TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1305/25-Jan-2016

Apple は先週、ごく少数の(しかもほとんど詳細が発表されない)バグ修正を施した OS X 10.11.3 El Capitan と iOS 9.2 の双方をリリースした。既知の修正点を説明するとともに、アップデートは一週間ほど待ってからにした方が良い理由も述べる。また、Apple は第四世代 Apple TV を tvOS 9.1.1 にアップデートして Podcasts アプリを復活させたので、もはや Apple TV 専門家と呼ぶべき Josh Centers がこの新しいアプリのガイド付きツアーを提供する。セキュリティ担当編集者 Rich Mogull の寄稿記事は、Apple が、具体的には CEO の Tim Cook が、政府の圧力にもかかわらず暗号化を防御し続けるのはなぜかを解説する。最後に Julio Ojeda-Zapata が、自動車のタッチスクリーンに iPhone の機能を統合させる Apple の CarPlay システムをレビューする。今週注目すべきソフトウェアリリースは、iMovie 10.1.1、Parallels Desktop 11.1.2、Nisus Writer Pro 2.1.3、ClamXav 2.8.9、それにセキュリティアップデート 2016-001 (Mavericks および Yosemite) だ。

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OS X 10.11.3 と iOS 9.2.1 がバグを修正

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst, Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple が OS X El Capitan 10.11.3iOS 9.2.1 をリリースした。いずれのリリースノートも、ほとんど無いに等しいような内容だ。10.11.3 について、App Store アプリの中で Apple はこう述べている:

このアップデートにはバグ修正とセキュリティアップデートが含まれます。

引用されているサポート書類に追加の詳細があるとのことだが、そこにはたった二件の具体的な変更点が書かれているだけで、二件目は主として法人の顧客のみに興味あるものだ。

一部の Mac コンピュータを特定の 4K ディスプレイに接続するとスリープが解除されなくなる問題を解決しました。「/var/db/receipts」に保存された他社製「.pkg」ファイルのレシートが、OS X Yosemite からのアップグレード時も保持されるようになりました。

iOS 9.2.1 については、Apple は次のように述べている:

このアップデートには、セキュリティアップデートと、MDM サーバを使用している場合に App のインストールを完了できないことがある問題などのバグ修正が含まれます

これも、やはり主として法人の顧客向けのものだ。

これらのアップデートにはいくつかのセキュリティ脆弱性への対処も含まれている。10.11.3 に 9 件iOS 9.2.1 に 9 件だ。脆弱性のうち 5 件が両方のオペレーションシステムに共通のものだという事実が、OS X と iOS との間でどれだけ多くのコードが共有されているかを想起させる。

OS X 10.11.3 アップデート (5K Retina ディスプレイモデルの iMac 上では 661 MB) は Software Update から、または Apple の Support Downloads ページ (10.11.2 からの差分アップデータは 662 MB、任意のバージョンの 10.11 からのコンボアップデータは 1.47 GB) からインストールできる。iOS 9.2.1 アップデート (iPhone 6 上で 37.7 MB) は Settings > General > Software Update から、または iTunes 経由でもインストールできる。

法人顧客向けの修正があなたの属する組織にとって重要なものでない限り、これらのアップデートの実行は一週間ほど待ってからにすることをお勧めする。Adam が 10.11.3 にアップデートした際に、彼の iMac は真っ黒な画面の上に Restarting と記した進行バーが3分の2だけ進んだところでハングアップしてしまった。いったん電源を落としてからもう一度試みると今度はきちんと動き出し、フルにアップデートされたのだが、彼のこの体験がより一般的な問題を示唆するものである可能性も無きにしもあらずなので、少しだけ待って他のユーザーたちからの報告に目を配っておくのが賢明だと思う。アップデートしようと決断したなら、まずは必ずバックアップを取っておくのをお忘れなく!

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Apple、tvOS 9.1.1 で Podcasts を復活

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

OS X と iOS にアップデートを出したそのすぐ後に続けて、Apple は第四世代 Apple TV 用に tvOS 9.1.1 をリリースした。Settings > System > Software Updates > Update Software に行けばこのアップデートを入手できる。

リリースノートは出されていないが、見てすぐ分かる新機能が一つある。それは、Podcasts アプリが復活したことだ。アップデート後に Home 画面にこのアプリが現われる。Apple の iOS 用 Podcasts アプリを使っているか、あるいは iTunes でポッドキャストを聴いているのならば、それらのクライアント上での購読やエピソードがこの Apple TV 版にも同期される。意外でも何でもないが、tvOS 版の Podcasts はビデオ・ポッドキャストにも対応しており、テレビ画面で見れば素晴らしい体験が提供される。

この Podcasts アプリは六つの画面に分けられる:

この Podcasts アプリが追加されたことはとても素敵だが、まだまだ欠けているものとして Bluetooth キーボード対応や Home 画面上のフォルダなどがあり、ぜひとも実現を期待したい。いずれも、来たるべき tvOS 9.2 リリースで追加される予定だという。それはそれとして、私はこれで失礼させて頂こう。執筆作業中の "Take Control of Apple TV" のために、tvOS 9.1.1 の中に他にもっと変更点がないかどうか、探す作業に戻らなければならないので。

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なぜ Apple は暗号化を擁護するか

  文: Rich Mogull: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

The Intercept が最近伝えたところによれば、Apple CEO の Tim Cook は他のテクノロジーリーダーたちとともにホワイトハウスの当局者とプライベートに会談し、その席で暗号化とテクノロジーのバックドアに関する連邦政府の姿勢を批判した。(2016 年 1 月 24 日の記事“Tim Cook、暗号化を巡りホワイトハウスと対決”参照。)これは秘密会談であったので何があったのかを正確に知ることはできないし、The Intercept もこの問題に対して特定の観点を持っていることを自ら認めているけれども、記事に述べられた内容は確かに Cook の従来の公的立場と合致する。今回のことは、暗号化を巡る Apple と米国政府とのいさかいの、最も新しく表面化したものに過ぎない。私は記事“Apple と Google、公民権論争の口火を切る”(2014 年 10 月 10 日) で初めてこの問題について書いた。

Cook がホワイトハウスを相手に起こした騒動を受けて、Daring Fireball の John Gruber は次のように問いかけた

これは昨夜の共和党討論会でも取り上げられた。一般的にテクノロジー会社が暗号化システムのバックドア提供を拒否したという話ではなく、明確に Apple を名指ししての話だ。Tim Cook の言うことは正しいし、暗号化やプライバシーの専門家たちも皆が彼の側にいるというのに、米国の他の大企業のリーダーたちはいったいどこへ行ったのか? Larry Page は? Satya Nadella は? Mark Zuckerberg は? Jack Dorsey は? 彼らは皆まるでコオロギの鳴き声まで聞こえそうなほど静かではないか。

これは決して、プライバシー活動家や Apple 熱狂者たちが勝手に騒いでいる雲を掴むような質問ではない。私たちは今、人間的コミュニケーションのテクノロジー的な激変に直面しており、そのため政府と市民の間の関係が根本から定義し直される時代のただ中にいるのだ。テクノロジー界の他のリーダーたちがこの問題に対して比較的静かなのは彼らが立脚点を欠いているからだ。それは個人的嗜好やビジネス上の妥協によるものではなくて彼らのビジネスモデルによる理由であり、また私たち顧客からの強い要求が存在していないからだ。

(米国の外にいる読者の皆さんには申し訳ないが、この記事は米国中心のものにせざるを得ない。なぜなら、皆さんが住む国によって状況は大きく異なるからだ。とは言うものの 英国フランスをはじめ多くの国の政府は全く同じ状況に対処している。)

なぜ政府はあなたの心を読もうとするのか -- 暗号化と、政府の監視からのプライバシーについて論じる際に、実際私たちは三つの異なる(ただし互いに関連する)問題点について議論している:

暗号化はこれらの問題点のいずれにも極めて大きな役割を占めているが、それは論点のほんの一部でしかない。

民間の法執行機関が政府の指導者のためでなく「法律」のために働くという概念は、実は世界の歴史の中で比較的近年になってから発展したものだ。「同意を得た上で取り締まる」という概念は 19 世紀の英国で Peelian Principles として生まれた。法執行機関は軍隊や諜報機関とは違う。私たちは非常に大きな、しかしながら無制限ではない力を警察に与え、法律を執行させ市民を保護させる。米国においては、複数のレベル(地方、州、連邦)それぞれに複数の機関があって、司法当局との相互運用により一連のチェックと権力のバランスを作り出している。

アメリカでは、あらゆるレベルの法執行機関がそれぞれに、捜査活動の一部として個人情報にアクセスしてきた長い歴史が存在する。警察は適切な法的権限の下に "lawful access" と呼ばれる手続きを経てほとんどあらゆる情報源から証拠を入手することに慣れ切っている。適切な権限さえあれば、警察は金庫を破り、あなたの電話を盗聴し、あなたの郵便物を読み、あなたの財務記録にアクセスし、といったことができる。そのためには(例えばあなたの郵便物を読むには)判事に令状を出してもらうことが必要となることもあるし、また他の状況ではより低い証拠基準を持つテクニックで情報が入手できることもある。(例えばあなたの自動車を GPS で追跡するなど。なぜなら公開の動きは... 公開だからだ。)いずれにしても、すべての状況は法律の枠の中にある。そう、合法的なアクセスのためにバックドアを作ることを電気通信会社に義務付ける法律さえ存在している。

警察にとっての問題点は、自分たちの仕事をするために必要な(あるいは少なくとも警察が必要と考える)情報にアクセスする能力を、新しいテクノロジーが妨害することだ。例えば携帯電話は、容疑者のコミュニケーションと個人的データがすべて一つのまとまったパッケージの中に集約されるので、法執行機関の歴史にかつてなかったほど素晴らしい情報源となっている。もちろん、警察としては携帯電話のキャリアからテキストや通話や位置情報の履歴を得ることができるけれども、その種の情報は携帯電話から直接取り出す方がはるかに手早く、はるかに簡単だ。もちろんそこには Facebook 投稿や、暗号化された iMessages、電子メールによる会話、その他多くの他のものもあるだろう。

今回のことは、市民のコミュニケーションや情報を保管するデバイスに対して、たとえ令状があったとしても法執行機関がアクセスできないという、史上初めての事例だ。この言明には多少の誇張がある。なぜなら、携帯電話のロックを外すよう強制されることはあり得るからだ。(拷問によってパスコードを聞き出されることはないにしても、あなたが降参するまで判事があなたを牢獄に放り込むことはあり得るだろう。)それに、すぐ上で述べたように、携帯電話の中にある情報の(すべてではないとしても)大部分は、携帯電話の中を探さずとも時間さえかければ他のどこかから入手できるものだ。

法執行機関の役人たちは、強力な暗号化に対して、それが彼らが仕事を執行する能力を妨害するツールであると見なす。従来からそのやり方で彼らが拒絶を受けたことなどなかったというのに。

その点、諜報機関では話が違う。彼らには本来(非常に狭い例外を除いて)米国市民を監視する職務はない。近年明るみになった大量データ収集活動でさえ、制約もあるし、主として(米国と国外との間のものも含む)外国でのコミュニケーションに重点を置いている。諜報機関は、法律を執行するのではなく、他の国や潜在的脅威に対するスパイ活動をする。けれどもここ数十年間にわたり、彼らは極めて大きな法律的ならびに兵站的な問題に直面してきた。彼らが使う必要のあるテクノロジーの多くの部分が、米国内に由来する製品やサービスに依存しているからだ。

もしも諜報機関がヨーロッパ在住の悪漢の電子メールによるコミュニケーションを盗聴する必要があると思えば、彼らは多くの場合 Google や Microsoft、その他のサービスをこじ開ける必要がある。あるいは少なくとも、国外で盗聴をする必要がある。彼らには米国内で盗聴する権限が認められていないからだ。けれどもインターネットの動作の仕組みを理解している人ならば誰でも、国内と国外との境界が必ずしも明確でないことを知っている。

それに「盗聴」と呼ぶのは誤りだ。テクノロジー会社はいずれも、暗号化を使って情報と取引を攻撃者から保護している。そしてまさにその暗号化が、諜報機関の活動を妨害できる程度に強力だ。あるいは少なくとも、彼らがそれを破るためのコストが増加する結果となっている。だから、彼らはシステムに侵入できる道を開くようなソフトウェア脆弱性を知るに至るかもしれない。あるいはおそらく、秘密の「バックドア」を設置する道を探ろうとするかもしれない。ただしそこには何の秘密もなく、すべてのバックドアはセキュリティ脆弱性であり、ただ攻撃されるのを待つのみだ。その上、国内にあるシステムに意図的に脆弱性なりバックドアなりを導入することは法律に違反するばかりでなく、諜報機関自体の指針や運用手順にも違反する。

法執行機関も諜報機関も、同じ根本的な問題に直面している。合法的なアクセスを可能にするツールはどんなものでも、同時に非合法的なアクセスを可能にしてしまうのだ。黄金の鍵というものはあり得ず、ただドクロの鍵のみがある。

こうして、次のような事態が生じた:

まとめれば、こうした分野における既存の法律は多くの場合不明瞭であったり時代遅れであったりする。今の時代には、私たちのデバイスやサービスにアクセスできることが、私たちの心を読むのと実質上似た効果をもたらすのだから。私たちのオンラインでの権利を巡ってのこうした戦いは、市民と政府との関係を根本的に定義し直すものとなる。

なぜ Apple は他の会社と違う立場を取るのか -- Apple は決して、政府に狙いを定められた初めての会社ではない。例えば BlackBerry は、2010 年にインド政府にコミュニケーションの暗号化を解くことを義務付けられ 、従わなければ同国での運用を停止するよう命じられた。その際に使われたものと同じツールが拡張され、別の国で BlackBerry デバイスを監視するために使われた

ここで、Gruber が挙げたリストに戻ろう。Google、Microsoft、Facebook、Twitter だ。加えて、Amazon と Samsung も考えてみたい。いずれについても、その会社のビジネスモデルは Apple ほどに会社として意見を発言できる自由を許容していない。

Google は基本的に、ユーザーたちからデータを収集する広告会社だ。収集した情報をそのユーザー以外の目から見えないように暗号化しても意味はない。そんなことをすれば Google がそれにアクセスできず、それを使って的を絞った広告を表示することもできなくなるからだ。たとえ広告の問題を除外したとしても、Google のサービスの中には基盤となるデータに Google がアクセスできなければ根本的に成立しないようなものもある。Google は Android についてはより強い暗号化の立場を取っている。少なくともテクノロジーの側ではそうだ。(ただしその進展は遅い。大多数の Android ハードウェアは Google の制御の外にあるからだ。)けれども Google は問題について大声で語ろうとはしない。それは、同社の持つデータがすべて、令状があればアクセス可能なものだからだ。同社としては、その事実に注目が集まる事態を避けたい。しかしながら、スパイ行為やその他の監視活動について Google がそれらを防止するためにできる限りの努力をすることを私は知っている。例えば同社のデータセンターとの間のすべてのコミュニケーションは暗号化されている。

Microsoft は基本的にソフトウェア会社だ。同社は既に PC 向けの強力な暗号化 (BitLocker) を提供しているが、これはコンシューマ向けのものではなく、Microsoft はモバイル市場の中のほんの小さな部分しか占めていない。同社の最大の顧客である企業や政府は、企業としての正当なセキュリティの理由から Microsoft プラットフォームの監視をずっと以前から続けている。ここに挙げた会社すべてのうち最も Apple を援護できる立場にいるのが Microsoft だが、Microsoft はあまりにも長い間政府と協力して働き製品を販売してきた歴史を持つ以上、この問題で政府を相手に公然と衝突することは避けたい。公衆の目の届かないところでは、Microsoft は現在 Department of Justice (司法省) を相手に海外に保存されたユーザーデータの保護を巡る裁判で法廷侮辱罪に問われているところだが、この裁判はクラウドコンピューティングの将来を定めるものになるかもしれない。

Facebook と Twitter はどうか? ソーシャルネットワークのデータはすべて、合法的なアクセスによりアクセス可能だ。(どちらにしてもデータの大部分は既に事実上公開されているではないか。)Google と同様、これら両社も基本的に広告用のプラットフォームであって、私たちのデータにアクセスする必要を持つ。Facebook CEO の Mark Zuckerberg と Twitter CEO の Jack Dorsey の二人とも、個人的に強力な暗号化を支持するかもしれないが、実際的なレベルでこれらの会社にできることは何もない。Amazon はどうか? 同社はこの問題に関係するハードウェアを販売しておらず、しかももともと小売業者であるので問題に影響を与える何かを発言できる立場にもない。(例外と言えるのが Amazon Web Services で、これは暗号化を大規模に使っており、政府に対抗するオプションもある。)Samsung はどうか? Samsung は外国の会社であるので、米国政府が本腰を入れて相手にするとは考えにくい。

巨大なテクノロジー会社、例えば Cisco、IBM、Oracle、さらには HP といったところは、たとえそうしたかったとしても、そもそも市場の中で会社がコンシューマの側に立って何かを論じられる立場にない。その上 Microsoft と同様に、これらの会社も政府との契約を多数抱えている。

これらの会社はすべて、自社の製品やサービスのセキュリティに高い優先度を置いているが、ほとんどの場合、私たちユーザーが自分の情報を制御してプライバシーを保てるような形でものごとを構築することはできない。

そして、完璧な明瞭性のためにここでもう一度繰り返すと、監視を有効にするならば、その度に必ずプライバシーとセキュリティが減じる。どのようなバックドアも、セキュリティの脆弱性だ。これはテクノロジーの世界において物理法則と同等のものであり、未解決の技術的問題といった種類のものとは違う。

Apple は、あまたあるテクノロジー会社の中でほとんど唯一、人目を引く存在であり、プライバシーを傷付けることに依存せず収益を得ることができ、かつ暗号化論争の焦点の真っただ中にある製品を販売している会社だ。だからこそ、暗号化について Apple が言うことはすべて、高度に正当化できる立場から来たものであり、とりわけ今は同社の iAd App Network を放棄しつつあることを考えればなおさらだ。

もちろん、Apple が作るもののすべてに監視の心配がない訳ではない。暗号化することができずに Apple のサーバに置かれているデータについては同社も政府からの要求に従わなければならない。とりわけ iCloud Mail、iCloud Drive、iCloud Photo Library のようなサービスはすべて合法的なアクセスの対象となる。けれども可能なものについては、テクノロジーとユーザー体験との整合性が取れる限り、Apple は自らさえアクセスできないほど強力な暗号化を使っている。

そして Apple は、他の大多数の会社と同様、法律的条項のボックスがすべて正しくクリックされた場合にのみデータの提供を行なう。そうしなければ会社が訴訟に直面することになるだろう。

暗号化に対する Apple の立場には、同社のビジネスモデルと競争上の優位性を促進したい欲求以外にも、特記すべきことがある。Tim Cook とまだ一度も話をしたことのない私の意見だが、これは彼にとって、少なくとも部分的には社会運動の意味を持つのではなかろうか。おそらくこれは彼が個人的に関心のある問題,であり、世界中で最もパワフルかつ人気ある会社の一つを演壇として、彼はその上に立って意見を述べているのだ。

いつの日か、Larry Page、Satya Nadella、Mark Zuckerberg、Jack Dorsey、Jeff Bezos、その他のテクノロジー界の CEO たちがこぞってこの問題について声を挙げてくれることを願わずにはいられないが、彼ら個人個人の気持ちはさて置き、彼らの立ち位置は Tim Cook と Apple のそれと同じものではない。

今こそ、プライバシーとセキュリティへの権利を私たちが持つのか否かについて、デジタル時代に相応しく私たちの政府に課すべき制約について、私たちが決断すべき時だ。それは、テクノロジー界のリーダーたちが公式声明を述べたから起こるものではない。いや、それは私たち次第であって、オンラインのプライバシーとセキュリティに関する私たちの意見を、私たち自身が選んだ議員たちに伝え、同意によって取り締まる(そして保護する)際にあるべき制約を見出せるようにするのは、私たちの責務だ。

実際のところ、あなたも今すぐ加われる機会がそこにある。ニューヨーク州において、メーカーの手で暗号化が解かれロックが外されることができない限り スマートフォンの州内での販売を禁止する という法案が提出された。これは驚くほどに誤った考え方であり、選出された議員たちがこれほどまでにテクノロジー(と地理学)に無知であることが信じられないという気持ちを表現したい人は、New York State Senate (州議会上院) にアカウントをセットアップして、反対投票をし、さらにコメントを書き込むこともできるようになっている。 カリフォルニア州も同様に愚かな法案を出している,が、こちらにはそのようなフィードバックの仕組みは何もなく、州議会議員に直接連絡を取るしかない。

それを済ませたら、ゆっくりと腰を下ろして、次に出てくる無知な発言あるいは誤った考え方の法案に対する心構えをしよう。なぜなら、このような問題は、単純に、素早く、決定的に解決される種類のものではないからだ。

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CarPlay による iPhone/自動車統合、限定的で誤作動もある

  文: Julio Ojeda-Zapata: [email protected]
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

私の iPhone 6s Plus は車の中での無くてはならない友である。それはナビ、ポッドキャストプレーヤー、ジュークボックス、電話、等々である。

私の質素な Mazda 5 には高級車にある様なタッチスクリーンはないので、私の iPhone は、サードパーティのマウントを使ってダッシュかフロントガラスに取り付けて、これらの役割を果たしてくれる。

私はこれで満足しているが、今年新車を買った人達のためには、Apple はより良い解を提供するとされている:CarPlay である。

Apple と自動車メーカー各社との協業で、iPhone 機能は今やこれらのタッチスクリーン上でアクセス可能なのである。これは iPhone が車に USB 経由で接続された時に起こり、その車を巨大な電話アクセサリに変える。CarPlay は iPhone 5 にまで遡って働く。

だからといって、その車の元々のタッチスクリーン機能が消える訳ではない。そうではなく、CarPlay はもう一つのオプションとなる - 基本的には、その自動車メーカーが提供する様々なアプリに付け加えられるもう一つのアプリとなる。(CarPlay と競合する Google の Android Auto をサポートする車の中の Android ユーザーにも同じことが言える。)

この記事を書くために私が使ったのは、貸し付けられた Buick Regal 高級セダンと Chevrolet Silverado トラックであるが、運転者には、車の種類に応じて IntelliLink 或いは MyLink と呼ばれる洗練された一連のタッチコントロールが与えられる。USB 経由で iPhone が接続されると、CarPlay ボタンが Chevy の他のオプションに混じって現れる。これはオペレーティングシステム内のオペレーティングシステムだと思えばよい。

それは Regal 上では次の様に見える:

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そして、Silverado 上では:

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この CarPlay アイコンをタップすると、電話、メッセージ、ナビ、音楽、オーディオブック、等々のお馴染みのオプションが現れる。このインターフェースは、Apple TV インターフェースがカウチポテト族に合わせてある様に、運転者のためにカスタマイズされている。CarPlay アイコンもメニューオプションもより大きく、iPhone 上でのものよりもタップし易くなっている。

CarPlay の能力の殆どは Siri を使っても制御出来る。Siri に、音楽を演奏する、アプリを開く、道案内を頼む、電話をかける、テキストメッセージを口述する、等々を頼める。

Apple は意図的に色々な方法で CarPlay に制限を課しているが、これは運転に危険性をもたらす機能を排除するためである。例を挙げると、Apple の Podcasts や Music アプリの CarPlay 版では、ビデオを再生することは出来ない。

同時に、CarPlay は CarPlay 対応のアプリ経由で車の情報能力を格段に増進する。例を挙げると、Audible, iHeartRadio, NPR One, Pandora, Spotify, Stitcher, TuneIn Radio, そして Marco Arment のポッドキャストプレーヤー Overcast 等である。もし iPhone 上にあるアプリが CarPlay 対応ならば、そのアプリもコンソール上に現れる。私の場合、20 に満たない CarPlay アプリを見つけたが、それでも、Chevrolet が提供するネイティブの IntelliLink/MyLink アプリの数よりは良い (サードパーティサービスに関しては、Pandora と XM Radio ぐらいなものである)。

CarPlay が現在の形で発表されたのは March 2014 であったが、その概念そのものは何年もの間進行形にあった。この技術が大衆向けの車に現れる迄には苦痛を感じさせるほど時間がかかったが、ようやくここに来てより広く普及する様になった。

ついここ数週間の間に、Ford, Fiat Chrysler, そして Hyundai が 2016 年にCarPlay を広く使えるようにすると発表し、General Motors, Honda, Volkswagen, 等々の仲間入りをした。Chevrolet は、CarPlay (そして Android Auto) を他のどの自動車ブランドよりも多くの 2016 年モデルに搭載すると言っている。

Apple によれば、殆ど全ての自動車メーカーが、CarPlay 付きの車を既にリリースしているか、或いは間もなくするであろうと言う。

CarPlay はまた、Alpine, Kenwood, そして Pioneer の様な会社からも交換ユニット経由でのアフターマーケットオプションとしても手に出来る。

私の二週間に亘る CarPlay テストにおいて - 一つは Silverado で、もう一つは Regal で - 楽しめた部分とイライラさせられた部分は丁度半々であった。良かった方から言えば、私は Apple デザインのインターフェースの方が、自動車メーカーによって提供されているものよりも格段に好きである。そうではない iPhone ユーザーなどいるであろうか? 同時に、CarPlay の簡素化された性質は、私にとって車の中で長年に亘って全機能の iPhone に慣れ親しんだ後では、イライラの募るものであった。

私のテストに使った車のタッチスクリーンは Apple の仕様にほど遠いもので、Retina 解像度には及ばず、そしてタッチに対する反応も劣る。Regal の画面は Silverado のものよりも良かったが、どちらも iOS 機器の画面には較べようもない。

加えて、私の CarPlay 使用は時折、アプリのハング、真っ白な画面、等々の不具合で損なわれた。

CarPlay を使ってみて、私は iPhone 画面の方が殆ど全ての点で、より小さいことを除いて、勝っていると感じた。私は iPhone と共に使っているサードパーティのマウントにも満足しているが、人によっては、内蔵タッチスクリーンを使う CarPlay の方が、装着場所と近さから言って、圧倒的に使いやすいかもしれない。

CarPlay Tour -- CarPlay インターフェースは簡素である - 良い意味で。

それは主として 7 つの Apple アプリアイコンから成る:Phone, Music, Maps, Messages, Now Playing, Podcasts, そして Audiobooks (この順番で) が、縦 2 つ、横 4 つのグリッドで並ぶ。ホームボタンは左下に位置する。その上にあるのは、時間、そしてセルラーと Wi-Fi の受信強度である。

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CarPlay 対応のアプリが電話機上にインストールされていると、それらは車のコンソール上にも現れる。サードパーティアプリの一つが私のホーム画面上の最後の空きスペースを占め、そして残りのアプリは二枚目と三枚目の画面に配置された。腹立たしいことだが、サードパーティアプリはアルファベット順にソートされており、画面間で手動で再配置することは出来ない。

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画面の間での移動は直感的で、左や右にスワイプすれば良いのだが、車のタッチスクリーンの標準以下の応答性ゆえにこの様な単純なスワイプでもイライラさせられることが時折あった。

Apple とサードパーティアプリの CarPlay 版は一貫性のある、iPhone 版よりも没個性的なインターフェースを持っている。アプリは又そのフル機能の iPhone 版に較べ、機能的に軽くなっている傾向がある。これは、気を散らすことが多すぎる環境下で、複雑さを減ずるという意味で良いことではあるが、同時に CarPlay 経験を少々味気ないものにしている。

例を挙げると、Messages では、新しいメッセージを画面上でタイプしたり、或いは古いものをテキストの形で見るためのオプションは提供されない。表示されるのは、あなたが最近やりとりした人々のリストだけである。Siri がこれらの人々からのメッセージを読み上げ、そしてそれに対する返信を口述するよう促す。また画面上には作成ボタンがあり、これを押すと Siri が現れるが、ハンドルに組み込まれた物理的な Siri ボタンを押すことでも Siri にアクセス出来る。

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Audiobooks アプリもまた必要最低限度主義で、あなたが購入したオーディオブックのリストを示すだけである。一つをタップするか、或いは Siri 経由でリクエストするかすると、再生を始める。このアプリはテキストベースの iBooks を読み上げることはしない。

Maps もまた単純さの一例である。現在位置が地図上に表示され、そして 3D オプションに加えて、簡単なズームとパンの制御があるだけである。期待されるようなピンチしてズームは使えない。

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Maps は何処で曲がるかの指示を、音声と画面上で提供し、そして渋滞情報と移動時間も提供する。更に、最近の目的地も示し、その一つをタップすると運転案内を立ち上げる。

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新しいルートは Siri 経由で始める。繰り返すが、タイプする必要は無い。

経路選択が進行中に、運転者が他のアプリに切り替えた場合 (下記では Overcast が示されている)、Maps のショートカットアイコンが画面の左上に現れるので、手早く戻れるようになっている。

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Apple の地図表示は Regal の画面ではとても見栄えがする - 私がこれまで見たことのある大抵の車での内蔵ナビのものよりもずっと良い。

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最近リリースされた iOS 9.3 ベータでは、CarPlay 画面に Nearby オプションが追加されており、近くのレストラン、ガソリンスタンド、喫茶店、ホテル、駐車場、スーパー、等々の案内が提供される。

CarPlay 版の Phone アプリには音声通話をするためのキーパッドが提供されるが、他にもよく使う項目、履歴、そして留守番電話もタップ出来るリストとして示される。運転者はまた Siri を使って、電話を掛ける、不在着信に掛け直す、そして留守番電話にもアクセス出来る。

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Music アプリはもうちょっと精緻であり、とりわけ今や Apple Music ストリーミングサービスもミックスの一部となっているので。私の購入済みの曲、それに私の iTunes 及び Apple Music プレイリストも、タップ一発か二発でアクセス出来る。

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同じことが私のラジオ局にも言える - Apple Music の看板である Beats 1 も含めて。

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しかし、テスト中に私は Apple Music の大部分にアクセス出来なかった。For You, New, Connect, 等々の機能に到達するには、私の iPhone が必要であった。それはそれで良かった - Apple の馬鹿げたほど複雑な音楽インターフェースをナビゲートして行くのに必要な精神集中は、大抵の運転者を側溝に送ってしまうであろうから。この人達には不幸なことだが、新しい iOS 9.3 ベータは CarPlay 車画面に New と For You を追加している。

勿論のことだが、私は A-ha の "Take On Me" を見ることは出来ない。これはこれまでに作られた一番のビデオであり (ご推察の通り、私は 1980 年世代の申し子の一人である)、私はこれを MacBook, iPhone, そして iPad 上で取りつかれた様に観てきた。私はこのビデオを所有しているが、CarPlay はそれを安全上の理由から Regal のコンソールに表示させてくれない。これは、車が停止している時でも (アイドル中でも、駐車時ですら) 変わらない。

事情は Podcasts アプリでもほぼ同じである。このアプリの iPhone 版は、オーディオとビデオのポッドキャスト両方にアクセス出来るが、CarPlay 版はオーディオだけである。いずれにしても;Top Charts セクション経由で無作為にまずまずのショーを始動するのは - SerialStuff You Should Know の様に - 便利な方法である。

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私のポッドキャストや局の設定も全てアクセス出来た。

恐らく、CarPlay インターフェース上で最も便利なボタンはまた最も簡単なものだ:Now Playing である。これは自明であろう - このボタンをタップすれば、今選んでいるオーディオプレーヤーを示し、巻戻し、早送り、そして再生/停止のボタンも現れる。CarPlay ホーム画面上でこの Now Playing ボタンにアクセスするには、最初にホームボタンを押さなければならない。

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この Now Playing ボタンは、サードパーティアプリ故に重要である。これらは CarPlay をメニューの迷路みたいにしてしまうからである。サードパーティアプリの中には他のものより良いものもあるが、CarPlay の生来の簡素さは劇的な多様性を許さない。

CBS News には失望させられた。私は先月の Tim Cook の 60 Minutes インタビューを待ち行列に入れたいと思ったが (勿論、オーディオだけ)、このアプリはエピソードの日時しか、主題は無しで、示さない。役に立たない。タイトルが全大文字というのは一体全体何が狙いなのか?

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Marco Arment の Overcast は、驚くこともないが、もっと快適だ。Overcast の iOS と Web バージョンは極めて簡素なので、最低限度主義の CarPlay 版でも不快にはならない。トップレベルの選択肢には Playlists と Podcasts しかない。

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Podcasts をタップしたら、飾り気のないナビゲートし易いショーのリストが示された。

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その内の一つをタップしたら、Overcast はそのショーの最新のエピソードを引っ張り出した。

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CarPlay は iPhone を持ち歩く運転者にとっては重要である、何故ならばそれは色々なカテゴリで選択肢を提供するからである。例えば、Audiobook ファンは、Apple の Audiobooks だけではなく、更に Audible, AudioBooks.com, そして Free Audiobooks にもアクセス出来る。

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ひところ、私は Isaac Asimov の SF 名作 "The Foundation Trilogy" にうっとりと聞き入っていた。それも Free Audiobooks を使って全く何も払わずにである。素晴らしいですよね?

私が日頃使っているその他のサードパーティアプリとしては、ポッドキャストの Stitcher、音楽の Pandora、そして地上波ストリーミングの TuneIn Radio - 宿敵の iHeartRadio よりもこちらの方が好きだ - が挙げられる。

私はモバイルやデスクトップ上の TuneIn を長いこと好んできたが、それはその幅広いオーディオ選択肢ゆえで、音楽、オーディオブック、ポッドキャスト、ニュースキャスト、等々が含まれる。またそのデザインも素晴らしいものであったので、その CarPlay アプリも非の打ち所無く実現されているのを知っても驚かなかった。

National Public Radio の NPR One アプリもアップデートされたばかりで、CarPlay サポートが追加された

NPR One の CarPlay 機能には、最新のニュースキャストを立ち上げる Catch Up、新しい話やポッドキャストエピソードの監修されたリストをスキャンする Recommendations、人気上位の NPR 及び提携のショーをリストする Featured Shows、そしてお好みとされたショーを見る Followed が含まれる。

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これら皆素晴らしい、しかし (他のストリーミングアプリと同様、それらを iPhone 上で、或いは車の画面で使うかに拘わらず)、セルラーデータの使用量には常に目配りして欲しい。びっくりする様な巨大な請求書を手にすることのないように。

CarPlay の問題 -- しかしながら CarPlay を使うことは、時としてイライラとの闘いでもあった... 少なくとも私の経験では。

誤作動は私のテスト期間中日常茶飯事であった。時として、アプリは謎めいて空白の画面を返してきた。

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他の時には、アプリはただ回り続ける、しかもさしたる理由もなく回り続ける。

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この様な異常はアプリ特有のものなのか、或いはセルラーや (頻度は少ないが) Wi-Fi 接続経由でのデータの連続的な iPhone への流れが一時的に阻害されているためなのか、私にははっきり分からなかった。どちらも少しずつ関係していた可能性もあるのかもしれない。

Siri は別の痛点であった。これを立ち上げるのは簡単であった;Siri 対応の自動車には通常ハンドルに組み込みのボタンがある。むろん、画面上のホームボタンを押下することも出来る。

しかし、私は Siri に言うことを聞かせることが出来ず、ほぼ諦めざるを得なかった。 Siri は私が発した言葉のほぼ全てを誤解した。私の iPhone 上の Siri なら沈着に扱えるコマンドさえも。例えば、私が CarPlay の Siri に 1980s New Wave プレイリストを出すように頼んだ時、それは Police プレイリストを出してきた - 確かに同じ年代ではあるが、私が頼んだものではない。これは紛らわしい - 同じ Siri なのに何故違う? 加えて、Siri はサードパーティアプリは制御出来ないので、その有用性は減じる。

Chevrolet は独自の音声アシスタントを提供していて (私が知る限り、それには名前がない)、こちらの方がマシに動作する。これは驚きである - Siri は一般的に内蔵システムより良い。

運転中に CarPlay 経由の通話をするのも問題であることが分かった、というのも相手側にいる人は私が言ったことを理解出来ないことがしばしばだったからである。原因は、CarPlay というよりも、車中のオーディオハードウェアにありそうな状況ではあるが、いずれにしてもがっかりであることにかわりは無い。

CarPlay は全ての自動車メーカーによって同じ様に実行されているわけではなく、差はある。例えば、私のテスト車では、私のメッセージを読み上げさせることは出来たが、どれをを指定することは出来なかった。聞く所によると、他のメーカーではユーザーにもっと広範囲に制御させてくれ、運転者にテキストしてきたのは誰かを示し、どれを読むかを選ばせてくれるという。メールメッセージの題名もまた提供されるという。

車によっては、CarPlay をノブやボタンで制御すること出来る。これは私の借りた車ではなかったが、場合によっては大助かりという場面もあったであろう。

CarPlay での私のもっと大きな問題は、私の主たる車インターフェースとして iPhone に戻りたいという私自身の絶えることない衝動であった。

iPhone 6s Plus は、車の中でいじるにはより小さくそして少々神経を使うものだが、妥協のない機器である。そのタッチスクリーンは遙かに良いし、全てのアプリ機能も使え、そして何年も掛けて色々な機能を使いこなす中で体が覚えた後では、私にとってはとても使い易い。それにまた場合によっては、コンソールベースのタッチスクリーンよりも近い所に置くことの出来る場合だってある。運転中にすべきでないことも出来てしまうことは確かだが、その様な行動を自制するだけの自制心は持ち合わせている積もりである。

それに比較して、CarPlay は多くの点での最小公倍数のような感じがする。しかも、これは Apple によって設計されているにも拘わらずである。多くの部分は、安全上の理由から簡素化されているためであり、そして、まず間違いなく、車を運転する層は、初心者の iPhone や iPad ユーザーよりも技術には明るくないかもしれないせいでもあるかもしれない。

CarPlay すべきか? -- CarPlay は未だ開発途上にある。現時点では、これは iPhone が物理的に車の USB ポートに差し込まれた時にしか働かない。Bluetooth 経由での接続では使える機能は更に制限され、Siri と電話通話は含まれるが、画面を使う CarPlay 機能は働かない。

無線の CarPlay はまず間違いなく登場する。実際、Volkswagen は最近の Las Vegas での Consumer Electronics Show で無線の CarPlay を準備していたが、Apple に止められたと言っている - 思うに Apple は近々自分自身でお披露目したいからなのであろう。

CarPlay の限界は次の疑問を呈する:もし iPhone ユーザーであり、新車を買おうとしているならば、CarPlay 搭載かどうかで車種選定をすべきであろうか?

ノーである。車はその他の考慮事項に基づいて買うべきであり、たまたま CarPlay も含まれていたならば、ラッキーだと思えば良い。正直言って、こんなことは言いたくない - 私は密かに CarPlay はとても素晴らしいので、新車を買うならそれが付いたものを、或いは、だから新しい車が欲しくなると言うことを願っていた。現状では、私は iPhone をダッシュにマウントし続け、Mazda 5 が後何マイルぐらい持つのか見てみたいと思う。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2016 年 1 月 25 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

iMovie 10.1.1 -- Apple が iMovie 10.1.1 をリリースして、複数個のアカウントを持つユーザーが YouTube 共有でサインインできなくなっていたバグを修正した。今回のアップデートではまた、クリップに White Balance 調整を施せなくなっていた問題を解消し、100 fps または 120 fps でキャプチャされた Sony XAVC S クリップが正しく再生されるようにし、静止画像が正しく表示されなかったバグを修正し、Library リスト内のイベントに Project Media コンテナから複数個のクリップを正しくドラッグできるようにしている。(Mac App Store から新規購入 $14.99、無料アップデート、2.02 GB、10.10.5+)

iMovie 10.1.1 へのコメントリンク:

Parallels Desktop 11.1.2 -- Parallels が Parallels Desktop のバージョン 11.1.1 (build 32312) をリリースして、Boot Camp 仮想マシンがブートしなかった問題を解決するとともに、NTFS ドライブがマウントしなかった問題を修正した。この仮想化ソフトウェアはまた、OS X で Outlook ファイルを開いた後に Windows の中で Microsoft Outlook がクラッシュしたバグを解消し、別の仮想マシンが走っている状態で Full Screen モードにある仮想マシンを終了させると起こったクラッシュも解決し、外付けディスプレイに Retina 設定を適用するとマウスカーソルが壊れて見えたバグを修正している。

このアップデートが出された後間もなく、Parallels Desktop はバージョン 11.1.2 (build 32408) にアップデートされ、OS X 10.11.2 El Capitan へのアップグレード後に仮想マシンに USB デバイスを接続した際の問題を解消し、仮想マシンがスリープから目覚めなくなったバグを修正し、すべてのディスプレイを Full Screen モードで使っていると仮想マシンが追加のディスプレイを認識できなくなった問題を解決し、10.6 Snow Leopard と 10.7 Lion の仮想マシン上に Parallels Tools をインストールすると真っ黒な画面になった問題を修正した。(標準版の新規購入 $79.99、Pro/Business Edition は年額 $99.99 購読、アップグレード $49.99、バージョン 11 のライセンスがあれば無料アップデート、293 MB、リリースノート、10.9.5+)

Parallels Desktop 11.1.2 へのコメントリンク:

Nisus Writer Pro 2.1.3 -- Nisus Software が Nisus Writer Pro 2.1.3 をリリースして、この古参のワードプロセッサに多数のバグ修正を加えた。今回のアップデートでは Nisus Writer が自動保存の遅延設定を無視することのあった問題を解決し、LibreOffice ベースのコンバータがバックグラウンドでアイドル状態にあるべき場合の CPU パフォーマンスを改善し、ある種の自動番号を含む書類でのクラッシュを修正し、OS X 10.11 El Capitan でマクロが正しく機能しないことのあった問題を修正している。(Nisus Software からも Mac App Store からも新規購入 $79、無料アップデート、221 MB、リリースノート、10.8.5+)

Nisus Writer Pro 2.1.3 へのコメントリンク:

ClamXav 2.8.9 -- Canimaan Software が ClamXav 2.8.9 をリリースして、ウイルス定義アップデートの信頼性を改善するとともに、デフォルトのツールバーに Quarantine ツールバーボタンを追加した。このウイルススキャナは今回から定義アップデートのチェックの際に毎回プロキシ設定をチェックするようになり、選択されたファイルをキーボードショートカット Command-Delete が(単に感染リストから削除するのでなく)ファイルとして削除するようにし、Finder Services/ コンテクストメニュー項目からスキャンする際の信頼性を改善し、ソースリストに追加された項目が正しく選択されなかったバグを修正している。(新規購入 $29.95、無料アップデート、23.3 MB、リリースノート,、10.6.8+)

ClamXav 2.8.9 へのコメントリンク:

セキュリティアップデート 2016-001 (Mavericks および Yosemite) -- Apple が OS X 10.9 Mavericks と 10.10 Yosemite 用にセキュリティアップデート 2016-001 をリリースして、これら二つのカリフォルニアの地名を冠した旧 OS リリースに関係するパッチをたった一つだけ含めた。(サポートページにリストされたそれ以外のセキュリティパッチはすべてこれと同時にリリースされた OS X 10.11.3 El Capitan に関するものだ。2016 年 1 月 19 日の記事“OS X 10.11.3 と iOS 9.2.1 がバグを修正”参照。)このアップデートでは libxslt (XML 書類で XSL 変換を実行する際に用いられるライブラリ) のメモリ処理を改良することによって型の取り違え (type confusion) に起因する脆弱性を修正し、悪意を持って作成されたウェブサイトに任意のコードを実行される可能性を塞いでいる。このセキュリティアップデートは Software Update から、または Apple の Support Downloads ウェブサイトからの直接ダウンロードでも入手できる。(無料、10.9.5 Mavericks 用は 288.3 MB、10.10.5 Yosemite 用は 369 MB)

Security Update 2016-001 (Mavericks and Yosemite) へのコメントリンク:


ExtraBITS、2016 年 1 月 25 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週の ExtraBITS では、National Security Agency の長官が暗号化を支持し、ある未亡人が亡くなった夫の App Store パスワードを入手するため Apple に戦いを挑まざるを得なくなり、Apple がミュージシャン向けに新しい iOS アプリをリリースし、iOS 9.3 が教育において持つ意味を概観した記事が出る。

NSA 長官、暗号化を支持 -- FBI 長官 James Comey も司法長官 Loretta Lynch も依然として暗号化を非難する発言を続けているが、情報セキュリティの意外な支持者がまたもう一人現われた。NSA (国家安全保障局) 長官の海軍大将 Mike Rogers だ。Atlantic Council シンクタンクにおける演説の中で、Rogers は「暗号化は未来への基盤である」と語り、最近 Office of Personnel Management (人事局) がハッキングを受けたことに言及して暗号化を促進すべきだと述べた。「だから『暗号化は悪いことなので排除すべきだ』と論じてばかりいるのは私にとって時間の無駄以外の何物でもない」と Rogers は語った。NSA における Rogers の前任者の空軍大将 Michael Hayden も、暗号化を支持する意見を最近述べている。(2016 年 1 月 14 日の記事“米国の元情報局長官、暗号化を支持”参照。)

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Apple、亡き夫のパスワードを望む未亡人に裁判所命令を要求 -- Apple がプライバシーに重点的に取り組んでいるのは良いことだが、時にはそれが残念な結果をもたらすこともある。72 歳の Peggy Bush は自分の iPad にゲームをダウンロードしようとしたが、亡くなった夫の Apple ID パスワードを知らなかった。彼女の娘が二ヵ月間にわたって Apple サポートと交渉し、シリアル番号も法的書類も提供したが、裁判所命令がなければ Apple がこの状況を解決することはできないという返事しか得られなかった。実際、Apple の契約条項には、本人が亡くなってもアカウントは譲渡できず、Apple がアカウントを解除することさえあり得ると書かれている。幸いにも、彼女が CBC News と Apple CEO の Tim Cook に訴えた結果、Apple は Bush にアカウントへのアクセスを許すこととなった。この話は、重要なパスワードを家族の間で共有するために計画を立てておくことの重要性を明らかにする。例えば 1Password for Teams を使ったり、または少なくとも 1Password のマスターパスワードのコピーを貸金庫にしまっておくなどの対策は必要だろう。

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Apple、iOS 用 Music Memos をリリース -- Apple が、ミュージシャン向けに新しい無料のアプリを出した。iPhone および iPad 用の Music Memos だ。内蔵の Voice Memos アプリと違って、Music Memos はミュージシャンの要求に応えて作られており、自動録音、バックアッププレイヤー、ピッチチューナーなどの機能を備えている。レコーディングを素早く取り込んで GarageBand やその他のオーディオ編集アプリに送ることができる、シンプルなツールだ。

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iOS 9.3、教育市場向け機能を装備 -- MacStories の記事で、Fraser Speirs が iOS 9.3 に搭載予定の新しい教育市場向け機能を概観する。例えば iPad 共有機能、教員向けの Classroom アプリ、(Apple School Manager ポータル経由の) Managed Apple ID などが登場する。来たるべきこのリリースにより、Apple は教育市場重点化を大きく一新し、それにより iPad の売り上げを促進することを狙っている。iPad の売り上げは最近のいくつかの四半期を通じて緩やかにだが着実に低下しつつあるからだ。とりわけ教育市場において Apple は Chromebook を気に掛けている。そちらの方が安価で、共有もし易く、多数の配備も簡単、キーボードも備えているからだ。

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