TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1021/01-Apr-2010

Apple ファンたちは土曜日に iPad がリリースされるのを待っているところだが、その待ち時間を過ごすためのさまざまな記事をお届けしたい。Adam は、Apple が App Store に対する批判を解消するためにフランチャイズ契約による小売店運営をさまざまな基準で許可しようとしており、さらに興味深いことに Apple が App Store で Mac 用アプリケーションの販売も始めるだろうという噂を検証する。彼はまた人気の電子メールクライアント Eudora が、Mac にではなく、iPad に復活するという話をお伝えし、Apple が 4 百億ドルにもなった手持ちの現金を使って何をすることができるかと考えを巡らす。その他のニュースとしては、Rich Mogull が iPad なんてただ iPod touch を大きくしただけのものじゃないかという批評家たちの声に対する Apple の答を簡潔に説明し、Jeff Carlson が iPhone OS 機器のパスコードのセキュリティを増すことを狙った新たな MobileMe サービスについて検討する。

記事:

----------------- 本号の TidBITS のスポンサーは: ------------------

---- 皆さんのスポンサーへのサポートが TidBITS への力となります ----


Apple、フランチャイズと Mac アプリケーションで App Store 大変革を計画

  文: Adam C. Engst <[email protected]>   訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple の iTunes グループ内のとある情報源が知らせてくれたところによれば、Apple は非常に人気が高いけれど大きな論議の的ともなっている App Store に、改革を加えることを計画中だという。中でも最も議論を呼びそうな変更はフランチャイズ制の導入だ。Apple の基準を満たした人ならば誰でも、自分で独自のバージョンの App Store を運営できるようになるという。けれども私たちの目から見てもっと興味深い進展は、Apple が Macintosh ソフトウェアをもここに導入しようと計画している点だ。

詳細はまだはっきりしていないが、これまで何度もアプリの却下や削除を巡って批判的な報道が繰り返されてきたことが、Apple 内部に大きな圧力を与えてきたのだという。コモン・キャリアの道や、App Store をすべての者に開放したりする方法をとらずに、Apple は別の道に進むことを選んだ。それは、おそらく Steve Jobs の気に障るであろうアプリを何万も削除するという道だった。彼は、くだらないアプリが溢れかえることなど予想していなかったのだ。

これだけ多数のアプリを削除することを選んだ会社を自己弁護できる立場に立たせるために、Apple の iTunes 責任者である Eddy Cue は、来たるべき iBookstore (ここでは、Apple が iPad 用の本の唯一の供給者ということにはならない) にお手本を求めて、App Store のフランチャイズ制というアイデアを思い付いたのだという。つまり、他の会社が、それぞれ独自のバージョンの App Store を運営し、それぞれ好きなアプリを受け入れればよいということだ。

その情報源によれば、フランチャイズ店は Apple の定めた美観および動作に関する一定の基準を満たさなければならず、アプリの販売は iTunes のようなデスクトップアプリケーションを通じても、あるいは App Store のような iPhone OS を通じても可能となるという。また、フランチャイズ店は自分が配布したアプリがセルキャリアのデータネットワークに何らかのサービス妨害を引き起こしたり、その他広範囲に被害を及ぼすような事態を招いた場合に備えて、何らかの賠償責任条項に同意しなければならなくなる。ここでの目標は、それぞれのフランチャイズ店が独自の受け入れポリシーを定めることができるようにするけれども、マルウェアの可能性を除去するための契約はきちんと設けておくということだ。

結果として、いくつかのフランチャイズ店でこれまで Apple が拒否してきたようなアダルト向けアプリが溢れかえることになるのは間違いないだろう。また、Apple が App Store から削除したがっているアプリの開発者たちからなる顧客基盤をたちまち形成するようなフランチャイズ店も生まれてくることだろう。フランチャイズ店がそれぞれ独自の印税分配契約を結ぶのは自由となるが、すべての売上げから 10 パーセントの印税を Apple が得ることになる。

TLA Systems のアプリ開発者 James Thomson は、予定されているこの計画を歓迎するという意見だった。「このようなフランチャイズ店なら、ようやく私もPCalc から検閲を取り除くことができる」と彼は喜んだ。Thomson は去年、彼の科学技術電卓で汚い言葉を防止するフィルタを付けたバージョンをリリースしたことで話題となった。(2009 年 10 月 1 日の記事“PCalc、iPhone に汚い言葉を食い止める”参照。)彼が作った別の iPhone アプリ Twitkitteh は LOLcat と Twitter を練り合わせたようなものだが、これも Apple の新しい基準に合わないかもしれない。でも、Thomson は決して気を挫かれてはいなかった。「きっと、他の店なら、私の本物のバージョンの Twitkitteh を受け入れてくれるだろう。」

私たちの意見ではこちらの方が興味深いのだが、Apple は App Store に Macintosh アプリケーションを受け入れ始めることも計画している。それらはストアの中の独自のセクションに置かれ、開発者たちはアップロードや管理を iTunes Connect を通じてできる。それは現在 iPhone OS アプリでできるのと同じことだ。開発者たちは引き続き自由に自分で価格を設定でき、Apple 標準の 70/30 の分配率がやはり適用される。ユーザーの側から見れば、Mac アプリケーションの購入・ダウンロード・アップデートはすべて iTunes を通じて、iPhone アプリと全く同じ方法でできる。

Default Folder XHistoryHound のメーカー St. Clair Software の Jon Gotow はこう語った。「App Store の膨大なユーザー基盤の中で活動することを Apple が私たちにも許してくれるということで非常にわくわくしている。Mac ソフトウェア開発者として、私たちは iPhone や iPad の大騒ぎから少し取り残された気がしていたのだ。」

開発者たちは今まで通り自分の Mac アプリケーションを直接あるいは他の再販業者を通じて自由に販売できる。つまり、Apple も単なる再販業者の一つとなるということだ。ただ、販売されるすべての Macintosh に Apple のストアが必ず既にあるというだけだ。私たちの情報源が語ってくれたところでは、Mac アプリケーションを App Store に受け入れるのは必ずしも簡単なことではないという。なぜなら、Apple はここで販売されるものが最高のアプリケーションであることを保証したいので、インターフェイスのデザインやソフトウェアの品質に関して非常に高い基準を Apple が要求するかもしれず、それに応じられる開発者の数はそれほど多くないかもしれないからだ。

St. Clair Software の Gotow はこう続けた。「私たちが通常ソフトウェア開発に注ぎ込むのと同じレベルの出費をアートワークの面にも注ぎ込むようにしさえすれば、その基準に合格する自信が私たちにはある。」

販売の機会が増えることに加えて、独立の開発者たちの中には独自バージョンの App Store を運営することに興味を示す者もいる。Gotow もその一人だ。「独自のストアを開いて、何が良いソフトウェアかを自分で判断できるということは、ありとあらゆる新しい好機に繋がるだろう。」

App Store フランチャイズ店を開くための基準が個人の開発者の手には負えないものである可能性はあるものの、何らかのブランドの付いたサブストアが生まれることは十分考えられると思う。ひょっとしたら Mac アプリケーション自体の中に埋め込まれたストアが出来るかもしれない。そこで、小規模の開発者が、志を同じくする独立系の作者たちの製品を再販するようになるかもしれない。

iTunes Music Store や、来たるべき iBookstore については何も情報がなかったが、私たちとしては App Store 以外にもフランチャイズの機会が広がることを願いたい。私たちも、独自のオンラインブックストアを開いて、自分で価値あるものと判断した本だけを売るということができれば素敵だと思う。それに、iTunes の音楽販売ビジネスに参入できる機会があるのならば自分の祖母にさえものを売ってもいいと考えるサイトは数限りなくあるに違いない。ただ、Apple にはこれら二つのケースについてフランチャイズ制を始めたい気持ちはそれほどないのかもしれない。こちらには既に十分たくさんの競合相手があって、Apple としては高圧的な認可ポリシーに対する批判をかわすことができているのだから。

コメントリンク11131 この記事について | Tweet リンク11131


Eudora が復活... ただし iPad に

  文: Adam C. Engst <[email protected]>   訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

史上最も人気のあった Macintosh プログラムの一つが、今週末 Apple による iPad 出荷とともに復活する。それは、Eudora だ。Steve Dorner が 1988 年にイリノイ大学 Urbana-Champaign 校で生み出した、この敬うべき電子メールクライアントは、1992 年に Qualcomm によって買収され、その後 2006 年に結局終焉を迎えるまでの間ずっとメンテナンスされ続けた。それが今回、無料の iPad 専用アプリとして生き返るという。Qualcomm 社でインターンとして働いていた、まだ大学生の Paul O'Walty という人物が、Eudora グループの改訂管理システムの後始末の仕事をしている最中に偶然 Eudora のソースコードを発見し、それを iPhone OS に移植しようと心を決めたのだった。彼には、とにかくこれを iPad の上でまともに動くようにできるかどうか試してみようというところに主な興味の中心があったという。

伝えられるところによれば Qualcomm は iPad 用 Eudora のリリースに関する契約破棄の手続きを済ませたというが、O'Walty が Eudora コードベースのオープンソース性に依存しつつ iPad の Mail フレームワークも使用していることから、彼は Apple が iPad 用 Eudora を認可するかどうかについて若干の不安を持っていたことを明かした。このアプリは、iPad の Mail アプリの機能性を再現するという性格も持っていたからだ。この Eudora は iPad のみでしか利用できない。iPhone や iPod touch の小さなスクリーンにこれを転換させようとするのは実用的でなかった。

O'Walty が私に送ってくれたベータ版から判断すれば、iPad 上の Eudora は iPad のマルチタッチインターフェイスを踏まえた上で出来る限りクラシック版の Eudora と同じように見え同じように動作するように作られている。標準的な Eudora 機能、例えばメッセージのプレビューパネルにおける内容集積機能(スレッド中のメッセージを引用された内容なしに表示できる)などが、うまく iPad の 1024 × 768 ピクセルのスクリーンに実現されている。考えてみれば、このスクリーンサイズは Eudora が最初に開発された 1988 年時点での一般的なスクリーンサイズよりもずっと大きいのだ。また、Mailbox や Transfer などのメニューも Mac 版とほぼ同様に動作し、他の Mac 電子メールクライアントで見られるようなやたら大きなパネルがスクリーンの面積を浪費するといったことなく、複数のメールボックスへの階層的アクセスが手早くできる。幸いなことに、私が Eudora で一番気に入っていたトリック、メールボックスウィンドウの中でメタデータ部分を Option-クリックすれば類似のメタデータを持つメッセージが選択されるという機能も、iPad に iPad Keyboard Dock または Bluetooth キーボードを使ってキーボードが装備されている場合には利用できる。

Eudora-on-iPad

O'Walty は、前世紀の Eudora コードが iPad 上で走るよう移植する際にいくつか手抜きをしたことを自ら認めた。この iPad 用 Eudora は見栄えも動作もクラシックプログラムのようだが、Eudora の伝統的な、高く評価されている柔軟性のいくつかが抜け落ちている。中でも一番目立つのは、あの必要不可欠のオプション「トレンディーな 3D ジャンクの描画でサイクルを無駄遣いしない」はちゃんと残っている(これをチェックすれば確かに iPad 上で Eudora のパフォーマンスが違ってくる)というのに、Eudora に 1,031 個もあった x-eudora-settings オプションの大部分が元のコードベースから持ち込まれていないことだ。

それでも、筋金入りの Eudora ユーザーたちにとっては、iPad 用 Eudora のリリースが、この新しいコンピューティング機器の上で、なじみ深い、しかも高度に生産的な環境を復活させてくれることになるだろう。

コメントリンク11130 この記事について | Tweet リンク11130


Apple が 4 百億ドルで出来る事

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

毎回の四半期の収益報告で Apple はどれだけの手持ち現金があるかを明らかにするが、この数字は毎回上昇を続けている。1月の 2010年度第一四半期後では、Apple の手持ちの現金と証券は $39.8 billion に達しており、前四半期から $5.8 billion 増加している ("Apple、Q1 2010 で史上最高の売上げと利益を記録" 25 January 2010 参照)。この調子だと、今では Apple の手持ち現金は $40 billion を超えていると思われるが、いずれにしてもこれは大変な額である。

では $40 billion で Apple は何が買えるであろうか?現時点では、同社は現金の上に座り込んで、景気が悪くなった時への備えのためと時折の数百万ドル程度の小さな買収に使うことに満足している様に見受けられる。解説者の中には Apple は Sony や Adobe を買収することも出来ると発言している人もいるが、これは話にならない - Apple は Apple の製品を作りたいのであって、Adobe や Sony が作るようなものには興味は無い。同様に、Apple はコンテンツの会社とか携帯キャリアも買収しようと思えば出来るであろうが、Apple は業者をお互いに競争させることでより低価格を入手出来ているのになぜ自らがやる必要があるであろうか?

Apple が $40 billion の現金で何が出来るかの夢物語を我々が想像するのであれば、我々の考える範囲はそれ程限定されるべきではないであろう。と言うことで、以下が我々が考える Apple がその手持ち資金で何が出来るかのトップセブンのアイディアである。

Mac の次期 CPU を設計する -- Apple は汎用部品のサプライヤーが市場シェアのためにお互いに目をくり抜く戦いをしていることには満足しているが、Steve Jobs は一つの会社に縛られた状態になることは好まず、Intel もその一社である。AMD のチップと言うのも可能性はあると思うが、Apple は iPad の A4 プロセッサを設計した事から学んだ経験を基に Mac の次期 CPU を作るというのは大いにありだと我々は思う。 New York Times の記事によると、白紙の状態からスマートフォン用の CPU を作るにはほぼ $1 billion 必要だと言うから、Mac 用 CPU だとすると更に数ビリオンドル余計にかかるとしよう。それでも、Apple が自分のプロセッサの将来を Intel から切り離せれば、そのかけた費用の二倍の価値はあるのではなかろうか。

データセンターをもっと作る -- Apple は Akamai や Limelight Networks と言ったコンテンツの配信ネットワークに依存することには満足してきているが、更にクラウドコンピューティングサービスに傾注していくであろうことを思うと、間違いなく独自のデータセンターを管理したいとは思っているであろう。Data Center Knowledge の記事,によると、Apple が今 North Carolina に建設中のデータセンターは何と $1 billion かかると言うが、将来のクラウドベースのサービスの性能を高く維持するには Apple はデータセンターを世界中に分散させておく必要があると思わなければならない。$40 billion の一部は、Europe, Asia, そして他の地域に更にデータセンターを増やすために予定されているのはまず間違いないであろう。

iCar を作る -- あなたは iPod を欲した、iPhone にも涎を流した、そして今 iPad をドキドキしながら待っている。でもこれら全ては iCar を前にしては顔色を失うであろう。 Wired は 2002年に車を一台市場に出すには 1 ビリオンドル近くかかると言った、そしてその金額はそれ以来急上昇しているが、Apple には同社の伝説の細部への注意を自動車業界に持ち込むに必要な技術と設計のタレントを買ってもまだおつりが来る金がある。GM の AUTOnomy 燃料電池車は 2002年に Wired が予言した 2010年になってもまだ市場に現れないし、それに同社は首に縄がかかった状態であるが、Apple は高い所を飛んでおりそして物事を正しくやり遂げるためには世の中の常識を無視することも恐れない。是非お願いしたい?

Dell を買う -- Sony を買うのは意味を成さないとしたら、では Apple が Dell を買うのにはどんな意味があるのか?覚えていますか、1997年に Michael Dell が Apple を立て直すには彼なら何をするかについてしたコメントを、"私ならどうするかって?私なら会社をたたんでお金を株主に返すね。" Dell の時価総額はたったの $29 billion しかないので、Apple は Dell を買ってそれを閉鎖しても、まだ何かするため $11 billion が残る。Steve Jobs はまだ根に持っていると思いますか?

芸術的な改善 -- Steve Jobs は創造性を増進する勤務環境を作り出すことを大事にしてきた、そして世界の最も高価な絵画以上に創造性を促すものがあるであろうか?これらの現在の所有者に別れを確信させるには Reality Distortion Field を強める必要があるかも知れないが、$3 billion もあれば Apple はそのキャンパスを (そこは既に印象的なセキュリティを誇っている) Pollack, de Kooning, Klimt, van Gogh, Renoir, Picasso、等々で飾ることが可能である。

Bill Gates を超えて -- Apple/Microsoft の競争は強調すれば Steve Jobs と Bill Gates の間のライバル関係である。しかし、Gates は Microsoft の CEO の地位から引退し Bill & Melinda Gates Foundation の慈善活動により多くの時間を使うということでそのゲームを変えてしまった;Apple が Microsoft を追い越しても Steve Jobs は新しいそしてより良い iProducts を創造すると言う彼の願望を保持するであろうか?もしどうでなければ、Apple は Steve Jobs Foundation に $40 billion を投資することで世界を変えることも可能であり、これだと Bill & Melinda Gates Foundation の $33.5 billion の基金よりもおよそ $6 billion 大きなものとなる。これら二つが慈善事業でお互いに競う合えば世界はどうなるか想像してみて欲しい!

個人の島の半分 -- 商売の一つの基本は高く売り安く買うことである、そして今やあの壊滅的な地震の後の Haiti より安いものは無いであろう。同国はその国のインフラを再建するために $11.5 billion を要請しているが、これは Apple の予算内に十分入る額である。しかし Apple は単に Steve の心の温かさからのみ Haiti を再建しようとはしないであろう;Haiti は世界最大の企業町となり、Apple は厄介な中国との製造契約から脱却することも可能となる。確かに Apple はチップ製造 ($3 billion) と幾つかの製造工場 (疑いなく更に数ビリオン) を建設しなければならないが、労働力はこれからしばらくの間は安いであろう。もっと言えば、更なる $1.5 billion で Apple は世界クラスのスポーツスタジアムも建設できるし、地震帯に位置することから良い考えではないかもしれないが、Port-au-Prince に世界で一番高いスカイスクレーパーの候補となるビルを建設するのは更に $2 billion しかかからない。

宇宙、最後の辺境 -- Space Shuttle 一台を作るのには約 $1.7 billion かかるし、International Space Station の建設コストは Apple がこれまで払ってきたよりはるかに高いであろうが (多分人類がこれまでに建設した一番高額の建造物であろう)、参加国の中には $20 或いは $30 billion で譲りたいと言う国が出て来てもおかしくは無いであろう。なぜ Apple はそれ程の金を使うのか?Steve Jobs は肝臓移植を受けるためかなりの手を尽くさねばならなかった;更に一つ二つの技術パラダイムシフトを見届けるまでこの予知能力豊かな CEO の健康を保つのには無重力状態が効くのだとしたらどうであろう?確かに、馬鹿げていると思えるかもしれないが、Apple の 9 億株にのぼる流通している株を思えば、ほんの小さな株価の下落を避けるためには Jobs をジョブにつけておくための巨額の出費も正当化できると言うものであろう。

コメントリンク11133 この記事について | Tweet リンク11133


新設の Find My Locker 機能で iPhone OS のセキュリティ大増進

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

iPhone も、iPod touch も、そして (もうすぐ) iPad も、皆ホットな所有物だ。だから、盗人にとっては魅力的なターゲットとなる。Apple は時間をかけて大きくセキュリティを増してきた(2009 年 7 月 27 日の記事“iPhone 3GS、すべての人に企業クラスのセキュリティを提供”参照)し、なくしたり盗まれたりした機器に対処する際に役立つ機能も導入してきた(2009 年 6 月 17 日の記事“紛失した iPhone や iPod touch を iPhone OS 3.0 で探す”および 2009 年 9 月 30 日の記事“iPhone から Find My iPhone を使う”参照)が、誰の目にも明らかな弱点が一つあった。それは、Home スクリーンを開くために 4 桁の数字のパスコードを使うというオプションだ。4 桁の数字ということは 9,999 通りの組み合わせがあるのだが、ごくごく基本的なクラッキングソフトウェアでもその程度をこなすのは朝飯前だ。その上、多くの人たちはこの 4 桁の数字にクレジットカードなどの暗証番号に使っているのと同じものをそのまま使っており、もしもこのコードがクラックされれば全体的な脆弱性が増すことになってしまう。

この問題に応えるために、Apple は独創的な代替手段を開発した。デフォルトの方法としては引き続き 4 桁のパスコードがそのまま残るが、追加オプションで新たに MobileMe に設けられた Find My Locker 機能は、あなたがきっと覚えているものを利用して一段とセキュリティを増すことを約束する。このサービスを有効にしておけば(これは機器の上と、 https://secure.me.com/locker にある Settings ページとの両方で設定しておく必要がある)Apple が独自に私的データベースにアクセスして、そこから 6 桁の組み合わせを取り寄せる。何の 6 桁かって? それは、あなたが学校で使っていたロッカーの鍵番号だ!

Image

最初にサインアップした際に、あなたは中学校のロッカーと高校のロッカーのいずれかを選べる。さらにセキュリティ意識の高いユーザーのために、それぞれの学校時代ごとに「体育館のロッカー」というサブカテゴリーも付いている。

Apple がこの機能を私たちのためにデモ実演してくれたとき、控え目な言い方をすれば、私たちは懐疑的だった。けれども、TidBITS セキュリティ編集者 Rich Mogull はこう証言した:「うん、こりゃ驚いた! こいつは、僕が中学 2 年生のとき体育の時間に使っていたロッカーの鍵番号と同じだ!」他のスタッフの面々も、やはり問題もなく昔の番号を思い出した。こういった番号というものは、成長期の時代に数限りない回数刷り込まれることで、記憶の奥底に深く焼き付けられるものなのだ。かく言う私 Jeff Carlson も、体育の授業が終わった後でバスケットボールの試合で一緒だった子に殴り倒されそうになった日の記憶とともに、体育館のロッカーの鍵番号を思い出すことができた。

TidBITS 出版者の Adam Engst は、このテクノロジーにそれほど乗り気でない様子だった。彼は、今でも毎日ランニングに出かける際に中学生時代と同じ番号の南京錠を使っているのだという。彼は言う:「これは、僕の IQ を 5 で割った数であり、僕のヨーロッパ式靴サイズの半分であり、僕が初めて飼った猫の名前を ROT13 変換してから数に変換して出てくる数字を足し合わせたものだ。その答を Apple が知っているなんて、どうにも気が進まないね。」

Apple は私たちが何度も鋭く投げかけた質問、つまりそのデータをどうやって手に入れたのか、なぜロッカーだけという特定のターゲットなのかという質問には一切答えようとしなかった。何度問いかけても、そのスポークスパーソンは「壁に耳ありです。誰に聞かれるか分からないこんな場所で、そんな質問はしない方がいいですよ」と言うばかりだった。

ただ、Apple は一つのことだけは答えてくれた。まだ中学校に行ったことのない子供の顧客にはどんな番号が割り当てられるのかという質問の答は、その場合はその子たちが将来中学校に行った時に使うことになるロッカーの鍵番号になるというものだった。

コメントリンク11134 この記事について | Tweet リンク11134


Apple、big iPod touch を発表

  文: Rich Mogull <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

iPad なんて、ただ iPod touch を大きくしただけじゃないかという批判を黙らせようという努力の一環として、Apple は "big iPod touch" と呼ばれる新しい機器をリリースしようとしている。これは、Apple が本日 4 月 1 日にオンラインの Apple Store をアップデートし次第予約注文の受付が開始されるはずで、機種としては 8 GB、32 GB、64 GB の三種類がそれぞれ $399、$499、$599 の価格となる。

Apple スポークスパーソンの John Bigboote はこう述べた。「私たちが 1 月に iPad を発表して以来、これをただの大型の iPod touch (big iPod touch) だと誤解する批評家の声が聞こえていた。けれどもそれは真実とはほど遠い。そこで、モバイル製品ラインの穴を埋めるため、またそのような誤解を生まないようにするためにも、本日私たちは本物の big iPod touch を発表することにした。Apple は顧客からのフィードバックを真剣に考えており、iPad 発表に対する反応に基づいて、大型の iPod に対する需要が確かにあると私たちは理解したからだ。この big iPod touch は本日から予約注文を受け付ける。」

この新しい big iPod touch は大きさは iPad と同じだが、プロセッサ、メモリ、オペレーティングシステムについては現行の iPod touch と同じものを用いている。互換な iPhone OS アプリケーションはすべて動作し、画面は大きなスクリーンサイズに拡大されるが、ただ iPad 専用のアプリケーションはサポートしない。この big iPod touch の筐体は iPod touch と同じプラスチック複合材を用いており、iPad のアルミニウム製構造とは異なる。

Bigboote は私たちにこう語った。「Apple の観点からは、この発表の持つ最もエキサイティングな要素は、私たちが記録的な短期間で big iPod touch を市場に出すことができたという点だ。そのためにハイエンドの Mac Pro ワークステーションで走るプロプライエタリの Mac OS X ツールが大きな役割を果たした。」ある情報源によれば、Apple のエンジニアたちがこの製品をデザインした手順は非常に手早いもので、それは、まずエンジニアリングの図表を Apple 社内専用のコンピュータ支援デザイン用ソフトウェアにロードし、その後はただただ回線図が十分大きくなるまで Command-+ を押し続けるだけ、というものであり、このような機能を提供できる Windows ベースの CAD パッケージは存在しないとのことであった。

このようなデザイン過程を採用した結果、スクリーンの解像度は 480 × 320 ピクセルのままだが、個々のピクセルが拡大されることによって全体が物理的な大型スクリーンを占めるようになっている。初代の iPod touch は 3.5 インチのディスプレイを持っていたが、今回の big iPod touch は iPad と同じ 9.7 インチスクリーンを持つ。もう一つ、デザイン過程の副産物と言えるのがヘッドフォンコネクタだ。コネクタがリサイズされたため一般的なミニジャックのプラグではなくより大きな 1/4 インチのフォノプラグを使うようになっている。つまり、ハイエンドのオーディオファン向けヘッドフォンを使っている人はそのままアダプタなしでよいが、標準的な Apple イヤーバッドを使うには 1/4 インチからミニジャックへのアダプタが必要で、これは Apple Store から $22 で別売される。

プレスリリースの中で、Apple CEO の Steve Jobs はこう述べた。「本当の意味でスペシャルなこのスクリーンデザインの利点は、iPod touch 用アプリがネイティブにこの機器で、画像をスケールすることもなく、また画面に黒い枠を追加することもなくそのまま走ることだ。適切な距離だけ顔から離してこの機器を持てば、魔法のように画像は一つとなって極上の体験ができる。」今年で 55 歳になる Jobs は、スクリーンサイズと解像度こそが big iPod touch と iPad をはっきりと区別する特性であって、ベビーブーム世代(団塊の世代)の人々から声が挙がることの多くなってきた大ピクセルサイズ機器への市場の需要を満たせるものとなっている、と断言した。

俳優であり、作家であり、時にはテクノロジー評論家でもある Stephen Fry はこんなコメントを寄せた。「そうだね、俺が自分の本にササッと目を通す代わりに、覗き屋みたいに大口を開けてじーっと見つめているのを見て、出版社のやつは俺の頭やら肩やらをポンポンと叩いてくれるけど、急激に年をとった感じがし始めている俺たちの世代って、Apple が big iPod touch を出してくれるのは大歓迎なんじゃないかな。部屋中を眼鏡を求めて捜索する必要なしに使える機器なら、俺は諸手を挙げて大喜びだね。」Fry は 52 歳だ。

もう一人の業界アナリスト、この人物は何の理由か知らないが匿名を希望しているが、彼か彼女か分からないこの人物も同意見だった。「これもまた Apple による巨匠の一筆だ。iPad 批判者たちを一発で黙らせ、製品ラインに空いたばかりの穴を埋め、しかも特に裕福な世代の人々に対して即効的な魅力を持っている。」Wall Street のアナリストたちは、big iPod touch が最初の一週間に 1,500,000 ユニットの予約注文を得るだろうと予測している。

けれども、Apple 世界全体としての反応は必ずしも肯定的とは言えなかった。その発言がしばしば引用される Apple 懐疑論者の Rod Benderleaf は自身の Tumblr ブログのなかでこう記した。「これまでの iMac、iPod、iPhone と同じく、big iPod touch にもオリジナルなところは一切見られず、いずれ間違いなく失敗に終わるだろう。カメラも USB ポートもなく、物理的キーボードもないなら、Microsoft から間もなく出る Big Zune や、Linux ベースのネットブックなどと競合することすらできない。」

これに関係した展開として、Apple 噂サイトのいくつかが、また別の新製品が Apple のパイプラインに控えている証拠を掴んだと報じている。最新バージョンの iTunes の内部には、"big iPhone" という名前を持ち、物理的大きさで big iPod touch と一致する、隠されたアイコンが含まれている。また、噂サイトのある情報源は "iMac mini" という名前が使用されていることも発見したといい、そこには極小サイズのキーボードとマウスも付いていたとのことだ。さらには、ラックマウント式の "big Mac mini" で、物理的大きさが Xserveと同じ、しかも電力消費と熱の発生を抑えるため「スペシャルソース」タイプの水冷システムを搭載したものもあるという。

AppleInsider に載った記事で、ペンネーム使いの筆者が次のように書いている。「もしもこれらの噂が本当なら、そして言われている証拠がすべて本物なら、Apple の戦術は素晴らしいことこの上ない! 新たなサイズの選択肢によって製品ラインを完璧なものにすることで、Apple は Apple 批判家たちのマーケットを破壊しつつある。私が特に期待をかけているのは登場間違いなしの 'big iPhone' だ。なぜって、私の手は特に大きいし、私はダブダブのズボンにたっぷりしたポケットが付いているのが好みだから!」

Apple は、いつも通り、噂に対するコメントを一切拒否した。他の製品の可能性についても、さらには本日 4 月 1 日に会社が営業中かどうかについてさえ、ノーコメントという返事だった。

コメントリンク11135 この記事について | Tweet リンク11135

[訳注: お楽しみいただけましたか? 念のため申し添えますが、この号、TidBITS#1021/01-Apr-2010 の すべての記事は、あくまでもエイプリルフールの日のみ、4 月 1 日の、一日限りの内容となっておりますので、あしからず!]


tb_badge_trans-jp2

TidBITS は、タイムリーなニュース、洞察溢れる解説、奥の深いレビューを Macintosh とインターネット共同体にお届けする無料の週刊ニュースレターです。ご友人には自由にご転送ください。できれば購読をお薦めください。
非営利、非商用の出版物、Web サイトは、フルクレジットを明記すれば記事を転載または記事へのリンクができます。それ以外の場合はお問い合わせ下さい。記事が正確であることの保証はありません。告示:書名、製品名および会社名は、それぞれ該当する権利者の登録商標または権利です。TidBITS ISSN 1090-7017

©Copyright 2010 TidBITS: 再使用は Creative Commons ライセンスによります。

Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2010年 4月 5日 月曜日, S. HOSOKAWA