TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1236/18-Aug-2014

あなたが現在学生であろうと生涯学習の人であろうと、今週は Back to School (新学期) セールですべての Take Control 電子ブックが 50 パーセント割引になる! それから Charles Edge が執筆中の "Take Control of OS X Server" を読み続けて下さっている TidBITS 会員の皆さんのためには、OS X Server で wiki やブログを運営する方法を説明した新しい章がある。これはほとんどあらゆる団体でお役に立つだろう。Android と生産性を結び付けて考えたことのなかった方もおられるだろうが、Julio Ojeda-Zapata は Samsung の大型のタブレット機ならば驚くほど有能であることを発見した。悲しいニュースとしては、コメディアンであり俳優である Robin Williams が先週亡くなった。彼を追悼して、私たちはいくつかの Macworld 写真と、Jeff Carlson がこの有名人と遭遇した思い出話を添えて Apple ファン仲間である彼に別れを告げる。写真家の Charles Maurer が再び TidBITS への寄稿記事で、お手軽カメラ Fujifilm XQ1 をレビューする。これは Photo Ninja アプリと組み合わせさえすればプロフェッショナル級の写真を制作することができる。FunBITS 記事もまた写真に関するもので、休暇から戻った Michael Cohen が PhotoCard をレビューする。Apple の巨人 Bill Atkinson その人が作った、現代の絵はがきと言えるアプリだ。今週注目すべきソフトウェアリリースは、Fission 2.2.2、Alfred 2.4、Delicious Library 3.2.2、CloudPull 2.5.4、Corel Painter 2015、それに Safari 7.0.6 と 6.1.6 だ。

記事:

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Take Control の 2014 新学期セールでオール 50% 引き

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

あなたにとって 8 月が意味するものが新学期であろうと、あるいはあなたが生涯学習に向けて勉強を始めようとしているのであろうと、私たちはあなたが新たなスキルを身に付けるのがほんの少し楽にできるように、こんな企画をしてみた。2014 年 8 月 25 日まで限定で、私たちの電子ブックの中のどの本も、 何冊でも、定価の 50 パーセント引きの価格であなたの Take Control ライブラリに加えて頂ける。すべての本は DRM フリーで、PDF、EPUB、Mobipocket (Kindle) の各フォーマットで入手できるので、いつでも、どこでも、どんなデバイスの上でも読める。(すべてがうまく働くようにと願ってはいるけれども、もしも私たちのサイトが販売トラフィックのため過負荷となってしまっていたならば、どうぞ少し時間をおいてからもう一度試してみて頂きたい。)

皆さんがすべての本を初めから終わりまで読み通して下さるとは思っていない。(もちろんそうして下されば大変嬉しいことだとは思うけれども。)その代わりと言っては何だが、個々の本に Quick Start セクションが付いていて、そこを見るだけで目次よりは少し詳しい内容が分かり、知りたいことが書いてあるセクションへ瞬時にジャンプもできるようになっている。

あなたがパスワードを扱う際にも、ワイヤレスネットワークの機器をアップグレードする際にも、Apple の Pages ワードプロセッサを理解しようとする際にも、Mac 上でくり返し実行するタスクを自動化しようとする際にも、あるいはついにあなた自身の本を Scrivener か iBooks Author で執筆しようという際にも、私たちの本のどれかがきっとお役に立つだろう。また、iCloud、Mail、FileVault、iBooks、CrashPlan、PDFpen、TextExpander、ペーパーレスの仕事場の作成、といったことに関する電子ブックもある。

わが熟練の著者たちが記した本から、あなたはどんなことが学べるのか? たくさんある。その中から、いくつか主だったことがらを列挙してみよう:

そういうわけで、あなたが今までに読みたいと思ったことのあるタイトルや、今後役に立つかもしれないと思ったタイトルを、このセールを機会に、一挙に あなたの Take Control 蔵書に加えてみてはいかがだろうか。念のために付け加えれば、私たちはマイナーなアップデートを無料で読者に提供しているので、あなたのライブラリには一年中最新情報が揃うことになる!

皆さんのサポートに、また長年にわたって寄せて下さった数多くの有益な質問や心優しいコメントに、感謝します。そしてどうか、お願いですから、お友達や同僚の方々に、このセールについて言葉を広めて下さい!

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安らかに眠れ:Robin Williams、我々の仲間

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

11 August 2014 に、Oscar 受賞者である俳優そしてコメディアン Robin Williams が亡くなった。死因は自殺とみられる。Apple CEO Tim Cook は めったにないつぶやきを載せ お悔やみを述べ、そして Apple もまた 自社の Web サイトで彼の死を悼むという異例の判断をした。しかし、これは驚きととるべきではないであろう、何故ならば 1989 "Dead Poets Society" からの Williams の語りで Apple の Your Verse 広告キャンペーンが始まったからである。

しかしまた、Williams はちょっとした Apple ファンとしても知られており、Macworld Expo には 2005 年 、そして再度 2007 年に参加している。事実、我々の Jeff Carlson は 2005 年のショーで - 文字通り - 出くわした。

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(写真提供:Graham Keith Rogers)

Macworld Expo がもっと大々的なイベントであった頃 (当時 Apple は重要な新製品は全てここで発表していた)、時として、会場で我々と同じ様にオタクな有名人を見かけることがあった。ある年、人混みの通路を歩いている時、私は急いでいる一人の男性と殆どぶつかりそうになった。私には、それが Robin Williams であることがすぐ分かった。宣伝用の土産品をいっぱい身につけ、満面の笑みを浮かべていた。会場を見て回り、何十人ものファンに取り囲まれないためには、彼にはこのスピードが必要なのだろうという見当は私にもついた。彼が急いで通り過ぎようとしている時、私の後ろの女性が叫んだ、"大好きよ Robin!" 彼は、もっとにっこり微笑んだが、立ち止まることはなかった。

Robin Williams は、我々の時代の最もおかしいコメディアンで最も優れた男優の一人である。そして、彼はまたある意味で我々のような人間の一人であったということで、この悲しい知らせにはより心が痛む。

(勿論、Mac の世界にはもう一人の Robin Williams がいる。この女性は、"The Little Mac Book"、"The Mac is Not a Typewriter"、そして Mac、デスクトップ出版、Web デザイン、更に Shakespeare についての数多くの本の著者として知られている。我々が知る限り、彼女は元気で活躍中である。)

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"Take Control of OS X Server" の Chapter 11、入手可に

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

ストリーム中の "Take Control of OS X Server" では、先週、汎用 Web サイトを走らせるには何が必要かを取り上げた。しかし、皆さんの目的が単にウィキやブログをホストすることであれば、この Web サービスに関わり合う必要は全くない。そこで、Chapter 11, "Wiki Services" では Charles Edge が OS X Server の Wiki サービスを有効化する方法、そしてどの様に自前のウィキを作るかを説明する。

大々的に人気を博している Wikipedia はウィキの最もよく知られた例であるが、OS X Server を使えば、誰でもウィキを設定しそして走らせられる。それは、家族のため、クラスのため、ボランティア組織のため、或いは仕事のためであるかを問わない。ウィキは極めて有用である。何故ならば、それは、誰にでも (あなたが許可を与えた人に限る) ページを作成そして編集させてくれ、負荷を分かち合い、そして情報を持っている人がそれを共有するのを、ウェブマスターやその他の管理者を通さずにやらせてくれる。

ウィキは、家族記録、従業員マニュアル、プロセスリスト、協同のクラスプロジェクト、そして、テキスト、画像、それからリンクで構成されるものなら殆ど何にでも使える。更に、一つのチェックボックスをクリックするだけで、ウィキはブログをホストする事も出来、ポストは時系列的に配置されるが、これは特別のウィキページに他ならない。

Wiki サービスを有効化するのに、Server アプリでは殆ど何もする必要がない;主たる作業は自分のウィキを設定する所にある。難しくはないが、許可の設定、テーマの選定、そしてそのサイトの骨組みを作成するところにはある程度思いを込めておいた方が良い。ユーザーが、あなたが思い描いたサイトを自ら作ってくれる可能性は低いが、もし作業用の枠組みを予め用意しておき、彼らにそれを発展させるよう促せば、必要なコンテンツを追加してくれる可能性は高まるであろう。正直に言って、小さな組織が Wiki サービスのためだけに OS X Server を走らせるという情景は容易に想像出来る;これはそれ程有用である。

Chapter 1, "Introducing OS X Server" と Chapter 2, "Choosing Server Hardware" は、この本の行く先を見て貰うために誰にでも見て欲しいと思うが、それ以降の章は現時点では TidBITS 会員限定である。もし既に TidBITS 会員であるならば、参加した時のメールアドレスを使って TidBITS ログイン して欲しい。"Take Control of OS X Server" 電子本の完成版は、完了時点に PDF, EPUB, そして Mobipocket (Kindle) フォーマットで一般向けに売り出される。出版済みの章は以下の通り:

執筆進行に合わせて、この本の全容を TidBITS 会員に対して出版していくのは、我々が TidBITS 会員に対し彼らの支援に感謝の意を表す一つの方法に過ぎない。我々はまた TidBITS を長年無料で読んでこられた方々に対しても、これがきっかけで、毎週読み慣れた専門的に書かれそして編集された記事を引き続きお届け出来る手助けをする気になって頂けたらと願っている。会員プログラムが我々にとっては何を意味するかの更なる詳細については、"2014 年の TidBITS を TidBITS 会員プログラムを通して支援して" (9 December 2013) を読んで欲しい。

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12.2 インチ Samsung Galaxy タブレット、Android に生産性をもたらす

  文: Julio Ojeda-Zapata: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple ユーザーにとって意外なハードウェア選択の可能性について検討しているこの形式張らないシリーズ記事の第一回で、私は MacBook Air の代替としての iPad Air について、執筆に重点を置いて書いた。(2014 年 2 月 17 日の記事“モバイルライターが持つべきは iPad か MacBook か”参照。)そういう使い方が可能となったのはサードパーティから出ている数多くのキーボードカバーやケースのどれかを使えば iPad がラップトップ機に近いものになるお陰であった。

ただ、そんな風にしても一つ大きな問題が残ることに私は気付いた。iPad Air のコンパクトな寸法と合うようにするためには、必然的にキーボードが狭苦しいものになってしまう。その種の周辺機器のキーボードは iPad を横長に置いて使う用途に合わせて作られているけれども、それでも余裕のあるデスクトップ用キーボードに比べればタイプする際の快適さが大きく劣る。

Google Chromebook ノートブック(2014 年 2 月 24 日の記事“Google の Chromebook は立派な補助的ラップトップ”参照)と Microsoft Surface タブレット(2014 年 3 月 11 日の記事“Microsoft Surface: 二つのコンピュータの物語”参照)を題材に、シリーズ記事の二つでモバイル生産性を目的としたセットアップを扱ったが、そこでは快適性の要素が大きな意味を持っていた。いずれのシナリオにおいても、物理的キーボードの方が大きさに余裕があり、従って大量のタイプ入力をするためにはその方が適切だ。

そのように見て行けば、自然と四つ目のモバイル生産性セットアップが見えてくる。すなわち Google の Android オペレーティングシステムが走るタブレット機に付属するキーボードアクセサリを取り付けて使うシナリオだ。

Android タブレットは Apple の iPad に直接競合する製品だ。この点、むしろ廉価版の Windows ラップトップと競合する Chromebook とは違っている。Android タブレットはより多様なサイズの選択肢があり、Acer、Asus、Amazon、Lenovo、Motorola、Samsung、Sony、Toshiba、ViewSonic その他多くメーカーのものが入手できる。さらに Google は Asus や Samsung などのハードウェアメーカーと提携して独自の Nexus ブランドのタブレットまで販売している。

また、Android タブレットは、それに相当するレベルの iPad に比べて価格が安い傾向にある。例えば、私のお気に入りの Android タブレット、Google の 7 インチ Nexus 7 の価格は $229 からで、それに相当する Apple の安価なタブレット、7.9 インチ iPad mini (Retina ディスプレイなし) は $299 からだ。Acer の 10.1 インチ Iconia A3 は $250 だが、それに相当する Apple の最も安価なものは Retina ディスプレイモデルの 9.7 インチ iPad、価格はとてつもなく跳ね上がって $399 となる。

このように選択肢はたくさんあるけれども、私はずっと以前からモバイル生産性の観点においては Android の世界を懐疑的な目で見てきた。それには理由が二つある。

まず第一に、Android ではアプリの選択肢が、現実の仕事を成し遂げようとする人にとっては、Apple の iOS プラットフォームほど充実していない。私の iPad Air 記事でも触れたが、iOS ユーザーにはただ単に執筆用のアプリというだけでも驚くほどたくさんのものがある。Android での選択肢は多くもなければ魅力的とも言い難いが、良いものはいくつかある。

第二に、Android タブレット用のキーボードカバーやケースは数が少ない。ただし、入手できる少数のものはどれもなかなか良い。Android ユーザーのために高品質のタイピング用アドオンを作っているハードウェアメーカーとしては BelkinLogitechZAGG などがある。そうは言っても、それらのアクセサリは皆、iPad ユーザーたちが直面しているのと同じく窮屈なタイピングという難問に苦しんでいる。Android タブレットの寸法に合うキーボードにするためには、必然的にキーをギチギチに詰め込まなくてはならないからだ。

生産性のためだけにタブレットを使おうと思っている人に対して私が助言する内容は、めったに揺らがない。可能なら iPad にするのがよい、きっとそれで幸せになれるだろう、と私は言い続けてきた。

けれども最近になって Android がハードウェアとソフトウェア双方の面で発展し(それは Microsoft 製のものにも言える)私の考えも少々変わってきた。少なくとも、他の面で Android エコシステムを使っている人に対しては、私は少し違うことを言うようになってきた。

中でも注目すべきは、Samsung が Galaxy Note シリーズと Galaxy Tab シリーズのタブレットに大きな新機種を最近加えたことだ。つまり、12.2 インチの特大サイズのものを出してきた。これは、ハードウェアが 10 インチ程度までに止まっていた Android エコシステムにおいては異例のことであった。Apple の iPad は最大でも 9.7 インチ止まりだ。

最初の写真がNote Pro、その次の写真が Tab Pro だ:

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これら巨大サイズの Samsung タブレットは、それに合ったキーボードの選択肢がなかったならば私にとって生産性の観点から大して意味をなさなかっただろうが、いくつかの会社がそのようなキーボードを既に出している。Logitech からは、これらジャンボサイズのタブレットのいずれにも合う Logitech Pro キーボードケースがリリースされた。

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ZAGG も、これら二つのタブレットのいずれにも合う Cover-Fit キーボードケース を提供している。

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私は最近、12.2 インチ Galaxy Note Pro をそれに合う Logitech および ZAGG キーボードとともにテストする機会があった。全体的に、結果は嬉しい驚きとなった。

ハードウェア -- これらの新しいタブレットはこの大きさにしては驚くほど持ち運びし易く、厚さはたったの 0.31 インチ (7.9 mm) で (iPad Air に比べてもたった 0.2 インチつまり 0.4 mm 厚いだけ)、重さも 1.6 ポンドつまり 726 グラムと悪くない。iPad Air は 1 ポンドつまり 469 グラムとずっと軽く、初代のセルラー iPad の重さが 1.6 ポンドであった。これらの機器は、ベッドの中で片手で支えて電子ブックを読めるようなものではない(少なくとも長時間そうするのは無理だ)けれども、ソファの上で持っていて怪物みたいに思えるようなことはない。

2,560 × 1,600 ピクセルのスクリーンは驚異的でもあり、Hulu や Netflix では信じられないほど素晴らしい。iPad Air の 2,048 × 1,536 ピクセルの解像度に比べて百万ピクセル近くも多い。

キーボードさえ追加すれば、生産性の面でも本物の潜在能力を備えているだろうと予想できる。

私が気に入っているのは、さきほど挙げた Logitech キーボードだ。頑丈で、二つ折りスタイルの外装が、使っていない間もタブレットをうまく保護してくれる。仕事にかかろうとなれば、タブレットに取り付けられた上部のカバーを上に開き、Galaxy Note を横長の状態でキーボードのすぐ奥のスロットにしっかりと差し込んで使う。

タブレットをケースから取り外してから縦長の状態でスロットに差し込んで使うこともできる。ただしタブレットのスクリーン縦横比がおよそ 16 対 9 なので少々無理があり、縦長では滑稽なほど背が高過ぎる印象だ。

この Logitech キーボードこそ、私を納得させた最大の要因となった。私が見たことのあるどんな iPad 用キーボードケースよりも幅が広く、その幅広さのお陰で私は一度も窮屈さを感じなかった。いわゆる Chiclet キー(角を丸めた四角いキー)には微妙に凹みがあって、感触も最高だ。

(私はすぐに Logitech の iPad Air 用 Ultrathin Keyboard Folio を思い出した。こちらのキーは下にでなく上に膨れていて、タイプした際の感触が大きく劣る。いったいなぜ Logitech が Android キーボードでは良い選択をしたのに、それ以外の部分では素晴らしい iPad 用アクセサリで反対の選択をしてしまったのか、私は理解に苦しむ。)

Galaxy Note Pro に Logitech Pro ケースを取り付ければ、一流のモバイル・ワークステーションが出来上がる。ただし MacBook Air や Windows Ultrabook に比べて少々かさばるのが難点だ。でも私にとっては、このハードウェアの組み合わせを使う主たる場所が自宅の仕事部屋と息子の高等学校の父母会のミーティングだけなのでそれほど大きな難点ではない。私は畳んだ機器を脇の下に挟んで父母会ミーティングの部屋に入り、テーブルの上で一瞬のうちにそれを開いて、直ちにメモを取り始めた。

では、なぜラップトップ機にしないのか、例えば私の大好きな MacBook Air ではいけないのか?(2014 年 7 月 3 日の記事“MacBook Air を最新の Ultrabook や Surface と比較するとどうか?”参照。)

それはもっともな質問であり、慎重に検討すべき問題だが、私はこの Android の組み合わせならば気まぐれにタブレットを取り外してタッチ専用にして使えるところが好きだ。この点は素敵なボーナスだと言える。

もう一つの素晴らしい機能が Verizon のセルラーデータにアクセスできる点で、そのお陰で Note Pro の父母会ミーティングでの生産性が大いに増した。ある時、ドメイン名の購入が必要となったのだが、Wi-Fi アクセスがなかったにもかかわらず私はその場で契約を完了させることができた。他の父母たちはしきりに感心していた。

もう一方の ZAGG キーボードケースについては私はあまり良い印象を持っていない。こちらは、使っていない間はある意味タブレットのスクリーンの上にはめ込んで保護するようになっている。それは結構なことだし、ZAGG は iPad 用の素敵なキーボードケースをいろいろ作っているのだが、この Galaxy Note Pro 用モデルは私の目に少々安っぽく見える。キーボードはゆったりしているけれども、真っ平らなキーは凹みのある Logitech のキーほど感触が良くない。ケースをタブレットに取り付けたり取り外したりするのも厄介だし、タブレットの背面が保護されないままになるのも気に入らない。

長所を言えば、この ZAGG キーボードケースと Note Pro の組み合わせの方がかさばらない。ケースの背面は手触りの良い質感だが、Samsung の好みなのだろうか、偽の縫い目が見苦しい。

これらジャンボサイズのタブレットのどちらかにキーボードケースを付けて、必要ならばセルラーデータサービスまで購入するとなれば、合わせたコストは相当なものになる。例えば Verizon の料金は Galaxy Note Pro に二年間のワイヤレス契約義務を付けて $749.99、つまり換算すれば毎月 $42.49 だ。セルラーサービスなしのタブレットを $849.99 を購入しておいてあとでサービスを有効にすることもできる。

ワイヤレス機能なしのタブレットならばもっと安く購入できるが、その場合の価格はいろいろ、非常に幅広いと分かった。例えば Amazon.com では Tab Pro モデルが 32 GB のストレージ で $543.99、 32 GB の Note Pro が $647.99 となっている。これならば MacBook Air よりも安い。ただしキーボードケースの価格も忘れてはならず、Logitech のモデル が $99、ZAGG の方は $78.45 だ。

最後にもう一つだけハードウェアに関する注意点を: 私の Galaxy Note Pro はある時突然狂い出し、起動しても再起動しても何十ものエラーメッセージを次々と吐き出すようになった。この忌まわしいタイプの麻痺状態を脱するには、ハードリセットをして工場出荷状態に戻すしかなかった。結局何が問題だったのか全く分からなかったし、起こったのは一度限りだけれども、いずれにしてもそれをここに書いておくのは私の義務だと思う。公平を期して言えば、私は iPad でも似たような極端な誤作動を何度か経験している。

ソフトウェア -- Android 用の生産性ソフトウェアは、さきほども触れたが、ごた混ぜの状態だ。例えば執筆をしたい人にとっては、iOS の世界ほど多くの選択肢はないけれども、使える少数のアプリはスタイルの見事さと細かな部分への配慮を備えていて、その点は iPad の世界でなら当然のレベルに匹敵する。ライターとしての私は iOS から Android へと移っても天国から地獄へ落ちたような気はしない。ただ、Android には煉獄の雰囲気が感じられるとだけ言っておこう。

Samsung はこれらジャンボサイズのタブレットで娯楽目的よりもビジネス目的を念頭に置いているようだが、提供されているソフトウェアを見る限り Apple の iOS 用 iWork アプリほど強い印象を受けるものはなかった。

Galaxy Note には Hancom Office なるものが付いているが、私はどうすればファイル表示状態からファイル編集状態へ切り替えるのかが分からなかったので、このソフトウェアについて特に言うことはない。これは決して例外でない。Samsung は一部のアプリについて独自のダウンロードメカニズムを提供すると強く主張していて、Google や Amazon のアプリストアをブロックしたりはしていないものの、そのための自社製のアプリ基盤構造は、問題も多く不透明な悪夢以外の何物でもない。

Samsung は Galaxy Note の大きなスクリーンを生かしてそれなりの生産性拡張機能をいろいろと盛り込もうと試みているが、結果は不安だらけの状況だ。スクリーン上に同時に複数のアプリウィンドウを浮かべるためのデスクトップ風のオプションがあるけれども、使ってみるとこれでは結局面倒なだけ、私はすぐに一度に一つだけのアプリという古典的なやり方(Apple はこのやり方を重視し続けている)に戻してしまった。それに、私のタブレット上にあるアプリのうちこの "Multi Window" モードに対応しているのは一部のみなので、これでは機能の趣旨にそぐわない。

私が借りた Note Pro にはスタイラスペンが付いていたが、Galaxy Note モデルはすべて Tab モデルとの差別化を図るためにスタイラスペンを付けている。Note Pro にはスケッチブック、ノート、メモなどスタイラスペン対応のアプリがたくさん入っている。私は普段スタイラスペンを使わないので、そういったアプリにはあまり気を引かれないが、そうでない人たちがいることも容易に想像できる。

私は Note Pro を他のいろいろの Android タブレットを使ってきたのと同じやり方で使った。ほんのいくつかのスクリーンに、いくつかのアプリアイコンやインタラクティブウィジェット (Gmail、Google Now、Flipboard、New York Times、その他) を組み合わせるのだ。他の Android タブレットと違うのは、Galaxy Note Pro の特大サイズのディスプレイのお陰ですべてが大きくて美しく見えたことだった。

生産性(私にとってそれは主として執筆を意味する)のために、いつも使う類いのアプリを私は全部試してみた。その大多数は、私にゾクソクする感じを与えたことが一度もなかった。PC と Mac ではウェブベースで、iOS デバイスではアプリの形で多用している Google Docsはもちろん、例えば Docs To GoPolaris OfficeKingsoft OfficeOfficeSuite Pro、など、他の Microsoft Office 風アプリも使ってみた。

私がどのモバイルデバイスの上でもデフォルトとして使っている Google Docs は、Android 上でも大体において iOS 上と同様に働く。(つまり、問題ないということだ、ありがたいことに。)(最新の iOS 用 Google Docs アプリに対する私の見解は、2014 年 6 月 3 日の記事“新しい Google の Docs と Sheets アプリがモバイル共同作業を助ける”参照。)

他のものの中では、私は OfficeSuite Pro を最も気に入っている。それでも、これを使っていると何となく映画 "The Incredibles" に出てくる三輪車の男の子になったような気がする。Mr. Incredible が「何を待ってるんだ?」と怒鳴ると、子供は「知らないよ、何か すごい ものかな」と答える。そう、Android 用の Office 風アプリは、まあまあ機能的だが、すごいと言えるようなものではない。

まさにそこが、さきほども触れた Microsoft の登場するところだ。このソフトウェアの巨人は最近になって同社の Office スイートに iPad 用のバージョンをリリースし、ほとんどいたる所で高い評価を受けつつしっかりした売り上げを達成している。(2014 年 4 月 3 日の記事“iPad 用 Office: 詳しく見てみよう”参照。)

Microsoft はその時点でタッチ対応バージョンの Office を Windows ベースのタブレットや Android デバイス向けに開発中だと述べていた。

Microsoft Office こそ、パズルの最後のピースだろう。Android を(とりわけこれらの 12.2 インチ Samsung タブレットを)本格的な生産性装備とするための、欠けている要素だ。ただ一つの問題は、Android 版の Office がいつ登場するかについて Microsoft が何も手掛かりを示していないことだ。ひょっとしたら何ヵ月も先かもしれない。(何年も先でないことを願いたい。)

それでも、Android をようやくモバイル生産性プラットフォームに加えることができて、私はワクワクしている。こうなるまでには長い長い時間がかかった。12.2 インチの Samsung タブレットに現在入手可能な Android 用生産性アプリを組み合わせただけでは、iOS ユーザーの気持ちを引くには足りないだろうし多くのユーザーが移行するとも思えないが、これまでずっと iPad を相手にまともに競争できる手段を手にできないでいた Android 支持者の心を喜びで満たすことだけは間違いない。時には、大きいことは良いことだと本当に言える状況もある。少なくとも、タブレット上の生産性についてはそれが言える。

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Fujifilm XQ1: プロフェッショナル向けのお手軽カメラ?

  文: Charles Maurer
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

晴れた日、あなたは妻の誕生日を祝っていると想像しよう。ここはフランスの高級なレストランの一つ、日除けの付いたテラスにあるあなたのテーブルから中世の運河が見渡せる。運河沿いには半木造の家が並び、そこここに花が吊るされている。Colmar の JY's に私たちはいて、私の目に映るのはこんな風景だ。[訳者注: Colmar はフランスのドイツ国境に近いアルザス地方の歴史ある都市、JY's はミシュランガイドにも載っている有名レストランです。

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さて、これをスナップ写真に撮りたいと想像しよう。ごく単純なお手軽カメラがシャツのポケットに入っているので、あなたはそれを取り出してパシャッと撮影する。ほら出来た! でも、あなたの目に見える青い空は真っ白になっているし、日陰にある緑の葉は黒っぽくなっている。

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ポケットサイズのカメラで撮影すれば、たいていこの二番目の写真のような出来映えになる。これが、その種のカメラが本来持つ限界を示している。写真を撮影するというのは光の粒子を画像センサーの上に吹き付ける行為だ。ほんの少量の粒子しかそこに到達しなければ、センサーは大体においてそれ自身の発する電子的ノイズを記録することになる。光の粒子が多くなればより鮮やかな色調が生まれるが、ポケットサイズのカメラに搭載された画像センサーはあまりにも小さ過ぎて多くの粒子では過負荷になってしまう。結果として、その小さなカメラが撮影可能なダイナミックレンジ、すなわち純黒と純白の間の明度の幅に極めて強い制約がかかる。空が青く写っている上の写真のようなものを作成できる小さなカメラがあるなんて、私はこれまで一度も期待したことさえなかった。

けれども、それができる小さなカメラが存在した。$400 の Fujifilm XQ1 だ。これを、私は昼食の最中にシャツのポケットから取り出して、上の写真を撮影した。

ボンネットの中は Porsche -- XQ1 は、他の多くのお手軽カメラと見掛けは何も変わらず、使い方も同じように簡単だけれども、その内部には高性能のエンジンを搭載している。つまり、小型化したバージョンの、Fuji の X-Trans センサーだ。(X-Trans センサーの詳しい説明は 2014 年 3 月 19 日の記事“楽をしたい人のための新しいカメラ: Fujifilm X-E2”参照。)大多数のお手軽カメラとは異なり、この XQ1 はあとで処理を加えられるように raw ファイルを保存することもできるし、JPEG を作成することもできる。それに加えて、プロフェッショナル向けのカメラと同レベルのコントロールも提供する上に、ここがデザインの素晴らしいところだと思うのだがそれらのコントロールをアクセスしやすく十分に便利に使えるように配置することに成功している。

この XQ1 はあまりにも興味深く思えたので、ヨーロッパへ一ヵ月のバックパック旅行に出かける準備をしながら私は重い「本物の」カメラでなくこのカメラを持って行くという決心をした。使ってみると、驚くほど有能なカメラだと分かった。ISO 800 でさえ、このカメラはダイナミックレンジにまだ余裕がある。例えば、ここにある左の写真はこのカメラの標準の JPEG で、右の写真はその raw 画像から黒い部分の中の詳細を抜き取ったものだ。11 インチ× 14 インチ (28cm × 36cm) に引き伸ばしてプリントしてもシャープかつ明瞭に見える。

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(この写真のモデルは見かけより年をとっている。彼女は、アムステルダムの Rijksmuseum にある 500 年前のテラコッタ、イエスの死を嘆くマリアだ。作者は Michelangelo の学友で、名前を Pietro Torrigiani という。ちょっと脇道に逸れることをお許し願うとして、下の写真と比べてみて頂きたい。全く違う女性に見えるけれども、実はどちらも同じ作品を撮影した写真なのだ。下の写真は美術館のカタログに載っている写真だ。顔は視点によって作られ照明がそれを描き出すということの、これは見事な実証となっている。)

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驚いたことに、この XQ1 では ISO 3200 ですら十分に役立つフィルム速度であることが分かった。ただしこれほど感度を上げればセンサーのノイズが増えるので、raw 画像にダイナミックレンジの余裕はなくなる。Rembrandt の "Night Watch" (夜警) を写したちょっと滑稽な写真を下に示すようにトリミングして 11 × 17 インチ (A3 サイズ程度) の紙にプリントしてみたところ、私がこれまでに作った中で最高にクリーンな引き伸ばしとは言えなかったけれども、プロのフォトジャーナリズムの標準には達していた。

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下の写真で、私の写真の細部を Rijksmuseum のカタログに載っている写真と比べてみて頂きたい。163 メガピクセルを含む、注意深くコントロールを施した画像の、小さな一部分だ。Rijksmuseum の写真の方が当然ながらシャープで、さらにもっと大きく引き伸ばしても画像が崩れたりしないが、その一方で私の写真は引き伸ばしの限界に近い。そういうわけで、たとえ ISO 3200 でさえも、XQ1 のダイナミックレンジはたいていの用途で十分に役に立つ。

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シャープネスと細部 -- たいていの人は、プロフェッショナル向けのカメラならば極めて細かな部分まで記録していると思っているだろう。でも、それは事実ではない。光沢のある印刷の雑誌に 2 ページ見開きで載っている画像も、含んでいるのはたかだか 4 メガピクセルの情報に過ぎない。プロフェッショナルの写真では、極めて細かな部分の情報が必要なのではなくて、鮮やかさが必要とされる。線も、普通程度に細かな部分も、すべてシャープでコントラストがくっきりしていることが要求される。

私の目には、XQ1 で低めの ISO 速度を使って撮影したものを 11 × 17 インチ (A3 サイズ程度) にプリントすれば、35mm フィルムに撮影したものを同程度のサイズに引き伸ばしてプリントした写真と同等に見える。それに加えて、高い ISO 速度を使って撮影すれば XQ1 はフィルム写真の能力を超えるレベルの良い写真が撮れる。

でも、もちろん、35mm フィルムが写真のプリント品質の標準であったことなどないし、十分細かく観察すれば XQ1 の画像はプロフェッショナル用デジタルカメラで撮った写真とは比較にもならないだろう。下の写真をご覧頂きたい。左側の拡大写真は XQ1 によるもので、右側は X-E2 に Fuji の 55-200mm レンズを付けて撮影したものだ。それぞれ上に見えるのはフレームの中心部分を拡大したもの、下はフレームの端に近い部分だ。いずれのレンズも最もシャープな絞りになるようにしてある。画像はロスレス PNG で、100 % の拡大率だ。

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Fuji の宣伝用資料を読んだ人には、これは意外な結果かもしれない。けれどもどれだけ才能のある宣伝担当者であっても、Fuji のコピーライターが光学の法則を書き換えることなど不可能だ。理想的なレンズならば光の点の画像を点に見えるように映し出すけれども、現実世界のレンズはすべて光の点をぼやけた円板として映し出す。このぼやけた円板は相当に大きいので、画像センサーの一つのセルのみに収まらず、周囲のいくつかのセルに広がってしまう。小型のカメラとレンズでぼやけをできる限り少なくするためには製造工程における誤差の許容範囲を厳しくする必要があり、しかもレンズのサイズが小さくなればなるほどぼやけ(回析)の源が飛躍的に増加する。ソフトウェアを使ってぼやけをいくらか補正することはできるけれども、この XQ1 は非常に小型であって価格もたった $400 なので、そこから奇跡を期待するのは無理というものだ。

XQ1 を使う -- 私は他にもマニュアルコントロールのできるお手軽カメラを試したことがあるが、使い方がこれほど分かりやすいものは他になかった。この XQ1 は、まさに例外的だ。調整が少々扱いにくいところもあるけれども、問題だと思えるほどに扱いにくくはなかった。その上、ファインダーは付いていないけれども、背面のスクリーンはどのような照明条件下でも見やすい。暗い場所では自動的にスクリーンが暗くなるし、ボタンを一押しすれば明度が上がって直射日光の下でも快適だ。

XQ1 を使っていて私が最も大きな困難を感じたのは、画像のフレーム取りだ。レンズのズームはモーター駆動で正確なコントロールができないので、思うようにカメラで枠をトリミングすることができないし、ついつい普段よりも狭く写真をトリミングしてしまいがちになる。また、カメラ背面の LCD ディスプレイを見ていると、垂直線と水平線を完全に正確に保つのが難しい。なので、出来上がった写真を普段よりも頻繁にコンピュータで修正しなければならない。

XQ1 の操作はプロフェッショナル向けのカメラとは全然違うけれども、私は自分がプロフェッショナルのトリック、例えば動きの表現のようなことをこのカメラでも実行していることに気付いた。これは、四つの基本テクニックのうち三つを使えば可能となる。さきほどの "Night Watch" の写真は stop-action を使っている。下の左の写真では Amsterdam の町の風景の中で被写体がぼやけ、右のオートバイの写真ではカメラをパンすることによって背景がぼやけている。それぞれの写真で、フルフレームも、私がトリミングした枠も、ご覧になれるだろう。

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右の写真は見た目はきれいだが、実はこれは非常に奇妙な写真だ。よく見ると、背景にいる人々も物も、すべてサッと一振り動いて、シャープなまま動きを止めている。これではまるで、1/30 秒間の露光の最後の瞬間に手振れ防止機能が割り込んできたかのようだ。このカメラの手振れ防止機能は通常の条件下では素晴らしく、私はたいてい 1/8 秒のシャッター速度で何の不自由もなく撮影できるほどだが、問題はこの手振れ防止機能をオフにすることができない点だ。だから、私はすべてをぼやけさせることによって動きを表現する目的では XQ1 を使わないようにしている。別のカメラを使ってバリ島のモンキーダンスを写した下の写真のようなものは、XQ1 では撮影できないということだ。

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JPEG か Raw か -- あらゆるデジタルカメラと同じく、この XQ1 も自動的に JPEG 画像を作成する。自動生成の JPEG が良いものである範囲内においては、XQ1 の作成した JPEG も良いものだが、私に言わせれば自動生成の JPEG で良いものなどというのは自己矛盾だ。自動生成 JPEG とは、言わばフリーサイズの靴のようなものだ。

細かいところでは違っているとしても、あらゆるカメラは大体似た方法で画像の明度を圧縮する。その際、20 世紀の前半に主として Kodak によって考え出された曲線が基準となる。Kodak の目標は、半日分の給料と引き換えに手にした十二枚の葉書サイズのプリントをドラッグストアから持ち帰った人々から届く苦情を最小限にすることであった。でも、苦情を最小限にしても卓越したものは生まれない。写真における卓越を生み出すためには、撮影するシーンのダイナミックレンジを画像処理プロセスにおける圧縮カーブにマッチさせることが必要となる。

プロフェッショナルたちは白黒のフィルム写真の圧縮については多少のコントロールができたが、その後 Kodak はカラーフィルムについても異なる圧縮カーブを使って少数の選択肢を提供するようになった。けれども、シーンの照明を完璧にマッチさせるためにはシーンの人工的な照明が通常要求され、その点は戸外での撮影あっても同じことだ。例えば、私はこの写真の中で日の出を作り出さなければならなかった。

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色調の制御は、優れたダイナミックレンジで撮影し raw ファイルに保存できる XQ1 のようなデジタルカメラがあれば容易だ。そこで、私はさまざまのフラッシュユニットやレフレクターなどと共に行動するのは止めて、どんな照明の下でも撮影し、あとで写真を調整するようにしている。

例えば、ここに Frederic Bartholdi 作の素晴らしい石の彫刻がある。彼は、ニューヨーク港を美しく飾る Statue of Liberty (自由の女神) を作ったフランス人だ。左の写真が XQ1 の JPEG だが、これではあまりにも平面的で、石の刻みや切り込みの力強さが伝わらない。照明の指向性に問題はない。スタジオの中でも私は同様の設定を採用したかもしれない。けれどもこの彫刻の場合、色調の幅がカメラの圧縮アルゴリズムとうまく合わず、その結果として白から黒へのフルレンジの色調変化が表現されていない。その点、右の、私が手を入れたバージョンでは表現できている。

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上で示した自動生成 JPEG は、実際この記事で触れたすべての自動生成 JPEG は、XQ1 のデフォルト設定によるものだ。他のすべてのデジタルカメラと同じく、この XQ1 でもデフォルト設定を無効にして制御を加え、特定の被写体に応じた自動化処理ができるようになっているけれども、私の意見ではそういったものはすべて全然実用的でない。私にとっては、実際に目で見るまでは写真をどのように処理したいのかあらかじめ知ることができず、設定がまずかった場合に備えて処理をやり直せるようになっている必要がある。ならば、カメラの中では raw 画像を保存しておき、あとからコンピュータ上で処理する方が簡単で確実だ。

Photo Ninja -- XQ1 の raw 画像を処理するために、私はカメラに付属しているバージョンの Silkypix を使っていない。使いづらい上に、理解に苦しむところもあるからだ。その代わりに私は PictureCode の製品、$129 の Photo Ninja を使っている。下のサンプルを見ても分かる通り、Photo Ninja の方が Adobe の Camera Raw (無料の Photoshop プラグインだが raw ファイルも処理できる) よりシャープな画を引き出すことができ、ダイナミックレンジも広い。いずれも、元の画像の左端の部分を切り取ったものであることに注意して頂きたい。理由は分からないが、Camera Raw の方は画の左端を多めに切り落としてしまっている。

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Photo Ninja はベクターベースのエディタで、個々のビットを編集するのではなく画像全体に変更を加える。だから、Photo Ninja は空の青さを引き出したりシーン全体のコントラストを強めたりすることはできるけれども、埃による染みを取り除いたり女性の頭から突き出たように見える枝を消したりすることはできない。また、Photo Ninja はベクター変換についても Photoshop やいくつかの Photoshop プラグインに比べて機能が少ない。そういう訳で、私がもっと大きなカメラで撮影した写真はたいていの場合まず Photo Ninja で処理を始めるけれども最後には Photoshop で処理を終えている。

しかしながら、私のもっと大きなカメラはどれも交換可能レンズを搭載しているので埃がセンサー上に落ちる可能性が高く、またいずれもダイナミックレンジが広いのでより極端な変換を必要とする可能性が高い。これに対して XQ1 は(少なくとも今のところ)埃の問題が全くなく、ダイナミックレンジも比較的限られている。そのようなカメラならば Photo Ninja が十分に役に立ち、ほとんど理想的と言ってもよいくらいだ。

私が Photo Ninja に感じるほぼ唯一の不満は、ユーザーインターフェイスと一件のバグに関するものだ。Photo Ninja のインターフェイスは単純で覚えるのも難しくないが、これはクロスプラットフォームのアプリケーションなので、ユーザーインターフェイスの要素の中には Mac ユーザーが期待するものとは見栄えや機能が必ずしも一致していないものがある。

バグというのは自動機能に関するものだ。Photo Ninja のプリセットはなかなか良い出発点で、プリセットを異なるカメラやレンズごとにあらかじめ調整しておけば、Photo Ninja はファイルの EXIF 情報に基づいて自動的に適切なプリセットを選択してくれる。ところが、カメラにズームレンズが内蔵されている場合(それが交換可能レンズでない場合は)Photo Ninja は複数通りの焦点距離に対応した調整結果を保存できないのだ。Photo Ninja の開発者はこの問題を認識しているので次回のリリースでは修正されると期待してよいだろうが、現時点での私は個々の写真ごとに別々に XQ1 のたる形歪曲を真っ直ぐに直す手間をかけなければならない。

Photo Ninja の動作方法については、チュートリアルがあるので一読をお勧めする。

再生モード -- 他のすべてのデジタルカメラと同じく、この XQ1 にも二つの基本的モードがある。撮影モードと、再生モードだ。写真を撮影するための各種コントロールは十分に考え抜かれているけれども、再生モードが提供する「機能」の中には奇妙なほど苛立たしく感じられるものが一つある。

その機能は、ボタン一押しで Wi-Fi 機能に直接アクセスできるというものだ。そのボタンを押すと、XQ1 はその場限りの Wi-Fi ネットワークをセットアップする。その際どうやら私は自分のスマートフォンまたはタブレットをリセットしてそれに普段のネットワークの代わりに XQ1 のネットワークを使わせるようにしなければならないらしく、しかも特殊な Fuji アプリの使用を認めなければならないらしい。このアプリはタブレットやスマートフォン上に Fuji の JPEG を表示するために作られていて、扱えるのは Fuji の JPEG のみ、他の JPEG も、raw ファイルも扱えず、デスクトップ Mac も駄目で、普通のネットワークも駄目だ。これでは、たとえまともに動作したとしても、使いやすくもなければ便利でもないだろうが、現状では私が持っているどの iOS デバイス上でもどうやっても動かない。

こうしてこの機能は役に立たないのだが、それだけでなく邪魔になる。撮影モードにおいては、この Wi-Fi ボタンが拡張ファンクションボタンとして働く。私はこの拡張ファンクションボタンを頻繁に使うので、実際にはまだ再生モードにいるにもかかわらずうっかりと撮影機能にアクセスしようとしてこのボタンを押してしまうことがよくある。けれどもいったんそれをすれば、カメラはまず独自の Wi-Fi ネットワークをセットアップしてから、接続を待ちつつしばらくの間ぴたりと動きを止めてしまう。撮影を再開するためには、まず自分が何をしてしまったのかを理解して、それから「戻る」ボタンまたはシャッターボタンを押して、四・五秒待つ必要がある。

もう一つ別の苛立たしいバグにも気付いた。これをここに書いておくのは、誰か Fuji にいる人がこれを読んでバグを修正してくれるかもしれないという無邪気な期待の気持ちからだ。通常私は写真のデータとヒストグラムをその写真の小さいバージョンと共に表示させているのだが、この表示モードで写真を拡大してディスプレイ全体を占めるようにすることができない。拡大率を制御するレバーを動かしても、サムネイルバージョンの表示からトリミングしたバージョンの表示へ直接に切り替わるだけで、フルフレームのサイズで止まってくれない。

結論 -- この XQ1 をプロフェッショナル用のカメラとして手動で使うのは簡単ではないが、そのマニュアルコントロールは実行可能だし、LCD ディスプレイは明るい日光の下でも見やすいし、各種の自動コントロールや効果的な手振れ防止機能のお陰で初心者にも適したものとなっている。その上、多くの状況下でこのカメラはプロフェッショナル級の品質の画像を作り出すことができる。Photo Ninja と組み合わせれば、35mm カメラが中程度のフォーマットと 4 × 5 インチフィルムに対して持つのと同等の関係性をより大型のデジタルカメラに対して持っていると言えるだろう。

XQ1 における主要な機能的制約はレンズだ。このズームレンズは、35mm システムに換算すれば 25mm から 100mm のレンズに相当する。このレンジの短い側は相当ワイドなアングルをカバーできるけれども、長い側は短過ぎてスポーツや野生生物を撮影するには十分でなく、例えば群衆の中の一人の人をクローズアップするために目を見張るような効果を出したり、遠くに広がる風景を深みに押し込むような効果を作ったりすることはできない。

その一方で、この XQ1 は万能のカメラとして作られているのではないとも言える。これは、初心者向けに、または本格的な写真家で大きな銃を家に置いて来た場合でもポケットからピストルを取り出していつでも撮影できるようにしたいと思っている人たち向けに、作られている。

それこそまさに私が XQ1 を使うやり方であって、私はこれを持っているのがとても嬉しい。こんなに小さなカメラで、これほどうまく写真が撮影できるものがあるなんて、私は思いもしなかった。

[もしもこの記事の情報がお役に立ったのなら、Charles はあなたが国際援助団体 Doctors Without Borders (国境なき医師団) に少しでも寄付してくださるようお願いしています。]

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FunBITS: PhotoCard は iPad 及び iPhone 用の現代の絵はがき

  文: Michael E. Cohen: [email protected], @lymond
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

昔は、友人や家族に絵はがきを送るのが私の休暇のお定まり行事の一つであった。そうすることで、私は彼らより楽しい時間を過ごしていると知らせるのであった。今日では、しかしながら、切手代は値上がりを続け、街角からは郵便ポストが段々姿を消しつつあり、そしてスマホのカメラと Wi-Fi の両方が段々とではあるが何処でも何時でも使えるようになったこともあり、私の絵はがき選びという休暇儀式も廃れていった。しかしながら、私の友人や家族全員が私の様に技術に明るいわけではないし、それに電子メールで送られてくる休暇のスナップショットは、由緒ある絵はがきの様に、冷蔵庫に留めたり、キュービクルの壁にピン留めしたり、或いは毎週定例のコーヒーとベーグルの朝会で友人に見せたりするのに適している訳でもない。

と言うわけで、今年の休暇用に星の数程あるデジタルガジェットの中に、そこそこの値段で、まあまあの能力を持つ絵はがきアプリがあるかどうか App Store を見てみることにした。探すアプリは、自分の写真を使い、簡単なメッセージを付けたデジタルはがきを作成出来、そして電子メール経由で (21 世紀に違和感を持たない友人用)、或いは、印刷して標準の郵便で送れる (未だにダイヤル式の電話やリボンを使うタイプライタを懐かしがっている仲間用) ようなものである。驚くには当たらないと思うが、この様な能力を持つアプリは幾つか見つかったが、私の目を捉えそして心も掴んだのは、Bill Atkinson と言う人のアプリであった:PhotoCard である。

この名前を覚えている方もおられるであろう。Atkinson は前に Apple で働いていたことがあり、QuickDraw(元祖 Mac の礎であった画像ソフト), MacPaint, そして HyperCard の背後にいる導きの光の人であった。皆さんはご存じないかもしれないが、彼は、ソフトウェア作りの才能の他に、大いに尊敬された自然写真家でもあった。彼は、芸術写真に対する愛と、ソフトウェア職人としての卓越した能力を一緒にして PhotoCard を作り出した。これは一つのことを良くやる磨き抜かれたアプリである:それは余計な手間をかけずに魅力的なデジタル絵はがきを作ることである。PhotoCard は無料;iOS 7 が必要。

PhotoCard は新しいものではない;最初は iPhone 用に 2010 年に現れた (TidBITS 読者の中には 2010 年の Macworld での Adam Engst の Bill Atkinson との接触を覚えている方もおられるかもしれない。その時 Atkinson は、他のことに加えてこのアプリについても熱弁を振るった;")Macworld Expo 2010 が再起動" 15 February 2010 参照)。PhotoCard はそれ以来進化してきて、版を重ねる毎により能率的にそして有能になった;現在のバージョンは 9.0 である。

このアプリは、iPhone 及び iPad の両方に対してネイティブであり、iPad では、底辺に並ぶ小さなバーで制御される簡単なインターフェースを提供する;iPhone では、横位置を使い、このバーは二つに分けられ画面の横に並べられる。このバー上で使える命令は容易に見当がつくが、良く分からないという万一の場合は、Guide (バーを一回タップすれば出てくる) をみれば説明がみられる。

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新しいはがきを作成するには New (それ以外にある?) をタップする。こうすることで、自分の機器のカメラで新しい写真を撮る、自分の Photos コレクションの中から一枚を選ぶ、前に送ったはがきからの写真を使う (PhotoCard はあなたが作った、そして送ったはがき全部の履歴を保持している)、或いは Atkinson の自然写真の一枚を使う機会も与えられる。このアプリには、自分の絵はがきに無料で使えるその様な写真が何百枚も付いている;もしあなたの機器上のメモリ容量が気になるのであれば、代わりに、含まれる写真を数十枚に落とした "lite" バージョンもダウンロード出来る。

このアプリ内で写真が撮れ、そしてそこから直ちにはがきを作れるというのは、ありがたいと思うが、この機能を実際に使ったことは一回もない。代わりに、私は通常 Camera アプリを使って構図を決め、そして写真を撮り、後で絵はがきを作る段になったら、Photos コレクションの中から一枚を選択する。

写真選びが終わったら、それを色々な方法で切り取ったり、修正したり出来る。制御は簡単でそして野心的すぎてもいない:写真の補正 (明るさ、彩度、そしてコントラストを自動的に調整する、通常は良い方向に)、明るくする、暗くする、そして横位置と縦位置の間の切り替えである。しかしながら、Photos コレクションの中のどの写真でも使えるし、そしてより複雑なそしてより詳細な画像編集を持った数多くのアプリが存在するので、PhotoCard に最低限の編集コントロールしかないことで困ることは殆どない。

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写真の選定と補正が終わったら、次ははがきに載せるメッセージ作成の番である。ここでも、機能は簡単である:はがきのコンテンツ部分をタップし、タイプし始める、それだけである。もしタイプフェース、サイズ、或いは行間隔が気に入らなければ、Font ボタンをタップするだけで、選択出来るフォントのメニュー、サイズと行間隔用の二つの簡単なスライダーが現れる。内蔵の iOS フォントの他にも、このアプリにはライセンスされた追加のタイプフェースが沢山付いてくる。テキスト編集インターフェースに関する私の唯一の苦情は、斜体や太字体の様なスタイル付きテキストをサポートしないことであるが、まあ、無いとどうしても困るという程ではない。

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次に、はがきに貼る切手も選べる。PhotoCard には膨大な数の切手図柄が付いており、その中から自由に選べる。しかしながら、もし気に入ったものが見つからないというのであれば、少し料金を払って、自分の画像を使った切手も作れ、その場合、それ以降に作るはがきにはこの切手を無料で使える (料金についての詳細は後述する)。電子メールはがきの場合、切手は単に装飾的なものに過ぎない;郵便で送られるはがきに対しては、これらの切手は郵便料金として機能し、そして U.S. Postal Service によって求められる郵便バーコードも表示する (Atkinson がデザインした切手のレイアウトも USPS の要件を満たしており、この気配りもこのアプリの特色をよく示している)。

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更にお好みなら、自分のはがきをステッカーで飾ることも出来る;これらもこのアプリに付いている画像で、スタイル的には、遊び心に溢れたものから...

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...写真的写実派のものまである。

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ステッカーは、サイズを変えたり、回転したり出来、それをドラッグして置きたい所まで運ぶ。心配ご無用、PhotoCard はステッカーを住所や切手を邪魔する所には置かせてくれない。ステッカーを取り除くには、単にそれをはがきの外までドラッグすればよい。切手と同様、少額の料金で自前のステッカーを作成し、その後はそれを好きなだけ使える。

また Voice をタップし、短い音声メモを電子メール送信のはがきに添付出来る (約 1 分間相当のオーディオ)。音声メモは吹き出しの図柄で表示され、ステッカーの様に、はがき上の好きな所へ配置出来る。もっとも、実際の音声メモは、電子メールに添付された別個の音声ファイルとして配信される;受信側は、大抵の電子メールプログラムで、その添付ファイルをクリックして再生出来る。

最後に、Actions をタップすることではがきに宛先を入れられ、これは手動でも、或いは iOS Contacts リストから住所を選択することでも可能である。PhotoCard はまた、前に使った住所は覚えているので、これらの人へ再度はがきを送るのは手間いらずに出来る。このアプリは、電子メールアドレスを選んだのか郵便アドレスを選んだのか判断出来るので、それに応じて切手を合わせる。

はがきに住所を入れるのが終わったら、再度 Actions をタップし、それから Send Postcard をタップする。印刷し郵送されるはがきに対しては、料金があなたの PhotoCards アカウントから引き去られ、そしてはがきは印刷され、裁断され、ラミネートされ、そして約 2 営業日以内に郵送される。電子メール経由ではがきを送る場合、料金は一切発生しない。

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では、はがきはどの様に見えるのであろうか? 電子メールはがきは美しい;先週私が電子メールした休暇はがきを受け取って、Take Control の編集主幹 Tonya Engst 曰く、"印刷して冷蔵庫に貼り付け、しばらく楽しむに十分な程度に素敵だったわ (うちの冷蔵庫の壁はもので埋まっていてもう隙間が無いの)"。 (彼女は、この言い訳の証拠として冷蔵庫のスナップショットを送ってきた!)

印刷はがきの方は、大きさは 5.5 x 8.25 インチ (14 x 21 cm) で、見事である:色は鮮やかで、隅々までシャープで、印刷品質は秀悦で、そして印刷に使われたラミネート紙は頑丈で、郵便局員による最も不注意な取り扱い以外には耐えられそうである。印刷時に最善の結果を得るために、Atkinson は、画像をきっかり 1920 x 1280 ピクセルに切り取り、そして 8-bit sRGB JPEG として保存するよう勧めている;私の見本はがき用に使った画像は、私の Photo Stream から何も手を加えず取り出したものだが、印刷バージョンは何も問題ないように見えた。

さて、前に述べた "アカウント" についてである。切手、ステッカー、そして印刷/郵送代をアプリ内購入で買うのではなく、最初にこのアプリを使う時 PhotoCard アカウントを作成する。その後、自分のアカウントに対して "クレジット" を PayPal やクレジットカードで購入する。クレジットは一つおよそ $2 である;"およそ" と言ったのは、一回により沢山買えば、より安くなるからである。例えば、私の最近の休暇では $25 を払って 30 PhotoCard クレジットを手にした。カスタムの切手やステッカーを作成、或いははがきを印刷して郵送するための料金は 2 クレジットである。

このアカウントは、クレジットを買ったり、使ったりする方法を提供する以上に有用である。これは、あなたのはがき及びはがきの受信者の履歴を記録し、PhotoCard がインストールされたあなたの全ての iOS 機器間でそれを同期してくれる。つまり、はがきを iPhone から送り、後で iPad を手にした時、前に送ったはがきを再利用して別の人に送るといったことが可能になる。

私は、このアプリが好きで、好きで、_好きで_ たまらないと言う以外に付け加えることはない。私の最新の休暇では、写真を撮り、それを友人や家族に送る機会を探し求めている自分に気づく程であった。PhotoCard は簡単で、かっこよく、そして魅力的で、その上、イライラさせられたり、或いは混乱させられたりという経験も一度もなかった。Bill Atkinson は言っている、"これは、私の作った QuickDraw, MacPaint, そして HyperCard 全部を一緒にしたものよりも更に良い出来である。" これらの創造それぞれがこの宇宙に残したへこみの大きさを考えれば、この表現は少々大袈裟すぎる様に見えるかもしれないが、こと技巧、美しさ、そして優雅さの観点からすれば、Atkinson は間違っていないかもしれない。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2014 年 8 月 18 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Fission 2.2.2 -- Rogue Amoeba が Fission 2.2.2 をリリースした。このオーディオエディタへの小さなメンテナンスリリースで、稀な(ウィンドウを閉じた際に起こった)クラッシュ一件と、Apple Lossless トランスコーディングの不具合を修正した。今回のアップデートではまた Smart Splits の制限を無効にする隠し設定を追加し、Saving パイプラインのログを(より詳細なエラー報告のオプションも付けて)改良し、読み込み中の FLAC ファイルの形式が少しだけ不正な場合にも以前より寛容になっている。さらに、 Mac App Store 版では Apple が Gatekeeper システムに施したいくつかの変更への対処を加えている。(Rogue Amoeba から新規購入 $32、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、14.5 MB、リリースノート、10.7+)

Fission 2.2.2 へのコメントリンク:

Alfred 2.4 -- Running with Crayons が Alfred 2.4 をリリースし、OS X Yosemite に対応させるとともに、テーマエディタに新しい Yosemite の内蔵テーマ Light と Dark、内蔵フォント Helvetica Neue と Helvetica Neue Light への対応を追加した。このキーボード駆動のランチャーはウィンドウ位置の同期をしなくなった(異なる Mac ごとに異なる位置条件が存在するため)けれども、ファイルシステムナビゲーション結果にファジーマッチングを表示するようになった。拡張機能を盛り込んだ Powerpack を購入する人たちには、Alfred がプレースホルダーの取り替えをする際にスニペットの検索においてより堅牢な nil チェックを提供するようになり、クリップボード履歴の有効化および監視のパフォーマンスを改善し、ファイル名にアクサングラーブが含まれる場合にファイルのコピーや移動ができなくなっていたバグを修正している。(無料、Powerpack は 15 ポンド、3.1 MB、リリースノート、10.6+)

Alfred 2.4 へのコメントリンク:

Delicious Library 3.2.2 -- Delicious Monster が Delicious Library 3.2.2 をリリースし、ユーザーが独自のカスタムフィールドを追加できるようにした。自動補完値にもアクセスでき、カスタムフィールドは Delicious Library の Export、Search、Saved Sorts の各コマンドにも対応する。このメディアカタログ用アプリはまた Delicious Library 2 コレクションを読み込む機能に改良を加え、表示画像がない場合に項目がリサイズできなかったバグを修正し、Purchase Date フィールドの編集や並べ替えを改善し、本棚を削除する際に起こったクラッシュを修正している。(Delicious Monster からも Mac App Store からも新規購入 $25、無料アップデート、77.5 MB、10.8.3+)

Delicious Library 3.2.2 へのコメントリンク:

CloudPull 2.5.4 -- Golden Hill Software が CloudPull 2.5.4 をリリースし、この Google データバックアップ用アプリケーションにいくつかの改良を加えた。(2012 年 3 月 6 日の記事“あなたの Google データを CloudPull でバックアップ”参照。)今回のアップデートでは Google Calendar API の変更に対応してカレンダーのバックアップ機能を復活させ、Google Drive ファイルをバックアップする際に HTTP タイムアウト値とアカウントあたり同時ダウンロード数を制御できる機能を追加し、Gmail からメールメッセージの更新リストを取り込む際に起こったクラッシュを修正し、初めてのバックアップサイクルの最中にクラッシュを起こしていたバグを修正した。(新規購入 $24.99、 TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、9.7 MB、 リリースノート、10.7.5+)

CloudPull 2.5.4 へのコメントリンク:

Corel Painter 2015 -- Corel が Painter 2015 をリリースした。このグラフィックスアプリケーションの最新バージョンだが、またもやバージョン番号付けのやり方を変更している。(Painter はバージョン 12 までは標準的なバージョン番号を使っていたが、2013 年になって Painter X3 という名称を使い出した。Corel によれば今回の新しい番号システムは毎年一度のアップデート周期にするという計画を反映したものだという。)Painter 2015 では「物理学に着想を得た」Particle Brush (粒子ブラシ) を追加し、ユニークな効果を手軽に作り出せるようになった。Particle Brush に三つあるタイプのブラシストローク (Gravity、Flow、Spring) が中心点から粒子を放出し、キャンバス上でブラシを動かすに従っていろいろなパターンや線が作れる。Particle Brush は pressure, bearing, tilt, velocity などさまざまの入力オプションによりコントロールでき、Local Chaos 設定によって効果をランダム化することもできる。

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今回からネイティブな 64-bit アプリケーションとなった Painter 2015 は、より高速のパフォーマンスを約束しつつ電力の消費が従来のバージョンに比べて半分となってラップトップ機のバッテリ寿命の節約につながる。その他の変更点にはブラシストロークにより有機的な見栄えを与える Jitter Smoothing 機能の新設、各種効果のリアルタイムプレビュー機能の拡張、フォトペイントツールの新設などがある。無料の 30 日間試用版もある。(新規購入 $429、バージョン 7 かそれ以降からのアップグレードは $229、194 MB、10.7+)

Corel Painter 2015 へのコメントリンク:

Safari 7.0.6 と 6.1.6 -- Apple が OS X 10.9 Mavericks ユーザー向けの Safari 7.0.6 と、10.8 Mountain Lion および 10.7 Lion のユーザー向けの Safari 6.1.6 をリリースした。いずれのアップデートも、メモリ処理を改善することにより WebKit における複数のメモリ破損の問題点を修正した。これらの問題点のため、細工を施されたウェブサイトを訪れるとアプリケーションが予期せず終了したり任意のコードが実行されたりする可能性があった。(セキュリティノートには Common Vulnerabilities and Exposures (CVE、共通脆弱性識別子) ID つまり CVE-ID が七件挙げられている。)これら二つのリリースは Software Update からのみ入手できる。(無料、10.9+/10.7-10.8)

Safari 7.0.6 と 6.1.6 へのコメントリンク:


ExtraBITS、2014 年 8 月 18 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週の ExtraBITS では、Apple が iPhone 組み立て工場で強力な毒物二つを禁止し、"x" 印をクリックしてウィンドウを閉じるようになった由来を調べ、Apple があまり多様とは言い難い多様性報告を発表し、New York Times が Apple University の内部を覗き見る。

Apple、iPhone 組み立て工場で毒物を二つ禁止 -- Apple が中国の iPhone 組み立て工たちの健康を危険に晒していた二つの化学物質の使用を禁止した。一つはスクリーンの洗浄に用いられていた n-hexane で、神経に損傷を与え麻痺を起こす可能性がある。もう一つは電子部品のコーティングに用いられていた benzene で、これは発がん性物質であることが知られている。しかしながらこれらの化学物質は供給チェーンをさらに遡れば依然として使われており、Apple はチェーン全体からこれらを除去せよという圧力を受けている。

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"x" で閉じる由来について -- Medium の記事で、ウィンドウを閉じることを意味する記号として "x" が使われるようになった由来を Lauren Archer が追跡した。現在では Mac と Windows の双方でこれがいたる所で使われているけれども、Windows 95 の前までは一般的な用法ではなかった。Windows 95 は NeXT からこのやり方を取り入れたが、Archer はさらにそれより前、1985 年の Atari の TOS 1.0 までこの記号の由来を遡ることができた。

コメントリンク: 14994

Apple、多様性報告を発表 -- 他のテクノロジー会社に足並みを揃えて、Apple は Apple 従業員の多様性に関する統計を公表した。驚くにはあたらないことだが、Apple は主として白人男性から成っている。CEO の Tim Cook は次のように述べた。「CEO として、私はこのページに記された数字に満足していない。このことは私たちにとって新情報ではなく、私たちはかなり以前から状況を改善するために熱心に取り組んできた。」しかしながら、Cook はその達成のための計画を具体的に述べることはせず、ただ最近になって三人の女性、Angela Ahrendts、Lisa Jackson、Denise Young-Smith が Apple の重役に就任したことを述べるにとどめた。

コメントリンク: 149

Apple University の内側を見ればそこに Picasso が -- New York Times の Brian X. Chen が、Apple 社内の研修プログラム Apple University の内側を覗くという(ささやかながらも)稀な機会を得た。このプログラムでは Apple のビジネス意思決定、デザインの選択、そして何が Apple を動かしているかを学ぶためのさまざまな講座が提供される。ちょっと興味深い豆知識だが、Apple はコンセプトをその根本的な要素にまで狭めて行くための実例として Picasso の "The Bull" (牡牛) シリーズのリトグラフを利用している。

コメントリンク: 14989


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