TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1263/16-Mar-2015

今週号の TidBITS では Meerkat を紹介する。これは Twitter の力で動くビデオストリーミング用アプリだが、ライブのビデオ放送を民主化するものとなるかもしれない。ただし、もしも Twitter がこれを止めてしまわなければの話だが。Michael Cohen は Apple のオープンソースの ResearchKit を検討し、これに対する医者たちの意見も聞く。Michael はまた、正しい書式に組まれた脚本が手軽に書けるようにするマークアップ言語 Fountain の概観も寄稿する。論説記事が二つあって、まず Adam Engst が、あなたが Apple Watch をどう見るかは Apple Watch についてよりもむしろあなたについて多くを語ると論じる。それから Rich Mogull が、CIA が Apple 製品をハッキングしようと試みているのはむしろ良いことだと説明する。最後にもう一つ、Joe Kissell の "Take Control of Security for Mac Users" の最新のチャプティクルが出て、ウェブ上を安全にサーフィンする方法を解説する。今週注目すべきソフトウェアリリースは、セキュリティアップデート 2015-002 (Mountain Lion 用、Mavericks 用、Yosemite 用)、DEVONthink/DEVONnote 2.8.4、iMovie 10.0.7、Evernote 6.0.7、GraphicConverter 9.6、それに Mailplane 3.4.1 だ。

記事:

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"Take Control of Security for Mac Users" の Chapter 8、入手可に

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

恐らく、皆さんの Mac の最も一般的な外部世界への接続は Web 経由であり、Apple の Safari や Google Chrome の様な Web ブラウザ経由であろう。皆さんの Mac に対するこの Web 越しにくる脅威は無数にあり、これらに対して自分自身をどう守るのかを学ぶことは重要である。それが、"Take Control of Security for Mac Users" の今週分 Chapter 8, "Surf the Web Safely" で Joe がお教えすることである。

Joe は、ブラウズする時に暗号化接続を使う事の有用性を説き、これをやるのは簡単である、そして Web ブラウザの中のセキュリティに関係する設定について説明する。それから、彼は Web 上でパスワードやクレジットカードを安全に使う方法と、如何にしてフィッシング攻撃を避けるかを論ずる - 当然ながら、パスワード管理アプリを使う事は極めて有益である。最後に、Joe は、セキュリティを強化出来る Web ブラウザ機能拡張の幾つかに目をやることでこのチャプティクルを閉じている。

これ迄の "Take Control of Security for Mac Users" に追いつきたい人のために言っておくと、最初の 2 つのチャプティクル、Chapter 1, "Introducing Mac Security" と Chapter 2, "Learn Security Basics" は誰にでも読んで貰えるが、それ以降の章は TidBITS 会員限定である。TidBITS 会員にはその他の特典もあるが、最も重要なのは、TidBITS 会員が寄付してくれた収入がここ数年の間 TidBITS を走らせ続けてくれたと言うことである - あなたのサポートこそが大事なのだ。もし既に TidBITS の会員なのであれば、申し込んだ時のメールアドレスを使って TidBITS サイトにログインし、これらの章を読み、そしてコメントして欲しい。

まだ 4 つの章が残っているが、これらが完成した暁には、"Take Control of Security for Mac Users" 電子本は、完成版として PDF, EPUB, そして Mobipocket (Kindle) フォーマットにて一般向けに売り出される。

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Meerkat であなたのビデオを Twitter に放送

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

ライブのビデオをインターネット放送するのは何も新しいことではない。また、ライブのストリーミングビデオへのリンクを Twitter に tweet するのも別に新しくない。でも、それら二つをごくシンプルなパッケージで一つにすれば、まさに革命的と言えるかもしれないものが出来上がる。それが Meerkat だ。その設立者に言わせれば、これは「Twitter 用のライブビデオボタン」だ。[訳者注: ミーアキャット (動物) - マングース科スリカータ属の食肉類。アフリカ南部のサバンナで群れを作って地下の穴に住む。]

個人の放送 -- iOS 8 用の無料のアプリ Meerkatは、あなたの iPhone や iPad から、あなたの Twitter フォロワーたちに向けて、ライブのビデオを手軽にストリーミングできるようにする。単にこのアプリをインストールして、あなたの Twitter アカウントにリンクさせ、それから Stream をタップするだけでよい。すると、あなたのデバイスのカメラで撮影されたビデオが即座にインターネット上に放送され、Meerkat はそのストリームへのリンクをあなたの Twitter アカウントから tweet する。

ストリーミングの前にそのビデオの説明を入力すれば、それも tweet に含まれる。例えば、私は Twitter で人々から受けるさまざまな質問に答える場合、"Taking Your Questions" という Meerkat ストリームを走らせている。

あなたの Twitter フォロワーたちは、そのストリームがライブである間にそこに加わっていなければならないので、何の警告もなく開始するのではなく、あらかじめ Meerkat のスケジュール設定をしておくのがよい。ストリームの予定を決めれば、Meerkat がそのストリームが始まる時刻を入れた tweet を投稿する。その時刻になれば、あなたのデバイス上に通知が届く。あなたがその通知を開くやいなや、ストリームが開始されるとともにそのビデオへのリンクを入れた tweet が投稿される。

放送している間は、視聴者たちに表示されているものを見ることができ、彼らのコメントも読め、彼らに Twitter 上で返信するためのボタン、フラッシュを点灯するボタン、前面と後面のカメラを切り替えるボタン、それにビデオを止めるボタンも現われる。当然のことだが、iOS デバイスをしっかり固定し外部キーボードを使っているのでない限り、返信をタイプしようとしてもあまりうまく行かない。

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あなたが Stream ボタンをタップするやいなや、デバイスの背面カメラからのストリーミングで生放送中となる。残念ながら、ストリームが始まる前にあらかじめ設定しておくオプションはない。私は多くの場合、視聴者に向けて仮想の顔と顔を突き合わせて話をしたいので(それに散らかった私の机など映したくないので)ストリームが始まる際には背面カメラを手で塞いでおき、始まったらすぐにカメラを切り替えるようにしている。

質問される前に答えておくと、いや、あなたのビデオが自動的にどこかのクラウドサービスに保存されることは ない が、終わったところでビデオのコピーを自分のデバイスに保存することはできる。これはちょっと安心だ。へまが世の中に広まってしまうのを心配せずに自分を表現できる余地ができるからだ。(もちろん、誰でも Snapchat のスクリーンショットを撮れるのと同じことで、誰かが QuickTime Player を使って録画するのを止めることはできない。)

チャンネルが 5 億個あっても、何も放送していない -- では、Twitter 上の友人で Meerkat を使っている人がいない場合、観るべき Meerkat ビデオをどうやって見つければよいのか? まずは、 Twitter 上で "#meerkat LIVE" を検索してちょっとブラウズしてみるとよい。他の人たちがいつ放送しているかを知るために検索や偶然に頼りたくないと思えば、他の Meerkat ユーザーたちをフォローすればよい。すると、そのうちの誰かがストリーミングを始めた際に Meerkat アプリがあなたに通知する。ストリームは、ウェブブラウザで観ることも、このアプリ自体の中で観ることもできる。

つい最近になるまで、Meerkat はあなたが Twitter 上でフォローしている誰かが放送を始めればあなたに通知してくれた。なのに、 Twitter は Meerkat による Twitter のソーシャルグラフへのアクセスを止めてしまった。それは、競合する Periscope サービスを買収したことを Twitter が発表した直後のことであった。これは、Twitter 側の挙動としては信じられないほど良くないものだ。とりわけ、Twitter がサードパーティのクライアントを活動不能にして以後、同社が開発者たちに奨励してきたのがまさに Meerkat のようなアプリを作成することだったのだから。つまり、Twitter が発信しているのはこんなメッセージだ: もしも俺たちのプラットフォームで誰かが何かクールなものを開発したら、俺たちはそれを盗んでから、そいつの足を折ってやるぞと。

Meerkat ストリームの視聴には、いくつか荒削りなところがある。Twitter 上でリンクをクリックしてストリームを観れば、ウェブブラウザの中で信頼性をもって動作する。ただしあらかじめ Twitter にログインしている必要がある。けれども、アプリ自体の中でストリームを観る際には当たり外れがある。通知を開くと、多くの場合 Meerkat アプリが開かずウェブストリームに行くことになる。

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アプリの中でストリームを観ている間、Meerkat はビデオを表示しつつ、その上に同じストリームを観ている人たちの顔写真を並べ、また観ている人たちが Twitter に書き込んだコメントも表示する。さらに、そのビデオにコメントする (Twitter の @ 返信を使う) ためのボタンや、ビデオをリツイートするボタン、お気に入りにするボタン、ホーム画面に戻るボタンもある。

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可能性を考えよう -- Meerkat はとてもシンプルなアイデアだが、爆発的に人気を増している。少なくとも、私が Twitter でフォローしている人たちが加入したという通知がひっきりなしに届くことから判断すればそう言える。これは、ジャーナリズムと放送の革命となる可能性を持つのではないか。これを使って抗議運動を報道したり、市議会のミーティングを放送したり、さらには家族のイベント、例えば卒業などをストリームしたりさえも可能だ。戸外でのビデオ撮影には Hitcase か Hitcase or Velocity Clip のようなものがあるとよいかもしれない。もちろん、何と言うか... 成人向けの娯楽のために使うこともあり得るし、それを禁止するルールなどない。ありがたいことに(そして驚くべきと言う方がよいかもしれないが)私はまだ自分の目を漂白する必要がある類いのものに出会ったことがない。

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何が Meerkat をこれほど魅力的なものにしているかというと、これが単なるストリーミングビデオ用のプラットフォームでなく、ストリーミングビデオを宣伝するものでもあるからだ。ただ、そこには逆効果の恐れもある。とりわけ、今はまだ始まったばかりで、多くのユーザーたちがとりあえず試してみている段階なのだから。多くの Meerkat ユーザーがほんの数秒間だけのストリームを打ち上げていると、あなたがそれをクリックした頃にはもうストリームが終わっている。ろくでもないものを宣伝すれば、その後はもはや誰にも見向きもされなくなるだろう。

もしも Meerkat が今後も持続するとすれば、あのソーシャルメディアサービス Ello のごとくに線香花火の短命に終わるのではないとすれば、Meerkat のコミュニティーがストリーミングをめぐる何らかの慣例やエチケットを育てることによって、何が観られるのか、いつ観られるのか、どのくらい長く続けて観られるのかが、視聴する人に分かるようにする必要があるだろう。

試しに Meerkat を使ってみたいとお思いの方のために、放送を成功させるためのコツを少し紹介しておこう:

これらの点を普及させるため、Meerkat が何らかの変更を盛り込むべきだと思う。放送する人がライブに突入する前に、準備のためのテスト段階、"setup" モードも必要だろう。また、ストリームの終了時に tweet したり、元の発表 tweet を削除したりが自動的にできるオプションも Meerkat には内蔵されるべきだろう。

いずれにしても、Meerkat には大きな可能性がある。そして、もしもそのコミュニティーが有益で興味深いやり方でこれを使うようになれば、放送映像の世界を民主化するための大きな力となるかもしれない。

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Apple の ResearchKit の約束 (そして、限界)

  文: Michael E. Cohen: [email protected], @lymond
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

8 March 2015 の Apple の "Spring Forward" イベントにおいて、光り輝く製品のパレードが 15 分程進んだ所で、プレゼンテーションは ResearchKitに焦点を当てた。これは光り輝きもしない、無料奉仕の取り組みで、一見場違いな感じもするが、モバイルスマート技術が Candy Kingdom で緑のガムを集めさせてくれる以上のことが出来ることを示す現実の、わくわくする例を提示してくれた。

これ迄は、学術研究を支援する話は、Apple からよりも GoogleMicrosoftからの方がより多く聞かれてきた。従って、Apple が、単に人の心を掴んで離さない製品を製造するだけでなく、世界をより良いものとすることに貢献する場に名乗りを上げるのを見るのは嬉しいことである。

約束 -- Apple が生き生きと表現した様に、ResearchKit は "オープンソースソフトウェアフレームワークで、医学研究を革新するようなアプリを研究者や開発者が作成するのを容易にし、ひいては医学を根底から改革する可能性を持っている"。ええ、表現はいささか大袈裟だが、現実に、文字通り本当になるかもしれない。

考察 1:今日の iPhone は、強力な計算力、通信能力、そしてデータ保存に加えて、最新式のセンサーを、加速度計、ジャイロスコープの様な、それにそれらが生み出すデータを監視しそして管理する特別なプロセッサまでをも備えている。

考察 2:iOS には HealthKit が含まれており、これにより iPhone ユーザーは、身体活動をこの機器内蔵のセンサーの自動監視から、そしてユーザーによる入力からの両方で記録出来るのみならず、ユーザーのプライバシーを守る高度なセキュリティシステムの後ろでこれを行える (Rich Mogull の Macworld 記事, "Why Apple really cares about your privacy" 参照)。

三つ目の考察は、多くの医学研究が人間の参加者を使いそして参加者の健康状態と活動を時間と共に観察する調査を伴うことである。多くの場合、参加者が多い程、その調査結果はより有益でより信頼出来る - 同時に、その調査を行うのもよりお金がかかりより難しくなる。

最後に考察すべきは、数億人の人が、高度なセンシング、セキュリティ、そして通信能力を有する機器を既に持っており、しかもこれ迄であったら、不可能とは言わなくとも、やろうとすれば極めてお金のかかるそして管理するのも困難なレベルの大きさと詳細さで研究の参加者からデータを集められることである。

もし研究者が、iPhone が提供する豊富な動作検知と健康関連の資源へ、参加者のプライバシーを守りながら (如何なる医学研究でもこれは 必須)、容易にそして信頼性をもってアクセス出来るなら、それは医学研究を革新し、そして医学を変革することが可能となる。

それが、ResearchKit の約束である。

長い目で見て。

現在あるもの -- 現時点では、ResearchKit は医学研究データを集めそして管理する iOS アプリを作成するための比較的小さなソフトウェアフレームワーク として存在し、更に、研究者達がこのフレームワークを使って既に開発した 幾つかのアプリがあるだけである。

これらのアプリは、ResearchKit で何が出来るかのデモンストレーションとしての役割も果たしており、もしお望みなら皆さんもダウンロード出来る。同時に、これらは実際の研究ツールでもあり、研究者に対してももう既に実体のある成果をもたらし始めている:この Apple イベントから 24 時間もしないうちに、11,000 の人が一つの調査に申し込んだ。こんなことは、通常なら一年の年月と 50 にも及ぶ医学拠点からの協力を必要とするであろう。

ResearchKit フレームワーク自体は、April 2015 にオープンソースとしてリリースされる予定で、比較的小さくそしてそれ程野心的でもない。現在、それは三つのモジュールから成り立っている:

しかしながら、ResearchKit 自身は、展開されるアプリと研究者のサーバー間の安全な通信は提供しないし、また受動的に入手された背景データへのアクセスも提供しない、更にタスクや調査を計画する能力も提供しない;iOS には、これらのニーズを扱う別のプログラミングフレームワークが用意されている。

欠けているものとしてはまた、連邦または国際研究規制や指針との自動コンプライアンスが挙げられる:研究者自身にその様なコンプライアンスを実行する責任がある。

医師達の反応 -- 医学界には、ResearchKit が提供する可能性にワクワクしている人が沢山いる。例えば、Oregon Health Sciences University の教授である Dr. Norman Cohen は私に次の様に語ってくれた、"ResearchKit には、真のゲームチェンジャーとなる可能性がある。一人の麻酔医として、私は常に患者により良い手術結果をもたらす方法を模索しており、ResearchKit は、食生活の改善、肉体的条件付け、血糖コントロール、そして投薬管理といった介入の影響調査を多数の手術患者を対象にして行う手段を提供してくれる可能性をもたらす。このフレームワークはまた、患者教育、交わり、そして医療経路の遵守を改善してくれるかもしれない。我々は提供する医療の価値を高める努力の一環として Perioperative Surgical Homes を始めているので、これらは胸躍る可能性を示している。"

楽観的でない人達も勿論いる。University of Western Ontario の Associate Professor である Dr. Phil Jones彼の疑問を呈して次の様に言っている、"医学研究をただ単に 'クラウドソースする' 事など出来ない。最低限の抑制と拮抗が必要であり、この抑制と拮抗こそが ResearchKit に現在欠けているものである"。彼は、今日の ResearchKit に欠けているものの例を幾つか挙げてくれたが、選択バイアス摩耗バイアス、そして観察者バイアス が研究の結果を間違ったものにしてしまうことを許す可能性があり、これは設計の穴だと指摘した。

いずれにしても、 Dr. Jones は完全な否定者ではなく、彼の ResearchKit の欠陥の分析を前向きの発言で閉めてくれた:"しかしながら、その未来は明るい! スマートフォンと ResearchKit を使って、高い品質の、忠実度の高い研究がなされるのを可能にする重要な改善がなされるであろうことを私は確信している"。

もし、研究者、そして Apple が、ResearchKit がその約束を果たすに必要な、時間、資源、そして創意工夫を積極的に注ぐのであれば、その未来は本当に明るいかもしれない:_そのレベルの_ 研究成果が見えてくるのは、まだ先である。

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Fountain で脚本の書式を組む

  文: Michael E. Cohen: [email protected], @lymond
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

私は人生の大部分を Los Angeles 地域で過ごしてきた。L.A. は無秩序に多様化した巨大都市ではあるけれども、同時にまた閉鎖的な産業都市でもある。問題のこの産業を我々ロサンゼルス人たちは "The Industry" と呼ぶ。一般的な用語で言えばそれはつまりショービジネス(芸能産業)のことだ。(ビジネスのように聞こえないことはよく 分かっている が!)実際、私は骨の髄からロサンゼルス人であって、1970 年代中頃に UCLA で得た学位は映画とテレビの制作をテーマとし、シナリオ(脚本)の執筆に主眼を置いたものであった。

私が大学生の頃に用いられていた脚本書きのフォーマットはその昔のトーキー映画の時代からずっと変わっていない。シーンの始まりにははっきりと見て分かる文字書式が使われ、動作の記述、シーンの転換、会話などにもそれぞれ別の文字書式が使われる。脚本のほとんどあらゆる要素にそれぞれ独自のインデント(字下げ)が用いられるので、執筆するにはタイプライターのタブ機能を使いこなせることが要求された。

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驚くべきことに、このデジタル化された 21 世紀におけるさまざまな変化にもかかわらず、脚本の書式は何も変わっていない。テキストに等幅のタイプライターフォントを使わなければならないという点に至るまで昔と同じだ。実際、これは単に気まぐれに伝統を引き継いだだけでなく、実際的な要求でもある。実は、適切にフォーマットされた普通の脚本は、一ページがおよそ一分間の上演時間に相当することが(もちろん常にそうなる訳ではないが)多い。そして映画のビジネスにおいては、上映時間こそ金なり、なのだ!

でも、もっと重要な点は、紙の節約やデータ入力の容易さよりも、読んだり、注釈付けしたり、素早く目を通したりが容易にできるようにするために脚本の書式がデザインされていることだ。手書きのメモを書き込むための余白がたっぷりあり、台本のすべての要素が一目で分かる。しかしながら、私が若い時代においてこの書式がタイプライター向きでなかったのと同じように、この書式は今日のワードプロセッサにも向いていない。

幸いにも、大多数の汎用ワードプロセッサは脚本を苦労なしに書けるようにデザインされていないけれども、それでもコンピュータのお陰でずっと楽に脚本を書くことができる。その秘密はこれだ。正しく書式設定された脚本を作るために、厳密な脚本書式で 書く 必要はないのだ! その代わりに、フォーマッティングの部分を後回しにすることができる。例えば、その昔の私は、黄色い用紙にシーンの草稿を手で書いてから、草稿が出来上がった後になって初めてタイプライターを使って適切な書式でそれを打っていた。今日の私は、書式を気にせず好きなテキストエディタで書いてから、あとでそれを適切な書式にレイアウトしている。必要なのは、書く際にいくつかシンプルなルールに従うことだけだ。そのルールはどこから来ているかって? それが、Fountain という名前で知られているマークアップシステムだ。

これは John Gruber が開発した Markdown シンタックスから着想を得ていて、それに似ている。(Markdown は、Ian Feldman がその昔 1992 年に TidBITS のため Adam Engst と共同で作成した setext フォーマットに着想を得たものだ。)Fountain のテキストはどんなテキストエディタでも書くことができ、その後でシンプルなコンバータを通してフォーマット済みの脚本を制作する。そして、Fountain のシンタックスは Markdown よりもさらに覚えやすくてすっきりしているので、Fountain で書いたテキストは標準の脚本書式に変換するより以前の状態でさえ既に読みやすくて理解しやすい。

例えば、脚本ではシーンの見出しはほとんど常に一行のうちに、すべての文字を大文字にして書かれ、そのシーンが室内か屋外かの区別(制作予算を決める際に重要)が示されるとともに、昼か夜かの区別(撮影カメラマンや、機材を設営する特機部チーフが最も知りたい情報)も示される。会話は人物の名前から始まるが、これもやはりすべて大文字でそれ自体が独立の行に中央寄せして置かれ、その後に台詞自体が名前の下に幅の狭いカラム表示で書かれる(演技に関する指示が括弧書きで台詞の前に付くこともある)ので俳優が脚本に素早く目を通す際にも見つけやすく、台詞を語りながらでも読みやすい。シーンの見出しなどの場面転換もすべて大文字だが、これらはたいてい右寄せで書かれ、やはり見つけやすくなっている。

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これはそういうものという他にないが、Fountain のマークアップシンタックスにおいても固定された書式こそが恵みとなる。例えばシーン見出しを考えてみよう。シーン見出しはほとんど常に鍵となる略語 (たいていの場合 INT または EXT) で始まるので、その種の略語で始まる全大文字の行はシーン見出しだとはっきり識別できる。同じように、会話は常にまず人物の名前がやはり全大文字で示されるので、全大文字の (INT や EXT でない) 単語が一つか二つだけの行は会話部分の始まりだと識別できる。場面転換もやはり全大文字で、これは必ず "TO:" で終わるので、"TO:" で終わる全大文字の行は場面転換の指示だと分かる。そしてそれ以外のテキストは? 大体において、それは動作の記述として扱われる。

その結果として、Fountain 版のシーンには通常、ライターの気を散らすようなフォーマッティング用の特別の追加マークアップなどは一切無く(信じてもらいたいが、ライターたちは気を散らされることに 恋い焦がれる ものだ)Fountain のテキストはその時点で既にかなり脚本らしく見える。ただ、全体が左寄せになっているだけのことだ。

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もちろん、 Fountain のシンタックスにはそれ以外にも機能があって、メモの追加、デフォルトのフォーマッティングの無効化 (これで例えば C コンパイラの必要上 INT という名前の登場人物がいてもその名前を使うことが できる ようになる)、削除した部分をマークして表示、などのことができる。でも、そうした機能はほとんどすべてが例外的なものだ。一般的に、あなたが最も頻繁に必要とする Fountain シンタックスのルールを覚えるのは数分で済むだろう。そうすれば、あなたは手近にあるどんなテキストエディタでもワードプロセッサでも好きなものであなたの大傑作の執筆をすぐに始めることができる。使うのは Mac でも、iPad でも、iPhone でも、あるいはプレインテキストの書類を書くことができるならばどんなデジタルデバイスでも構わない。

でも、あなたが作ったプレインテキストの Fountain 書類を適切な書式の脚本に変換するにはどうすればよいのだろうか? 幸いにも、それも大したことではない。Fountain マークアップを処理できるアプリは(例えばライター向けに作られた Literature & Latte の Scrivener アプリなど)たくさんあり、さらには例えば AfterWriting などのウェブアプリでも Fountain テキストを脚本の書式に変換できる。また、Fountain フォーマットを使うことを念頭にデザインされたアプリもある。例えば Quote-Unquote Apps の Highland と、それと対にして使う iOS アプリ、Fountain ファイルが読める WeekEnd Read がある。(いずれ、これら二つのアプリを詳しく取り上げた TidBITS 記事を書きたいと思っている。)

もちろん、常に映画を一本か二本抱えているプロフェッショナルの脚本家たちならば、気軽にポンと数百ドル出して高機能のアプリ、例えばもはや業界標準となっている Final Draft などを買って、次の Oscar 候補となるべき台本を書き綴ることができるだろう。でも、わが町の The Industry に食い込みたいと願っているそこいらのライター/バーテンダー/町の脚本家にとってみれば、同業組合への手軽で低価格な入り口を Fountain が用意してくれる。

(ちなみに、"Fountain" という名前がどこから来たものかというと、これは Hollywood の中心部へと真っ直ぐに伸びる一本道、Fountain Avenue を暗示しているのだ。)

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Apple Watch: これはあなた個人のための Rorschach テスト

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple Watch の価格の詳細と出荷日 (2015 年 4 月 24 日) を Apple が発表して以来、テクノロジー界の反響室は過熱気味だ。完全なる失敗に終わるだろうという声から、目のくらむような大成功になるだろうという声まで、さまざまの予測が行き交っている。真実がその両者の間のどこかにあることは疑いない。Apple のデザインとエンジニアリングに支えられた製品なら完全な失敗はまず考えられないし、同社のマーケティングの腕力と底なしの財力もあるからだ。その一方で、Apple Watch が iPhone と同等の成功を収めることもあり得ない。Apple Watch を使うには iPhone が必要であるし、iPhone が提供するものを超える機能はそれほど多く提供しないからだ。

これはむしろ、Rorschach のインクの染みテストだと思うべきだ。[訳者注: ロールシャッハ・テストとは、被験者がインクの染みを見て何を想像するかによってその被験者の心理分析をする、性格検査の方法。]Apple Watch が成功するかどうかをあなたがどう思うかは、おそらくあなたが Apple をどう見ているかについて多くのことを語るのではなかろうか。私たちのように Apple をよく観察し続けてきた者がこの会社が失敗する方に賭けることはほとんどない。なぜなら、対象となる市場を見分け、その市場のニーズに応え、長い期間にわたってその実行を続ける、そのような能力があることを Apple は繰り返し実証してきたからだ。けれどもそれと同時に私たちは選択バイアスの犠牲であるとも言える。世の中には Apple のことなどほとんど知らない、あるいは関心がない人たちがもの凄く大勢いて、その中には iPhone を持っている人も多くいるかもしれないが、大多数は iPhone でなく Android スマートフォンを使っているからだ。

こんな実験をしてみよう。テクノロジー業界に全く縁がない友人を数人選んで、その人たちに Apple Watch について説明し、興味を持ったかどうか聞いてみるのだ。私はこれを、マッサージ療法士をしていて Android スマートフォンとタブレット(どちらも iPhone や iPad よりずっと安いから購入したのだという)を使っている一人の友人で試してみた。彼女は Apple Watch が何を提供するかを何の困難もなく理解したし、ファッションの観点から見て買う人は確かにいるだろうとさえ言ったけれども、価格を聞いてショックを受けたようで、数年経てばどうなるのか心配だと感想を述べた。

Apple Watch の価格設定に対して人々がどう反応するかを見るのは興味深い。以前には、Apple が Apple Watch の価格を $349 からとしか発表せず、より高価なモデルの価格がどうなるのかに関する膨大な量の臆測を生んだ。もちろん、それらの臆測はすべて脳波サイクルの浪費であった。臆測は、当たっていようと当たっていまいと、実際の購買挙動に意味ある影響を及ぼすものではないからだ。今では、Apple Watch Sport の価格が $349 (38 mm) または $399 (42 mm)、Apple Watch の価格がサイズとバンドに応じて $549 から $1,099 まで、ゴールドの Apple Watch Edition が最低 $10,000、最高 $17,000 であることを私たちは知っている。

あなたがこれらの価格をどう見るかは、Rorschach テストの中のまたもう一つ別のインクの染みだ。個人的な話をすれば、私は生まれてから 10 年間小さな農場で育ち、私の両親はそこで完全な自給自足の生活を目指していた。その後両親とも結局は職に就くことになったけれども、私が高校を卒業する頃以前の両親の収入はとても中流には届かない程度だった。要するに、私はお金を浪費することに抵抗を感じる。ましてや贅沢品については言わずもがなだ。

確かに、私は Apple Watch Sport を買うつもりだ。それについてよく知っていることが、私の仕事にとって必須だからだ。(それにアスリートとしての私には Apple の言うフィットネス機能を評価してみたいという気持ちもある。)けれども中間レベルの Apple Watch にお金を出すことの正当化に私は大きな困難を感じるし、Apple Watch Edition の方は想像することすらあり得ない。私が何かを買うとすれば、それは高度に機能的で、しかも真の意味で私の生活を良くするものでなければならない。でも、それは私の話であって、明らかに、実用的価値のない高級品に多額のお金を浪費する人たちは大勢いる。彼らは、私とは全く違った理由で買い物をしているのだ。

私が思うに、長年の Apple 顧客たちの多くが戸惑いを感じているのは、実際には価格そのものでなく、Apple が我々に提示している購買決定が、量で示された仕様に左右されるものではなく、感情、欲望、社会的地位の確認といった無形の要因に左右されるものだという事実なのではなかろうか。それは、従来の Apple からの大きな転換と言える。機能性の評価によって決定できないような機種の選択を Apple が我々に提示したことなど、過去に一度もなかった。デスクトップ Mac により多くのお金を出せば、パフォーマンスが高まったり大きなスクリーンが手に入ったりする。iPhone や iPad により多くのお金を出せば、より多くのストレージやより良い接続性が得られる。価格の上積みには常に量的な利益が伴ってきたし、機能に関する自分のニーズに合わせて購買決定ができていた。贅沢品を本能的に避けたがる私のような者たちにとって、機能的に同一なのに異なった Apple Watch モデルの選択肢が与えられるのは気まずい感じだ。

その上、Apple が年月を経て変わったのは確かだけれども、この会社は最初の Macintosh のマーケティング標語として "The computer for the rest of us" (私たち皆のためのコンピュータ) という言葉を掲げた。それは決して最も安価なものではなかったけれども、Apple のテクノロジーは常に心地良くてすべての人を受け入れ、Macintosh は階層や制御構造を解体する、テクノロジーの民主化のための力でもあった。iPod と、その後の iPhone には確かに一時的に特権階級的威信が伴っていたかもしれないが、間もなくそれらはあまりにも広く行き渡り、公衆の面前で使っていても階級や富を示唆したりするものではなくなった。

けれども Apple Watch において、Apple はこの均衡を変えてしまった。高いお金を払っても、機能性の多い Apple Watch を得ることにはならない。その代わりに、誰の目にも分かる高価な Apple Watch を手首に着けることができるようになる。ステンレススチール製の Apple Watch を製造するのに、アルミニウム製の Apple Watch Sport に比べて本当に $200 も多く費用がかかるだろうか? Apple Watch Edition には、本当に $10,000 相当の金が含まれているのか? もちろんそんなことはない。Apple は、そのように価格を設定することによって、消費者たちがどれだけの金額を出費したいかを選べるようにし、そうすることで、自分がどんな種類の人なのか、社会経済的にどの階級に属しているのかを自ら示唆できるようにしたのだ。Apple Watch Edition を着けた人をそこいらで見かけることがあるものかどうか、私は極めて疑わしいと思っている。

それはさておき、その次の Rorschach のインクの染みは、Apple Watch の将来を考えてみることだ。この話題で Apple が出した唯一の発表は、バッテリーが交換可能だという点だ。 TechCrunch によれば、このバッテリーは三年程度使えるという。もっと大きな疑問は、Apple が Apple Watch のアップグレードを提供するようになるのかどうかだ。

(新規の顧客を引き付けたり、アップグレードで収益を得たりするのでなく)現行の顧客に対しての Apple の本気度を疑わしく思っている私たちは、Apple Watch が一度買えばそれまでの商品であって、いずれはあの古い iPod nano と並んで引き出しの中に放置されるものではないかと考えている。今日では、他のどの Apple デバイスを見ても、アップグレード可能なものはないようだ。それとは逆に、最も効率的なテクノロジー的解決策を想像することが大好きな楽観主義者たちは、Apple が何らかの方法を思い付いて Apple Watch の中身を新しいハードウェアに交換してくれるに違いないと思っている。もしもそうなれば Apple Watch Edition の将来の価値は保証されたようなもの、ほんの数年で機能を失うかもしれない腕時計に $10,000 も出すことなんか考えられないと思っている人たちも安心することだろう。

この対比を、次世代の Apple Watch に拡張して当てはめてみよう。私は次世代の Apple Watch が実現するだろうと思う。私たちスタッフ間の議論の中で "Apple Watch: A Take Control Crash Course" の著者 Jeff Carlson が言ったように、Apple Watch を作るための研究と製造基盤への投資は膨大な金額だ。たとえ、今回の最初のモデルの Apple Watch が即座にベストセラーとならなかったとしても、Apple は引き続き新たな機能を追加し(独立動作の GPS と、防水のケースはぜひ実現してもらいたい!)各コンポーネントをさらに小型化して行くだろう。あるいは少なくとも、私はそう見る。なぜなら、私はテクノロジーの楽観主義者だからだ。私はいつも、より良い機器が間違いなく登場すると思っている。でも、それはきっと遠い未来の話だ。Apple が手を触れるものすべてが金に変わる訳ではないし、Steve Jobs が死んで以来 Apple はもう昔の Apple ではないと思っている人たちは、Apple Watch のことを Apple があらぬ方向に彷徨い続ける前兆だと見ているかもしれない。

個人的に、Apple が Apple Watch の異なるモデルを位置付けし価格付けしたやり方に対する不快感さえいったん抑えてしまえば、私は早く実際に手にして使ってみたい、自分の生活にどのように組み込まれるか見てみたいとワクワクした気持ちになる。それに、いったんそう思えば、希望を抱きたい気持ちが膨らんで、Apple Watch に夢中になっても二年に一度 $400 を税金のごとく払い続け引き出しの中に古くなったハードウェアが次々と溜まるようなことにはならない、なぜなら、初期のモデルがずっと長く機能性を保ち続けるから、あるいは、Apple が何らかの方法でハードウェアアップグレードを提供することで十分有能なデバイスに保ち続けてくれるから、と考えるようになる。でもこれはすべて私個人の話だ。あなたはどうだろうか?

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Apple を標的にした CIA の活動について良いニュースを

  文: Rich Mogull: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

2015 年 3 月 10 日に The Intercept は U.S. Central Intelligence Agency (CIA、米国中央情報局) が Apple のハードウェアとソフトウェアを標的にしていることを暴露した。Edward Snowden が暴露した機密書類に基づいて書かれたこの記事は、Apple の Xcode 開発環境、iOS 暗号化鍵、および Software Update がすべて広範な監視活動の名の下に CIA による攻撃を受けていたとほのめかしている。幸いにも、真実はもっと微妙な意味を持つ。

もちろん私も、CIA が(そして他のすべての諜報機関や世界中の犯罪組織も)Apple や他のすべてのメジャーなテクノロジー会社を標的にしていることは間違いないと思う。だからと言って彼らが必ずしも成功する訳ではないし、成功が長続きする訳でもない。また、記事にリストされた攻撃の大多数が個人を標的にしたものであって、新聞の見出しを賑わせたような大量スパイ活動ではないことも重要な点だ。

Apple が特に標的とされたのは、同社がプライバシーとセキュリティについて真剣に、個人的なものとして語り始めて以来だ。その製品やサービスのいくつかの部分を政府レベルの攻撃に耐えられるものとして設計するようにさえなったからだ。けれどもそんな Apple も完璧ではない。同社は今も、犯罪者からも政府レベルにも高度な攻撃を受ける状況に直面しつつ、セキュリティ、プライバシー、デザイン、使い勝手の間に正しいバランスを見つけ出そうと苦闘し続けている。

The Intercept の記事は主として政府の戦術に対する糾弾であったけれども、それが Apple の顧客たちにとってどれほど重要なことかについては触れなかった。つまり、Apple の製品が今もセキュアであるか否か、使っても安全なのか否かについては述べなかった。書かれた情報は全体的にかなり楽観的なものだが、この記事には現代におけるセキュリティ、プライバシー、そして機密情報収集の複雑さが強調されている。社会がデジタル時代に順応するにつれて何が世代の問題点になるかを見極められるようになるには、私たちのいる今の時点はまだ時期尚早だ。

それこそが諜報活動なのだから -- 納税者たる私は、もしも CIA やその他すべての米国の諜報機関が Apple 製品を標的にしなかったとしたら、税金を払い戻してもらいたいところだ。

私たちの直感は米国の諜報機関が米国の会社の製品を標的にしていることに対する怒りをあらわにするが、こういうことが起こったのは決して今回が初めてではないし、今後も必ずまた起こるだろう。そして、これらの機関がそれぞれの仕事をするのは必要欠くべからざることだ。この世界全体があらゆる種類のコミュニケーションのためテクノロジーに完全に依存する以上、そのテクノロジーの中に侵入するのは機密情報収集のために決定的に重要なことだ。

スパイを必要とする世界に生きることは苦痛ではあるが、それが現実だ。テクノロジーの分野を米国の会社が圧倒していれば、諜報機関がその製品を標的とするのはごく自然なことだ。セキュリティ業界にいる私たちはずっと以前から、それらの機関が従業員を製造業や供給チェーンの会社に潜り込ませたり、直接のスパイ活動をしたりし、多くの場合特定の国のためにデザインされた製品を標的としているのではないかと疑っていた。この二年間にわたって、セキュリティのカンファレンスに際して酒場の噂や冗談となってきたそれらの話題が、次第に記事の見出しを飾るようになった。

The Intercept の記事は Apple に焦点を当てて話をしているが、諜報機関が Microsoft やチップメーカーを標的としようと試みたことにも触れている。それらのチップメーカーは、さまざまのプラットフォームで暗号化のために使われる Trusted Platform Module(Microsoft 専用の製品ではない)を製造する。加えて、政府があらゆる種類の暗号化ハードウェア、ソフトウェア、サービスに攻撃をした可能性があることを示す過去の暴露もある。

単刀直入に言ってしまえば、諜報機関が米国の会社を標的と せざるを得ない のは、それらの会社の製品が(iPhone であろうと Windows であろうと)彼らのあらゆる国際的標的の手によって使用されているからだ。

実際、私は The Intercept の記事を非常に心強い話だと思って読んだ。政府の研究者たちがデバイスやサービスにアクセスするためにこれほど懸命な努力を注ぐ必要があったという事実は、Apple やその他の会社が私たちに提供しているセキュリティテクノロジーが(完璧ではなかったとしても)有効なものであり、テクノロジー各社が諜報機関コミュニティー側に寝返ったのでないことを示している。もしもテクノロジー会社が諜報機関側に行ってしまったとすれば、そちらの方がはるかに懸念すべきことではないか。

難しい標的 -- Edward Snowden が暴露した書類が作成された 2012 年以来、セキュリティの世界ではたくさんのことが起きた。iOS のセキュリティモデルにも大きな変更が施された。ここで、それらの書類に登場した主要な製品のいくつかと、それぞれに関するリスクについて考えてみよう。

忘れないで頂きたいが、私は決してこれらのリスクを無視しようとしているのではない。けれども、どの書類を読んでも、それらは的を絞った、一時的な、しかも自己限定的なものばかりだ。

Xcode は、アプリケーションを作成するために Mac と iOS のすべての開発者が使うツールだ。政府の研究者たちはクラックしたバージョンの Xcode を作り、それを使って作成されたすべてのアプリの中に開発者に知られずに攻撃用のコードを埋め込むことができるようにしたと主張した。もしも Apple が配布する正統なバージョンの Xcode に誰かが侵入できたとすれば、それはあらゆるアプリケーションにあらゆる場所で影響を与える可能性がある。これは、セキュリティ意識の高い開発者ならば夜も眠れない状態になる類いのことだ。

開発者のツールチェイン(とりわけコンパイラ)に侵入されるのは最悪の状況だ。開発者に知られることなくメジャーな人気のアプリケーションの中に悪意あるコードを埋め込めるとしたらどうなるか、想像してみよう。でも、あなたは信じないかもしれないが、一つ良いことがある。上記の研究者たちのプレゼンテーションによれば、彼らは正統なバージョンの Xcode にアクセスすることはできず、その代わりに、特定の一人の開発者を標的として、その人が持っている特定のコンピュータの上にある Xcode を別のバージョンにすり替える必要があるのだという。そのような攻撃なら十分あり得ることだと私も思う。それならば、諜報機関がどこかの国にいる誰か特定の開発者を(その特定の開発者のアプリのユーザーたちに手を届かせるために)個別に標的とするだけでよく、Apple 開発の全エコシステムを攻撃する必要は ない からだ。

たとえ CIA が正統なバージョンの Xcode に手をつけることができたとしても、毎回の Xcode アップデートが悪意あるバージョンを除去することだろう。ただし、これはその開発者がどの程度頻繁にアップデートをするかにもよるし、また Software Update のメカニズム自体が改変を受けなければの話だが。

実際のところ、ソフトウェアアップデートのメカニズムも、高い価値を持つもう一つの標的と言える。そして、書類の一つには政府の研究者がその作業をした形跡も見える。けれども Xcode の場合と同様、Apple の Software Update 基盤構造が丸ごと改変をうけない限り、攻撃は個別の標的に限られるだろう。

iOS の暗号化は極めて効果的であり、司法当局が政府に対して Apple にバックドアを提供させるよう働きかけたほどだ。なので、諜報機関が iOS の暗号化をクラックしたがったとしても何の不思議もない。The Intercept の記事によれば、研究者たちは同じハードウェアを持つすべての Apple デバイスが共有して使う Group ID 鍵を標的にしたという。この鍵は、アタッカーがデバイス上に悪意あるソフトウェアをインストールする助けとはなるが、ユーザーが良いパスコードを設定しておきさえすればデータの回収には役立たない。

ただし、ここにはちょっと微妙な点がある。それは、悪意あるシステムソフトウェアアップデートが、状況によってはデバイス上のすべてのデータを露出してしまう可能性があることだ。(ユーザーはそんなものがインストールされていることには気付かず、そのままそのデバイスを使い続けるだろう。)例えば GID 鍵をクラックしただけでは、デバイスのロックを外してアクセスできるようにしない限り、警察がデータを抽出することはできない。もしもそうでなければ GID 鍵の保有者たる Apple が警察の依頼に応じてどのユーザーのデータにでもアクセスできるようになってしまうはずだが、同社は明確にかつ声高にそのようなことは不可能だと述べている。

いずれの場合も、その種の攻撃は深刻なものだが、それらはいずれも Apple のデバイスに、とりわけ iOS デバイスに侵入するのがどれほど困難であるかを示している。いずれの場合の攻撃も大量監視活動に適したものではない。そんなことをすれば暴露される可能性が増すからだ。研究者たち自身でさえ次のように述べている:

Intelligence Community (IC) は非常に少数のセキュリティ欠陥に高度に依存しているが、それらの多くは公開され、Apple がいずれはパッチすることになる。

要約すれば、諜報コミュニティーは自分たちの攻撃を秘密にしておきたいと願っているので、特定の人々に対し、高度に標的を絞った手段で、攻撃をすることになる。それならば私は我慢できる。

Apple にとってそれは個人的なもの -- 2012 年のプレゼンテーション以後、Apple はますます強い姿勢でセキュリティとプライバシーを改善するようにしてきた。昨年の Macworld 記事で、私はそれを主として経済的理由によるものと書いたが、その後 Apple にいる人たちと背景を語り合うにつれて、彼らがプライバシーを個人的なものとして受け取っていることが明らかとなってきた。

業界のアナリストとして、私は企業が収益のみによって動かされていると考えがちだが、いつもそれが当てはまる訳ではない。利他的な動機をすべて排除したとしてさえ、Apple はその従業員たちの生活のすべてが自社の製品とサービスの創出と利用を中心に展開している、そういう会社だ。

スパイされているという考えが、Apple の重役たちにも従業員たちにも、多くの私たちと同じむず痒い感覚を与えていると私は確信している。さらに、もしも彼らの製品が簡単にハッキングされてしまったとすれば彼らはそれを技術的な敗北と捉えるだろうと私は思う。開発者にとって、自分のコードが覆されるのを見せつけられることほど嫌なものはない。単純なプログラミングのミスの結果として SSL に深刻な欠陥が生じた際に Apple が直面したような非難を受けたいと思う人など誰もいない。

それは、Apple の製品デザインにも透けて見える。iCloud Keychain は基本的に NSA 耐性があるようにも設定できる。(2014 年 3 月 1 日の記事“あなたの iCloud Keychain を NSA から守る方法”参照。)Apple は、従業員の誰かが実際に複数の主人に仕えているという万が一の可能性に備えて、鍵を管理する製品にアクセスするために必要なハードウェアスマートカードさえ物理的に破棄してしまった。

FaceTime と Messages のいずれも、両終端での暗号化に対応している。技術的に言えば Apple はそのプロセスを操作して改変することもできるが、そのためには大掛かりなアーキテクチャ上の更新に相当するものが必要となるので簡単なことではない。それに、iOS 暗号化に対する同社の姿勢は明確だ

これを Apple の立場から考えてみよう。自らには制御できない理由によって、今や Apple は、犯罪組織からも、外国の諜報機関からも、さらには自国の政府からも狙われる世界最大のテクノロジー標的となった。そして、標的となっているのは Apple の全従業員が毎日、時々刻々依存して使っているツールやサービスだ。セキュリティとプライバシーを倍賭けする理由として、これ以上大きいものを見つけるのは難しいだろう。そして、CIA の研究者たちでさえも Apple の製品に対して攻撃能力を保持するために苦闘しているという事実は、自らがセキュリティに注ぎ込んだ投資が効果を生んでいることの実証だ。

それは、強い動機だ。とりわけ、スパイするのはスパイたちの仕事だからだ。たとえ、それが自国で作られ外国で使われる製品の欠陥を見つけることであったとしても。Apple のセキュリティも、完璧ではない。今後も新たな欠陥が、私たちが望むよりずっと頻繁に、引き続き発見されることだろう。けれども、Apple が自らのセキュリティの技量を高めて、世界最高峰の諜報機関でさえもブロックできるようになった今、最も恩恵を受けているのは平均的ユーザーに他ならない。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2015 年 3 月 16 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

セキュリティアップデート 2015-002 (Mountain Lion, Mavericks, Yosemite) -- Apple が OS X 10.8 Mountain Lion、10.9 Mavericks と 10.10 Yosemite 用のセキュリティアップデート 2015-002 をリリースした。最も注目すべきは FREAK 脆弱性 (Factoring RSA Export Keys の略語) に関する修正だ。この脆弱性により、SSL/TLS 暗号化されたトラフィックをアタッカーが傍受して、クライアントとサーバの間のコミュニケーションにアクセスしたりそれを変更したりできるようになっていた。セキュリティアップデート 2015-002 はまた、いずれのオペレーティングシステムでも IOAcceleratorFamily と IOSurface によるシリアル化されたオブジェクトの処理にあった脆弱性に対処した。さらに Yosemite では、mach_port_kobject カーネルインターフェイスからカーネルアドレスとヒープ交換値が漏洩していたのをパッチするとともに、iCloud Keychain の上限値チェックを改良していくつかのバッファオーバーフローを封じ込めた。セキュリティアップデート 2015-002 は Software Update 経由で、あるいは Apple の Support Downloads ウェブサイトから入手できる。注意すべきは、10.10 Yosemite 用のアップデートが二種類あることだ。一つは Early 2015 Mac 用 (つまり、先週発表された機種、2015 年 3 月 9 日の記事“新型 12 インチ MacBook 登場、MacBook Air と MacBook Pro 更新”参照)で、もう一つはそれ以前の Mac 用だ。(無料。10.8 Mountain Lion 用 177.3 MB、10.9 Mavericks 用 62.3 MB、10.10.2 Yosemite 用 5.4 MB、Early 2015 Mac 上の Yosemite 用 5 MB)

セキュリティアップデート 2015-002 (Mountain Lion, Mavericks, Yosemite) へのコメントリンク:

DEVONthink/DEVONnote 2.8.4 -- DEVONtechnologies が DEVONthink の三つの版 (Personal、Pro、Pro Office) すべてと DEVONnote をバージョン 2.8.4 に更新した。DEVONthink の三つの版も DEVONnote も、Command キーを押しながら Finder から項目をドラッグできる機能を追加して、ファイルやフォルダを Finder からデータベースへ移す作業が簡単にできるようにした。このアクションにより、それらのファイルが読み込まれるとともに元のファイルがゴミ箱に移される。四つのアプリのいずれも、新しく日付関係のスマートグループ条件を追加し、OS X 10.10.2 Yosemite との互換性を改善し (Groups & Tags パネルのグループセレクタで起きていた問題を解消、PDF 表示でキーボードの page up/down キーの処理を改善)、 .webhistory および .webbookmark ブックマークファイルに対応し、書類を分割した際にタグを正しく保持するようにし、フランス語ローカライズ版を改良している。(いずれもアップデートは無料。DEVONthink Pro Office は新規購入 $149.95、リリースノート。DEVONthink Professional は新規購入 $79.95、 リリースノート。DEVONthink Personal は新規購入 $49.95、 リリースノート。DEVONnote は新規購入 $24.95、 リリースノートTidBITS 会員には DEVONnote もいずれの版の DEVONthink もそれぞれ 25 パーセント割引。10.7.5+)

DEVONthink/DEVONnote 2.8.4 へのコメントリンク:

iMovie 10.0.7 -- Apple が iMovie 10.0.7 をリリースし、新しい Photos for OS X アプリ(現時点ではベータ版としてのみ入手可、Jason Snell の記事“Photos for OS X ベータの第一印象”(2015 年 2 月 9 日) 参照)の中の Moments、Collections、Favorites、Albums からコンテンツをブラウズしたり追加したりする機能に対応した。iMovie は今回から Play/Pause、Prev/Next、Full Screen の各ボタンを Viewer の下に常時表示してナビゲーションが楽にできるようにし、また Record Voiceover ボタンも Viewer の下に用意してナレーションの追加に手軽にアクセスできるようにした。また今回のアップデートでは Sony XAVC-S フォーマットへの対応を追加するとともに、詳細は不明だが安定性と互換性の問題点にも対処している。(Mac App Store から新規購入 $14.99、無料アップデート、2.0 GB、10.10+)

iMovie 10.0.7 へのコメントリンク:

Evernote 6.0.7 -- Evernote が、社名と同じ名前の情報管理アプリのバージョン 6.0.7 をリリースし、CPU 使用量が多過ぎた問題に対処を試みるとともに、全般的なノート編集作業の遅さに改善を加えた。次回のバージョンではより大規模な修正が施されてこれらの問題点がフルに解決されると約束している。今回のアップデートでは Attachments ボタンが Work Chat の中にすべての共有ノートとノートブックを表示するようにし、ツールバーを必要に応じてカスタマイズできるようにし、ノートの中で画像をドラッグ&ドロップする際の問題点を修正し (また添付ファイルを常にノートの末尾に付けるようにし)、OS X 10.9 Mavericks 上で & または ?の文字を含む URL をペーストする際の問題点を修正し、PDF を検索する際のバグを修正している。この記事の執筆時点で Mac App Store 版はまだバージョン 6.0.6 のままだ。(Evernote からも Mac App Store からも無料、64.6 MB、リリースノート、10.7.5+)

Evernote 6.0.7 へのコメントリンク:

GraphicConverter 9.6 -- Lemkesoft が GraphicConverter 9.6 をリリースし、この古参のグラフィック変換および編集用ユーティリティにさまざまの新機能や改善を加えた。今回のアップデートでは Photoshop Pattern ファイルの読み込み対応、バッチ SVG-to-PDF (vector) 変換、Brush ツールでの圧力感知ペンへの対応、自動 Red Eye 機能、チャンネルを左右にシフトする機能、BPG (Better Portable Graphics) 画像ファイルの読み込みと書き出しへの対応を追加した。また、MIME デコーディングを改良し、Open Street Map 表示にマーカーを表示し、壊れた GPS データに対してファイルに GPS データがないと報告しないようにし、またノルウェー語ローカライズ版をアップデートしている。(Lemkesoft からも Mac App Store からも新規購入 $39.95、無料アップデート、234 MB、リリースノート、10.7+)

GraphicConverter 9.6 へのコメントリンク:

Mailplane 3.4.1 -- Uncomplex が Mailplane 3.4.1 をリリースし、ずっと以前からあった Streak 顧客関係管理プラグインでのクラッシュを解決した。この Gmail 専用電子メールクライアントはまた今回から Mailplane が画像変換を処理する方法を設定できるようになり、二本指のスライドジェスチャーでブラウズ履歴を行き来する機能に対応し、ホットキーを Compose Note to Self と Toggle Do Not Disturb に (Preferences > Shortcuts で) 定義できるようにし、エラーや接続の問題があれば (ステータスバーに "M" を表示して) 通知するようになった。(新規購入 $24.95、無料アップデート、34.3 MB、 リリースノート、10.7+)

Mailplane 3.4.1 へのコメントリンク:


ExtraBITS、2015 年 3 月 16 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週の ExtraBITS では、Adam Engst が The Tech Night Owl ポッドキャストで Apple の最新の発表について議論し、Google が新しい Chromebook Pixel を発表し、Apple が MagSafe から USB-C へ切り替えたことにより 12 インチ MacBook が危機に晒されていることが判明し、製品デザイナー Greg Koenig が Apple Watch の製造工程を調べ、Wall Street Journal があなたの近所のショッピングモールが Apple に乗っ取られると説明し、Josh Centers が The Dan Benjamin Hour で CIA による Apple ハッキングについて語った。

Adam、The Tech Night Owl で Spring Forward -- The Tech Night Owl Live ポッドキャストの最新エピソードで、Adam Engst がホストの Gene Steinberg と、Apple の "Spring Forward" イベントでの数多くの発表について語り合った。Apple Watch、12 インチ MacBook (特に USB-C と、新しいキーボード)、Apple TV の値下げなどが話題となった。

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新 Chromebook Pixel が 13 インチ MacBook Pro に挑戦 -- Apple の極めて小さい新型 12 インチ MacBook を狙うのではなく、Google の新しい第二世代 Chromebook Pixel は 13 インチ Retina ディスプレイモデル MacBook Pro に仕様の面でも価格の面でも直接狙いをつけている。(背景は 2014 年 2 月 24 日の記事“Google の Chromebook は立派な補助的ラップトップ”参照。)この Chrome OS ベースの新しいラップトップ機は MacBook Pro よりもほんの少し小さくて軽いが、12.85 インチ、2560 × 1700 の Retina 級タッチスクリーンを備え、さらに外付けの 4K ディスプレイを動かすこともできる。接続性の面では、充電用と周辺機器用に 2 基の USB-C ポート、2 基の標準 USB ポート、それに SD カードリーダーを備え、デュアルバンド 802.11ac ワイヤレスと Bluetooth 4.0 (残念ながら今回は LTE オプションがない) を持つ。バッテリ寿命は最大 12 時間で、720p ビデオカメラを内蔵する。二つのモデルがあり、一つは 2.2 GHz Intel Core i5、8 GB RAM、32 GB フラッシュストレージで $999、もう一つは 2.4 GHz Intel Core i7、16 GB RAM、64 GB ストレージで $1,299 だ。

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新型 MacBook は床に落下して壊れるか? -- 新型 MacBook では MagSafe がなくなって新しい USB-C が充電用の標準となったが、多くの Mac オーナーの頭にはこの Apple の最新のノートブック機ではケーブルに足を引っ掛けると悲劇が起こる危険があるのではないかと恐れが浮かんでいる。そしてその答はイエスだ。この MacBook は、充電ケーブルを引っ張るだけで机から落ちる。Macworld 記事で、Glenn Fleishman が見事なほど詳細なニュートン力学を駆使してその証明を与える。

コメントリンク: 15488

Apple Watch はどのようにして製造されるのか -- Apple Watch のデザインに興味を持てば、これが実際どのようにして製造されるのかという疑問がわくだろう。製品デザイナー Greg Koenig が書いた詳細なブログ記事に、その答がある。Koenig は Apple Watch の製造工程ビデオを細かく調べ、それぞれの工程を説明するとともに、材料について、また加工のテクニックについて解説を加える。

コメントリンク: 15487

Apple Store がモールで人々の行き来を動かす -- 伝統的に、ショッピングモールではいわゆる「アンカーストア」(核店舗) が集客力の中心となってきた。けれども従来型のデパートの果たす力が薄れ行くとともに、Apple がモールの中の人々の行き来を左右する大きな力となりつつある。Apple Store 一店でモールの売り上げを 10 パーセント引き上げることもあり、結果的に Apple は同等の規模の他の店舗に比べてずっと有利な賃料で契約できている。

コメントリンク: 15486

Josh Centers、The Dan Benjamin Hour で CIA のハッキングを議論 -- 編集主幹 Josh Centers が The Dan Benjamin Hour に出演し、CIA が Apple デバイスのセキュリティを破るため努力しているという暴露について議論した。Josh は、何が暴露されたかを概観し、平均的なユーザーが自らを守るために何ができるかについて(できることは大してないが)いくらか見識を示した。

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