TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1357/20-Feb-2017

Verizon と T-Mobile からの圧力を感じつつ、AT&T と Sprint がそれぞれのデータ量無制限オプションを拡張した。ただし、いずれも注意点があることを見落としてはならない。Apple の 2017 年 Worldwide Developer Conference (WWDC) に参加したいと思っている人は、6 月にかつての開催地 San Jose に戻れることを期待しよう。チケットの抽選は 3 月末ごろだ。開発会社 Rogue Amoeba がシンプルながらパワフルな Mac 用オーディオデバイス管理アプリ SoundSource 3 をリリースし、Josh Centers がこれを無料で手に入れられる可能性について紹介する。もしも PDFpen が(または 1Password や Soulver が)起動時にクラッシュしているなら、何が起こっているか、どうすれば解決できるかを Adam Engst が解説する。最後に、Apple が不完全な iCloud 対応を iBooks に追加してから一年ほど経つが、電子ブックの達人 Michael Cohen が前回の批判記事に書いた内容を現状と比較して、Apple がどの問題を解決し、どの問題がまだ残っているかを調べる。今週注目すべきソフトウェアリリースは ScreenFlow 6.2.1、GarageBand 10.1.6、Parallels Desktop 12.1.3、Microsoft Office 2016 15.31 だ。

記事:

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AT&T と Sprint、無制限データ通信の提供を拡大

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: 清水 史彦 <qff01604@nifty.com>

Verizon Wireless が無制限のデータ通信プランを復活させた ("Verizon Wireless、「無制限」データ通信を復活" 2017 年 2 月 13 日参照) 時点で、言うなれば、「ドンキーコングのような」ハイレベルの戦いの幕が切って落とされた。T-Mobile は、ほとんど直ちに、同社の無制限 T-Mobile ONE プランに対する改善を発表した。これには、無制限の HD ビデオ・ストリーミングと、月に 10 GB までの高速モバイル・ホットスポット・データ通信が含まれている。今や、AT&T ならびに Sprint が、無制限プランのゲームで、自分たちのプランを改善することによって、後に続こうとしている。

無制限プランは、AT&T にとって、新しいものではない。同社は、数ヶ月前にこれを復活させたが、DirecTV と U-verse TV のユーザーのみに限定していた。今では、AT&T は、これを全てのユーザーに対して拡張しつつある。料金は、1 回線で月 100 ドルだ。そして、1 回線増えるごとに、月 40 ドル追加となる。このプランには、無制限の通話とショート・メッセージ、さらに、カナダおよびメキシコへの無制限通話と、120 ヶ国への無制限ショート・メッセージが含まれる。また、カナダおよびメキシコにおける無制限の通話、ショート・メッセージ、そしてデータ通信が可能となる無料の追加サービスもある。

AT&T の無制限データ通信プランの提供に含まれていない重要なものは、テザリング・データ通信だ。どうやら、iOS の Personal Hotspot オプションは、全く現れないらしい。もし、あなたが、Wi-Fi だけの iPad や MacBookと、セルラーの Internet 接続を共有したいのであれば、通信量に上限がかかっている AT&T の Mobile Share プランのうち、どれか一つを継続する必要がある。これは、容易な決断かもしれない。と言うのは、16 GB や25 GB の Mobile Share プランは、あなたが何回線必要かにもよるが、結局は、無制限プランよりも安くなる可能性があるからだ。

驚くべきことに、1 回線の場合、AT&T は Verizon よりもずっと高い。だが、複数回線になると両社の金額は似たようなものとなる。

上記の AT&T の 4 回線の値段は間違っているように見えるだろうが、謎めいた 40 ドルの払い戻しが含まれているのだ。払い戻しが行われるまでは、実際には月 220 ドルで、払い戻しを受けるには、支払いを 2 回行う必要がある。AT&T は、なぜ、物事をこんなにややこしくしているのだろうか?なお、AT&T は、Verizon のように、あなたが 22 GB を使ってしまった後で、データ通信速度の優先順位を考え直すかもしれない。

AT&T は、Stream Saver と呼ばれる T-Mobile 風の機能も導入した。この機能によって、ビデオは自動的に DVD 画質まで画質が落とされ、かくして、あなたのプランにおけるデータ使用量が少なくなる。

Sprint は、負けまいとして、自動払いで月 50 ドルの無制限データ通信、そして、追加の 4 回線までは、向こう一年間、月 90 ドルの均一料金で(その後は、追加した回線の料金は顕著に上がることになる。)、同社の無制限データ通信プランの提供について改善を行なっている。同社のプランにおいても、無制限の通話とショート・メッセージ、HD 画質のビデオ・ストリーミング、そして、10 GB のモバイル・ホットスポット・データ通信が含まれている。

どの無制限プランがあなたにとって最適であろうか? Gizmodo の ChristinaWarren はこれらを比較して、T-Mobile が優れていることを見出した。だが、多くのユーザーにとって、最適な選択は、通信可能なサービスエリア、価格、そして、機能の組み合わせによって決まる。これらを考え合わせると、目下のところ、Verizon が優れていると言える。

さて、セルラー空間におけるこうした急速な変化を引き起こしたものは、何だったのであろうか? T-Mobile は Verizon からユーザーを急速に奪いつつ ある。これは、2017 年第一四半期に急激に立ち上がったトレンドだ。T-Mobile の CEO である John Legere の型破りな "Un-carrier" 戦略が有効に働いていて、これが、ワイヤレス業界を変えつつある。

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WWDC 2017、San Jose に戻って 6 月 5 日から 9 日まで開催

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: 清水 史彦 <qff01604@nifty.com>

Apple が 2017 年の Worldwide Developer's Conference の日程を、6 月 5 日から 9 日までと発表した。この発表には驚きもあった。会場が、California 州 San Jose の McEnery Convention Center に戻るということだ。San Jose では、WWDC を 2003 年まで開催していたが、その後、Apple は、San Francisco の Moscone Center に WWDC を移した。会場が新しい場所に移ったということが、Apple が WWDC の日程をなぜこんなに早く発表したかということの主要因かもしれない。普通、発表は 4 月に行われるのが通例だ。

Daring Fireball の John Gruber は、Apple のワールドワイド・マーケティング担当上級副社長 Phil Schiller から 手短かに説明を受けた。そして、Schiller は追加情報を提供した。近年同様に、Apple は、チケットをくじ引きで配布する。くじ引きが始まるのは、2017 年 3 月 27 日だ。

会場が San Jose に戻ることには、いくつかの利点がある。McEnery Convention Center の至近距離にあるいくつかのホテルを除けば、San Jose のホテルは、高価なことで悪名高い San Francisco よりも、一般に安価である。また、McEnery Convention Center は、Apple の新キャンパスからほんの数分の距離にある。このため、もっと多くのApple の従業員が、もっと容易に参加できることになる。これに対してMoscone は、道路の混雑状況にもよるが、Apple 本社から、少なくとも車で 1 時間の距離にあり、近隣の駐車場は、しばしば駐車できなかったり、値段が高かったりする。

問題は、San Francisco に比べて、小さくて静かな San Jose が、夜の懇親会や、WWDC 後のネットワーキングのために、とりわけ、WWDC のくじ引きで幸運に恵まれなかった人たちにとって、San Francisco と同様に機能するかどうかということである。会場の移動は、AltConf のような無料イベントも、計画を変更しなければならないということも意味する。

Gruber は、この変更の主な理由は、Apple がさらなる宣伝を必要としておらず、できるだけ本社の近くで WWDC を開催したいと思っているためだと推測している。Schiller は、「WWDC が故郷に帰るような感じがする。」と、Gruber に語ったとのことだ。

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SoundSource 3、Mac でのオーディオ制御を容易に

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

macOS 10.12 Sierra で Apple は スピーカーメニューバーアイコンから使う Volume メニューを拡張して、音量調整とオーディオ出力切替えをし易くした。以前は、これらの操作表示を見るには Volume アイコンを Option-クリックする必要があった。今は、これを Option-クリックすると、オーディオ入力の切替えも手早く出来る。(Volume アイコンがメニューバーに出てこない人は、System Preferences > Sound で Show Volume in Menu Bar を選択し有効にする。)

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しかし、オーディオ関連の設定にもっと手早くアクセスしたいのであれば、Mac 上でのオーディオ全般の達人である Rogue Amoeba がパワーアップした代替策を提供している:SoundSource 3 である。これは実際には 2000 年代初頭に出され、その後長いこと休止していたユーティリティに対するアップデートである。もし Rogue Amoeba の他のアプリに対する現行版のライセンスをお持ちなら、SoundSource も無料で登録出来る。そうでなければ、たったの $10 で、また無料お試しも提供されている。

無料コピーの資格をお持ちなら SoundSource ページに行き、Purchase をクリック、そして次のページにある Get a Complimentary SoundSource License の下にある Learn More をクリックする。次のページで、メール、ライセンス名、そして、あなたの Amoeba 製品のライセンスコードを入力し、Submit をクリックする。

Volume の様に、SoundSource はメニューバーの中に存在する。そのアイコンをクリックすると、出力機器、入力機器、そしてどの機器がシステムオーディオに使われるべきかを選択するオプションが見えてくる。更に、個々のオーディオ源に対する音量も個別に調整出来る。

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他の気の利いた機能に Play-Thru がある。これは、オーディオ入力を選択しそれを選択した出力を通して再生させてくれる。Open Play-Thru Window をメニューバーから選択し、設定を選択、そして Start Play-Thru をクリックするだけである。この Play-Thru は、マイクがちゃんと働いていてミュートされていないことを確かめたり、録音のための入力レベルを調べるには便利な機能である。

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もし Volume メニューバーアイコンを SoundSource で置き換えたい場合の手順は:

  1. ログイン時に SoundSource が開くようにする。SoundSource > Options > Preferences を選択、そして Start SoundSource at Login を選ぶ。

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  2. Dock の混雑を減らすため、SoundSource Dock アイコンを不能にする。SoundSource Preferences ウィンドウで、Only in The Menu Bar を選択する。SoundSource は直ぐに閉じ、そして再起動する。

  3. 最後に、標準の Volume メニューバーアイコンを System Preferences > Sound に行き、Show Volume in Menu Bar のチェックを外して不能にする。

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SoundSource 3 は、オーディオのパワーユーザーを狙ったもので、入力及び出力源やレベルを頻繁に調整しなければならない人向けである。これは与えられた仕事をきちんとこなす簡単なユーティリティである。とりわけ、もし Rogue Amoeba の他の製品を既にお持ちなら、インストールする価値は十分にある。

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PDFpen 8.3.1 の起動時クラッシュを修正する (説明する)

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今日、私は PDF で作業をするために PDFpenPro 8.3.1 を起動しようとして、即座にクラッシュしたので驚いた。アプリがロードし始めるよりも前に、瞬時にクラッシュしたのだ。PDFpenPro は私の MacBook Air の上でも吹っ飛んでしまった。これは、とても奇妙だ。私の MacBook Air も iMac も結構長い間 macOS 10.12.3 Sierra を走らせているし、このアプリはつい最近までどちらの Mac でも正しく動作していたからだ。

幸いにも、私が最初に思い付いた解決策がうまく働いた。私がしたのは、新バージョンの PDFpenPro 8.3.2 を手動でダウンロードすることだった。古いバージョンを新しいバージョンで丸ごと置き換えたところ、PDFpenPro は正常に動くようになった。

その後間もなく、PDFpen と PDFpenPro のすべてのユーザーにあてて開発者の Smile から電子メールが届き、迷惑をかけたことを詫びるとともに、問題点を簡潔に説明し、私が思い付いたものと同じ解決策を伝えた。

もっと詳しいことが知りたいと思って、私は Smile の Greg Scown に連絡してみた。電子メールにあった説明をさらに詳しく述べた彼の言葉が、今日の Apple 開発がいかに複雑に入り組んだものになってしまっているかを明らかにしてくれた。Greg によれば、PDFpen がクラッシュした理由は、しかもそれが実際に起動されるより前にクラッシュした理由は、Apple が発行した Smile の開発者署名証明書の期限が切れたからであった。コード署名 (code signing) は、アプリが既知の入手源から来たものであること、最後に署名されて以後に変更を受けていないことを、ユーザーに保証するための手段だ。つまり、悪い奴らが正当なアプリにマルウェアを添付するのを防止するためのものだ。

以前には、コード署名証明書が期限切れとなっても、既に出荷済みのソフトウェアには何の影響もなかった。OS X 10.7 Lion、10.8 Mountain Lion と 10.9 Mavericks のユーザーのために Smile が今も提供し続けている PDFpen 6.3.2 は、はるか昔に期限切れとなった証明書で署名されているけれども、何の問題もなく起動する。

けれども PDFpen 8 になって変わったのは、コード署名を受けていることに加えて、プロビジョニング・プロファイルも使っていることだ。これは基本的に Apple が発行した許可書であって、オンラインにあるデータベースと照合されて、そのアプリが特定のアクションを実行できる許可を与えるために使われ、そのアクションは entitlement と呼ばれる。PDFpen では、Mac App Store を通すことなく直接販売されたアプリが iCloud にアクセスできる権利が、この entitlement によって認められる。このような権利は一年前には一切認められていなかった。

PDFpen のプロビジョニング・プロファイルは、Smile のコード署名証明書を使っても署名されている。この証明書が期限切れとなった結果、プロビジョニング・プロファイル自体も無効になってしまった。PDFpen のコードが走り始めるよりも前の時点で taskgated-helper と呼ばれるアプリがその判定をするので、Smile としてはエラー状況を判定してユーザーにエラーを呈示することもできない。開発者のコードは一切走らないので、何が起きているかを識別してユーザーに対して開発者に連絡しなさいというエラーメッセージを表示するのは、すべて macOS の責任のはずだ。

どうやら問題は、Mac App Store の外で販売されており、かつプロビジョニング・プロファイルを使っているアプリのみに限られているようだ。Smile のコード署名証明書がたった一年間しか有効でないことを考えれば、他の直接販売アプリで iCloud 用の entitlement を使っているものも間もなく同じ問題に突き当たる可能性が高いだろう。PDFpen と同様、現行の証明書を備えた新バージョンのアプリをダウンロードすれば問題は解決するはずだ。この記事を公開して以後、1PasswordSoulver も同じ問題の犠牲となったと聞いている。

Apple は Smile のコード署名証明書を五年間有効に更新したので、もし他の開発者たちも同様に長期の更新を受けるなら、macOS 内部でこの問題を解決するための時間的余裕が Apple に与えられることになるだろう。

Mac App Store で販売されたアプリはこの種の問題に無縁であることに注意しよう。そういうアプリは、配布の際に開発者による署名でなくて Apple による署名を受けているからだ。もしも Apple が自らの証明書を最新のものにするのを怠れば、膨大な数の Mac App Store アプリまでクラッシュする可能性があるので、Apple は自らの証明書を真っ先に更新し続ける必要がある。実際 2015 年に、Apple の証明書の更新トラブルの結果、数多くの Mac App Store アプリが起動できず、"damaged" というエラーを出したことがある。今回のものとは少々性質の異なる問題ではあったが、これを見ても Apple でさえ必ずしもあらゆるものがどう組み合わさるかをすべて予測できるとは限らないことが分かる。

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2017 年初頭における iBooks の状況

  文: Michael E. Cohen: [email protected], @lymond
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

iBooks ライブラリを iCloud Drive に保存できる新バージョンの iBooks を Apple が Mac 用と iOS 用にリリースしてから、まだ一年経っていない。その当時、私はその新しい iCloud 対応版の iBooks アプリに数多くの苦痛を伴う問題点を見つけて、それを記事にした。(2016 年 3 月 30 日の記事“iBooks と iCloud Drive の組合せは信頼性に欠け混乱を招く”参照。)そして、あれから十ヵ月以上経った今、数々のアップデート(iOS は 9.3.1 から 10.2.1 まで、macOS は 10.11.4 から 10.12.3 まで、iBooks アプリは Mac 用が 1.5 から 1.8 まで、iOS 用が 4.7 から 4.10 まで)も経たので、あの記事で私が取り上げた問題点の現状をチェックして、Apple がどの問題を解決し、どの問題がまだ残っているのかを、調べてみる時期が来たと思う。

注意して頂きたいのは、以下で述べることも、元の記事に書いたことも、すべて私が自分のデバイス上で体験したことであって、他の人たちのセットアップを説明しようとはしていないという点だ。近年の私は、2015 年中頃の 27 インチ 5K Retina ディスプレイモデル iMac と、iPhone 6 Plus、iPad Air、それに 9.7 インチ iPad Pro を使っており、すべてがそれぞれに最新リリース版のオペレーティングシステムを走らせている。これらのデバイスはすべて、私の個人用の iCloud Drive ベースの iBooks ライブラリにアクセスしていて、そこには 700 冊以上のタイトルが含まれている。そうは言っても、私は自分自身の体験のみを書くけれども、似たような iBooks の問題点に関する質問や不満の声は TidBITS や Take Control の読者たちから数多く届いている。

今回は、元の記事での見出しと同じ見出しを付けて、扱う話題を以下のように切り分けた:

では、私たちがどこまで来たか... それとも来ていないかを見て行こう。

iCloud Drive/iBooks 統合を有効にする -- これに関しては、あまり変わっていない。今もまだ、iBooks で iCloud Drive を有効にする手順は一年前と同じだし、Apple のサポート書類が役に立たない点も変わらない。

とりわけ、存在している説明書は iBooks ライブラリの内容がほとんどすべて iBooks Store から入手したものであることを前提に書かれていて、私のようにライブラリ内容の大半が他の入手源から取り寄せた本であるようなユーザーには、ほとんど助言が得られない。さらに厄介なのは、以下でも述べるように、購入したものでない本の同期に関する説明の中に、情報が古く不正確なものが見られることだ。

アップロードの苛立ち -- 元の記事に書いたアップロードの際の苛立ちは、ほぼ完全に消えた。ただしそれは、今の私が以前と違うやり方で物事を扱っている結果だという方が正しいかもしれない。私は、iOS デバイスから本をライブラリに追加することはめったにない。その目的には Mac 上の iBooks を使うし、それをする際には、新たに追加された本のサムネイルに示された「アップロード中」のバッジが消えるまで待ってから iOS デバイス上で探すようにしている。ほとんどの本で、アップロード作業は一分か二分しかかからない。

その上、十ヵ月前と違って、最近の私は何百冊もの本を一挙に iCloud Drive ライブラリへ移す必要がないので、私が初めてライブラリを iCloud へ移行させた際に遭遇した問題はもう起こらない。けれども、そのような移行を現時点でしようとしているユーザーが去年私が体験したのと似たような問題に出会わないという保証はない。

幸いにも、私のどのデバイスの上でも、コレクションの中で私が手で入れ替えておいた本の順序は、個々のデバイスごとに安定しているようだ。つまり、私が最初にライブラリを移行させた際に見られたような、本の並び順が勝手に入れ替わる問題は起こっていない。

データ破損の問題 -- 去年私がしたライブラリの移行の結果、私のライブラリには破損して読めなくなった本がかなりの数発生した。去年の記事で、私は破損した本を取り除くために必要だった手順を述べた。

それ以後、私が新たに出会ったデータ破損は片手で数えられる程度の回数しかなかった。それら少数の状況すべてで、破損が起こったのは私が iBooks Store 以外から入手した本であり、壊れた本を壊れていないバックアップのコピーで置き換えることで問題は解決した。(その通り、私は自分が iBooks Store 以外から入手した電子ブックはすべて、iBooks ライブラリに入れる前に iBooks の外にバックアップしている。皆さんにも同じことをするようお勧めする。)

けれども、私の iCloud Drive で起こった破損問題のうち一件は、前回の記事を書いた時点で私がまだ経験していなかったタイプのもので、今もまだ続いている問題だ。これは、本をその新しいバージョンで置き換えることに関係する。私は小説を書いているときには(私が時々熱中することのある、比較的無害な道楽だ)現時点での原稿の EPUB 版を作って、手直ししたい誘惑に駆られることなく読めるようにすることが多い。たいてい、その種の EPUB を一月に六個かそれ以上作る。

問題は、古い原稿の EPUB を新しいもので置き換えようとする際に起こる。常にではないが、かなり頻繁に起こっている。iBooks が、本の長さを書き換えるところでつまずいてしまうのだ。例えば古い EPUB が 126 ページ、新しいものが 143 ページだった場合、iBooks は 126 ページより後を読ませてくれない。127 ページから 143 ページまでは存在しているが、126 ページより先へ iBooks がページをめくらせてくれない。古いバージョンのページ数を超えた部分へ行くには検索によるしかない。その本を iBooks ライブラリから削除しておいて数日間そのまま待てば、この問題が修正されることも時々はある。その場合、私が交換用の新しい本をアップロードすれば iBooks は古いページ番号上限を「忘れて」くれる。あくまでも時々はだが。

克服出来ない障害 -- 去年、私は克服出来ないように思えるいくつかの障害をリストアップした。ここにそのリストをそのまま並べて、それぞれの現状に関する私の見解を述べよう。

結論 -- iBooks は去年私が批判記事を書いた時点ほどには不確かで混乱を招くものとは言えないが、忠実な iBooks ユーザーたちに応えられる程度にまで改善されたとも言えない。その上、Apple がほんの少ししか提供していないサポート書類も大雑把で不正確なものに過ぎず、Apple 内部のサポートや説明書を担当する部門でさえ iBooks を無視しているという印象を受ける。

その印象は、さまざまの細々とした不適切なことがらによってますます悪化する。最後にそういう細かい点を二つだけ挙げておこう:

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今月の初め頃、Daniel Steinberg が“I Wish Apple Loved Books (Apple が本を愛してくれさえしたら)”と題してブログ記事を書いた。その心情に、私は 100% 同感だ。Apple の内部を覗き見るのは無理なので、Apple の iBooks への愛情がどれほど深いかを判定することは私にはできないが、外側から感じる限りでは、Apple がどんな愛情を持っていようとも、過去のリリースごとにそれが毎度毎度浅くなりつつあるようにしか見えない。電子ブックを愛する私のような者にとって、それは胸が張り裂けるような思いだ。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2017 年 2 月 20 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

ScreenFlow 6.2.1 -- Telestream が ScreenFlow 6.2.1 をリリースした。人気のスクリーンキャスト録画アプリのメンテナンス・アップデートで、数多くのバグ修正を施すとともに、2K および 4K のビデオを Vimeo へ出版するオプションを追加している。今回のリリースでは Photos のディレクトリ構造への対応を確かなものにし、スクラッチ・ディスクの設定が正しくなかったのを修正し、Timeline で 1 分のマークの後の秒数が表示されなかった問題を解消し、Color Controls キャンバス上のビデオの周囲に黒い縁取りを追加し、また MP3 ファイルを持つ ScreenFlow プロジェクトを複製すると MP3 ファイルが聴こえなくなったバグを修正している。(Telestream ウェブサイトから新規購入 $99、Mac App Store からは $99.99、61.5 MB、リリースノート、10.10+)

ScreenFlow 6.2.1 へのコメントリンク:

GarageBand 10.1.6 -- Apple が GarageBand 10.1.6 をリリースして、そのたった一行のリリースノートにお決まりの「安定性の向上、不具合の修正」という詳細不明の文言だけを記している。けれども、Apple セキュリティアップデートサポートページには今回の新バージョンでメモリ破損の脆弱性に対処し、これが悪意を持って作成された GarageBand プロジェクトファイルを開くと任意のコードが実行される可能性があるものであったと書かれている。Apple はメモリ処理を強化することによりこの問題を解決したという。(新しい Mac には無料で付属、Mac App Store から新規購入 $4.99、無料アップデート、956 MB、10.9+)

GarageBand 10.1.6 へのコメントリンク:

Parallels Desktop 12.1.3 -- Parallels が Parallels Desktop 12.1.3 (build 41532) をリリースして、いくつかのバグ修正を加えた。この仮想化ソフトウェアは Parallels Desktop が起動ごとに Mac の管理者パスワード認証情報を要求するのを止め、外付けディスプレイを再接続するとその上でマウスが働かなくなった問題を解消し、PDF へのプリントをしようとすると起こったクラッシュを回避している。(Standard Edition の新規購入 $79.99、Pro/Business Edition は年額 $99.99 の購読、無料アップデート、256 MB、リリースノート、10.10.5+)

Parallels Desktop 12.1.3 へのコメントリンク:

Microsoft Office 2016 15.31 -- Microsoft が Office 2016 アプリケーションスイートのバージョン 15.31 をリリースして、 Word、Excel、PowerPoint に 2016 年型 MacBook Pro の Touch Bar への対応を追加した。コンテクストに対応して、Touch Bar がオブジェクト回転スライダー (より直感的かつ正確な回転ができる)、通常はスクリーン上のリボンにある一連のテキスト書体、一連のカラー (テキストやスプレッドシートのセルに色を追加できる)、スライドのサムネイルやタイマー (PowerPoint)、最近使った関数 (Excel、セルの中で等号をタイプすると出る) などを表示する。

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Touch Bar 互換性を発表した最初のブログ記事 (2016 年 10 月 27 日付け) では Outlook も対象に含まれていたが、バージョン 15.31 では Word、Excel、PowerPoint のみが対応するようだ。2016 年型 MacBook Pro を持っていない人にとっては、今回のバージョンの変更点は一点のみ、Microsoft AutoUpdate がバージョン 3.8.4 にアップデートされたことだ。(一回限りの購入ならば $149.99、Microsoft AutoUpdate 経由で無料アップデート、リリースノート、10.10+)

Microsoft Office 2016 15.31 へのコメントリンク:


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日本語版最終更新: 2017年 02月 24日 金曜日 , S. HOSOKAWA