TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1279/06-Jul-2015

他の TidBITS ライターたちは休暇中なので[訳者注: 7 月 4 日はアメリカ合衆国の独立記念日です]Josh Centers が一人で留守を守りつつ、Apple による OS X 10.10.4 と iOS 8.4 のリリースを伝える仕事を引き受けた。また少しずつ空き時間を見つけては、リリースされたばかりの Apple Music ストリーミングサービスの微妙な機能のいくつかについても紹介を書きつつ、来たるべき iOS 9 の中に次世代 Apple TV のヒントを探る試みもした。今週注目すべきソフトウェアリリースは、Voila 3.9、Typinator 6.6、GarageBand 10.1、iTunes 12.2、セキュリティアップデート 2015-005、Mac EFI セキュリティアップデート 2015-001、それに Safari 8.0.7, 7.1.7, 6.2.7 だ。

記事:

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Apple、OS X 10.10.4 でネットワークを改善

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

もし OS X 10.10 Yosemite にアップデートして以来ネットワーク問題に悩まされているのであれば、OS X 10.10.4 アップデートでその悩みが解決されるかもしれない。このアップデートでは、信頼性に欠ける discoveryd サービスが信頼性のある古くからある mDNSResponder に置き換えられている。分かり易い普通の言い方をすれば、これで OS X に安定したネットワークが戻ってくることを意味するはずである ("Apple のネットワーキング騒動" 7 May 2015 参照)。

10.10.4 は Software Update、或いは Apple Software Downloads から差分 (1.09 GB) そしてコンボ (2.02 GB) インストーラーとして入手可である。何時もの様に、何か大きな問題が生じないかどうか数日様子を見るのは賢いやり方であるが、もしネットワーク問題にこれ迄悩まされてきたのであれば、すぐにアップデートするのも一考の価値がある。最初にバックアップを取るのを忘れないように!

Photos の世界では、 Adam Engst が "iCloud Photo Library のアップロードを絞る方法" (20 May 2015) 及び "iCloud Photo Library アップロードに更に問題が" (19 June 2015) で指摘した同期問題が OS X 10.10.4 で解決されていることを我々としては望みたい。Apple は次の様な修正には言及している、"写真や動画を iCloud Photo Library に同期する時の信頼性を改善"、そして "iPhoto や Aperture ライブラリを Photos にアップグレードする信頼性を向上"。また 10.10.4 は Leica DNG ファイルをインポートする時に Photos がクラッシュすることがある問題を修正している。

その他 OS X 10.10.4 では、Migration Assistant の信頼性を向上、そして外部ドライブの中に正常に動作しないものがある問題にも対処している。また Mail での送信メールの遅れの問題、そして Web サイトが Safari で JavaScript 警告を繰り返しユーザーがナビゲート出来なくするのを許す問題も修正している。

企業顧客に対しては、OS X 10.10.4 は、ある状況下でディレクトリサービスに向けられた Mac が応答しなくなる問題を修正している。また、このアップデートでは、createmobileaccount コマンドラインを使ってモバイルアカウントを作成する能力が承認され、そして Profile Manager で、設定では不能にしているにも拘わらずユーザーがリリース前のソフトウェアをインストール出来てしまう問題も修正されている。

何時ものように、OS X 10.10.4 には数多くのセキュリティ修正が含まれている。

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Apple、iOS 8.4 を Apple Music と共にリリース

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Apple は iOS 8.4 を、同社が約束していた Apple Music サービスと共にリリースした。このアップデートは、Settings > General > Software Update 経由か、或いは iTunes を通じてダウンロード出来る。

iOS 8.4 で最初に気づくのは素朴な感じの新しい Music アイコンであろう。しかし、変わったのはアイコンだけに止まらない:Music アプリそのものが Apple Music を中心に再設計された。アップデートした後、最初に Music を起動すると、3 ヶ月無料の Apple Music の試行に申し込むかどうかを尋ねられる。もし嫌ならスキップ出来る。

今や Music に対しては二つの顔が用意されている。これは Apple Music に申し込むか否かによる。もし Apple Music に申し込めば、Music アプリは五つのビューを提供する:

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もし Apple Music が不能にされていれば、ビューは四つとなる:My Music, Playlists, Radio, そして Connect である。Radio と Connect は Apple Music の一部ではあるが、誰に対しても無料である。Apple Music のオンオフは Settings > Music > Show Apple Music で出来る。

Music には他の改善もあり、例を挙げると:MiniPlayer、これはアプリをナビゲートしている間も再生中のものに目を向けさせてくれる;Up Next、これは待ち行列にある音楽を見たり並べ替えたりさせてくれる;そして Recently Added、これは My Music に最近付け加えられた曲やプレイリストを表示する。

しかし、変わったのは何も Music だけではない;iBooks にもまた幾つかの大きな改善がなされた。iBooks は今やオーディオブックもサポートし、これを iOS 機器上の iBooks の中で購入したり、再生したりすることが出来る。また、iBooks Author ("Made for iBooks" としても知られる) を使って作成された本も今や iPad に加えて iPhone 上でも使える。本のシリーズを自分のライブラリから直接予約注文することも出来る。その他の改善には、iBooks Author を使って作られた本でのウィジェット、用語集、そしてナビゲーションのより良いアクセス、そして新しいデフォルトの Chinese フォントが含まれる。iOS 8.4 では、Hide Purchases と iCloud ブックダウンロードが働かなかった問題も修正している。

他のバグ修正では、iOS 8.4 は、ある特定のシリーズの Unicode 文字が機器を再起動させる原因となる問題を解決、GPS アクセサリが場所データを提供出来なくなるバグを修正、そして削除した Apple Watch アプリが自ら再インストール出来る問題に対処している。

何時ものように、沢山のセキュリティ修正がある。

我々は、初期の問題を全く耳にしていないので、時間がある時にインストールするのは問題ないと思われる。

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iOS 9 の中に次期 Apple TV の手掛かりを探す

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple TV の熱狂的なファンである私は、ちょっとがっかりしている。現行の第 3 世代モデルになって既に三年が経ち、もはや古びた感じが否めず、わが家のリビングルームの主役の座も Amazon の Fire TV に明け渡してしまった。私はこの夏を "Take Control of Apple TV" の改訂版の執筆に費やせるものと期待していたのだが、WWDC の基調講演でも Apple TV について新しいことは何も出て来ず、ただ $30 値下げされただけであった。Apple の新しい Apple Music サービスでさえ、今のところ Apple TV を完全に無視している。

以前 "Take Control of Apple TV" の最初の原稿を執筆していた最中にも、私の脳裏には Apple TV の新バージョンが出たらどう対処しようか、そうなれば書き直さなければならないだろうな、という不安が常に付きまとっていた。その後数ヵ月が経つが、今でも私は新バージョンを期待し続けているし、いろいろなポッドキャストでも、またここ TidBITS でも(2014 年 2 月 21 日の記事“Apple TV の未来”参照)そのことを議論し続けている。でも、何も出ない。どうやら私も、ドン・キホーテのごとくに長年 Apple からテレビが出るぞと叫び続けた Piper Jaffray のアナリスト Gene Munster みたいになってしまったというのか?

いや、そうではなかった。何かがもうすぐ出ようとしている。そして、そう判断できる手掛かりが、来たるべき iOS 9 の中に潜んでいる。ちょうど、Apple Watch に関する手掛かりが iOS 8 の中に見えていたように。でもその前に、まずは部屋の中に鎮座する象を追い出しておこう。その後には大掃除が控えているのだから...

Apple TV は死んだオウムじゃない -- まずは、Apple が Apple TV を終わりにしようとしているという考えを退けておこう。この 3 月に値下げされたのを整理のためと解釈することはできたかもしれないが、それから数ヵ月経った今も販売用の Apple TV はたくさん用意されている。(2015 年 3 月 9 日の記事“Apple、HBO との提携、より安価な Apple TV を発表”参照。)それに、もしも Apple の主たるリビングルーム用デバイスが 終わる運命にあるのだとしたら、いったいなぜ HBO を壇上に呼んで Apple の (短命ではあったが) HBO NOW 独占契約を発表する必要があったというのか?

Apple TV が死んだわけではないことを証明する手掛かりが一つ、来たるべき OS X 10.11 El Capitan の中に存在する。Safari の中での AirPlay 対応だ。もしも Apple が AirPlay ビデオを利用できる同社の唯一の製品を切り捨てるつもりだったならば、いったいなぜこの機能を追加したというのか? ましてや、WWDC の基調講演の中で、あるいは同社のウェブサイト上で、この機能を大々的に宣伝したというのか?

「でも、AirPort Express だって AirPlay 受信機として使えるじゃないか!」とおっしゃるかもしれない。それはそうだが、AirPort Express はビデオを扱わない。Apple は Safari における AirPlay 対応についてこう説明している。「Apple TV を使って、デスクトップ上にあるほかのものを映すことなく、ウェブページの ビデオ だけをあなたのテレビに映し出せるようになります。対応するウェブ ビデオ に表示される AirPlay アイコンをクリック。すると、すぐにその ビデオ を大画面で楽しめます。」ビデオという単語を強調したのは私だが、それは Apple がその単語を三回も持ち出したからだ。おそらくその機能はオーディオストリームにも対応するだろうが、明らかに強調されているのはビデオであって、市場にある Apple 公認の AirPlay 受信機はたった一つ、Apple TV のみだ。

まだ納得して頂けないだろうか? 確かに Safari チームは必ずしも Apple TV チームに向けて語っているのではないだろう。ひょっとすると Apple TV は既に安息の場を目指していて、Safari 担当の人たちがそれを知らないだけかもしれない。でも、マーケティングのチームは間違いなく情報に通じているはずだろう。少なくとも、AirPlay に触れるかどうかの判断には十分な根拠があったはずだ。

さらなる証拠もある。iOS 8 の遅れに遅れていた家庭オートメーション用フレームワーク HomeKit は、そのゲートウェイデバイスとして Apple TV を利用する。HomeKit についての Apple のサポート書類には次のように書いてある:

第 3 世代以降の Apple TV (ソフトウェアバージョン 7.0 以降を搭載) をお使いの場合は、外出先からでも iOS デバイスを使って HomeKit 対応アクセサリを操作できます。

iOS デバイスと Apple TV で同じ Apple ID を使って iCloud にサインインすれば、Siri コマンドを使って、アクセサリをリモートから制御できるようになります。リモートアクセスが使えない場合は、Apple TV 上でいったん iCloud からサインアウトして、それからもう一度サインインしてください。

HomeKit が発表されたのは一年前だが、ユーザーが使えるようになったのはつい最近のことだ。だから、もしも Apple TV が消え去る運命にあるのならば、いったいなぜ Apple は Apple TV を HomeKit の家庭内ゲートウェイにしようとするのか? いくら Apple が奇妙な決断をしたことがあるとしても(Monty Python の「死んだオウム」の引用から映画 "The Princess Bride" の引用に切り替えれば)それは「あり得ない (inconceivable)。」

さらにもっと奇妙なのが、いったいなぜ Apple TV がゲートウェイとして使われようとしているのかという疑問だ。AirPort ベースステーションは既にインターネットゲートウェイとして使われているのだから、これをゲートウェイに使った方が理に適っているのではないか? 私が思うに、この HomeKit こそ、これからもっと大きいものが Apple TV にやって来ることを示す手掛かりではなかろうか。

まだ納得して頂けていない方もおられるかもしれない。まあ、ここまで言って信じてくださらないのなら、何をしても無駄なのだろうと思う。でも、それならばなぜ Apple が最近になって Apple Store の中で (長年にわたり埋もれていた) Apple TV に独自のセクションをわざわざ作ったのか、説明して頂きたいものだと思う。そして、こうも考えられないだろうか。Apple TV は、あなたのテレビに iTunes コンテンツを表示させるための安価な、ユーザーフレンドリーな手段に過ぎないのだと。人気度や収益度を度外視しても、Apple のエコシステム全体の中で重要な部品となっているのだと。それに Apple は今でもまだ数多くの Apple TV を出荷していて 、その台数は Roku、Google、あるいは Amazon のいずれのデジタルメディアストリーミングデバイスよりも多いのだ。

いや、Apple TV は死んだのではない。今はただ休んでいるだけだ。

その手掛かりは -- Apple TV が墓場に横たわる運命にないのだとすれば、その未来はどこにあるのか? Apple がオペレーションシステムについて最近発表した内容を見れば、そこにたくさん手掛かりがある。

Apple は引き続き OS X と iOS を同時にメンテナンスするため苦闘しているところだが、そのオペレーションシステム同士の間に相互作用を築くやり方を見出している。一つのプラットフォームで開発された機能が、後日別のプラットフォームにも移り行く。その最も明白な実例が Mac OS X 10.7 Lion であった。そこでは iOS の多くの革新が「Mac への帰還」を果たしたが、最近の例を見れば Force Touch 機能が Apple Watch から MacBook シリーズへ移行している。次期 iPhone が Force Touch に対応するのもまず間違いないだろう。

iOS 8 は、Apple のウォッチに向けた野心について多くの手掛かりを提供した。ウィジェットや、インタラクティブな通知や、音声メッセージ、健康機能、それから Handoff 機能も、すべて watchOS の重要な諸相の前兆となった。もちろん iOS 8 のすべての機能が watchOS に登場したわけではないが、例えば連絡先ショートカットやアプリ切替など、Apple が何を考えているかを指し示すものたちもあった。

ちょうど iOS 8 が Apple Watch への手掛かりを提供したように、iOS 9 には Apple が次世代の Apple TV について何を考えているかを示す手掛かりが含まれていると私は思う。

Apple TV のようなストリーミングボックスに対して寄せられる苦情の中でも最大のものは、検索が面倒だという点だ。例えば、とても優れた、しかし最近になって終了が決まったドラマ "Hannibal" を観たいと思ったとしよう。けれども Apple TV にはシステムワイドの検索機能はないので、個々のアプリを開いてそれぞれの中でその番組があるかどうかを調べなければならない。いろいろ調べてみれば、その番組が iTunes で販売中であること、最近のエピソードならば Hulu Plus で観られることが分かるだろう。けれどもそれには結構労力がかかる。

多少とも状況が良くなっているのが Fire TV だ。ここにはシステムワイドの検索も、音声検索もある。だから、単語一つで、"Hannibal" が Prime Instant Video から入手できると分かる。でも、Prime に登録されていない番組はどうか? これはもっと複雑なことになる。Amazon で検索することで、Hulu Plus にある番組には導かれるけれども、Netflix の番組ではそうはならない。

ありがたいことに、iOS 9 では解決法が提供される。アプリ内検索だ。新しい Spotlight API のお陰で、開発者たちがそれぞれのアプリのデータをシステムワイドの検索に結び付けることが可能となる。例えば、Spotlight で "bacon" を検索すれば、Paprika アプリの中にあるベーコンを使った料理のレシピがたくさん出てくるだろう。

それが Apple TV ではどんな素晴らしいことを起こすのか? アプリ内検索を使えば、たった一つの検索ボックスを使って "Hannibal" が iTunes、Hulu Plus、それに Amazon Prime Instant Video でこの番組が観られると分かる、というわけだ。そう、確かに最後のは拡大解釈かもしれない。でも夢を見ることくらい許されるだろう?

iOS 9 のもう一つの新しい検索機能が Siri Suggestions だ。一番左の画面にスライドして Search に入れば、iOS 9 が即座に多数の提案をしてくれる。例えば、最近使った連絡先、最近使ったアプリ、近所にある店、最新のニュース項目、といったものだ。

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Siri Suggestions が Apple TV に登場するところを、想像してみようではないか。Search を開けば、最近観たテレビ番組、お薦めの番組や映画、さらには(もしも Apple Music を購読していれば)お薦めの音楽などが表示される。Apple TV 上の提案機能には、独自のニュースセクションがあってもよいだろう。その日のトップニュースへの、ビデオリンクが表示されるというのはどうだろうか。

Siri といえば、Apple TV で使えるかもしれない興味深い機能が iOS 9 でいくつか追加された。Siri で、写真やビデオが検索できるのだ。例えば、"Show me photos from San Francisco" とか "Show me videos from August 2013" とか話しかけることができる。これに iCloud Photo Library を組み合わせれば、Apple TV 上のとても便利な機能になるだろう。また、iOS 9 であなたが現在見ているものをあとで思い出させてくれるよう Siri に命ずることもできる。例えば Apple TV 上で映画のリストを表示させながら、Siri に "Remind me to watch this later" と言えるようになれば素晴らしいではないか。

iOS 9 の新しい iPad 用機能に picture-in-picture があるが、Apple TV でもこの機能は自然に使えるだろう。iPad 上で iOS 9 の中でビデオを観ている最中に Home ボタンを押せば、ビデオの再生は続くけれどもそればスクリーン右下端の小さなウィンドウの中に縮小表示される。このウィンドウは移動したりリサイズしたりでき、またウィンドウ内のコントロールを使ってビデオの再生や一時停止も、フルスクリーンへの復帰もでき、ウィンドウを閉じることもできる。Apple TV にもこの機能があれば便利だろう。ビデオの再生を続けつつ、インターフェイスのあちこちをブラウズしながら次に何を観るか探すことができるのだから。

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iOS 9 以外に目をやれば、ベータ版の OS X 10.11 El Capitan にもまた、次期 Apple TV の手掛かりとなる可能性のあるものが含まれている。9to5Mac の Mark Gurman が発見したのは新しい Apple Remote の機能に言及している設定ファイル で、そこにはマルチタッチのトラックパッド、赤外線センサー、そしておそらくは Force Touch に関する設定項目がある。このようにデバイスへの言及が隠されているところは以前にも発見されたことはあるし、多くの場合それらは来たるべき製品をかなり正確に指し示すものとなってきたのではあるが、あまり過度な期待はかけまいと思っている。

それで、その新しい Apple TV ってどこにあるの? -- Apple が Apple TV を殺してはいないとして、その代わりに何年もかけて何か新しいもの、たぶん画期的なものを開発してきたのだとすれば、いったいその製品はどこにあるのだろうか?

噂に基づいた私の推測だが、時間がかかっている理由はコンテンツ提供者との間の交渉が難航しているからではないだろうか。あの噂とこの噂を繋ぎ合わせた仮想の物語を言えば、Apple はもともと次期 Apple TV にケーブルボックスとしての挙動をさせることを計画していたようだが、ケーブルテレビの会社、とりわけ Comcast との交渉がうまく行かない。そこで Apple は Sling TV 風のサービスに基づいたものへと Apple TV を転換させ、今年の WWDC 基調講演でお披露目する段取りにする。ところが最後の最後の段階になってコンテンツプロバイダ各社との交渉が頓挫した、というわけだ。(Sling TV について詳しくは 2015 年 2 月 20 日の記事“FunBITS: Sling TV はコードカッター向け”参照。)今回 Apple Music の導入にこれほど長くかかり、行き当たりばったりの印象を与えているのは、Apple TV がまだ姿を現わしていないのが原因だと臆測する人たちもいる。私はその意見にあまり賛成でない(Apple は自らのイベントの予定を自由に組むことのできる立場にいるからだ)が、基調講演の内容が間際になって変更されたことがちょっとした混乱を招いたという話はうなずける。

今述べた物語にどの程度の信憑性があるのかは分からないが、一応筋は通っている。Apple は何年も前から同じソフトウェアを搭載した新型の Apple TV を出すことが簡単にできたはずだ。けれども Apple は通常、新たなハードウェアと共にソフトウェアの物語も語りたがるものだ。それにテレビにおいては、コンテンツこそ何より重要だ。テレビのビジネスにおけるコンテンツと配給の側面は昔から複雑なことで悪評が高く、しかもあらゆるメディア会社は Apple が機会さえあればすべてを自らの手で掌握してしまうのではないかという不安を持つだけの立派な理由を持っている。

でも、政治力学の話はもう十分だ。ここでは、読者たちが私に繰り返し問い続ける質問に答えておきたい。Apple TV を今すぐ買うべきなのか、それとも待つべきなのか、という質問だ。

Apple はもはやいつ新型 Apple TV をリリースするかもしれず、もしそうなれば $69 出して買った旧型はたちどころに使えないものになる、という不安がその質問の背景にある。可能性が高いのは、もしも Apple が新型 Apple TV を今年リリースするとすれば、それは 9 月だろうという予想だ。つまりは、新型の iPhone と iPad のリリース時期に合わせて出るだろうということだ。この記事を書いている時点で、それはおそらく二ヵ月後ということになる。

私はこの質問をお返ししよう。あなたは、今すぐ新型 Apple TV を必要としているのだろうか? Apple TV にできて他のどのセットトップボックスにもできないことが二つある。iTunes Store にあるビデオコンテンツを再生することと、AirPlay 受信機として挙動できることだ。(たいていのセットトップボックスに対して AirPlay ハックが存在しているが、信頼できるものを見つけるのは難しい。)これらの機能をできるだけ早く使いたいというのであれば、迷わず今すぐ $69 出すとよいだろう。たとえ新しいモデルがリリースされたとしても、その古い第 3 世代モデルは今後何年間もそれらの機能を提供し続けてくれるだろうからだ。(そうは言っても、私なら第 2 世代の Apple TV を第 3 世代モデルへと買い替えようとは思わない。アップグレードが費用に見合ったものではないからだ。)

結局のところ、Apple ハードウェアの世界で $69 ははした金に過ぎない。たとえあなたが数ヵ月後に $99 で新しい Apple TV を買うことになったとしても、あなたが払うお金は税抜きでたった $168、それは Apple Watch に比べてさえ大した額ではない。それに、二台目のテレビがあれば古い Apple TV も便利に使い続けられるし、オーディオ用 AirPlay 受信機として使うこともできるだろう。もちろん、あなたが次期 Apple TV を気に入らないかもしれないし、あるいはその新機種が重大な初期バグに苦しめられるかもしれない。既存の現行機種の Apple TV は、多少埃にまみれているにせよ今も問題なく走っている。

もしもあなたが iTunes ビデオも AirPlay も必要としないなら、そして何か新しいものを使いたいなら、他の選択肢を探すことをお勧めする。Roku の製品を薦める人は多いし、私は記事“Fire を一緒に観よう: Amazon Fire TV 対 Apple TV”(2014 年 5 月 13 日) を書いて以来 Fire TV がだんだん好きになってきている。

でも、私は AirPlay がないのは嫌だし、Apple Watch でテレビをコントロールできるのが好きだ。だから Apple よ、いったいなぜ遅れに遅れているのかは知らないが、どうか早く問題点を解消して、お願いだから今年中には、皆が新型の Apple TV を持てるようにしてくれないだろうか!

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Apple Music ツアー

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Apple Music は大きなファンファーレとともにスタートし、iOS と Mac のユーザーたちに対して、iTunes Store からの音楽ストリーミングと、複数のデバイスにわたる既存の音楽ライブラリの iCloud ベースの同期、ストリーミングラジオ放送局 Beats 1、それからアーティストたちとやり取りできる Connect サービスへのアクセスを提供した。

あなたが iOS 8.4 で Music アプリを開くやいなや、この新しい音楽ストリーミングサービスに参加しませんかと招待する言葉が表示され、三ヵ月の無料試用期間が誘因として提供される。

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当然ながら、ここではあなたがまさにその試用をしたという前提の下で話を進めよう。だって、そうしない理由があるだろうか? だから、ここでは詳しい使い方の手引きやレビューなどで皆さんを退屈させることは控えたい。なぜなら、ほとんどのことは一目瞭然で、このサービスがあなたのために役立つものかどうかはあなた自身が容易に判断できるだろうからだ。

しかしながら、Apple Music に関する すべて が一目瞭然な訳ではないし、それに正直言って WWDC の基調講演で Apple はまともな説明を提供できなかった(2015 年 6 月 8 日の記事“Apple が Apple Music サービスを発表”参照)ので、ここに Apple Music に関するヒントや見解をたっぷり書き綴ることが、三ヵ月の無料試用期間を最大限に活用できる助けになればと思う。

個人か家族か? -- Apple Music にサインアップする際に、あなたは一つの決断をしなければならない。月額 $9.99 の個人会員となるか、それとも月額 $14.99 のファミリー会員になるかの選択だ。

考慮すべきは次のような点だ。ファミリー会員の場合は、最大 6 名の人たちがあなたの Apple Music 会員権を共有でき、それぞれの人が独自のプロフィールや環境設定を維持できる。ただしそこには大きな条件がある。共有ができるのは、あなたの Family Sharing の仲間になっている人たちのみだ。

記事“iOS 8: TidBITS があなたの質問に答えます”(2014 年 9 月 17 日) で説明した通り、Family Sharing は App Store、iTunes Store および iBooks Store での購入を近しい家族の中の最大 5 名までの他の人たちと共有できる機能だ。けれども iTunes Match は含まれていないし、他にも難点がある。それについては Mac ブロガーの David Sparks が書いている

もしもあなたの家族の中の複数の人たちが Apple Music を使いたければ、ファミリー会員となるのが一番簡単だ... ただし Family Sharing を使っていない、あるいは使いたくないという場合は別だ。その場合には少々複雑な計算をすることになるだろう。もちろん家族の一人一人が別々に個人プランを持てば簡単だが、一人あたり月額 $9.99 なので、すぐに費用がかさんでしまう。

例えば、夫婦で音楽の好みが一致していれば、一つの個人アカウントを二人で共有すればよいと思われるかもしれない。でも、個人会員は同時に一つのデバイスでしかストリーミングが受けられないので、二人が音楽を(別々の場所で、または別のデバイスで)聴きたい時間帯が重なると具合が悪いことになる。

自動更新はオフにする -- 三ヵ月間の無料試用とは Apple も気前が良いが、そこにはある種ずるいところもある。デフォルト設定では、試用期間が過ぎると自動的に課金が始まるようになっているからだ。その設定をオフにするには、iOS では次のようにする。

  1. Music アプリを開き、左上の頭のアイコンをタップする。
  2. View Apple ID をタップする。
  3. あなたの Apple ID パスワードを入力する。
  4. Subscriptions の下にある Manage をタップする。
  5. Your Membership をタップすれば、Active 状況が表示されるはずだ。
  6. Automatic Renewal を無効に切り替える。

あるいは iTunes で次のようにしてもよい:

  1. Account > View Account を選ぶ。
  2. Settings の下の Subscriptions で対応する Manage リンクをクリックする。
  3. Your Membership の右にある Edit をクリックする。
  4. Automatic Renewal のところで Off を選ぶ。
  5. Done をクリックする。

やれやれ、何てたくさんの手順が必要なことか! 「ステップ 3 なんかどこにもない」と言われていた時代は、もう昔のことなのか?

忘れないで頂きたいが、たとえ Apple Music を使い続けないとあなたが決断したとしても、Beats 1 と Connect は無料であり、引き続き利用できる。

音楽の裏側に -- iOS には、Settings > Music の中にあなたの興味を引くと思われる設定項目がいくつかある。

まず第一は Show Apple Music だ。これで Music アプリの中の Apple Music インターフェイスのオンオフを切り替える。記事“Apple、iOS 8.4 を Apple Music と共にリリース”(2015 年 6 月 30 日) にも書いたように、Music アプリは二種類の異なるインターフェイスを持ち、Apple Music が有効となっているか否かでインターフェイスが切り替わる。だから、もしあなたが何らかの理由で「普通の」Music インターフェイスに戻りたいと思えば、このスイッチで簡単にできる。

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第二は iCloud Music Library だ。これを有効にしようとすると、何らかのトラブルでうまく行かないかもしれない。Apple のサーバが過負荷になっているのが原因だ。あきらめずに粘れば、いずれは有効に切り替わるだろう。でも、これは何をするのか?

iCloud Music Library は基本的に、iTunes Match の後任と言うべきものだ。ただし、iTunes Match も引き続き別の製品として提供される。名前から想像できる通り、iCloud Music Library は音楽における iCloud Photo Library に相当するものだ。あなたが一つのデバイスで何らかの楽曲やプレイリストを My Music に追加すれば、自動的にあなたの他のデバイスにもそれが同期される。少なくとも理論的にはそうなる。私が試してみたところかなりうまく働いた。私の音楽すべてをアップロードまたはマッチし、iCloud Photo Library のように私のインターネット接続を渋滞させることもなかった。

私は何ヵ月も前に iTunes Match 購読を止めたが、どうやらその当時のトラックがまだ iCloud に保存されているようだ。なぜなら、iCloud Music Library がそれらのトラックを私の iPhone に同期してくれたからで、それは iTunes アップデートが到着するより以前のことであった。

でも、そこには一つ大きな問題点があって、それこそが iTunes Match が今もまだ存在し続けている理由だ。問題は、iCloud Music Library がトラックを同期する際、それらの新しいファイルには DRM (デジタル著作権管理) の枷がはめられており、あなたの Apple Music 会員権が期限切れになれば消滅するようになっている。だから、もしもあなたが音楽ライブラリをアップロードして、何らかの理由でそれを削除し、その後に Apple Music の購読をキャンセルすれば、たちどころにあなたの手許には一切何の音楽ライブラリもなくなってしまう。あるいは、たとえ Apple Music の購読をキャンセルしなくても、もしもあなたが自分のメインの音楽ライブラリを削除してしまえば、あなたが iCloud Music Library から入手するものにはすべて DRM が付いてくる。言い替えれば、あなたのメインの音楽ライブラリを決して削除してはならないし、iCloud Music Library をバックアップと考えてはならない。これは、バックアップではないのだ。

iCloud Music Library に関する良いニュースは、このサービスがあなたの家族の中の Family Sharing に参加している人たち全員に提供されていることだ。だから、さきほど述べた iTunes Match が Family Sharing に含まれないという問題が、これで解決される。

カスタマイズ、カスタマイズ -- For You 表示には、あなたの好みに合うよう誂えられたアルバムやプレイリストが提案される。まず手始めに、ボタンをタップしてどのジャンルが好きか嫌いかを Apple Music に伝えよう。もしも Apple Music の先祖の Beats Music を使っていたなら、この画面に見覚えがあるだろう。ジャンルのバブルを一度タップすればそれが好きだということで、そうするとバブルは膨らむ。もう一度タップすればそれが大好きだということで、バブルはさらに大きくなる。あるジャンルを iOS から完全に除外したければ、バブルを押してそのまま押さえ続けると、カウントダウンが現われ、最後までカウントされればバブルが消える。iTunes では、ボタンの上の "x" をクリックすればよい。誤って消してしまっても、Reset をタップすれば一からやり直せる。

次に、同じくバブルのインターフェイスを使って、特定のアーティストに対する好みを表明するよう求められる。私はこの部分に不満がある。ごく限られたアーティストしか選択肢に現われず、ほとんどが私が聴く範囲外であったからだ。確かに、Jimi Hendrix は好きだし、Van Halen も悪くはないが、彼らは私が毎日聴くようなアーティストではない。

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ありがたいことに、Apple Music は見掛けよりも賢い。私が Hendrix やカントリーが好きだと見て取ると、多分 Johnny Cash や Willie Nelson も好きだろうと推察してくれる。でも、戸惑ってしまうような提案が出ることもあるので、今後さらに改善してくれるよう願いたい。例えばデザイナーの Khoi Vinh など、もっと否定的な印象を受けた人たちもいる。彼は、Apple が私たちの音楽的嗜好についてどれほど多くのデータを知り得る立場にいるかを考えれば、最初からもっと良い仕事ができなかったのががっかりだと述べている。

時間が経ってあなたの嗜好が変われば、少なくとも iOS の Music アプリではそれを再調整できる。左上の頭のアイコンをタップして Choose Artists For You をタップすれば、設定の変更ができる。

また、設定をその場で調整することもできる。曲かプレイリストの上に見えるハート形をタップすれば、それを好きだと Apple Music に伝えることができる。このハート形は、今や Apple の音楽プラットフォームに共通の目立つアイコンとなっていて、iTunes も、さらには Apple Watch の Now Playing グランスさえもこれを使っている。

残念ながら、お気に入りの曲やプレイリストをリストしたものは提供されない。楽曲を自分の音楽コレクションに追加するには、+ ボタンをタップするか、あるいは ... ボタンをタップして Add to My Music を選ぶかする必要がある。私は Apple がこれら二つのボタンを統合すべきだったと思う。その曲を私が気に入ったら、どうしてそれを自分の音楽コレクションに加えたくないと思うだろうか?

3 千 5 百万も楽曲があっても聴くべきものが何もない -- 記事“Pandoland 訪問記: Silicon Valley が Music City と出会う場所”(2015 年 6 月 20 日) の中で、Rdio の Marc Ruxin が音楽ストリーミングサービスの直面する最大の難問として「3 千 5 百万も楽曲があっても聴くべきものが何もない」と言ったと紹介したのを覚えておられるだろうか。彼が言いたかったのは、好きになれる音楽は自力で探せとユーザーたちが放置されている点だ。

Rdio や Spotify その他の音楽ストリーミングサービスと同様、Apple Music もいったん購読を始めれば何でも好きなものを聴くことができるが、そこにはいくつか制限がある。Apple Music がどれだけのトラック数を提供するのかについて(iTunes Store のフルカタログを提供するわけではない)Apple は語りたがらないが、私の見るところどの競争相手と比べても(より優れているとは言わないまでも)同等程度に優れていると思う。既に Apple Music にはいくつか独占提供のものがある。例えば Dr. Dre の "The Chronic" や Taylor Swift の "1989" などは、他のどのストリーミングサービスにもない。また、従来は Spotify のみにあった Led Zeppelin もある。けれども The Beatles はまだない。

あなたがアーティストを見つけると、以前の Beats Music と同様 Apple Music もそのアーティストの詳細な情報と、類似のアーティストのお薦めを表示する。

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けれども Apple Music はさらにもう一歩進んで、あなたが聴くべきものを見つけ出そうと試みる。そしてこの点こそ Beats Music 以来の伝統が輝くところだ。さきほど述べたように For You セクションにはパーソナライズされた推薦が表示される。新たに追加されたコンテンツを寄せ集めにした New セクションもある。iTunes Radio も、まだある意味そこにある。ただし、これは(後述するが)いくつかの機能が抜け落ちてしまっている。

人の手間をかけて作られたプレイリストは Beats Music の売りであったが、それはここにもまだある。だから、"Intro to Taylor Swift" でアーティストの作品を概観できる。利用可能なプレイリストは何千もあるが、中には信じられないほど具体的なものもある。例えば "Somethin' 'Bout a Truck: Country Pickup Truck Songs" とか "Workout Anthems - Rock" とかいったものだ。いろいろと探し回れば、きっと大好きになれるプレイリストに出会えるだろう。

それにまた Beats 1 もある。これは、全世界に向けて放送される、人の手間をかけてキュレーションされたライブのラジオステーションだ。

Beats 1 が Video Star を殺した -- Apple Music のさまざまの機能の中でも、Beats 1 こそ最も魅力的なものかもしれない。ただしアイデアそのものは非常に古い。人間の DJ が世話をする、ライブのラジオ局だ。

多くのオンラインの競争相手たちは、Beats 1 を見て目を丸くして、Apple は今や FM ラジオを「発明」するつもりかと冗談を飛ばした。私は仕事机の上にアナログの Sony 製ポケットラジオを置いているようなタイプの人間なので、そういう文句たらたらのコメントは的外れだと思っている。

たぶん、大学の学内ラジオを別にすれば、ラジオ局で実際に DJ が曲を選んでいるものをあなたが聴くのは数十年ぶりではないだろうか。多くのラジオ局が合併統合されるにつれて、音楽を選択する権利が DJ の手から取り上げられ、その代わりにコンピュータのアルゴリズムや、大手レコード会社のマーケティング部門が選んだ曲が放送されるようになってしまった。ラジオから流れる曲に驚かされることなどめったにないだろう。私が住むナッシュビルあたりでは、カントリーミュージック専門局のいくつかはあまりにもあらかじめ決まった予定を使っていて、文字通り時計(ウォッチ)に予定をセットできるくらいだ。

けれども Beats 1 は予想外のものをもたらしてくれる。たまたま、私は Zane Lowe の Beats 1 初登場を耳にすることができた。Lowe は最初の曲をかける前に、まずは Beats 1 の哲学について簡潔に説明した。「これは派手なファンファーレのためのものではない。そんなものは見かけ倒しの花火で、翌日にはもう遺物になってしまう。これは、品質第一、一貫性第一の放送だ。」そうして彼は、Beats 1 の第一曲として Spring King の "City" をかけた。

驚くべき選曲だった。この曲を聴いたことのあったリスナーは少なかったろうと思う。その次に彼は Beck の新しいシングル "Dreams" をかけ、その後には AC/DC の "For Those About to Rock" を持ち出してみせた。その初日の間中、私はひっきりなしに Beats 1 を聴いていたが、次にどんな曲がかかるかは全然予想がつかなかった。時にはヒップホップ、時にはエレクトロニカがかかった。カントリーやジャズ、クラシックは一つも聴けなかったが、どこかでそういうものが一曲まぎれ込んでも私は全然驚かなかったろう。

人々が「Beats 1 は私の好きな曲を全然かけてくれない」と言うのをよく聞く。私に言わせれば、それは "Where's my parade?" と言っているのと同じことだ。Beats 1 でかかる曲をすべて好きになることはないだろうが、それこそまさに要点なのだ。(もちろん、Beats 1 でかかる曲の大多数が嫌いな人なら、二度とこの放送局を聞こうとは思わないだろうが。)Beats 1 が存在しているのは、Beats 1 がなければ存在を知らなかったであろうものにあなたが触れられるようにするためだ。あなたの音楽の好みが極めて限定的なものであるならば、他の選択肢が Apple Music にはたくさんある。

Beats 1 を胸踊るものにしているのは、個性だ。素晴らしいメディア事業は皆そうだが、初めのうちは荒削りなところが感じられるものだ。プレイリストは場当たり的で、DJ の言うことはまともでない、例えば「君たちみんなを連れて、ヘッドフォンの一瞬を味わわせてやるぜ」みたいな単なる思い付き言葉だけ、それに加えて真の Apple 流儀と見えて、初日のど真ん中に機能停止まであった。これは世界最大の会社の手によるメディア事業のようには全然感じられず、むしろ場末の海賊版ラジオ局みたいだ。つまり一言で言えば、楽しい。

もう一つ素晴らしい点がある。ソーシャルな側面だ。Beats 1 ではたった一つだけの体験を皆で共有するので、今聴いているものについての会話を Twitter や Facebook へ行ってすることができる。今日のように細分化されたメディアの世界では、何百万人もの人々のために共有化された体験を提供できる会社は Apple を含めてほんの少数しかないのかもしれない。

私はまた、Beats 1 が Apple Music の本拠地として挙動できることにも気付いた。何を聴きたいかを考えたくもなければ、私は Beats 1 を呼び出す。

Beats 1 は全然 Apple らしくないという声もよく聞くが、私は賛成できない。これは、テクノロジーと人間らしさを完璧に混ぜ合わせたものであって、それこそ Apple の核心そのものではないか?

他のどんなラジオ放送局とも同じように、楽曲をリクエストすることができる。Apple World Today が、曲をリクエストするさまざまの方法をリストしている。Twitter のハッシュタグで、iMessage で、さらには昔ながらの電話でのリクエストもできる。

Beats 1 のもう一つの素敵な呼び物は、シンガーソングライター St. Vincent が司会する週一回の番組だ。この番組では、彼女が幸運な一人のファンをランダムに選び、その人のためだけのカスタムプレイリストを彼女本人が作ってくれる。これ以上のパーソナライズがあるだろうか?

一つ注意しておくと、Beats 1 は演奏する楽曲から露骨な内容のものを検閲する。不満を言う人もいるが、私は賢明なやり方だと思う。子供たちが同乗している車の中で両親が Beats 1 をかけることができるし、店舗の中でも顧客の気分を害することなく Beats 1 をかけることができる。露骨な内容の楽曲を聴きたいなら、Apple Music で検閲なしの曲を見つければよい。

ようこそ Connect、わが懐かしの Ping よ -- Apple Music の最後の大きなコンポーネントは Connect だ。これは、あなたが好きなアーティストをフォローできる、ソーシャルネットワークだ。その最初の具現化であった Ping を覚えておられるだろうか?

Ping は成功を見ないうちに短命に終わったし、今日でもまだ冗談の的となっている。けれども Ping のコンセプト自体は悪いものではなかった。ただ、実行の方法がとんでもないものだったというだけだ。大して価値もないがらくたをたくさん、iTunes に追加してしまった。私と妻はお互いに好き合っているが、お互いに非常に違った音楽の趣味を持っている。なので私たちはお互いに相手が何を聴いているかをめったに気にしたりしない。

Connect は、Ping よりも控え目だ。まず第一に、独自の枠の中に収められているので邪魔にならない。第二に、まだあまり多くのものが入ってはいないが、そこにあるものは実際とても興味深い。例えば、Apple Music の背後にいる頭脳の一人である Nine Inch Nails の Trent Reznor は、彼のアルバムのインストルメンタル版や、コンサートのビデオ、また彼自身と Lou Reed が映っている舞台裏の写真などを Connect に投稿した。いずれも世界を揺るがすようなものではないが、熱烈な Nine Inch Nails ファンを大喜びさせた。

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最初の設定では、Connect があなたの iTunes ライブラリの中で見つけたすべてのアーティストを自動的にフォローする。あなたがフォローする相手を iOS で変更するには、左上の頭のアイコンをタップして、Following をタップする。ここで、自動的にアーティストをフォローする機能を止めることができ、また他のアーティストやキュレーターを見つけたり、アーティストをフォローから外したりもできる。

幸いにも、Connect を使おうとは思わないという人は、Settings > General > Restrictions > Apple Music Connect で完全に無効にできる。ここでは制限を有効化することになるが、そのこと自体はあなたが個々の制限をすることが可能になるという以上の意味を持っていない。Apple Music Connect を無効にすれば、Connect タブがより便利な Playlists タブに変わる。

欠けている機能 -- Apple Music は基本的には iTunes と Beats Music の隠し子なので、その子が両親の機能全てを受け継げないのは当然であろう。

Beats Music の独自の機能の一つであった The Sentence も Apple Music には無い。皆さんは "FunBITS: Beats Music は何が違うのか" (16 May 2014) の記事を覚えておられるかもしれないが、The Sentence は Mad Libs 風のインターフェースの中で空白を埋めていくことでカスタムプレイリストを作成させてくれる。例えば、"I'm in the club and feel like saving the world with no regrets to indie (私はクラブにいる、インディ無しでも世界は救えると思えるよ)" と言った具合である。私には何故 Apple がこれを落としたかは理解出来るが、と言うのもそれは小説のように不可解だから、それでも、落とされたのは残念である。いつの日か、Apple がこれに Siri サポートをつけて復活させてくれることを望みたい。

私が恋しく思うもう一つ Beats Music の新機軸は、巻き戻しと早送りに使う再生/一時停止ボタンの周りに配置された円形のスクラバーである。再度、Apple が何故これを落としより親しみのあるものの方を取ったか理解は出来るが、私はこれが好きだった、何故ならば、昔の iPod のクリックホイールを思い出させるからである。

私が残念に思う無くなった機能がもう一つある。iTunes Radio を覚えていますか? これは Apple の Pandora クローンで、特定の曲やアーティストに関係した音楽を再生する。これは今でも存在はしているが、殆ど認識出来ない。以前は、新しい局を加えることから始めて、好きなアーティストか曲を決め、そして自分の局を作成出来たのだが、今ではそれがそれ程自明では無い。しかし、心配することは無い;あなたの既存の局はそこに残っている。

今でもカスタム局は作成出来るが、それをやるには、アルバム、アーティスト、或いは曲を検索し、下方にスクロールし Stations ヘッディングまで行き、それからその局を選択する。例えば、Pixies の "Where Is My Mind?" に基づいた局を作りたければ、その曲を検索し、下にスクロール、そして Stations ヘッディングの下で Where Is My Mind? Radio をタップする。或いは、今聞いている曲から局を直接作ることも出来る。これらのカスタム局では、星 (ハートマークに置き換わった) をタップして、その局がその様な音楽をより少なく、或いはより多く演奏するよう調整出来る。

カスタム局を即座に作るもう一つの方法がある:Siri である。Siri に "play AC/DC radio" というようなことを言うだけである。実際、Apple Music に関する最善のことはその Siri 統合で、"play Beats 1" や "play 1989" の様なコマンドが使えるようになる (後者の場合その曖昧な名前にも拘わらず、Siri は Taylor Swift の新しいアルバムだと正しく推測した)。

トラックを好きだとすること以外は、以前 iTunes Radio にあった豊富な編集オプションは無くなってしまった。例えば、ロック局から Nickelback は除外したい場合は? 残念でした、お気の毒、悲しいですね。これは大きな後退である。しかも明白な理由も無いのに。

こんがらがることに、Apple は人間が企画する局を追加したのである。例を挙げると、Pure Pop や The Mixtape とかだが、これらはカスタマイズ出来ない。

Jim Dalrymple が、 Apple のラジオに対する考え方を説明したことがある。企画局の背後にある考えは、自らある曲を好きにしたり、飛ばしたりすることで自分の局がごちゃごちゃになってしまうことにならないようにしたい、というのが Apple の思いなのだ。Apple は、この新しい企画局があなたの好きな曲を多くし、飛ばす曲を少なくすることにつながることを願っている。しかしながら、自分自身で作った局に、或いは特定のアーティストや曲を検索する事から始めた局に聴き入っているのであれば、ハートマークは星になり、そして曲を聴いている間に星をタップすることで、その種の曲をもっと多く、或いはもっと少なく再生するかのオプションとなる。従って、Classic Rock 局を自分好みに変えることは出来ないが、Hank Williams Radio は自分好みに合わせられる。Apple の考えは私にも理解出来るが、私にとっては、もっと詳細な局毎の設定の方が良かった。

欠落機能の話に戻ると、この記事を書いている時点では、Apple Music は未だ Apple TV 上には登場していない。良い話をすれば、iTunes Radio 局のカスタマイズをここでは今でも出来る。かわいそうな Apple TV よ、Apple はなぜ汝を見捨てるのか? Apple Music サポートは、あの Apple Watch 上でも驚くほどむらがある。時計からは、再生と好みの曲を制御出来るが、明確に My Music に追加されたものではないコンテンツには、Beats 1 も含んで、直接アクセス出来ない。

どうしたんだ iTunes よ? -- iOS 8.4 は Apple Music サポートと共に、30 June 2015 の東部時間 11 AM に出されたが、これは大事なことであった。何故ならば、 Beats 1 は一時間後に出されたからである。Apple Music を Mac にもたらした iTunes 12.2 は、数時間遅れの、その日の遅くなるまで現れなかった ("iTunes 12.2" 1 July 2015 参照)。

多くの人が Apple 側で何か不具合があったのであろうと思っているようだが、これは熟考の上での判断であったろうと私には思える。Apple Music は iOS ではとても素晴らしい経験であるが、一方デスクトップ上では大惨事である。私は "大惨事" で止めておくが、それはひとえに TidBITS が家族思いの出版だからである。

まず iTunes 12 の迷宮のようなインターフェースから始めよう。今や、左側にある Music を選択すると、三つの新しいタブが追加されている:For You, New, そして Connect である。これがスタート点だ。

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次に、Apple Music は明らかにモバイル第一で設計されており、デスクトップは遠く離れた後からの思い付きに過ぎないことを頭に入れる。Connect ペーンの至る所にある白地を見て欲しい。

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それから、かなりの量のバグを混ぜ込もう。例えば、私の For You 設定を見てみたら、バブルはどういうわけか画面の右端に向けて漂い始め、画面から外れてしまった。私は、私の机が傾いているのではと思った程だ。

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最後に、iTunes は幾つかの Apple Music 設定を欠いているという事実がある。Connect ではフォローしている人を変えられない、或いは、自分の For You ペーンを iTunes から変える方法もない。これらの能力は iOS にしかない。Apple Music は Mac 上では後からの思い付きと言ったのは、優しくあろうとしているだけである。

Apple よ、これは良く言っても手抜きである。この様な状態でリリースするぐらいなら、デスクトップ上の Apple Music のリリースを遅らせた方がずっとマシであったろう。恐らく、問題は iTunes であろう。これは一から考え直す必要がある。このプログラムは、元々 MP3 をリップ、選別、そして再生するために設計されたもので、後になって、それに音楽ストア、ビデオプレーヤー、ビデオストア、ポッドキャストプレーヤー、アップストア、iOS 機器管理能力、そして今や購読音楽サービスが加えられた。もし iTunes を車だとすると、それは Model T に、走行安定制御、GPS ナビ、そして可動ショベルを取り付け、"2015 年新モデル" として売り出された様なものである。

Beats は進み続ける -- 不満はあるが、Apple Music は、私がこれ迄に試したことがある他の音楽サービスよりも納得性が高いと思った。Beats Music の集めたプレイリストや推薦エンジンがより広範囲な聴衆に到達しているのを見るのは嬉しいことである。紙の上では、私が音楽サービスに求めるもの全てを網羅している:より広範囲なトラック選択、新しい音楽を発見するための複数の "開始" 点、私の既存の音楽ライブラリとの統合、そして Mac と iOS の両方に対するクライアントである。しかし、私の不満は結構大きい。私はそれが私の既に所有している音楽に対して DRM を適用するやり方が 大嫌い であり、そして iTunes Radio に対して Apple がしたことも大嫌いである。iTunes のインターフェースは、使えるが、ひどいものだ。これら全ては、Apple が修正出来るものだが、私にはやってくれるとは思えない、少なくとも近い将来において。

iOS においてすら、Apple Music は私がこれ迄使ったことのあるストリーミングサービスの中で最も複雑なものである。例えば、... ボタンをタップした時に出てくるオプションの数だけでも圧倒される。これはあたかも隠れたオプションや設定が至る所にある様な感じで、このインターフェースを使いこなしている感じは全くしない。

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私はまた、Apple Music に気になる傾向を見いだした。Beats 1 と共に、Apple は音楽の嗜好を導こうとしている。iCloud Music Library と共に、Apple は DRM 管理をあなたが既に所有している音楽にまで適用している。そして、Apple はまた、アルゴリズム的なラジオ局に対する殆どのユーザー制御をどういうわけか取り除いてしまった。一見無害そうに見える Connect でさえ、Apple がアーティストとファンの間の関係を取り持とうとする意図が見える。何処を見ても、私には Apple が音楽そのものを制御しようと試みている姿が見える。

それは突飛な主張の様に見えるかもしれないが、少しの間考えてみて欲しい。Apple Music の全ての側面が Apple に音楽市場を制御する手段を与えている。多くの疑いもしない試行ユーザーは取り込まれてしまっていることに気づくことになるであろうし、そして賭けてもいいが、アーティストやレーベルも例外ではないであろう。現在 Apple は大物アーティストと時として公に交渉していることからすると、Apple がレーベルを完全に中抜きしてしまうのに大して時間はかからないであろうと思う人もいるであろう。

目の前にある Apple Music は、大きな手直しは必要だが偉大な商品となる可能性を秘めている。Apple がこれらをこの 3 ヶ月の試行期間の間に修正出来ることを願いたいものである。そして、我々は同社に対して我々の音楽王国への鍵を何らかの形で手渡しているのではないことも願いたい。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2015 年 7 月 6 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Voila 3.9 -- Global Delight が Voila 3.9 をリリースして、iPhone、iPad、iPod touch のビデオキャプチャに iOS 画面の音声吹き替え付き録画を導入した。単に、iOS 8 の走る iOS デバイスを Lightning コネクタを通して OS X 10.10 Yosemite の走る Mac に接続し、録画を始めればよい。Voila 3.9 はまた、対応する外付けウェブカメラだけでなく Mac の FaceTime カメラを使ってもビデオの録画ができる機能を追加し、(Option キーを押しての) 選択的キャプチャの最中に Object Capture オプションにアクセスできるようにし、新しい Photos for Mac アプリにも書き出し機能を加え、SFTP 認証での問題点を解消し、Spray ツールを削除している。(Global Delight から新規購入 $29.99、TidBITS 会員 には 25 パーセント割引、 Mac App Store からの新規購入も $29.99、無料アップデート、28.6 MB、リリースノート10.8+)

Voila 3.9 へのコメントリンク:

Typinator 6.6 -- Ergonis が Typinator 6.6 をリリースして、このテキスト展開ユーティリティの 10 周年を祝いつつ、数多くの改善を加えた。今回のアップデートでは Typinator ウィンドウを閉じても検索フィールドの内容がクリアされなくなり、このアプリがアップデートの存在をチェックする方法を改良し、アイドル状態でのメモリ要求を減らし、ある種の Save As ダイアログウィンドウ内での展開の際の問題を回避し、特別の展開テクニックを要する状況の探知を改良し、中国語の Pinyin 入力方法が使えるようにした。今回は 10 周年を記念して、Ergonis は 2015 年 7 月 15 日までの間 (Typinator のみならず PopChar や KeyCue も) 新規購入を 25 パーセント割引の価格で提供している。(新規購入 24.99 ユーロ、 TidBITS 会員には 25 パーセント割引、7.0 MB、 リリースノート,、10.6.8+)

Typinator 6.6 へのコメントリンク:

GarageBand 10.1 -- Apple が GarageBand 10.1 をリリースして、音楽ファイルを直接 Apple Music Connect に出版できるという心躍る新機能を追加した。Apple Music Connect は、Apple の新しいストリーミングサービスでお気に入りのアーティストをフォローするための、新しい統合ソーシャルプラットフォームだ。(Apple Music について詳しくは Josh Centers の記事“Apple Music ツアー”(2015 年 7 月 2 日) 参照。)けれども、この機能は Mac 用 GarageBand 10.1 のリリースノートに書かれているものの、どうやら現時点で直接共有は iOS 版の GarageBand (バージョン 2.0.7) でしか使えないらしく、Mac 版の GarageBand からの共有はまだ今後登場予定という段階のようだ。

GarageBand 10.1 では、さまざまなスタイルの電子音楽やヒップホップのドラマーが 10 人追加され、100 種類以上の EDM (electronic dance music) やヒップホップ系シンセサイザーパッチが追加され、人気ジャンルの幅広い音源を手軽に利用できる 1,000 以上の Apple Loops が追加され、Force Touch トラックパッド(2015 年 3 月 20 日の記事“感圧タッチトラックパッドで MacBook の魅力が増す”参照)にも対応した。また、ソフトウェア音源 Smart Control の動きを記録してエフェクトや音色の調整を自動で再現できるようになり、長時間の録音を書き出せない問題を解消している。(Mac App Store から新規購入 $4.99、無料アップデート、911 MB、10.9+)

GarageBand 10.1 へのコメントリンク:

iTunes 12.2 -- 新しい Apple Music サービスをまず iOS デバイスで開始した後で(2015 年 6 月 30 日の記事“Apple、iOS 8.4 を Apple Music と共にリリース”参照)Apple は iTunes 12.2 をリリースし、Apple Music ストリーミング音楽購読サービスと無料の Beats 1 ラジオサービスへのアクセスをそこに盛り込んだ。Apple Music の価格は月額 $9.99 (最大 6 名のユーザーで使えるファミリー購読は月額 $14.99) だが、Apple は三ヵ月間の無料試用期間を提供している。

iTunes アイコンが新しくなった以外にも、このアプリの Music セクションが改装され、上部に並んだ My Music、Playlists、iTunes Store 表示のボタンに Apple Music の For You、New、Connect の表示と、改訂された Radio 表示が加わった。もしもあなたが iOS から Apple Music の三ヵ月間無料試用にサインアップしていて、しかも同じ認証情報で iTunes にもサインインしていたならば、即座に Apple Music と Beats 1 にアクセスできる。試用へのサインアップをまだしていない場合は、iTunes の For You タブでサインアップできる。(サインアップしないと決めた人も Beats 1 ラジオサービスは聴くことができるが、New タブにリストされたストリーミング音楽のタイトルにアクセスすることはできない。)

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For You 表示には、あなたの好みに応じた新しい音楽の推薦が提供される。その次の New 表示は、Apple が新リリースを並べる場所だ。Radio 表示は、新しい Beats 1 ラジオ局とあなたの iTunes Radio ラジオ局の本拠地だ。それから Connect 表示は、Apple の新しいソーシャルプラットフォームでここから好きなアーティストをフォローできる。あなたの Mac の iTunes ライブラリに保存されている音楽には、以前通りに My Music 表示と Playlist 表示が使える。

Apple Music からストリーム可能な楽曲を見つけるには、右上にある Search フィールドを使って、まず(ローカルに検索される My Library ではなく)Apple Music を選び、検索語を入力し、返ってきた結果から選択すれば音楽のストリーミングが始まる。ただし iTunes Store 表示には iTunes Store から購入可能な楽曲しか表示されず、Apple Music からストリーミングするものは表示されないことに注意しよう。iTunes Store 表示で選択されたタイトルは単なるプレビューとして再生される。(無料、直接ダウンロードでも Software Update からも 222 MB、10.7.5+)

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iTunes 12.2 へのコメントリンク:

セキュリティアップデート 2015-005 -- Apple が OS X 10.8 Mountain Lion および 10.9 Mavericks 用にSecurity Update 2015-005 をリリースし、同時にリリースされた 10.10.4 Yosemite (2015 年 6 月 30 日の記事“Apple、OS X 10.10.4 でネットワークを改善”参照) に施されたものの多くと同じセキュリティ修正を提供した。パッチされた脆弱性は多数あるが主なものを挙げれば、QuickTime における複数のメモリ破壊の問題点、S/MIME 電子メールメッセージを解析する Security フレームワークのコードにおける整数オーバーフロー、ローカルなフォトライブラリに追加された写真のファイル名処理、Bluetooth HCI インターフェイスでのメモリ破壊の問題、認証機関 CNNIC (China Internet Network Information Center、ここは .cn ドメインを管理している機関だが、CNNIC 脆弱性について詳しくは Glenn Fleishman の Macworld 記事を参照) が不正に中間的証明書を発行する問題などがある。セキュリティアップデート 2015-005 は Software Update 経由で、また Apple の Support Downloads ウェブサイトからの直接ダウンロードでも入手できる。(無料、10.8.5 Mountain Lion 用 207 MB、10.9.5 Mavericks 用 160 MB)

セキュリティアップデート 2015-005 へのコメントリンク:

Mac EFI セキュリティアップデート 2015-001 -- Apple が Mac EFI セキュリティアップデート 2015-001 を OS X 10.8.5 Mountain Lion および 10.9.5 Mavericks 用にリリースし、root 権限を持った悪意あるアプリケーションが Mac の EFI フラッシュメモリを変更してしまうことを予防した。それに加えて、この EFI (Extensible Firmware Interface) アップデートはフルの読み書きアクセス権源を有効にしてしまう可能性のあった一部の DDR3 RAM のメモリ破壊バグ ("Rowhammer" という名でも知られている) を止めた。これらと同じ EFI アップデートは 10.10.4 Yosemite リリース(2015 年 6 月 30 日の記事“Apple、OS X 10.10.4 でネットワークを改善”参照)にも含まれている。Mac EFI セキュリティアップデート 2015-001 は直接ダウンロードでも、また Software Update 経由でも入手できる。(無料、101 MB)

Mac EFI セキュリティアップデート 2015-001 へのコメントリンク:

Safari 8.0.7, 7.1.7, 6.2.7 -- Apple が Safari 8.0.7 を OS X 10.10 Yosemite 用に、また Safari 7.1.7 を 10.9 Mavericks 用、Safari 6.2.7 を 10.8 Mountain Lion 用に、それぞれリリースした。これら三つの版のいずれも Safari のメモリ使用量を減らした結果パフォーマンスが改善し、またウェブページが JavaScript アラートを使ってあなたをそのページから他へナビゲートできなくさせることができていた問題を修正している。さらに、これら三つの版の Safari にはいくつかのセキュリティ修正が施され、PDF に埋め込まれたリンクがクッキーを盗み出したりユーザー情報を漏洩させたりする可能性のあった問題や、また WebKit ページロードや WebSQL データベースアクセスの際の脆弱性が修正された。三つの版の Safari はいずれも Software Update 経由のみで入手できる。(無料)

Safari 8.0.7, 7.1.7, 6.2.7 へのコメントリンク:


ExtraBITS、2015 年 7 月 6 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週の ExtraBITS では開発者 Nolan Lawson が話題の中心となる。彼は最近の二つのブログ記事で Safari がウェブ標準を阻害するという点で新たな時代の Internet Explorer となったと批判したが、これが議論を巻き起こした。

Safari は新たな Internet Explorer か? -- Safari は新たな Internet Explorer と成り果てた。少なくとも開発者 Nolan Lawson に賛成する人はそう言うだろう。ブログ記事の中で Lawson は、Apple が最近 EdgeConf 開発者カンファレンスに参加していないことを嘆き、さらには Apple が Safari の中に新しいウェブテクノロジーを適切に実装していないと指摘する。Lawson は、その結果として Safari がウェブを阻害しているのだと論ずる。ちょうど、その昔の Internet Explorer がそうであったように。

コメントリンク: 15769

Safari は新たな Internet Explorer か? 再考 -- 開発者 Nolan Lawson が、彼のブログ記事 "Safari is the new IE" へのフォローアップ記事を書いた。前の記事の一部の表現について謝罪しつつ、Safari が最新のウェブ標準について行けていないという論点は保持した。Apple はあまりにも秘密主義に過ぎ、他のレンダリングエンジンを iOS に受け入れないことで独占的挙動をしている。けれども他の何より、彼は Apple がウェブ開発者コミュニティーと交流を持とうとしない点に不満を抱いている。Lawson は Apple が欠席した最近の会合やカンファレンスのさまざまを、ウェブこそが世界で最も先進的なクロスプラットフォームのアプリケーション・ランタイムとなりつつあるという事実に結び付ける。

コメントリンク: 15774


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