TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1258/09-Feb-2015

今週号の TidBITS では、元 Macworld 編集長の Jason Snell が Apple の新しい OS X 用 Photos のベータ版リリースを検討する。今年中に、この新しいアプリが iPhoto と Aperture 双方の後継として登場する。世の人々を驚かせたニュースとして、FCC Chairman の Tom Wheeler がブロードバンドのプロバイダを Title II に基づいて再分類すると発表した。(当然ながらプロバイダ各社は反発している。)これがどのような結果を生む可能性があるかについて Geoff Duncan が分析する。Apple ブランドのスタイラスペンが出るのではないかという噂が飛び交っているが、Josh Centers は Apple Pen が未来の生活の中にあるだろうと思う理由を説明する。Mariva H. Aviram は視覚障害のある人のためのコンピューティングのシリーズ記事の最終回として、ハードウェアと、エルゴノミクス、また低視力のユーザーたちの助けとなるべき革新に目を向ける。それから、Charles Edge の "Take Control of OS X Server" に Yosemite Server 対応に書き直した新バージョンが出たこと、すべてのユーザーが実行すべき手早いセキュリティ修正を概観する Joe Kissell のストリーム本 "Take Control of Security for Mac Users" の新しい章(チャプティクル)が出たことをお知らせする。今週注目すべきソフトウェアリリースは Evernote 6.0.6 と Mellel 3.3.8 だ。

記事:

----------------- 本号の TidBITS のスポンサーは: ------------------

---- 皆さんのスポンサーへのサポートが TidBITS への力となります ----


"Take Control of Security for Mac Users" の Chapter 3、入手可に

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Joe Kissell の現在進行形の "Take Control of Security for Mac Users" も、新しい章に入る時となった。私は、皆さんが先週の Chapter 1, "Introducing Mac Security" と Chapter 2, "Learn Security Basics" を楽しまれたことを願っている。今週、我々は Chapter 3, "Perform Quick Security Fixes" を用意した。これは、誰もがなすべき幾つかの簡単なことを取り上げている (リスクの度合いに応じて小さな違いはある) - これは言ってみれば、週末家を空ける時に玄関ドアを施錠するようなことである。具体的には、Joe は、大事なセキュリティアップデートに遅れないでついて行く、そして幾つかの基本的なセキュリティ設定することについて話している。

このチャプティクルは、そしてその先のものも、TidBITS 会員限定である。従って、もし読んだり、コメントしたりしたければ、TidBITS 会員プログラムに申し込んで頂く必要がある。もし既に TidBITS 会員であれば、申し込み時のメールアドレスを使って TidBITS サイトにログインして欲しい。"Take Control of Security for Mac Users" 電子本の完成版は、完了時点で PDF, EPUB, そして Mobipocket (Kindle) フォーマットにて一般向けに売り出される。

TidBITS 会員の他の特典としては、この本及びその他全ての Take Control 本に対する 30% の割引き、そして優れた Mac アプリに対する割引き、フルテキストの RSS フィード、そしてバナー広告無しバージョンの TidBITS Web サイトが含まれる。皆さんが TidBITS 会員になることで、皆さんが長年目にしてきた種類のコンテンツを我々が引き続きお届けする助けとなる。それに今申し込んで頂ければ、Mac のセキュリティについても同時に学べる。

コメントリンク15404 この記事について | Tweet リンク15404


Photos for OS X ベータの第一印象

  文: Jason Snell: [email protected], @jsnell
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

5 February 2015 に、Apple は新しい Photos for OS X アプリのベータバージョンを開発者と限定的な報道関係者向けにリリースした。昨年、Apple の他の既存写真アプリである iPhoto と Aperture を置き換えるものとして発表されていた Photos は、当初 2015 年の初期にと約束されていた ("Apple、WWDC にて iOS 8 と OS X Yosemite をお披露目" 2 June 2014 参照)。このリリースで、これがこの春には OS X 10.10.3 アップデートの一部としてリリースされることが見えてきた。

写真アプリの引っ越しをすることなど考えただけでも嫌気がさすが、iPhoto や Aperture の根っからのユーザーですら、これらの年老いたバージョンはますます遅くそして不安定になっていることを認めるであろう。Apple は、これらをバラバラにして再構築するのではなく、初めから作り直すことにした。このアプローチは、他の多くの Apple アプリのユーザーには、Final Cut Pro や iLife と iWork スイーツの両方を含んで、耳慣れた話であろう。

新天地への架け橋 -- 初めて Photos を起動すると、このアプリはあなたの iPhoto ライブラリを自動的にアップグレードする。(もしあなたが二つ以上のライブラリを持っていることを検知した場合は、どれをアップグレードするかを選択するよう言ってくる。) このインポートプロセスが終わると、あなたの写真とビデオの全部が現れるだけでなく、アルバム、フォルダ、ブック、カード、カレンダー、そしてスライドショーまで移行する。

インポートされた iPhoto と Aperture ライブラリは原形を保ちそして使用可能であるが、これは一方向インポートである - 昔のアプリのライブラリはこの Photos アプリとは同期しないので、もし一枚の写真を一つの場所に追加しても、それは他の場所には現れない。Photos インポートのプロセスは、ディスクスペースに関して言えば優しい - iPhoto や Aperture からインポートする写真を複製することはないので、貴重なストレージ空間を失うことはない。

iPhoto や Aperture には、この新しいアプリへの引っ越しをしない部分もある。Photos は星評価をお気に入りで置き換える (表示はハートアイコン)。iPhoto や Aperture からの星評価やフラッグは (Aperture からの色ラベルも) キーワードへとマップされそれぞれの写真に付与されるので、この情報を含んだ画像を検索することは可能である。

Photos の感じは iPhoto や Aperture と言うよりもむしろ Mac バージョンの iOS Photos アプリのようである、少なくとも、あなたの写真ライブラリをブラウズしている時は。ズームアウトすると (トラックパッド上でピンチすることでも出来る) 最初に場所で定義された一連の短いイベントが提示される。更にズームアウトすると、より長い時間軸と場所のリストを見ることになる。更にズームすると年毎に区分けされた巨大な写真の集まりが現れる。

Albums タブの下 (或いは、別法として View メニューから Show Sidebar を選択した場合は、サイドバーの中) には、幾つかのやり方で整理されたあなたのメディアが見られる。iOS カメラでサポートされている全てのメディア型 - パノラマ、ビデオ、そしてスローモービデオ - は、それぞれのスマートアルバムへと区分けされる。それから、自動的に生成される Favorites アルバムもあり、ここには一式の最も最近インポートされたメディア、そして見慣れた Faces タブがある。後者は程度の差はあるが iPhoto からそのまま移行されたと言える。消えたのは、地図上の場所毎に全ての写真を示す能力であるが、Photos の中のどのイベントをクリックしても、そのイベントに属する全ての写真の場所を含む地図が見られる。

クラウド中の Photos -- Photos の広告に出てくる機能は Apple の iCloud Photo Library サービスとの統合である。オプションではあるが、Photos にあなたの写真を自動的に Apple の iCloud サービスにアップロードするよう設定出来る。このサービスではバックアップがなされ、iOS 機器からのアクセスも可能になる。(iOS 機器アクセスは iOS 8.2 に含まれ、このアップデートは Photos がリリースされるのと同じ時期に提供されると見込まれる。)

Photos を iCloud と同期すると、写真のストレージに関しては二つのオプションが与えられる:Download Originals to This Mac を選べば、iCloud にある全てのファイルの最高品質のオリジナルバージョンがあなたの Mac 上にも保存される;Optimize Mac Storage を選ぶと、最大解像度の写真とビデオは iCloud に置かれ、そして "十分な空きがあれば" これらはあなたの Mac 上にも保存される。

Photos がどのように十分な空きがあるかどうかを見極めるのか、そして、ただ写真をキャッシュするだけなのか、或いはあなたのファイルに手を付ける前に、あなたにはどれだけの空きスペースがあるのかについて本当に判断をするのかは、現時点では分からない。およそ 700 GB にも及ぶ家族写真と、小さなフラッシュストレージ付きの Mac を何台か持っている人間の一人として、私は私の Mac 及び iOS 機器の全てにある私の写真ライブラリ全部に、個別の機器にはライブラリ全部を保持するに十分なスペースがなくとも、アクセス出来るという可能性にとても興奮している。

Photos はまた、iOS 上で使える写真共有機能全てをも統合している。もし Photos アプリの iCloud 設定タブにある iCloud Photo Sharing にチェックを入れれば、あなたの iPhone や iPad 上で見られる同じ共有アルバムが見られる。そして、Share コマンドを使えば、メディア項目を Flickr, Facebook, そして Twitter と共有出来る。

編集オプション -- Photos には素敵な一連の写真編集機能が備わっている。写真をいじるのに時間をかけたくないという人向けには、ボタン一つの強調、傾いた画像を正すこともする自動切り取り機能、そして多数の効果を一度に適用する一連の Instagram スタイルのフィルターがある。

画像をもっといじりたいという人は、Adjustments の方を好むであろう。こちらには、明るさ、色、レベル、白バランス、鮮明化と解像度、ノイズ低減、周囲ぼかし、そして白黒効果が含まれる。最後に、Retouch ツールがあり、こちらは周りをクリックしていって極めて初歩的な編集をし、結果が望みのものに近いことを願うというものである。

もし写真の編集を外部ツール、Photoshop の様な、を使って行いたいというのであれば、少なくともこのベータでは、画像をドラッグして外に出し、編集をし、その上でドラッグして戻すこと以上のことは出来ないように見える。Apple が将来外部編集機能、或いは何らかの画像編集機能拡張に対するサポートを許すことを願いたいものである。

速度の必要性 -- iPhoto がバージョンを重ねる度に、Apple は以前よりも速くなったと言ってきた。残念ながら、我々皆が新しい写真を撮り続け、我々の iPhoto ライブラリは大きくなり続け、そして iPhoto が追いつけることは決して無かったように見える。

絶対なんてことは言えないが、5,450 枚の画像ライブラリでの私のテストでは、Photos は紛れもなく速かった。スクロールが遅れることはなかった。ズームインそしてアウトは迅速であった。望むことは、これが何万枚もの写真を持つライブラリでも引き続きそうであることである。

これは未だベータバージョンであり、対象は開発者だけであることを意味する - そしてそれは結果にも出ている。私は、大きな iPhoto ライブラリの一つをインポートするのに問題に遭遇したし、フォルダから数千枚の写真をインポートしようとした時にはクラッシュした。何度か、このアプリを開いた時メインの Photos ビューは完全に空っぽだったのに、All Photos をクリックすると私の写真の全部が現れるということもあった。もし皆さんがこのベータへのアクセスを得られたとしても、あなたの主たるライブラリをこれに委ねてしまわないことを強くお勧めする。

幸いにも、Apple には問題の多くを解決するのに、自ら課した締切日までまだ 4 ヶ月以上の時間がある。しかし現時点では、Apple の機器間に、そしてクラウド上に散らばった写真ライブラリをつなぎ合わせる Photos の行く先は明るいように見える。

皆さんは、これが 1995 年以来初めての私の TidBITS 記事である事にお気づきかもしれない。そしてこの機会を借りて、私の最初の Take Control 本、Photos についての Crash Course に取りかかっている所であることもお伝えしたい。と言う訳で、私の執筆中に調べて欲しいとお思いの特別格好いい機能とか重要な懸念とかがあるのであれば、コメントを通して知らせて欲しい。

[Jason Snell は Macworld で 10 年以上に亘って主席編集者を務め、そして 20 年以上に亘って Apple や他のテック企業について書いてきた。現在、彼は Six Colors で書いている。彼はまた Incomparable ポッドキャストネットワーク、これは全てがギークのポップカルチャーだ、を運営している人間でもあり、また Upgrade and Clockwise テックポッドキャストのホストも務めている。]

コメントリンク15403 この記事について | Tweet リンク15403


"Take Control of OS X Server"、Yosemite Server 用にアップデート

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

""Take Control of OS X Server" 一般向けに発売" (24 November 2014) でお約束したように、我々は Charles Edge の "Take Control of OS X Server" の新しいバージョンをリリースした。これは Yosemite Server に対して完全にアップデートしたものである。正直言って、これは気が乗らないアップデートであった。と言うのも、Yosemite Server の変更は極めて小規模なものであったにも拘わらず、Yosemite の外観の変更で殆ど全てのスクリーンショットを撮り直さなければならなかったからである。Charles と私は、小さな違いを見逃さないようにと、この 244 頁の本の全ての頁を詳細に調べなければならなかった。

もっと全般的な話をすると、Charles は二つの新しい章を付け加えた:"What's New in Yosemite Server" と "Upgrade from Mavericks Server" である。彼は更に新しい Reachability 機能についても取り上げていて、あなたのサーバーが外部インターネットからどの様にアクセス可能なのか、そして Yosemite Server の新しいサービスレベルのアクセス許可についても説明している。Reachability は興味深い、何故ならば公共サーバーはインターネットからアクセス出来るようにしたいが、個人のサーバーはそうではないからである - これはトラブルシューティングとセキュリティの両面から有用である。

この $20 の本は、基本的な背景説明、段階を追った作業指示、そして OS X Server を家庭や小オフィスの環境で成功裏に設定しそして走らせるのに必要な現実的な進言を保持している。OS X Server を使えば、ファイルを共有、共有カレンダーを作成、自分自身の Web サーバーや wiki を走らせる、あなたのユーザーのために Mac や iOS ソフトウェアアップデートをキャッシュし連携させる、あなたの組織の iOS 機器を管理、そしてネットワーク経由の Time Machine バックアップ等々を提供出来る。これらのサービスは、インターネット上の誰にでもアクセス出来るようにも、或いはあなたのローカルネットワーク上のユーザーと機器に限定することも出来る。

我々は今から Mavericks Server を始めるのはお薦めしないが、もしもう既に Mavericks Server を走らせているのであれば、あなたのためのオプションは二つある。11 月に出版されたこの本の 1.0 バージョンは Mavericks Server に焦点を当てている。従って、もし既存の Mavericks Server インスタレーションを使い続けたいのであれば - これは全く賢明な行動計画である! - 現行の 1.1 バージョンを買って、それからこの本の Ebook Extras 頁にある Blog タブから 1.0 バージョンをダウンロード出来る。或いは、もし Yosemite Server にアップグレードしたいなら、この本には今やアップグレードに関する何が新しくなったかと手順が含まれている。

コメントリンク15398 この記事について | Tweet リンク15398


FCC、ネット中立性に本腰

  文: Geoff Duncan: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

インターネットを少しだけ規制しようと試みた十年間を経て、U.S. Federal Communications Commission (FCC、連邦通信委員会) はインターネットサービスプロバイダ (ISP) 各社を common carrier (通信事業者) と再分類する方向に進みつつある。はたしてこの動きは、インターネットに依存して生計を立てている ISP 各社にとって、そしてもっと重要な点としては米国のインターネットユーザーたちにとって、何を意味するのだろうか?

今回 FCC は「ネット中立性」を保持する計画を発表したのだが、その内容が凄い。この機関の立てた計画では、ISP 各社が common carrier と再分類され、電話会社と同じ分類に属するようになって、あらゆる合法的なインターネットトラフィックが平等に、最善努力による優先度によって処理されることが保証される。ただし、それと同時に FCC はちゃんと例外条項を取り決め、同機関が価格を定めたり、料金を課したり、ISP 各社が自らのネットワークの重要な部分を競合会社と共有するよう命じたりもできるようにしている。

今回の新しいルールは、急速に成長しつつあり米国経済のますます重要な部分を担いつつあるこの新しい分野に負担をかけるのを危惧しながら FCC が過去十年間にわたってインターネットにほんの軽い規制だけを加えようと努力してきた後に登場した。しかしながら、FCC の過去の努力にはすべて法廷で異議申し立てがなされ、結局は敗れた。電気通信プロバイダの Comcast と Verizon は FCC の「オープンインターネット」ルールが同機関の法的権限を超えるものだと主張した。裁判の結果、法的な枠組みの中でネット中立性を保証することはできないとされ、結局 ISP 各社は自分が好まないトラフィックを自由にブロックしたり絞ったりし、例えば Netflix との間の有料優先待遇など議論の的となるビジネス関係を追い求めるようになった。

けれども、それはもはや認められない。今回 FCC は奥の手を出してきた。ISP 各社を、軽い規制の対象の「情報サービス」からフル規制の対象の「電気通信サービス」へと再分類することを提案したのだ。分類の変更により、FCC の法的権限に関する曖昧さが取り除かれ、ブロードバンド業界が幅広い規制権力の下に置かれるようになる。その権力の一部は 80 年前に遡るものとも言える。その上、FCC の新しいルールは(今や世界中でインターネットの全トラフィックの半分以上を処理する に至っている)モバイルインターネットにも適用されるし、またインターネットサービスは販売しないがコンテンツや各種サービスを提供する Google、Facebook、Amazon などの「エッジプロバイダ」と ISP 各社のネットワークとの接続点にも適用される。

新しいルール -- 今回の新しいルールを私たちはまだ読むことができない。全部で 332 ページにわたるこのルールは、どうやら 2015 年 2 月 26 日に同委員会が投票を済ませた 後に なってからでなければ一般に公開されないらしい。(政府の透明性はいったいどこへ行ったのか?)しかしながら、内容の要点は以下のようなものだ:

これが何を意味するか -- 「オープンインターネット」は「無料のインターネット」を意味するものではない。今回の新しいルールがあなたの使うインターネットサービスの料金を安くする訳でもなければ、バンド幅の上限が撤廃される訳でもなく、また近所の人たちが一斉にストリーミングビデオの視聴を始めたとたんに起こるあの厄介なスローダウンがなくなる訳でもない。

そうではなくて、ISP 各社が好きな提携会社を選んで談合で契約を結び、それを通じてコンテンツやサービスを顧客に届けることができなくなるという意味だ。Comcast は(例えば)Microsoft に追加料金を支払わせて検索サービスとして Bing を Google より優先して使うことが許されないし、Netflix の速度をわざと落として自社独自のビデオ・オン・デマンドサービスが比較的良く見えるようにすることも許されない。同様に、何かホットな新しい新興企業が登場しても(次に来る WhatsApp、SnapChat、Etsy、Tumblr、Pinterest といったものを想像してみよう)彼らはもはや ISP 各社が自分たちを好かないから、あるいは自分たちがその ISP のサービスと競合するから、という理由で自分たちのトラフィックをスローダウンさせるのではないかと心配する必要がない。アプリやサービスが合法的であって損害を与えるものでない限り、ISP はそれを他の者たちと同等に扱わねばならない。

抜け目ない政治 -- ネット中立性の論争に昨年一年間注目し続けてきた方ならお気付きのように、FCC の新しいルールは FCC 委員長 Tom Wheeler が従来提起していたもの(2014 年 5 月 16 日の記事“FCC、インターネット「優先レーン」を一歩進める”参照)よりも Obama 大統領が求めたもの(2014 年 11 月 14 日)にずっと近い。従来 Wheeler はケーブルテレビ業界のロビイストとして働いてきたし、ISP を common carrier と再分類することなくブロードバンドを規制する第三の試みをするだろうと広く予想されていた。ただ彼も選択肢としての再分類に常に言及していた(2014 年 2 月 20 日の記事“FCC、ネット中立性ルールに三度目の正直を願う”参照)のではあるが。

この心変わりの理由は何か? 一つの要因は、Wheeler 委員長の「優先レーン」計画が各界からはっきりと否定的な反応を受けたことだった。しかしながら、Obama 大統領の動きも役割を果たしたように見える。確かに、FCC は独立の機関であって大統領が FCC に方針を命じることはできないが、Title II に基づいて ISP を再分類するよう Obama が公式に求めたことで、Wheeler 委員長はどうやら進退窮まったようだ。

FCC には投票権を持つ 5 人のメンバーがいる。Wheeler 委員長と、4 人の委員だ。委員は無党派の立場だが、現在 2 人 (Clyburn と Rosenworcel) が民主党員で 2 人 (Pai と O'Reilly) が共和党員であることはよく知られている。問題はここだ。民主党員の委員たちだけが、Wheeler の「優先レーン」のやり方に(しぶしぶながら) 賛成 した。ISP の common carrier への再分類を公然と宣言することで、Obama はこの民主党員の委員たちにネット中立性を守る立場に立つ根拠を与えたのだった。もしも Wheeler 委員長が「優先レーン」を押し通したならば、きっと 4 対 1 でつぶされてしまっただろう。けれども、Wheeler が Title II による再分類を選んだならば、事実上彼には 2 票の賛成票が保証されたようなものだった。

下院の監視・政府改革委員会の委員長は、Obama 大統領が FCC の意思決定プロセスに対して過度の影響力を行使したか否かの判断のため調査をすると発表した。(PDF リンク)

反応は -- 提起されたネット中立性ルールに対する反応は予想通りのものであった。Free PressElectronic Frontier Foundation のような団体は賛成意見を表明し、Information Technology and Innovation Foundation などの業界団体は 反対を表明した。ほとんど誰もが「落とし穴は細部にある」と述べたが、FCC がまだ提案するルールを公表していない以上、現時点ですべての細部を知っているのは FCC 自身のみだ。

当然ながら ISP も common carrier に再分類されるのには反対で、そうなれば投資が落ち込み、新たなビジネスモデルを作り出す試みを抑え込んでしまうと主張している。Verizon の CFO Fran Shammo は最近、Title II による再分類は「極めてリスクの多い道」であると述べ (PDF リンク)「自社のネットワークへの投資を見る視点を完全に変えざるを得ない」とも述べた。

何十億ドルもかけたビジネスの観点からは、今回 FCC がした自制の約束、価格の上限を設定しない、新たな料金を課さない、接続性のラストマイルを開放するよう ISP に強制しないといった約束も、空々しく聞こえるだけだ。FCC には自制を実行するために何ら公式の手続きをする必要がないのと全く同様に、FCC がその約束を再び取り下げるために、何ら公式の手続きの必要はない。投資家たちの観点からも、これらのビジネスに大きく賭けても規制の結果として僅かの利益しか戻ってこないのではないかと考えたとしても無理からぬことだろう。それに、将来の FCC 委員長なり大統領政権なりが何をもたらすことになるのかなど、誰にも分からない。

これから何が起こる? -- FCC は暫定的に、新しいネット中立性ルールへの投票を 2015 年 2 月 26 日に予定している。もしも新しいルールが通過すれば、Federal Register に出版されるので、不服のある人は誰でも 30 日以内に Petition for Reconsideration (再考の嘆願) を申し立てることができる。けれども私たちは今や核心に到達した。これは、FCC のルール作成プロセスの終わりであって、今後はもはやパブリックコメント期間が何ヵ月も設けられることはない。FCC が嘆願に基づいて何らかの調整を施すことはあり得るけれども、FCC はそれに反応することを義務付けられてすらいない。

仮に FCC が新しいルールを通したとすると、いずれは通信業界が裁判に訴えるだろう。問題はそれがいつ起こり、どのような根拠の下に訴えがなされるかだ。議論の内容がどんなものになり得るかについての早期プレビューが見たいなら、AT&T が 同社の公共方針ブログに既に何か載せているかもしれない。

議会もまた関係する。大統領とは違い、議会は FCC に何かをせよと命じることが できる。共和党は、Communications Act (電気通信法) に "Title X" を追加することにより FCC が ISP を Title II の下で再分類せずにオープンインターネットを規制できる権限を与える 法案の草稿を配布している。しかしながら、これは当分実現の見込みはない。共和党は議会で過半数を占めているけれども、現在大統領の拒否権を覆せるだけの数を持っていないからだ。でも、次の政権になってどうなるかは、誰にも分からない。

その一方で、ISP を common carrier として扱うというのが、この国の法律になりそうだ。少なくとも当分の間は。

コメントリンク15399 この記事について | Tweet リンク15399


Apple Pen の可能性は?

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

iPad に関連した話の中で、Steve Jobs は「スタイラスペンを期待しているなら、そんなものはない」と言ったことがある。この発言を、Apple が iPad 用のスタイラスペンを開発中という噂を打ち消すものとして引用した人もいた。

けれどもそういう評論家の多くは、Jobs が「マルチタスキングについてだが、タスクマネージャを期待しているなら、そんなものはない」 と言ったこともあるという事実を見逃している。当時、彼はタスクマネージャを含む iOS 4 を既に発表していたのだから。それに、他にもいくつかのものについて Jobs が馬鹿にしたような発言を(おそらくわざと誤らせるために)述べ、その後まさにそのテクノロジーを Apple がリリースしたことがあった。iPod 上のビデオ、電子ブック、Windows 用の iTunes などだ。でも、TidBITS 読者の皆さんなら、私がとうに決着済みのことを蒸し返しているに過ぎないとお気付きだろう。

私たち TidBITS は噂には大して注意を向けないのだが、スタイラスペンについては三つの理由があって特に注目すべきだと思う。Apple が既に必要なテクノロジーを持ち合わせていること、スタイラスペンを提供することにビジネス上の利点があること、そして、Apple 顧客にとって大きな利益があることだ。

ここでは、それら三つの理由の一つ一つについて、順に検討してみよう。話の便宜のために、この記事ではそのスタイラスペンが "Apple Pen" と呼ばれると仮定しておこう。Apple の現行の命名法にぴったり合っていると思うから。

Ink のあるところ、Pen あり -- 他の多くの Apple の噂と違って、スタイラスペンを Apple が調べていることを示す証拠はたくさんある。

Apple はスタイラスペンに関係する特許を 2014 年だけで 11 件も申請した。 そのうち 10 件は 12 月初旬以前にもう 1 件は年末ぎりぎりに出した。

Apple が特許を申請したことは、必ずしもそのテクノロジーが将来日の目を見る証拠とはならない。Business Insider の書類に、Apple の突飛な特許,がいくつか載っている。例えば、仮想の Mac キーボード、iPhone の 3D インターフェイス、スマート自転車、タッチに反応するベゼル (パネルの枠)、さらには「振って印刷」というものさえある。

また、メジャーなテクノロジー会社ならばどこでも、可能な限り多くのテクノロジーのために特許を申請するか買い取るかするものであることも忘れてはならない。これは主として法律的な理由によるもので、競合会社が新製品を開発するのを困難にするためであり、特許訴訟に対する防衛のためでもある。特許荒らし、つまり特許を所有し防衛するが他には(トラブル以外)何も生み出さない会社が、特許の軍拡競争に拍車をかけたからだ。

けれども、Apple があまりにも膨大な量のスタイラスペン特許を持っていることは興味深い。中には 2014 年よりずっと前のものもある。同社はずっと以前からこのテクノロジーに興味を持っていた。ただ、Apple の外にいる者は誰も、それが再び研究室の外に出る日が来るか否かを知ることはできない。

再びだって? その通り。忘れてしまった方のために説明しておくと、Apple は他のどのテクノロジー会社よりも早くからスタイラスペンにかかわっていた。それは 1993 年にデビューした Newton と呼ばれる小さなデバイスだ。(大きな影響を残したこのデバイスの失敗の歴史については Michael Cohen の記事“Newton: 史上最大の素晴らしき大失敗”(2013 年 8 月 9 日) を参照。)

初期の Newton の手書き認識機能は数多くの 物笑いの種となった("Eat up Martha" や "egg freckles" を覚えているだろうか?)が、それはすぐに改良された。ただ、改良の速度は名声を回復するに十分なほど速くはなかった。

けれども、改良されたそのテクノロジーは Mac OS X 10.2 Jaguar で Inkwell という形で生まれ変わり、その後 Ink という名前に変わった。それは今日の 10.10 Yosemite の中にも生き続けている。ただし、対応するデバイスが接続されない限りその環境設定パネルは隠されている。 Ink が死んだという噂 は、大いなる誇張だ。

結局のところ、もしも Apple が何らかの種類のデジタルスタイラスペンをリリースする気になりさえすれば、そのためのツールやリソースは既に揃っているということだ。

最後にもう一言。 最新の噂がある。出所は分かっていて、 KGI Securities の Ming-Chi Kuo だ。Kuo は Apple に関する予想に 優れた評判を得ている。彼がアジアの供給業者の内部に情報源を持っているからだ。 彼の前回の予想は、より大型の iPhone、金色の iPhone 5s、それに iPhone 5c が iPhone 5 を置き換えるというものだった。

Kuo が 2013 年にした予想を TUAW が分析したところによれば、正確な洞察はいくらかあるものの、彼の予想の正確さはコイン投げとそう変わらないようだ。彼の最近の予想外れは、Apple Watch が 2015 年 3 月に登場するというものだった。(彼はたった一ヵ月だけ早く見積もり過ぎた。2015 年 1 月 27 日の記事“巨大な iPhone、Apple に巨大な Q1 2015 を;Apple Watch 発売日明らかに”参照。)

また、Kuo の最良の予想の中には彼のアジアの供給業者の情報源が触れられているけれども、彼がスタイラスペンを予想した際にその種のものが触れられていなかったことも言っておくべきだろう。

多少誇張された Kuo の実績はさておくとしても、Apple Pen の最良の証拠はそこにしっかりしたビジネス上の利点があることだと私は思う。

ビジネス上の利点 -- Apple Watch が 2015 年 4 月にデビューした後には、Apple は 1.5 インチから 27 インチまでさまざまのスクリーンサイズを持つデバイスを提供することになる。これに Apple TV を加えれば、購入可能などんなサイズでもそのサイズのスクリーンの Apple デバイスがあることになる。

では、Apple はその先どこへ向かうのか? Apple Car の iDoor を開けて外へ出れば、見えている唯一の拡張方向といえば水平向き、そう、アクセサリだ。ここで鍵となるのは Apple Watch で、これはまず iPhone のアクセサリとして働くところから出発する。もう一つの鍵は Apple がヘッドフォンのデザイン会社 Beats Electronics を買収したことだ。(2014 年 5 月 28 日の記事“Apple、Beats を $3 Billion で買収”参照。)

Apple ファンたちは、ものを書く道具にある種の愛着を持っている。人気ある Apple ポッドキャスター Myke Hurley には、その話題に絞った番組さえある。 The Pen Addict だ。Apple コミュニティーにいる著名人で Field Notes ブランドのポケット手帳が大好きな人も多い。Daring Fireball の John Gruber と The Loop の Jim Dalrymple もそうだ。

うまくデザインされたペンは、既存のどんな Apple 製品にもひけを取らないほど工業技術の結晶と言えるし、ペンは腕時計と同じくらいにファッションの粋を表現するものともなる。もちろん、スタイラスペンを常時持ち歩く人なら、それが普通のペンとして紙にも書ける二役を果たしてくれればさらにありがたいと思うだろう。

私が何を言いたいかもうお分かりだろうか? Jony Ive なら、きっともう一度ペンをデザインできる機会があれば飛び付くだろうと私は思う。彼は既に ペンを二つデザインしている。また Apple リテール店の責任者 Angela Ahrendts もきっと喜んで Apple Pen を売りたいに違いないと私は思う。どの報道を見ても、彼女は Apple Store を腕時計のような小さくて高級な製品を販売するチェーン店にすることを目指しているように見える。高級な物書き道具があれば、まさにぴったりではないか。

高額な製品を販売できる機会があることも、想像してみよう! 腕時計と同様、ペンもまたさまざまの材質のものを開発できる。Apple はアルミニウム製とステンレス製に加えて、金を使った Apple Pen を提供できるだろう。その点は Apple Watch と全く同じだ。Apple はわざわざ Apple Watch のために新しい金合金を開発したのだから、それに新たな使い道を求めるのは当然ではないか。

その上、スタイラスペンは既に実績のある製品カテゴリーだ。Apple でさえ、既にいくつかのスタイラスペンを販売したことがある。 FiftyThree Pencil や、 Livescribe 3 Smartpen Pro Edition などだ。Pencil の評判があまりにも良かったので、FiftyThree は この製品に社運を賭けている

これらの製品にはすべて、共通の大きな難点がある。これらはそれぞれ、たった一つのアプリでしか働かないのだ。これらほど高機能でない、より多目的のスタイラスペンは先端がぐにゃっとしていて、静電容量式のタッチスクリーンのために作られていることが多い。そういうぐにゃっとした先端のものはまるで消しゴムで字を書くような感じで、使っていてイライラする。 Studio Neat Cosmonaut のようにしっかりした先端のスタイラスペンもあって、こちらは使いやすいという話を聞くが、それでも他の問題点を抱えているらしい。

ここに、まさに Apple 製品のための完璧な処方が用意されているではないか。実績ある製品カテゴリーなのに、現状は欠点のある製品で溢れている。Apple は革新者 (innovator) として知られているが、むしろ刷新者 (renovator) と形容する方がふさわしい。Apple はパーソナルコンピュータ、MP3 プレイヤー、スマートフォン、タブレット、スマートウォッチのいずれも発明はしなかった。ただ、より良くしただけだ。昔の BASF コマーシャルになぞらえて言えば「ここ Apple で、私たちは皆さんが買う機器を発明しません、私たちは皆さんが買う機器を良くするのです」という具合だ。

Apple には Apple Pen の導入に向けたさらにもっと強い誘因がある。iPad の売り上げが低下していることだ。Apple Pen の噂は、多くの場合今より大型の iPad Pro の噂と並べて言われている。iPad Pro がどんなものになるだろうかという詳しい分析はまた別の記事に譲るとして、とにかくその組み合わせは十分うなずける。最新の iPad 広告を見ながら想像してみよう。

何が見えただろうか? そこには、ミュージシャン、木工技師、整備士、デザイナー、写真家など、多くのプロフェッショナルたちがいる。Apple は数年前から iPad でプロフェッショナル市場に狙いを定めてきた。それに、Tim Cook は Apple 四半期業績報告の中で、しばしば Fortune 500 企業に iPad を浸透させたいと語っている。

私は iPad Pro がよく売れることを確信している。私が去年エイプリルフール記事に書いた Mavericks/iPad 混ぜ合わせの冗談(2014 年 4 月 1 日の記事“iPad Air に OS X 10.9 Mavericks をインストールし走らせる”参照)に引っ掛かったという便りは今も届く。騙された評論家も二人いた。それはつまり、人々がもっと機能的な iPad をどんなに切望しているかということだろう。

大スクリーンの「キャンバス」は、スタイラスペンがあることでさらに意味を増し、アーティストや、デザイナー、ライターたちにより大きな仕事の可能性を与える。私は Apple が Microsoft Surface タブレットに恐れおののいているとは思わないが、Microsoft Surface タブレットは Apple が欲しがっている市場、つまりアーティストたちに確かな人気を得た。Penny Arcade の Mike "Gabe" Krahulik がアーティスト向けに Surface Pro の圧力感知式スタイラスペンを激賞した際、それは間違いなく Apple でも首脳たちの心をチクリと刺したことだろう。

Apple Pen は特定分野のみのためのデバイスになる可能性は高いので、価格は高額になると思う。少なくとも $100 以上しても私は驚かない。贅沢な金製のモデルならばもっと高くなるだろう。(まずは iPad 好きの会社重役たちから売れ始めるだろう。)

iPad 上で正確な入力をしたいと思うプロフェッショナルたちにも、価格が高くてもそれだけの価値はあるだろう。なぜなら、Apple は他のどのメーカーにもない価値を提供することができるのだから。

私たちは Apple Pen に何を期待できるか -- 紙にインクで書く道具としてもかつて誰も使ったことがないほど最高のものであって欲しいという点は別として、私たちが Apple に Apple Pen で提供して欲しいと思う主要な利点は、iOS 全体を通じ、どんなアプリでも機能することだ。たった一つのアプリのみに縛られることなく、FiftyThree の Pencil と同じ正確さと圧力感知機能を提供して欲しいと思う。

もちろん、Apple Pen は Bluetooth 4.0 で接続することになるだろうが、充電はどうやってするのだろうか? Lightning コネクタを使うのか、それとも Apple Watch の誘電式充電の何らかの変種で、同じアダプタを共有しつつ使うようになるかもしれない。ひょっとして何か素敵なデスク上充電器で、昔からのペンホルダーを思わせるものを Apple ならば作ってくれるかもしれない。

Apple Pen には取り外し可能な、交換可能な先端部を付けて欲しい。そうすれば、ペンを巡って新たなアクセサリ市場が作られるだろう。Apple とその提携社たちは精密作業用、太い筆書き、さらにはブラシなどのための交換用先端を提供するようになる。書道用の先端は必須だ。Steve Jobs は、僧侶のごとく、僧侶と共に書道を学んだのだから。

書道といえば、当然 Apple Pen は iOS の手書き認識機能を提供するのだろうと思う。けれども真にユニークなものであるためには、ただの手書き認識ではいけない。他のものと違う革新を伴っていなければ、Apple 製品ではない。

ここで Apple が革新できる一番明白な道は、Apple Watch の Taptic Engine の変種を使って触覚によるフィードバックを提供することだろう。単なる仮定上の話だが、Taptic Engine は紙の上にペンで書く感触やキャンバスの上に筆で絵の具を塗る感覚をエミュレートできるのではないだろうか。もしも Apple がそれをうまく作れたなら、Apple Pen はアーティストたちにとって抑え難い魅力を持つものとなるに違いない。

私が考えたもう一つの可能性は、Apple が Bluetooth マイクロフォンを Apple Pen に内蔵させて、Siri 用のリモコンとして使えるようにすることだ。ただ、それをすると Apple Watch の魅力を減らしてしまうリスクはあると思う。いくら Apple が自社製品の共食いを恐れないとしても、こんなに最新鋭の製品同士を共食いさせたいとは思わないだろう。

Apple Pen はどうやって持ち運ぶのか? 伝統的な解決法は、デバイスの中にスタイラスペンを収納するスロットを作ることだ。けれども私は Jony Ive がこの方法を選ぶとは思わない。第一、信じられないほど薄い iPad を太らせてしまう。それよりも、Apple の Smart Cover に倣って磁力による何らかの取り付け手段を選ぶ可能性の方があると思う。iPad のエッジ部分に完璧にフィットするようペンを機械加工するところが目に見えるような気がする。けれども、人々の注目を集めることが Apple の望みだとすれば、普通のペンと同じように服のポケットの中に入れる必要があるのかもしれない。

Apple Pen や iPad Pro を普通の、プロフェッショナルでないユーザーたちをも惹き付けるものとするために、Apple は何ができるだろうか? アマチュアの Apple アナリストで時々ポッドキャストも作っている Zac Cichy が、そのためのアイデアを二つ出してくれた。

一つ目は、アジアの言語の入力を楽にできるようにすることだ。そうすれば、Apple が切望する中国市場で間違いなく大ヒットとなるだろう。中国語の書き言葉のほとんどが(日本語の書き言葉の多くの部分も)何千もある表語文字から成り、一つの文字が一つの単語または概念を表わしているので、もしもそれらの文字の入力が Apple Pen によって手軽にできるようになれば、何十億人もの人たちにとって大きなアクセシビリティの進歩となるだろう。

二つ目は、目の前に十分明らかに見えている使い方、すなわちスケッチによるコミュニケーションだ。スケッチは Apple が Apple Watch の機能として大きく宣伝しているものの一つで、友だちや恋人との間でシンプルな、お絵描きのアニメーションでコミュニケーションできるようにする。私が思うに、この機能はいずれ間違いなく Apple の他のプラットフォームにも広がるに違いない。その際、ペンを使ってするよりも良い方法が、他にあるだろうか?

流行に乗り、芸術的で、実用的で、利益にもなる。これぞまさに Apple ではないか。だからこそ、私はいつの日か Apple Pen が登場すると思うのだ。

コメントリンク15396 この記事について | Tweet リンク15396


視覚障害のある人のためのコンピューティング、その 5

  文: Mariva H. Aviram: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

アクセシビリティのコミュニティーにいる人たちは、未来について考えつつ多くの時間を過ごしている。生命工学、電子工学、ロボット工学、コンピュータサイエンスにおいて、どんな発展の兆しが見えようとしているのかと。それがなぜかと言えば、適応テクノロジーには大きな改善がなされたにもかかわらず、健全な身体を持つ人たちが当たり前と思っている世界に機能障害や身体障害を持つすべての人が同じようなアクセスを得られるようになるまでにはまだまだ長い道のりが残っているからだ。

このシリーズのこれまでの四つの記事で、私はコンピュータユーザーに影響を与えるさまざまの視覚障害、目のケアの専門家からのアドバイス、アクセシビリティのための内蔵機能やサードパーティのアクセシビリティ用アプリなどを扱ってきた。シリーズ最終回の今回の記事では、いろいろなハードウェアの選択肢、人間工学、適応テクノロジーにおける新たな革新などを探訪してみたい。

電子デバイス -- ソフトウェア以外にも、低視力のユーザーが便利に使える電子デバイスが数多くある。例えばテキストカメラやスキャナ、ビデオ拡大器、テキスト読み上げマシン、特殊モニタ、特殊キーボード、閲覧机などだ。本や雑誌、その他テキスト題材が好きな人は、電子ブックリーダーがあれば人生が変わるかもしれない。

特に E Ink について、眼科医 Benjamin B. Bert 博士はこう述べた:

  私に言わせるなら、最近のテクノロジーの発展の中で最も素晴らしいものの一つが Electronic Ink (E Ink) リーダーの発展だ。バックライトを使わないので眩しさの問題がほとんどなく、それでいて文字のサイズが変更でき、テキスト読み上げ機能の付いているものさえある。E Ink リーダーのお陰で、もはや読書なんか二度とできないと思っていた多くの人たちに読書の機会が開かれたのだ。

(優秀なテキスト読み上げアプリ、例えば KNFB Reader のようなものがあれば、リーダーデバイスを別途持ち運ぶよりも便利なことがあるかもしれない。これらのアプリはただのリーダーよりも多くのことができる。AssistiveWare の Wrise は設定可能なワードプロセッサで、低視力や失読症のユーザーが複数単語予想機能を使うこともでき、読み上げの音声、読み上げ速度、音量、テキストフォーマッティングなども変更できる。Wrise は 2015 年 2 月 15 日まで $29.99 でセール販売中 だ。)

モニタ -- ちょっと思い付いたのだが、コンピュータのモニタ全体が E Ink のような電子ペーパーになれば、さらにはバックライト付きのフラットパネルモニタかタブレットも使ってテキストに付随する画像やビデオを自動的に表示するようにすれば、低視力ユーザーにはありがたいのではないだろうか。

検眼医 Stewart F. Gooderman 博士は、それはいいところに気付いた、少なくとも従来型のコンピュータモニタの厄介な本質を突いている、と言ってくれた。彼は私に次のように説明した:

バックライト付きディスプレイの問題点は、境界がないことと偏光にある。ピクセルにははっきりした境界がなく、中心から縁へと光が次第に弱まる。光を反射するのではなく、光を発しているからだ。なので、視力に問題のある人たちには、バックライト付きモニタはぼやけの上にぼやけを重ねるものとなる。

もちろん、私の思い付きも完璧な解決にはならない。とりわけ、E Ink はリフレッシュ速度が遅い.。けれども、コンピュータのモニタを丸ごとバックライトのない E Ink ディスプレイにする目的は大体においてテキスト情報を読み取るためであり、たいていのユーザーはテキストを読むためにほとんどの時間を費やしているのであろう。ユーザーが画像やビデオを見たいと思えば、従来型のディスプレイを別途設けておけばそれでよい。

実際、Dasung Tech は CES 2015 の会場で PaperLike という 13.3 インチの E Ink モニタ を実演し、市場に売り出すつもりだと言っていた。報道によれば価格は $645 から $970 までさまざまに予想されているようだが、多くの低視力ユーザーにとって価格の問題は痛いところかもしれない。

けれども Gooderman 博士はテキストを読むためと画像を見るために別々のディスプレイを使い分けるという私のアイデアを気に入らなかった。「あなたの言っていることの問題点は二つのものを見る必要が生じることで、それは理解から気を散らす結果となるだろう。第一、不便だと思う。本を読みながらひっきりなしに巻末の注釈へ行ったり来たりしなければならないようなものだ。」

私の兄が経験したように、一つの場所から別の場所へと目の焦点を合わせ直すことは、視力障害のあるユーザーにとってとりわけ破壊的な経験となる。上記の Dasung PaperLike ではこの問題が解決されているが、その代わりに画像のための高解像度のディスプレイをあきらめて、現代のコンピュータにしてはあまりにも小さなスクリーンで我慢しなければならないことになる。

バックライト付きモニタを私たちが使う状況に関して言えば、適切に使うという点が重要だ。Gooderman 博士の助言はこうだ。「一般的に言って、LCD スクリーンを横の方から見れば、上方にも下方にも、アーチファクトが多くなる。スクリーンは真っ直ぐに、視線がスクリーン表面に対して垂直になるように見るのが良い。それから、アーチファクトが多くなってきたら、それはもっと良いモニタに買い替えるべきサインなのかもしれない。」

モニタの購入を検討する際には、自分自身が見るときの必要を考慮することが重要だ。市場には たくさんの選択肢が出回っていて、それぞれに独自の長所と短所を持っている。LCD パネルのモニタは、三つの一般的テクノロジーのいずれかに依存する:

たとえあなたが自分の必要に最も適したモニタを選んだとしても、それでもやはり Computer Vision Syndrome(CVS、コンピュータ視覚症候群) の症状、例えば目の疲れ、視野のぼやけ、目の充血、頭痛などを経験するかもしれない。そんな場合、いわゆる コンピュータ眼鏡が役に立つことがあり、時には大幅に症状が改善されることもある。TidBITS にコメントを寄せた Lance Diernback は、コンピュータ眼鏡を使うことでそれまでコンピュータを使う度に感じていたひどい目の疲れや片頭痛が消えたという。既に眼鏡をかけていても、あなたのレンズ処方箋に合わせたコンピュータ眼鏡をカスタム作成することができる。

人間工学 -- モニタを見ることについて、Bert 博士は次のようにアドバイスする:「通常の状況下では、真っ直ぐ正面を見ている時に視線がちょうどモニタの上端に来るようにすべきだ。そうすれば、あなたが作業中のものが視線を少し下に向けるだけで見えるようになり、大多数の人たちにとってそれこそが最も快適な使い方となる。」適切な人間工学(エルゴノミクス)は視覚障害のある人に限らず誰にとっても重要だが、既に視覚に困難を抱えている人にとって悪いエルゴノミクスはトラブルを増やすだけだろう。ここでは、次のような情報源が参考になる:

照明 -- Gooderman 博士は、作業環境の全体を快適にしコンピュータ作業を長時間続けられるようにするためには周辺光が何より大切だと強調した:

照明はソフトで間接的なものにし、一ヵ所だけ明るかったり眩しかったりすることがないようにすべきだ。顔やスクリーンに光が差し込んでもいけないし、明る過ぎるのも良くない。照明の全体的な明るさの程度は、普通のオフィス空間より暗めにすべきだ。書類作業のためにはデスクの上にソフトな光のスタンドを追加しよう。照明の状態が悪いならば、知識豊富な照明の専門家に頼んで修正してもらおう。その際、現在取り付けられている照明器具を適切な光源と調整具を備えた新しいものに取り替える必要があるかもしれない。照明の調整は、例えばルーバーのような補助具を使って光の散らばり方を変えることでもある。いざというときには、スクリーンの上にフードを取り付けよう。

もっと詳しい情報が知りたければ、Canadian Centre for Occupational Health & Safety (カナダ労働安全衛生センター) が一般的な照明エルゴノミクスのイラスト付きガイドと、照明エルゴノミクスに関する調査結果と解決法ガイドを出している。

文字サイズ -- 特殊な視覚障害(例えば私の兄のように視野の中ではっきり見える部分がごく小さな範囲に限られ、小さくてくっきりした文字を読みたいような場合)を除いて、たいていのユーザーはスクリーン上の文字サイズを大きくした方が生産性が増すと考えるだろう。(あるいは、可能なら、印刷した資料にも大きな文字を使いたいと思うだろう。)

American Academy of Optometry (アメリカ検眼学会) の Optometry & Vision Science 記事 (2014 年 6 月) のプレビュー "Reading From Computers and Print Size" から引用すると:

印刷したページについては、文字サイズが大きければ読む速度が増すことが知られている。でも、コンピュータ上で、眩しさその他影響力の強いコンピュータスクリーン要因が加わっても同じことが言えるだろうか? 私たちの調査は若い年代 (18 歳から 35 歳まで) ともっと上の世代 (55 歳から 65 歳まで) を調べ、実際にある程度の関連性があることを見つけた。さらに、その関連性の定量化も行なった。フォントサイズが 1 mm 増えるごとに、平均的な生産性と正確度が増した。モニタ表面に反射の眩しさを加えても、被験者たちは頭を前へ傾けるようになったが、生産性や正確度に影響は見られなかった。年齢層によっても(適切な眼鏡を着用して)これらの関連性に変化は見られなかった。これらの調査は、コンピュータにユーザーの生産性や姿勢が通常より大きなフォントサイズによって改善されることを示唆している。

低視力関係の団体 -- 低視力のユーザーたちに対して、以下のような団体が支援を提供している:

モノのインターネット -- 今回の私たちの探訪が世界に関与することは初めから終わりまですべてコンピュータによってのみなされるという考え方に陥ってしまうことのないよう、あらゆる種類の製品の開発者たちには私たちが毎日の生活で使うさまざまのデバイスやシステムの中にアクセシビリティ機能や適応テクノロジーを含めることこそ重要だと認識してもらいたい。

すぐ上で紹介した Andrew Heiskell Braille and Talking Book Library の支援技術コーディネーター Chancey Fleet は、次のように説明した:

盲目および低視力のコミュニティーにいるユーザーの大多数は、しっかりしたアクセシビリティ機能がもっと多くの種類の製品に組み込まれることを歓迎するだろう。例えば、電子レンジ、サーモスタット、フィットネス機器などで、音声でフィードバックを話すものや、色やサイズやコントラストを調整できるオプションを持つものを見つけるのはとても難しい。そうしたデバイスは今日では大多数がデジタル化されているけれども、私たちがスマートフォンやコンピュータでありがたく使っているようなアクセシビリティを導入しているものは大体においてまだない。ほんの少しの創造性さえあれば、ほとんどあらゆるデバイスにアクセシビリティを含めることが可能だろう。例えば、米国で視力障害のある乗客のために先駆的なタクシー用テクノロジーとしてシンプルなアクセス用タッチスクリーンが Lighthouse International と Creative Mobile Technologies の提携により実現したのが好例だ。

そして、特にコンピュータ主体とは思えないようなタイプの電化製品が、今日ではますますコンピュータによるコントロールを受けるようになっているのを踏まえて、Fleet は「モノのインターネット (Internet of Things)」の持つ可能性と、その難点とを議論した:

いわゆる「モノのインターネット (Internet of Things)」は、アクセシビリティを生み出す新しい機会を導入するとともに、アクセシビリティを壊す新しい機会も導入する。例えば、サーモスタットアプリ Nest はアクセス可能、つまり低視力や盲目の人もスクリーンリーダーや拡大ツールを使ってこのアプリを使える。それと同時に、もしも何らかのハイテク機器にアクセスするのが一つのアプリのインターフェイスを使ってしかできなかったとすれば、そしてそのインターフェイスに何らかの理由でアクセスできなくなれば、その機器はもはや何の役にも立たなくなる。ローテク機器に点字や、高コントラストの点々、その他の方法で説明を付けただけのものの方がずっと役に立つようになってしまう。

Fleet はそれに続けて、製品デザインにおけるフル・アクセシビリティのための取り組みについて簡潔に明確化してみせた:

念頭に置いておくべきは、必ずしもすべての低視力や盲目のユーザーが電化製品の管理にスマートフォンを使えるだけの欲求、資力、あるいは実際上の知識を持っているとは限らないことだ。電化製品自体をコントロールすることが一般大衆にとって望ましいことであり実際的である限り、その電化製品はユニバーサルデザインを考慮して作られるべきであり、さまざまに違った障害を持つユーザーが障害を持たないユーザーと同様に効率的に使いこなせるようにすべきだ。

Fleet によれば、ユニバーサル(つまりフルにアクセス可能)なデザインにはいくつかの重要な利点がある:

未来のテクノロジー -- 現在の適応テクノロジー、例えばスクリーン拡張と調整のツール、スクリーンリーダー、テキスト読み上げ、口述筆記、音声認識などに対する希望を言えば、そのいくつかは良いものだけれども、きっと今後も引き続き改良されるだろうという点だ。

とりわけ一部の低視力ユーザーたちは、オーディオで操るインターフェイスの分野での大幅な進歩に望みをかけている。その種のハードウェア機器は楽器に似たようなものになる可能性もある。しかしながら、この面での未来は必ずしも明るくない。Apple でさえ、そのアクセシビリティ機能の品質に多少の手落ちを見せ始めている。(2015 年 2 月 2 日の記事“Apple、アクセシビリティで競争力を失う”参照。)

熱心なハイテクファンの多くは、 Oculus Rift 仮想現実ヘッドマウントディスプレイのニュースを聞いてワクワクした。ただしそれが具体的に低視力ユーザーの役に立つかどうかはまだはっきりしない。コンピュータ化された目に取り付ける機器の分野はまだあまりにも新しく、目の健康を気にする人たちが懐疑的になるにはそれだけの理由がある。(そうしたデバイスが眼鏡をかけている人たちにとってうまく着用できないことも言うまでもない。この点は視覚的アクセシビリティへの途方もなく大きな障害となっている。)

例えば Google Glass は、眼科医の間に懸念を引き起こすに十分の危険性を秘めている。Toronto 大学の電子工学およびコンピュータ工学の教授でありコンピュータ化された視覚システムの専門家でもある Steve Mann は、さまざまの面から Google Glass のようなデバイスが目の疲れを引き起こすことを詳しく述べている

個人のアイデアから生まれたり、ソーシャルネットワークの概念から生まれたりした革新で、人をワクワクさせるようなものもある。例えば、3D デザイナーの Michael Balzer は 3D プリンタを使って妻の頭蓋の模型を作成し、外科医たちが彼女の目から腫瘍をうまく取り除けるようにした。その過程で Balzer は医療における新たな標準となるべきものを開拓した。それからまた、非営利ソーシャルネットワーク Be My Eyes もある。これは、目の見えるボランティアたちがスマートフォンを使って盲目のユーザーたちから毎日のこと(道案内、製品ラベル、その他)に関するリクエストに応えるというものだ。

将来への展望 -- 私が経験したウイルス性結膜炎はとりわけひどく、それと合わせてアレルギー反応も起こり、そのため回復の過程も複雑化し長期化した。今でも毎日数回ずつ人工涙液を点眼しなければならないが、大体において私の目は正常に戻っている。その点については、私はこの上なくありがたいことだと思っている。そして実際、今の私は何らかのトラブルを評価する羽目になる度に、自分の目の状態をそのための個人的試金石としている。(「これって、私の目の健康と機能よりも重要なことだろうか? 違う? それなら、ちゃんと正しいままにしておこうじゃないか。」)

私たちの能力は、とりわけ私たちの感覚器官は、まさに生命自体と同じく、とても貴重でとても壊れやすい。私たちは、実際に危機が迫ったり傷付いたりしない限り、それらを当たり前のものと思いがちだ。今回の経験で私は多くのことを学んだが、中でも心に響いたのは、考えもなく無駄に浪費してしまいがちな生活の基本が、実はとても重要だという事実だった。

私たちは共に、自分たちの健康と安全を守るために手段を講じようではないか。そして、テクノロジー開発者、諸団体、職場に、予防的措置と、協調的方策を求めようではないか。彼らすべてが、あなたのため、私のため、他のすべての人たちのために、安全でフルにアクセス可能な環境を作り出すという難問に取り組まねばならない。なぜなら私たちの視覚と、世界への関与とには、すべてそれだけの価値があるからだ。

最後に、このシリーズの記事をまとめておこう:

コメントリンク15402 この記事について | Tweet リンク15402


TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2015 年 2 月 9 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Evernote 6.0.6 -- Evernote が、社名と同じ名前の情報管理アプリのバージョン 6.0.6 をリリースし、Spotlight 検索と高度検索を改善するとともに、索引付けの際の CPU 使用量を削減した。これらの検索の改善に伴いノートの再索引付けが必要となるので、一時的にパフォーマンスに影響が見られるかもしれない。今回のアップデートではまた、Evernote の添付ファイル基盤構造の信頼性が改善され、Presentation Mode Auto-Layout 機能が追加されてプレゼンテーションを手軽に複数個のスライドに分けることができるようになり、多数のクラッシュも修正されている。この記事の執筆時点で Mac App Store 版の Evernote はバージョン 6.0.5 のままだ。(Evernote からも Mac App Store からも無料、59.7 MB、リリースノート、10.7.5+)

Evernote 6.0.6 へのコメントリンク:

Mellel 3.3.8 -- RedleX が Mellel 3.3.8 をリリースし、いくつかのマイナーなメモリリークを修正するとともに、iCloud からアップデートを受け取った後や多数の引用を含んだ書類の処理の最中に起こったクラッシュを修正した。このワードプロセッサへの今回のアップデートではまた、長い書類を 100 パーセント以外のズームレベルにして作業するとアーチファクトが出てしまった問題を修正し、Find フィールドで矢印キーを押すとクラッシュすることのあったバグを修正し、iCloud メニューが時折空になってしまった問題点を解消している。(RedleX からも Mac App Store からも新規購入 $39、無料アップデート、97.5 MB、リリースノート、10.6+)

Mellel 3.3.8 へのコメントリンク:


ExtraBITS、2015 年 2 月 9 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週の ExtraBITS では、クラウドバックアップサービス Backblaze が先日実施したハードドライブ信頼性調査の生データを発表し、Verizon がデータプランを太っ腹にし、Apple が Microsoft に勝利した理由を The New York Times が論じ、Obama 大統領が控え目な NSA 改革を発表した。

Backblaze、ハードドライブ信頼性調査の生データを発表 -- クラウドバックアップサービス Backblaze は昨年一年間かけてハードドライブ信頼性に関するデータを発表してきたが、今回同社は 2013 年と 2014 年双方の調査の全データセットを公表した。データはそれぞれの年ごとに CSV (カンマ区切り) 形式になっており、どんな統計プログラムにもそのまま入れることができる。同社は、将来の調査においても同様にデータを公表することを予定している。

コメントリンク: 15397

Verizon、データプランを太っ腹に -- Verizon Wireless がデータ量上限が 1 から 3 GB までの More Everything プランで料金を変更せずデータ量上限をそれぞれ 1 GB ずつ増やすと発表した。(またはデータ量上限をそのままにして月額料金を $10 安くすることもできる。)このキャリヤはまた、今回新たに 6 GB ($70)、12 GB ($110)、14 GB ($120)、16 GB ($130) のデータプランも提供する。ただし、今回の変更の恩恵を受けるには購読者が自分でプランの切り替え手続きをしなければならないようだ。

コメントリンク: 15395

いかにして Apple は Microsoft に勝ったか -- 20 世紀の終わりには、Microsoft がコンピューティング界の誰にも止められない最強の力であって、Apple は絶体絶命の窮地にいた。けれどもその後 Apple は単に回復したのみならず、今やあの Redmond の巨人の二倍の大きさだ。The New York Times の James R. Stewart が、何が Apple の隆盛を引き起こし、何が Microsoft を比較的下落させたかを論じる。要約して言えば、Apple にはより良いビジョンの感覚があり、自社の製品を共食いすることを恐れなかったことだ。

コメントリンク: 15391

Obama 大統領、控え目な NSA 改革を発表 -- 「スパイ活動の情報に遅れずついて行こう」シリーズの記事をお読みの方なら、National Security Agency (NSA、国家安全保障局) が一般市民のデータを大量収集していたことをよくご存じだろう。今回 Obama 大統領は、その種のデータの収集と保存のやり方について二件のマイナーな変更を行なうと発表した。米国の諜報機関はアメリカ人のデータのうち無関係のものを削除することを義務付けられ、また外国人の同様のデータについては保存期間が最大 5 年間までとされる。さらに、諜報機関が何を集めているかを White House が定期的に審査することになる。

コメントリンク: 15392


tb_badge_trans-jp2

TidBITS は、タイムリーなニュース、洞察溢れる解説、奥の深いレビューを Macintosh とインターネット共同体にお届けする無料の週刊ニュースレターです。ご友人には自由にご転送ください。できれば購読をお薦めください。
非営利、非商用の出版物、Web サイトは、フルクレジットを明記すれば記事を転載または記事へのリンクができます。それ以外の場合はお問い合わせ下さい。記事が正確であることの保証はありません。
告示:書名、製品名および会社名は、それぞれ該当する権利者の登録商標または権利です。

TidBITS ISSN 1090-7017©Copyright 2014 TidBITS: 再使用はCreative Commons ライセンスによります。

Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2015年 2月 15日 日曜日, S. HOSOKAWA