TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1177/10-Jun-2013

WWDC の初日に、Apple はいくつか大波を起こした。新しい Mac Pro、新型機種の MacBook Air、新しい AirPort ベースステーション、iWork for iCloud、そして最も注目すべきは、サーフィンに着想を得た OS X 10.9 Mavericks と、デザインを一新した iOS 7、これらを次々と発表したからだ。TidBITS チームはこれらの興味深い詳細を皆さんにお伝えしようと一日中懸命に働いたので、どうぞ読み進んで頂きたい。さて、この秋に Mavericks がリリースされるのを皆が待っている一方で、Apple は Mountain Lion をバージョン 10.8.4 にアップデートして Messages の困ったバグをようやく修正するとともに、その他にもさまざまのマイナーな問題を修正した。Apple 以外に目をやれば、技術用の図表・イラストレーション作成アプリ Canvas が長い沈黙を破って Mac に復帰し、人気ある iOS 用ポッドキャストアプリ Instacast の開発者がこれを Mac 用にも作って興味深い同期機能を盛り込み、Smile の Jean MacDonald が女子たちにプログラミングを教える非営利の App Camp for Girls をスタートさせた。最後にもう一つ、今回も FunBITS 記事をお届けしよう。古典的な Snake ゲームをファンタジーアドベンチャーゲームに転化させた、iOS および Mac 用の Nimble Quest を紹介する。今週注目すべきソフトウェアリリースは、LaunchBar 5.5、Aperture 3.4.5、iTunes 11.0.4、BBEdit 10.5.4、TextWrangler 4.5.2、それと Snow Leopard 用および Lion 用のセキュリティアップデート 2013-002 だ。

記事:

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Apple 新 Mac Pro に手をつける

  文: Michael E. Cohen: [email protected], @lymond
  訳: M.Sugimoto <dfbia300@kcc.zaq.ne.jp>

"これ以上のイノベーションはないよ、" Apple の WWDC 世界開発者会議の会場で新しく完全に再設計された Mac Pro を参加者たちに紹介したキーノートスライドの前に立ったとき、Phil schiller は楽しそうにつぶやいた。その光輝く新製品はまだ価格は決まっておらず、次期四半期のどこかで出荷が予定されているが、2009 年以降主要なアップデートを見なかった現行 Mac Pro の完全な再設計となる。新 Mac Pro は文字通り「転がして」出荷 できる。鈍く光るつや出し仕上げの黒いアルミの匡体は、高さ 9.9 インチ、幅 6.6 インチ (25.1 x 16.8 cm)の円筒形だ。

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この Mac の新しい形状、サイズ以上にさらに特筆すべきことは、それがハードドライブもドライブベイも持たないという事実であって、Apple の Pro 製品群の驚くべき出発点になっている。何年もの間、プロのユーザーは Mac Pro を追加のディスクストレージと周辺カードで一杯にすることを好んできた。しかし、ディスクを装備する代わりに、この新モデルはシステムが毎秒 1.25 GB の速度でアクセスできる PCIe フラッシュストレージを使用する。

他のストレージデバイスに関しては、この円筒の Mac Pro は代わりに 6 つのThunderbolt 2 ポートを提供し、各々が毎秒 20 GB のデータ転送速度を提供する能力があり、一つか、二つか、あるいはそれ以上の拡張シャーシに使える。Thunderbolt 2 ポートはデイジーチェーン接続で最大 6 つまでデバイスをサポートできるので、来るべき Mac Pro は一度に 36 個まで Thunderbolt 2 デバイスをサポートすることが可能だろう。Apple は特別な拡張シャーシをアナウンスしなかったので、Apple が拡張シャーシを提供するのか、あるいはサードパーティーのために残したままにしているのか、わからない。

内部ストレージデバイスベイの欠如を嘆く映像分野のプロは同時に 3 つの 4Kディスプレイ、Apple はそんなディスプレイを今日アナウンスしなかったが、までサポートする Mac Pro の能力を歓迎するかも知れない。映像のプロが確実に好むものはより改良されたグラフィックス処理能力で、新 Mac Pro は 2 つのAMD 製 FirePro GPU を装備し、各々 6 GB まで VRAM を接続できるので、7 テラフロップスまでのグラフィックス処理能力を提供する。これは旧モデルのほぼ3 倍の性能だ。

Apple はメモリのスペックを明らかにしなかったが、新 Pro は Apple のサイトの写真から判断すると、どうも 4 つの DDR3 メモリスロットをサポートするようだ。これらは 1866 MHz で通信するコントローラで処理され、現行の Mac Proのバンド幅の 2 倍にあたる毎秒 60GB のメモリバンド幅を提供する。メモリは2 コアから 12 コアを特徴とする新 Intel E5 チップセットに供給されて、現行モデルの 2 倍の浮動小数点性能を提供する。

ポートの写真を締めくくるのは、2 つのギガビットイーサネットポート、4 つのUSB 3 ポート、ヘッドフォンとスピーカーポート、1 つの HDMI 1.4 ポートだ。このたくさんのポートへのアクセスを確認するために、Mac Pro を回転して、新しいデバイスをプラグインするとき、I/O パネルがライトアップする。

どのプロたちが目を見張るようなスピードとほっそりしたデザインをもつ、このすばらしい、新しい、丸く輝く Mac Pro を歓迎するか言うことは難しいし、ドライブベイと拡張スロットを欠くために、激怒しないまでも、誰が失望するか言うことも難しい。誰も(アメリカ合衆国内で組立て製造されるであろう)このコンピュータが今年後半に顧客に出荷され始めるまでははっきりしたことはわからない。しかし、プロ用のデスクトップコンピュータがどのようなものであるべきか、Appleが再創造したことを誰も否定することはできない。

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Apple 動作時間のより長い MacBook Air、より高速の AirPort をリリース

  文: Agen G. N. Schmitz: [email protected]
  訳: M.Sugimoto <dfbia300@kcc.zaq.ne.jp>

再設計された Mac Pro のようなみずみずしいセクシーさは欠くけれども、Appleは WWDC 世界開発者会議で MacBook Air と AirPort ベースステーションの新モデルを紹介した。MacBook Air の新モデルはバッテリー動作時間を大幅に伸ばし、一方 AirPort ベースステーションは新たな背の高いデザインをもち、802.11ac プロトコルの追加で Wi-Fi 通信性能を高めた全面的な見直しがされている。

MacBook Air バッテリー動作時間とプロセッサー速度をアップ -- 繰り返し改良設計することで、リフレッシュされた 11 と 13 インチの MacBook Air モデルは外観は従来と変わらないが、802.1ac Wi-Fi の追加、より高速の第四世代Intel dual-core プロセッサー(新しい Intel Haswell ラインナップから)、そして改良された Intel HD Graphics 5000 内部グラフィックスの採用など、その内部ハードウエアの改良に集中している。しかし、最大の変更点はそれぞれのサイズの MacBook Air のバッテリー動作時間で、11 インチモデルで 9 時間(iTunes ムービーの再生では 8 時間)、13 インチモデルでフルの 12 時間(ムービー再生で 10 時間)であると Apple は公表している。以前の 11 インチモデルでは最大で 5 時間、一方 13 インチモデルは理論的には最大 7 時間だった。

11 インチの MacBook Air の価格は 128 GB フラッシュストレージモデルで$999、256 GB フラッシュストレージモデルで $1,199、一方、13 インチMacBook Air の方は 128 GB モデルで $1,099、256 GB モデルで $1,299 だ。すべてのモデルの特徴は 1.3 GHz の Intel Core i5 プロセッサー(Intel Turbo Boost 経由で 2.6GHz にジャンプする)と 4GB の 1600 MHz LPDDR3 RAM をもつことだ。11 インチ、13 インチの両モデルともさらなるストレージ容量の増加(512 GB)、より高速の 1.7 GHz デュアルコア Intel Core i7 プロセッサー、そして最大 8 GB の RAM の構成が可能だ。

ビーム形成をもつ、より高速の Wi-Fi -- 2007 年以来のその特徴であるずんぐりした正方形の外観から、新しい AirPort EXtreme AirPort Time Capsule の両方とも Mac Pro のデザインの変身に似た、より背の高い外観に変化した。両方とも完全に円筒形になるというより、四隅が丸まった正方形の外観を継続している。それぞれベースステーションは 6.6 インチの高さと 3.85 インチの縦横(16.8 x 9.8 cm)で、現行の Time Capsule に対して 75 パーセントの、AirPort Extreme に対して 64 パーセントの設置面積の削減となる。(比較として、Mac Pro は 9.9 インチの高さ、直径 6.6 インチ。)ポート類は従来モデルと同じまま残り、1 つの WAN、3 つの ギガビットイーサネット、1 つのUSB 2.0、そして電源供給接続ポートだ。

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しかし、Apple の AirPort ラインの最大の変更は、802.11ac Wi-Fi ネットワーキングプロトコルの追加だ。それは 3 つのデータストリームを使用して、802.11ac 動作可能なデバイスに対して、公称、最大毎秒 1.3Gb のバンド幅を提供する。(802.11n の毎秒 450 Mb の 3 倍)ベースステーションはそれぞれ、3つの 2.4 GHz アンテナと 3 つの 5 GHz アンテナをもち、すべてのアンテナが改良された Wi-Fi 性能を実現するために、デバイスの頂上に配置されている。この 6 要素 "ビーム形成" アンテナアレイはその Wi-Fi ストリームをネットワーク上の一つの 802.11ac デバイスに対して向けるように集中させることもできる。このようにして、すべての方向に Wi-Fi 信号を一定のストリームで放射させるというよりも、新ベースステーションは 802.11ac を経由してこれら接続されているデバイスを検出し、それに対してさらなるバンド幅を与えるようにしている。従来の 802.11n ベースステーションと同様に、新 AirPort モデルは2.4 GHz と 5 GHz 周波数バンドを使用して、同時にデュアルバンドのデータ伝送をサポートする。

AirPort Time Capsule は 2 つのタイプがあり、2 TB 版が $299、3 TB 版が$399 だ。一方、AirPort Extreme は $199 だ。

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iWork for iCloud ベータ版が iWork.com を思わせる

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

iWork.com という名前のどうしようもない大失敗を覚えておられるだろうか? Apple は去年、このサービスを閉鎖した。それまでの三年間、結局公開ベータ版の段階を脱することができないまま iWork.com は見苦しい姿を晒し続けた。(2012 年 3 月 12 日の記事“Apple がようやく iWork.com を窮状から救い出す”参照。)けれども Apple は、またもや無謀にも同じことを繰り返そうとしているかのように見える。今回、開発者用ベータ版の iWork for iCloud がスタートし、今年中には公開ベータ版も出る予定だという。

iWork for iCloud とは、基本的には Pages と Numbers と Keynote をウェブに移植したものだ。iCloud の中にあなたが保存した書類に対する作業を、それぞれのアプリを Mac や iOS デバイスの上で使うのと同じやり方で、ウェブブラウザの中でできるようになる。一応動作はするようで、ウェブブラウザの中でこんなことまでできるというデモンストレーションとしては、とても素晴らしい。ただし、すべての機能がフルにサポートされているのかどうか、あるいは書類を iCloud 経由で編集する結果としてその書類の高度な側面のいくつかが失われたりしないのかどうか(iOS と OS X の間で書類をやり取りするとそういうことが今もまだ起こる)といった点については現在のところまだ判明していない。

でも、いったい誰がそんなものを使いたいと思うだろうか? Apple は、いったいなぜそんなものに時間を費やしているのだろうか?

すぐ思い付く使用事例としては、Mac が自宅にあるけれども仕事場で Windows を使わなければならない人や、大学生が MacBook を持ち歩かずに(あるいは購入せずに)大学図書館の共用コンピュータで自分の書類の作業をしたい場合などが考えられる。すぐ思い付くのは確かかもしれないが、よく考えてみれば意味を成さない。いったいなぜ Apple は、その人が Mac や iPad を 使わない ことを後押ししたいのか? とりわけ、使用感がそれほど良くない(と予想できるのではないか?)のならばなおさらだ。

その答が共同作業と無関係なことだけは確実だ。例えば Google Drive の各種アプリは、その素晴らしい共同作業用の機能の結果として、アプリとしてはかなり機能の弱いものという折り紙付きだ。他方 iWork for iCloud では、書類を共有するための 唯一の 方法が、電子メールに添付することなのだから。実際、本当に時代遅れもいいところで、Apple が現代世界における共同作業の重要さに全く気付いていない結果として人々を競合するサービスへと追いやっていることの、これはやはりもう一つの最新の実例だと言える。(いや、共同作業を必要とする人々は Apple の主要な聴衆でないなどと言わないで欲しい。私たちが共同作業を必要としていることに疑いの余地はないし、私たちはまさにこの盲点があるからこそ、これほど多くの Apple サービスを回避せざるを得ない状況に追い込まれているのだから。)

私には一つ思い付いたことがある。それを裏付けできる証拠は何一つ持っていないのだけれども、ひょっとしてこの iWork for iCloud というのは、デスクトップのアプリを真似してウェブアプリを書き上げることができる Apple の腕前を見せるためのものではなくて、基本的に iCloud から JavaScript ベースのランタイム環境の内部でコードを走らせるテクノロジーをテストするためのものではないのだろうか。言い替えれば、今回 Apple は三つの異なるウェブアプリを書いたのではなくて、その代わりに既存の Mac 用あるいは iOS 用のコードを何らかの仮想マシンの中で走らせているのだとしたらどうだろうか。もしもそうだとしたら、ひょっとすると今後 Maps アプリの iCloud 版なども期待できるかもしれない。そうなれば、将来のアプリベースの iCloud に向けた、さまざまな臆測が一斉に湧き起こることだろう。

いや、今言ったことはもちろん単なる推測に過ぎない。さて現実世界に戻れば、Apple は実際、今年中に iWork アプリのアップデートも出す予定だと述べた。Pages も Numbers も Keynote も、もう四年間以上にわたり大きなアップデートはなく、バグ修正さえ大して出されていないので、少しでも目を向けてもらえるのは歓迎すべきことだと思う。

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Apple、全面的に再設計された iOS 7 を披露

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

今日の Worldwide Developer Conference において Apple は、モバイルオペレーティングシステムの次の世代となる iOS 7 をお披露目した。これは Industrial Design 担当の Senior Vice President である Jony Ive によって完全に再設計されたものである。

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新しい外観 -- 基本的な iOS インターフェースはそのまま残っているが - ホーム画面上の格子状に並んだアイコンと Dock - 見慣れたインターフェースの殆ど全部の様相が変わった。アイコンは全て新しくなり、より平面的なデザインとなった。主フォントは今や Helvetica Neue UltraLight となり、iOS にさらに洗練された、より都会的な外観を与えている。

年齢を感じさせ、嫌がられることの多かった模造素材的な要素は脇に追いやられた。縫い合せレザー、緑色のフェルトは消え、電波強度バーすらもドットに置き換えられた。同様に、アイコンは写真的であるよりももっと漫画的で、より単純な線画で出来ている。

だからと言って、iOS は目の覚めるような視覚効果を失ったわけではない。新しい Weather アプリには、雷、雪、そして雨といった現在の気象の映画的な表現が用いられている。そしてホーム画面には iPhone のジャイロと連動した新しい視差を利用した立体ビューを採用している。電話を傾けると、アプリのアイコン達もそれに連れて動くので、アイコンの 後ろ を見ることが出来、Nintendo 3DS で使われたものと似た 3D 効果を与えている。タスクの切り替えも再デザインされ、アプリのアイコンだけでなく全アプリのプレビューを示す様になり、WebOS で使われたカードと似ていないと言えなくもない。

舞台裏 -- タスク切り替えの話をすれば、iOS 7 はただ単に可愛らしい新顔というだけではない。そこには 数十もの中心部での改良がなされている。その一つに全てのアプリを対象とするマルチタスキングがあるが、これで電池寿命に悪影響は及ぼさないと Apple は言っている。これは iOS 7 があなた個人の使用パターンを認識するからである。

Senator John McCain は、アプリのアップデートが今やユーザーの介入なしで自動的に背後でなされることに満足しているであろう。(McCain は最近アプリのアップデートについて Tim Cook に苦情を述べた、"Apple、税慣行について召喚される" 24 May 2013 参照。)

通知もまた大きく改善された。あなたの Mac に通知を送るアプリを指定できるようになるので、これら全てを見るために手元に iPhone を置いておく必要は無くなる。それだけにとどまらず、通知は今や機器間で同期される。三つの異なる機器上で同じ通知を繰り返し消していく必要はもうない!

ロック画面上で通知を見るのもやり易くなるはずである。通知は今や三つのタブに分けられる:Today, All, そして Missed である。Today タブはその日に受け取った通知だけを表示し、そこには交通警報も含まれる。Missed には、取りそこなったメッセージ、電話、等々が含まれる。勿論、All タブには全てが表示される。

iOS 7 に対する最も待ち望まれた新規追加であろうと思われるのは、今や Newsstand をフォルダの中にしまえることである! そしてこれらのフォルダにはもはや 12 アプリの上限はない - フォルダの中には欲しいだけの数のアプリを入れられ、そしてそれらを簡単にスクロールして見ることが出来る。

嬉しい新たなセキュリティ改善は、Activation Lock と呼ばれる盗難防止機能である。あなたの Apple ID とパスワードなしでは、Find My iPhone を不能に出来ず、機器の復元も出来ず、そして電話は再アクチベート出来ないので、望むらくは闇市での価値を無くしてくれることとなって欲しい。もし盗人がその機器を何らかの方法で拭い去ったとしても、Find My iPhone はあなたの個人化したメッセージを表示し続けることになる。

コントロールセンター -- 長年に亘って、ユーザーは一般的な設定に手早くアクセスする方法を提供するよう願ってきたが、それがようやく実現した:Control Center である。iOS 7 のどの画面からでもスワイプアップすることで、これにはロック画面も含まれる、Wi-Fi, Bluetooth, Airplane Mode, Do Not Disturb, 回転ロック、音量、そして明るさに対するコントロールが現れる。今やカメラの LED を懐中電灯の様に点灯するボタンすら付いており、そして同様なボタンが、Clock, Calculator, そして Camera アプリ、そして言うまでもない音楽コントロールに手軽にアクセスするために提供されている。

Control Center は恐らく iOS 7 の最高の新インターフェースであると思われる。何故ならば多くの人が簡単にアクセスしたいと思うであろうものを取り込んでいるからである。

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カメラ -- Camera アプリもまた iOS 7 で完全に見直され、偉大な Analog Camera から多く機能を拝借している ("Putting Analog Camera in Your iPhone" 29 May 2013 参照)。例を挙げると、八つのフィルタが組み込まれ、そしてライブのプレビューグリッドを使えばこれらを並べて比較出来る。更に Instagram に親和性の高い正方形の写真を Camera の中から直接撮影する事すら出来る。

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Photos アプリもまた再設計され、歓迎すべき新しい並べ替えオプションも採用された。写真は三つの段階でソートされる:Moments は何処で撮られたかを基準に、Collections は撮られた日付と時間を基準にしたもので、Years は Collections を年毎に集めて一緒にする。

共有フォトストリームもまた改善されて、ビデオの追加が許され、そしてあなたの共有ストリーム全部の時間記録も提供される。Apple は取り立てて何も言ってはいないが、Photo Stream はビデオ同期ももっと広くサポートしてくれていることを期待したい。

Siri -- 歓迎すべき見直しの一つが Apple の苦境に立つ音声制御と検索サービスである Siri である。Apple は Google の Voice Search からヒントを得て、音声認識をより高速化しそして話す傍から画面上に表示する。

Siri の声すら変わった。米語 Siri は真新しい女性の声でより柔らかでより GLaDOS の様ではないよう意図されたものと、そして新しい男性の声も搭載している。新しい声はフランス語とドイツ語でも提供されており、他の言語にも後々拡大される。

Siri は以前よりも強力でもある。ボイスメールも再生出来、お返しの電話も掛けられ、Twitter にもアクセス出来、そして Wikipedia や Microsoft の Bing 検索エンジンからの検索結果も表示出来る。我々は Google を検索するのもオプションとして残されていると想像するが、どうも Siri は Google 検索結果を内部で表示することは無さそうである。Siri はまた Bluetooth をオンしたりオフしたりする様な iPhone 設定にもアクセス可能である。

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車通勤で長い時間費やす人には、iOS in the Car は 2014 年に入手出来る様になった時には Siri を更に有用なものとする可能性を持つ。iOS が車との統合を提供するようになってしばらく経つが、iOS in the Car はようやくサポートする車のダッシュボード組込みのディスプレイを乗っ取ることが可能になる。しかしながら、この機能が広く使われるようになるまでには結構時間がかかると思われる - 多くの人は車を iPhone よりもずっと長いこと買い替えないからである。

Safari -- Safari にもまたある程度の再設計の愛が与えられた。現行バージョンのアプリのインターフェース縁取りの多くは消え、場所と検索のフィールドも含まれる、Apple は代わりに全画面インターフェースへと移行したが、スワイプすれば現れる。そもそもこのインターフェースは余り必要ではない、何故ならば親指スワイプでブラウジング履歴の中を行ったり戻ったり出来るからである。検索フィールドも場所フィールドと統合された。これは Google Chrome や Mac 上の Safari と同様である。

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他の機能は OS X 10.9 Mavericks に対して約束された Safari の新しいバージョンと同じである ("Apple、OS X 10.9 Mavericks をプレビュー" 10 June 2013 参照)。8 枚のタブまでという制限は外され、無制限のタブをサポートし、3D ビューの中でスクロール出来る (少なくとも iPhone 上では - Apple はこれらの新しい iOS 7 機能の何れをも iPad 上では見せなかった)。それから両方のバージョンでサポートされているのが iCloud Keychain である。これは 1Password の機能のかなりの部分を iOS と OS X にもたらしている、少なくとも Safari 内では。そして iOS の Safari は OS X バージョンでの Reading List 及び Shared Links 機能を模していて、またあなたの Twitter や LinkedIn 友人達によって共有されたリンクのリスト、そして読むのに合わせた記事の間でのスクロールも対象となっている。

iTunes Radio -- Music アプリもまた再設計され、Rdio 似の感じとなった。しかし最も興味深いのは、噂されてきたiTunes Radio である。これは 機能の面では Pandora と同一の様に見えるがと同一の様に見えるが、Apple TV の所有者はこのサービスが内蔵されることを歓迎するであろう。これはまた Mac 上の iTunes でも提供される。

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iTunes Radio は無料で、広告付きのサービスとなるが、iTunes Match の購読者は、その年額 $24.99 の会費に対して広告無しの経験が得られる。

通信 -- Apple は iOS 7 に数多くの様々な通信改善を盛り込んだ。Mailbox アプリの様に ("iPhone 用 Mailbox、メールの仕分けは簡単だが重要な機能が欠落" 22 February 2013 参照)、Mail と Messages のメッセージはスワイプに反応する。FaceTime は今や音声だけの通話を許すので、何をやるにもビデオ経由でやるのは嫌だと言う人には朗報となっており、そして iPod を携帯電話により似たものに出来る。そして嬉しい追加機能として、今や望まない電話、FaceTime, そして Messages 接続を阻止できる。

AirDrop は、Mac OS X 10.7 Lion で初めて登場したものだが、ついに iOS にもデビューを飾ることとなった。AirDrop は、写真、ビデオ、連絡先、等々のファイルを近場にいる iOS 7 及び、多分、Mac ユーザーと暗号化したやり取りをさせてくれる。これは Mac の時にはあまり使われることは無かったが、iOS ではその存在価値は遥かに大きいであろう。

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iOS 7 で明らかに足りないのは、アプリ間の通信と共有に対する改善である。例を挙げると、Windows Phone の Contracts や Android の Intents である。再構築にこれだけの手をかけておきながら、アプリ間でデータを共有するのに武骨な URL 方式やコピペに頼らなければならないとしたら、残念極まりない。

何時入手出来る? -- あなたはこれら全ての変更が iOS にもなされることで、興奮を抑えきれないという所だと思われる。開発者達は今すぐプレビュービルドにアクセス出来るが、我々はこれをあなたの主たる機器にインストールすることはお勧めしない。最終バージョンの iOS 7 は今年の秋頃に予定されているが、恐らく OS X 10.9 Maverick とも時期を合わせてのことになると思われる。というのも、これら二つのオペレーティングシステムの間では非常に多くのアプリで同期のやり取りが行ったり来たりするからである。

ご想像の様に、全ての iOS 機器が iOS 7 を走らせられることにはならず、iPhone 3GS と第四世代 iPod touch は対象外となる。iOS 7 は iPhone 4 及びそれ以降、iPad 2 及びそれ以降、iPad mini も含まれ、そして第五世代 iPod touch 上で走る。

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Apple、OS X 10.9 Mavericks をプレビュー

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

過去に何度も Steve Jobs によって演じられた前例にならい、Apple のソフトウェアエンジニアリング担当副社長 Craig Federighi は Apple の Worldwide Developer Conference (WWDC) の基調講演 の壇上で CEO の Tim Cook からバトンを受け、OS X の将来を明かした。Federighi は Apple が猫科の動物の名前が乏しくなってきたのを理由に OS X の十個目のバージョンの出荷を遅らせることを望まなかったと冗談を言い、Apple なら OS X Sea Lion (アシカ) と呼ぶかもと言ったときには 6,000 人の開発者たちから大爆笑が起こった。

けれども実際にどうなるかはまだはっきりしていない。Federighi はさらに続けて、Apple はそういうわけで OS X の今後のバージョン名を Apple に着想を与えたカリフォルニアの地名からとることにしたと述べたからだ。この種のものとして最初に登場するのが Mavericks という地名で、カリフォルニア州北部、Half Moon Bay のすぐ北(サンフランシスコの南)にある、サーフィンで有名な場所だ。私はサーファーではないのでどれほど魅力的な場所なのかよく知らないが、Wikipedia で Mavericks を調べるとここは極めて上級者向けの危険なところで、有名なビッグウェーブサーファーたちが何人もここで命を落としたと書かれている。

とはいえ OS X 10.9 Mavericks というのがその名前だ。戸惑っている人のために言い添えると、この単語は s で終わるけれども単数形だ。開発者たちは今日 WWDC の会場でプレビュー版の Mavericks を受け取った。Federighi によれば、一般向けリリースは「この秋」になるという。9 月から 11 月までのどの時点になるかについては、今後いろいろと臆測がなされるだろう。

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Mavericks において、Apple は二つの相反する欲求のバランスをとろうとした。OS X をもっと iOS に似たものにしたいという力と、大スクリーンの Mac の上のみで意味を持つさまざまの機能を追加したいという必要性だ。私自身はこれまでいわゆる OS X の iOS 化というものをあまり好きになれなかったけれども、どうやら Apple は今回何が目標であるかを以前よりはっきりと掴んだというのが私の印象だ。Mountain Lion では、Launchpad の追加をはじめとするいろいろの変更で、まるで Apple が猿真似のように iOS を OS X の中へコピーしているかのような感じを受けた。けれども Mavericks では、iOS 関係の大きな変更点とはアプリの等価性に関するもの、という性格が強いようだ。

iBooks -- 特に注目すべきは、二つの新しいアプリが Mavericks のデフォルトセットの中に加わったことだ。それが、iBooks と Maps だ。iBooks は、iPad 上の iBooks とほとんど同じに見える。iBookstore にある 180 万冊のタイトルへのアクセスを提供し、標準的な EPUB と、iBooks Author で作られた拡張マルチタッチ本との双方に対応する。大スクリーンによって可能となった二つの歓迎すべき追加機能もある。あなたが書き込んだメモをリストするウィンドウ枠と、同時に複数の本が開ける機能だ。基調講演の中では語られなかったが、 Mavericks の iBooks は PDF ファイルにも対応すると考えるのが妥当だろう。けれどもそれ以外のフォーマット、例えば Kindle 向けの Mobipocket フォーマットなどに対応しているとは考えにくい。(Peter Lewis と私はまだそこまで議論するには至っていないが、この iBooks がリリースされれば、私たちの作った OS X 用 EPUB リーダー Bookle は引退することとなるだろう。この点についてはまた後日詳しく述べたい。)

Maps -- Mavericks に新設される Maps も、当然ながら、Apple の iOS 用 Maps アプリに極めてよく似ている。ストリートビュー、3D ビュー、Flyover 画像、曲がり角ごとの道案内に、フルに対応する。けれども私の見るところ、大きな違いはサイズそのものだ。27 インチ iMac で Maps をフルスクリーンモードにすれば、完全に質の違う体験が得られる。iPad や iPhone の画面で見るのに比べてあまりにも多くのものが見えるからだ。また、Mac 版で作った道順のデータを iPhone 上の Maps に送ったり、手持ちのすべての Apple デバイスでブックマークを同期したりすることもできるはずだ。ここでの大きな疑問は、Apple がいずれは Maps のウェブベースのインターフェイスを作ってくれるかどうかだ。つまり、Apple 製のデバイスを使っていない人たちとの間で位置情報を共有するために依然として遍在の Google Maps に頼らなければならないのかどうか、ということだ。

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Calendar -- Contacts (連絡先) には触れるに値するものがなかったようだが、Federighi はデザインを一新した Calendar を嬉しそうにお披露目した。彼が言うには「このインターフェイスの作成に際していかなる仮想動物にも害が加えられることはなかった」とのことだ。その後彼は、見せかけの縫い目がなくなったことで途切れなくスクロールできるようになったとも述べた。つまりこれは、Apple が Contacts アプリにおいても異素材模倣的なインターフェイスをなくしたということなのだろう。正直言って、悪いインターフェイスがなくなって良かったと私は思う。異素材模倣が機能に相応している場所はある(例えばフォルダや、ゴミ箱など)けれども、近年 Apple が好んで使ってきた異素材模倣インターフェイスはほとんどが無意味なものばかりだった。さらにその後 Federighi は、Apple が Game Center で「緑のフェルトの在庫切れとなった」とさえ言い添えた。さて、見栄えが新しくなったこと以外にも、Calendar では連続スクロールができるようになったので、例えば月の後半の分とその次の月の前半の分とを一緒に見られるようになった。(BusyCal ではかなり以前からこの機能が使えている。)さらに興味深いのは新設されたイベントインスペクタで、ロケーションフィールドにあなたが何かをタイプするに応じて住所や名所などを提案し、同時にその場所の地図を示したり、そこへ行くのにかかる時間を計算したり、その時間をイベントの時刻に繰り入れたりまでしてくれる。そしてこれもやはり、機能のほとんどが iOS 用の Calendar アプリと従来通り同期する。

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Safari -- ウェブブラウザの分野はかなり成熟しているので、Safari にはもはや革新を盛り込む余地があまりない。そこで Apple はインターフェイスにはあまり注目せず、Top Sites の見栄えをアップデートしたりブックマークと Reading List を組み合わせてサイドバーにまとめたり、Shared Links 機能を新設して Twitter や LinkedIn で(ただし Facebook が対象外なのが興味深い)あなたがフォローしている人たちが投稿したリンクを表示するようにしたりするだけに止めた。サイドバーを閉じないままで共有リンクをブラウズでき、上の方にある特別のコントロールを使って簡単に retweet できる。どうやら、私たちが生活の中で為すべきことは、ブラウズして共有、ブラウズして共有、ブラウズして共有、がすべてということらしい。けれども内部の動作においては、Safari にはいくつか素晴らしいものと思える新テクノロジーが組み込まれて、パフォーマンスとバッテリ寿命の双方が向上すると謳っている。ただ、実際の使用でそれがどれほどのインパクトを生むものなのかは今後を待たなければ分からないし、一方で Google や Mozilla がそれぞれのブラウザをそれまでの数ヵ月間のうちに改訂してくることも間違いないだろう。

iCloud Keychain -- Apple の来たるべき iCloud Keychain は、ウェブサイトのユーザ名とパスワードを認可済みのデバイスに保存し、AES-256-bit 暗号化で保護して、個々のデバイス上で最新情報にアップデートし、必要な際には自動的に入力までできる(少なくとも iOS 7 の下では)と約束する。さらに、クレジットカードの情報を保持したり、パスワード生成ツールも装備したり、といった 1Password と同様の機能もあるという。ただし、1Password のようなセキュアメモの機能はないようだし、当然ながら Mavericks と iOS 7 の下でしか動作せず、Safari の中でのみ動く。(Google や Mozilla が Chrome や Firefox にサポートを組み込むことはあるかもしれないが。)要するに、iCloud Keychain は 1Password やその他のパスワードマネージャを使ったことのない人には良いと思えるかもしれないけれども、本格的な 1Password ユーザーならば使い慣れたユーティリティを使い続けたいだろうと私は思う。ことに、私たちと同じくさまざまのウェブブラウザを普段から使っている場合にはなおさらだろう。

Notifications -- Mavericks で最も歓迎すべき変更点の一つは、通知機能 (Notifications) に関係したものだ。10.8 Mountain Lion では、これは便利な面と気に障る面の双方を持っている。一部の通知がインタラクティブになるので、例えばチャットのメッセージが届いたり tweet の通知が届いたりすれば、その通知アラートの中から直接返信できるようになる。同様に、通知の中から電子メールメッセージを削除したり、FaceTime 通話に返答したりもできるようになる。iOS アプリから送られた push 通知が Mac にも現われるので非常に便利に使えるかもしれないし、MacBook でスリープから目覚めさせる度にログインパスワードが必要となるようにしている場合は、ロックされたスクリーンから通知センターにアクセスし、見ていなかった間に何が起こったかの概要を知ることもできるようになる。(この点は iOS 7 でも同様になる。)もう一つ、双方のプラットフォームのどちらにも現われる機能として、アプリの自動アップデートがある。アプリが勝手にバックグラウンドでアップデートされることを望まない人のためにその機能をオフにできるオプションがおそらく提供されるだろう。少なくともそうなるように願いたいものだ。最後にもう一つ、どうやら Apple はついに Joe Kissell の言葉を聞き入れて、通知を消した操作が他のデバイスにも同期されるようになった。どれかを主デバイスと認識してそれに応じて処理するというような高度な機能は備わっていないが、その方向に向けての最初の第一歩とは言えるだろう。(2012 年 5 月 13 日の記事“警告の警戒すべき過剰さ”参照。)

Finder のタブ -- Mavericks の新機能のすべてが iOS と平行しているわけではない。以前から盛んに噂され、本当に誰でも思い付く機能、Finder ウィンドウのタブ機能が、Mavericks でデビューを果たす。Finder のウィンドウに Safari と似たタブが付き、個々のタブがそれぞれ違った Finder 内の場所の表示を提供する。Apple は、一つのタブを Documents (書類) ウィンドウに、もう一つのタブを AirDrop に、さらにもう一つを Back to My Mac に割り当てて、これらすべてを一つのウィンドウの中に置くことを提案しているが、私に言わせればそれは希望的観測に過ぎない。なぜなら AirDrop や Back to My Mac を使っているユーザーの数よりも、ただいくつかのフォルダに素早くアクセスしたいと思っているだけのユーザーの数の方が圧倒的に多いだろうからだ。タブの切替はただクリックするだけででき、タブからタブへファイルを移動するのもドラッグ&ドロップで自然にできる。Finder にタブ機能が付くことで、Finder のウィンドウをフルスクリーンにすることの馬鹿馬鹿しさが減るだろう。多数のタブの中に、よく使う場所を全部入れておけばよいからだ。

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マルチディスプレイ -- 本格的な Mac ユーザーたちの多くが複数ディスプレイに非常に強く依存している(私自身、メインの Mac が SE/30 であった 1990 年以来ずっと二台のモニタを使い続けていて、シングルディスプレイの Mac で仕事をするなど到底考えられない - もちろん、横幅 4,000 ピクセルのディスプレイがあれば話は別だが)という事実を Apple はついに認めてくれたらしい。そのため、フルスクリーンモード自体が Mavericks においては飛躍的に有用なものとなる。Mavericks では、フルスクリーンモードが複数ディスプレイの上で、始めからそう動作すべきであったやり方で動作する。つまり、個々のスクリーン上で、それぞれ独自のフルスクリーンのアプリが動くようになる。従来の主スクリーンと副スクリーンという概念は消え去り、個々のディスプレイがそれぞれ独立のメニューバーを持ち、あなたが現在使っているスクリーンに Dock が現われるようになる。Mission Control を用いて、それらのフルスクリーンアプリやその他のウィンドウを再配置できる。

Apple TV で HDTV を接続している場合は、AirPlay 経由でそれをフル機能、独立のディスプレイとして使える。この機能を大歓迎だと喜んでいる人たちもいるが、私としてはそれほど使い道があるかどうか疑わしいと思う。そもそも仕事机の横にテレビを置いている人は少ないだろうし、私の経験では HDTV に近づいて文字を読むなどそう簡単ではないからだ。だから、私の思い付く限り、その主な用途はビデオの編集くらいだろう。編集中のビデオをテレビに送ってプレビューするのに使えるからだ。

タグ機能 -- Mavericks の目玉機能の最後は(長年待たされやっと実現する)タグ機能だ。どうやら、ずっと以前からあるラベルは完全に消え去るようで、タグを追加するための新しいフィールドが保存ダイアログに現われるらしい。(iCloud の開く/保存のダイアログでもタグが追加できる。)タグ名はあなたがタイプしている最中に自動補完され、新規のタグも簡単に追加できる。また、Finder のウィンドウの中でファイルにタグを割り当てることもでき、さらに Finder ウィンドウのサイドバーの中にタグリストが新設されて、タグの割り当てられたファイルがすべて表示される。ファイルをタグ表示の上へドラッグすればそのタグがそのファイルに追加され、タグを使ってファイルを検索することもできる。

内部の動作 -- 以上挙げてきた機能はどれも良いものだと思うし、自分で試してみることができる日を私は楽しみにしている。けれども Apple はそれ以外にも、Mavericks の備わった Mac がより高速に、より長時間、より低温で動作し続けられるため、さまざまの高度なテクノロジーを駆使してその内部に多くの努力を注ぎ込んだ。Timer Coalescing テクノロジーはローレベルの工程をグループ分けし、本質的に CPU が低電力の状態においてより頻繁に休止できるようにする。

アクティブに何かをしているのではないアプリについては、可視でないものを App Nap テクノロジーが賢く減速させる。つまり、アプリを隠したり、あるいはただ何か他のウィンドウでそのアプリを見えなくしたりすれば、App Nap がその分の CPU サイクルを回収し、結果として CPU のエネルギー使用量が最大 23 パーセントも減り、同時に貴重なバッテリ寿命も節約できる。App Nap はまた Safari のタブにも働くので、現在見えているタブのみがフルに CPU にアクセスできるようになる。同様に、Safari Power Saver テクノロジーが主要なコンテンツと欄外に置かれたビデオやアニメーション(主として広告)とを識別して、あなたが明示的に呼び出さない限り欄外のものは再生されないようにする。これは ClickToFlash プラグインが Safari ですることと似ている。

Mavericks はまた、iTunes HD でテレビ番組や映画を観ている際の作業負荷を再配分して、より多くの処理作業を Mac のグラフィックス処理ユニットに割り当てるようにする。結果としてディスクアクセスが減り、CPU も休ませることができる。Apple はこの新しいやり方によってビデオ鑑賞の際の CPU のエネルギー使用量が最大 35 パーセント減ると推定している。

最後にもう一つ、Apple は Compressed Memory というテクノロジーを思い付いた。これは、アクティブでないアプリのメモり内のデータを圧縮して、アクティブなプロセスのためにより多くのメモリを割り当てられるようにしようというものだ。Apple は、アクティブでないメモリをディスクとの間で転送して Mac が時間を浪費する結果には必ずしもならないと主張している。ただ、それが実際にどのように動作するのかは明らかでない。空きメモリが十分にないためにアクティブでないメモリをディスクに書き込まなければならない事態は起こるだろうからだ。

残る疑問は --最近の何回かの OS X リリースに際して Apple がそれほど厳格に NDA (守秘義務契約) を開発者たちに執行してこなかったので、今後時が経つにつれてさまざまな詳細が漏れ出てくるだろうとは思うが、いずれにしても一般の人が OS X 10.9 Mavericks を手にできるまでにはまだ数ヵ月の期間がある。非常に多くのアプリやサービスが iOS 7 との間で統合されることを考えれば、OS X 10.9 Mavericks と iOS 7 が同時に出荷されると考えるのが妥当なところだろう。それに伴う複雑度の増加により、Apple が自ら課した枠組みよりもさらに後の時期にずれこむことも十分あり得る。価格はまだ発表されていないが、Mountain Lion と同じく $19.99 か、それよりもっと安くなるかもしれない。また、どの世代の Mac が対象になるのかについても Apple は何も発表していないが、ここ二・三年の間に販売された Mac はすべて含まれると考えてもよいのではないだろうか。

結びに、その名前だけは気まぐれなものに思えてしかたがない(Apple 社で働く人のうちいったい何人がビッグウェーブのサーファーに着想を得たと本気で言えるのだろうか?)けれども、そのことを別にすれば Mavericks は非常によく考え抜かれた OS X 改訂版だという印象を私は受けた。Mac 固有の機能もあり、iOS 7 とのアプリ等価性もあり、内部的な改善もあり、それらが組み合わさって、歓迎すべきパッケージとなっていると思う。

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OS X 10.8.4 Mountain Lion がようやく Messages を修正

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

WWDC の前に片付けるべきものを片付けておこうと言わんばかりに、Apple は OS X Mountain Lion 10.8.4 アップデートと Safari 6.0.5 をリリースし、以前から続いていたバグで今年 3 月の 10.8.3 アップデートで修正されなかったものを多数修正した。(2013 年 3 月 14 日の記事“OS X 10.8.3 Mountain Lion、なかなか直らなかったバグを修正”参照。)今回の無料アップデートは Mac App Store から入手できるが、Apple のウェブサイトからも差分アップデート (342.33 MB、10.8.3 からのみ) と Combo アップデート (809.98 MB、10.8 のすべてのバージョンから) の双方が入手可能だ。このアップデートで大きな問題が起きたという話は聞いていないが、何か問題が起こらないかどうか数日待ってみるのも、いつもと同じく悪い考えではない。

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今回の最も歓迎すべき修正点は、Messages アプリの中で iMessages が順番通りに表示されなかった問題に対する修正だ。これはかなり長期間にわたって存在していた問題で、メッセージがまぜこぜに表示されて会話を辿るのが困難になることもあった。

企業ユーザーにとって嬉しいニュースは、企業の Wi-Fi ネットワークのうちある種のものに接続する際の互換性が改善されたことだ。企業ユーザー向けのその他の修正点としては、Active Directory へのログインのパフォーマンス改善、Active Directory ネットワークでの Wi-Fi 互換性改善、ファイルを SMB、Xsan、および NFS のボリュームへ保存する際の修正などがある。

Microsoft Exchange とのカレンダー互換性も改善された。また、一部のタイムゾーンでカレンダーの誕生日が正しく表示されなかったバグも修正された。

その他にもさまざまの修正点があるが、いくつか挙げれば、Boot Camp を使った後にスリープ予約を設定できなかった問題、FaceTime から米国以外の電話番号と通話できなかった問題、VoiceOver と PDF 書類との互換性改善、再起動後にデスクトップの壁紙がリセットされた問題、一部のファイルを「Home」という名前のボリュームにコピーすると開けなくなった問題、詳細は不明だがモバイルアカウント互換性に関する改善などがある。さらに、さまざまのセキュリティホールも塞がれた。

今回の 10.8.4 アップデートには Safari 6.0.5 も含まれて、ゲームやチャットの機能を持つウェブサイトでの安定性が改善された。また、WebKit に関するメモり破損の問題点が 24 件パッチされた。これらはいずれもクラッシュや攻撃をまねく可能性があった。さらに、クロスサイトスクリプティングの脆弱性も 3 件パッチされた。

これらの変更点はいずれも歓迎すべきものだし、OS X 10.8 Mountain Lion がセキュリティアップデート以外の改訂を受けるのは今回が最後になるかもしれないが、さきほども述べたように、アップデートを施す前にまずは数日待ってみるのが、いつも通り賢明なやり方だと言えるだろう。けれども、Messages をよく使っている人なら、OS X におけるバグのうちで最も苛立たしいものの一つであったあのバグの修正ができるのならと、すぐに飛び付きたくなる気持ちも分からなくはない。

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Canvas、2014 年に Mac に復帰の予定

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

ACD Systems は、そのメーリングリストで Mac バージョンの Canvas を復活させると発表した。これは製図、レイアウト、そして作図のアプリである。ACD は Mac 用の Canvas 製造を 2007 年に止めていた。このプログラムの復活版ベータは "2014 年の春" に入手可となる予定である。

"我々はとても嬉しく思っている。世の中には沢山の忠誠心の強い Canvas Mac ユーザーがいることを認識しているし、もう一度そのワークフローの一部となることをとても楽しみにしている" と ACD Systems の Director of International Business Development である Dallas Vandekerkhove は語っている。

Canvas は元々 1987 年に Macintosh から始まったもので、デスクトップ出版ブームの先駆けの一つとなった。Windows に移植されたのは 1992 年のバージョン 3.5 になってからであり、Mac 用の最後のバージョンは 2005 年の Canvas X であった。

Canvas は、長い休止期間の後 Mac に戻る最新のプロ向けアプリケーションとなる。Autodesk は AutoCAD を 16 年の休みを経て 2010 年に Mac に戻した

Canvas は安くはないが、Windows バージョンの定価で現在 $599.99、このニュースは Adobe の購読のみのライセンスモデルに不満を持つグラフィックス専門家には歓迎すべきものであろう ("Creative Cloud への不満が Adobe の将来展望に暗い影を落とす" 17 May 2013 参照)。

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非営利の App Camp for Girls 資金調達活動を立上げ

  文: Glenn Fleishman: [email protected], @glennf
  訳: M.Sugimoto <dfbia300@kcc.zaq.ne.jp>

Apple の開発者会議で女性のエンジニアをほとんど見かけないことに失望したSmile のマーケティングチーフで TidBITS で私たちの多くの友人でもあるJean MacDonald は、より多くの若い女性たちをソフトウエア開発者の世界にもってくるための手伝いをすることを決めた。

Jean は iOS 開発者である Natalie Osten、TUAW エディターである Kelly Guimont といっしょに新たな非営利の App Camp for Girls を活性化するために控えめな資金調達活動を開始した。1 日版を"アルファテスト"し、今月後半に12 人の少女たちを対象に無料の"ベータテスト"キャンプを実施し、2013 年 8月に 20 人の中学生の少女たちに対して正規のセッションを計画している。通常の工作や運動といった伝統的な夏のキャンプの活動もするが、コーディングワークショップの活動もおこなう。

Indiegogo でクラウドファンディングキャンペーンを始めたグループは、Kickstarter と違って、どのような金が集められようとも、それが ターゲットの $50,000 に達しなかったとしても資金を譲渡するだろう。(既にゴールに達しているが、まだ割くべき時間がたくさんある!)私は 2 人の男の子の父親だが、みんながその能力に到達して欲しいので寄付をしている。私が App Camp for Girls に期待するものはそれが少女たちに積極的な役割モデルを提供すること、そしてテクノロジー分野において、女性に対してしばしば理由なく閉ざされているドアを開くことだ。

この 30 年間、コンピュータサイエンスや工学の経歴から門前払いを食らう大学生の女性たちが増加しつつある。これを最近の問題だと思っているかもしれないが、コンピュータサイエンスを専攻する大学生の女性が学位を授与される比率は1984 年は 37 パーセントだったが、その後 1998 年には 29 パーセント、そして 2010 年ではたったの 18 パーセントに低下したとの統計がある。(下記の低参加リンクをクリックしてみてください)

この不釣り合いな数値と下落傾向の両方に対しては明らかに多くの理由がある。しかし、ホワイトカラーの雇用の最も利益を得やすい、最も急速に成長している分野の一つにおいて、一つの性が優位にあるとき、社会は全体として被害を受けてしまう。コーディングはすべての情報をベースとした仕事において有用であり、起業家精神や雇用者の昇進の両方における道具である。

幸運なことに App Camp for Girls は社会的圧力を排除しようと努力し、他の妨害が依然として広いテクノロジー世界に蔓延している環境の中にトレーニングを提供することによって、少女たちがプログラミングやエンジニアリングに関わる 機会を創造するより大きな流れ の一部になる。

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Mac 版 Instacast デスクトップポッドキャッチャーの欠陥を埋める

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: M.Sugimoto <dfbia300@kcc.zaq.ne.jp>

何年も、私は毎ウィークデーにはオフィスまでほぼ 100 マイル、車を運転した。ポッドキャストを聴くことは、その長い通勤中、私をまともにさせることのできる一つだったので、自然と私はポッドキャストを聴くことに関してえり好みするようになった。ちょっと前、iOS 版の Instacast 3 のレビューを始めたのだが、それが主要な iOS ポッドキャッチャーの分析をするまでになった。(2012 年 12 月 22 日の記事 "Apple の Podcasts アプリに代わる五つの製品" 参考)私の一押しのアプリは 依然として優れたポッドキャッチャーであるDowncast だったが、ライフスタイルの変化と Vemedio からの思いがけないリリースによって、私は Instacast に再び向かうことになった。

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一ヶ月前、私はこのすばらしいインターネット発行紙の主幹編集者になった。(2013 年 5 月 6 日の記事 "Josh Centers が新しい編集主幹に" 参考)そして私の退屈な通勤は突如、寝室からオフィスへの朝のよろよろに変化した。疲れるドライブがなくなって残念だとはちっとも思わないけれど、私を教育し、勇気づけ、そしてここ TidBITS での最終的に職を見つけるという大変大きな役割を果たしたポッドキャストと疎遠になることを心配した。しかし、幸運にも、ちょうど私が職を得る前に、iOS デバイスとの完全な同期を特長とする Mac 版のInstacast のベータ版がリリースされた。ベータ版は無料だったが、私は大変印象深かったので、$14.99(価格は 2013 年 5 月 31 日の後、$19.99 に上がった。)で先行して注文する選択をした。

どうして iTunes で同じことが無料でできるのにわざわざ $15 を支払ったのか?また、その過程で自分がより良いと言った iOS ポッドキャッチャーDowncast も見捨てたのはなぜか?要するにポッドキャストの同期だ。Mac 版Instacast はあなたの Mac においてポッドキャストをスタートさせ、停止させ、それから iPhone を握り、散歩に出かけ、中断したところ(あるいは、もし停止後の再生が可能であれば、中断する_前_30 秒)をキャッチしておく。そして夕方遅く、iPad とともにカウチの上で丸まって、再生し続ける。私は最初は自身の独自の同期方法を採用し、iCloud を放棄するという Vemedio の決定を非難したが、振り返って考えてみると Vemedio の判断は正しかった。同期は大変うまく動作するし、ポッドキャストを外に持ち出すファンにとって、Mac 版とiOS アプリ(iOS 版の Instacast 3 は$4.99 かかる。)合わせて $25 の価格は妥当なものだ。

機能から言えば、Instacast は その iOS 版と同一で、単純ではあるが、スマートプレイリストの集合と 30 秒スキップのような基本的な機能を提供する。しかし、また Mac 特有のうれしい機能もいくつか提供している。ほとんどすべてのコマンドは対応するホットキーを有し、それは Mac キーボードの組み込みのメディアキーと技術的に互換性がある。しかし、メディアキーを使用するためにはOS X 10.8 Mountain Lion で導入された Gatekeeper セキュリティーを有効にしないといけない。Gatekeeper セキュリティーは Mac App Store と通じて販売されないどのアプリもブロックしたり、あるいは Apple が発行する開発者 ID でもってディジタル的にサインされていないアプリをブロックしたりするものだ。Gatekeeper がオンになっていてもメディアキーの認識はうまくいったり、いかなかったりする。ときどきプレイを押すと iTunes が起動し、またときには Rdio が再生を始めたりする。もちろんこれは Vemedio のというよりは Apple のミスによるものだ。

幸運にも Instacast を制御する別のやり方がある。もし Instacast のドックアイコンをクリックしたままにするなら、メニューコマンドからポッドキャストの再生や停止、あるいは30 秒の前、後方スキップが可能になる。また、Instacastには iTunes 11 とまったくよく似た、スクリーン面積を最小にしつつ、フル機能を可能とするミニプレーヤがある。ミニプレーヤをすべての他のウィンドゥのトップに浮かせておくことさえできるので、アクセスし易い。iTunes 同様、Instacast のミニプレーヤの特長はあなたが選んだポッドキャストエピソードを含む、UP Next リストにある。

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私が最初混乱したことの一つは Mac 版 Instacast がちょうど iOS 版と同じようにオンデマンドでのストリーミングよりもむしろ個々のポッドキャストをダウンロードすることをメインとしてデザインされているという事実だ。これはセルラーのデータ容量や接続が中断しがちな問題を避けるために、自宅の Wi-Fiネットワークでしばしばエピソードをダウンロードしたい iPhone においては意味があるが、私の Mac は高速の強固なインターネット接続をもっているので、私にとってはあまり意味がなかった。その混乱は、iOS 版 Instacast が Mac 版Instacast と自動的に接続して、時間とバンド幅の節約のためにエピソードを直接 Mac 版 Instacast からダウンロードするのだと私が気付いたときに解消された。これは多くのユーザーがありがたいと思うすばらしい機能だ。iOS 版Instacast のように、Mac 版はポッドキャストをダウンロードするためのストレージの量をあらかじめ定義しているので、ハードドライブを一杯にしたり、ファイルをマニュアルで管理させたりすることがない。

Mac 版 Instacast は確かにニッチな製品だ。お金を有効に使うつもりなら、ポッドキャストを愛し、Apple の製品間をひんぱんに行き来し、iOS 版Instacast アプリを所有する必要がある。あなたが Mac で単にポッドキャストを聴くだけなら iTunes がぴったりだ。そしてもし iOS で聴くだけならDowncast の方がもっと多機能でお買得だ。(Downcast の開発者は Mac アプリ版も開発中だ。)しかし、もしあなたの使い方が Mac 版 instacast のターゲットとする市場にぴったりあっているなら、instacast は欠かせない。Mac 版Instacast は $19.99 で OS X 10.8 Moutain lion が必要だ。ダウンロードには5.7 MBかかる。

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FunBITS: iOS 用と Mac 用の Nimble Quest

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Snake はいつの世も変わらないクラシックゲームの一つだ。1970 年代後半以来さまざまなその変種が生まれてきたし、1990 年代後半の携帯電話の時代に至ってこのゲームの人気も急上昇した。私が初めてこのゲームに出会ったのは 1994 年、私が属していたバンドの監督のオフィスの中で、彼の Windows PC を使って私たちは代わる代わるこのゲームの QBASIC 版で遊んだものだ。

Snake で遊んだことがないという人のために説明しておくと、これはとても単純なゲームだ。四つの壁に囲まれた場所で、あなたは点の動きをコントロールする。障害物を避けながらあなたは動き回り、新たなピースを集める。その度にあなたの尾はどんどん長くなる。壁でも、あるいはあなた自身の尾でも、障害物にぶつかった途端、ゲームは終了する。

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大昔からあるこの Snake ゲームに、Dungeons and Dragons 風の一捻りという新鮮な要素を加えたのが、Nimble Quest だ。(iOS 用と Mac OS X 用は $0.99、Android 用は無料だ。) 点から始める代わりに、最初はたった一人のメンバー、つまりリーダーだけでスタートする。このリーダーは騎士か、魔法使いか、弓矢を抱えた荒くれ者か、それともゲームプレイを通じてまたはアプリ内購入を通じてロックを外せるその他のキャラクターのいずれかになれる。尾が長くなる代わりに、プレイをしながら新たな仲間を獲得して行く。仲間はそれぞれに独自の能力を持っている。標準的な四つの壁はあるが、ここではそれに加えて敵もいる。あなたは敵を避けたり、さまざまな攻撃と戦闘で敵を殺したりしなければならない。そのレベルの中ですべての敵をクリアすれば、次のレベルに進める。

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グラフィックスそのものは、Super Nintendo の(海の向こう側[訳者注: つまり日本]に住んでいる人なら Super Famicon の)クラシックなゲーム The Legend of Zelda: A Link to the Past (邦題: ゼルダの伝説 神々のトライフォース) を思わせる。コントロールは単純で、あなたがコントロールできるのは一行が進む方向のみだ。iOS ではスワイプで、Mac では矢印キーで操作する。攻撃は自動的に起こるので、位置取りがすべてだ。仲間たちも敵たちも、それぞれ個々に生命バーを持ち、生命を使い切ればそのキャラクターは消える。一行のリーダーを守ることが重要だ。なぜなら、リーダーが障害物にぶつかったり生命を使い切ったりすれば、そこでゲーム終了となり、一からスタートし直さなければならなくなるからだ。いやつまり、それはあなたが現実のお金を少々注ぎ込まなければの話だが。

Nimble Quest には二種類の通貨がある。一つは宝石で、これはゲームの中で見つかり、キャラクターをアップグレードするために使える。もう一つはコインで、こちらも時々ゲームの中で獲得できる他に、宝石を使って購入したり、あるいはアプリ内購入で手に入れることもできる。コインを使ってさまざまのアクションができる。例えば、レベルが始まる前に仲間を追加したり、パワーアップを買ったり、レベルをやり直したり、アリーナに入場したりできる。

アリーナというのは Nimble Quest のマルチプレイヤー部分であり、同時にこれは金食い虫でもある。アリーナに入場するためには、まずその前にシングルプレイヤーのゲームで十分な成績を残し、それによってアリーナ自体へのアクセスとアリーナにおけるキャラクターの獲得の両方ともを稼ぎ出さなくてはならない。それから、アリーナで腕試しするには、競技に参加するだけのためにコインを一枚払わなくてはならない。コインの値段は 20 枚で $1.99 からなので、つまり競技一ラウンドごとに $0.10 ほどかかる。アリーナでの戦闘は驚くほど短時間で済むことがあるので、あっという間に恐ろしく費用がかさんでしまうかもしれない。私が思うに、開発者の NimbleBit はアリーナを開放して人々を病みつきにさせ、その上でアップグレードを販売する戦略にした方がもっと金を稼げるのではないだろうか。

まるで踏んだり蹴ったりの話だが、App Store に顧客たちが書き込んだコメントには、稼いだはずの宝石やコインがアップデートをすると消えてしまうという苦情が多く見られる。正直言って、私はこの問題を避けるため、アリーナとアプリ内購入には一切近づかないようにしている。それ以外で私が苦情を言いたいのは一つだけ、iOS 版と Mac 版の双方とも Game Center に対応しているにもかかわらず、どちらも互いに同期することができないので、ロックを外したキャラクターやパワーアップなどをデバイスから別のデバイスへ移動させられない点だ。

幸いにも、アプリ内購入なしに遊べるコンテンツが、このゲームにはたっぷりある。おそらくすべてを見尽くすことなど不可能なほどだ。その上、ある程度時間をかけさえすれば、ゲームプレイを通じてこのゲームのあらゆる要素を稼ぎ出すのも可能だ。$0.99 の Nimble Quest は新鮮で、それでいて昔懐かしい雰囲気を楽しみながら数分間時間をつぶすのにぴったりだ。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2013 年 6 月 10 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

LaunchBar 5.5 -- Objective Development が LaunchBar 5.5 をリリースし、新たなスニペット機能や、Automator ワークフローとのより緊密な統合などをこのキーボードベースのランチャーに盛り込んだ。標準的なテキスト拡張の機能に加えて、LaunchBar のスニペット機能ではクリップボード内容を含めることもでき(クリップボード履歴から複数の項目を取り込むこともできる)またこれは LaunchBar の Instant Send 機能とも互換となる。スニペットはその名前の最初の数文字をタイプすれば自動的に選ばれるので、特定のキーボードショートカットが必須とはならない。この新機能についてのなかなか良い入門ガイドが Objective Development ブログ に載っている。

また、LaunchBar 5.5 では Automator ワークフローを走らせることもできるようになり、テキストやファイルを引数として渡してから、返って来た結果を LaunchBar に戻すこともでき、さらにワークフローを読み込み・書き出しして共有できるようになった。このアップデートでは、Calendar イベント作成、Contacts サポート (ソーシャルネットワークのプロファイル索引付けも含む)、iCloud 書類の索引付け、Google Chrome ブックマークの探知、iTunes のサポート (再生に関する修正や、別のアルバムやアーティストの作品から同じ名前のトラックを見つける新機能もある) なども改善された。その他の変更点としては、64-bit 互換性へのアップグレード、VoiceOver 経由の音声フィードバックへの対応、サードパーティ電子メールクライアント (Mailplane 3 も含む) への対応の改善などがある。(新規購入 $35、 TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、2.5 MB、リリースノート)

LaunchBar 5.5 へのコメントリンク:

Aperture 3.4.5 -- Apple が Aperture 3.4.5 をリリースした。同社のプロフェッショナル向け写真管理アプリケーションへのマイナーなアップデートだが、読み込み後にカメラやメモリカードから項目を削除するときに Aperture がクラッシュする(Apple に言わせれば「突然終了する」)という細かな問題を修正している。それに関係するもう一つの修正として、写真の読み込み後に“項目を削除”オプションを使用したときにメモリカードが正しく取り出されるようになった。その他にも詳細は不明だが安定性に関する改善が盛り込まれている。(Mac App Store から新規購入 $79.99、無料アップデート、550 MB、リリースノート)

Aperture 3.4.5 へのコメントリンク:

iTunes 11.0.4 -- 前回のアップデートからまだ数週間しか経っていないが(2013 年 5 月 16 日の記事“iTunes 11.0.3、アップデートされ MiniPlayer も一新”参照)Apple は小さいいけれども非常に苛立たしいバグを二件修正した iTunes 11.0.4 をリリースした。今回のアップデートでは、iTunes パスワードを繰り返し求められるという多くの人たちを悩ませたバグが解消し、ワイヤード同期とワイヤレス同期を切り替えた際に iTunes がクラッシュしていたバグが修正された。Apple の iTunes ウェブページから直接ダウンロード (188 MB) でも、また OS X 10.8 Mountain Lion より前のシステムではソフトウェア・アップデートを通じて (194.1 MB)、Mountain Lion では Mac App Store 経由 (194 MB) でも入手できる。

iTunes 11.0.4 へのコメントリンク:

BBEdit 10.5.4 -- Bare Bones Software が BBEdit 10.5.4をリリースした。今回もまた、以前に報告されていた問題点を修正することに専念したアップデートだ。いつもと同様、そのリリースノートは Mac ソフトウェア界の中でも指折りの良く書けた(驚くほど生き生きした)文章だ。例えば、極めて具体的な実例として次のような個所がある:

州政府の認可を受けたファイル名拡張子を使わぬテキスト書類を保存しようとした際にあの苛立たしいシステムアラートが出ないよう対策した。

ウィンドウ内の選択領域の幅がページガイド幅より狭く、その差がサイドバー幅より少なかった場合に、スクロールバーの中にページガイドの色のウン*が見えたバグを修正した。

50 件以上リストされたその他の変更点の中から主なものを挙げれば、テキストを選択したりドラッグしたりする際にマウスのスクロールホイールにも対応したこと、Wrap Around インジケータや Clippings メニュータイトルの絵を Retina ディスプレイ用に改善したこと、Remove Line Breaks の Undo 状態でコンテンツ喪失につながることのあった問題の修正、再起動直後にある種の操作をした際にクリップボードにテキストが置かれなくなっていた問題の解消などがある。今回のアップデートではまた数種類のクラッシュも修正された。例えばメモリが十分でない状態で二つの大きなファイルを比較しようとした際、ファイル名を変更する際、プロジェクトリストで複数の項目が選択された状態で Move to Trash を使った際、Live Search ボックスが見えている状態でテキスト書類を閉じた際、などに起こったクラッシュが解消された。

同時にリリースされた TextWrangler 4.5.2 (Bare Bones Software の無料のテキストエディタ) にも変更点の多くが同様に施されているが、BBEdit のみの改善点もいくつかある。Counterparts メニューへの修正では、Photoshop から読み込まれたプレビューが巨大なサイズにならないように、16 ピクセルのより適切なサイズに縮小するようにした。BBEdit 10.5.4 ではまた Perl のコマンド $CWD を使うと長時間立ち往生してしまった問題を修正するとともに、書類やフォルダの中でリンクをチェックしている際にファイル名を含まないリンクに出会うと内部的例外エラーを起こしていた問題も修正した。(Bare Bones からも Mac App Store からも新規購入 $49.99、無料アップデート、12.6 MB、リリースノート)

BBEdit 10.5.4 へのコメントリンク:

TextWrangler 4.5.2 -- BBEdit 10.5.4のメンテナンスリリースに加えて、Bare Bones Software は TextWrangler もバージョン 4.5.2 にアップデートして、BBEdit におけるものと同じ修正や改善を多数加えた。40 件以上リストされた変更点の中から主なものを挙げれば、Wrap Around インジケータや Clippings メニュータイトルの絵を Retina ディスプレイ用に改善したこと、Remove Line Breaks の Undo 状態でコンテンツ喪失につながることのあった問題の修正、再起動直後にある種の操作をした際にクリップボードにテキストが置かれなくなっていた問題の解消などがある。今回のアップデートではまた数種類のクラッシュも修正された。例えばメモリが十分でない状態で二つの大きなファイルを比較しようとした際、ファイル名を変更する際、サーバ名なしにブックマークを入力してからそれを保存しようとした際、などに起こったクラッシュが解消された。(Bare Bones Software からも Mac App Store からも無料、9.6 MB、リリースノート)

TextWrangler 4.5.2 へのコメントリンク:

Snow Leopard および Lion 用セキュリティアップデート 2013-002 -- Apple が Mac OS X 10.6 Snow Leopard および 10.7 Lion 用のセキュリティアップデート 2013-002 をリリースした。それぞれのオペレーティングシステムごとに二つずつのバージョンがある。Snow Leopard 用 (329.85 MB) および Snow Leopard Server 用 (404.83 MB)、それから Lion 用 (57.69 MB) および Lion Server 用 (105.61 MB) だ。セキュリティ関係の変更点のいくつかはリリースされたばかりの Mountain Lion アップデート(2013 年 6 月 5 日の記事“OS X 10.8.4 Mountain Lion がようやく Messages を修正”参照)で施されたものと同じで、2013-002 セキュリティアップデートとこの Mountain Lion アップデートの情報が共通のセキュリティノートにまとめられている。(セキュリティノートに挙げられた各項目ごとに「対象 OS」と書かれた行をチェックして、それがあなたのシステムに関係するものかどうか確認しよう。)今回のセキュリティアップデートはどの大猫に対しても OpenSSL や QuickTime に関する脆弱性を閉じるとともに、Snow Leopard のみに対象を絞った Directory Service と Ruby on Rails に関する修正も施している。(無料)

Snow Leopard および Lion 用セキュリティアップデート 2013-002 へのコメント


ExtraBITS、2013 年 6 月 10 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週はいくつか重大なニュースを ExtraBITS で紹介しよう。まずは、米国国家安全保障局 (U.S. National Security Agency) が Apple を含む世界最大級のテクノロジー会社のいくつかと提携して、PRISM と呼ばれる取り組みを通じて世界をスパイしていたという驚くべき主張がなされた。Apple の直面している問題はそれだけではない。出版社各社と結託して電子ブックの価格をつり上げたとして訴訟を起こされている。それからあなたの iPhone のバッテリ寿命が異常に短いのなら、それは PRISM と関係したとされているもう一つの会社、Facebook が原因かもしれない。NSA が PRISM をアップデートして電力効率を上げてくれたらいいのにと思うが。一方嬉しいニュースとしては Apple Store が現在 iPhone 5 のスクリーンの修理を $149 で受け付けている。

米国が Apple を含む主要なインターネット会社からデータ収集をしていたと報告される -- The Washington Post の記事によれば、コードネーム PRISM と呼ばれるプログラムが、米国国家安全保障局 (U.S. National Security Agency) と FBI に対して、米国の主要なインターネット会社九社への直接の裏口アクセスを提供し、標的となる外国人を追跡する目的で、オーディオやビデオによる会話、電子メールメッセージ、オンライン書類、および接続ログを保存・分析させていたと伝えている。問題となる会社は Microsoft、Yahoo、Google、Facebook、PalTalk、AOL、Skype、YouTube、および Apple で、ここに Dropbox も「間もなく」加わるという。各社はいずれも、PRISM というものは知らないし関与もしていないと述べている。PRISM についてさらに詳しい情報はいずれ間違いなく明るみに出るだろうが、現在のところは次の格言だけを思い出しておこう:「New York Times の一面に載せられて困るようなものをインターネット上に置いてはいけない。」

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iOS 用 Facebook がバッテリ寿命を減らす -- iPhone をいくら充電してもすぐに減ってしまうのなら、Facebook が原因かもしれない。あるドイツ人の開発者が、Facebook アプリがバックグラウンドタスクを誤った方法で処理しているためにこのアプリが常にバックグラウンドで走り続け、その結果として CPU を占有するとともにバッテリを通常より速く減らしていることを発見した。このバグが解消されるまでの間、Facebook ユーザーがバッテリを無駄に減らさないためにできる対策としては、使い終わる度にこのアプリをマルチタスキング切替画面を使って終了させるか、あるいはこのアプリを削除して代わりに Safari の中で Facebook ウェブアプリを使うかすればよいだろう。

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Apple Store、iPhone 5 のスクリーン交換を $149 で提供 -- iPhone 5 のスクリーンを割ってしまったけれども AppleCare+ は購入していなかったという人は、Apple Store で $149 を出せばスクリーンを交換してもらえる。サードパーティの修理ショップの中には同じ修理をずっと以前から提供しているところもあるし、もっと安い値段のところもあるかもしれないが、Apple Store でならば確実に Apple の認可を受けたスクリーンが取り付けられる。以前 Apple Store Genius として働いていた Stephen Hackett が、新しいディスプレイをキャリブレーションするために Genius たちが使っている特殊なマシンの写真を撮影することに成功した。匿名の Apple 従業員の話では「今はどんどん中国が Genius Room に入り込んでいるんだ」とのことだった。

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Apple、電子ブック価格操作の疑いで係争中 -- 2010 年に iBookstore をスタートさせて以来 Apple が価格に代理店モデルを用いてきたことに対して、米国司法省 (U.S. Department of Justice) による Apple に対する審理の弁論が開始された。問題となっているのは、Apple がすべての大手の出版社と話し合って、小売業者に卸売りした上で小売業者が独自に小売価格を決める代わりに、出版社が電子ブックの小売価格を設定するよう取り決めた点だ。しかしながら、Apple にとって形勢は悪いようだ。判事 Denise Cote は既に審理前のヒアリングの席で「Apple が故意に協議に参加して電子ブックの価格をつり上げる共同謀議を促進した直接の証拠を政府が示すことができると思う」と述べているからだ。皮肉なことに、もしも政府の側が訴訟に勝てば競争が減る結果となる可能性がある。なぜなら、Amazon が既に以前から大多数の電子ブックの価格を $9.99 に設定しており、たとえ損失が出てもこの価格は変えないと決めているからだ。それは Amazon が現在の支配的な立場をより強固にするための戦略だという声もある。Macworld の Dan Moren が、この問題に対する良識ある概観を提供する。

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