、私はイエスと答え、彼は私たちのどちらかが最近アカウントに変更をしなかったか、例えば個人情報や請求書関連情報を変えなかったか、と聞いた。私たちはどちらもそんなことはしていなかった。彼は途方に暮れたことを認めたが、通常 Apple が $1.00 の課金をするのは保存されていたクレジットカード番号が今も有効かどうかを確認するための事前承認の料金だと説明してくれた。

私たちは何も購入しようとしていないのに、何のための事前承認かと聞いてみたところ、彼はこれは個人情報や請求情報が変われば、あるいはアカウントが作成されたり更新されたりすればいつでも起こり得ることだと説明を続けた。私たちは Amazon で安売りしている MobileMe ボックスを買ってアカウントを更新した(これは MobileMe サービスを年額 $99 の通常料金より安く手に入れるためのよく知られた方法で、現在は通常より $30 安くなる)ので、彼はそれなら事前承認が起こるはずはないと言った。

でもその時だった。明かりがひらめいた。向こうの部屋で Tonya が、彼女の MobileMe アカウントが 2010 年 4 月に自動更新されることになっている、と気付いたのだ。私は自分のアカウントにはこれをオフにしていた。係員にそのことを伝えると、彼はそのことに気付かなくて申し訳ないとしきりに詫びた。実は、それですべてが説明できるのだった。

要するに、自動更新のおよそ一ヵ月前、Apple はクレジットカードがまだ有効かどうかを確認するためにカードに $1.00 を課金し、3 から 5 営業日が過ぎた後に同額をカードに返金する。だから、たいていの人は課金されたことにすら気付かない。私たちが気付いたのは、Citibank の詐欺警告システムがこれを察知したことが唯一の理由だった。Apple の立場から見れば、これは完全に意味の通ったことだ。なぜなら、もしも事前承認の課金が通らなければ、実際の更新日までにユーザーが別のカードに切り替えるだけの時間の余裕があるからだ。そうしないと、もしもカードが通らなかったという理由で Apple がいきなり警告もなしにアクセスを切断してしまえば、ユーザーが電子メールその他の MobileMe サービスにアクセスできなくて困ることになるだろう。

ある友人が Facebook で、彼の場合 Citibank が実際に彼の WWDC 登録料金の取扱いを数年間続けて拒否したことがあると言っていた。その理由は、Apple が同じことをしたからだ。つまり、カードの確認のために $1.00 を課金し、その後に続けてカンファレンス登録料として大きな金額を課金したからだ。

確かにその種の挙動はクレジットカードを盗む連中がよくやる手口だ。まずは少額の、一見無害な課金を試してほとんどの人が明細書を見ても気付かないようにしておき、それが通ればあとで思う存分そのカードが不正使用できるというわけだ。実際、以前私たちもそのような被害に会ったが、あれはちょっぴり恥ずかしかった。私たちはクレジットカードの請求書に Yahoo から $19.95 という項目があるのを見て、それが何なのかわからなかった。(実は私たちのクレジットカード番号が盗まれていたのだ。)けれども Tonya が電話で確かめたとき、クレジットカード会社の係員はこれは Yahoo Personals[訳者注: Yahoo の運営するオンライン「出会い系」サービス]の料金で、ひょっとしたらご主人がこっそりと入会したのではないですか、と彼女に言ったのだった。何てこった!

それはさておき、話を MobileMe 課金に戻すと、これは完全に正当なものだったので、私はもう一度 Citibank に電話をかけて、事情を説明し、カードの保留を解いてもらった。私の仕事時間が一時間ほど無駄になったわけだが、それでも私は Citibank と Apple 双方のカスタマーサービスできちんと対応してもらえたことに感謝している。そして、より重要なことは、私が今まで知らなかった事実を学んだということ、そして、他の Mac ユーザーの皆さんが、今後 Apple から普通でない $1.00 の課金があった場合に混乱せずに済むお役に立てれば嬉しいと思う。

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WeatherBug Elite 1.0

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

WeatherBug Elite は AWS Convergence Technologies から出されているフル装備の気象概況と予報アプリである。レビューしたバージョンは 1.0 で、24 April 2009 にリリースされたもので価格は $0.99 である。

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正直言って、私は天気がとても気になる。ひょっとすると、これは今日の技術 (そして屋内が多い) 社会においては流行おくれかもしれないが、私は農家育ちで Radio Shack 天気ラジオの予報に聞き入っていた、と言うのも、例えば干草を作るに十分な乾いた日が続くのは何時頃か知っておく必要があったからである。私自身は農業から逃げ出すことが出来たが、走る前には現在のそして数時間後の天気はどうなのか知っておきたいし、それに身近に迫ったレースに備えるにはこれはとても重要なことである。

私は、天気 Web サイトはインターネットの利用の最善のものの一つだと思っていたが、私の iPhone 上の天気アプリを使い始めてからは、完全にそちらに切替えた。天気はこれからどうなるのか知りたいと思った時、やおらコンピュータの所に行き、Web ページを立ち上げ、そして数多くある天気サイトのお粗末なレイアウトの中から予報にたどり着くよりも、iPhone を取り出してアイコンをタップする方がずっと楽である。

しばらく前になるが、幾つかの天気アップスを見てみた後、私は WeatherBug Elite に決めたのだが、これには無料の広告付きのバージョンもあり WeatherBug と呼ばれ幾つかの先進的な機能が省かれている。私は最初はこの無料バージョンをしばらく使っていたが、広告が目障りになるようになり、$0.99 だったらと、WeatherBug Elite にグレードアップするのは割とたやすい決心であった。

主たる機能 -- 多くの天気アップスや Web サイトがその情報をどこから得ているのか私には良く分からないが、長年にわたってこれらの多くに注意を払ってきたけれども、一つの情報源が他よりも目に付くほどより正確だという印象を持ったことは無い。WeatherBug はこの点から言うと普通ではなく、米国内に 8,000 を超える観測ステーションと公のビルに取り付けた 1,000 以上のカメラからなる独自の天気ネットワークを運用している。この結果、たまたま観測ステーションの一つの近くに居ればその地域データはより正確であると言えるが、予報に関しては地域のどのステーションを選択しようが結果は同じの様に思える。

当時私が他の選択肢を超えて WeatherBug を選んだのには二つの基本的な理由がある。一つは、現況をメーンスクリーンに見やすくかつ詳細も示す形で表示することである。二つ目は、次の半日の予報もメーンスクリーンに表示し、なおかつ概況アイコン、文字予報、そして日中最高気温と夜間最低気温も同時に見られる。この様にして、WeatherBug アイコンを一回タップすれば、このアプリが新しいデータを得るため一瞬止まった後、私が必要とするであろう基本天気情報は全て一見出来る。

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更に、もし気象注意報、例えばここに示すような冬季ストーム注意報の様な、が出されれば、WeatherBug は赤いバッジをそのアイコンの上に付けそして現況と次の半日予報の間にその注意報を表示する。

メーンスクリーンの現況部分をタップすると同じ情報を表形式で繰り返す別の Current Conditions スクリーンに変るが、更なる二つの情報が追加される:Monthly Rain と Rain Rate である。結果として、私がそれを見に行くことは殆ど無い。(超ローカルの情報に関しては、私は Ithaca Climate Page を使う、ここにはほんの数マイルしか離れていない観測ステーションからのデータが含まれ、かつある特定の月がどのぐらい暑かったのか寒かったのか、或いはどのぐらい雨又は雪が降ったのかといった話題の鍵となる月毎の集計情報も提供される。)

私がしょっちゅうメーンスクリーンの半日予報をタップして Forecast Details スクリーンを出し、来るべき一週間の各半日を見る。このスクリーンは結構細かい詳細を示してくれ、アイコンと、文字予報、そして最高と最低気温も表示される。他の天気アップスのあまりに多くのものが (Apple 自身の芳しくない Weather アプリを含んで) アイコンのみに依存していて、あたかも次の様な予報も一つのアイコンで表現できると言っている様な感じを持つ:

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朝方は雪又は雨の模様... そして午後は雪となるでしょう。雪は午後時折激しくなる可能性あり。積雪は 3 から 5 インチの見込み。最高気温は華氏 30 度の低いところ。北西の風 10 から 15 mph、瞬間風速は 30 mph にも達する可能性あり。降水確率はほぼ 100 パーセント。

これこそがまさに天気予報と呼べるものである!奇妙なことには、底部にあるツールバーの中の Forecasts ボタンをタップすると簡易版の有用さに欠ける Forecasts スクリーンが現れ、良く出来た Forecast Details スクリーンに行くにはもう一回タップする必要がある。

Forecast Details スクリーンで予報をタップするか、或いは簡易版の Forecasts スクリーンの Hourly ボタンをタップすると、当日の時間毎予報が示される。残念な事に、Forecast Details スクリーン上でどの日をタップしようが、まず当日を常に示す。私にはこれはバグとしか思えない。一旦 Hourly Forecast スクリーンに入ってしまえば、スクリーンの上部にある矢印をタップすることで日から日へと移動できる。

私の好きな WeatherBug の機能にレーダーマップがあり、ここでは個人の家のレベルまでズームすることが出来る。勿論それはあまり意味の無い話だが、私は半径 20 マイル内の天気を見るのが好きで、これだと次の 1、2 時間の間に何が起こるのか見ることが出来る。更に 200 マイル半径というのも良く見るが、こちらではその日の後半に何が来るのかを見ることが出来る。標準の iPhone コントロールで滑らかなズーミングが出来る。更に嬉しいことには、このレーダーマップは動画化出来るので、過去数時間での雨の動きも見ることが出来る。また、このレーダーマップ上の降雨オーバーレイの不透明度も調節出来る。

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WeatherBug はあなたが設定した場所にピンを打つが、これはどうも一般的に使えるようだ。他のピンを置くには希望の場所でタップアンドホールドするだけである。一旦ピンが置かれると、タップすることで現況、現在の気温、そしてオプションとしてユーザーが設定した半径を持つ円 (雨はどれぐらい離れているか分かるよう) のアイコンが示される。

WeatherBug Elite はまた気温、気圧、湿度、そして風速のマップを提供する。他には、赤外と可視の衛星マップ、と翌日の最高と最低の気温マップも提供される。私は時折何か特定の情報を見るためにこれらの一つを見てみることがあるが、いつもレーダーマップに戻る (一度に一種類の情報のオーバーレイしか表示できない)。

ツールバーにある最後の二つのボタン - Video と Camera - は 2 分間の全国の天気予報を表示するが私はこれを最後まで見たことが無い、と言うのも私は大体全国の全体の気象にはあまり興味が無いからである (もっとも地域的に分散している友人が Twitter で文句を言っている時に嵐のレーダーマップを見てみるのは好きである)。殆ど意味がないと思われるのは WeatherBug がその地域の色々な学校やその他のビルに設置したカメラからの静止画像である。私がまさにその場所にこれから行こうとしているのでない限り、その使い道は思いつかない - これらの写真は動画化出来るので雲が動いていく感じを掴むことは出来るけれども。

WeatherBug に複数の地点を追加しそしてスクリーンの上部にある矢印を使ってこれらの間を切替えるのも簡単なので (もっとも多く地点が含まれている時はリストにしておくか、さもなくば Locations スクリーンから望みのステーションを訪問できれば便利であろうけれども)、そして Current Location を選択すれば最寄のステーションに何時でも行きつけるので、旅をしている時は便利である。

進言 -- 多分最近遭遇したことのある問題は一つだけで、それは私が Macworld Expo のために家を出る前に "San Francisco" を検索している時どのステーションが Moscone Center に最も近いのかを見極めることにあった - 数多くある選択肢の中から見つけ出すには私の知識では十分でなかった。この問題に対する解は Moscone Center そのものに近づく様ズームインすることで、それからそこにピンを落としておけば、それを基にして適した保存場所を追加することが出来る (Potrero Hill)。

インターフェースの観点から言うと、WeatherBug は多くの場合同じものの繰り返しに害されている - Current Conditions スクリーンはメーンスクリーンにはない更なるデータを追加すべきであり (降雪や現在の積雪量の様な) さもなくば廃止すべきである。そして簡略版の Forecasts スクリーンは単純に不要であり、この代わりに Forecast Details に置き換えた方が良い。それから、前にも言ったが、時間毎予報はそれにアクセスした日のものになるべきである。

WeatherBug で足りないものの一つは、我々の様に我々の天気を深く気にかける者にとっての、気温と降水量の歴史的データである。このデータは間違いなく入手可能であり、WeatherBug の開発者が頭をひねらなければならないのはそれを役に立つ形に示すにはどうすれば良いかだけである。

最後に、もし歴史的データが提供できるのであれば、私が天気サイトやアプリで是非とも見たいものは精度を振り返って見ることである。我々全てが、天気予報は確率と見込みに基づいており、実際の天気は時折大幅に違うことがあることを知っている。WeatherBug がその予報がどれ程正確であったかについて正直であってくれれば大歓迎だと思いませんか?

競合品 -- 私は WeatherBug がやっていることは独創的であるなどと言うつもりは無い;それは私が欲するものを使い易いインターフェースで詳細に情報提供してくれているだけである。他の良く知られている一般的な (特定の目的に対する意味で) iPhone 向けの天気アップスには次のものが含まれる。もし私が大事なものを見逃していたらコメントの所で知らせて欲しい、そうすればこのリストに追加できるし、更にもし私が WeatherBug よりも良いと思うアプリに出くわしたら、それは別にレビューとして取り上げようと思う。

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ゾンビの作家たちが墓場から抜け出て、電子小説の市場を脅かす!

  文: Chris Pepper <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

電子読書の最前線で、私は長い年月を過ごしてきた。その始まりは Handspring Treo 600 だった。2003 年のその当時、私は Plucker を使ってウェブページをダウンロードし、あとでそれを地下鉄の中や歩道の上で読んだものだ。(私は Brooklyn から Manhattan へ通勤していた。)それ以後、私の電子読書の量はますます増え、去年の初め以来私は紙に印刷した本を買ったことがない。今では、いつも iPhone で電子ブックの小説を読んでいる。使っている iPhone アプリは BookShelf, Eucalyptus, Instapaper, それに Amazon の Kindle for iPhone だ。

私のような人が一般的でないことは承知している。けれども、電子的に小説を読む習慣が急上昇し始めていることは否定しようがない。電子ブックを読むのは紙の本を読むのと多くの点で違いがあって、その違いのいくつかが単に読者や書店といった枠を超えた人々や会社を巻き込んで幅広く拡張し、興味深い結果を引き起こしつつある。当然ながら、出版者や再販業者、機器のメーカー各社はこの動きに鋭く気を配り、何が起こっているかを把握しようと、また自分たちが新たな世界の中でも生き延びることができるようにと、躍起になっているところだ。その緊張感は、最近開催された O'Reilly Tools of Change for Publishing カンファレンスでもはっきりと見て取れた。もちろん、来たるべき新世界がどのようなものになるかは誰の目にも見えず、そのことがなおさら事態を複雑にしている。

けれども、どれだけの数の 小説家 が、自分にどのような影響が起こるのかを十分に把握しているのだろうか。紙に印刷された本とは違い、電子ブックはその本質そのものが、私たち読者が 何を 読むかに対して極めて深い意味合いを持っている。そして、そこにおける最大の課題が、意外な人々のグループからやって来る。それは、ずっと昔に既にこの世を去ったけれど、その著作はまだ生きている、そういう著者たち。言い替えれば、ゾンビだ。

携帯電話が電子ブックリーダーへの道を指し示す -- 何がこのような大転換を起こすのだろうか? 結局のところ、読書のためのテクノロジーが改善され続けているにもかかわらず、紙に印刷した本以外を読むことを読書と考えることはできないと主張する人たちは多い。彼らは自分をラダイト(技術革新反対論者)と自認し、目新しいだけのテクノロジーなんて使いたくもないと言い張る。ただ、彼らが忘れているのは、今日のペーパーバック本もハードカバー本も、それ自体が既に高度に洗練されたテクノロジーであって、人類が何千年もかけて完成させてきたものであり、その過程の中で楔形文字、パピルス、彩飾写本、手組みの活版印刷などが次々と開発されては廃れていった歴史があったということだ。

けれども長期的に見れば、大人たちの中に習慣を変えたがらない人たちがいることなど、大した意味を持たない。彼らの子供たちの生活環境の中では、携帯電話が本と同じくらい大きな意味を持っている。そもそも、紙に印刷されたものを読む習慣のない若い人たちも多い。彼らはその代わりに、ウェブページやテキストメッセージ、Facebook のアップデート、さらにはコンピュータやスマートフォンを使った電子メールなどを、読み書きするのに慣れているのだ。本というものは長くて、インタラクティブ性も(現在のところでは)薄い。ただ、オンラインでならば子供たちがそういうものも読むことは疑う余地がない。短編小説は既に現在でもシンプルな「機能付き携帯電話」の上で人気を得ている。それらは専用の電子ブックリーダーよりも、一般的なスマートフォンよりも、読書用機器としてずっと機能の少ない、ごくシンプルなものなのだが。

その上、電子機器の上でものを読むための使い勝手は驚くほど急速に進化しつつある。現代のスマートフォンはカラー LCD と LED のスクリーンを持ち、その解像度、カラー、反応性には素晴らしいものがある。私の iPhone のピクセル数は Treo 600 の6倍に達し、フォントや画像の表示ははるかに優れている。そして Google の Nexus One や Verizon Droid などではさらに目覚ましく、スクリーンに 800×480 ピクセルあるいはそれ以上を表示できるものもある。KindleNook の使う E Ink スクリーンには LCD や LED のスクリーンの持つカラーや反応性はないが、その代わりにバッテリ寿命とまぶしさの問題を効果的に解消している。さらに、Apple の iPad の持つ 9.7 インチスクリーンは、見事と言う他はない。フルカラーの 1024×768 ピクセルだ。この調子で進化が続けば、あと十数年ほどすれば無料の電子ブックリーダーが(現在の携帯電話のように電子ブックのベンダーが費用を負担して)登場し、充電も一切不要、容量も無限、ということになるのではないだろうか。

iPhone と iPad が iPhone OS を共有するというのは重大なことだ。Kindle は Linux を走らせ、Nook は Google の Android 携帯電話オペレーティングシステム(これも Linux をベースにする)を走らせている。これは、今後電子ブックリーダーと携帯電話が互いに近づいてゆくことを示しているのではないか。それらは、コンポーネントレベルの類似性を共有し、基本的に両者の違いはサイズ、スクリーン、マイクの有無、といったものだけになるのだろう。

携帯電話が世界を席巻するであろうことは容易に予測できるが、Amazon が頑として Kindle の売上高を明かすことを拒否していることを考えれば、読書の対象として電子ブックが実際にどれだけ人気を得るかを見定めるのは難しい。ただ、 アナリストの推測によれば現在百万台程度の Kindle が出回っているという。Sony は、同社の Reader を 2006 年の導入から 2008 年末までの期間に 30 万台を販売したと発表しているが、より新しい統計は明かしていない。Amazon は 2009 年のクリスマス当日に Kindle 電子ブックを物理的な書籍よりも多く販売したと発表したが、これは人を惑わす広告と言うべきだ。なぜなら、クリスマスプレゼントとして Kindle をもらった人なら、きっとその日に電子ブックを購入しただろうし、他方紙に印刷した本をクリスマスプレゼント用に考えている人はそれより前にあらかじめ購入を済ませているだろうからだ。だから、いわばクリスマスは Amazon にとって物理的書籍の販売が最低になる日であり、これはその日の電子ブックの売り上げ急増を誇張するために用いられたに過ぎない。

今日の実際の売り上げの現状がどうあれ、電子機器のメーカー各社が巨大な潜在的市場の存在を信じていることは明らかで、だからこそ Sony Reader や Amazon Kindle と競争すべく電子ブックを読むための機器が数え切れないほど多く発表されつつあるのだ。主だったところを挙げれば Barnes & Noble Nook、QUE proReaderSkiff ReaderIREX Digital Reader、それにもちろん 4 月に出る予定の Apple の iPad がある。

皮肉にも、私たちの最も進化したこれらのテクノロジーが、死に切れない著者たちを墓場から呼び出す実際の役に立っているかもしれないのだ。

ゾンビたちがブックカタログを乗っ取り始める -- 紙に印刷されたものを読むことはその本が物理的に入手可能かどうかに左右されるが、電子ブックについてその問題は既にインターネットのお陰で解決済みだ。二十年前には、ほとんどすべての本を私たちは書店や図書館、学校などから入手していた。そこに初めて大きな変革が起こったのは、個々に独自の工夫で本を取り揃えた多数の小規模の書店が、Barnes & Noble や Borders のような均質のチェーン店に取って代わられた時であった。人々はこの変化に自らを対応させ、売られているものは変わったが、それでもこの時点では書棚の収容能力に限界があったためにゾンビたちはまだ動き出せないままだった。これらの大規模書店は生きた著者たちの書く新刊書に焦点を絞り、死に切れない著者たちの書いた古典的作品は大体において上の方の棚で埃に埋もれていた。

その後、さまざまのインターネットベンダーが登場して、物理的書籍のはるかに大きなカタログを提供し始めた。それ以来、オンラインで本を注文するというのはごく普通のこととなり、Amazon がこの市場で誰もが認める優位性を保つようになった。小規模な書店や、さらにはもっと一般に物理的な書店が消えてゆくことの影響についての心配を別にすれば、私たちは子供の頃に比べて読めるものの選択肢が はるかに 広がったと言える。これは主としてインターネットのお陰だ。そして、そういった選択肢は主にどこで増えたのか? それが、例えば L. Frank Baum (1856 - 1919) のようなゾンビたちだ。Wizard of Oz (オズの魔法使い) をはじめとする彼の著作がいきなりすべてアクセス可能になって、J. K. Rowling (1965 - ) の Harry Potter (ハリー・ポッター) シリーズと同列に(人気の面で同列とは言わないが)並ぶようになった。

第三の転換は、つい最近始まったばかりだ。それは、私たちの入手できる電子ブックのカタログ選択肢が爆発的に増えたことによる。商業的な側ではやはり Amazon が圧倒的に最もよく知られており、2009 年 12 月の時点で 39 万冊の Kindle 電子ブックが入手可能となっている。(彼らが紙の形で販売しているものは数百万冊に達する。)けれども、多くの商業的なベンダーたちがそれぞれ既存のビジネスモデルを電子ブックに適合させつつあることも明らかだろう。ビットの販売はいろいろな意味で原子の販売より容易だ。即時に満足が得られ、インターネットのバンド幅は印刷して出荷するよりずっと安価だ。これは比較的単純な転換であって、そこに足を踏み入れる際の障壁は物理的な書店を開店するよりもずっと低い。

けれどもこの第三の転換の非商業的な側で、ゾンビたちへの変化がより劇的に起こった。なぜなら、無料の本のカタログは書店と公共図書館双方の良い点を合わせたようなものであって、膨大な数の本が、何の制限もなしにいくらでも即時にダウンロードできるようになるからだ。 Project Gutenberg は約 3 万冊 の無料の電子ブックを提供している。(主にゾンビ著者たちの書いた絶版の古典作品だ。人々がわざわざ手間をかけてポストするのはその種の作品が多いからだ。)これらはさまざまのフォーマットでダウンロード可能だ。また、 Google Books は商業的サービスだが、現在既に 50 万冊以上の無料タイトルも提供している。Project Gutenberg は知名度の点では Amazon に遠く及ばないかもしれないし、Google Books は未だにそのブックカタログよりも訴訟の話題で有名だ。(詳しくは TidBITS 記事“Google Books Settlement”シリーズ-著者たち、出版業界が Google Book Search と和解合意Sony Reader、50 万冊の無料パブリックドメイン書籍を Google から取得-参照。)それでも、いずれ読者たちは必ずや無料の選択肢に気付くだろう。Google その他、Kindle の競争相手たちもきっとその後押しをするに違いない。

電子ブックリーダー機器の多くは、ゾンビ作品を集めた Project Gutenberg のコレクションに直接アクセスできる。ただ、ハードウェアのベンダーたちはこれまで自社の商業的店舗に焦点を絞ってきており、Barnes & Noble の Nook は Google Books への直接アクセスも提供している。現代の著者たちの中には自分の電子ブックの無料ダウンロードを提供している人たちも多い。けれども残念なことに、いろいろなカタログで、また著者たちの個人サイトも含めて、すべてを横断的に検索して電子ブックを探す良い方法はまだない。現時点での最良の方法は、ダウンロードリンクがあることを願いながら著者のサイトを探すことだけだ。 Internet Archive の BookServer プロジェクトは電子ブックの検索可能なネットワークを互いに結び付けることを狙っており、無料のもの、販売されているもの、あるいは貸し出しをしているものも含め、幅広い種類の出所から手軽に本を見つけ出せることを目指している。Google はこれらの分野の一部あるいは全部で役割を担うことを決意しているようだが、細かいことはまだ明らかになっていない。本を管理すること、そしてブランド認知におけるパワー、そこには金脈が眠っており、だからこそ皆が急いで有利な足場を得ようと競い合っているのだ。たった一つ明らかなのは、今後は読書の選択肢が広がる一方だということだ。

無料ということのパワー -- オンラインの通信販売書籍販売カタログが膨大に増えたことは、本を購入する人たちの持つお金に対する競争を幅広くした。一方では、このことは( オンデマンド印刷とも相まって)人気ある作家たちの間により多くの競争を生み出したのだが、同時にそれは新たな作家たちがより容易く出版できるようになり、読者たちはより幅広い書籍が購入できるようになったことをも意味していた。

しかしながら、現在進行中の変革は、小説家たちがより険しい道に直面することも意味する可能性が強いように思われる。自分の著作を無料で配ることはこれまでにないほど容易くできるのだが、読者たちにお金を出してもらおうとするのは今後ますます困難になるだろう。他にもさまざまのものがたくさんあり、そちらの認知度もより高まるだろうからだ。いくら自分の作品に自信のある著者であっても、Charles Dickens、Jane Austen、James Joyce、Jules Verne といったゾンビたちの作品がすべて Project Gutenberg から無料で手に入る のを差し置いて、読者たちが自分の作品にお金を払って読んでくれるよう説得しなければならないとは、考えただけでもゾッとすることだろう。(写真の Creative Commons クレジット: sundaykofax on Flickr)

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歴史上の偉大な作家たちの古典的作品は、ずっと以前から印刷された形で入手可能だった。けれども紙に印刷されたそれらの本は、現代の作品に比べて特に安価ではなかった。ところが電子ブックの形ならば、ゾンビの著者の作品の方が圧倒的に価格における利点を持つ。私は既に、これまで一度も買おうと思ったことのなかった本を数冊読んだ。お金も節約でき、文化的教養も身に付くからだ。著作権が切れるに従い(Disney やその他の会社がいつまでも著作権延長に金を注ぎ込み続けなければの話だが)人々が無料のコンテンツ出版を続ける限り、入手可能な無料の電子ブックの貯えは止まるところなく増える一方だ。

それに加えて、印刷と出荷のコストが、紙の本の場合は常に価格に底値を与えてきた。誰も、そのコストを価格に転嫁させることなく本を作って配布することはできなかった。ところが電子ブックの場合は、単価そのものが無視できる程度なので、電子ブックでは価格を非常に幅広く設定することが可能になる。(ただし、もしも Google Books 合意が有効であるのならば、電子ブックの価格にも事実上の底値が存在することになる。)コストが下がったことにより著者たちがより多くの率で印税を受け取れるようになるのかどうか、まだ今の時点では明らかでない。あるいは、価格が下がることで印税率にかかわらず著者が受け取れる印税の額が下がるのかもしれない。これは大体において全く新しい問題だ。これまで何十年にもわたって、著者たちは主に同じ分野での他の著者たちだけを相手に同じ価格の下で競争してくればよかった。ところが今や、著者たちはただ単にお互いに競い合うだけでなく、歴史上の死に切れない著者たちすべてを相手に戦わなければならないのだ。

私が本を一冊読み終えて、さあ次は何を読もうかと考えるとき、私には選択肢がいくつかある。無料の電子ブックを読もうか、それとも(比較的高価な)Kindle 電子ブックにしようか、あるいは Kindle 以外の、もっと安価な電子ブックを読んでみようかと。お察しの通り、私はこれまでに無料の電子ブックをたくさん読んだことがある。ゾンビの著者たちのものも、生きている著者たちがポストしてパブリックドメインで入手できる現代の作品も。また、Kindle 以外のタイトルもたくさん読んだ。私が読んだ Kindle ブックは、大好きな著者たちのものか、それとも他からは手に入らないものかのどちらかだ。同じくらい気に入った2つの本が目の前にあれば、私はやはり無料の方に手を伸ばし、購入しなければならない方は後回しにする傾向がある。何十冊も目の前にあって特に好みに差がないなら、私は「良い」本と思える方に手を伸ばしがちだ。今のところ、その「良い」本はゾンビによる古典的作品である可能性が高い。

例を挙げよう。2009 年の 1 月と 2 月に、私は 7 冊の本を読んだ。そのすべてがペーパーバック本だった。その 3 月から、私は本格的に電子ブックを読み始めた。私の Goodreads 履歴を見ると、劇的な変化が訪れたことが分かる。3 月から 12 月までの間に、私は 14 冊のペーパーバック本と、Kindle から購入した 15 冊の電子ブック、それ以外のベンダーから購入した 8 冊の電子ブック、そして無料の電子ブックを 24 冊(Amazon の Kindle ストアから無料で入手したものも含む)読んだ。

ゾンビたちとの競争 -- 結局のところ、古くて無料の本が容易に手に入るようになったことで、小説家たちにとっての競争環境が既に変化し始めているのは明らかだ。著者たちは、Barnes & Noble 書店の本棚の上で自分たちがもはやただ単に同世代の仲間たちと競争しているだけではなく、 Lewis CarrollMark Twain、その他既に著作権の切れた何千人もの偉大なゾンビたちとも、さらには Cory DoctorowPeter Watts などまだ生きている著者たちが Creative Commons に寄贈した数多くの作品とも、戦わなければならないという事実に次第に気付かされつつある。

ただ、考えてみればちょっと興味深い点もある。プロの作家たちは、たしかに価格の面で非常に不利な立場にある。競争する相手方はもはや印税を一銭も受け取らないからだ。なぜなら、もちろん、彼らは既に死んでいるからだ。でも、それは必ずしも望みがすべて消えたことにはならない。競争こそが革新を生み出す。だが、死んだ人たちはもはやダンスを踊れない... ブログや、ポッドキャストもできない。(写真の Creative Commons クレジット: Hryck on Flickr)

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ならば、今日の著者としては、ゾンビたちの作品や、その他の無料コンテンツに押しつぶされてしまわないために、どうすればよいのだろうか? 一つの方法は、読者たちと手を結ぶことだ。Cory Doctorow は、自分の本の電子ブック版を無料で配ることで生計を立てている。無料の電子ブック版が、紙に印刷した版の販売を促進してくれるからだ。読者との間に関係を構築することが、強制的にお金を払わせるために DRM を使うよりも効果的になることがあり得るということだ。また、さまざまの著者たちがブログ (Laurie R. King)、Twitter フィード (Neil Gaiman)、ポッドキャスト (Spider Robinson)、ユーザーフォーラム (Orson Scott Card)、その他多様な方法を通じて読者たちに繋がっている。彼らはそれぞれに単なるテキストを超えた形での結びつきを構築しようとし、それを通じて読者がお気に入りの著者の作品をサポートしたい気持ちを持てるようにと願っている。

著者の中には、音楽家やオープンソースのプログラマーのページを利用して、例えば商品の販売や、講演の仕事などによる補助的収入の道を開発している人たちもいる。仮想的チップ容器は今ではいたる所に見られるようになった。ただ、それで生計を支えられるほど十分な収入を生み出せるものはまずない。

App Store に iPhone ブックやコミックが爆発的に増えたことは、物語を提示する良い方法がたくさんあることを示している。これには、Project Gutenberg が広めている死に切れない著者たちの長々しい文章も太刀打ちできない。こうした新しいタイプの電子ブックは、より魅力的で興味をそそり、よりダイナミックで面白いものになる可能性を秘めている。(特に、古いものにしろ新しいものにしろ小説なんて退屈だと思う人たちにとって、そう感じられるだろう。)それらはまた、アップデートも可能で、他の電子ブックやアプリケーションに結び付けることもでき、ビデオあるいは教育的活動にリンクさせたり、私たちが考えたこともなかったような方法で活性化することもあり得る。Kindle や、Sony Reader は、ゾンビたちの書いた本に完璧に適している。けれども例えば iPad のような未来の読書機器に出版社たちや著者たちが期待をかけている大きな理由は、今より 以上の ことをしたいと思う人々の期待によって押し動かされている。たとえ、それが具体的に何を意味するのかが今はまだ見えていなかったとしても。ハイパーテキスト小説の最初の作品の著作権が切れるまでには、まだ長い年月がある。

他方、自分はただ 書く だけ、文章以外のグラフィックスなど加えたくない、ファンとの交流に一生懸命になる暇もない、という著者たちもいるが、彼らの生きる余地もきっとまたあるはずだ。ただ、彼らもやはり市場の変化には適合しなければならず、それを具体的にどうすべきか見出した人はまだ誰もいない。

生き残りたければ、走れ! -- プロの(あるいはプロを目指す野心的な)作家たちには、生きにくい時代だ。ゾンビたちが電子ブックのパーティーをぶち壊しつつあり、しかもゾンビたちには情理を尽くして説き伏せるのも無駄だし、(もう一度)殺してしまうこともできない。現代の著者たちには、死に切れない人たちと自分たちとを区別する方法を見つけ出した上で、無料のものが他にいくらあったとしても、それでも自分たちにお金を払う顧客になってもらえるようにと、読者たちを説得する必要がある。その方法としては、コミュニティーウェブサイトに積極的に参加することや、代替のコンテンツを作り出すことなども考えられるが、きっとまだ発明されていない新しいテクニックもあるのだろう。

けれども、SF作家の Charlie Strossのような人たちが直面したように、旧式のモデル、つまり大量の文章を出版社に持ち込んで、その後は次の本の著作に取り掛かるというやり方は、既に困難に見舞われている。長期的に見て、私たちは自分たちが読みたい本を作家たちが今後も書き続けてくれるための方法を見つけ出す 必要 に迫られている。だが、その答は決して楽なものでないかもしれない。それとも、現在の小説市場とそう変わらないものが続くのかもしれない。いずれにしても、何らかの変化が訪れることは間違いない。そして、作家たちは、自分の運命が自分の手の中にあるということを自覚しない限り、将来ほとんどの時間を Starbucks のカウンターで独り過ごすことになり、出版社の社員と向かい合ってカフェラテをすする時間がほとんどなくなる日々が来るのかもしれない。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2010 年 3 月 8 日

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

DEVONthink と DEVONnote 2.0 -- DEVONtechnologies が、同社の書類および情報管理プログラム DEVONnoteDEVONthink にメジャーなアップグレードをリリースした。(DEVONthink には Personal、Professional、Pro Office の3つの種類がある。)双方のプログラムでの変更点の主なものとしては、新設の Welcome Assistant を含むインターフェイスの刷新、階層的グループでタグ付けを好む人のためのタグ付けインターフェイス、PDF への注釈機能の改善、それに Snow Leopard の下でのテキスト置き換えやデータ探知のサポート追加などがある。

DEVONthink 2.0 のみの変更点としては、高度な検索オペレータを含む検索機能の拡張、複雑な検索語句をスマートグループとして保存できる機能、複数のデータベースや書類を同時に開ける機能 (Pro および Pro Office のみ)、回数無制限の取り消し、来たるべき iPhone OS アプリとの同期サポートなどがある。DEVONnote 2.0 にもより高機能の DEVONthink にある機能のいくつかが取り込まれた。その主なものとしては、よく使われるファイルフォーマットのサポート拡張、新設の Finder 風サイドバー、フルスクリーンモード、書類別ウィンドウ、3ペイン表示、スマートテンプレートなどがある。 フルのリリースノートは DEVONthinkDEVONnote それぞれに DEVONtechnologies ウェブサイトで読める。(価格はさまざま、17.5/10.6 MB)

DEVONthink と DEVONnote 2.0 へのコメントリンク:

BusyCal 1.2.2 -- BusyMac が BusyCalの最新バージョンをリリースした。共有機能を内蔵したデスクトップカレンダーアプリケーションだ。今回はいくつかのマイナーなバグが修正され、パフォーマンスの調整が施された。バージョン 1.2.2 ではミーティングの招待状やその返事から BusyCal という単語が削除され、Me カードを添付せず招待状や返事を送信しようとすると警告が出るようになり、繰り返すミーティングを一回だけ削除することができるようになり、Outlook の .ics/.vcs ファイルとの互換性が拡張され、Google アラーム時間がより短いものもサポートされるようになった。また、今回のアップデートで情報パネルが LAN 経由で編集された際に空になることがなくなり、.ics ファイルで ISO-8859-1 と Shift-JIS がサポートされ、Month 表示で To Do ステータスの見やすさが改善し、詳細は分からないが多数のクラッシュのバグが修正された。($40、アップデート無料、6.8 MB)

BusyCal 1.2.2 へのコメントリンク:

Default Folder X 4.3.6 -- St. Clair Software が、開く・保存 ダイアログ拡張ユーティリティ Default Folder X のメンテナンスおよび安定性アップデートをリリースした。バージョン 4.3.6 では Adobe Creative Suite、Microsoft Office、Mozilla Firefox など Carbon ベースのアプリケーションの中で最近使ったフォルダの処理を改善し、Gmail でファイルを添付する際や YouTube でビデオをアップロードする際などに使う Flash や AJAX によるダイアログのサポートを追加、また自動アップデートチェックに Sparkle を使うようになった。今回のアップデートではまたどんなファイルでもこのプログラムの Dock アイコンにドラッグすれば情報を見られるようになり、Mac OS X 10.4 との互換性を改良し、サイドバーのデフォルトの最小サイズを設定できるオプションを追加し、多数のマイナーなバグ修正や改善も加えた。(新規購入 $34.95、アップグレード $14.95、2007 年 6 月 1 日以降にバージョン 4.x か 3.x を購入した人は無料アップデート、9.7 MB)

Default Folder X 4.3.6 へのコメントリンク:

Mactracker 5.1 -- Ian Page が Mactracker の最新バージョンをリリースした。Apple ハードウェアに関する詳細な技術情報を提供するフリーウェアのユーティリティだ。今回のアップデートでは、機種と機種の違いをユーザーが手軽に調べられる Compare 機能を新設し、仕様の項目を検索するエンジンを改良し、20 インチの mid-2009 iMac と、来たるべき iPad とを新たにリストに加えた。この最新バージョンではまた Snow Leopard の下でプログラムを走らせた場合に起こっていたクラッシュのバグや、特定の文字を使った場合に検索結果が正しくなくなっていた問題、その他いくつかのマイナーな問題にも対処が施された。

Mactracker 5.1 へのコメントリンク:

Mailplane 2.1.5 -- Uncomplex が、同社の Gmail 用 WebKit ラッパー Mailplane にいくつかの修正や改善を加えたマイナーなメンテナンス・アップデートをリリースした。この最新バージョンでは Gmail が最近になって拡張した「別ウィンドウ」機能、つまりマルチタスクがより素早くできるようにユーザーが複数の Gmail ウィンドウを開ける機能がサポートされるという、非常に歓迎すべき改善が施された。また、今回のアップデートではメインウィンドウが隠された場合に Growl 通知が開かなかった問題が修正され、Flash 10.1b3 を使用中にも添付ファイルをアップロードする機能が復活し、ドラッグ&ドロップを使った際に起こったメモリリークに対処が施され、AppleScript のバグを一つ修正、その他いくつかの細かい問題を解決している。(新規購入 $24.95、アップデート無料、7.6 MB)

Mailplane 2.1.5 へのコメントリンク:

ProKit 5.1 (Leopard および Snow Leopard 用) -- Apple が ProKit 5.1 (Leopard and Snow Leopard) をリリースした。同社のプロ向けあるいはセミプロ向けアプリケーション (Final Cut Studio、Final Cut Pro、Motion、Soundtrack Pro、DVD Studio Pro、Aperture、Final Cut Express、Soundtrack、Logic Pro、Logic Express) で共有されるシステムレベル・コンポーネントのアップデートだ。Apple によれば、ProKit 5.1 はスクロール動作の不具合、メモリリーク、それから「特定のアプリケーションの警告ウインドウで、インターフェイス要素のレイアウト」に対処しているという。(無料アップデート、32.39 MB)

ProKit 5.1 (Leopard および Snow Leopard 用) へのコメントリンク:


ExtraBITS、2010 年 3 月 8 日

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週私たちが注目したのは iPad 開発の未来をめぐる話題だ。Jeff Carlson は、まだ手にしたことのない機器のために The Omni Group がどのようにソフトウェアを開発しているか、Penguin Books が従来の書籍をどのように超えたものを iPad 上で作ろうと計画しているかを紹介する。また、Adam が Your Mac Life で Shawn King と対談して iPhone のマルチタスクについて議論し、DMCA 濫用の歴史を EFF がリストにした。

Adam、Your Mac Life で iPhone OS のマルチタスク処理を議論 -- Your Mac Life ホストの Shawn King は普段の自分ならばマルチタスクのような話題が出ると気分が乗らなくなってしまうと認めたが、今回は私たちが「マルチタスク」という言葉を使うときに何を思い浮かべるか、iPhone OS でそれがどんな風に今後サポートされるか(あるいはサポートされないか)という話で大いに盛り上がった。

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EFF、DMCA の生み出した予期せぬ結果の 12 年間を分析 -- EFF にいる私たちの友人たちが、DMCA (1998 年の Digital Millennium Copyright Act、デジタル・ミレニアム著作権法) による回避防止策の結果として、表現の自由や科学的な研究が侵害されたり、公正使用が攻撃を受けたり、競争や革新が妨げられたり、コンピュータ侵入に関する法律に干渉したり、といった状況が起こった事例をリストにまとめあげた。そろそろ、DMCA を書き換えて、ジャーナリストや科学者、革新する者、そしてすべての私たちが、正当な活動を妨げられることのないようにすべき時ではないのだろうか?

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まだ入手できない iPad のためにデザインする -- まだ市場に存在していない機器のためのソフトウェアを、あなたならどうやってデザインするか? 開発者たちは Apple の Xcode に含まれている iPad シミュレータを使うことができるが、実際の相互作用の主たる方法が指によるタッチであることを考えれば、それでは限界がある。Omni Group がブログ記事で自分たちの使っている方法を披露している。紙で作ったモックアップ模型や、3D プリンタ(これは私たちも Macworld Expo で見かけたが、とてもクールだ)で作ったプロトタイプ、さらにはテーブルソーを使ってサイズに切り取ったグラフ用紙を駆使して、iPad 用の OmniGraphSketcher を設計している様子が分かる。

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Penguin、来たるべき iPad Book のアイデアを披露 -- PaidContent.uk の記事が、Penguin Books の CEO、John Makinson が最近行なったプレゼンテーションを伝える。これは、iPad 上にどのようにしてコンテンツを提供するかについての同社のアイデアをデモ実演するものだ。Penguin 社は書籍を主にアプリケーションとして提供することを計画している。さまざまのマルチメディア機能(インタラクティブな旅行地図、子供用ゲーム、アニメーション付きの教科書の挿絵など)を生かすためのもので、それらの機能は現在 iBookstore で要件となっている EPUB フォーマットに含めるのは困難あるいは不可能であるものばかりだ。記事にあるビデオは必見だ。これを見れば Penguin がどういうものを念頭に置いているかが分かる。書籍の出版者が、iPad やその他の電子的リーダーの可能性に飛びついてくれるのは素晴らしいことだ。そこにはピクセルがありプロセッサがあるのだから、従来から紙の上で利用できるものを単に再現するだけに満足している理由はないではないか。

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