iPhone はこの四半期も頑張り、売上げは前年比で 20% 増加した。その増加の多くは iPhone X のより高額な値段の故と説明出来そうである。と言うのも、iPhone の販売台数は 1% しか増えていないからである。iPhone は今や Apple のビジネスの 56% を占め、今四半期だけで $29.9 billion を稼ぎ出した。驚くには当たらないであろうが、iPhone X は再び一番人気の機種となった。
iPad
iPad の売上げは前年比 5% 下落したが、販売台数は 1% の増加となった。これは、iPhone の事情と真逆の事態になっている様に見える。恐らく Apple の最新の iPad リリースである $329 の第六世代 iPad が、このタブレット販売において、より高価な iPad Pro 製品群よりも高いシェアを占めたためであろう。
Mac
Mac の販売台数はもっと大きく落ち 13% の下落となり、各種の Mac を合わせて 3.7 百万台が売れた。しかし、一台当たりの販売価格の上昇で、前年の Mac 売上げに比べると下落幅は 5% に止まった。この先を見ると、この四半期末の新しい MacBook Pro モデルの立ち上げで、次の四半期の Mac 部門は、より良い結果が期待されるのかもしれない。いずれにしろ、Mac の世界市場でのシェアは上昇し、そして Apple によれば、この四半期での Mac 購入者の 60% は、このプラットフォームに対する新規参入者だったという。
Apple TV に関するニュースは最近あまり無いが、Cook は、ケーブルプロバイダーの Charter がその 50 百万に近い米国の家庭向けに Apple TV を年内に提供するようになるであろうと語った。Charter はまた、Spectrum アプリを Apple TV 用にリリースする予定である (この話は、この記事の著者の一人を喜ばせている - 或いは、少なくとも、楽観的にはさせている)。アナリストの質問の時間に、Cook は、Oprah Winfrey との提携を含む、Apple のメディア制作計画について興奮していると語った。しかしながら、Apple が何をしているについて具体的に語ることには口が重く、"今日は、まだ話せる段階にない" と言っただけであった。
Services
こうした中で、この業績報告での売上げの星は (Cook はそれを "星の様に輝かしい" とまで称した) Services で、大きな跳躍を見せ - 売上は前年同期比で 31% の増加 - その結果 iPhone に次ぐ Apple での二番目に大きい売上げ部門となった。Services は Apple の四半期売上げの 18% を占め、iPad と Mac の売上げを合わせたものにほぼ匹敵する。同社は、Services は次の四半期も同様の売上げ増加を見込めるとしている。
Services はこの四半期に $9.5 billion 以上をもたらし、定期購読は売上げ構成の主要な部分となった:Apple は今や 300 百万前後の有効購読者を持ち、そして 30,000 を超えるアプリが定期購読を提供している。加えて、App Store は 2018 年に入って現在迄に Google Play の2倍を稼ぎ出している。Apple Music はこの1年で 50% 成長し、そして Cook は今後も更に "市場を成長させる" 機会があると言った。彼はまた、AppleCare の売上げも 18 四半期で最高の成長率を示したと語った。
Apple Pay 使用は引き続き拡大しており、年内には 7-Eleven と CVS も参加する予定である。皆さんは、CVS が Apple Pay を受け入れるというニュースに目を疑ってもおかしくはない。と言うのも、同社は Apple のデジタル支払いシステムに長年抵抗してきたからである ("CVS、Apple Pay に競合するサービスを開始" 15 August 2016 参照)。Cook はまた、Apple が昨年末に導入した Apple Pay Cash の利用も順調に伸びていると言った ("個人間決済用 Apple Pay Cash の使い方" 7 December 2017 参照)。
将来を占う
これらの結果を見ていると、Apple の今と未来についての幾つかの現実が見えてくる:
今後は Apple 製品にはより多く支払うことになりそうである。何故ならば、iPhone X の成功で、Apple は販売台数は伸び悩んでも業績の記録は塗り替えることを許されたからである。
iPhone SE や Mac mini の様な安価な製品のための投資をしっかりしてくれるなどと期待しないように。
サービスは Apple でこれまで以上に大きな地位を占めるようになったので、Apple からは更に多くの、そして恐らくより高額のサービスが提供されるであろうと思うべし。
Siri は、ちゃんと働く時にはまるで魔法のようだが、あなたが誰かを知らなかったり、あなたの母親が誰なのか理解できなかったり、間違った発音で名前を呼んだりといった理由で Siri がまともに働かないと、苛立たしいことこの上ない。Apple はあなたが Siri に向かってあなた自身について、またあなたのまわりの人たちについて、学ばせるための手段をいくつか提供しているのだが、その多くが音声コマンドを要するので、理解しやすくもなければきちんと説明されてもいない。
あなたが誰かを Siri に教える
あなたが誰かを知っている場合の方が、Siri はうまく働く。例えば、あなたに割り当てられた連絡先カードに Siri がアクセス可能な場合、"Give me directions home" (家への道順を教えて) というコマンドが使える。なぜなら、Siri が連絡先カードからあなたの自宅の住所を読み取れるからだ。この連絡先カードを使って、Siri はあなたの家族や親戚も見分けることができる。
これについては、既に設定済みの方も多いかもしれない。Settings > Siri & Search > My Information をチェックするか、あるいは単に Siri に向かって "Who am I?" (私は誰?) と尋ねるかすれば分かる。まだ Siri に自己紹介をしていなかった場合は、My Information をタップしてから、リストの中からあなたの連絡先カードを選べばよい。(あなた自身の連絡先カードがない場合には、Contacts アプリを開いて、右上隅の + ボタンをタップしてから、新規カードにあなたの情報を入れておこう。)
あなたの家族について Siri に教える
Siri に向かって "Call Bertie Wooster" (Bertie Wooster に電話して) と命ずることはできる。でも、私たちは普段、近しい人たちを本名で呼んだりせず、その人との関係を使って "my mom"、"my brother"、"my assistant" といった呼び方をすることが多い。私が Siri で特に便利だと思うことの一つは、単純に "Call my wife" (妻に電話して) と言うだけで、私の妻の名前を言わなくてもすぐ Hannah Centers に電話をかけてくれることだ。
このような人間関係を設定する最も単純な方法は、Siri 自体を使ってするやり方だ。単純に "Hannah Centers is my wife" とだけ言えば済む。あるいは、次のような手順を踏んで設定することもできる:
それ以後は、Messages でも電話の通話でも、その人の本名の代わりにニックネームの方が使われる。また、ニックネームを使って Siri にコマンドを命ずることができるようになる。だから、Augustus Fink-Nottle という友人がいれば、彼のニックネームフィールドを設定しておくだけで、Siri に向かって "Call Gussie" と命じれば通じるようになる。
もう一つ、ニックネームに関するヒントを書いておこう。Messages はデフォルトで会話の最中に相手の人のファーストネームを表示するが、その人のニックネームが設定してある場合は、代わりにニックネームが表示される。それとは別のショートネームの表示フォーマットが望みなら、Settings > Contacts > Short Name である程度の設定ができる。
名前の正しい発音を Siri に教える
初期状態では、Siri は人の名前を普通でない発音でぐちゃぐちゃにすることが多い。けれども Apple はそれを修正するためのいくつかの方法を組み込んでいる。最も簡単な方法は、"Learn how to pronounce 連絡先の名前" と Siri に向かって言うことだ。すると Siri はその人の名前について、まずファーストネーム、次にラストネーム、と発音を尋ね、それぞれにいくつかの選択肢のリストを呈示する。再生ボタンをタップしてそれぞれの発音を聴いてから、最も良いものの隣にある Select をタップすればよい。
Siri が名前をどう発音するかを手早くテストしたければ、"Show me the contact card for 連絡先の名前" と言えばよい。ただしそのためには、Settings > Siri & Search > Voice Feedback が Always On に設定されている必要がある。
この方法とは別に、Contacts の発音 (pronunciation) および音声 (phonetic) それぞれの名前フィールドを使って Siri に発音を学ばせることもできる。これらのフィールドは、さきほど Nickname フィールドを追加したのと同じ方法で追加する。双方のフィールドは Siri の観点からは同じ動作をするように見えるが、音声 (phonetic) フィールドの方は発音を変えるだけでなく、リストの中で並ぶ順番も変える。この点は例えば日本語で非常に重要だ。
私はこちらの方法で Siri に発音を学ばせるのが好きだ。なぜなら、連絡先の名前の下に発音を示した表示が出て便利だからだ。その上、これらのフィールドを使って学ばせれば、その情報が iCloud 経由で他のデバイスにも同期されるので、他のデバイスも正しい発音を使うようになる。これに対して、単なる音声コマンドだけで Siri に発音を教えた場合は、効果がそのデバイス上だけに限られるようだ。
司法当局にとって、Apple の iOS デバイスの暗号化はでき過ぎだ。なぜなら、適切に保護されたデバイス上のデータには、権限を与えられたユーザーしかアクセスできないからだ。なので、FBI や他の司法当局は、彼らだけが使用し、犯罪者には使用されない (と彼らが主張する)バックドアを、強制的に Apple にインストールさせようとした。Apple は拒否し、それを理由に、政府の大立者の中には、Apple がテロリストを支援し、教唆しているとして、非難さえするものがいた。
問題は、仮に Apple がバックドアを組み込んだとしたら、外国政府や抜け目のない犯罪者が、結局はそれを見つけるであろうということだ。それは、家の鍵を玄関の通路の踏石の下に隠すのと、デジタル的に同じことだ。つまり、簡単には目につかないが、鍵がどこかに隠されたことを知っているプロの犯罪者は、結局それを掘り出すというわけだ。さて、同一の鍵で国中のあらゆる家の解錠が可能だと想像していただきたい。これが、Apple にとって、バックドアを作ることが、いかに大きな問題かということだ。
USB Restricted Mode には、別の問題がある。60 分のタイマーが無効になる前に、攻撃者がデバイスを捕獲した場合、攻撃者は、これを容易に回避することができるのだ。セキュリティ企業の ElcomSoft は、Apple のLightning to USB 3 Camera Adapter をデバイスの Lightning ポートに接続すると、このタイマーが無効化されることを見出した。残念ながら、Lightning ポートの性格から言って、ソフトウェアによる解決の可能性は低い。ElcomSoft は、次のように説明している。
USB Restricted Mode が何も問題を引き起こしていない場合は、そのままオンにしておくこと。そうしたからといって、あなたのデバイスに素早くアクセスすることができる抜け目のない攻撃者に対して、完全な保護が提供されるわけではないが、そうすることは無駄ではない。あなたのデバイスが、いったん60 分以上ロックされていたなら、私たちが知っている何物も、デバイスをクラックすることはできないのだ。
では、いったいなぜ Apple はこのタイミングでアプリとアプリ内購入に関するアフィリエイト報酬を廃止しようとしているのか? アフィリエイト宛てのメッセージに、その理由がかなりぶっきらぼうに書いてある。いわく、iOS と macOS の App Store のデザイン改訂によってアプリの見つけやすさが向上したので、もはや独立のメディアアウトレットにアプリをレビューする動機付けを与える理由がなくなったと Apple は考えているのだという。Apple によれば、新しい Mac App Store には全世界の App Store エディターたちのチームが執筆した詳細な記事が掲載される。それらの記事の筆者名を皆さんが見ることはおそらくないだろうが、私たちは Apple が業界の経験あるライターたちをこの仕事のために雇い入れているところを目撃してきた。もちろん、今や出版業界で生き残るのがますます厳しくなりつつあるので、ジャーナリズムの才能ある人たちがそのような形で業界に飛び込まざるを得ないのも驚くには当たらない。
わずかな収入増のための不快な挙動
私たち TidBITS の収益モデルの中でアフィリエイト報酬が重要な部分となったことは一度もないけれども、それでも私は今回の Apple のやり方が不必要であり、意地悪く、害を及ぼすものだと考えている:
そして、害を及ぼすと思う理由は、つい最近市場の時価総額 1 兆ドルを突破し、しかも世の中の明るい側に属すると自負している会社ならば、Apple と Apple 関係の製品を宣伝するためにこれまで時間を割いてきた多くの小さな会社や個人たちから金を取り返すような真似を、すべきではないからだ。
人気あるアプリの機能を Apple が macOS や iOS の中に組み込んで、事実上そのアプリの息の根を止め、それでいてそのアプリの開発者に補償もせず、さらには通知さえしない様を見るだけでも、十分に印象は悪い。(これがあの有名な "Sherlock される" というやつだ。Karelia の Watson アプリの機能を Apple が Mac OS X 10.2 Jaguar 内蔵の Sherlock 3 として組み込んだ、あの昔の出来事に端を発している。) 少なくともこの Sherlock の事件の場合は、Apple が独立にこのアプリの開発をしていたかもしれないという議論はあったし、その機能があまりにも重要で Apple としてはすべてのユーザーに提供せざるを得なかったという議論もあったのだが。
でも、Apple が小規模の出版者たちを蹴り出したとして、推薦されたアプリに対する 7% のアフィリエイト報酬の支払いが節約できる以外に、Apple にとって何の得があるというのか? きっと十分多くの者たちが生き残ってその App Store の論説の競争相手となり続けるだろうし、Apple はアプリ報道を独占することの利益を享受できないだろう。いや、そもそも独立アプリの報道を独占したところで、いったいどんな利益が Apple のものになるというのか? 報道が多ければ、それは売り上げの増加を意味する。これは単純な算数だ。どうやら Apple は、広告によって業界メディアを援助する気もないようだ。
もう一つ注目しておきたいことがある。メディア・テクノロジーの民主化は予期せぬ結果を生んできたという事実だ。多国籍企業にせよ、成熟した国家の政府にせよ、メディアに精通した組織はどこでも、公共認識を制御しようとして、単にソーシャルメディアを操るだけでなく、コンテンツの制作と頒布を自らの組織内でしようとする傾向を次第に強めるものだ。それは、もはや管理者のいなくなったメディアの世界をいかにしてコントロールするかという話だ。もう何年も前に Apple が Macworld Expo から撤退したのは、独自の製品発表イベントを同じ労力で自ら開催できるからだ。そして今や、私たちは Apple が同じことを業界出版の世界でしようとしているところを目撃しつつある。つまり、Apple は独自の App Store 論説で、皆と競争しようとしているのだ。
結びに、私は Apple に失望したと言っておきたい。決して驚いた訳ではない。なぜなら、Apple はかつて一度も、より広い Apple エコシステムのためにメディアが重要な役割を果たすと認めたことがないからだ。私が失望したのは、ユーザーに喜びをもたらすためにあれほど多くの努力を注いできたこの会社が、その一方で Apple を支えるため大きな仕事をしてきた一部の者たちにはこれほど無慈悲な態度を取れるものかと思うからだ。