TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1171/22-Apr-2013

今週のニュースにお気付きの方はおられるだろうか? そう、私たち TidBITS が 23 周年の記念日を迎えたのだ! Adam Engst がこの記念日に関係する節目の出来事をいくつか紹介しつつ、23 歳となった出版が今日の現代的インターネットにおいてどんな役割を果たすべきかについて考えを述べる。今週号ではまた David Rabinowitz が Mac OS X 用ウィンドウ管理ユーティリティ Divvy をレビューし、Agen Schmitz は LiveCode 6.0 が Kickstarter キャンペーンを成功させた後オープンソースとして初めてリリースされたことを伝える。それから Matt Neuburg が、ずっと使ってきた第二世代 iPod nano の後継機を Apple の iPod ラインアップから探した結果、iPod shuffle に向かって詩を吟じる。今週注目すべきソフトウェアリリースは、Mailplane 3.0、Things 2.2、CloudPull 2.4、Aperture 3.4.4、それに iPhoto 9.4.3 だ。

記事:

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LiveCode 6.0、無料及び商業版としてリリース

  文: Agen G. N. Schmitz: [email protected]
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Runtime Revolution (略称 RunRev) からの LiveCode 6.0 のリリースで、HyperCard の精神は生き続ける。このリリースには二つのバージョンがある - 無料オープンソースの LiveCode Community 版と LiveCode Commercial 版で、後者はプロアプリケーションの開発を目的としたものである。これはこのクロスプラットフォームのツールキットを若返らせるための Kickstarter campaign キャンペーンに続くものである。このキャンペーンでは資金集めの目標を 2 月下旬に達成した ("LiveCode、無料のオープンソースアップデートをクラウドファンド" 22 February 2013 参照)。

この 6.0 リリースの LiveCode は "現状のまま" 版で、クラウドファンド時に最初の製品として約束されていたものである。数週間前、RunRev のトップ Kevin Miller はブログで次の様に説明している:このバージョンは、当社が選択したオープンソースライセンスの条件に完全に合致していることを確実にするため、現在のコードベースを照査しそしてアップデートすることが目的である。この 6.0 リリースでは、ドキュメンテーションがアップデートされ、ライセンスも見直され、そしてその他の整理がされている。次は Kickstarter プロジェクトからの資金で完全なオーバーホールの作業が始まる。

LiveCode 6.0 は、OS X, iOS, Android, Windows, そして Linux プラットフォーム上で走るアプリを開発するために使うことが出来、そして無料の LiveCode Community 版は、自分のための或いは商業目的のためのアプリを作成するために使うことが出来る。しかしながら、RunRev が使用している GPL ライセンス によれば、LiveCode Community 版を使って作成された全てのアプリはオープンソースでありそしてソースコードは一般公開されなければならない。これはアプリを売る場合にも適用される。

もし自分のソースコードを詮索好きな目から守りたいと言うのであれば、 LiveCode Commercial 版を選ぶ道もある。こちらは年額 $500 のライセンス契約として、或いは $499 から始まる他のライセンスオプションを通して入手可である (一つの iOS アプリに一つの LiveCode コンポーネントを埋め込ませるため;料金はあなたの組織に属する従業員の数に応じて増加する)。更に、もし自分のアプリを Apple の App Stores 経由で出そうと考えているのであれば、Commercial 版が必要となる。何故ならば、GPL ライセンスは Apple 自身のライセンス要件と合い入れないからである。

LiveCode を使ったアプリ作成についてもっと学びたい人達のために、RunRev は三つのチュートリアルを用意している ("アカデミー" と称している) - 概説と他にゲーム作成を頭に置いたもの二つ。これらは一年間有効で個別には $50、或いはまとめて $99 で購入できる。

LiveCode 6.0 は以下のものの上で走らせられる:PowerPC-based Mac 上の Mac OS X 10.4.11 Tiger, Intel 及び PowerPC システム上の 10.5.8 Leopard 及びそれ以降、そして Intel-based Mac 上の 10.6 Snow Leopard 及びそれ以降。無料の LiveCode Community 版のダウンロードサイズは 54.1 MB で、バージョン 5.5.4 からの変更の全リストをこのダウンロード可の PDF で見ることが出来る。

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Divvy、ウィンドウ管理を楽に

  文: David Rabinowitz: [email protected], @david_rab
  亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

私は Mac が好きだが、4 年前に PC から乗り換えて以来 Mac OS X のウィンドウ管理は気障りであった。私は、最大化ボタンをクリックすればウィンドウが全画面に広がることに慣れており、Mac が同じことをさせてくれないことに最初は失望した。(Mac アプリは最大化された時、最も理にかなう最大の大きさにズームするとされている - 例えば、ワードプロセッサではページ幅 - しかし、この様な詳細へのこだわりは残念ながら皆に理解されるとは言えない。) Windows 7 では、私が乗り換えたのはこのバージョンからであったが、Snap という機能が導入されていて、これは二つのウィンドウを簡単に横並びで比較させてくれ、おまけに画面の半分だけを満たすよう移動し再サイズするためのキーボードショートカットまで付いていた。私は Snap が好きであった。その理由は、一学生として私は二つのウィンドウを隣接して見ることが必要な場合が多くあったからである。片方には宿題の質問を表示させ、もう一つの方で答えを書きこむという具合である。

私も卒業が近づいて来て、宿題の問題・回答ウィンドウを並べることを必要とすることも無くなるであろうが、私は Mizage から出されている Mac ウィンドウ管理ツール Divvy を使って Snap で出来る以上のことを私のウィンドウで出来る様になっている。キーボードショートカット経由或いはメニューやドック内のアイコンによって呼び出されると、Divvy は画面を代表する小さなグリッドを表示する。その四角を現在のウィンドウになってほしい場所にドラッグする。iTunes を画面の右上の小さな部分に置いておきたいというのであれば、iTunes をリサイズして右上の隅に手動で動かす必要はない - ただ Divvy を呼び出してグリッドの右上にある四角をドラッグするだけである。

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Divvy の設定を微調整するだけで、その使用をより強力で効率的なものに出来る。どのアプリケーションを使っている時でも Divvy を呼び出せるように何時でも使えるキーボードショートカットを設定出来る。(私は Control-D をこれにあてた。その理由は覚えやすいし、Terminal での Unix プログラミングでもたまたまこの組合せは使っていなかったからである。) もっといいのは、画面内でウィンドウをリサイズして決めた場所に置くことを事前設定としてキーボードショートカットを設定することも出来ることである。例えば、一つのウィンドウをリサイズして画面の右半分を占める様にすることである。これらのショートカットは Divvy が開いている時だけ有効にも出来るし、或いは何時でも有効にも出来る。面白半分で、私は無くて不自由な思いをしている Windows 7 Snap キーボードショートカットを模してみることにした。グローバルなショートカットを二つ作成したが、その際 Mac の Command キーを Windows キーの代わりに使った。という訳で、今や Command 左矢印キーを押すと最前面にあるウィンドウは直ちに私の画面の左半分を埋め、そして Command 右矢印キーは同じことを右側で行う。これにより二つのウィンドウを並べて表示するのはいたって簡単になった。

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Divvy の一番の欠陥は、この表現は言い過ぎかもしれないが、グリッド内の四角をドラッグするのはマウスでしか出来ない事で、これはキーボードから手を放すのは嫌いだと言う人には嫌がられるかもしれない。勿論、事前設定や関連するキーボードショートカットを使えば、マウスを使わねばならない場面を無くすことは可能なはずである。でも Divvy は私の要件は満たしてくれている。もしこれがあなたの作業スタイルに合わないと言うのであれば、他にも Mac 用のウィンドウ管理ユーティリティは沢山出ている。例を挙げれば、Breeze, Cinch, Mercury Mover, そしてオープンソースの ShiftIt がある。また、人気の Keyboard Maestro マクロユーティリティを使えばウィンドウを移動そしてリサイズするマクロは簡単に作れる。

一学生として、私はソフトウェアを購入しなければならない場面に遭遇したことはこれまでに殆どない。何故ならば、私のニーズの殆どはサイトライセンスを持ったパッケージ、教育割引き、そして無料のオープンソースユーティリティで賄えているからである。しかしながら、Divvy の 14 日の試行バージョンを使ってみた結果 - 皆さんもそうされることをお勧めする - 私は $14 のコピーを一本買うこととした (これは Mac App Store からも $13.99 で出ているが、当然のことながら試行版は無い)。私は前にウィンドウ管理アプリを使ったことは無いが Divvy はすごいと思った。手でウィンドウを操作するよりもずっとましだし、これがあればもう Windows があればなどと思うことは何もない (仕事で Windows を使わなければならない人達も Mizage はまた Divvy の Windows 用のバージョンも作っていることに興味を示すかもしれない)。

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TidBITS の 23 年間: 私たちの過去・現在・未来を思う

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

ここ TidBITS では、毎週のスケジュールの下に良い品質のコンテンツを一貫して出版することに、私たちは誇りを持っている。今週号をもって、23 年間続けて私たちは出版を続けてきたことになる。23 年間! この記念日に、過去の節目の出来事をいくつか思い出すとともに、これから TidBITS が皆さんのどんな必要に応えることができるのかについても思いを巡らせてみたい。

Methuselah の問題 -- [訳者注:Methuselah (メトシェラ) は旧約聖書に登場するきわめて長命の人です。]1990 年に私たちが TidBITS を始めた頃、他にもさまざまのインターネットニュースレターが存在していた。私たちは早期の登場をしたが、決して最初のものではなかった。その後、年月とともにそれら他の初期出版物のほとんどが消えて行った。疲労、不適切な内容、厳しい経済的現実、といったことが理由だ。でも、そうした出版物の一つ、Liam および Pauline Ferrie の The Irish Emigrant は、TidBITS の数年前に登場し、その後も TidBITS と大差ないやり方で進化して、電子メールのみの配信から広告により支えられたウェブサイトを日々アップデートする方法へと切り替えて生き続けた。長年、私は TidBITS がインターネット上で純粋に電子的手段のみにより出される テクノロジー関係 の出版としては最古のものであり、インターネットで生まれた出版物としては 二番目 に古いものである、と言わなければならなかった。それでも、Irish Emigrant に対して私はいつも特別の愛着を持っていた。明らかにこれは Ferrie 夫妻の愛に溢れた作品であって、その点は TidBITS とまさに同じで、Liam Ferrie は親切にも私たちの 18 年目の記念日にお祝いの言葉まで送ってくれた。

結局、2012 年 2 月に、Ferrie 夫妻が引退し Irish Emigrant の最終号を出版して、私たちは継続中の出版物では最古のものとなった。ただし、私たちがそのことを知ったのは 2012 年の後半になって読者の Rob Smyth が知らせてくれたからだった。(その昔 1996 年に Irish Emigrant のことを初めて私に教えてくれたのも、やはり Rob であった。だから、16 年後にそれを覚えていてもう一度知らせてくれたことに、とても感謝している。)こうして、今は TidBITS が最も古くから 継続中 のインターネット専用出版だと自信を持って言える。そして私たちには新たな目標が生まれた。Irish Emigrant が出版を終えたのはその 25 周年の記念日だった。開始が 1987 年 2 月だったからだ。だから、もしも私たちがあと数年続けることができたなら、私たちは最も長く続くインターネット出版という称号も得ることができる。

会員システムと編集主幹 -- ここで何か発表したいと私が自信を持って言うことができる大きな理由の一つは、TidBITS 会員プログラムが持続可能な財政的流れによって TidBITS を支えるために計り知れないほど大きな助けとなってきたからだ。皆さんの支えのお陰で、私たちはより多くのライターたちにお金を出すことができ、高い品質の記事をお届けすることができてきた。そのことは、 Josh CentersSteve McCabeDavid RabinowitzKirk McElhearnSharon ZardettoMarshall ClowAlicia Katz Pollock、その他多くの人たちの記事、さらには Joe Kissell の新しい FlippedBITS コラム記事を見て頂ければお分かりだろう。

(日本語)FlippedBITS コラムが新登場 | FlippedBITS: 複製ボリュームから Mac をブート | FlippedBITS: パスワードにまつわる四つの迷信 | FlippedBITS: IMAP をめぐる誤解

さらにもっと重要なこととして、TidBITS 会員プログラムからの収入のお陰で、私たちは新たに編集主幹を一人雇い入れて、記事の割り当て、調整、編集、および執筆、さらには TidBITS を継続して皆さんにお届けできるために必要なたくさんの他の仕事を担ってもらうことができるようになった。皆さんをじらすのは本意ではないが、この役割を担う人物の名前を具体的に発表するのはまだ時期尚早だ。ただ、この人物がスキルにおいても情熱においても TidBITS にとって大きな財産となることは私が確信を持って言えるし、ゆくゆくはさらに良いコンテンツをお届けできる結果に結び付くだろう。

既に 2,000 人以上となった会員の中にあなたが含まれていないのなら、どうぞ今こそあなたも TidBITS 会員プログラムに加わって下さり、皆さんが期待する種類のコンテンツに私たちがさらに磨きをかけより良いものとできる力となって下さるよう、お願いしたい。

なぜ TidBITS は重要か? -- その昔の 1990 年に、Tonya と私が TidBITS というアイデアを思い付いたとき、私たちの目標はインターネット経由で人々に Mac 関係のニュースと情報を届けることであった。当時は Mac に限定された雑誌もまだ比較的少なく、デジタルな形で配布されるものは一つもなかったからだ。もちろん、その必要性はその後少しずつ減って行った。Apple 中心のコンテンツが日々新たに登場し、誰も一人ですべてを読める時間などないほどになったからだ。私たちはその事実を十分に認識しているし、今日のインターネットの中で TidBITS がどのような役割を果たすべきかを見つけ出すための内省と分析はずっと続けてきた。

私が気付いたのは、現在では TidBITS は以前と違った必要に応えているのだという点だった。それは、Apple の世界に対する思慮深い、プロの手によって執筆され編集された、そして何より 有限 の、見解を提供することだ。誰もが皆、それぞれ有限の時間の中に数多くの要求を抱えているので、私たちは何もかもカバーしようと努めるのは止めて、重要であり有用である話題のみに集中することによってそういう皆さんの要求を尊重したいと思ったのだ。また、できるだけ完結した記事をお届けすることによって、読み始めた時より多くの疑問を抱えたまま取り残されるという事態を引き起こさないようにする、その責任が私たちにはあると思う。140 文字の tweet が全盛のこの時代に、長文の記事を作り続けているのはそのためだ。それからもう一つ、私たちの記事にあわせて、コメントという形で読者の皆さんの声も含めることも非常に重要だと考えている。そのお陰で興味深い逸話や、有用なアドバイス、重要な疑問、その他が追加される一方、他の多くのフォーラムのようにくだらないたわ言や辛辣過ぎる批判により足を引っ張られる結果となっていないのが素晴らしい。

私たちが出版するもののすべてが具体的に皆さんの興味を惹くと保証することはできないけれども、私たちの目標は正確な内容の記事を十分考え抜いて集めたものを毎週皆さんにお届けし、その中から皆さんに好きなものを選んで頂けるようにすることだ。さらに、出版された時点では皆さんの興味に関連したものでなかったとしても、過去の記事をすべてアーカイブして保存することで、皆さんが以前は読み飛ばした記事も、その内容が意味あるものとなった時点でいつでもそこに戻って読み返して頂けるならば嬉しい。

その意味で、つい最近私たちが受けた賛辞をここに紹介させて頂きたいと思う。David Deutsch の Examiner.com で、私たち TidBITS が Apple 関係情報源のトップ 10 リストの第一位に輝いたのだ。そこに述べられた理由には、私たちの週刊のニュースレターは最も重要な話題のみが含まれていることが重要だという趣旨が語られているからだ。

Mac に関する読み物すべての中で、私の一番のお気に入りだ。素晴らしい情報の断片 ("tidbits") と、きわめて有益な Apple 情報が、最もよく完結した週刊のニュースレターにまとめられている。おそらくインターネット上で最もぎっしり詰まった Apple 関係情報源だろう。22 年間続けて、夫婦のチーム、Adam および Tonya Engst の手によって運営されている。この地球上で最も興味深い Apple 熟達者の二人だ。

好意ある言葉に、David に感謝したい。同じように優しい言葉をかけて下さった人たちに感謝したことはこれまでもあるけれど、ここでもう一度、わざわざ時間を割いて TidBITS をいつも読んで下さっている皆さん一人一人に、感謝の気持ちを捧げたいと思う。私たちの仕事が貴重な時間を割いてまで読む価値があると認めて下さったことこそ、インターネットで長々と時間を浪費することなしに情報に通じているための重要な戦略部分と見て下さっていることこそ、私にとっては最大の栄誉だと思っている。

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私は iPod shuffle を入手して、気に入った!

  文: Matt Neuburg: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

警告: この記事の前半には数多くの iPod モデルが登場するが、たいていの場合 "nano" とか "shuffle" など簡単な通称名や「第二世代」など世代番号だけで区別している。iPod に精通した方以外は、手近に百科事典的モデルリスト、例えば Apple が出しているリストなどを開いて参照されるとよい。

これは、私がジレンマに陥り、その解決に至った物語だ。皆さんが気をもまずに済むように、まず最初にそのジレンマとその解決法のあらましを述べておこう。その後で、なぜこれが私にとってジレンマであったか、そしてこの解決法でなぜ問題が解決したかを説明したい。私のジレンマとは次のようなものだ:

そして私の解決法は次のようなものだった: おお、この iPod shuffle は、使ってみたら案外悪くないじゃないか!

物語のあらすじも結末も明かしてしまったので、ここで話はすべての始まりに立ち返る。

一人の男、一つのプラン、一台の nano -- これが私の写真だ。日課のランニングに出かけようとしているところだ。第二世代の iPod nano を優雅に身に着けているところに注目して頂きたい。この iPod nano は、分厚いシリコンゴムの保護ケースに身を包み、ベルクロの付いたアームバンドで腕に取り付けられている。私はもう何年もの間、雨の日も晴れの日も毎日こうやって走っている。残念なことに、何かが(おそらく今述べたばかりの雨が)ついに内部の電子回路にダメージを与えたらしく、別のものを探さなければならなくなった。さらにもっと残念なことに、現在の iPod の状況を調べ始めてみて気付いたのだが、第二世代 iPod nano の後継者と私が認められるような iPod を、Apple はほとんど何も製造していないことが分かった。

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その理由を説明するために、まず私が iPod nano のどこが好きだったのかを書いておこう。これは驚くほどにシンプルで、それでいて挑戦的にゴツゴツしたところもある、細長いアルミニウム製の長方形をしていて、ごく小さなスクリーンと、クリックホイールが付き、他にはほとんど何も付いていなかった。スクリーンは粗削りの、低解像度 LCD で、数行の短いテキストを描くこと以上の能力を備えていなかった。それでも、このスクリーンは私が知るべきことのすべてを語ってくれた。つまり、現在再生中の曲名、その曲の所要時間、再生の残り時間が表示された。また、このスクリーンは巧妙かつパワフルな管理インターフェイスでもあるが、それはクリックホイールがあるお陰だった。このクリックホイールは単に再生・一時停止、次・前、早送り・巻き戻しといった基本的な操作や音量調節の機能を提供するのみならず、スクリーンと組み合わせることによりさまざまのメニューの中に飛び込んで各種設定、プレイリスト、アルバムなどをナビゲートしたり、あるいはトラックの中の特定の個所へスクロールしたりといった目的にも使えた。

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スクリーンは粗削りではあったけれども、カリフォルニアの明るい陽光の下でさえはっきりと見えた。さらに重要なこととして、指先で触るだけでクリックホイールが扱えたので、野道を走りながらデバイスを全く見ずに必要な操作の大部分(トラックをスキップしたり、音量を調節したりなど)ができた。

この iPod nano には動く部品がなかった。当たり前だと思うかもしれないが、私はまだフラッシュメモリが生まれる前の時代、ポータブル CD プレイヤーを持ってランニングしようと試みたことさえある! また、この動く部品の問題は私が決して iPod classic を持って走らない理由の一つでもある。回転するハードディスクが内蔵されているからだ。iPod classic を持ってランニングしている人たちがいることは知っているが、私に言わせれば彼らは正気でない。ハードディスクは壊れる(クラッシュする)可能性がある。さらに重要なことだが、 が衝突する(クラッシュする)可能性もある。実際それはよくある。低木の茂みを突っ切るのはしょっちゅうで、丸太や岩につまずいて転ぶことも多い。ハードディスクを永遠の沈黙へと送ることなど簡単だろう。第一、iPod classic は高価だ。$250 もする壊れやすい機器を腕に取り付けて埃や雨の中を走るなんて、私にはとうてい考えられない。

全く同じ理由から、私はたいていの場合 iPhone を持ってランニングしようとは思わない。確かに、iPhone は素晴らしいデバイスだ。電話として使える他に、GPS を積んでいるので Garmin Forerunner 305, の代わりとして使えるかもしれないし、その上これはカメラでもあって、南カリフォルニアの素晴らしい景色の中を走っていると写真を撮れたらいいのにと思うのはいつものことだ。歩くときには、私は iPhone を持って行く。たとえ辺鄙な場所であってもだ。また、ダートバイクに乗るときにも持って行く。けれども、ほとんど裸に近いポケットもない服装で、高価でデリケートな iPhone をドンドン体に打ち当てながら走るなんて、ひどく場違いに思える。それにこれは大き過ぎる!

私が iPhone を持って行かないもう一つの理由はスクリーンだ。iPhone の画面は明るい光の下では読みにくい。(南カリフォルニアの陽光はとても明るく、それこそが私がここに住みたいと思った理由の一つだ。)その上これはタッチスクリーンだ。つまり、操作するには、走るのを中断して、iPhone を腕から外し、ケースなどから取り出し、指を洗ってから乾かし、それからスクリーンのロックを外し、Music アプリを操作し、スクリーンをロックし、iPhone を元通りの場所に戻し、それでやっと走り始めることができる。それとは対照的に、iPod nano はクリックホイールが指先で触るだけで使えるので、たいていの場合(さきほど言ったように)走るのを止めずに操作できる。たとえ走るのを止めてプレイリストを切り替えなければならなかったとしても、スクリーンのバックライトは非常に明るいし、クリックホイールはゴム製の保護ケースの上から操作できるので私の汗まみれの手からちゃんと保護されていた。

Hal よ、iPod のハッチを開けてください -- だから、私の iPod nano が動かなくなってから、現行の iPod モデルの状況を調べようとインターネットを見てみたときの、私の驚きと恐怖を想像して頂きたい。

ここまで見てきて、私はほとんど絶望的な気持ちになった。Apple はいったい何を考えているのか? 私にとってあの iPod nano を価値あるものとしていた、すべてのことがらを排除してしまうとは? 今の iPod 在庫リストの中には、条件に合うものが一つもないのだろうか?

こうして除外を重ねた結果、ついに、私は iPod shuffle を考慮するに至った。実は、私は shuffle を考慮の対象にする気はなかった。これは、私の願いとは正反対のものと思っていたからだ。初めて shuffle が登場したときのことを思い出す。その際、私はこんなものどうしようもなく馬鹿げていると思った。(もちろん、それは大して何も証明してはいない。これはよく知られていることだが、初めて登場した時点で私が馬鹿げていると思ったものは、ウェブブラウザ、iMac、Mac OS X、それから iPhone などたくさんあるからだ。)けれどもこの shuffle には ディスプレイが全く無く、その名前からして再生順をランダム化することを推奨しているように思えるけれどもそれは私が何かを聴く際のやり方とはまさに正反対だった。私は、ポッドキャストのプレイリストをきちんとセットアップして、順番に聴くのが好きだからだ。順番に聴くことができないのなら、プレイリストを選んでナビゲートする機能(それにはスクリーンが必要に違いない)がないのなら、この shuffle は完全に私のランニングの圏外と言わざるを得ない、私はそう思った。

しかしながら、実際には、iPod shuffle もまた世代の進化を経てさまざまの変容を重ねていた。Juicy Fruit ガムのパッケージと見間違えるような長細い長方形から、そのクリックホイールの大きさとほとんど変わらないほどちっぽけな長方形まで、Oprah にも勝るほど大きなフォームファクター変更を経験した。クリックホイールさえ持たない時期(第三世代)もあった! 現行の第四世代 iPod shuffle は、これまでの各世代の機能の良いところを引き継いでいて、私はさらに深く調べてみた結果、自分でも驚いたことに、これなら使えるかもしれないと思うに至った。そこで私は急いで Fry's Electronics の店に行き、一台購入した。今はまだほんの数日しか使っていないけれども、これが私の目的のために、現行の iPod モデルの中で最良の選択肢であるのみならず、愛用していた iPod nano の後継機としても実際十分以上に満足できるものであることが、もはや完璧に明らかとなってきている。

無常のこの世を shuffle する -- iPod shuffle を私の特定の用途に使う際に、私がどんなところを気に入っているかを説明したいと思う。この shuffle の弱点とも思えたいくつかの側面が、実際には強みであることが分かったり、あるいは少なくとも古くから使っていた iPod nano とそれほど大きく違わないものであることが分かった。はっきり落胆させられるところも一つか二つはあったけれども、それらはまあ我慢できる。それに、shuffle の機能で nano より 良くなっている ものもいくつかあった!

私が購入したのはスレート(黒)色の iPod shuffle だった。(他に七色のものが現在販売されている。)価格は $40 ほどだ。Fry's では低価格保証をしていて、その当時それは Amazon 価格と同額だった。これは驚くほど小さい。クリックホイールは米国の 25 セント硬貨とほぼ同じ大きさで、本体の全体的な大きさは米国の 50 セント硬貨程度だ。筐体はアルミニウム製で、実際非常にしっかりした感じがする。途方もないほど軽い。裏側にはバネ式のクリップがある。いろいろ試してみた結果、私はランニング用ショートパンツのウエストバンドの上側にこのクリップで取り付ける方法に落ち着いた。これなら着けている感じが一切しない。この点、iPod shuffle は iPod nano に 勝って いる。これまで nano をアームバンドに取り付けるのは面倒で常に圧力を感じながら走っていたが、この shuffle は服装の中に溶け込んで消滅する感じだ。

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さらにそれに加えて、私は iPod shuffle が iPod nano より雨に強いのではないかと期待をかけている。まだ雨の中で走ったことは一度もないが、たいていの場合はウエストバンドの外側に着ているシャツが十分に雨からの保護を果たしてくれると思う。本格的な土砂降りの際には何かプラスチック製のカバーを付けようかと思っている。(本格的な防水仕様の iPod shuffle もあることはあるが、私はランニングをしているだけで、水泳をしている訳ではないのだから!)その上、shuffle の方が表面積も小さく、水が入る恐れがあるような開口部も nano より少ない。以前の nano には旧式の 30-pin ドックコネクタポートがあって、ここから水が入ったのが壊れた原因だったのではなかろうかと思う。けれども shuffle には開いたままのポートはない。充電や同期をするポートはヘッドフォンポートと兼用で、従って使っている間もヘッドフォンが差し込まれているからだ。(付属の充電および同期用のケーブルの片側には USB コネクタが付いていて、コンピュータに接続したり、あるいは iPhone 用の充電器に繋いだりして使えるし、もう片側にはヘッドフォンジャックが付いている。長さはたった 1.5 インチ (3.8 cm) だ。もう少し長い方が使いやすいとは思うが、まあそれほど大きな問題ではない。)

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デバイスの上面には3ポジションのスイッチがある。Off、Normal、Shuffle を切り替えることができる。プレイリストの中で再生順序をランダム化する Shuffle モードを私が使うことがあるとは思わない。あらかじめ設定した順番にポッドキャストを聴くのが私の習慣であることはさきほども述べたが、クラシック音楽のリスナーである私にとっては音楽のプレイリストでさえも再生順序に意味がある。個々ばらばらに独立した「楽曲」を手当り次第に寄せ集めたものではないのだ。(協奏曲の楽章の演奏順をランダム化したり、テーマと変奏曲の組曲をデタラメな順序で演奏したりしたら、聴くのは苦痛以外の何物でもないだろう。)ランニングの途中で iPod shuffle のスイッチを切る必要があるのかどうかさえまだ分からない。今のところ切ったことはないし、充電は十分以上に保っているようだ。この調子ならば、電源を切る必要など一切無いかもしれない。

クリックホイールも、実際 iPod nano のクリックホイールより良くなっている。nano では、ホイール上の四つの基本位置と中央とはボタンだったが、それに加えて時々ホイールがホイールとして働くこともあった。例えば、音量を上げ下げするには、あるいはプレイリストの中でトラックをナビゲートするには、ホイールがタッチスクリーンであるかのように扱って、指先をホイールの円周に沿って動かすジェスチャーが必要だった。野道を走りながら、汗で濡れ埃で汚れた指先で扱うには、ジェスチャーがうまく働かないことも時々あった。私がしようとしていることを nano がどうしても感知してくれなかったりした。また、私が中央のボタン(選択)を押しているのか、それともホイールの下側(再生、一時停止、あるいは長押しすれば電源オフ)を押しているのか nano が正しく区別してくれないこともあった。それに対して、同じホイールの形はしていても、iPod shuffle にあるのは本当に五つの異なったボタンのみだ。音量の大・小 (南北の基本位置)、前・次あるいは早送り・巻き戻し (東西の基本位置)、再生・一時停止 (中央) の五つだ。これらのボタンの弾力ある、クリック感のある触感の反応は素晴らしく、ホイールの盛り上がった形は触っただけですぐ分かる。その結果として、私は見ないままで望みのボタンを思い通りに押せるようになった。(思い出して頂きたいが、この shuffle は腰のところにあるので、見ないで操作できるのはとても良いことだ。)

iPod shuffle の中央のボタンは一つ賢いことをする。三秒間押さえ続けると、クリックホイールをロックしてくれる。(その上でヘッドフォンを通じ、今や iPhone や iPad でお馴染みとなったロックのサウンドを聞かせてくれる。)こうすると中央のボタンも四つの基本位置ボタンも反応しなくなり、もう一度中央のボタンを三秒間押さえるか、またはデバイスの電源を切るかするまでその状態が続く。この機能は、間違ってボタンをクリックしてしまうのを防ぐために便利だ。ランニングを終えてウエストバンドからバネ式のクリップを取り外す際に、私はこの機能を使っている。クリックホイールのどこかを押すことなくクリップを外すのはほとんど不可能だからだ。クリックホイールがロックされていれば、押してしまっても何も起こらない。

iPod shuffle に何を入れておくかを管理するのは、iPod nano で管理していたのと全く同じ方法でできる。この shuffle にはたった 2 GB の音楽しか入らない。その点は nano も同じだった。どの音楽なりポッドキャストなりを shuffle に入れておくかを管理するには、shuffle をコンピュータに接続して iTunes を使う。この点も nano と同じだ。けれども shuffle では、iTunes でセットアップしている間にプレイリストにすべてを整えておくことが nano の場合よりさらにもっと重要になる。なぜなら、いったん外へ持ち出した後は、nano とは違い、shuffle にはアルバムとか作曲者とかいった概念が存在しないからだ。利用できる内部的分類は、プレイリストのみだ。

では、shuffle を持って戸外へ出た後に、具体的にどうやってプレイリストを利用するのか、と皆さんはお尋ねになるだろう。もちろん nano ならば、スクリーンがあるので、プレイリストなりアルバムなり何なりのリストの中へ、好きなように入って行ける。一方 shuffle では、VoiceOver 経由であなたに語りかけることによってその問題を解決している。第四世代の iPod shuffle では、独立の VoiceOver ボタンがデバイスの上面に付いている。このボタンを押してすぐ離すと、あなたに向かって現在のトラックの名前を朗読してくれる。クリックホイールの前・次のボタンを使った場合も、切り替わる先のトラックの名前を読み上げてくれる。こうして、一つのプレイリストの 内部で ナビゲートができる。別のプレイリスト ナビゲートするには、もっと長く VoiceOver ボタンを押し続ける。すると、このデバイスがすべてのプレイリストの名前を読み上げ始めるので、行きたいプレイリストの名前が聞こえた直後に中央のボタンをクリックすれば、そのプレイリストに切り替わる。また、VoiceOver ボタンをダブルクリックすれば現在のバッテリ状態の報告が聞ける。

これは独創的なやり方だが、少なくとも私にとっては、iPod shuffle が期待外れに思える主要な点でもある。VoiceOver 読み上げだけでは情報が不足するからだ。私はこのデバイスにかなり多数のポッドキャストのエピソードを詰め込んで、一週間分のランニングに十分使えるようにしている。それらをすべて聞き終えてから、コンピュータに接続し、ポッドキャストのエピソードをすべて削除し、ポッドキャストの作者たちがその間に親切にも出版してくれた新たなエピソードを詰め込むようにしている。だから、shuffle を使っている間は、現在のプレイリストにあといくつのエピソードが残っているか、現在聴いているものがプレイリストの中の何番目か、といったことを知る必要がある。とりわけ、あとどのくらいで最後のエピソードになってしまうかを知っておく必要がある。なぜなら、最後のエピソードに達したら、いったんホームベースに戻って既存のポッドキャストを削除し、新たなものを追加しなければならないからだ。iPod nano では、スクリーンを見るだけで("13 of 14" といった表示が出ているので)この情報が得られた。けれども iPod shuffle では、それほど容易なことではない。私には、次のような選択肢があるようだ:

これで iPod shuffle のすべてのボタンとすべての機能を説明し終えたけれども、もう一つ言い添えておきたいことがある。デバイス自体のボタンを使ってデバイスをコントロールするだけでなく、一部のヘッドフォンやイヤーバッドに付いている遠隔操作の3ボタンスイッチを使ってコントロールすることもできる。戸外に出ている場合はその方が望ましいかもしれない。The Levelator を通していないポッドキャストの中には音声が非常にやかましい部分と非常に静かな部分が混じっているものもある。そういう場合、shuffle に内蔵された音量コントロールを使うよりも、遠隔操作を使う方が素早く音量の調整ができるものだ。奇妙なことに、shuffle に付属のイヤーバッドには遠隔操作スイッチが付いていない。でもそれは私にはどうでもよいことだ。私は、このイヤーバッド(旧型の Apple イヤーバッド)が大嫌いだし、これを着けてランニングするなど考えられない。(音質が酷い上に、すぐに耳から落ちてしまう。)Apple から出ている新型の EarPods なら試してみたいとは思うが、残念ながら shuffle には付属していない。たとえあなたのお気に入りの聴取用ハードウェアに遠隔操作スイッチが付いていなくても、例えば iLuv Remote. などの短いインラインアダプタを使えば解決することを付け加えておこう。

遠隔操作を使うことの唯一の欠点は、学習曲線がかなり険しいことだ。ボタンはたった三つしかない。片側に Volume Up ボタン、反対側に Volume Down ボタン、そして真ん中にクリックスイッチだ。さまざまの機能を利用するために必要なジェスチャー言語は、直観的には程遠い。例えば、次のトラックへ進むには、あるいは早送りするには、何らかの方法で Volume Up ボタンを使うのではないかと思うのが自然ではないだろうか? ところが違うのだ。そのためには、真ん中のボタンをダブルクリックする。(前のトラックに戻るにはトリプルクリックする。)Apple から、使えるジェスチャーをリストした便利なサポート書類が出ている。私は今もまだこのリストを勉強中だ。私の iPhone や iPod touch も大体同じ風に遠隔操作に反応するけれども、これまで私はこのジェスチャーリストを覚えようという気になったことがなかった。けれども iPod shuffle にはスクリーンが無いので、あらゆる遠隔操作ジェスチャーを覚えておく必要度がぐっと高くなる。

これも悪くない -- 以上が、私が結局 iPod shuffle にたどり着き、自分自身でも心底驚いたことにそれを気に入るようになった、物語だ。どんなものであっても、私にランニングの服装を着たいと思わせ、戸外へ出たいと思わせるなら、それは良いものだと言えるし、iPod shuffle は間違いなくそれに該当する。あり得ないほど小さなサイズと驚くほど良い音質のお陰で、まるで秘密の個人トレーナーがいつも私の側に付いていてくれるような気さえする。

私の中の一部は、古い iPod nano から新しい iPod nano へ移行できなかったことを今でも残念に思っている。いったいなぜ Apple は、ランニングに使える nano を今も作っていないのだろうか? その部分の私は、Apple が以前の nano のクリックホイールと小さなテキストスクリーンを見捨てたのは間違いだと思っている。タッチスクリーンが相応しくない状況が確かにあるからだ。他方、私がランニングに使えるデバイスを Apple が今も作っていると知って、私はとても嬉しかった。その上、この iPod shuffle には以前の iPod nano より私の気に入る点がたくさんある。きわめて小さいサイズ、さらにはスクリーンが無いことさえ、私の使用目的には何の問題もなく、一週間分のポッドキャストや最近手に入れたオーディオブックなどを詰め込んで、風や日差しの下に持ち出し、毎日一時間ずつ舗装路や野道をドスンドスンと踏み締めるのに連れて行ける。機能としては nano よりシンプルで限定されているが、そのシンプルさと限界こそが、私の目的には完璧にマッチしている。そもそも、nano の他の機能は以前もほとんど使っていなかったのだ。たった一つ無くて本当に残念だと思うのは、数字による統計情報が出ないことだ。例えば今聴いているトラックがプレイリストの中で何番目のものかとか、現在のトラックの残り時間はどれだけかとか、そういったことだ。けれどもそのくらいは無くても我慢できる。いずれにしても私には我慢する他ない。

よく考えてみると、現在入手可能な Apple デバイスのレパートリーの中でこの iPod shuffle に存在意義があって、私が使っていた古い iPod nano にもはやそれがない理由の一つは、現在は iPhone と iPod touch が存在するからなのだと思う。今では信じ難いことだが、その登場した時代においては、あの第二世代 iPod nano こそ、パワフルで独創的なインターフェイスの最先端であった。皆が他の MP3 プレイヤー(そう、当時はそう呼ばれていた)を持っているが、現在のトラックをスキップする方法さえほとんど誰も知らない、ましてや残りのトラックがあと何個かなど誰も分からないといった中で、私だけが最先端の iPod nano を手にして勝利のダンスを(文字通り)踊ったのを思い出す。その上、あの nano はこの記事で触れなかった他の技もたくさん備えていた。例えば連絡先、カレンダー、テキストメモを保存して表示でき、写真さえ表示できた! アラームや、スリープタイマー、ゲームもいくつか付いていた!! 自分の音声を録音することさえできた!!!

その当時、私は学会への出張で飛行機旅行をする際に、メインの携帯用デバイスとしてあの iPod nano を持って行ったものだ。けれども現在では、iPhone が 存在している し、誰もがその意味するところを知っている。その高度なタッチスクリーン、驚くべきコンピューティングのパワー、驚異的なコミュニケーションと知覚のハードウェアで、iPhone こそ間違いなく最良の旅行の連れ合いとなる。だから、現在では、粗削りでちっぽけなスクリーンと混乱しやすいクリックホイールのインターフェイスを備えたデバイスなど、誰が必要とするだろうか? そのインターフェイスはそれ独特の革命的なものを持っていたし、歴史と懐古趣味の観点から私は iPod classic がそれを引き継いでいるのを喜ばしいと思っている。けれども私は、それを提供し続けることで自らを古臭く見せるのを Apple が望まないかもしれないことを理解できる。私はただ、Apple に次のことを忘れないでいてもらいたいだけだ: 世の中にはランナーたちもいる。この世界はデコボコで、引っ掻き傷の付きやすい、埃っぽい場所であり、日光は照り付けるし雨でびしょ濡れになることもある。だから、タッチスクリーンは決して究極無二の、それのみですべて完了のものではない。今や iPod shuffle オーナーとなった私は、Apple がこれをも見捨ててしまわないことを願うのみだ。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2013 年 4 月 22 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Mailplane 3.0 -- Uncomplex が Mailplane 3.0 をリリースした。同社の Gmail 専用電子メールクライアントのメジャーなアップデートで、Gmail に新設された作成モードに対応するとともに、Google Calendar と統合するようになった。Mailplane 3.0 は最大 10 個のアカウントに対応でき、タブ化されたアカウントの間を即座に切り替えることができる。また、今回から添付ファイルを Quick Look を使ってプレビューできるようになり、Mailplane に添付物としてドロップされたディレクトリを自動的に圧縮するようになった。その他の追加機能としては、Retina ディスプレイと通知センターへの対応 (Do Not Disturb 機能にも対応)、プラグイン組み込み、それから AwayFind (緊急メッセージの際にあなたに知らせる) や RightInbox (メッセージのスケジュール化や追跡) といった Gmail 拡張サービスに対する 30 パーセント割引もある。(新規購入 $24.95、アップグレード割引あり、2012 年 10 月 1 日以降に購入した場合は無料アップグレード、3.4 MB、リリースノート)

Mailplane 3.0 へのコメントリンク:

Things 2.2 -- Cultured Code が Things 2.2 をリリースし、この Mac 用タスク管理アプリがより良く反応するように全体的なパフォーマンスの改善を施した。今回のアップデートではまた Things Cloud から to-do 項目をダウンロードする速度が向上し、タイムゾーンを跨いで旅行する際の日付の処理を改善して、スケジュールにある日付、締切の日付、繰り返し起こるタスク、場所による通知、Daily Review などがあなたが現在いるタイムゾーンでの正しい時刻に登場するようになった。その他の改善点としては、アプリのドックアイコンに(または notes フィールドに)電子メールメッセージをドロップした際の処理、テキストフィールド中のコンテクストメニューの挙動、Logbook における日付のフォーマット、アプリがオフライン状態にあることの表示などの改善がある。今回のリリースではまた AppleScript で生成された to-do 項目の登場する順序がおかしくなった問題、Schedule および Daily Review で項目の順序がランダムになった問題、ある種の文字を含んだタグを作った場合に起こったクラッシュなども修正されている。(Cultured Code からも Mac App Store からも新規購入 $49.99、無料アップデート、16.3 MB、 リリースノート)

Things 2.2 へのコメントリンク:

CloudPull 2.4 -- Golden Hill Software が CloudPull 2.4 をリリースし、2013 年 7 月 1 日に閉鎖される Google Reader からデータをバックアップする機能に焦点を当てた。(代わりとなる RSS クライアントを探しているなら、2013 年 3 月 18 日の記事“Google Reader の代替を探る”が参考になるだろう。)CloudPull の無料版も有料版も、今回からあなたがタグを付けた記事も、スターを付けた記事や共有した記事、like を付けた記事とともにバックアップできるようになった。(スター付き、共有、like、あるいは個別のタグに対応する)フォルダで切り分けられた HTML ブックマークファイルに記事を書き出せるようになったので、Safari と Chrome のようなブラウザにも、またブックマーキングウェブサイト Pinboard にも読み込ませられる。今回のアップデートではまた Quick Look プレビューを改善し、記事のテキストを元のウェブサイトからでなく RSS フィードから表示するようになり、記事のフルリストを表示する際には元のウェブサイトの名前を含んだ Source カラムを追加するようになった。CloudPull は Golden Hill ウェブサイトからも Mac App Store からも (CloudPull Premium と呼ばれている) $9.99 で入手でき、これは最大 10 個の Google アカウントに対応できる。無料版の CloudPull も Mac App Store から入手できるが、こちらは一つのアカウントしかバックアップできない。(新規購入 $9.99、 TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、12 MB、 リリースノート)

CloudPull 2.4 へのコメントリンク:

Aperture 3.4.4 -- Apple が、同社のプロフェッショナル向け写真管理アプリケーション Aperture をアップデートして、いくつかの苛立たしい問題に対処を施した。Aperture 3.4.4 では、理由は述べられていないがイメージの読み込み中やフォトストリームに写真をアップロード中にアプリケーションが突然終了する問題が修正され、Nikon P7700 カメラの RAW 画像が“読み込み”ウインドウで正しく表示されるようになり、名前が 250 文字を超えるサムネールが正しく表示されるようになり、スリープ解除後に Web アルバムの同期が完了した場合に複数の警告ダイアログが表示される問題が解決し、重要だがやはり詳細は述べられていない「安定性およびパフォーマンスの改善」が施された。(Mac App Store から新規購入 $79.99、無料アップデート、523.15 MB、リリースノート)

Aperture 3.4.4 へのコメントリンク:

iPhoto 9.4.3 -- iPhoto 9.4.3 により、Apple はこのコンシューマ向け写真管理アプリのフォトストリーム対応を拡張し、いくつかバグを修正した。写真を“自分のフォトストリーム”からゴミ箱にドラッグして削除できるようになり、“ファイル”メニューの“書き出す”コマンドを使用してフォトストリームから写真を書き出せるようになり、“自分のフォトストリーム”から手動で読み込んだ RAW イメージを編集できるようになった。バグ修正の方に目を向ければ、手動で回転した写真をフォトストリームに送信したときに回転が無効になる問題、Facebook に同期中に iPhoto が突然終了する問題、カレンダーのテキストのフォントサイズが正しく表示されず注文がキャンセルされてしまう問題、それからブックの見開きページを並べ替えたときにページ数が間違って表示される問題が修正された。(Mac App Store から新規購入 $14.99、アップデートは Mac App Store またはソフトウェア・アップデート経由で無料、Apple のサポートページからの直接ダウンロード 730.91 MB)

iPhoto 9.4.3 へのコメントリンク:


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TidBITS ISSN 1090-7017©Copyright 2013 TidBITS: 再使用はCreative Commons ライセンスによります。

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