TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1410/26-Mar-2018

私たち TidBITS では今週中に WordPress、SendGrid、Discourse への移行をする予定なので、今週号は一つの時代の終わりを告げ、新しい時代の始まりを開くものとなる。Adam Engst が、私たちが皆さんのために新しいシステムへ移させて頂く皆さんの TidBITS アカウントが、新しいシステムでどのように扱われるかを説明する。あなたの Mac で Finder が固まってしまったりすることはないだろうか? もしもあなたが Dropbox ユーザーなら、Josh Centers が解決法をお示しできるかもしれない。Josh はまた、Apple TV 4K で HDR の厄介事に首を突っ込んでみた経験も語る。最後に Charles Maurer が寄稿記事で、iPad を使って読書をする際に最良の環境設定を見つけ出す方法を自らの視覚研究体験に基づいて解説する。今週注目すべきソフトウェアリリースは、VLC Media Player 3.0.1、ScreenFlow 7.3、Mellel 4.1、OmniOutliner Essentials および Pro 5.3、それに Keyboard Maestro 8.2 だ。

記事:

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TidBITS の次世代インフラでアカウントはどのように機能するのか

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: 清水 史彦 <qff01604@nifty.com>

Tonya と私は、先週ずっとインフルエンザにかかっていたものの、私たちは依然として、私たちの Internet インフラの移行のスイッチを、今週後半にオンにすることを計画している。これは計画であって約束ではないが、引き続き全てがうまく行けば、私たちの新しいシステムが、TidBITS に申込みしている全員に対して、メールによる歓迎メッセージを送信するはずだ。このメッセージには、活動を開始したサイトへのリンクと、TidBITSアカウントのパスワードを変更するための説明が含まれるであろう。

パスワードの変更は、皆さんの多くにとって、ただちに関係があるだろうから、私は、私たちの次世代のインフラ (ArcusTechDigitalOcean でホストされている) で、アカウントをどのように使おうとしているのかについて説明したいと思う。以前と同様に、TidBITS の電子メール版を申し込むためには、皆さんは、アカウントを取得しなければならない。これによって、私たちは、皆さんのメール・アドレスを知ることになる。WordPress ベースのコンテンツ管理システムにおける標準的なアカウントには、皆さんの名前、メール・アドレス、パスワード、そして、どんな申込みを選んだかが含まれる。また、アカウントには、プロフィールの画像を変更するためのリンクも含まれていて、この画像は、皆さんが寄せてくれる全てのコメントに関連付けられる。パスワードはハッシュ化、すなわち、切り刻まれ、そして、塩漬けにされて (システムは、bcrypt を使って暗号化する)、データは良い味で保存されるが、どんなクラッキング・ソフトウェアも介入できないようになっている。

私たちの仕事をサポートしてくれる、善良で正直な市民の皆さんのために、アカウント情報には、TidBITS 会員資格の詳細や制限も、パーソナライズされた RSS フィードの全文とともに含まれている。(会費は、WordPress向けの Paid Memberships Pro プラグインで管理されていて、全ての支払いは、Stripe を通じて行われる。) なので、そうした RSS リンクを見つけるために、そしてまた、私たちが皆さんのために交渉した Mac ソフトウェアの多くの割引にアクセスするために、皆さんはログインしなければならない。ログインした TidBITS 会員は、有料広告を目にすることもない。

私たちは、会員レベル、有効期限、そして、更新タイプのような皆さんの TidBITS 会員情報は移行させたが、これは全く新しいシステムなので、以前のように自動更新はなされない。更新時期が来たら、新システムから皆さんにメールが送られる。また、皆さんのアカウント・ページで、更新の日付を確認することもできる。

私たちは、コメント用に、Discourse と呼ばれるシステムを使うことになる。そして、これもアカウントを必要とするが、これにはシングル・サイン・オン機能があり、この機能によって、認証用に、私たちの WordPress アカウント・システムを頼りにすることができるようになっている。一度、メインのTidBITS サイトにログインすれば、Discourse でコメントを投稿するのに、再度ログインする必要はない。Discourse には、皆さんが設定可能な多数のユーザー・プリファレンスがあり、よって、これは探索に値するであろう。

メールについては、私たちは、トランザクション・メール・サービスの SendGrid を採用することにした。毎週刊行の TidBITS メーリングリスト(英語版、オランダ語版、ないし、日本語版) や、出版後に即座に送られる個別の記事 (TidBITS 会員専用) の購読や購読中止は、皆さんのプロフィール・ページでチェックボックスをクリックするだけで可能だ。このアクションによって、SendGrid のリストでは、自動的にふさわしい事が起こり、それで、リストと WordPress との同期が保たれる。なので、またもや、TidBITS のアカウントは、データの中心的な源となる。

[訳者注: 現在 TidBITS 日本語版を電子メールで受け取っておられる方は、何もする必要はありません。現在の送信先は自動的に新しいメーリングリストに引き継がれます。今後、講読の変更をなさりたい場合には、どうぞその時点でご自分の TidBITS アカウントを作成して、プロフィールページで講読設定を変更して下さい。]

SendGrid に関しては、上記に関して二つの例外がある。第一に、もしあなたのアドレスからメールが宛先不明で戻ってきた場合には、SendGrid は、そのアドレスを、ローカルで、申込み取消のリストに自動的に加える。だが、SendGrid は、その事実を私たちのシステムには伝えない。同様に、メールの一番下にある Unsubscribe のリンクをクリックした人は誰であれ、SendGridにおいて、直接取り消されるが、それは、WordPress には伝えられない。こうしたことが可能なリンクは作ろうと思えば作れるかもしれないが、手間がかかる割には有用性が低いと思われた。こうした例外の結果として、もし、メールが宛先不明で戻ってしまったり、リンクをクリックして申込みを取消してしまった後で、再び申込みをしたい場合は、[email protected]宛に、助けを求めて、私たちにコンタクトする必要があるということだ。

これで、新しいサイトに皆さんがアクセスできたらすぐに開始するための概念的な説明が、皆さんに十分伝えられているものと思いたい。何が変わろうとしているかについて、別の側面を説明するために、将来、私は、もっと書いてみようと思う。

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Finder がフリーズ? Dropbox と詰め込み過ぎのフォルダが原因かも

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: 清水 史彦 <qff01604@nifty.com>

ここ数ヶ月、私の iMac は次第に遅くなっていった。特に、とても恐ろしい死のビーチボールを、私が希望する以上に、はるかに頻繁に目にしていた。そして、Finder はフリーズするのが普通になり、私は、1 日に何回も Finderを再起動する羽目になった。(もしあなたがこれを行う必要があるのなら、Option を押下して、Dock で Finder のアイコンをクリック & ホールドし、そして、Relaunch を選択すること。Dock のもっと多くの技については、"macOS の隠れた宝: Dock を使いこなす" 2017 年 3 月 6 日を参照のこと。)

最初に私は、あらゆる通常の修復を試みた。例えば、~/Library/Preferences/で、Finder の全ての plist ファイルを消去したり、Disk Utility でFirst Aid を走らせたりするといったようなことだ。Dropbox が何らかの形で関わっている予感のもと、私は、Dropbox の Accessibility へのアクセスを無効にすることさえ試みた。そして、これは、束の間、有用に思われたが、ビーチボールは再びしょっちゅう現れるようになった。私が試さずにいたものの中で主なものは、クリーン・インストールだ。だが、macOS 10.12 Sierraをインストールした際に、私はそうしたことを一度行っていたので、それから間もなくもう一度行うというのは、やり過ぎだと思われた。

私は、自分の iMac を再構築しなくても済むような解決法を探し続けた。そして、Internet 中を探し回った後で、Dropbox の Finder との統合をオフにすることで、この問題が解決されることが分かった。以下、どうすれば良いかお示しする。

  1. メニューバーの Dropbox アイコンをクリックする。
  2. 右上隅のギアの形をしたアイコンをクリックし、Preferences を選択する。
  3. "Enable Finder integration" のチェックを外す。

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Dropbox の Finder との統合を無効にすることの欠点は、そうすることによって、Dropbox と同期するファイルやフォルダ用の Finder 内の同期アイコンが、Finder のコンテキストメニュー内の Dropbox 用の特別なオプションと共に、消えてしまうことだ。こうした機能を失うのは面白くなかったので、私は探索を続けた。

最終的に、私は、きわめて多数のファイルを含むフォルダが、Dropbox を、そして、かくして Finder を、フリーズさせる可能性があるというヒントをいくつか見出した。これが、Dropbox のフォルダ以外のフォルダに対しても当てはまる可能性があるというのは、筋が通っているとは言えないが、私が自分の Downloads フォルダから、多くのジャンク・ファイルを取り除いた(そこには、1500 を超えるアイテムがあり、26 GB を消費していた) ところ、ビーチボールやフリーズが復活することなく、Dropbox の Finder との統合を有効化することができた。

だが、私には、ある理由で、巨大だが、ジャンクでいっぱいになっている訳ではないフォルダがいくつかあった。Dropbox の Finder との統合を再度有効化した後、一週間は着実に動作していたが、こうしたフォルダの一つをブラウジングしていた最中に Finder がフリーズして、それも終わりを告げた。そのフォルダには、およそ 8800 個ものアイテムがあるのだ。私は、Finder の統合を再度オフにして、Finder を再起動した。それ以来、一週間というもの、私は問題を何ら目にしていない。私は、今度こそ、この解決法が長続きすることを願っている。

なので、もしあなたがこんな風に Finder の問題に悩んでいるのであれば、Dropbox の Finder との統合を切り替えて、数分かけて、むやみに詰め込み過ぎたフォルダをきれいにする価値がある。おそらく、あなたは、どのフォルダに莫大な数のファイルがあるか分かっているだろうし、たとえそうでないとしても、DaisyDisk は、そうしたフォルダを見つけるのに便利なツールだ。無料のオプションとして、OmniDiskSweeper か、あるいは、オープン・ソースの GrandPerspective に目を向けてもいいだろう。

もしあなたが、Dropbox を使っている最中に、同様な動作上の問題を経験したことがあるのであれば、コメントで私に知らせていただきたい。私には、その問題が、Dropbox アプリにあるのか、Finder にあるのか、あるいは、特定の環境におけるこの二つの何らかの組み合わせにあるのかは分からない。だが、私は、この問題に関連する技術者が、問題の真相を探る手伝いをしたいと思う。

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Apple TV 4K の HDR は悪夢だ

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

これは言いたくないが、Gene Munster は正しかった。前 Piper Jaffray アナリストは長年にわたっていつも冷笑され続けてきた。と言うのも、彼は Apple の投資家電話会議で 毎回 経営陣に Apple ブランドのスマートテレビセットを作る計画があるかを質問したからである。しかし、私の Apple TV 4K で HDR を働かせようと何週間も格闘した後では、もし Apple がテレビ事業で成功しようと思うなら、最善の策はきちんと動作するテレビセットそのものを出荷することだと思わざるを得ない。私は4年にわたり “Take Control of Apple TV” を書きそしてアップデートし続けているので、もし 私が 混乱しているのであれば、普通のユーザーにはまず望みはないと自信を持って言える。

可能な限り単純に言えば、HDR ビデオはこれまでよりも幅広い色域で映画を見られる様にしてくれる。4K ビデオの違いは、巨大なテレビがあるか、或いは画面の極めて近くに座るかでもしない限り感じられないが ("Apple TV、ようやく 4K に参入、しかし高くつく覚悟を!" 12 September 2017 で説明した様に)、HDR はもっと顕著な変化であり、そして Texas 州ほどの大きさのテレビも必要としない。

自分のテレビで設定しようと試みることなく HDR がどの様なものか見たいと思うのであれば、4K HDR iTunes ビデオコンテンツを iPhone 8, iPhone X, 或いは 2017 iPad Pro で見ることが出来る ("HDR 映画が 2017 年型 iPad Pro タブレットでも視聴可能" 16 September 2017 参照)。

しかし、大画面上で体験したければ、Apple TV 4K が必要となる。これが問題の始まりである。その設定を有効にすれば良いだけではと思われるかもしれないが... それは見当たらない。或いは、強制的にその設定に出来るかもしれないが、奇妙なことが起こり始める:Apple TV の動作は遅くなり、テレビ上には得体の知れない閃きが出たり、奇妙な色の縞が出たり、或いは単に画面がフリーズしてしまったりする。下記の写真にあるのが私が経験したもので、これらの問題を解決するために試せることを挙げてみる。

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HDR のための準備は出来ていますか? -- まず最初に、HDR のための正しい設定が出来ているか確かめる。ハードウェアとして必要なものは:

私は、長年 HDMI ケーブルは HDMI ケーブルであると言ってきた。しかし、これは最早常に正しいとは言えない。HDR 用には、 "高速" HDMI ケーブルとして知られるものが必要で、これは 4K 解像度、60 Hz リフレッシュレート、そして HDR 色に必要な広帯域要件を満たすべく設計されている。良い知らせは、高速 HDMI ケーブルは高くないことである:私は Amazon で $6.99 で買えた。しかしながら、多くの人が Apple が販売する $29.95 Belkin HDMI ケーブルに信頼を置いている。私も、それを最後の砦とするかも知れないが、その必要があるとは思えない。

あなたのテレビの仕様を調べる時、二つの主流の HDR フォーマットがあることに注意が必要である:一つは HDR10 で、より広く採用されており、そしてもう一つは Dolby Vision だが、こちらの方が視覚的に優れている。Dolby Vision をサポートするテレビは、HDR10 にも対応するが、反対はそうではない。

これら全てをさらに混乱させるものに、最近の多くのテレビではユーザーはそのソフトウェアをアップデート出来ることがある。私は、Apple TV 4K を紹介する記事の中で、次の様に言った:

例えば、私の 2015 年の Sony は HDR をサポートするが、テレビ自体の上で走る Android アプリ経由でしかしない。その理由は、その HDMI ポートは HDMI 2.0 であり、HDR 信号を伝送する最小限の要件である HDMI 2.0a ではないからである (勿論、HDMI 2.1 は HDR をサポートする)。

結果的には、Sony テレビのアップデートの一つがこの問題を修正したのだが、そうしたのがどれかは定かではない。私がこれを発見したのは偶然でしかなく、ある晩私のテレビの設定を見直していて、たまたま Settings > Picture & Display > Dynamic Range に辿り着いただけである。皆さんもテレビの設定を折りを見つけて探索して見るのは価値のあることである。

また、コンテンツが HDR をサポートしていることを確認することも大事である。iTunes Store では、映画のリストでこれを分かり易く表示している。4K のアイコンを探せば良い - もしその映画が HDR で出ていれば、その隣に Dolby Vision 又は HDR と表示されている。

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しかし、コンテンツが Dolby Vision で、テレビは HDR10 にしか対応しない場合、テレビは何らかの HDR を表示するのであろうか、或いはこのデータそのものを完全に無視するのであろうか? 私には分からない。どうも、テレビの中にはフォーマット間の翻訳をしてくれるものもあるらしいが、はっきりしない問題である。

一般的には、Hollywood の大手スタジオからのより新しい映画は 4K で、何らかの HDR.サポートをしていると思っても良い。目につく例外は Disney で、こちらはビデオを未だ 4K ではリリースしていない。また、iTunes では、4K や HDR に対して更に余分に支払う必要はないことも知っておくべきである。iTunes は既存の HD 映画を、そのスタジオが元になるコンテンツをアップグレードすれば、無料でアップグレードする。

最後に、HDR コンテンツをストリームするには、高速 Internet 接続が必要であることも知っておく必要がある。Apple も Netflix も、どちらも 25 Mbps かそれ以上の下りの帯域幅を勧めている。

Apple TV の設定を調べる -- テレビがそろい、ケーブルも正しいものが手に入り、コンテンツも対応していれば、今度は Apple TV 上で HDR が有効になっていることを確認する番である。そのためには Settings > Video and Audio > Format に行く。あなたの目にするものは、あなたの設定がサポートするものに基づいている。理想的には、4K Dolby Vision 60 Hz を選択するのが良いが、4K HDR 60 Hz でもそう悪くはない。4K HDR 60 Hz すらも見えない場合は、一番下までスクロールして行き、Other Formats を選択し、そしてそこにあるリストから選ぶことになるが、この方法だと、上記した問題に遭遇する可能性が高くなる。

最初、私は Apple TV 4K を 4K HDR 60 Hz で出力するよう Settings > Video and Audio > Format > Other Formats で強制した。最初のうちは働いているように見えた。(Mac 上で解像度を変える時とほぼ同じ様に、Apple TV は1分程かけてそのフォーマットに切り替え、そしてその画面が見えるか聞いてくる。その問い掛けに答えないでいると、あなたには見えていないと想定し、以前の設定に戻る。)

しかし、私は直ぐにノロノロとした動きに気づいた - Apple TV 4K には珍しい - そして、妻は私がいない時には "気が変になってしまう" と苦情を言った。時間と共に、色々な不具合や人工的なものが私の目にとまる様になった。

もしこの様なことを経験された場合は、Settings > Video and Audio に行き Check Cable を選択する。これは、現在使われている HDMI ケーブルが選択した画面設定に対応出来るかどうかを見るテストを走らせ、そして Apple TV を検出した最善の品質で出力するように設定する。でも、このテストを走らせると Apple TV を常に 4K SDR 60 Hz の設定に戻してしまう - SDR は standard dynamic range の略である。

もし A/V 受信機を使っているのであれば、それも関係してくることがある。たとえ HDMI ポートを持っていたとしても、4K ビデオはサポートしていないかも知れず、そして 4K ビデオをサポートしていても、HDR はダメかも知れない。私は、ここ何年も受信機を使っていないが - Apple TV とテレビセットの間を直接接続する方が、常により単純でより信頼性がある。A/V 受信機の使わないで済む様、私は沢山の HDMI ポートと 5.1 サウンドバーを持ったテレビを購入した。(私が受信機を最後に使った時にも、それはオーディオしか扱わない様に設定した。)

試行錯誤の結果たどり着いた解は、私のテレビの設定に関係していることが分かった。山程の不平不満の後、私はようやく HDR 問題の全てを Sony のテレビセット上で Settings > External Inputs > HDMI Signal Format に行き、そして HDMI ポートを Standard Format から Enhanced Format に変更することで解決出来た。これをやった後は、全てが 4K HDR 60 Hz で問題なく働き、そして Check Cable テストにも合格した。

Sony テレビの所有者には良い知らせがある:来るべき tvOS 11.3 アップデートでは、Sony テレビに対しても Dolby Vision に対応すると報じられている。Mac Observer にいる私の友人の John Martellaro は彼の HDR 問題をこの tvOS 11.3 ベータで解決した (かわいそうな John も私と同様苦闘したらしい - NASA での先端技術の学位と経験も今日のテレビ問題の解決の役には立たなかった)。現時点では、4K HDR 60 Hz が私が出来る最善のものであり、Dolby Vision を強制的に使う選択肢も与えられていない。

更にもう一歩踏み込んでほんの少しでも品質向上を図りたいというのであれば、Apple TV 4K 上で、Settings > Video and Audio > Chroma に行き (もしあれば)、そしてそれをデフォルトの 4:2:0 ではなく 4:2:2 に設定する。それが何を意味するかについては、RTings に適切な説明があるが、簡単に言えば、それの意味するところは圧縮度をより少なくすることで、理屈の上では画質はより鮮明になる。

しかし今や全てのものが奇妙に見える! -- これらのこと全てをやった挙句、今や全てのものが奇妙に見える。その理由の一つは HDR の見え方で、これには多少の慣れが必要である。しかし、デフォルトでは、Apple TV 4K は 全てのもの を HDR にし、そして全てのものを可能な一番高いフレームレートで表示する。HDR 変換は、独特の色と、時としては人工的なものまで作り出し、そして、高いリフレッシュレートを強制することで、"ソープオペラ効果" と呼ばれるものの原因となる。これは、全てのものの動きが少々滑らかすぎる様に見えることを指す。[訳者注:これはフレーム間に補完フレームを自動的に挿入することで起こる。]

幸いにして、Apple TV 4K はこれらの問題に対する解決策を提供している。Settings > Video and Audio > Match Content に行き、Match Dynamic Range and Match Frame Rate をオンにする。この設定の唯一の欠点は、Apple TV がフォーマットを変えるたびに画面が真っ黒になることだが、高速 HDMI ケーブルを使い、全てが正常に動いていれば、それに気づくことはないかも知れない。

更なる有益な Apple TV ヒントを見たい場合は、“Take Control of Apple TV” を見て欲しい。この本は Apple TV 4K と tvOS 11 用にアップデート済みである。

HDR はオンになっているの? -- 私は、皆さんが Apple TV 4K の画質を最大限に引き出すお手伝いを出来たことを望むが、悲しい告白もある:私の Apple TV 上では HDR を有効にし、HDR コンテンツを再生し、そして高速 HDMI ケーブルを使っているにも拘らず、私はそれが私のテレビ迄届いているのかどうか自信が持てない。HDR 映画は少し違う見え方をするが、視聴覚に関係するものになると、我々の感覚は当てにはならない。そしてそれがこの世には怪しげなものがはびこる理由でもある。少し証拠調べをしてみよう:

従って、画面は素晴らしく見えるが、私の Apple TV 4K は実際に何らかの形の HDR を表示しているのか確信を持って言うことが出来ない。iOS 11.3 アップデートで何かが変わるのか興味を持って見てみたい。

どうしてテレビをわざわざこれ程複雑にしなければならないのか? -- 私はさじを投げた。画像は、それが実際に HDR であるかどうかに拘らず、綺麗に見えるし、私のテレビが余分の2ビットの色を表示しているかどうかを解明するために貴重な数週間を使うよりも私には成すべきもっと大事なことがある。それに、私が主に見るのは "The Andy Griffith Show" の白黒のエピソードである。(私はコンテンツよりもテレビの技術により興味がある。お気に召さずば、訴えられたし。)

テレビはこれ程複雑であってはならない。何年も昔のことですら、父が初期の Fox で "Married with Children" を見るために屋外アンテナの調整を手伝わされた時、やっていることにはそれなりの意味があった。この HDR 不条理はただ解読不能である。私は業界に知人を持つ友人達とメールをやり取りしてきたが、誰もが私と同じ様に混乱している。しかも、私はこの分野で文字通り本を一冊書いてすらいる!

確かに、全部が Apple のせいではない。テレビの世界は長いことこの様に動いてきて、テレビセットと周辺機器の間で数多くの非互換性を生んできた。しかし、Apple はテレビを作ることでこれら全てを解決出来る立場にある。考えてもみて欲しい:キャリブレーション不要、特別な設定一切無し、いじりまわすもの一切無し! ただ座って、実現し得る最高の品質でテレビを見るだけ。ええ、間違いなく Apple の最も儲かる事業にはならないであろうが、現在の Apple TV だって同じではないか。

その日が来るまで、私の家族は日に日に私の Chromecast Ultra に依存する度合いを深めている。これにはインターフェースは何もなく、設定の様なものも何もない - ただ働くだけである。とりわけ、これは Google Home スマートスピーカーと対になった時には音声制御出来る。私の息子は、"OK Google, PJ Masks を頼むよ" と言うと、テレビに火が入り好きな番組が始まるのには、極めてご機嫌である。それは魔法の様だ。フムフム、とにかく動く魔法の様なものか... それは、我々の好きなりんご会社が昔作っていたもの様に聞こえる。

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印刷されたページよりずっと良い: iPad で読書する

  文: Charles Maurer
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple のウェブサイトを見ると、iPad がまるでグラフィックスのために天から贈られたものであるかのような印象を受ける。それなのに Apple は、私たちの幾人かが iPad を主として使っている目的には、ほとんど触れようともしない。それは、本を読むことだ。そもそも、新しい iPad の電源を入れてスクリーンを眺めつつ「なんて素敵な読書の道具だろう! 私の本棚の本を、全部ここに入れたいものだ」と叫ぶ人を、私は見たことも聞いたこともない。

私が思うに、Apple のマーケティング担当重役たちは本を読むことなど大して考えたこともないのではなかろうか。もしちょっとでも考えたことがあるなら、今言ったようなことを人々に思わず叫ばせるようなセットアップを iPad に施すこともできただろうにと思う。実際、設定をいろいろいじくって、安価なアプリをいくつか買い入れた後は、妻の Daphne も私も、二人とも紙の本を読むより iPad で本を読む方が好きになった。私たちは好んで電子ブックを買うようになっただけでなく、本棚にあるハードカバーの本の代わりとして電子ブックを買うようにさえなった。iPad で読む方が、手軽だし読み易いからだ。

私たちは、自分たちが身に付けている視覚認知の知識を駆使して、読書のための最適化を iPad に施した。Daphne は著名な視覚科学者であり、私も彼女と共同でたくさん研究したり執筆したりしてきた。この記事では、私たちの取り組みをご紹介したい。

白地に黒い文字 -- まず始めに、当たり前のことを指摘しておかねばならない。いや、少なくともこれは当たり前のことのはずなのに、ウェブデザイナーたちの奇妙な世界においては当たり前でないかのように見える。つまり、私たちの脳は、白い背景の上の黒い文字を読むように作られているのであって、黒い背景の上の白い文字を読むようには出来ていないという事実だ。生まれたその日から、私たちは明るい背景の上の暗いものを好み、その好みは決して変わることがない。脳の中に刻まれているからだ。いくら年を取っても、いくら写真のネガを見たり大昔のビデオターミナルでの作業を重ねたりといった経験を積んだとしても、あなたの視覚システムにとっては白い背景の上の黒い文字の方が処理が容易なのだ。

この好みは、決して単なる習慣や慣れのみから来ているものではない。下の写真を見て頂きたい。ここではすべての色が奇妙だ。あまりにも色が奇妙なので、ここには慣れが介在する余地がない。それなのに、明るい背景の上に暗い色の肖像が見える右側の方が認識しやすいではないか。暗い背景の上の明るい文字は、洒落て見えるかもしれないし、慣れれば読めるようになるかもしれないが、それでもそれは本質的に読みにくいものなのだ。

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暗闇の中で本を読みたいのでもない限り、黒い背景の上の白い文字であなたの時間を空費すべきではない。そんな風にデザインされたウェブページを見かけたら、まず Safari の Reader ボタンをタップしよう。アドレスフィールドの左端に時折現われる、棒が重なったように見えるアイコンだ。ただしこのボタンは見えていないことも多く、またページ全体をキャプチャしてくれないこともあるので、いつでも使える別手段を用意しておくのが賢明だ。それは、ページを正しく再表示させる JavaScript を走らせる「ブックマークレット」だ。どんなページでもよいのでページを一つブックマークして、その新しいブックマークを Favorites バーに入れよう。そうして、そのブックマークを編集する。まずそのブックマークの名前を "Clarify" とでも名付けてから、URL の部分に次のテキストを入れておく:

javascript:styles=’*%20%7B%20color:%20black%20!important; %20background-color:%20white%20!important;%20background-image: %20none%20!important;%20%7D%20a:link%20%7B%20color:%20%2300007F %20!important;%20%7D%20a:visited%20%7B%20color:%20%23007F00 %20!important;%20%7D%20a:hover%20%7B%20color:%20%23FF0000 %20!important;%20%7D%20a:active%20%7B%20color:%20%23FF7F00 %20!important;%20%7D’;%20newSS%20=%20document.createElement(‘link’); %20newSS.rel%20=%20’stylesheet’;%20newSS.href%20=%20’data:text/css,’ %20+%20escape(styles);%20document.documentElement.childNodes%5B0 %5D.appendChild(newSS);%20void%200

この Clarify ブックマークをタップしても、新しいウェブページは開かない。その代わりに、通常 (JavaScript が許せば) 現在のページが真っ白な背景の上に黒い文字を描く状態でリロードされる。こうすることで、黒い背景の上に白い文字というウェブページが、ほぼ例外なく読み易くなるだろう。もちろん、白い画像や白いコントロールを使っている場合には見にくくなってしまうかもしれないのだが。これはどんなブラウザでも、どんなデバイスでも働くはずだ。

明るさ -- どなたかがこう呟いているのが聞こえるようだ:「でも、iPad の白いスクリーンは目が痛くなるよ」と。その通り、目には苛酷かもしれない。だから、そこは弱めなければならない。紙の場合は、照らされた明かりのおよそ 90 パーセントを反射するが、iPad の放つ光は常時一定で、室内にある他のどんなものよりも明るいことがある。だから、iPad の輝度を周囲の明るさに合わせる必要がある。戸外で使う場合にはスクリーンの明るさが十分でない可能性もあるが、室内で使う場合にはたぶん iPad のスクリーン輝度を大幅に下げるべきだろう。iOS には画面輝度の自動調節機能があってこれがある程度の助けになるけれども、私は Control Center の画面輝度スライダーを自分の指を使って動かしていることが多い。

色合い -- 脳の図式は過度に単純化されていることが多い。脳のこの部分にこの機能があり、あちらにもう一つ別の機能があり、両者には何の相関関係もないかのように説明される。けれども現実はもっと複雑だ。ニューロンは情報をライフル銃というよりむしろショットガンのように発射するので、ニューロンの活動は広範囲に広がる。ある意味、脳の異なる部分同士は互いに相互作用している方が普通なのだ。

そのような相互作用の一つが、色を知覚する領域と線を知覚する領域との間にある。この両者の相互作用が、読書の際に大きな影響を及ぼす。残念ながら、この話題についてはこれまでにさまざまの行き過ぎた主張や、ずさんな研究が溢れ、北米における特許のせいで科学的興味が削がれたりすることも多かった。しかしながら、ここに優れた研究が英国において興隆し、その中心にいたのが Arnold Wilkins であった。Wilkins はその相互作用が実際に存在するという説得力のある研究結果を発表し、人口の中の少数派ではあるがかなりの人たちにその相互作用の影響があることを示した。確実に知られている事実は少ないが、次のようなことが分かっている:

スクリーンに色合いを付けることで読み易くなるかどうかを調べるために、私は Wilkins の提案したいくつかの色を使ったテストページを作ってみた。彼が印刷された紙に被せるプラスチックに使った色を、電子的におおよそ近似したものだ。いろいろな色をクリックして、文章を読み比べてみて頂きたい。もしもその中のどれかの色で文字がクリアに見えたり、安定して見えたり、何らかの意味で文章が読み易いと思えたら、あなたの iPad のスクリーンにもその色合いを付けてみよう。テストの色を厳密に再現する必要はない。これは単なる出発点なのだから。それよりも、Settings > General > Accessibility > Display Accommodations > Color Filter にある色相と彩度のスライダーを少しずつ動かして試してみよう。

テストでいろいろな色を試しても別に違ったところはないと思う可能性は高いかもしれない。でも、もしも背景色によってテキストが安定してクリアに見え、読み易くなったなら、その色合いの眼鏡を使うことで日常生活全般が楽になるかもしれない。特に、片頭痛に悩まされている人は試してみる価値があると思う。英国では Wilkins が Cambridge 大学で開発したテクノロジーに基づいて多くの検眼眼鏡士が色付きレンズの眼鏡を処方し、National Health Service (国民健康保険) を利用して安価に入手できるようになっている。英国以外でこのテクノロジーを利用できるところは少ないが、Helen Irlen が生み出した営業陣はいたる所に進出している。CeriumIrlen をご覧あれ。

照明に合わせる -- さきほどの色合いのテストで別に読み易くならなかったという人は、スクリーンの色を周囲の照明の色にマッチさせることで読み易さを向上させることができる。

周囲の照明の色相がどれほど変わり得るものかを知るために、下の写真をご覧頂きたい。これは、安楽椅子にゆったりと座った私の目から見た、背景の様子を示している。曇りの日には窓のブラインドを全開にして、結果としてすべての色がクールな感じだ。晴れた日にはプラインドをすべて下ろすので、全体に温かな感じの色になる。夜には、日光が全くないので、光は電球のみでさらにもっと温かな色だ。紙に印刷してものを読む際には光を気にする必要がない。紙は周囲の光をそのまま反射するからだ。でも、スクリーンが背景と異なる色で光れば、それは気を散らす原因となる。

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Apple の True Tone コントロール (Settings > Display & Brightness にある) は、ディスプレイの色を周囲の照明にマッチさせるためのものだ。この機能のお陰でわずかな改善はみられるが、iPad のデフォルトの色合いではとうてい理想的なものとは言えない。このデフォルトを調整するには Settings > General > Accessibility > Display Accommodations > Color Filters を使う。私の場合は、色相スライダーを右へ8分の1ほど動かした設定がちょうど良いようだ。

また、True Tone では夜間の部屋の中の人工照明にマッチするほど温かい色には決してならない。夜にスクリーンをもっと温かい色にするため、私は日没から日の出までの間のスケジュール設定を Settings > Display & Brightness > Night Shift に施していて、その色温度スライダーを右へ3分の2ほど動かしている。

読書する -- あなたが世界を見渡すとき、あなたが把握しているものすべてをあなたの目が見ている訳ではない。あなたは一つの場所をほんの半秒間ほどじっと見つめ、それから突然別の場所へと視点を動かす。視点が一つの場所に止まっている間、あなたの目はごく狭い範囲だけ鮮明な線を見ているが、そのまわりの丸い範囲はぼやけて見えている。最初に見た場所と次に見た場所の間の部分は何も見ていない。あなたが把握するもののほとんどすべては、ただぼやけて見える丸いところのものをあなたの脳が推察しているのだ。

そのことはあなたが本を読んでいる際にも起こっているので、それがページのレイアウトに関して大きな意味を持つ。下の図は、最初の段落を読もうという際にあなたの目が実際に見ている丸い範囲を示している。下の方に、それぞれの丸い範囲の中に見えているテキストだけを取り出して示してみた。あなたの目が取り込むのはこれらの情報のみだ。

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次に、同じ文章を幅の狭いカラム状にレイアウトした場合の例を示そう。こちらは個々の丸い範囲の中により多くのテキストが含まれ、丸と丸との重なりも多いので、文章の意味のより多くがそのまま伝わる。

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もちろん、どちらのレイアウトにしても、あなたの脳は一挙にすべてのテキストを処理できる訳ではない。どちらのレイアウトでも、あなたの目はページの上をジグザグと動いて、横へ下へと進む。しかしながら、縦長のレイアウトの方が横長のレイアウトよりも一つの視点でより多くの情報を脳に取り込むことができ、そのため単語の処理が容易になる。

その一方で、個々の単語の意味がその単語そのものよりも、それを含む語句から来ることもある。語句こそが言語の中の分子であって、単語は単なる原子に過ぎない。だから、最善のカラム横幅を選ぶには、単語ではなく語句の意味がより明確に分かるかどうかが重要な要因となる。そしてその答はそのテキストの複雑度によって変わる。

一つの極端は
現代の新聞だ。
新聞の文章では
単純な単語が
短い語句を構成する。
だから、狭いカラム幅
の方がうまくいく。

それとは対照的に、熟慮を重ねて考え抜かれた韻律や、
あまりにも長たらしいラテン語の語彙の数々や、
古めかしい言葉の使い方や構文を駆使して作られた
ジョージ王朝時代の文学ならば、そのような個々の
要素のすべてを脳の中で凝縮し集めることで初めて
文章の意味を最も深く明確に捉えることができるので、
幅広い行を横に追いつつ目が進む方が都合が良い。

新聞や雑誌の場合にはそれに相応しいカラム幅を使っていることが多いが、本の場合それをしているものはめったにない。その理由は、印刷された本のレイアウトが読み易さのために最適化されておらず、むしろ販売の観点から最適化されているからだ。出版社は、その本を X 冊売るには価格を $Y に抑えなければと考える。しかしそのためには、小さくて細字のフォントを最小限のマージンを持つデフォルトのスペーシングで使い、ページをできるだけぎっしりとテキストで埋める必要がある。その上、書店の店頭で本がよく売れるためには第一印象が魅力的でなければならないので、テキストは右端がきっちりと揃っているように行成形される。

そういったことはすべて、読書のためには良くないことばかりだ。文字の大きな、たぶん線の太いフォントの方が読み易いだろう。デフォルトの文字スペーシングは最小限の間隔だが、快適に読めるためには行と行との間にある程度の空白が必要だ。行の右端を揃えれば単語や文字の間隔がまちまちになり、脳が意図的に無視しなければならない雑音の一形式となってしまう。

そこで私は iPad 上で、今述べたようなものや、もっと他のパラメータもすべて、読書のために最適なものに調整している。しかも iBooks ではなく、サードパーティのアプリ MapleRead を使ってしている。ハイフンの使用をオフにして、ちぎれた単語を目が処理する必要がないようにすることもできる。下の二つのスクリーンショットは、二つの違う本のそれぞれに合わせた私のセットアップだ。本格的な歴史書は横長のレイアウトに、現代的な小説は縦長のレイアウトにしている。フォントは Futura だ。私の目には、iPad 上でページを埋め尽くしたテキストを読むには Futura が最も明快だ。(ただし Macintosh では別のフォントを使っている。) もちろん、あなたの目には違うフォントが適しているかもしれないので、どうぞいろいろなフォントで実験してみて頂きたい。Arnold Wilkins の論文の中に、試すべき良いフォントとして Verdana を挙げているものがある。

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MapleRead は EPUB フォーマットの本を読むためにデザインされている。これこそが電子ブックのための標準的で汎用のフォーマットで、Amazon を除く事実上すべての電子ブック出版元が EPUB フォーマットを使っている。Amazon は同社の Kindle ブック用に Mobi フォーマットを使っている。どちらも内部的には互いに似ているが、Mobi は Amazon の製品でしか使えないので、私が読みたい電子ブックが Amazon からしか出ていない場合には、私はまずそれを EPUB に変換するようにしている。

Mac 上で Kindle ブックを変換するために、私は Calibre というクロス・プラットフォームのシェアウェア製品を使っている。また、Calibre は私の本をコンピュータ上に保存し、自動的にバックアップを作成し、メールを使って、またはウェブ経由で、本を私の iPad に送ることができる。

Calibre も MapleRead も、デジタル著作権管理 (DRM) で保護された本を開くことはできない。けれども、米国以外に住んでいる人なら誰でも、電子ブックから DRM を自動的に削除するという Calibre 用のプラグインを合法的に検索することができ、その種のプラグインを合法的にダウンロードして、自分が購入したどんな電子ブックにでもそれを使ってみることができる。カナダ在住の私は、そのような状況の下にいる。

残念ながら米国内においては、U.S. Digital Millennium Copyright Act (デジタル・ミレニアム著作権法) が適用される。この法律は米国在住の人が電子的に購入したものに無料のフルアクセスを禁じるのみならず、例えば TidBITS のような米国内の出版社が回避方法の説明をすることも禁じている。だからして、ここで私は自分が合法的に DRM を削除しようとする試みについて議論することはできない。しかしながら、大多数の電子ブックから DRM を削除するツールを私が簡単に見つけられたか否かはどうであろうと、私が Apple を通じて購入した電子ブックから DRM を削除する方法は見つからなかったと述べることはできる。

他方、古典文学にとって DRM はまるきり無関係だ。古典文学の本の圧倒的大多数はパブリックドメインにあるので、Project Gutenberg から無料でダウンロードできる。(Project Gutenberg のカナダのサイトオーストラリアのサイトもチェックしてみる価値がある。米国のサイトになくてそちらのサイトにある本もあれば、その逆もあるからだ。) また、多くの古典の著者の作品すべてを数ドルで Delphi Classics からダウンロードすることもできる。Delphi が施した編集作業には、十分以上に払ったお金の価値があると私は思う。

たいていの本では EPUB がそれを読むための最も実用的なフォーマットだが、写真については PDF の右に出るものはない。多くの電子ブックや、ほとんどあらゆる学術論文は、PDF ファイルとしてしか入手できない。基本的に PDF とは印刷したページを電子的な形で提供するものなので、PDF ファイルはほとんどの場合、紙に印刷して初めて最も読み易くなる。そうは言っても、iPad 上で PDF に目を通してざっと読めば、時間の節約になると同時に木材資源の節約にもなる。Calibre は PDF からテキストを抽出してそれを EPUB フォーマットに変換することができるが、その結果は往々にして酷い仕上がりとなる。私は PDF は PDF としてそのままの形で置いておく方が好きだが、読む際にはページを拡大することが多いし、また iBooks で読むのではなくDjVuを使って読んでいる。このアプリには他の PDF リーダーによくあるような読む妨げになる仕掛けなどないし、ページを繰ってもちゃんと拡大率を保ってくれる。

システムの設定 -- Toronto のダウンタウンで見かける真冬の不可思議は、ハイヒールを履いた女性が氷や雪の上を歩いている姿だ。これ以上分別のないことはないと思うが、それほどに見栄えというものが衣服の売れ行きに大きな意味を持つのだ。そう、iPad についてもそれが言える。何だか気の利いたようなアニメーションを見せているが、それが何だと言うのだ! 不必要な飾りのせいで気が散ってしまったらどうするのか。もはや読書なんかしなくていいということなのか。氷や雪の上なんか歩かなくていいのと同じなのか。

その種のグラフィカルなハイヒールの多くは、iOS の内蔵機能なので変更できない。例えばログイン画面では、仮想キーボードのキーに白い背景の上の黒い文字でなくグレイの背景の上にグレイの文字が描かれている。けれども中には変更できるものもあり、変更することで読書の体験がぐっと向上するものもある。iPad の格好良さは減るけれども、使い易さは増す、その種の設定のお勧めをいくつか挙げておこう。いずれも、Settings > General > Accessibility で設定する:

最後にもう一つだけ、$4.99 のキーボード PadKeys を使ってみてはいかがだろうか。下の写真で比較してみて頂きたい。上に見えるのが Apple のデフォルトのキーボードで、それに比べて下に見える PadKeys の方がまずはずっと見やすい。少しだけ文字が大きいのみならず、重要なのは記号がごちゃごちゃと書かれていないことだ。目で文字を探す際には、Apple の方にたくさん書かれているグレイの記号が視覚的雑音を作り出す。言わば、会話をしようとしているのに他の人がうるさく話しかけてくるような状況が、視覚的に生まれる。また、PadKeys では数字や句読点がずっと大きく、グレイでなく黒い文字で示される。

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それに、PadKeys の方が使い易い。キーのレイアウトが、従来型のキーボードのものに近いからだ。左右のカーソル制御キーもあるし、取り消し、やり直し、ペーストのボタンもある。

Apple のキーボードと同様に、PadKeys でも指をフリックすることで別の文字を入力することができるが、PadKeys ではフリックの方向が上向きで、下向きではない。つまり、欲しい文字に向けてフリックし、欲しい文字から離れる方に指を動かすのではないので、ずっと自然な感じがする。お好みならばキーからキーへ指でドラッグすることもできるが、そのためには PadKey の自動修正辞書を訓練して、あなたが例えば "desert" でなく "dessert" とタイプするつもりだったことを教える必要が生じる。私の場合、人指し指1本か2本だけでタイプして、キーボードが候補を呈示しようとしたり私の綴りを修正したりしようとするのを無視するようにしている。

PadKeys の設定としては、ボールドテーマを使い、All-Caps Keycaps と Dark Mode をオフにし、Show Shift Hints はオンにしておくことをお勧めしたい。

[もしもこの記事の情報がお役に立ったのなら、Charles はあなたが国際援助団体 Doctors Without Borders ( 国境なき医師団 ) に少しでも寄付してくださるようお願いしています。]

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2018 年 3 月 26 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

VLC Media Player 3.0.1 -- VideoLAN がオープンソースの VLC メディアプレイヤーをバージョン 3.0.1 にアップデートして、Hybrid Log-Gamma (HLG) を修正し、VideoToolbox フレームワークで HEVC 10-bit のパフォーマンスを向上させ、MKV 捜索の速度を改善した。今回のリリースではフルスクリーンのコントローラパネルを無効にするオプションを復活させ、自動レイアウトを改良し、誤解を生みやすかった再生警告インジケータを削除し、サイドバー表示設定が再起動後に無視されたバグを修正し、Chromecast オーディオ探知に関する問題点を解決している。(無料、44.7 MB、リリースノート、10.7+)

VLC Media Player 3.0.1 へのコメントリンク:

ScreenFlow 7.3 -- Telestream が ScreenFlow 7.3 をリリースして、オーディオドライバの再構築により iMac Pro 上でもシステムオーディオの再生をキャプチャできるようにした。このスクリーンキャスト録画およびビデオ編集アプリはまた、Media Library からタイムライン上へメディアを追加する際に順次追加するかそれともレイヤーとして追加するかを修飾キーを使って選べるようにした。

今回のリリースでは数多くのバグも修正された。Mac App Store 版による録画でオーディオに異常が起きたバグ、外部モニタでキャンバスをリサイズする際のバグ、AppleTV プリセットで書き出す際に起こったクラッシュ、クリップインスペクタに表示されるクリップ持続時間が誤っていた (そのため 60 FPS タイムライン上でタイムラインのズームをすると問題が起こった) バグなどが修正された。(Telestream ウェブサイトからも Mac App Store からも新規購入 $129、無料アップデート、リリースノート、10.11+)

ScreenFlow 7.3 へのコメントリンク:

Mellel 4.1 -- RedleX が Mellel 4.1 をリリースして、数多くの新機能を加えた。ネイティブな DOCX ファイルフォーマット読み込み、文字追跡、大多数の TrueType フォントでの自動カーニング、単語間隔の最小値設定などだ。このワードプロセッサではアウトライン機能に多数の拡張が施され、アウトライン項目の交互色付け、項目の折り返しの際の二重インデント禁止、行を折り返さず切り詰めるオプションなどが加わった。

今回のリリースではまた、ストーリーポイントを独自の行とデフォルトのフォント、両側に沿って線の入った背景付きで描くようになり、オートタイトルパレットがアウトライン枠で選択されているものを反映するようになり、macOS 10.13 High Sierra の下で取り消し線が文字の真ん中でなく下端に沿って描かれてしまったバグを修正し、参考文献をスキャンすると文字属性が上書きされてしまった問題を解消している。(RedleX からも Mac App Store からも新規購入 $59、アップグレード $29、無料アップデート、89.1 MB、リリースノート、10.6+)

Mellel 4.1 へのコメントリンク:

OmniOutliner Essentials および Pro 5.3 -- The Omni Group が OmniOutliner EssentialsOmniOutliner Pro のバージョン 5.3 をリリースして、ツールバーの Search フィールドが最後に使った設定 (Filter または Batch Find) を記憶するようにし、macOS 10.13 High Sierra でも Quick Look が正しく動作するようにした。このアウトライン作成および情報整理アプリはまた、行をグループ解除またはインデント解除した後に子行が間違った順序で表示されたバグを修正し、特定の書類を保存する速度を向上させ、ポップアップ列値を持つ行をコピー&ペーストまたは複製した際にそれらの値を正しく保持するようにし、High Sierra でメモリ管理に関係して起こったクラッシュを解消し、PowerPoint への書き出しでフォントの色が正しく適用されなかったバグを修正している。OmniOutliner 5 は Mac App Store から無料でダウンロードでき (2 週間は無料で試用可能) Essentials と Pro の機能のロックをそれぞれ $9.99 と $59.99 で外すオプションがある。(Essentials の新規購入 $9.99、Pro の新規購入 $59.99、38.7 MB、リリースノート、10.11+)

OmniOutliner Essentials および Pro 5.3 へのコメントリンク:

Keyboard Maestro 8.2 -- Stairways Software の Peter Lewis が Keyboard Maestro 8.2 をリリースして、現在動作中のアプリケーションを表示する Applications Palette を新たに追加した。この自動化およびクリップボード用ユーティリティはまた Apply Modifiers to a Specific Application アクションを装備し、マクロパレットのマクロ上へファイルをドラッグする操作に対応する Dragged File トリガーを加え、Application Palette に Macro Library 項目を追加した。

今回のリリースではまた、位置が変わったアプリケーションを Application ポップアップメニューへ置く際に警告を出すようにし、Prompt With List に関するバグ一件を修正し、AppleScript によるアクション作成に関する問題点を解消している。(新規購入 $36、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、22.4 MB、リリースノート、10.10+)

Keyboard Maestro 8.2 へのコメントリンク:


ExtraBITS、2018 年 3 月 26 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週の ExtraBITS では、easyDNS の CEO が Facebook の使用に制限を課すための分別あるアドバイスを語り、Apple が新しい春色の Apple Watch バンドを発表する。

あなたの Facebook ページを削除すべきか? -- DNS プロバイダ easyDNS の CEO である Mark Jeftovic は、歯に衣着せぬ物言いで有名だが、今回の Facebook と Cambridge Analytica の個人データ不正利用スキャンダルを受け、手厳しいと同時に現実的でもある意見を述べた。彼はまずソーシャルメディアのプラットフォームを Neal Stephenson が 1994 年に Wired に掲載したショートストーリー "The Spew" になぞらえ、Facebook と Mark Zuckerberg に対する非難をいくつも並べる。けれどもその後で Jeftovic は当面の現実的な問題に立ち返る。つまり、あなたの Facebook ページは削除すべきなのか? 彼の推奨は、ビジネス用の Facebook ページはそのまま維持するが、それのみに依存するのは止めることだ。彼は、自分の個人的 Facebook ページは残すつもりだが、そこに書き込むことはすべて完全に公開情報であり攻撃の標的となるものという前提の下で扱うようにするという。ただし、モバイル用 Facebook アプリは使うべきでないというのが彼の意見だ。このモバイルアプリはあなたの連絡先データを収集することに最大限の努力を注ぐからだ。

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Apple、Apple Watch バンドの Spring 2018 コレクションを発表 -- Apple が Apple Watch バンドの新しいコレクションを発表した。今月末までに注文受付が開始される。新しいスポーツバンド ($49)、ウーブンナイロンバンド ($49)、スポーツループ ($49)、クラシックバックル ($149) が鮮やかな春色で揃った。また、Apple は新しい組み合わせモデルとして、スペースグレーのアルミニウムケースの Apple Watch Series 3 (GPS + Cellular) にブラックのスポーツループを合わせたものと、スペースグレーのアルミニウムケースの Apple Watch Nike+ (GPS + Cellular) にミッドナイトフォグの Nike スポーツループを合わせたものも加えた。今回から別売される Nike スポーツループバンド ($49) は新色で登場し、Hermès Single Tour Rallye ($439) および Double Tour ($489) のレザーバンドにはアクセントとなるコントラストカラーが配色された。

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TidBITS ISSN 1090-7017©Copyright 2018 TidBITS: 再使用はCreative Commons ライセンスによります。

日本語版最終更新: 2018年 03月 31日 土曜日 , S. HOSOKAWA