TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1139/20-Aug-2012

三週間ぶっ続けに Mountain Lion 関係の話題を続けたので、今週はもっと平常の内容の記事に戻ることにした。まず、2012 年 8 月 22 日に予定されている TidBITS Presents イベント "Protecting Your Digital Life" の発表がある。けれどもその日を待つ間の読み物として、Adam Engst が TweetDeck の最新バージョンで新機能によりこのプログラムが劇的に改善されたことを紹介し、また Dropbox の自動アップデート機能が働いていない場合に手動でアップデートする方法を説明する。それから、Michael Cohen は古くなったケーブルモデムのせいでインターネットのパフォーマンスがゆっくりと低下していた物語を語るとともに、Safari 6 でデフォルトのフォントを設定する方法を説明する。このバージョンで、デフォルトフォント設定のオプションがインターフェイスから削除されてしまったからだ。今週注目すべきソフトウェアリリースは、OmniFocus 1.10.3、ClamXav 2.3.2、それに DEVONagent Lite、Express、および Pro 3.3 だ。

記事:

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TidBITS Presents "Protecting Your Digital Life" は 22 August 2012

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

今ではきっと皆さんも、テック作家の Mat Honan がどの様にハックされたかの事例について、耳にされているのではなかろうか。これは Amazon と Apple 側での不適切なセキュリティ方針の組合せに原因があった。このハッカーは 19 才の少年であることが分かり、目的は Honan の三文字の @mat Twitter アカウントを乗っ取ることであった;彼は Honan のアカウントから人種差別のそしてホモ嫌いのつぶやきを発したら面白いだろうと思ったらしい。このハッカーはまた iCloud を使って Honan の iPhone, iPad, そして MacBook に対して遠隔ワイプを実行した。Honan は、iCloud バックアップから iPhone と iPad は修復できたが、彼の MacBook はそれまで一度もバックアップしていなかったためデータの一部を取り戻すため $1700 近くを DriveSavers に支払う羽目となった。

最終的には、Honan は殆ど全部をハック以前の状態に修復出来たらしいが、彼はバックアップとオンラインセキュリティの重要さを学び、この経験から幾つかのためになる話も公開しているので、全てが悪いわけではなかった。しかし、彼は幸運でもあった - ハッカーはずっと多くの損害をもたらすことも可能であったし、そして殆どのオンラインの個人情報盗難の場合、データを失うだけでなく、盗まれたクレジットカード番号、漏洩してしまった銀行口座、そして友人や親戚を狙った悪徳商法からの経済的な影響も発生する。

多くの人は - 我々も含んで - この話を他人ごとではないと捉えた。同様のハックは日常茶飯事として起こってはいるが、Honan は何が起こったかを記録するのに良い仕事してくれたので - Amazon と Apple の間違いから彼自身の重大な判断ミスまで (本当に Time Machine バックアップもしてなかったの?)、自分の身を彼の立場に置いてみるのは容易である。Honan の話が最初に現れた時から、我々も内部でそれについて話し合ってきた。我々自身の脆弱さはどれ程か、この様なことが我々に起こる機会を減らすには何が出来るか、そして我々の友人や読者に我々は何を進言すべきかを見つけ出そうとするためである。

ということで我々はこの議論をあなたにも提供したい、我々の次の TidBITS Presents イベント - "Protecting Your Digital Life" として。出演者は、我々のセキュリティ編集長でそしてセキュリティ会社 Securosis の長の一人でもある Rich Mogull と、そして我々のために "Take Control of Passwords in Mac OS X, Second Edition" を、 Wiley のためには "Mac Security Bible" を書いた (どちらも数年経っている) 多芸の Joe Kissell である。我々は、たとえあなたのオンラインアカウントが侵入されても (これはあなたの側に何の落ち度もなくとも起こり得る!)、あなたのデジタルライフ全体を裸に晒してこれらの仮想禿鷹どもがついばむことが簡単には出来ない様にするための成功事例に焦点を当てる積りである。

どうか 22 August 2012 の水曜日東部時間正午 (9 AM Pacific) に TidBITS Presents ページでライブ参加をして欲しい (もし他の時間帯にお住まいなら、 Every Time Zone サイトで自分の時間に換算して)。或いは、 .ics ファイルがあるので、あなたのカレンダーにインポートすることもできる。このプレゼンは誰もが参加出来る - 今回はライブ参加を TidBITS メンバーだけに限定することはしないが、今後もこの様なライブのプレゼンテーションをもっとやって欲しいと思うのであれば、そのためには多くの準備が必要なので、 我々の努力に報いるため数ドルの寄付をお願いしたい。我々は主たる議論は 30 分に収め、その後でライブチャットから 30 分ほど質問を受けたいと思っている。もしライブでの参加が出来なくとも、後で都合のいい時に録画版を見てもらえる。

我々は Google Hangouts On Air の使い方について最善の方法を引き続き学んでいるので、プレゼンの前に TidBITS Presents ページの最後にある FAQ に是非目を通しておいてほしい。では水曜日に会いましょう!

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Dropbox を Mountain Lion 用にアップデートする

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Dropbox は、長いこと Dropbox アプリケーションを自動アップデートする仕組みを持っていると言ってきたが、多くの人にとってどうもそれは働いていいない様に見える。このことは、時として Dropbox が一週間かそこらに亘ってアップデートを展開したり、或いは Dropbox が自動アップデートの仕組み経由ではリリースしない暫定アップデートがあったりすることからも説明できる様に見える。しかし、純然たる事実は、私がこの記事を書き始めた 14 August 2012 時点で、我々の所では、バージョン 1.1.45 が走る Mac が一台、1.2.52 が一台、そして四台が 24 May 2012 にリリースされたバージョン 1.4.7 を走らせていたということである。そして、これらの Mac OS X のバージョンは色々で 10.5 Leopard から 10.8 Mountain Lion まである。

(あなたが走らせているのはどのバージョンかを見るには、Dropbox のメニューバーアイコンの上にポインターを持っていくと黄色いツールチップが現れバージョン番号とステータスが表示される。或いは、より古いバージョンでは、Dropbox メニューから Preferences を選択し、そして Account ペインを見る。)

という訳で、私は Dropbox の現行のバージョンが 26 July 2012 の 1.4.12 である事を見た時、多少不安を感じた。そのリリースノートは役立たずの簡潔さという点では Apple をも凌いでいた:"Mountain Lion サポート" とのみ謳っている。今では、我々の Mac は何台もが Mountain Lion を走らせており、我々は共同作業のために深く Dropbox に依存しているので、"サポート" は、それがどういう意味であるにしろ、結構なことである。公平のために言うと、我々はこれまで Dropbox のどの古いバージョンでも問題を経験していないが、どのクラウドベースのサービスでも、リリースノートが三語からなっていてもそこにセキュリティアップデートが埋め込まれている場合もあるので、常に最新版になっているというのは重要である。

勿論、我々の Mac は Dropbox のサポート切れのバージョンを走らせていた事を認識することが、まさにその翌日 - 最初のリリースから三週間経って - 六台のうちの二台が自分自身を 1.4.12 アップデートするに必要な信号であったのだが、他のマシンは古いバージョンに張り付いたままであった。溜息...

私の感じでは、もしあなたが Dropbox 1.4.xx を持っているのであれば、それはいずれ自分でアップデートするであろうが、あなたの Mac が 1.1 或いは 1.2 の代に (Dropbox のリリース記録yを見ると、1.3 という代は無い) 留まったままであれば、私は最新バージョンをダウンロードし手でインストールすることをお勧めする。幸いにして、やり方は簡単である。

Download Dropbox ページに行くと、常に最新の安定したリリースが得られる。ダウンロードが完了し Dropbox のディスクイメージがマウントされたら、その新しい Dropbox アプリケーションをあなたの Applications フォルダにドラッグし起動する前に、Dropbox の走っているコピーを閉じる必要があるので、Dropbox メニューから Quit Dropbox を選択する。それだけである。

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Dropbox に関して自動アップデートの問題が、これ程長い間続いたことには必然性がない。Dropbox は単に Dropbox メニューに Check for Updates コマンドを追加するか、或いは、それが平均的なユーザーにはオタク過ぎるというのであれば、Check for Updates ボタンを Dropbox の Advanced 設定ペインに追加することもできたはずである。そうすれば、時代遅れになることを心配するユーザーは、Dropbox の Web サイトを突っつき回る必要もなく、簡単にアップデートをチェックし入手出来たであろう。

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TweetDeck 1.5.3、使い物になる

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

そのデビュー以来、私はマルチカラムの Twitter クライアント TweetDeck を私の Mac で使ってきた。カラムが一つしかない Twitter クライアントでは、私が Twitter を使いたいやり方で、一度に十分な量の情報を表示することができない。私のやり方とは、時折ちらっと目をやって何か面白いことが起きているかどうか知るだけ、というものだ。(情報を知ったあとは長い時間触らずにそのままにしておく。何しろ、私だってするべき仕事があるのだから!)

2011 年 5 月に Twitter 社に買収されるより以前には、TweetDeck は Adobe Air を基盤として書かれていた。その結果として、Mac 用のアプリとしてはひどく不出来なものであった。その後、Twitter は TweetDeck を真の Mac 用アプリケーションとして書き直し、インターフェイスを洗練させつつマルチカラムの方式は保持して他の人気ある Twitter クライアントと差別化した。Mark Anbinder は、記事“新 TweetDeck for Mac、一服の清涼剤”(2011 年 12 月 12 日) の中で、TweetDeck 固有の欠点を挙げつつも、全体的にはこのアプリケーションについて肯定的なことを述べた。

けれども私は言っておかねばならない。私は、それらの欠点のうちいくつかを受け入れることができなかった。とりわけ、ネイティブな TweetDeck のカラムは私の好みよりも広過ぎて、私が定義した七つのカラムを見るには右へ左へと何度もスクロールせざるを得なかった。さらに悪いことに、Twitter に行くのがそれほど頻繁ではない私にとって、会話を丸ごと眺める手軽な方法がないという点は非常に問題で、いくつもの tweet についてどの友人が話をしているのかを見るためにあちこち行ったり来たりしなければならないのは、とても煩わしかった。

ところが、最近リリースされた TweetDeck 1.5.3 では、今述べた二つの問題点が消えてなくなっている。TweetDeck の General 環境設定に新設された設定項目 Use Narrow Columns で、同じスペースに以前より多くのカラムを詰め込むことができるようになり、以前は必要だった左右のスクロールが不要になった。(新設された Columns ボタン/メニュー (左右矢印) で、必要になれば手軽に左右のスクロールができるし、また左右のスワイプもサポートされた。)それからまた、小さな会話バルーンボタンによって一時的にそのカラムの内容が丸ごと会話で置き換えられ、tweet が会話の形で表示されるようになった。

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歓迎すべき変更点がもう一つある。新しいアクションメニュー (点々ボタンをクリック) だ。ここから、いくつもの便利なコマンドに手軽にアクセスできる。上のスクリーンショットをご覧頂きたい。私が最もよく使うのは Report for Spam コマンドだ。無料の iPad を宣伝する URL のみの tweet を、私はスパマーたちからひっきりなしに受け取っているからだ。

便利に使えるかもしれない他の機能(新機能でないものもある)としては、おしゃべりが過ぎる友人たちの tweet をマッチして無視できるフィルター機能、複数の tweet を並べて使いたいビジネス向けのスケジュール機能、Twitter や Facebook の複数のアカウントへの対応、などがある。カラムは極めてフレキシブルであって、タイムライン、みんなの反応、@言及、検索、リスト、ダイレクトメッセージ、トレンドの話題、お気に入り、その他さまざまの目的に使える。

TweetDeck もまだ完璧ではないが、今回と前回のアップデートにより私が最初のリリースに感じていた問題点の大多数が解消され、昔の Adobe Air の時代よりずっと使い物になる Twitter クライアントとなった。TweetDeck は無料で、 Mac App Store からのみ入手できる。

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Safari 6 でフォントを修正

  文: Michael E. Cohen: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Safari 6 をインストールした人は気付いたであろうが(OS X 10.8 Mountain Lion には Safari 6 が付属している)ブラウザのデフォルトの標準フォントとデフォルトの等幅フォントを決める設定が Safari の環境設定から消えてなくなっている。その結果として、いくつかのサイト、特に CSS (Cascading Style Sheets) による独自のフォント指定をしていないサイトが、ユーザーが前バージョンの Safari でどのようなデフォルトフォントの設定をしていたとしても、Times と Courier を使って表示されるようになり始めた。

これには二つの解決策がある。第一は、ユーザーがデフォルトの CSS ファイルを作成して Safari がそれを使えるようにするという方法だ。この書類は、ファイル名拡張子.css を持つテキストファイルで、どこに保存しても構わない。ただ、ユーザーが Safari の Advanced 環境設定で Style Sheet としてそのファイルを指定しておけばよいだけだ。このような CSS 書類の内容は、次のように見えるものになっているかもしれない:

body { font-family: "Lucida Grande"; }
code, tt { font-family: "Consolas"; font-size: 90%; }

このようなスタイルシートを指定し、Safari をいったん終了して再び起動すれば、開いたページの HTML と CSS が別途指定していない限り、本文 (body) テキストとコード用 (code) テキストにこのファイルの指定するフォントが使われる。

けれども別の方法として、Terminal を使ったシェルコマンドにより Safari のデフォルトのフォントを指定してやることもできる。これらのデフォルトを設定するためのユーザーインターフェイスはなくなってしまったけれども、設定のための機構は引き続き Safari に備わっているからだ。そのための魔法のシェルコマンドは defaults で、Safari の環境設定を以前通りのデフォルト設定にするにはこの defaults コマンドを四回使う必要がある。まず Terminal を開き、コマンドラインで正しいコマンドを走らせ、それから Safari を終了して再び起動するだけでよい。

例えば、以下に示すコマンドを使って私はデフォルトフォントを Lucida Grande (プロポーショナル) と Consolas (等幅) に設定した。第一のコマンドは、プロポーショナルのフォントファミリーを設定する(個々のコマンドはそれぞれ一行を成し、途中に改行は入らない):

defaults write com.apple.Safari com.apple.Safari.ContentPageGroupIdentifier.WebKit2StandardFontFamily 'Lucida Grande'

第二のコマンドは、そのフォントのデフォルトサイズを指定する:

defaults write com.apple.Safari com.apple.Safari.ContentPageGroupIdentifier.WebKit2DefaultFontSize 14

第三のコマンドは、等幅フォントのためのものだ:

defaults write com.apple.Safari com.apple.Safari.ContentPageGroupIdentifier.WebKit2FixedFontFamily 'Consolas'

そして最後の、第四のコマンドは、その等幅フォントのサイズを指定する:

defaults write com.apple.Safari com.apple.Safari.ContentPageGroupIdentifier.WebKit2DefaultFixedFontSize 11

確かに、Terminal を開いて呪文めいたコマンドをペーストするのは、従来のグラフィカルなインターフェイスを使う方法に比べれば使い勝手の面で良いとは言えないけれども、少なくとも Lucida Grande を見たいのに Times で見るのを強制されることはなくなる!

(ちょっとだけ余談を: 私はページの見栄えを細かく調整するのが好きなので、いろいろ異なったデフォルトのフォントとフォントサイズの組み合わせを上記のように Terminal を使っても試してみることはできるけれど、繰り返し使うには TextExpander のシェルスクリプト・スニペットを作ってそれでフォントのデフォルトをセットしたりリセットしたりする方が便利だと気付いた。このシェルスクリプト・スニペットは上記の Terminal コマンドと同じシンタックスを用いているけれども、コマンドに編集を加えてから呼び出すのがずっと手早くできる。その上、動作が終わる度に気持ち良い「ポン」というサウンドまで鳴らしてくれるのだから。)

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古くなったケーブルモデムでパフォーマンス低下

  文: Michael E. Cohen: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

私が今使っている iMac は、去年 Mac OS X 10.7 Lion リリースの二週間前に購入したものだ。実際、その前の 2007 年モデルの iMac からアップグレードする決断をした理由は、Lion であった。登録済み Apple 開発者である私には、リリースの二週間前に Lion のゴールデンマスター候補版をダウンロードする資格があり、テクノロジー関係の記事を書くライターとしても、Lion についてできる限りたくさんのことを知っておくのが重要だと思ったからだ。また、私の古い iMac がサポート対象の有効期限の終わりに近づきつつあることも、Lion の機能の多くが(例えば AirDrop が)この古い iMac では働かないであろうことも分かっていた。そこで、私は古い iMac にインストールされていた Snow Leopard を新しい iMac へ移し替えてから、Lion をダウンロードし、それを Snow Leopard に上書きしてインストールした。

どのような移し替えやアップグレードでも言えることだが、以前よりキビキビ動くように感じられる部分もあり、そうでない部分もあったけれど、全体的には新しい iMac 上の新しいソフトウェアのパフォーマンスはなかなか良かった。ただ、その時点での私の意識は、パフォーマンスがどうか、スペックがどうかといったことより、むしろいろいろな機能について学んだり Lion の興味深い特質を探究したりといったことの方に向いていた。でも、その後はだんだんと、動きの鈍い個所がいくつか気になり出した。ウェブページのロードが、以前より少し時間がかかる。ビデオは以前よりも頻繁にバッファ作業をするような気がする。Dropbox ファイルの同期に以前よりほんの少し余計に時間がかかる。危機感を感じるほどではなくて、ちょっと鬱陶しく感じる程度だ。

その当時の私は、これは Lion が初期バージョンなのでまだ完全には最適化されていないことと、古いマシンから新しい iMac へ移ってしまったデジタルな残骸があることの組み合わさった結果だろうという程度に思っていた。あとで時間があるときに、Joe Kissell の "Take Control of Speeding Up Your Mac" を読んで、このピカピカの新しい iMac がほんの少し関節炎を患っているように見える原因を見つけ出せるかどうかやってみよう、と私はメモを書き留めた。

もちろん、そういった種類の維持管理の面倒な仕事をしようと思っても、いざその時になればたいていもっと緊急にすべきことがあったり、もっと面白いことをやってみたい気になったりするのが常だ。そういうわけで、私は本腰を入れて修正仕事に取り掛かるのをずるずると先延ばしにし続けてしまった。ことに、これは何かが壊れたわけではなく、ただ単に動作がのろいというだけのことだったから。

その後、速度が遅い問題はますます悪化した。けれどもその悪化の度合は非常に緩やかだったので、私はまだその対策に取り掛かる気になれずにいた。気にはなっていても、ひょっとしたらこれは私の ISP が混雑しているだけかもしれない、と私は考えた。近所の人たちがワイヤレスアクセスポイントを次々と使い始めるにつれて、私の AirPort メニューの項目数がだんだん増えているのに私は気付いていたし、ケーブルモデムというものはローカルでの使用量と混雑度が増すにつれて接続速度が遅くなるものだと知っていたからだ。それに、私は記事を書かねばならなかったし、その他にも本を執筆し、編集し、制作の手伝いまでしなければならなかった。

そうこうするうちに、第一回の TidBITS Presents イベントの開催日が迫ってきた。(2012 年 6 月 16 日の記事“TidBITS Presents: Adieu MobileMe に Joe Kissell と Adam Engst が登場”参照。)Adam は私に、裏方としてプレゼンテーションをずっとモニターして、もし何か問題に気付いたら別途開いたチャットウィンドウで知らせてくれ、と頼んだ。けれども私にはそれができなかった。プレゼンテーションにリンクしようとしても、ひっきりなしに同期が失われたり、あるいはフリーズしたり、あるいは単に接続が切れてしまったりした。それでようやく、やはりスローダウンの原因を本気で調査しなければ、と踏ん切りがついた。ちょうどその頃、Adam もまた彼は彼でバンド幅に関係する問題に直面していた。(2012 年 7 月 11 日の記事“あなたは料金に見合うバンド幅を得ているか?”参照。)

私が最初にしたのは、ベースステーションが使っている Wi-Fi チャンネルをいじってみることだった。近所で非常に多数のベースステーションが出現しているからには、デフォルト以外の Wi-Fi チャンネルに移れば混雑や干渉が減るかもしれない、と考えたのだ。実際にやってみると、すべてを再起動してから当初のうちはキビキビ動くようになったけれど、じきに(具体的には数時間以内に)またのろのろした状態に戻ってしまった。

それから私はすべての電源を切り、ベースステーションの接続を外し、ケーブルモデムを直接私の古い iMac に接続してみた。これは Ethernet ケーブルが短くて新しい iMac に届かなかったからだったのだが、それは別としても私は Lion インストールが問題を引き起こしているのかどうかを切り分けたかった。(古い iMac はまだ Snow Leopard を走らせていた。)ここでもやはり、しばらくの間はのろのろした挙動が現われなかったけれど、それは一時的なことに過ぎず、結果はさきほど Wi-Fi チャンネルをいじったときと同じだった。そこで、私はベースステーションを繋ぎ直し、Lion の走る iMac に戻した。

その iMac で、私は Speedtest.net へ行き、テストを走らせてみた。するとその結果は、ダウンロード速度でおよそ 1.5 Mbps と出た。何年も前の DSL に比べればほぼ二倍の速度だったが、今の ISP に料金を払って契約している速度には遥かに及ばなかった。そこでついに、私は ISP に電話をかけて苦情を言うことにした。

その電話で、ISP の技術者はテストを一つ二つ走らせて、ケーブルモデムはちゃんと動作しているようだと言った。彼は私に、ベースステーションの接続を外してから、直接 Ethernet で接続してみるようにと言った。それは既にやってみたし、デスクの下を這いずり回ってケーブルと格闘するのは嫌だと私は言った。彼は、それでは対策のしようがない、問題点はおそらくそちらの側にあるのだから、と言ったものの、私がさらに強く苦情を言い張ると、彼はしぶしぶその週の後半にサービス出張の約束を取ってくれた。

別の技術者がわが家に到着したが、彼は私のケーブルモデムを一目見るやいなや、「これは前に見たことがあります」と言った。彼によれば、この ISP はこの特定の機種のモデムと電源器(壁のコンセントに直接差し込むよくあるタイプの変換器)を顧客に配っていたが、この電源器がモデムが必要とするよりほんの少し高過ぎる電圧を供給していたのだという。どうやら、この電源器のせいでモデムの動作中に適切な範囲を少しだけ超えた発熱が起こるようで、そのためモデムが時間の経過とともにうまく機能しなくなるらしい。内部のコンポーネントが余計なラジオ周波数ノイズ(要するに静的ノイズ)を発するようになることで、パケットが落ちてしまい再送信が必要になるのだという。何だかもっともらしい見かけ倒しの説明のようにも聞こえたが、パフォーマンスが次第に低下することの説明にはなっているようだった。それだけではない。彼が私の古いモデムと電源器を別のものに取り替えたとたん、それまで得られていたものに比べて十倍も良い下りのバンド幅が得られるようになった。

今日に至るまで、私の古いケーブルモデムのパフォーマンスが次第に落ちていた原因が実際にオーバーヒートによるものであったのか、それとも何か他のものであったのかは判明していない。でも原因はどうあれ、私のバンド幅の悩みの本当の原因がケーブルモデムにあったことだけは間違いない。

今回のことで、私はいくつか教訓を学んだ:

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2012 年 8 月 20 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

OmniFocus 1.10.3 -- OS X 10.8 Mountain Lion との間に生じたいくつかの互換性の問題を解消するため、The Omni Group がタスク管理アプリ OmniFocus のバージョン 1.10.3 をリリースした。今回のメンテナンス・アップデートは Mountain Lion における Apple Mail との統合の問題を修正し、OmniFocus が MailTags 3.1 あるいはそれ以降と正しく動作するようにし、スクリプティングプロパティ "allowed mail senders" に関係したバグをなくし、日本語ローカライズ版で前回発生したバグのため Help メニュー項目が働かなくなっていた問題を修正している。Mountain Lion で走っている場合に iCal Sync は使えないが、Sync 環境設定の中の Calendar 書き出し機能は引き続き使える。(新規購入 $79.99、無料アップデート、22.4 MB、リリースノート)

OmniFocus 1.10.3 へのコメントリンク:

ClamXav 2.3.2 -- Mark Allan が ClamXav 2.3.2 をリリースし、OS X 10.8 Mountain Lion で走らせた場合に ClamXav Sentry がログイン時に起動されなかった問題を修正した。このアップデートではまた ClamXav Sentry がバックグラウンドスキャン用デーモン clamd とやり取りできなかった問題を修正するとともに、Engine Uninstaller と Gatekeeper との間の問題も解消した。このリリースで追加された一つの機能を使えば、Option キーを押さえていることにより ClamXav 内部から Sentry ログを開くことができる(逆もできる)ようになった。(無料、16.9 MB、 リリースノート)

ClamXav 2.3.2 へのコメントリンク:

DEVONagent Lite、Express、および Pro 3.3 -- DEVONtechnologies が、 DEVONagent の三つの版 (Lite、Express、Pro) をアップデートして、これら三つの調査アシスタントアプリに OS X 10.8 Mountain Lion との互換性を追加した。特に、DEVONagent Pro は今回から通知センター(長時間かかる検索が完了した際に通知できる)と共有サービスに対応した。Mountain Lion 互換性以外にも、DEVONagent Pro と Express のバージョン 3.3 が 64-bit 対応(結果セットのサイズが利用できる RAM の量とあなたの Mac のパフォーマンスのみにしか制限されない)となるとともに、Tube スキャナで出来合いの Marketing 検索セットをアップデートして改善し、あなたが独自の検索セットを作る助けとなるようにした。三つのアプリとも、Google Scholar プラグインを改善して法律的な見解や雑誌を検索できるようにし、フランス語ローカライズ版と TextExpander 互換性を追加している。最後にもう一つ、三つの版のいずれも、今回から Mac OS X 10.6.8 かそれ以降を要する。

Mac App Store 版の DEVONagent LiteExpress、および Pro は今回からサンドボックス化された。DEVONagent Pro については、このことにより今回からダウンロードしたファイルに Spotlight コメントを付けることができなくなり、アクションスクリプト "Convert Results to RSS Feed" が付属できなくなった。いつもと同じく、この記事の執筆時点では DEVONagent の Mac App Store 版はいずれもまだバージョン 3.3 にアップデートされていない。(アップデートはいずれも無料。DEVONagent Lite は無料、3.3 MB、リリースノート。DEVONagent Express は新規購入 $4.95、7.0 MB、リリースノート。DEVONagent Pro は新規購入 $49.95、19.6 MB、リリースノート)

DEVONagent Lite、Express、および Pro 3.3 へのコメントリンク:


ExtraBITS、2012 年 8 月 20 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週の ExtraBITS の話題はあらゆる領域にわたる。まずは Tonya Engst が Tech Doctor ポッドキャストに登場し、Cult of Mac が教科書の印刷版と電子ブック版との価格を比較し、Apple 対 Samsung の特許訴訟でなかなか興味深い Apple の秘密が明かされ、最近撮られた火星の写真を iOS デバイスのジャイロスコープセンサーを使ってナビゲートできるサイトが現われ、Google の二要素認証を有効にする方法を Lex Friedman が解説し、HyperCard の 25 周年を回顧するメッセージが集められた。

Tonya Engst、Tech Doctor ポッドキャストで電子ブックを語る -- Take Control 編集長の Tonya Engst が Tech Doctor ポッドキャストで Robert Carter と対談し、Take Control 電子ブックシリーズが 2003 年の発足以来今日の EPUB と iOS デバイスの時代に至るまでどのように進化してきたかを語る。この Tech Doctor ポッドキャストは視力に障害のある人たちがテクノロジーを使う手助けをすることにも焦点を置いているので、終わりのところで Robert Carter は VoiceOver を使って Take Control 電子ブックを Mac に読み上げさせる実演もしている。

コメントリンク:13212

電子ブックの新学期特別セール -- 教科書にかかるお金を節約するために、大学生たちには iPad に投資するのがお勧めかもしれない。Buster Heine が一般的ないくつかのタイプの大学生向けに、電子ブックと印刷版の本との価格を比較する。(驚愕の事実: 電子教科書は一冊 $139.01 することもある。さらにもっと驚愕の事実: その同じ本の印刷版は一冊 $239.75 だ!)

コメントリンク:13205

Apple 対 Samsung の特許訴訟で秘密が明らかに -- これらのリンクは数日前のものだが、それでもまだまだ興味深い。Apple 対 Samsung の特許訴訟で漏れ出てきた、テクノロジーのゴシップだ。New York Times の Nick Bilton は Apple 対 Samsung の訴訟を不成功に終わった 1930 年の(女性をのこぎりで半分に切るイリュージョンを保護しようとした)特許訴訟になぞらえ、Wall Street Journal の Ian Sherr の記事には iPhone プロトタイプの写真やその他のインタラクティブなメディアを集めた、とても魅惑的なスライドショーが含まれている。いずれも、一見の価値ありだ。

コメントリンク:13204

iOS デバイスのジャイロを使って火星のパノラマ写真を見る -- NASA による火星探査科学ラボラトリーで使われたモバイル探査機 Curiosity から送られてきた写真は先週私たちを興奮させたが、ここにさらにもう一捻り... そしてロールを加えたものが登場した。ジャイロスコープセンサーを備えた iOS デバイス、例えば iPad 2 や第三世代 iPad、iPhone 4 か 4S、あるいは第四世代の iPod touch を使ってこのリンクを開けば、デバイスを傾けたり動かしたりするだけでパノラマ写真をナビゲートできる。(回転椅子に座ったままで地平線を一周できた人にはボーナスポイント!)

コメントリンク:13199

Google の二要素ログインを有効に -- Macworld 記事で、Lex Friedman が Google アカウントの二要素認証を有効にし使いこなす方法を説明する。固定された一つのパスワードと、常時変化する追加コードでテキストメッセージで送られたりスマートフォンアプリからアクセスしたりするものとを組み合わせて使うのだ。あなたがどの程度頻繁に Google アカウントにサインインする必要があるかにもよるが、この二要素認証が手間がかかる割に得るものが少ないかもしれないことは覚えておこう。

コメントリンク:13198

HyperCard の 25 周年記念の回顧集 -- 1987 年 8 月 11 日に、Apple は Boston で開催された Macworld Expo において「ソフトウェア組み立てセット」HyperCard をリリースした。今では HyperCard が私たちの身近に見当たらなくなってもう長い年月が経つけれど、当時には HyperCard のお陰で私たち Mac ユーザーの生活が信じられないほど大きく様変わりしたものだ。それまで日の目を見る手段を持たなかったさまざまのアイデアの多くに、HyperCard が命を与えたからだ。その中には TidBITS さえも含まれる。私たちの最初の 99 号までは HyperCard フォーマットで出版され、毎号が一つずつの HyperCard スタックとして配布されて、そのコンテンツを検索可能なアーカイブの中に読み込めるようにしていたのだ。完全に新しいフォーマットで出版するというスリルに後押しされていなかったなら、TidBITS が創刊間もなく挫折ということもあり得たかもしれない。この Twitter 検索で、他の人たちが投稿したメッセージをスクロールして眺められる。そこに出てくる iPad 用 Infinite Canvas というものにも注目したい!

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TidBITS ISSN 1090-7017©Copyright 2012 TidBITS: 再使用はCreative Commons ライセンスによります。

Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2012年 8月 22日 水曜日, S. HOSOKAWA