TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1100/24-Oct-2011

iCloud、iOS 5、それと iPhone 4S の Siri 機能が今週号のメインの話題だ。iCloud はさまざまな戸惑いを引き起こしたが、その混乱を晴らす大きな力となる Joe Kissell の "Take Control of iCloud" が出版され、既に私たちの電子ブックの中でベストセラーの一つとなるべく売上げを伸ばしつつあることを喜びをもって紹介させて頂きたい。Kirk McElhearn は、あなたが iOS 5 と iTunes 10.5 の組み合わせを備えた場合に Wi-Fi 同期と iCloud バックアップがどのように機能するようになるかを説明する。それから Rich Mogull は、Siri こそがインターネット検索エンジンにとってこれまで直面したことのなかった初めての真の意味での競合相手となるのではないかと考えられる根拠を検討する。また今週号では Jeff Carlson と Michael Cohen がまたもや素晴らしい内容であった Apple の四半期業績発表を報告し、Glenn Fleishman が 2012 年に発売予定の革新的な Lytro 光フィールド(光照射野)カメラを紹介する。注目すべきソフトウェアリリースは Fetch 5.7 と Fantastical 1.1 だ。

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"Take Control of iCloud" があなたの iCloud の質問に答える

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

別に自慢するわけではないが、ここ数年間に Apple がしたあらゆることの中で iCloud ほど私たちに混乱と驚愕をもたらしたものはない。私たちスタッフは長い時間をかけて議論を重ね、複数の Apple ID や、古い Apple ID に関する問題、Lion の走らない Mac を持つ配偶者との MobileMe カレンダー同期を保ちつつ切り替える方法その他、さまざまの問題点について検討してきた。iCloud に何が出来て何が出来ないかを巡ってのよくある誤解(私たちの何人かも誤解をしていた!)に関する記事の原稿さえ、私たちは書き始めていた。

このような混乱の状況の中で、Joe Kissell は頼もしいとっておきのエースであった。Apple 自身の問題点(例えば複数の Apple ID を統合できないこと)は彼にも手出しができないけれども、おそらく彼は Apple 社外で iCloud を最もよく知る人物と言えるだろう。それは、彼が何ヵ月も費やしていくつものベータ版の Mac OS X 10.7.2 Lion と iOS 5 を使いつつ、彼の最新の著書、143 ページある "Take Control of iCloud" を書き続けてきたからだ。この本の中で彼は、あなたが MobileMe を使っていたかどうかに関係なく iCloud を使い始められる方法を説明し、MobileMe ユーザーが iCloud へスムーズに移行できるよう手助けするとともに、いったん使い始めた後には iCloud の各種機能をどのように使いこなすかを教えてくれる。

あなたがこれまで MobileMe を使ってきたにせよそうでなかったにせよ、この本で次のようなことが学べる:

MobileMe からアップグレードしようとしている人たちのために、Joe は次のようなことを説明する:

いずれの人たちも、いったん iCloud への以降をやり遂げた後では、今度は "Take Control of iCloud" を利用して iCloud の核心となる機能の数々が学べる。例えば:

"Take Control of iCloud" は iCloud に対応しているすべてのプラットフォームをカバーしている。つまり、Mac OS X 10.7.2 Lion、iOS 5、Windows Vista および Windows 7、それから第二世代の Apple TV まで含まれる。もしもあなたのコンピュータやデバイスがそれらのオペレーティングシステムを走らせていないならば(あるいは走らせることができないのならば)そこから iCloud に参加することはできないが、この電子ブックにはいくつか回避策も書かれている。

この "Take Control of iCloud" がすべてをカバーしているとは言わない。iCloud はあまりにも新しく、そのため開発者たちからのサポートの意味でも、また Apple からのバグ修正に関しても、あまりにも高速で変化しつつある。けれどもこの本こそ、私たち TidBITS スタッフ全員が今まさに読んでいるところで、MobileMe から移行するベストの方法は何かを学んだり、自分たちのデバイスが iCloud とうまく通信できるようにしたりするために利用しているものなのだ。

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珍しい Lytro 光照射野カメラ、受注開始

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

私が初めて Lytro カメラについて聞いた時、私はきっとガマの油の類か或いはインチキに違いないと思った。写真を撮って それから 結果として得られた画像データから焦点を合わせるだって? そんなことは有り得ない! しかしこのカメラの技術はまともなものであることを知るのに時間はかからなかった。主レンズを通った光の強度と色を独立した画像センサ上に届いた時に捕獲する代わりに、この Lytro は光線の流れをつかみ取るので、焦点面と被写界深度を変えながら画像を再現出来るのである。

このカメラは Q3 2011 には出荷の予定であったが、リリース日は "2012年の早い時期に" として売り出されたばかりである。この機器はその奇抜な特徴を反映して特殊なフォームファクターを持っている:それはカメラと言うよりも短い望遠鏡の様に見える四角形の筒である。LCD のタッチスクリーンが後ろに付いていて、写真を撮る一個のボタンがあり、そしてズーム (8x) スライダーと電源スイッチが付いている。

三色の Lytro がある:赤モデルには 16 GB の内部記憶装置が付いており、$499 で 750 枚の写真を Lytro フォーマットで蓄積出来る。黒又は青のカメラは 8 GB で $399 である。注文は米国内のみで受け付けており、Lytro ファイルを USB 経由でダウンロードし見るためのソフトウェアは最初は Mac OS X 向けだけである。メモリカードスロットは無い。ケーブルなしで画像転送用の Wi-Fi が欲しかったが、USB 接続だけである。

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撮影後に焦点合わせをするというやり方の背後にある技術には 大海原の様な詳細が隠されている。Lytro の発明者である Ren Ng は、この技術を彼の Stanford での博士号研究の過程で開発し、標準の画像センサアレイと主たる標準のレンズの間に一層のマイクロレンズを挟み込んだカメラを造り出した。

個々のマイクロレンズは一種の光照射野捕捉機器として働く。光照射野はただ単に平面に落ちる光だけで成っているのではなく、集まってその光となる光線の集合体から成る。マイクロレンズは個別に画像センサの一部分に入射光を集める働きをする。これらのセンサのグループの集合体がスーパーピクセルを形成する。数十個のピクセルがあれば、色と強度の詳細に加えて光線の方向も抽出出来る。この様にすれば、数百万ピクセルの通常の画像センサが数十万のスーパーピクセルを捉えるセンサとなる。

結果として得られる画像はピクセル数で言えば小さいが (数百 x 数百)、そのデータは全画像領域で好みの焦点面を生成するため (そして被写界深度を調整するためにも) に使われるという特異性を持つ。無限大の被写界深度を持たせることも可能で、この場合全てのものは焦点が合っているが、反対に、ある特定の細部だけを取り出すことも可能である。また一種の立体 3D 効果もあり、ここでは焦点面を動かしてみたり、やり方は限られているが写真をパンしたりも出来る。(この最後の機能が Lytro のビューイングソフトウェアの最初のリリースに含まれるかどうかは現時点でははっきりしない。)

コンピュータアニメーションで使われるのと基本的には同じレイトレーシング技法を使って、Lytro の表示エンジンは一画像を計算する。このエンジンは極めて重要である。Lytro はこの計算表示システムをカメラに内蔵させており、そこではビューファインダーの様に働く。このエンジンはまた Web ページ上で Flash 或いは HTML5 ビューアーとして埋め込むためにも、そしてコンピュータ上で見るためのソフトウェアの中でも利用出来る。

Lytro はコンピュータ写真学の一例といえ、複数の画像を高速に、或いは複数の画像を同時に (或いは両方) 捉えたりすることに使うことが出来、通常の画像調整に一般的に使われるよりももっと高度なアルゴリズムを使ってそれらを結合し不可能と思えるような結果を生み出すことも可能となる。High-dynamic range (HDR) イメージングは広く使われているコンピュータ写真学の最も代表的な形で、色々な露出で続けざまに撮られた複数の画像を結合し、最も明るいから最も暗いまでの色調詳細を持つシーンをほぼ非自然的な効果をもって見せることが出来る。(更なる詳細については 3 September 2011 の小生の Economist の記事を参照されたい。)

私は Lytro を手にするのを待ちきれない、何故ならばこれはスナップショット写真の性格を変えてしまう可能性を持つからである。この技術を使えば、広く開けた (f/2) レンズを使い比較的短い露出時間での撮影が可能となる。これは明かりが十分でない所では役立つが、動きのある写真ではあまり役立たない。自動焦点のための遅延もない。Lytro が言う所によると、シャッターボタンが押された瞬間に写真は撮られるという。しかし全ては出来次第である。賢いことは良いことだが、証拠は写真の中にありである。

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Apple、Q4 2011 に 66.2 億ドルの純利益を報告

  文: Jeff Carlson <[email protected]>, Michael E. Cohen <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

四半期業績発表の電話会見は、Apple CEO (最高経営責任者) の Tim Cook による Steve Jobs の逝去への追悼の言葉で始まった。それから CFO (最高財務責任者) の Peter Oppenheimer が発表を引き継いだ。2011 年度の第4四半期も、もはや Apple の恒例となった通りに素晴らしい決算報告となった。

Apple 自身の今四半期財務見通しでは一株当り利益 5.50 ドルとなっていたが、アナリストたちは一株当り利益 7.31 ドルと予想していた。そのため、今回の発表後に Apple の株価は営業時間外の急落をみた。当日の終値は一株 422 ドル以上であったが、閉場後に業績発表の内容が漏れ伝わるにつれて 400 ドル以下にまで下がった。

個別の製品カテゴリーについて言えば、Mac は今年度最高の四半期成績を記録した。489 万台の Mac が販売され、昨年同期に比べて 26 パーセントの増加となった。Mac の売上げが最も急上昇したのはアジア・太平洋地域で、この地域に限れば Mac の販売台数が驚くべき 61 パーセントの増加となった。Mac の売上げを牽引したのは MacBook Air と MacBook Pro で、これらが Mac 全体の 74 パーセントを占めたけれども、デスクトップ Mac も iMac を筆頭に意外な健闘を見せた。Mac OS X Lion も好調な成績に大きく寄与し、9 月期の間に全部で 600 万件以上のダウンロードを記録した。

iPhone の売上げも、たとえアナリストたちのバラ色の予測には達しなかったとしても、やはり非常に大きかった。ポケットサイズのこのデバイスだけでも 1,707 万台が販売され、昨年同期の数字を二割以上も伸ばした。ますます重要となりつつあるアジア・太平洋地域での iPhone の売上げは、昨年の二倍以上であった。それでもアナリストたちは 2,200 万台の iPhone が売れると予想していたのだ。Oppenheimer は、今は既にリリースされている iPhone 4S が出るだろうという噂と、10 月に入って iPhone 4S をリリースするまでは国際キャリアの追加を行なわないという決断とが四半期の終わり近くに iPhone 売上げの減少に繋がったことは認めた。それは Apple が予期したほどの減少ではなかったけれども、一部のアナリストたちが推測したよりはずっと大きな落ち込みであったわけだ。iPhone の売上げによる収入評価額はおよそ 110 億ドルで、昨年は 88 億ドルであった。

予想通り、音楽プレイヤーの市場が飽和状態にあるため、iPod の売上げは昨年より 27 パーセントの減少をみた。それでも、昨年同期の 910 万台と比べ 662 万台という結果であった。iPod 販売台数のうち半数以上が iPod touch であった。Oppenheimer はこれらの数字が同社の予想を超えるものであったと述べ、iPod は今でも音楽プレイヤー市場の 70 パーセント以上を占めていると語った。

Apple は iPad の売れ行きの勢いに「今もまだワクワクして」いる。今四半期にこの輝く厚板の販売台数は記録破りの 1,110 万台となり、昨年同期の販売台数 420 万台を大きく超えた。スコアを付けている人たちは注目して頂きたいが、何と 166 パーセント の増加だ。iPad と iPad アクセサリのもたらした収入は 69 億ドル、これに対して昨年同期は 28 億ドルであった。iPad が現在 90 ヵ国で販売されていることにも触れられた。

iTunes Store 自体はおよそ 15 億ドルの収入をもたらした。Oppenheimer によれば、これまでにダウンロードされた楽曲は 160 億曲以上、テレビ番組は 6 億 5 千万、iBookstore からの本は 1 億 8 千万冊に達するという。

Oppenheimer は年間の要約で話を締めくくった。2011 会計年度の一年間に 7,200 万台の iPhone と、3,200 万台の iPad、およそ 1,700 万台の Mac が販売された。この一年間に 40 店の Apple ストアが新規に開店し、同社の通年純利益は 260 億ドル(前年に比べて 85 パーセントの増加)となった。

うわさ製造機 (rumor mill) でひかれた粉は -- 大きな発表イベントがある度に、次に来る Apple 製品は何かという噂が必ずまん延する。けれども通常 Apple は業績発表の場で新製品について何か語ることはせず、自分流のコミュニケーション術を押し通す方を好む。ところが今回の発表後の質疑応答の場では、iPhone に関する噂が、オンラインに登場する iPhone ケースのデザインのアイデアの種類よりも多いかと思われるほど活発に口にされた。

Apple が新しいキャリア (例えば Sprint) や、新しい国の追加を、次の会計四半期まで延期したのはなぜか、それが原因で四半期の終わりに iPhone 4 の売上げが急減したのではないか、という質問に対し、Peter Oppenheimer は Apple がすべてのことのタイミングを 10 月の iPhone 4S リリースに揃えたかったのだと述べ、「それに、そうした追加は私たちの最新の製品と共に打ち出したかったのです」と語った。ただ彼はその後で、噂があまりにも「まん延した」ことが最も大きなインパクトを与えたのだとも付け加えた。

その後、どの程度の数の購入が後回しになったと推測するか、と尋ねられて、Tim Cook はお気に入りの言葉を口にした。「実験を二度走らせることはできません。もしも噂がなかったとして、もしも人々が新しい iPhone を期待していなかったとしたらどれだけの個数のユニットを販売できたかなどという数を正確に計ることなどできません。けれども私たちが確信しているのは、それはかなり大きな数だったろうということです。だからこそ私たちはそのことにあえて触れたのです。それに、報道を読んでいた人ならば誰でもきっと同じ結論に達したでしょう。」

その同じ時間枠内に何百万台もの iPhone 4 が依然として売れ続けていたことを考えれば、噂もそれほど深刻に Apple を脅かしたわけではなかったようだ。けれども、このうわさ製造機というものは、間違いなくこの会社の、そしてその重役たちの、レーダーにはっきりと映っていたのであろう。

Apple リテール店の重要性もいや増す -- 成功を収めた Apple のリテール実験も、その発足当時は Gateway がすべての店舗を閉鎖していた時代であった。今や、Apple リテール点は継続的に顧客 (7,750 万人) とお金 (売上高で 36 億ドル) を同社にもたらし、一店あたりの平均売上高は 1,070 万ドルにのぼる。(ただし、前四半期よりは少し減った。)Apple は今四半期に 30 店舗を新たに開店し、そのうち 21 店舗は米国の外のものであった。香港に初めて開店した店舗は Apple ストア開店初日の来客数記録を更新した。

2012 会計年度を展望しつつ、Apple は国際的展開に焦点を当てることをあらためて表明した。次年度には 40 店舗を新規に開店する予定で、そのうち 30 店舗は米国外だ。Oppenheimer は Apple が特に来店者の多い店舗で「期待される顧客体験をお届けするには窮屈過ぎる」ところについては拡張または移転をするつもりだとも述べた。これは特に米国内の店舗について言える。

Apple はここでも業績発表の伝統を引き継いで、リテール店における Mac の販売台数 110 万台のうちおよそ半数が初めて Mac を購入する人たちのものだったと付け加えた。

国際的な力点 -- 4 月の Q2 2011 業績発表では中国やアジアの市場が大きく取り上げられた。(特に、日本の地震と津波の影響に関することも語られた。2011 年 4 月 21 日の記事“2011 Q2 アップルさらに記録を破る”参照。)その地域での企業努力の Q4 における現状について質問されると、Tim Cook は中国における Apple の成長が「目覚ましい」と語った。Apple の売上高のうちこの四半期で 45 億ドル、会計年度全体では 150 億ドルが中国でのものであった。彼は Apple が現在中国圏内にリテール店 6 店舗を持ち、「単一ブランド」の店(「高品質なショッピング体験を提供できる再販業者」)は 200 店舗以上、iPhone 販売拠点は 7,000 以上もあると述べた。「これほど多くの人たちが中流階級に台頭して Apple の作る製品を買おうと一斉に押し寄せる様子を私はこれまで見たことがなかった」と Cook は語った。

その他にも有望な地域はある。ブラジルでの売上げは前年比で 118 パーセント伸び、9 億ドルを超えた。また、ロシアや中東にも大きな好機があると見られる。Cook は iPhone が従来 Apple が強くなかった地域にも市場を開きつつあるとし、今後は iPad も同じ働きをするようになるだろうとも述べた。

アナリストからのアジアについての質問は製造と供給に関するものに集中した。特に、タイにおける記録的な洪水によって、Apple やその他のテクノロジー会社のためにコンポーネントを製造していた工場の多くが閉鎖されたことが取り上げられた。Cook は天候が良くなかったため損害の査定が思うように進まず、復旧のためのスケジュールはまだ見通しが立たないと述べた。彼の予想では主として影響を受けるのは Mac で、業界全体でディスクドライブの供給が不足気味になるだろうけれども、具体的にどの程度の影響が Apple に及ぶかを推測することはできないとのことだった。

他のコンポーネントといえば、Cook は一つ興味深い点を明かしてくれた。彼によれば、Apple は需要に応じるために供給元の数を増やすつもりはないとのことだ。彼は次のように語った。

「私たちのやり方は、これまでも、そしてこれからも、出来る限り少数の人たちを相手にビジネスをするということです。それによって、非常に“深い”関係を続けることができ、素晴らしい革新的な仕事を一緒に進めて行くことができるのです。彼らは、素晴らしい品質を、それほど高くない価格で、我々に届けてくれています。」

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iTunes 10.5 と iCloud で iOS デバイスをワイヤレスに同期

  文: Kirk McElhearn <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

iTunes 10.5 が iCloud に対応し、iTunes Match の到来も今月末に迫ったけれど、今回のバージョンの iTunes に追加された目玉はやはり Wi-Fi 経由で iOS 5 デバイスと同期できる機能だ。メディアファイルやデータを同期するためにいちいち iPad、iPhone、あるいは iPod touch をケーブルで接続しなければならないのはどうしても少し煩わしいものなので、Wi-Fi 同期が可能となれば、直接 Mac に接続する必要なしに iOS デバイスが管理できるようになって、大きな進歩と言えるだろう。では、Wi-Fi 同期と iCloud バックアップをどのように設定してどのように使うのかを、順を追って説明しよう。

Wi-Fi 同期を始めよう -- まず最初にする必要があるのは、あなたの iOS デバイス (iOS 5 が走っていなければならない) をあなたの Mac に接続することだ。その通り、そもそもこんなことをせずに済むようにというのが Wi-Fi 同期を使いたい理由なのだが、最初の一回だけはデバイスをコードで繋ぐ必要がある。接続できたら、次の手順に従う:

  1. iTunes のサイドバーでそのデバイスを選ぶ。

  2. Summary タブがアクティブでない場合は、それをクリックする。

  3. Options セクションまでスクロールしてから、"Sync with this iPhone (あるいは iPad/iPod) over Wi-Fi" にチェックを入れる。

  4. iTunes ウィンドウの右下隅にある Apply ボタンをクリックして変更を保存する。

同期の作業が終わったら、デバイスの接続を外す。すると、接続を外した後も iTunes サイドバーの Devices セクションにまだそのデバイスの名前が消えずに残っていることに気付くだろう。

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(もしも、何かの拍子にそのデバイス名の横にある小さなイジェクトアイコンをクリックしてしまっても、心配することはない。もう一度デバイスをあなたの Mac に接続すれば、またそのデバイス名が現われる。)

ワイヤレスで同期する三つの方法 -- いったん Wi-Fi 同期を有効にしておけば、ワイヤレスで同期する方法が三つある。(もちろん、USB 経由で iOS デバイスを Mac を接続して従来と同様にすることもできる。特に、たくさんの CD をリッピングしたばかり、あるいは映画をいくつか購入した、といったように大量のデータを転送しなければならない場合には、デバイスを USB ケーブルで繋いで、同期が終わるまで数分間待ち、それが終わったら iTunes サイドバーからイジェクトせずただケーブルの接続だけ外しておけばよい。)

Wi-Fi 同期で何か問題が起こった場合(実際多くのユーザーたちが問題を経験しているようだが、私には問題は起こっていない)に備えて、Apple はトラブルシューティングの手順を記したサポート書類を出している。

あなたのバックアップをクラウドに -- Wi-Fi 経由の同期ができる機能とは別に、iOS 5 を備えたデバイスの内容を(あなたの Mac へでなく)クラウドへワイヤレスにバックアップできる機能もある。ただしそのためには iCloud アカウントを設定しておく必要がある。iCloud ベースのバックアップの大きな利点は、あなたが旅行中でデバイスをリンクすべき Mac にアクセスできないときにもデータのバックアップが可能になることだ。だから、旅先でそのデバイスがなくなったり盗まれたりしてもデータを失うことがない。(もう一つの大きな利点は、対応するコンピュータを持っていない人たちにも iCloud バックアップのお陰で iOS デバイスのバックアップができるようになることだ。ただ、この記事を読んでおられる方々の大部分は、少なくとも従来の USB ベースで iTunes にバックアップできるコンピュータをお持ちだろう。)iCloud について詳しいことは、Joe Kissell の "Take Control of iCloud" をお読み頂きたい。

iTunes の Summary タブで、Backup セクションに行き、"Back up to iCloud" を選んで、Apply ボタンをクリックする。この操作はデバイス上ですることもできる。それには Settings > iCloud > Storage > Backup をタップしてから、iCloud Backup をオンにし、それから Back Up Now ボタンをタップする。いったん設定が終われば、Apple の言うところによれば iCloud バックアップはデバイスが Wi-Fi 経由でインターネットに接続されていて、かつデバイスが電源に接続され、スクリーンがロックされている限り、毎日一回ずつ実行される。私の経験では、実際にはいつもその通りにはならないようだったが、ひょっとしたらそれは iCloud のスタート当初の問題点のせいであって、今後は解消されていることなのかもしれない。

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iCloud への最初のバックアップを済ませた後は、Mac にアクセスする必要なしに、iCloud バックアップを用いてデバイスに基本的な機能性をリストアすることができるようになる。iCloud バックアップには各種の設定や、アカウント情報、iTunes で購入した楽曲、テレビ番組、アプリ、本、それからあなたのカメラロールも含まれる。iCloud バックアップに含まれないものとしては、iTunes Store で購入していない楽曲やテレビ番組以外に、映画、ポッドキャスト、オーディオブック、それからもともとあなたの Mac から同期で持ち込まれた写真などがある。これらについては、iCloud バックアップからのリストアを済ませた後にあなたの Mac からもう一度同期させて持ち込まなければならない。iTunes で購入したものは既に iCloud にあるので、バックアップ用にアップロードする必要はない。そのため、例えば巨大な GPS ナビゲーションアプリをアップロードしたりせずに済む。ただしリストアの際にはもう一度ダウンロードしなければならないのは言うまでもない。

iCloud へのバックアップをしたくない場合は、設定を "Back up to this computer" のままにしておけば、従来通りにあなたの Mac へバックアップされて、リストアが必要になればあなたの Mac からすることになる。

バックアップには長い時間がかかるかもしれないので、何をバックアップして何を無視するかを選んでおく方が良いだろう。iOS デバイス上で、Settings > iCloud > Storage > Backup に行けば、ストレージに関するデータも見られる。あなたの iCloud アカウントにどれだけのストレージ容量が割り当てられているか、そして現在どれだけが利用可能かが分かる。それから Manage Storage をタップして、デバイスの名前をタップすれば、あなたのバックアップの詳細情報が出る。言うまでもなく、たくさんのものをバックアップすれば、それだけ多くの iCloud ストレージ容量を使り、バックアップにかかる時間も長くなる。USB 経由で Mac にバックアップするよりもずっと長い時間がかかることを忘れてはならない。

デバイスの Manage Storage 画面には、バックアップデータが最も多くのスペースを占めているアプリ 5 個と、それぞれのデータが占めるストレージ容量もリストされている。それぞれのアプリの名前の横にあるスライダーを使って、どれかのバックアップをオフにすることもできる。"Show all apps" をタップすれば他のアプリの名前と、それぞれが保存しているデータ量を見ることができる。アプリによっては、大量のデータを保存していてもバックアップの必要ないものもある。例えば、私は New Yorker を購読していて、この雑誌のアプリは各号ごとに 125 MB も消費する。私が(よくあることだが)まだ読んでいない号をいくつか溜めていれば、500 MB を超えることだってあり得る。でも、それだけのデータを全部バックアップしたくはない。必要ならばいつでも雑誌をダウンロードし直すことができるのだから、時間とスペースを浪費してわざわざバックアップしても意味がない。そこで、私は New Yorker アプリのバックアップをオフにしている。あなたもきっと同様のアプリでデータをわざわざバックアップする必要のないものをお持ちだろう。そういうアプリについては、バックアップをオフにしても差し支えない。

へその緒を切る -- ご覧の通り、Wi-Fi 同期にしても iCloud バックアップにしても、設定は別に困難ではないし、理解するのも使いこなすも難しくない。すべてがシンプルだということは、裏を返せば Apple がそこに相当の努力をエンジニアリングの面で注ぎ込んだに違いないということだ。こうしたテクノロジーは使い勝手の面であまりにも大きな改善を提供しているので、いったいなぜ Apple が実装するのにこれほど長い時間がかかったのか、想像するのも難しいほどだ。

もしもあなたが iOS デバイスと Wi-Fi ネットワークを持っているのなら、ぜひとも Wi-Fi を試してみて使い心地を試してみるべきだ。一方 iCloud バックアップの方は手元に Mac を持っている人にとってはそれほど切実に必要とは思えないかもしれない。いずれにしても、その USB ケーブルを捨ててしまってはいけない。時として、昔のやり方で同期したくなることもあるだろうから。

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Siri により検索ゲームのルールが変わる?

  文: Rich Mogull <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

破壊的革新の特質として、一般によく誤解されている点が二つある。一つ目は、いわゆる「アハ」瞬間という通説で、たった一瞬に起こる発見と変化が破壊に結び付くというものだ。けれども現実には、ほとんどすべての破壊的革新は長期間にわたるトレンド、研究、投資といったものが積み重なり、最終的にある時点でクライマックスを迎えて変化を生むことにより起こるものだ。iPad は決して真空の中から突然に発明されたものではない。何十年にもわたる研究と失敗の積み重ね、そして漸進的なテクノロジーの進歩との結果なのだ。

これは決して革新の価値をおとしめようというのではないが、例えば電球の発明でさえ、何世紀にもわたって徐々に発展してきた科学があって初めて可能となったものだ。

二つ目の通説は、破壊的な出来事が起これば即座に世界は変わるというものだ。実際には、そうした革新の持つパワーとインパクトを私たちが認識するのは後から思い返してするもので、当初はそうした革新も評価されないことが多い。

破壊的革新とは、漸進的なプロセスであって、変化の起こる時点のずっと前から、またずっと後にも、双方に長い尾が伸びている。けれどもいつも明らかなことがある。それは、その変化の点を境にして世界は決して同じものでなくなるということだ。そして、変化のインパクトを認識するのが早ければ早いほど、ゲームが変わったことに気付かない鈍い人たちよりも優位に立てるということだ。私が思うに、私たちは今、Google が AdWords を導入した時以来初めての、新しい大きな破壊的変化をまさに体験しつつあるのではないだろうか。

検索をめぐる戦い -- 検索マーケットは、この業界の中で最も収益のあがるマーケットの一つだ。特に独占的な力を持つ Google にとってはなおさらで、つい最近同社は百億ドル近い四半期収益を発表したばかりだ。あなたが探している行き先の正確なアドレスを知っているのでない限り、ウェブブラウザを開いた後にあなたが最初にすることはほとんど間違いなく検索だろう。検索結果とともにその内容に関連した広告を出すことは、検索エンジンにとって膨大な収益を生み出す力となるのみならず、多くの会社にとって極めて効果的なマーケティングツールとしての機能を果たす。

検索マーケットの構造はごく単純だ。顧客となる会社はキーワード・購買層・ユーザー履歴などに結び付けられた広告を買う。検索会社は、生の検索結果の正確度を最適化するよう試み、最良のユーザー体験を提供するとともに、ユーザーの活動も同時に追跡して「最適化された」広告を表示する。その目標は、役に立つ検索結果とその人に最もアピールするようターゲットを絞った広告とを組み合わせることによってユーザーたちを惹き付けて、クリックしてもらうことだ。

顧客の会社は、基準の金額にクリック数に応じた追加額を加えたものを支払う。クリックを推進して結局は購入を促進することが目標であるので、検索エンジンがユーザーの挙動や欲求を出来る限り綿密に予測することが非常に大きな誘因となり、そのためにはユーザーの行動を追跡することが必要となる。Google、Bing、Yahoo などの検索エンジンはそのため追跡および広告のいろいろなネットワークに結び付いて、自らが必要とするデータを得るとともに、出来る限り数多くの消費者に手を届かせようとする。

こうして、今日の検索ゲームは広範囲に及ぶユーザー追跡とプロファイリングによって成立し、ターゲット付けされた広告によって資金を得ている。ユーザーにとって、検索の価値は結果の品質だ。ユーザー自身は検索に対して費用を支払っていないので、資金を拠出している側にとっての価値はこれらの検索をクリックへと、そして自らの製品の売上げへと転化させられるかどうかだ。その結果として、ユーザーたちが製品となり、広告費用を支払っている会社がクライアントとなる。その点は、広告により資金を得ている他のどの無料サイトも同じことだ。

言い替えれば、検索マーケットというものは存在しない。存在するのは、広告マーケットだ。

Siri は Think Different (違う考えをする) -- Siri は検索エンジンではないが、いくつか共通した目標を持っている。基本的に Siri は新しいユーザーインターフェイスであって、その目的は単に結果を届けるのみでなく、タスクを実行することにある。

こうして Siri は、まだ生まれたばかりの状態でありながら、アラームを設定したり近所にあるレストランを探したりといったことから、ユーザーの質問を検索エンジンに送るリクエストへと翻訳するといったことまで、コンテクストにより駆動される幅広い種類の活動を実行している。

Siri は、 グルー (glue) だ。つまり、多様な種類のサービスやリソースを集めて、音声で駆動される単一のインターフェイスにまとめ、タスクを実行したり最も関連の深い結果を届けたりするためにどのサイト、サービス、あるいはアプリが最良であるかをユーザーの側で知る必要がないようにしたものだ。理想的には、個々の状況下においてどの基盤コンポーネントが最も目的に適しているかを Siri が判断できるようになっているべきだ。

あなたが Siri に命ずるのは あなたが何を望むか であって、どうやってそれをするか ではない。

検索エンジンは多くのサイトにアクセスしてデータを収集し、結果を検索者に提示する。これに比べて Siri はより広範な種類のサービスに接続し、汎用の検索エンジンに頼るのは最後の手段のリソースとしてのみだ。このことにより、Siri は(理想的な世界においては)より役立つデータをより素早く提供することができる。既に Siri は、レストラン情報については Yelp が、事実のデータについては Wolfram Alpha が、天気情報や地図情報については iOS 独自のアプリが、それぞれ最良のリソースであることを知っている。

Siri は、Apple が焼き付けたサービスと、特定の Apple アプリから取り寄せたデータのみに限定されており、現状ではこれはかなり小規模な集まりに過ぎない。大多数の検索エンジンは同様の協力関係を航空機の運航データや天気情報、映画の上映時刻データなどと結んでおり、地図やその他の機能のために内蔵のツールも備えているが、それらは単に検索結果の長いリストの一番上に表示するためだけのものだ。メジャーな検索エンジンではさまざまの他のサービス、例えば電子メールやカレンダー管理なども提供しているが、それとてやはり、すべてターゲット付けされた広告を届けるという目的に傾斜したものだ。

Siri では、焦点が絞られている。より多様で、より包括的な検索ができる。Siri は タスク指向 だが、検索は 情報指向 だ。Siri はユーザーインターフェイスだが、検索はデータ供給だ。

ゴールは違うがターゲットは同じ -- Siri と、検索会社は、共にあなたとインターネットとの接点をコントロールしようと競争する。検索は、ウェブブラウザとの深い統合によってこれを実現している。(Google の場合は)オペレーティングシステムを丸ごと作るところまで行っていて、その主たる目標はあなたのためのインターネットへのコンジットとして働き、あなたを Google の各種サービスへと追い立てるようにすることだ。Chrome OS と Android を作った Google にとっての価値とは、あなたの活動にアクセスを得るために Google 使用を増やし、よりターゲット付けされた広告を提供できるようにすることだ。

一方 Siri は、iPhone の使い勝手を増すためにデザインされたユーザーインターフェイスであるが、いずれ他の製品にも登場することは想像に難くない。ここではインターネットはそのコンポーネントの可能性の一つに過ぎず、それ以外にデバイス上のデータや、カレンダーやリマインダーといったアプリなどもある。Siri はあなたの活動を追跡してその正確度を向上させようとするが、これは広告を届けるためのものではない。Apple にとっての価値とは、より多くのデバイスを販売することだ。

いずれのシステムもあなたの活動を追跡し分析しているけれども、これら両者は全く異なった財務モデルだ。片方は広告により資金を得ており、もう片方はデバイスの売上げにより資金を得ている。(そしておそらく、両方とも、ユーザーたちを特定のパートナーへと導くライセンスによっても資金を得ているのであろう。)

Siri は検索にとっていかに破壊的か -- Siri は検索を置き換えるわけではないが、多くの場合、統合されたパートナーサービスへとユーザーを直接導くことにより検索を回避する結果となる。あなたが Siri にインド料理のレストランで一番近くにあるのはどこかと尋ねれば、確かに検索は行なわれるけれども、それは Yelp による検索であって、汎用の検索エンジンに Yelp の結果プラスさまざまの他のところの結果を表示させているものとは違う。

検索エンジンを使わずに指定されたソースに直接向かう結果、どこにも広告を挿入する余地がなくなる。現在 Yelp の推薦内容が表示されている通りのやり方で Siri の返答に結果が埋め込まれるのならば、そのプロセスの一部として広告を入れることができる唯一の道はユーザーが手動でそのパートナーサイトへ行くことしかない。

こうして、モデルが変わる。対応する各種サービスのうちいくつかについては、ユーザーが必要とする情報により早くたどり着いたり、ユーザーのためのタスクを完結させたりすることで、Siri の方がより大きな価値を生み出すことができる。Apple にも、より多くのデバイスが売れることでより多くの価値を生み出す。パートナーサイトにとっての価値は、検索エンジンにクリックあたりの料金や、あるいはひょっとしたらライセンス料金も支払う必要なしに、トラフィックの増加をみられるようになることだ。ただしこれらのサイトは独自の広告を入れる機会を失うことで損をするかもしれない。彼らの広告がどのように統合されているかにもよるが。

検索エンジンの方は、トラフィックが減り、ユーザー追跡の量が減り、広告を配布する機会が減ることで、痛手を受ける。Siri が広く採用されるようになれば、Siri 統合のサービスを出しているところと競合中の会社も痛手を受けるだろう。こうして、Apple には信じられないほど大きな力が与えられる結果となる。それは、必ずしも良いこととは言えない。もしもあなたが Yelp の競争相手ならば、あなたは検索エンジンの検索結果に登場する可能性はあるけれども、Siri ユーザーにとってあなたは完全に不可視となってしまう。

もちろん、現在のところは Siri ユーザーの数が少ないので、Yahoo の取り分にこれっぽっちも欠けるところはないだろうし、ましてや Google はびくともしないだろう。けれども私が念頭に置いているのは今年や来年のことではなく、これから五年、十年先の世界がどうなるかという話だ。

もしも Apple がうまく舵を取って、Siri が成功を収めれば、現在検索エンジンを通じて走っているさまざまの活動のうち相当の部分が Siri に奪われ経路を変えられてしまう可能性があるだろう。現時点ではごく基本的な事実を調べたりレストランの推薦を出したりする程度だが、いずれは Amazon に注文を出すことから、カスタマイズされた健康情報を取り寄せたりといったことまで、あらゆることが Siri でできるようになるのも想像に難くない。Siri が賢くなればなるほど、私たちが必要とする情報やサービスをより直接的に提供してくれるようになり、より広範な種類のタスクを私たちのために実行してくれるようになるだろう。

汎用の検索エンジンも決してなくなることはないだろう。けれども、私たちが検索エンジンと直接にやり取りする機会は、きっと今ほど多くなくなるだろう。

もしも Google が Siri を買収していたならば、きっと私たちはそれがもっと幅広いプラットフォームで利用可能となり、またそれが広告で支えられたものとなるのを目撃したことだろう。それはおそらく、現状での検索マーケットのモデルをより拡張するものへと姿を変えていたのではなかろうか。

けれども現実には、Google は Siri を買収せず、Apple が Siri を買収した。そして、確かに Apple も幅広いソフトウェア製品を作ってはいるけれども、Apple の主たるビジネスモデルはやはりハードウェアの販売だ。Apple も確かに広告ネットワークを持っているかもしれないが、その主目的は煩わしい広告を 減らして より多くのアプリ開発者たちを同社のプラットフォームに呼び込むことだ。(それに、iAds は必ずしも Apple の製品で最も成功したものとは言えない。)

それでも私たちはやはり追跡されるだろうし、私たちはやはり検索を走らせるだろう。しかし、広告で資金を得ているビジネスモデルが片側にあり、デバイスの販売で資金を得ているビジネスモデルがもう片側にある。そう、検索というものが誕生して以来初めて、私たちは二つの互いに競合するモデルが争うのを目撃しようとしているのだ。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2011 年 10 月 24 日

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Fetch 5.7 -- 同社の目標である「絶え間ない改善」に沿うように、Fetch Softworks が Fetch 5.7 をリリースしてこの古参のファイル転送クライアントにさらなる磨きをかけた。Fetch 5.7 では条件にマッチするもののみにファイルリストを制限できる検索フィールドが提供され、複数ファイルの転送で全体的な進行状況と残り時間を表示し、アップロードしたファイルの変更日時を保持し、Dropbox や共有ファイルサーバ経由でショートカットを同期し、Show Fetch.log In Finder コマンドを追加し、アップロードされたファイルの名前から末尾の空白文字を自動的に削除するようになり、Quick Look で表示された遠隔ファイルを編集する機能への対応を追加した。また他のさまざまのサーバパッケージとの互換性や、SFTP サイトとの間でのユーザーのやり取り、大サイズの転送の信頼性なども改善された。バグ修正も多数ある。(Fetch Softworks から、または Mac App Store から新規購入は $29、教育関係ユーザーには無料、5.5 またはそれ以降からのアップデートは無料、それより古いバージョンからのアップグレードは $10、11.3 MB、 リリースノート)

Fetch 5.7 へのコメントリンク:

Fantastical 1.1 -- Flexibits が Fantastical 1.1 をリリースした。同社の人気あるカレンダーユーティリティのアップデートだ。今回のリリースでは歓迎すべき新機能がいくつかある。イベントの編集や削除が可能となり、それらにメモを追加したりそれを編集したりもできるようになった。Fantastical は今回から iCloud カレンダーにも対応し、数多くの新しい編集オプションもある。バージョン 1.1 ではまたバグ修正やパフォーマンスの改善もあり、グラフィックスの加速からユーザーインターフェイスの反応性や機能性まであらゆることに効果を生んでいる。(Flexibits から、または Mac App Store から新規購入は $19.99、無料アップデート、1.1 MB、 リリースノート)

Fantastical 1.1 へのコメントリンク:


ExtraBITS、2011 年 10 月 24 日

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple は先週、二時間にわたって会社の全機能を停止して Steve Jobs の追悼式典を行なったが、その模様がビデオで公開された。また今週は MacJury ポッドキャストで Tonya Engst と Jeff Carlson が iPhone 4S について語り、iPhone 4 を用いたハイテクのセキュリティハックのニュースがあり、Dropbox 創設者たちの人物像が語られ、iOS 5 用の新しい AirPort Utility アプリについての記事もある。

Apple の 2011 年 10 月 19 日 Steve Jobs 追悼式典をビデオで観よう -- Steve Jobs が亡くなってから二週間が経ったが、その間に Apple は二時間だけ会社の全機能を(世界中のリテール店さえ)停止して、会社の創設者であり前 CEO でもあった彼を偲んだ。この式典では Apple の重役たちや取締役会のメンバーたちが思い出を語り、Norah Jones や Coldplay による音楽の演奏もあった。(Steve Jobs のイベントは、彼の死後でさえ、必ず何らかの音楽的要素なしには成り立たないのであろうか?)

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Tonya と Jeff が MacJury で iPhone 4S の最初の週末を語る -- Tonya Engst と Jeff Carlson は二人とも、その週末のうちに新しい iPhone 4S を受け取り、二人ともそれぞれの配偶者の持つ AT&T アカウントをクロスグレードする際にアクティベーションの問題に遭遇した。このポッドキャストで、それらの問題が(簡単に)解決した経緯や、この Apple の最新型 iPhone に対する彼らの第一印象を聴こう。

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iPhone を使って近くのキーボードを盗聴できる -- Georgia Tech 大学のこの研究結果は、まるでハイテクのスリラー小説の筋書きのようだ。その研究チームが発見したのは、至近距離にあるキーボードに誰かがタイプしている内容を、iPhone 4 の加速度計とジャイロスコープを使ってキーボードの振動を探知することにより盗聴して、80 パーセントの精度でタイプされた文章を解読できる方法だ。実際問題としてこのようなことが起きるリスクは無いに等しいけれども、これはスマートフォンのセキュリティに対してメーカーとユーザーの双方がますます気を配って行かなければならないことを示す実例となっている。

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Dropbox の裏話 -- Forbes の Victoria Barret が、私たちを含む数え切れない多くの人たちが依存して使うようになったクラウドベースのファイル共有サイト、Dropbox の興隆について、魅力的な記事を書いた。特に興味深いのは、Dropbox の創設者たちが Steve Jobs と会った際の話や、iCloud の将来の可能性に関する彼らの懸念についての彼女の語り口だ。(現時点では、彼らもあまり心配していない。iCloud は個人が自分の持つ複数のデバイスを同期するためのものだからだ。それに対して Dropbox は複数の人たちがシームレスに共同作業できるためにも使える。)

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iOS 5 用の新しい AirPort Utility アプリを使う -- Apple が iOS 5 用の AirPort Utility アプリをリリースしたことにより、ベースステーション設定に関するほとんどの作業でデスクトップ版の AirPort Utility を使わずに済むようになった。このアプリは無料で、ボーナス機能としてあなたのネットワークのレイアウトやベースステーション同士の接続の状態をグラフィックに描いてみせることもできる。Macworld の記事で、Glenn Fleishman が詳しく解説する。

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TidBITS ISSN 1090-7017©Copyright 2011 TidBITS: 再使用はCreative Commons ライセンスによります。

Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2011年 10月 29日 土曜日, S. HOSOKAWA