TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1052/08-Nov-2010

今週の驚きのニュースは、Apple が静かに Xserve を販売終了としたことだ。情報処理センターのベテラン、Chuck Goolsbee が追悼の言葉を述べる。iLife 関係のニュースとしては、Adam がカレンダー機能を復活させた iPhoto '11 9.1 のリリースを伝え、Jeff Carlson が iMovie '11 の秘密を 15 個明かす。Lex Friedman は iPad を同期する際の "file not found" エラーの修正方法を説明し、Adam はサーバ監視ツール Simon のリリースを概観する。Sharon Zardetto の新刊電子ブック"Take Control of Safari 5"もリリースされた。それから、Smile の PDFpen と PDFpenPro の DealBITS 割引があり、Simon の当たる新しい DealBITS 抽選もある。今週注目すべきソフトウェアリリースは、TweetDeck 0.36.1、Mac Pro EFI Firmware Update 1.5、Data Rescue 3.1、Adobe InDesign CS5 7.0.3、Logic Express 9.1.3、PopChar X 5.1、それに TwitExport 2.0.1 だ。

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iPhoto '11 9.1 でカレンダーが戻る

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Apple の iPhoto '11 でのカレンダーを作成そして印刷することのサポートの欠落は奇妙だったし、同社は最初、このカレンダーサポートは "すぐに" 復帰するであろうと言うだけであった ("iLife '11 がアプリを3つアップデート" 20 October 2010 参照)。新年を迎える直前のホリデーギフトとしてのカレンダーの人気を考えて、我々はこのホリデーシーズンにカレンダーを造ろうと考えている人は誰でも iPhoto '11 にアップグレードするのは延期した方が良いと進言せざるを得なかった (それに、9.0 リリースで写真が消し去られてしまう原因になったバグも助けにはならなかった)。

幸いにして、iPhoto '11 の初期リリースから二週間後に iPhoto '11 9.1 が Apple の "すぐに" を現実のものとした。これはまたあの写真が消されてしまうバグを修正した 9.0.1 リリースから一週間も経たないうちであった (これはあるサイトによると iPhoto Library パッケージ内でのアクセス権の不正と関係していた可能性ががある)。この新しいバージョンは Apple の Web サイトから直接ダウンロード出来るし、或いは Software Update 経由でも可能である。

Apple が言うには iPhoto 9.1 はカレンダーを作成し注文出来る能力を提供するだけではなく、追加の活版印刷ホリデーグリーティングカードテーマも使える様にする。この他の唯一言及されている変更は、MobileMe 或いは Flickr からダウンロードされたビデオが iPhoto イベントに正しくインポートされないと言う問題に対する修正である。

正直、私は私のメインの Mac 上の iPhoto Library をアップグレードして、これらの変更点に通り一遍ではなく踏み込んで見るのが楽しみである。と言うのもこれ以前は、私のカレンダーギフトの計画を台無しにしてしまうかもしれないアップグレードなどやってみようとも思わなかったからである。

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iPad 同期エラーに関する予想外の解決策

  文: Lex Friedman <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

大体において私は私の iPad をそれ程しょっちゅう同期するわけではない。一回の充電でかなり長持ちするし、それに殆ど常に Wi-Fi ネットワークにつながっているので、夜に充電器につないでアプリのアップデートを機器に直接ダウンロードしてしまう方が手軽であり、ともすると iTunes と同期できると言うことをすっかり忘れてしまいがちである。

と言うことで、同期すべき沢山の新しい音楽や他のメディアを持っている時は、この作業にはかなりの時間がかかる。iTunes は必然的にその機器をバックアップしようとし - これはありがたいと思う - そして全てが正常な状態にあることを確認しようとする。しかしながら、最近になって同期する時に極めて不愉快な問題に直面し始めた:良く分からないエラーが起きて同期の作業を完了前に止めてしまうのである。私が同期しようと試みる度に、繰り返し繰り返し iTunes は以下のメッセージを出して来た:

"'Lex's iPad' の iPad は同期できません。必要なファイルが見つかりません。"

私の目には、このエラーメッセージは二つのはっきりした特徴をもっていると見えた:

  1. これでは屁の役にも立たない。
  2. Google 検索は出来そうだ。

そこで、解決策を見つけようとインターネットを検索した。分かった事は、このまずい表現のエラーの真の犯人は、事もあろうに、iPhoto だったのである。Apple は極めて簡単なサポートノートを掲載していた、"iPhone または iPod touch に写真を同期する際の問題"、これで私にはこの問題を解決するヒントが浮かんだ。

写真をあなたの iOS 機器に同期する時、iTunes は iPod Photo Cache と呼ばれる隠れたフォルダを作成する。これは、あなたの写真を iPhone, iPod touch, そして iPad のために最適化するためにデータを取り込む所である。

解決策? この iPod Photo Cache フォルダを削除するのである。

このフォルダを探すには、まず iPhoto を終了しそれからあなたの iPhoto Library へとナビゲートする。これはあなたのホームフォルダの中の ~/Pictures/iPhoto Library にある。それを見つけたら、それを Control-クリックしそしてそのコンテクストメニューから Show Package Contents を選ぶ。(iPhoto Library はパッケージと呼ばれる言わば特殊なフォルダである。 Show Package Contents はその内容を明らかにする。)

そのフォルダの中に、iPod Photo Cache フォルダを見つけられるはずである。そうしたらそれを Trash にドラッグする。(もしあなたが定常的なバックアップを取っていないなら - まず第一に自らを恥ずべきである、しかし第二には、iPod Photo Cache を単に Desktop にドラッグして、すぐに屑篭に入れないという方が良いかも知れない。いずれにしても、iTunes が容易にこのキャッシュを再生成出来ると言う事がこの解決策の目玉である。)

それからまた iPod Photo Cache は膨大な不必要なデータを含んでいることもあり得ることを覚えておいた方がいい;Adam Engst も彼の iPad を同期する時同じ問題に遭遇していた、そして彼の iPod Photo Cache は彼がそれを消去する時点で 11 GB を超えていた;再生成されたコピーは 2 GB よりも小さい領域しか占めていなかった。もし iPhoto からの写真同期から、他のフォルダからの同期に変更するのであれば、ディスクスペースを取り戻すため手でそのフォルダを削除すべきである - Apple の "iTunes:写真を同期すると、「iPod Photo Cache」フォルダが作成される" サポートノート参照。

一旦 iPod Photo Cache フォルダにメスを入れた後は、iTunes を再起動する。あなたの iPad を Mac に接続し、サイドバーに出てくるその名前をクリックする、そしてメインの iTunes ペインで Photos ボタンをクリックする。どのアルバム、イベント、そして顔を同期したいのか再設定する必要がある。完了したら、あなたの iPad を同期するため Apply ボタンをクリックする。そうすると iPad 上の写真は置き換えられますという警告が現れる;心配しないこと、何故ならば置き換えられるべき写真全てはあなたの Mac から元々来たものだからである。同期は速やかに進行するはずである (但し iTunes は全ての写真を再度最適化しなければならないので、時間は少々かかるかもしれない)、しかし全てが終った時は、祝杯の時である:あのエラーメッセージはもう過去のものでしかない。

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私は未だにこのエラーが何故或いは何時起こるのか、またどうやって予防するのかも理解していない。しかしこの回避策はあまり痛みを伴わないし、それにこのエラーが再度起こる頻度も稀であるので、それに考えを及ぼす事もしていない。

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Simon 3.0、サーバの監視をもっと緊密に

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

もしもあなたが何らかの種類のインターネットサービスを監視する必要があるなら、あるいはウェブページの変更を監視するツールが欲しいなら、Mac でそれができる有力製品は何と言っても Dejal Systems の Simon だ。そしてこれが今、バージョン 3.0 にアップデートされた。2003 年以来ずっと開発され、メジャーアップグレードとしては 5 年ぶりとなるが、この Simon 3.0 はユーザーインターフェイスに磨きをかけるとともに、フィルタの概念によって機能を拡張することにより、テストの結果を分析してさまざまな方法でそれに作用を施すことができる。私はもう長年 Simon を使って私たちのサーバを監視させているが、正直言って、これなしにやって行くことなど考えられない。なぜなら、サーバの問題に気付いた人たちからそれぞれまちまちな時間に知らせを受け取るよりも、Simon から直接サーバの問題の報告を受ける方がずっと都合が良いからだ。

インターフェイスの面では、Simon は Monitor ウィンドウに Activity ログを含めるようになって、従来の Notifications Log はなくなった。個々のテストが開始されたことを示す通知も引き続きここに含まれるが、それに加えてユーザーが開始したアクション、例えば編集、一時停止、その他もこのログに記録される。また、エディタウィンドウ(ここでテストやサービス、通知、その他の指定をする)では開閉用三角ボタンに代わってタブボタンが採用された。最初の Summary タブには他のすべてのタブでの設定内容の要約が表示される。

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けれども Simon 3.0 での最も興味深い変更点は、フィルタが加わったことだ。従来は、Simon はウェブページの特定の一部分が変更されたかどうかだけしか判定できず、その上でそのページの動的な様相、あるいは興味のない様相(例えば広告や、日時の記録、その他)を無視するためのテストを走らせていた。フィルタはその考え方を概念化するもので、一つのページの中の複数の部分を見ることができ、それらの中で単純なテキスト照合または grep を用いてテキスト検索をしたり、見つかった数字を分析したり、といったことができる。さらに、フィルタを別種の処理能力と組み合わせることもできる。その上また、Script フィルタを使えばテストの結果を AppleScript、シェル、perl、あるいは Python のスクリプトに送ってさらなる操作を施すこともできる。これは決して本気でお勧めしている訳ではないのだが、例えば Simon 3.0 を設定して Apple の株価を含んだウェブページを監視させ、その株価が一定のレベル以下に下がれば、自動的に株式仲介人にあてて 100 株購入するようにという Twitter ダイレクトメッセージを送信する、といったようなことまでできる。

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それ以外にも多数の改善点が Simon 3.0 のリリースノート にはリストされている。主だったところを挙げれば、クッキーの処理の改善、ホットスポットのポータルページにあなたがログインし終えるまで一時停止して待つ機能、現行の Twitter 認証方法のサポート、ログ保存機能などがある。さらに、新設のサービスによって FileMaker Server が動作中かどうかをテストできるようになり、またあなたの Mac 上でどのアプリケーションがインターネットを使用中かをチェックできるようになった。

これだけパワフルになったにもかかわらず、Dejal Systems では柔軟なライセンス体系を用意して、ほんの数種類のテストしか必要としない人たちが安価に Simon を利用できるようにしている。(また、2010 年 9 月 1 日以降に購入した人は無料でアップグレードが受けられる。)Bronze レベルは 15 種類のテストを提供して新規購入 $49、アップグレード $19 だ。Silver レベルではテストの種類が 40 に増えて、新規購入 $99、アップグレード $39 だ。Gold レベルは 100 種類のテストを提供し、新規購入 $199、アップグレード $69 だ。最後に Platinum レベルではテストに制限がなく、新規購入 $499、アップグレード $99 だ。Simon 3.0 は Mac OS X 10.5 Leopard かそれ以降を要し、ダウンロードサイズは 15.6 MB だ。試用版もある。

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"Take Control of Safari 5"、Apple の Web ブラウザを解き明かす

  文: Michael E. Cohen <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Apple が Safari を Mac OS X 10.3 Panther に対するデフォルトの Web ブラウザとしてからもう 7 年を超える。そしてこの間それは、標準対応、マルチプラットフォームの Web ブラウジングアプリケーションの機能豊かな強力なものへと成長してきて、Mac, Windows, そして Apple の iOS 機器のユーザーに対して提供されている。色々な時に、そして色々な会場で、Steve Jobs や他の人達が新しい Safari の機能や能力について披露してきたが、Safari が出来ること全てについて真に詳細な説明をしたものは存在していなかった - 長年の Mac エキスパートである Sharon Zardetto が昨年彼女の本 "Take Control of Safari 4" でこのブラウザについての彼女の解釈を明らかにするまでは。

今や彼女は、リリースされたばかりの大改訂された "Take Control of Safari 5" の中で Safari の最新版に取組んでいる。この本では、更に多くの知識、進言、ヒント、そしてユーザーが活用出来、学べ、そして楽しめる技が提供されている。

この 136頁の "Take Control of Safari 5" (前の版よりほぼ 50頁増えている) で、実際に役立つ知識が得られる。例えば色々なトラックパッドや Magic Mouse の動作が Safari の中ではどの様に働くのか、クッキーはどう扱えばよいのか、そして洪水の様な勢いで開発者達が出してきている Safari の機能拡張をどの様に入手し、管理し、そして安全に使うかである。Sharon は、ブックマークやブラウズ履歴の動きを把握しそしていつでも使える様にする有用な、実践的な方法を提供しているので、あなたが探していたページや情報をいつも見つけることが出来るようになる。この本は更に表面の下にまで潜り込み、Safari の JavaScript Nitro Engine の働きやこのブラウザが揺籃期の HTML5 標準をどうサポートするかについて、洞察を提供している。

そのページの中で、"Take Control of Safari 5" は多くの疑問に答えている、例えば:

Apple が Mac ユーザーに Web ブラウザを提供するために Microsoft の親切心に頼らなければならなかった日々から時代は変わった。今では我々 Mac ユーザーも数多くの有能なブラウザの中から選択できるようになったが、ともすると全ての Mac にバンドルされて届けられる一つのブラウザを見過ごしてしまいがちである。しかしながら、Sharon の本は、ひょっとすると我々が気付かずに放置してしまっている数多くの Web ブラウジングの珠玉を明らかにしてくれる。

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DealBITS 割引: PDFpenPro 5 が 25% 安くなる

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

先週の DealBITS 抽選で当選し、PDFpenPro 5 ($99.95 相当) に "Take Control of PDFpen 5" ($10 相当) を添えて受け取ることになったのは、me.com の Catherine Wiles、gmail.com の David Hori、sbcglobal.net の Jacquelyn Stoler の3名だ。おめでとう! また、sbcglobal.net の David Stoler も、Jacquelyn にこの抽選を紹介してくれたお礼に同じ賞品を受けた。

残念ながら当選しなかった皆さんもがっかりすることはない。Smile ではすべての TidBITS 読者を対象に、2010 年 11 月 19 日までの期間、PDFpen と PDFpenPro 5 を 25 パーセント割引で提供しているからだ。割引で購入するには Smile のストアから注文すればよい。PDFpenPro をカートに入れれば割引価格が表示される。今回 DealBITS 抽選に応募して下さった 1,060 名の皆さんに感謝したい。また今後の DealBITS 抽選もお楽しみに!

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DealBITS 抽選: Simon 3.0 が当たる

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

理由が何であれサーバがダウンするのは厄介なことだ。でも、私たちのサーバがダウンすれば、私としては読者たちから知らせが届き始めるよりも前にそのことについて知りたいと思う。実際、何か事が起こればすぐに知りたいものだ。そうすれば直ちに問題の修正に取り組むことができ、多くの人たちがアクセス拒否に巻き込まれるのをくい止めることができる。私はもう何年もの間、 Dejal Systems 製の Simon を使ってサーバを監視させ、何かが起こればさまざまの異なった方法で、私の Mac 上の音声警告で、電子メールメッセージで、それから Twitter の直接メッセージで、通知させるようにしてきた。それだけではない。Simon はサーバ監視というものを一般的な概念としてとらえ、特定の一つのウェブページが変更されたかどうかを監視するという目的に狭めて利用することもできる。さらにもっと対象を限定して、そのページの特定の一部分のみを監視することさえできる。これは重要なポイントだ。なぜなら、常時変更され続ける動的な要素を含みつつ、そのページのメインとなるコンテンツはあまり頻繁には変化しない、というタイプのページが多いからだ。

Dejal はつい最近、Simon 3.0 をリリースした。これについては記事“Simon 3.0、サーバの監視をもっと緊密に”(2010 年 11 月 5 日) に書いたのでここで詳しく説明することはしないが、もしもあなたが特定のインターネットサービスが動作しなくなった場合に、あるいは特定のウェブページに変更が(例えば株価が変動したというようなことでさえも)あった場合に、それと知りたいと思うような状況を思い付けるとしたら、何はともあれ Simon を検討してみるとよい。これは非常にパワフルかつ柔軟性に富んだプログラムで、一見の価値はある。

そこで、今週の DealBITS 抽選では Platinum レベル(テスト種類無制限)の Simon 3.0 を2本、賞品にする。それぞれ定価 $499 相当の製品だ。ぜひ奮って DealBITS ページで応募して頂きたい。寄せられた情報のすべては TidBITS の包括的プライバシー規約の下で扱われる。また、もしもあなたがこの抽選を紹介して下さった方が当選すれば、紹介に対するお礼としてあなたの手にも同じ賞品が届くことになるのもお忘れなく。

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[訳注: 応募期間は 11:59 PM PST, 14 November 2010 まで、つまり日本時間で 11 月 15 日(月曜日)の午後 5 時頃までとなっています。]

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iMovie '11 に隠された 15 の秘密

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple は iMovie '11 を発表するにあたって、Movie Trailers (予告編) 機能、オーディオ編集の改善、よく使う編集操作を自動化するワンステップエフェクト機能などに、主に焦点を当ててきた。けれどもそれらは単に目玉機能であるに過ぎない。ここでは、この最新版の iMovie であなたが見過ごしたかもしれない 15 の機能やちょっとしたヒントなどを紹介しよう。

縦長の写真を全体表示 -- 縦に長い静止画像を追加した際、iMovie はプロジェクトの横長のアスペクト比に合うよう自動的にトリミングする。つまり、その写真のおよそ3分の1しか見えない状態になる。Viewer に新設された Allow Black ボタンをクリックすれば、写真全体が見えるようになる。(左右に黒い領域ができる。)

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写真が Viewer に登場 -- 写真と言えば、Photo ブラウザでサムネイルをクリックすると、その画像が Viewer に現われるようになり、以前より見やすくなった。また、読み込んだ写真には緑色のチェックマークアイコンが付くようになった。

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巻き上げシャッターの修正 -- あなたの持っているカメラによっては、この新しい機能が非常に役立つかもしれない。静止画像カメラの多くは、CMOS センサーを用いて画像を撮影する。これは、撮影の際に、上から下へと水平の帯に沿って画像を記録する。このテクニックをビデオの撮影に用いた場合、いわゆる「巻き上げシャッター効果」が生まれることがある。動いている被写体が、センサーがフレーム全体を記録し終えた時には既に少し移動してしまっているので、その物体がゴムのようにゆがんで見えてしまうのだ。

iMovie は、この効果を補正する試みができるようになった。クリップをダブルクリックするか、または選択してから I キーを押せば、Clip インスペクタが開く。Stabilization: Smooth Clip Motion チェックボックスをマークしてクリップを解析させる。(既に別途解析済みならば不要。)それが済んでから、Rolling Shutter: Reduce Motion Distortion チェックボックスをクリックし、Amount ポップアップメニューから四つの選択肢 (Low, Medium, High, Extra High) のどれかを選ぶ。

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この機能は決して万能の魔法ではない。Apple は、カメラが左から右へパンして撮影している場合に最もうまく働くと述べている。けれども、そのままでは使いものにならないような手ぶれしたビデオを修正するためにも使える。

並べて編集 --二つのクリップを同時に再生できる Picture-in-Picture 機能が iMovie '09 で導入されたが、片方はスクリーンの隅にある小さなボックスの中に見えるだけであった。iMovie '11 では、同じアイデアを継承しつつ、Side by Side 編集、つまりスクリーンを縦に区切って分割することもできるようになった。プロジェクトの中で一つのクリップを別のクリップの上にドラッグしてから、出てきたアクションメニューで Side by Side を選べばよい。

Clip インスペクタの中で、追加した方のクリップをスクリーンの左側と右側のどちらに置くかが選べる。また、画像をフレームの横からスライドさせるかどうかも選べる。

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Blue Screen -- もう一つの新しい編集機能が Blue Screen だ。これは、ビデオの青い領域を透明にする。iMovie '09 で、Green Screen 機能が導入された。これを使って背景をスワップしたり、その他の効果を施したりできる。緑色の背景で撮影してから、その背景を iMovie の中で画像や他のビデオで置き換えるというものだ。問題は、当然ながら、服装などの中の緑色の部分も同じように透明になってしまうことだ。そこで、緑色の部分の多いものを撮影する場合に使える Blue Screen を、新たな選択肢として追加したわけだ。

iMovie Drop Box -- iTunes に倣って、iMovie も iMovie Drop Box フォルダを持つようになった。~/Movies/iMovie Events にある。Finder で多数のムービーファイルを追加させようと思えば、このフォルダの中に入れておけばよい。次に iMovie が起動した際に、それらのビデオを読み込むかどうか尋ねてくる。

タイトルやトランジションのスタイルをすべて変更 -- 既存のタイトルでスタイルを変更したい場合、クリップの中でタイトルが占めている部分の上に新しいスタイルをドロップすればよい。(タイトルに作用させようとしていることを示すために、ビデオクリップが明るい青に変わる。)今回から、タイトルのスタイルを入れ替えようとした際に、iMovie はたった一つだけのタイトルを置き換えるのか、それともこのプロジェクトの中のすべてのタイトルを置き換えるのか、と尋ねてくるようになった。トランジションを入れ替える際にも同じオプションが適用される。

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タイトルに素早くジャンプ -- iMovie の環境設定で Advanced Tools オプションが選択されている場合、Project ブラウザの右上の隅に Comment マーカーと Chapter マーカーのツールが見えるようになる。これらのボタンのすぐ右にある下向き矢印をクリックすると、あなたのムービーに置かれたすべてのマーカーのリストが出るので、それらのセクションに素早くジャンプできる。iMovie '11 では、このリストにプロジェクトの中のすべてのタイトルも含まれるようになった。

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安定化してプレビュー -- Eventブラウザで安定化のためにクリップを解析した後も、通常はそのクリップをプロジェクトに追加するまでは安定化による効果を目で見ることはできない。Event ブラウザでそのクリップを右クリック (あるいは Control-クリック) し、Play with Stabilization Preview を選べば、安定化後の映像がどう見えるかを確認することができる。

予告編のカスタマイズ -- あなたが作成できる映画の予告編は、含めることのできるクリップの数についてはかなり厳しく限定される。なぜなら、バックグラウンド音楽によって時間的に編集が制約されるからだ。(ただし、映画の予告編を通常のプロジェクトに変換すれば好きなだけ編集を加えられる。それには File > Convert to Project を選べばよい。)予告編のテンプレートの中には、カスタマイズのオプションを提供しているものがいくつかある。

例えば、Pets 予告編では、予告編のテーマを犬にするか、猫にするか、馬にするか、それとも モンスター にするかが選べて、あなたの選択に応じてそれぞれの動物のトラック画像が付属するようになっている。

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Blockbuster、Friendship、Travel の予告編テンプレートでは、登場人物の人数を二人から六人まで選ぶことができる。それぞれの選択ごとに五種類の異なった音楽トラックが付属し、それぞれ正しくタイミングが合っている。

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モールス信号が聞こえる -- 予告編と言えば、冒頭にどのスタジオロゴを出すかが選べる。Signals Across the Globe 予告編では、バックグラウンドに流れる音楽が実は "Made with iMovie" のモールス信号になっている。

予告編のトリビアをもう少し -- あの、地球が回るスタジオロゴは、どこかで見た気がするよね? 法律的な厄介事に巻き込まれるのを防ぐために、Apple はロゴシーケンスの中にあなたが本物の映画会社の名前をタイプできないようにした。例えば Universal とか Paramount とかタイプしようとしても、その単語は3個の点で置き換えられてしまう。

また、予告編のスタイルを選ぶ際に、Action 予告編のプレビューを見てみると、そこに出てくる人物 "Matt" は、実際 iMovie の開発者 Randy Ubillos その人だ。

指定した範囲のオーディオを手早く無音化 -- iMovie '09 では、一つのクリップを手早くミュートできる。一つのクリップ全体を選択している状態で、Command-Shift-M を押せばそのトラックが無音化される。それは iMovie '11 でも同じだが、一つのクリップを丸ごと無音化したくないこともあるかもしれない。その代わりに、クリップのオーディオ波形の中で範囲を選択しておいて、そこで Delete キーを押せば音量レベルがゼロに落ちる。編集済みの範囲で Delete キーを押せば、音量が初期の状態に戻る。

天気予報は曇り -- Blue Marble Globe マップを追加した場合、Clip インスペクタを開いて Show Clouds オプションを有効にすれば地表を覆う雲を示した薄いレイヤーが追加される。また、Show Route Line/Cities オプションで、Indiana Jones 風の旅程線や都市名ラベルをオン・オフできる。

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水平移動のずれを防ぐ -- マウスを水平に動かすのは、iMovie で作業する際に不可欠の操作だ。Project ブラウザの中にマウスポインタがあれば、常にプレイヘッドが表示され、現在のフレームが Viewer に表示される。あなたが水平にドラッグしている際、時にはあなたのポインタが上や下にずれて行からはみ出てしまうこともあるだろう。(そうならないためには、よほど注意してマウスを持つ手やトラックパッド上の指を厳密に水平に動かさなければならない。)それが頻繁に起こるという人は(実は私もそうだが)Option と Shift を押さえながら水平移動するとよい。こうすると、たとえあなたのマウスポインタが上下にずれても、カーソルは行の中心線上に留まって動くようになる。

まだまだ発見はある -- 以上紹介してきたのは iMovie '11 での変更点のうち比較的大きなものばかりだ。このプログラムの動作の細かい点については、まだまだたくさんのいろいろな変更点がある。例えばアニメーションパネルの開閉、分離されたオーディオトラックをコンテクストメニューを使って分割する機能や、iPhone からの直接読み込み機能などもある。予告編機能ばかりが世の注目を集めているようだが、実は今回のバージョンの iMovie は相当に深いアップデートだ。(さらなる詳細は、私が Macworld に書いた記事 "First Look: iMovie ’11" と "iMovie ’11 Review" でお読みいただきたい。)

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Xserve を追悼して: ラックの上で安らかに眠れ

  文: Chuck Goolsbee <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple のXserve は 2002 年の春に生まれ、2011 年の冬に死ぬ予定となっている。そこで、会葬者の皆さんを代表して、この、汚名を着せられ、ついに正しき理解を得ることの叶わなかった Apple 製品に対して、弔辞を述べさせていただきたいと思う。

情報処理センターで仕事をするプロとして、私はこれまで二十年間、サーバの世界にどっぷり浸って生きてきた。クロゼットの中にほんの数台サーバを入れただけのものから、複数の大規模なデータセンター施設に何万台というサーバを分散配置したものまで、私の働いてきた環境は多岐にわたる。私は Apple がこれまでに出荷したすべてのサーバ製品を(一度も日の目を見なかったものも含めて)実際に手で触れて体験してきた。もちろん他のメーカーの製品、例えば Dell、HP、IBM、Sun、さらにはあまり知られていない会社や、今はもう存在しないようなブランドまで、さまざまのサーバ製品を使ってきた。けれどもここで述べる追悼辞はただ私の経験だけによるものではない。なぜなら私は Macintosh Managers メーリングリストを使って業界の多くの同僚たちにこの歴史的出来事についての考えを尋ねてみたし、Xserve やその競合製品、またそれらに先行した製品についても、過去の体験を寄せてもらったからだ。

私たちが一様に到達した結論は、Xserve はもっとよく売れてもよかったはずなのに結局そうはならなかった、というものだ。そもそもの初めから、厄介な足かせがあった。Apple のサポートが中途半端で、デザインも必要最小限、そのソフトウェアも期待に応えられるものではなかった。Apple は「サーバは売れない」と言っていたが、それでも Dell、HP、その他の会社はまさにサーバを売って、販売量も大きく十分な利益を得ていた。ならば、どうして Xserve は死ななければならなかったのか?

Xserve が 2002 年に登場したことは、コンピュータネットワークを管理する私たちにとって驚きだった。Apple は 1997 年にサーバ用ハードウェアの市場から完全に撤退していた。それは同社が「Steve 化」して、サーバラインを丸ごと切り落とし、サーバグループの従業員を解雇した時だった。それ以前の同社には、それぞれ 1993 年と 1996 年にスタートした Workgroup Server と Network Server の製品ラインがあってそれぞれささやかな成功を収めていたが、やはりコンシューマ向けやプロフェッショナル向けの Apple 製品の幅広さに比べれば、きわめて小さな添え物に過ぎなかった。

Apple はいつも、同社が「企業」と呼ぶものに対して、何となく居心地の悪い関係を保ってきた。関係を絶たない程度に興味は示しつつも、教育関係の市場を除いては市場に本格的に取り組んでいる印象を与えられるまでの努力をしなかった。今日でさえ、学校の教室や会社のオフィスにたくさんの MacBook が見られる一方で、かじられたりんごのトレードマークが刻印されたハードウェアをデータセンターの中に見かけることは稀だ。Apple は、大企業向けにどうやってマーケティングし販売するのかのノウハウを知らない。そしてそれこそが、Xserve が苦しんだ原因だった。

けれども、企業向けの市場で Apple に弱点があったにもかかわらず、Xserve の当初の売れ行きは良かった。それは、初期の時代には競合製品に比べて重要な利点を備えていたからだ。初代の Xserve が装備していた PowerPC G4 プロセッサは、素晴らしい計算能力を持ち、その一方で当時の Intel チップと比較して消費電力が非常に少なかった。2003 年に Apple は Cluster Node 版の Xserve と Xserve RAID 形式のストレージアレイを追加した。Xserve RAID は当時、業界で最高の「ドルあたりバイト数」を誇っていた。つまり、最少のコストで最大のストレージ量を得ることができた。それまで Apple 製のハードウェアの使用など考慮したこともなかった会社が Xserve RAID を採用した例も目にしたものだ。著名な計算クラスタが Apple のハードウェアで築かれ、スーパーコンピュータの領域でも認められつつあった。けれどもそうした機器を購入した人たちにとって不幸なことに、Apple の Xserve 製品ラインに対するサポートはまさにこのスタート時点がピークだった。2004 年に PowerPC G5 ベースの Xserve が導入された時以来、いろいろなものが次々とラックのレールから外れ始めた。

ハードウェアの問題点 -- Xserve の基本デザインには、変わりゆくテクノロジーや市場の要請に適応できるだけの柔軟性が備わっていなかった。ラックマウント型のサーバは、主にその高さで測られる。幅は、業界標準の 19 インチラックにより固定されている。(23 インチの幅を持つラックも存在するが、通信関係の設備以外で採用されることはめったにない。)ラックの垂直方向の高さは「ラックユニット」(rack unit は RU と略するが、ただの U と書かれることも多い)、つまり高さ 1.75 インチ (4.4 cm) の、倍数で分割される。一般的なサーバラックの高さは 42 ラックユニットだ。

Apple は Xserve のデザインを 1U とした。つまり高さ 1.75 インチ (4.4 cm) だ。これは計算クラスタにおいては理にかなったものだが、汎用の目的のためには、どれだけ多くのディスクドライブや機能を装備できるか、どれだけ容易に使用し管理できるか、といったことにおいて Xserve には常に限界があった。この 1U というサイズにおける最大の問題点は、多くの顧客の必要に応えられるだけの十分な機能を備えたサーバを作ろうと思えば奥行きをべらぼうに長くしなければならなくなることだ。当初 Xserve は奥行き 28 インチ (71.1 cm) からスタートしたが、その後あと 2 インチ長くなり、サーバ用ハードウェアの奥行き長さとしては業界最長となった。機能が限定されると同時に、奥行きの長い 1U のフォームファクターはデータセンターにおいても具合の悪いものとなった。Xserve だけが、他の大多数のメーカーのサーバの間から突き出してしまうからだ。

私の考えでは、もしも Cluster Node Xserve 以外のすべての Xserve を最初から 2U、つまり 3.5 インチ (8.9 cm) の高さでデザインしていたなら、もっとずっと多目的のサーバプラットフォームとして活躍していただろうにと思う。それならば、サーバの奥行きを馬鹿馬鹿しいほど長くせずに、もっと多くのストレージ量と内部 RAID オプションを備えられただろう。さらに悪いことに、後期の Xserve が搭載した PowerPC G5 や Intel の CPU は消費電力も多くて発生する熱も多かったので、それだけ冷却を必要とした。Xserve に最初からあった 1U のデザインの中に巨大な冷却ダクトを収める必要が生じ、そのためドライブベイを一つ失う羽目になった。2U 筐体のデザインであれば、Apple も CPU をアップグレードし、はるかにもっと大きなストレージ量を提供し、ずっと早くから冗長電源を装備し、冷却を確保し、2.5 インチのドライブベイにも適合し、サーバの前面にポートをずらりと並べることもできただろう。

(今日のデータセンターにおいてはポートを前面に組むことが不可欠だ。いわゆる「暑い通路」つまりサーバの背面は、通常囲いの内側に入れて熱い空気をサーバの吸気から分離するようになっているからだ。人々は「涼しい通路」で作業をし、暑い方には立ち入らないので、ユーザーポートは前面に置く必要がある。)

その他にも、さまざまなデザイン上の問題点が Xserve を苦しめていた:

ソフトウェアの問題点 -- Xserve は Mac OS X Server が付属して出荷され、これを必要とした。そして、その Mac OS X Server における制約とそれに対する失望こそが、何よりも Xserve を徐々にライバルたちの背後へと押しやる原動力となった。けれども、当初は Mac OS X Server に大きな利点が一つあった。それは、Apple がユーザーごとのライセンス料金を課さなかったことだ。2002 年には、それは市場における破壊的な一手であって、乗り換えの動きを進行させるための武器を提供するものとなった。正気と思えないほど複雑な料金体系を持つ Microsoft と比較すれば、Apple の単刀直入なやり方は斬新であるとともに、魅力的なものであった。

Mac OS X Server は、ユーザアカウントの管理、電子メールの設定、ファイル共有、その他の面で Apple の伝統的な顧客ベースの基本的な要求に応えることに関しては、素晴らしく良く働く。けれども、そうしたものを超えた領域に Mac OS X Server を拡張しようと試みた者は誰でも、すぐにその制約を実感することになる。問題は、Mac OS X Server の主要な恩恵が、内部で走っている Unix サーバソフトウェアのためのグラフィカルなインターフェイスを提供する点にあったことだ。残念なことに、Mac OS X Server のグラフィカルな管理ツールへの十分な肉付けは結局実現せず、システム管理者たちはほどなくグラフィカルツールを回避してすべての管理作業をコマンドラインから、あるいはウェブベースの管理ツールから実行する方法を身に付けるようになった。さらに悪いことに、グラフィカルな方法とコマンドラインの方法とは食い違うことが多かった。例えば、Server Admin アプリケーションを使って施した操作の多くが、さらにはアップグレードさえも、コマンドラインで編集済みの環境設定ファイルを上書きしてしまい、しかもその編集部分は Server Admin の中からは編集できないという状況が頻発した。これでは際限なくフラストレーションが溜まるばかりだ。

その結果、多くの人たちが自問自答するようになった。「もしも純粋な Unix コマンドラインによる管理環境に移行した方が良いのならば、いったいなぜ高いお金を出して Xserve を買い、ちょっぴりへんてこなバージョンの Unix を使わなければならないのか」と。そして、多くの人たちが結局最も抵抗の少ない道を選ぶこととなった。すなわち、標準バージョンの Linux か FreeBSD を、どこでも売っているサーバハードウェアで走らせるという道だ。

もう一つの大きな問題は、Mac OS X Server では企業におけるユーザー管理のシステムへの統合が困難なことだ。特に、Microsoft の Active Directory との相性が悪い。その上、Apple は Mac OS X Server の仮想化をなかなか許さず、仮想化環境で走らせる方法についても厳しい制限を適用した。(第一に、Apple のハードウェアの上で走らせなければならない。)この二つの点こそ、今やディレクトリサービスと仮想化サーバが当たり前となっている大規模 IT 環境に Xserve を統合させる際にとてつもない摩擦を生む大問題だ、という声が同僚たちから頻繁に寄せられた。

こうして、2002 年 5 月に大きな期待とともに始まったものが、2011 年 1 月にはついに葬られるに至った。Xserve は、例えて言えば若いアスリートがオリンピックでメダルを目指して競技するチャンスを得ないうちに膝をやられてしまったようなものだ。運が良い方に転がればどんな風になっていたか、誰にも決して分からない。なぜなら、その潜在力に手を届かせる機会が一度も与えられなかったからだ。かつては画期的なテクノロジーであったものが、あっという間に競合相手に抜き去られてしまったのは、Apple が怠慢にも開発を怠ったためであり、ハードウェアとソフトウェアにおける初期の欠陥が、なかなか対処されなかったり、あるいは今日に至っても残っていたりするからだ。

Xserve の終焉に伴って起こる疑問は、はたして Apple が完全にサーバから手を引こうとしているのか、それとも Mac Pro (今回サーバ搭載の機種も販売される) と Mac mini (既にサーバ搭載の機種も販売されている) のみに落ち着こうとしているのか、という点だ。おそらく後者である可能性が高いとは思う。Mac Pro や Mac mini はデータセンターでの使用には向かない(片方は大き過ぎ、片方は小さ過ぎる)けれども小規模なオフィスのサーバとしては問題なく働くからだ。Apple は、PDF ベースの Xserve Transition Guide を提供して、移行の選択肢の概要を示している。簡単に言えば、12-コアの Mac Pro ならばパフォーマンスの面で 8-コアの Xserve と同等またはそれ以上であり、拡張性で優っている。不都合な面として主なものは、Lights-Out Management 環境とデュアル冗長化電源がないこと、消費電力が多いこと、ラック上で膨大なスペースを浪費することなどだ。一方 Mac mini の方は、ただ一つ価格を除いて、ほとんどすべての点で Xserve に大きく水をあけられている。

将来、Apple がサーバをどうするのかは分からないが、今の私たちは、ただ Xserve のために涙を流そうではないか。どうぞ安らかに眠れ、ラックの上で (rack in peace)。[訳注: 安らかに眠らんことを (rest in peace) という弔辞の決まり文句に掛けた言葉です。]

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2010 年 11 月 8 日

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

TweetDeck 0.36.1 -- TweetDeck 0.36 が出た。新しい看板機能は、まるでシャワーのごとくに Twitter 投稿のライブストリーム をあなたの上に降り注がせる。これは、Twitter が「リアルタイム・ストリーミング」と呼んでいるもので、新しい tweet が投稿される度にリアルタイムであなたの TweetDeck タイムラインに登場し、従来 TweetDeck が定期的にチェックを走らせるごとに現われていたのとは挙動が異なる。(定期的にアップデートする挙動の方が好みの人は、TweetDeck の環境設定にあるオプション項目でリアルタイム・ストリーミングをオフにすればよい。)また、Twitter は近日中に舞台裏での tweet の保存方法を変更することにしている が、今回のリリースではそれに対するサポートも追加された。この 11 月末までに、すべての Twitter クライアントはサービスとの互換性を保つためのアップデートをする必要がある。0.36.1 リリースでは、当初の 0.36 バージョンに含まれたバグがいくつか修正された。タイムラインの中での retweet 位置取りの問題、Facebook 投稿や "reply all" 機能での問題点も解消された。(無料、Adobe Air が必要)

TweetDeck 0.36.1 へのコメントリンク:

Mac Pro EFI ファームウェア・アップデート 1.5 -- Apple が Mac Pro EFI ファームウェア・アップデート 1.5 をリリースした。Mac Pro (mid-2010) のすべての機種に推奨される。このアップデートでは、ファームウェアパスワードを要求する画面が表示されない問題を解決するとともに、DHCP を使用しないネットワークに Ethernet が接続されているときに BootPicker が表示されないという微妙な問題にも対処している。Apple の説明によれば、このファームウェア・アップデートを完了するには、インストールが終了してからシステム終了するまで待ち、それから電源ボタンを押し続けて、電源のインジケータランプが点灯するか、長い起動音が聞こえるかするまで待つのだという。いつもと同様、Apple はファームウェアのインストール作業中に電源プラグを抜いたり、システム終了したり、再起動したり、コンピュータの動作を妨げたりしないようにと強く促している。(無料、1.96 MB)

Mac Pro EFI Firmware Update 1.5 へのコメントリンク:

Data Rescue 3.1 -- 確かに、誰もがバックアップを持っているべきだが、実際に誰もが持っているわけではない。そこで、データ復旧がどうしても必要という人たちに嬉しいニュースがある。Prosoft Engineering のData Rescue が、バージョン 3.1 にアップデートされたのだ。今回の新バージョンには多数の新機能や修正が盛り込まれた。このソフトウェアは 64-bit をサポートする Mac でネイティブに走るようになり、Workspace と Home Folder のワークフローがシンプルになり、いくつかのファイルタイプが新たにサポートされ、よく使う機能に素早くアクセスできるコンテクストメニューが新設された。修正点としてはいくつかのファイルタイプについての復旧や消去の問題点、またいくつかの種類のクラッシュなどもある。完全なリリースノートが MacUpdate で読める。(新規購入 $99、無料アップデート、13 MB)

Data Rescue 3.1 へのコメントリンク:

Adobe InDesign CS5 7.0.3 -- 日々の仕事のためにレイアウトの作業をしている人たちに嬉しいニュースがある。Adobe が、IInDesign CS5 をバージョン 7.0.3 にアップデートした。今回の新バージョンには何十もの修正が施されている。主なものを挙げれば、Windows と Mac の混在環境で他のユーザーが使用したファイルの認識に際して InDesign の挙動が向上したこと、さまざまな種類のクラッシュが修正されたこと、ヘルプ検索が再び正しく働くようになったこと、Photoshop 読み込みがより良く働くようになったことなどがある。さらに詳しく修正点を説明したリリースノートが MacUpdate で読める。(新規購入 $699、無料アップデート、24.5 MB)

Adobe InDesign CS5 7.0.3 へのコメントリンク:

Logic Express 9.1.3 -- Logic 愛好家たちの耳には心地良く響くに違いない。Apple が Logic Express をバージョン 9.1.3 にアップデートした。Apple によれば安定性と互換性が全般的に向上し、特に Hyper-Threading のサポートに関連する問題を解決したという。また、最近出された 9.1.2 アップデートにおいてのいくつかの問題点にも対処が施され、いくつかのクラッシュや、Pedalboard ストンプボックスでのバグ、TouchOSC Control Surface プラグインとの互換性の問題などが解決した。ありがたいことに、Apple は詳細な変更点リストを提供している。(新規購入 $199、無料アップデート、139.68 MB)

Logic Express 9.1.3 へのコメントリンク:

PopChar X 5.1 -- あまり普通でない Unicode 文字を探すことが多い人に、幸運のお知らせがある。Ergonis Software から、 PopChar X 5.1 がリリースされた。長年人気のフォントユーティリティに対する今回の最新アップデートでは、Unicode 6.0 へのサポートが導入された。また、ソフトウェア内でのアップグレードオプションの改善、最近使った文字を削除するコンテクストメニュー項目の新設、いくつか「しゃくにさわる」コンソールメッセージの削除(これは私たちが言っているのでなく Ergonis がそう言っているだけだ!)などもこの新バージョンに盛り込まれた。また、今回の 5.1 リリースにはバグ修正もいくつか含まれ、Espresso や Filemaker Pro で文字を挿入する際の問題点や、真夜中に誤ってビープ音が鳴る問題、コンピュータがスリープから目覚めた後に起こった問題、ある種のビットマップ画像をコピー・ペーストした際に問題を起こすことのある Mac OS X のバグなどへの対処が施された。(新規購入 29.99 ユーロ、無料アップデート、2.3 MB)

PopChar X 5.1 へのコメントリンク:

TwitExport 2.0.1 -- Blue Crowbar Software が、書き出し用プラグイン iPhoto2Twitter と Aperture2Twitter を一つにまとめて TwitExport と改名した。これを使えば iPhoto や Aperture の内部から直接 tweet を送信し、現在選択している写真を TwitPic または Mobypicture へのリンクとして含めることができる。(詳しいことは 2009 年 6 月 9 日の記事“iPhoto2Twitter で写真の Tweet を手軽に”参照。) 今回名前を変更したのは、数ヵ月前に Twitter の OAuth 認証方法に切り替えるにあたって Twitter による名前の要件に適合させる必要があったからだ。また、Blue Crowbar ではこの機会を利用してユーザーインターフェイスもかなり改良した。さらに、TwitExport は iPhoto (こちらでは Mobypicture へのムービー共有もサポートしている) にも Aperture にもインストールできるようになった。TwitExport は、iPhoto '08 と '09、それにリリースされたばかりの iPhoto '11 で働く。Aperture については、TwitExport はバージョン 2.1.4、または 3.0.3 かそれ以降を要する。(新規購入 $5.90、アップグレード無料、410 KB)

TwitExport 2.0.1 へのコメントリンク:

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ExtraBITS、2010 年 11 月 8 日

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週はあと三件のニュースをお伝えしよう。iOS 4.1 に夏時間のバグがあるという警告と、Hulu Plus サービスが招待なしで利用できるようになるニュースがあり、それから Jeff Carlson が MacVoices ポッドキャストで iMovie '11 について語った。

夏時間から移行後に iOS の Clock アプリでアラームをリセットしよう -- iOS 4.1 には、夏時間から冬時間へ移行の前後しばらくの間、Clock アプリで繰り返し鳴るよう設定してあるアラームが設定より一時間遅く鳴るというバグがある。Apple は来たるべき iOS 4.2 でこのバグが修正されると言っているが、当面の間は次のようにすればアラームが正される: まず繰り返し周期ですべての日を非選択にし、その状態を保存し、それからあなたの希望通りの日数にアラームの周期を設定し直せばよい。

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Hulu Plus が一般開放 -- 月額 $9.99 で購読するバージョンの Hulu が、従来必要であった紹介状なしに利用できるプレビュー版として一般に開かれた。この Hulu Plus サービスでは、NBC、Fox、ABC 各局の現行および過去の主要な番組のフルシーズン視聴が、iOS 機器では無料のアプリを使って、またコンピュータのブラウザ上では HD (高精細度) で、それぞれストリームされる。

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Jeff Carlson、MacVoices で iMovie '11 を語る -- 先週の MacVoices ポッドキャストで Jeff Carlson が Chuck Joiner と対談し、iMovie '11 の新機能について、また彼の TidBITS 記事"iMovie '11 に隠された 15 の秘密"について語った。Chuck はいつも通り素晴らしい対談相手で、Jeff が巻き上げシャッター、CMOS カメラセンサー、インターレース方式のビデオ撮影などのことをあらためてゆっくり説明したいと思ってもそのまま自由にさせてくれた。

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