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#1448: CES のトレンドとガジェット、新型スマートテレビに iTunes と AirPlay 登場、USB-C の検証、iPhone で電話に問題発生

CES は 4500 の展示者と 180,000 人の観衆を集める巨大なテクノロジー見本市だが、今年も無事閉幕した。そこで勇猛果敢な Jeff Porten が、今回のイベントの大きなテクノロジー的潮流を報告し、最も目を引いた製品のいくつかを要約して紹介する。CES では Apple に関係する発表もあったが、Apple が TV メーカー各社に iTunes と AirPlay と HomeKit を開放するという発表が何を意味するのかを Josh Centers が考察する。今週号ではまた、iPhone が誤って外国に電話してしまうことがある問題を Adam Engst が解決し、USB-C デバイスが検証プログラムを通じてより安全に、よりセキュアになることを Glenn Fleishman が説明する。

Adam Engst  訳;亀岡孝仁  

あなたの iPhone は他の国に電話を掛けていませんか?

私の母は混乱状態にあった。"昨日、お前の父親に電話をしたら、私の iPhone はオランダの誰かに掛けてしまったのよ" と言い、"そして、" と彼女は続け、"今では、彼にでもお前にでも、或いはよく使う項目にある他の誰かに電話しようとすると、Verizon からのメッセージが出てきて、私のプランには長距離通話や国際通話は含まれていないと言ってくるようになってしまったのよ。でも、その番号を手動でダイヤルすればちゃんとつながるのに" と言うのである。

親のテックサポートをしていて、これは、私に手渡された問題の中で最も奇妙なものかもしれないが、私の母は間違っていなかった。彼女の iPhone の Phone アプリの中のよく使う項目の一つをタップする度に、Verizon からのその予め録音されたメッセージが再生された。しかし、私の iPhone の番号を手動でダイヤルすると、それは正常につながった。オランダへつながった電話の記録は彼女が削除してしまっていたが、彼女を信じない理由は何もない。私の最初の勘は、これは彼女のアカウント絡みの Verizon の問題なのではというものであったが、彼女を Verizon のテックサポートに押し付けるのは、可能な限り避けたかった。

調査を始めてみると、彼女の連絡先にある電話番号のフォーマットは私のものとは違っていることに気づいた。私のものは全て (607) 555-0123 の様に見えるが、彼女のものは全て句読点無しで数字が全部つながって 6075550123 の様になっていた。私はこれを前にも見た覚えがあったが、彼女の大量にあるぐちゃぐちゃのアドレス帳のせいにしてしまった。このアドレス帳には、一時期、彼女が Cornell University で働いていた時に Outlook を使ってやりとりしていた全員のメールアドレスをインポートしたことがあったからである。

しかしながら、オランダへの電話や Verizon の長距離や国際通話についてのメッセージを考えると、彼女の iPhone が突然他の国に居ると考え始めたのではないか、それでダイヤルする前に保存された番号に国コードを付け加える様になったのではないかとの考えに思い当たった。結果的には、その通りであることが判明した。

彼女の iPhone の Settings > General > Language & Region > Region は、正しく United States に設定されていたが、試しにそれを Uruguay に変えて、それから United States に戻してみた。そうしたら、驚くなかれ、彼女の連絡先の電話番号のフォーマットは私のものと同じものに、括弧、空白、そしてダッシュが付いたものに一瞬にして変わった。更に重要なのは、彼女の Favorites にある番号をタップすれば、その人達に電話が掛けられた。これで一件落着、そして、私はホッと胸をなでおろした。家族の幸せを守ることは何よりも大事だからである。

The region setting in iOS.

この問題が蔓延しているとは思えないが、万が一、その様な人がいたら、この解がお役に立つことを願いたい。

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Josh Centers  訳: Mark Nagata   

Apple、テレビのライバル社に iTunes Video と AirPlay を開放

テレビの世界で奇妙なことが起こっている。まず第一に、Apple がライバルであり友でもある Samsung と提携して iTunes の映画とテレビ番組、それに加えて AirPlay 2 も Samsung のスマートテレビにもたらすと発表した。それから Apple は LGSonyVizio とも契約を締結して、それぞれの製品のテレビに AirPlay 2 と HomeKit 対応をもたらすようにした。

これは、正確に言って何を意味するのだろうか?

AirPlay 2 対応のテレビでは、iOS デバイスのスクリーンをテレビと共有できることを意味し、映画や音楽のようなコンテンツを iOS または iTunes から Apple TV でと同じように直接テレビに向けて「発信」できることも意味する。

HomeKit の話はもう少し興味深い。対応するテレビが HomeKit デバイスになるので、Siri を使って、あるいは Apple の Home アプリを使ってテレビをオン・オフしたり、入力を切り替えたりできる。アクションを持つ HomeKit シーンを作成してそのテレビをコントロールすることもでき、例えば Movie Night シーンがコマンド一つで部屋の照明を暗くしテレビの電源を入れるといったことができる。(シーンを使ってどんなことができるかは 2016 年 11 月 3 日の記事“大草原の HomeKit のお伴: 中心となる概念”や私の本 Take Control of Apple Home Automation を参照。)

発表された順に、それぞれのテレビベンダーごとの詳細を書いておこう:

不思議なのはなぜ Samsung だけが iTunes Movies アプリと TV Shows アプリを獲得し、なぜ Samsung だけが HomeKit 対応を提供しないかだ。そこのところは混乱してしまうが、これらの発表はその機能に対応するテレビを持っていたり購入を検討中だったりする Apple ユーザーにとっては素晴らしいニュースかもしれない。でも、そうでない人たちにとってこれは何を意味するのか? また、Apple はテレビに関してどのような将来構想を持っているのか?

テレビの未来を占う

長年 Apple TV のことを観察し続けてきた者として (私は文字通りそれを扱った本を書いた - Take Control of Apple TV だ)、私の直観的反応はこれらの発表が独立動作のハードウェア製品としての Apple TV の終わりを告げるものかもしれないということであった。今すぐそうなる訳ではないし、来年の末にそうなる訳でもないが、私は Apple がいずれ Apple TV を漸次廃止に向かわせるつもりだろうと考えている。

なぜか? それは、未来は独立のテレビ受像機にあるのではなくて、テレビに直接組み込みのスマート機能にあるからだ。私が Take Control of Apple TV を執筆していた時代、私はスマートテレビの使用体験を Apple TV よりずっと劣るものと見下していた。当時はそれが事実であった。けれどもそれから何年も経って、スマートテレビはインターフェイスもパフォーマンスも大幅に向上させ、便利さは誰にも負けなくなった。今や、まずテレビのスイッチを入れて、入力を切り替え、Siri Remote を手に持って、それから Netflix アプリを起動するという人がいるだろうか? そんな手間をかけずに、テレビのリモコンの Netflix ボタンを押すだけで済むではないか?

テレビというものは、もともと怠け者のテクノロジーだ。これは、脳を休めたい時に眺めるスクリーンなのだ。ユーザーにとって、使う際はできる限り摩擦を我慢したくない、そういうデバイスだ。「HDMI-CEC だろうと HDR だろうと構うもんか、今はフットボールの試合を見たいだけなんだ!」

Apple はテレビに賭けていたけれども、普段から嘲笑されることの多いアナリスト Gene Munster の言ったことは正しかった。彼は、スマートテレビ受像機にこそ賭けるべきだと主張したのだ。Apple はそれでも自社製造のテレビを出荷するかもしれないし、確かにその市場の余地はあると私は思うが、Apple は今もまだ気が進まないようだ。おそらくそれは、テレビが低マージンのビジネスであることがよく知られているからでもあるのだろう。Vizio の CTO Bill Baxter は、この業界が 6% のマージンを得ていると発言したことがある。その一方で Apple の全体的な総マージンは 38% ほどだ。

Apple がテレビのハードウェア方面で先細りとなれば (Apple TV は市場の 15% しか占めておらず、Amazon にも Roku にも後れをとっている)、Apple にとっての最良の機会はサービス分野にあるのだろう。けれども Apple はその分野でも隅に引きこもっている。なぜなら Movies Anywhere のお陰でメジャーな映画会社からの iTunes 購入を Amazon、Google、その他のプラットフォーム上のアカウントへ同期できるようになって、Apple が持っていた囲い込みの利点が減ってしまったからだ。(2017 年 10 月 14 日の記事“Movies Anywhere、あなたの映画をプラットフォームの壁から開放”参照。)

Apple から何らかの種類のテレビサービスが出るのではないかという噂は盛んに飛び交っているけれども、実際にどのようなコンテンツが扱われるのか、料金はどの程度になるのか、どのプラットフォームで利用できるのかといったことはすべて未だにミステリーのままだ。Planet of the Apps の冗談はさて置き、Apple はいくつかの (混乱してしまうとしても) 印象的な取引を実現してみせた。最近 Tim Cook は 2019 年にはさらなるサービスを登場させると約束したが、具体的には述べなかったけれどもテレビのサービスはすぐにでも登場しそうに思える。

競合するテレビのプラットフォームに対応を提供するという今回の拡張は、Apple が単なる Apple デバイスを超えたより広い市場への自らのサービスの拡張を狙っていることを示唆する。ひょっとするとそれは Apple が Netflix や Hulu と直接相対する計画を持っていることを意味するのかもしれないし、今年のうちに Mouse のストリーミングサービスがスタートすれば Disney とも勝負することを意味するかもしれない。

もっと実際的なレベルで話をすれば、今回 AirPlay と HomeKit 統合がスマートテレビに組み込まれたことで、Google Home と Chromecast が互いにやり取りする関係に非常に近いものが生まれるのではないかと私は思う。今は Google に命じてテレビを消したり、Netflix や Google Play のタイトルを再生させたりできているが、Apple による新しい統合でもそれと似たことができるようになると思われる。Google の音声駆動機能の中でもこれは最も有用なものの一つだが、いずれ Apple が似たようなことをするのはまず間違いないと思う。

あなたの Apple TV の将来について、今はまだ心配する時ではない。現時点では、これはまだ iTunes パズルの中の必要なコンポーネントとして重要な役割を果たしているし、新型のスマートテレビの上でも現行モデルと同じようにうまく働くだろう。それに、Apple TV ならば、あなたのデータが誰かに収集され共有される懸念はない。実はそれこそが、スマートテレビよりスマート機能のないテレビの方が価格が高い理由なのだ。

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Glenn Fleishman  訳: 亀岡孝仁  

USB グループ、安全とセキュリティのために USB-C 機器の検証へと動く

USB 3.0 を管理する業界団体は、USB-C に対する認証プログラムを立ち上げた。これは、この小型で表裏のないコネクターに対応するコンピュータやモバイル機器に、不適切なケーブルや悪意を持つ機器が接続されるのを防止しようとする動きの一つである。この団体の幹部には、Apple, Intel, そして Microsoft が含まれ、この標準が広く採用される可能性を高めている。

高いワット数の電力を通す USB-C 仕様を満たさない不適切なケーブルでは、火事を起こし たりコンピュータを破壊したりしたものが出ている。それ程劇的ではなくとも、名も知れない業者からのケーブルやアダプタの中には約束通りの性能を発揮できないものもあり、高データレートや電力を運べないとか、或いは、安定的に動作しないとかの症状となっている。

悪意の USB ハックも見受けられ、そして、USB "スタック"、つまりホストハードウェア上の USB を管理する低レベルのソフトウェアの中の欠陥が、データを盗み出したり、コンピュータ、電話、或いはタブレットに侵入したり出来る弱点をさらけ出している。単に USB ケーブルを差し込んだり、或いは USB 充電器につないだりすることで、ケーブルや充電器に仕込まれた悪意の機器がデータをハイジャックしたり、機器を乗っ取ったりすることを可能にしてしまうことがあり得る。

提案されている解決策は、暗号化を使うシステムで、"USB Type-C Authentication Program" と呼ばれている。これは、ホストハードウェアの - スマートフォン、タブレット、或いはコンピュータ - 製造者に、接続された機器が USB 標準全体を管理する組織である USB Implementers Forum (USB-IF) によって合法的に認定されライセンスされていることを確認するハンドシェークプロセスを使用することを許す。もし違っていれば、ホスト機器はそのポートを完全に遮断してしまうか、或いは接続されたケーブルや周辺機器が使える機能を制限することが出来る。

機器への接続を、有料で、独占権のある、閉ざされたシステムに対応するものだけに制限するのは、競争を阻害しそして買い手に対する費用の上昇を招くという懸念もある。しかし、このプログラムは自由意志によるものであり、そしてホスト機器のメーカーは (Apple から ZTE 迄)、どの様に認証を実行するのかに付いて選択権を持つので、これは利益の側面の方が多い様に見受けられる。

USB-C: ユニバーサルな混乱

USB-C 標準は、全てのことをもっと容易にするはずであった。一つのコネクタ形式で、USB 3, Thunderbolt 3, DisplayPort, そして他の標準も運び、そして、どちらの向きでも働くので、挿入も "正しい向き" である必要もない。USB-C は以前の USB コネクタでのラップトップ並みの電力を信頼性を持って運ぶという約束も守っている - 実施法によっては最大 100 ワットにも及ぶ。

現実には、USB-C は少々整理が不十分であった。尤も、ある人達が予言したり、今でもそうだと主張する程には悪くはないが。より旧型の周辺機器を持っている人はアダプタを付け加えたり、機器をアップグレードする必要がある。USB 3.1 と Thunderbolt 3 の間の違いについては未だ混乱が存在する:Thunderbolt 3 は接続標準として USB-C を使用するが、USB-C を持つ多くの non-Apple コンピュータや電話は Thunderbolt 3 に対応しない。(これらの違いについてもっと知りたい方は、"Thunderbolt 3, USB-C, そして両者の間にある全てを説明する" 3 November 2016 を参照されたい。)

この混乱が、それぞれのプラグに必要なチップの初期における供給不足、そしてまともなものを作り出す高い製造コストと相俟って、低品質のケーブルやアダプタメーカーが市場を粗末なハードウェアで満たすことに扉を開いてしまった。

USB-IF は、標準化、試験、そして認定に対する中央組織としての役割を果たしているが、このグループが評価することなど全く無しに大量の用品が "USB" と表示されて出荷されている。もっと具体的に言えば、Amazon 上の極めて多くの "USB" や "USB Type-C" 機器は外部試験を通っていない。USB-C 程複雑な標準にとって、それは決して良いやり方ではないが、市場に出すコストと時間の節約には役立っている。

USB-C 100 watt/5 amp (これは何か不具合が起こった時には、機器を焦がし絵しまうに十分な電力を供給出来る) ケーブルメーカーの一社は、認定についての質問に次の様に答えている:

お客様へ、我々は USB-IF 認定は一部のケーブルに対してのみ行っています、全部ではありません。しかし、全ての品質は同じですので、安心してご購入のほどを。ありがとうございます!

この製品のレビューの半分は、星 1 つから 3 つであり、その 3-star レビューですら、余り好ましいものではない。同社は品質を明言は出来るが、そして、認定があるからといってその製品は完全であるわけではないが、その格差は明らかである。.

USB-IF の認証プログラムが対応しようとしているのが、この混乱である。

認証:締め出すか、閉じ込めるか?

未承認の機器が自分の所有する機器に接続出来ないように阻止出来る暗号化認証情報を付与する一つの中央組織を持つシステムは、部分的に競争を少なくするべく設計されているのではないかとの心配があるのは十分に理解出来る。

メディアやゲームに対するデジタル著作権の管理に反対する議論はご存知であろう。一つの組織のエコシステムに取り込まれるということは、それが課する如何なる要求にもさらされ、それが承認する機器しか使えず、そして恐らく膨らまされた値段を払うことになるであろうことを意味する。

しかしながら、私は、この USB-IF とその USB-C 認証プログラムがこの範疇に入るとは思わない。この認証プログラムは少々のコスト上昇を招くであろうが、私はそれだけの価値はあると思う。この標準は、Apple によるビデオに対して、或いは Amazon による Kindle 本に対して課されているセキュリティにというよりは、むしろ HTTPS 接続に対する Web ブラウザによって提供されるセキュリティにより近いと言える。言い換えれば、それは、あなたを組織の利益目標に対する人質として取るというよりは、あなたの利益を守る方により傾斜しているセキュリティだと言える。

USB-IF は、公開鍵暗号を使う信頼の起点として DigiCert を使うが、これは公開鍵暗号が Web サイトを保護するために使われるのと同様である。USB-C エコシステムに属する人は誰でも、Web サイト運営者が証明機関に申請する様に、証明書を DigiCert から取得する。

ケーブル、アダプタ、或いは USB-C プラグを組み込んだ周辺機器は、その証明書を使用して、署名しそして能力について提供された情報を証明する。USB-IF はこのプロセスの一部なので、この業界団体によって試験され証明された機器だけが、プラグ自身の中で暗号証拠を提供出来る。

これは、未認証のケーブルを見つけ出し、そしてそれらがホスト機器に損傷を与えるのを防止する手助けとなるであろう。たとえその製造者が USB-IF 試験には合格していると主張しようとしてもである。

さらに、この認証方式は、未承認のプラグからのデータを阻止することで、悪意の USB 攻撃を防止することも可能にするであろう。Apple はその USB Restricted Mode にこれの変形バージョンを効果的に使っている。これは、iOS 機器が過去1時間の間にロック解除されていない時にはデータを (そして、時には電力も) ロックする。それは USB-C 認証と同じ効果を持っている。違いは、暗号化基盤に依存する代わりに、ユーザーがその説即を承認する必要があるということである。("USB Restricted Mode で iOS デバイスが充電できなくなる可能性あり" 6 August 2018 参照。)

The USB Accessories switch.

この過程の鍵となる部分は、Mac や iPad Pro の様なホスト機器との間で起こる。例えば、USB-C 認証に対応する将来の MacBook Pro では、質問は macOS がどの様に選択肢を皆さんに提示するかであろう。

承認済みのプラグが挿入された時、macOS はそれが今やっているのと全く変わらずに働くであろう:接続は無言のまま会話し、認証され、そして始まる。そこにはプラグが扱えると言っている電力への、そしてデータ経路へのアクセスが含まれる。

しかし、未承認のプラグが挿入された時、macOS は何をするであろうか? Apple は:

今確かに言えることは、Apple や他のオペレーティングシステムメーカーがその様な選択をしようとも、それがもうすぐ世に出る様なことはないであろう。

市場は大きすぎて阻止出来ない

ケーブルやアダプタ分野で値段と量で激しく勝負し、そして同時に標準化や認証過程の一員でもある Monoprice の様な会社では、USB-C 認証が OS メーカーの認可に満たない機器を排除する武器として使われるとは思えない。それは今日でもやれる。何故ならば、USB 機器は既に自らを名乗っているしそれぞれに特長を持っているからである - これらの詳細は検証されていないだけである。

この標準は世に出たばかりであり、今後は、コンピュータやモバイル機器の USB-C 接続を管理する USB や Thunderbolt 3 コントローラへの道を見つけて行かなければならない。それには時間がかかるし、すぐに "認証機器のみ" のやり方を採用する会社はまずないであろう。何故ならば、何億という USB-C ケーブル、アダプタ、等々がもう既に認証無しで世の中に出回っているからである。

我々の聞く USB-C のメルトダウンにまつわる怖い話は、名のある会社がより多くの機器を出荷し、値段も下げるに連れて少なくなっている。しかし、この認証プログラムを通して、USB-C の安全性とセキュリティを向上させる必要があることには疑問の余地はない。

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Jeff Porten  訳: Mark Nagata   

CES 2019 のトレンド: ビッグデータ、5G、AI、AR/VR、自律自動車、大型テレビ

CES はテクノロジー会社のための米国の業界団体 CTA (Consumer Technology Association、全米民生技術協会) が主催するイベントで、大規模な見本市と、各種の話題で専門家がプレゼンテーションをするカンファレンスとを組み合わせたようなものだ。CTA は必ずしも公平な立場で運営しているとは限らないので、過度な楽観主義やバラ色の未来予測に対して用心する心構えをいつも持っているべきだろう。テクノロジー的なユートピアは今すぐに実現されるものでないなどという発言をあえてしようとする人は、この会場では少ない。

だから、CTA の開幕を飾るセッションで今年の予測が語られる際には、私はいつも懐疑的な目でそれを見守ることにしている。そこで示される過去と現在の統計数字についてはいつも正確だと信頼できるが、語られるそれ以外のことはすべて眉に唾をつけて聞く必要がある。Wi-Fi が 512 Kbps までに制限されているホテルを会場としたプレゼンテーションで素晴らしき 5G の未来が語られるのを聞けば、ちょっとは反発したくなるというものだろう。私のこの記事の中に書かれた非難めいた、あるいは疑問視するような論評は、すべて私自身の感想であって、ステージ上で語られたことではない。

いたるところにデータ、データ

講演の冒頭の部分が、まさにその種の楽観主義の典型的な実例であった。いわく、8K テレビから AI に至るまで、今年は画期的なテクノロジーが最高潮に達して大衆市場に届く、そんな年だと語られた。お互いに 人々が 接続することを意識してきた「接続の時代」は終わりに近づき、私たちが使うテクノロジーとその背後にあるビジネスモデルの双方を消費者の挙動が駆動する「データの時代」へと移行しつつあるのだという。データの時代においては、お互いの間で ものごとが 大量の規模で接続される。5G を通して何千何万という極小のセンサーの情報が伝わり、AI を搭載した自動車が周囲のインフラ構造とやり取りし、監視カメラが画像を送るサーバはビデオの内容を理解する。

これが人間の住む場所として冷たい環境なのではないかと思う人たちのために、講演者はちゃんと配慮を示した。データの時代はプライバシーの意味を再定義しようとする現在進行中の動きをさらに押し進め、その意味は国と国によって大きく異なる。アメリカにおいては、Marriott が中国人のスパイ活動によって何百万ものアカウントを失った事件について何となく怒りを覚えつつも、それに対して私たちが習慣を変更することはまずない。(皆さんはまだ Target でショッピングしていますか?) その点を中国自体と比較してみれば、中国ではほとんどすべての人たちが公共圏の中でプライバシーは期待できないということを受け入れている。市民的自由主義者たちはいずれ反動としてプライバシーへの関心が吹き出す転換点がやって来ると予想するが、でも彼らはもう何十年もそう言い続けているし、片や米国の消費者データで現在最も強力な保護を受けているのは図書館カードと、あとはひょっとするとあなたの Netflix キューくらいではないか。(ヨーロッパは General Data Protection Regulation を作ったことで一歩先にいるし、カナダは 35 年前からずっと連邦プライバシー行政監査官を置いている。)

5G information

このプロセスのコンポーネントとなるべきテクノロジーが、多く出品されていた。5G は間違いなく一・二年のうちに登場するはずだが、意図的に人を欺くマーケティング手法によりその登場は早くなる,かもしれず、それはもっと高速のインターネット速度と、桁違いに数多くのデバイスをネットワークで結べる機能を組み合わせることによって実現される。

AI と音声アシスタント

Siri は今もまだ「卵のそばかす」風の誤解を生むことがあるかもしれないが、今や音声は多くのデバイス上でのやり取りの主要な (あるいは唯一の) 手段となっている。これらの認識システムは単なるテクノロジーではなくてプラットフォームだ。Alexa は、Amazon 以外のデバイスでやり取りを学ぶための「スキル」を 60,000 個も備えている。

結果として、あなたがガジェットに言葉で命令することで驚くほど多くのことができるようになった。それでもあなたは HomePod にどうやって話しかけるのか、それが Echo Dot とどう違うのかを覚えていなければならない。たぶんこれが理由で、CTA が実施したアンケートで3分の2の人たちが音声インターフェイスを使っていると答えた一方で、そのアンケートで挙げられた具体的な使用法はどれもスマートフォンの画面を一・二回タップしてできることばかりであった。ただ口述筆記のみが、その範疇を超える唯一の利用法であった。

Shifting behavior in consumer behavior toward digital assistants.

それは主として AI ができる内容に限界があることが理由だが、それはまた私たちが安心して AI に任せたいと思う範囲に制約があることにもよる。現実の人の電話予約代行をする Duplex システムを Google が発表した際に、プログラム的に「うーん」とか「ええと」とかいう言葉まで差し挟むことで電話を受けた人が本物の人間からの電話と区別がつかないようにすると聞いて、ギクリとした人たちは多かった。Domino's がピッツァ宅配で自律走行車を使う実験をした際に、注文したピッツァを受け取るために家を出て表の歩道まで行かなければならないのを嫌がった顧客が多いことが判明した。

私が思うに、その根本的な原因は何が顧客にとっての価値を生み出すかを見失ったところにあるのではないか。ドアまでピッツァを届ける配達人には数ドルのチップを払わなければならないかもしれないが、オレンジソーダを手渡されても Diet Pepsi を注文したのだとすぐに指摘できる。同じ趣旨の実例が、もう一つ別の「はたして これで スマート家電の年と言えるのか?」というタイトルのスライドで示された。はっきりとは言わなかったが、CTA はこのスライドで過去の数年がそう言われていたけれども実際はそうでなかったと言おうとしたのだろう。でも私は、$400 で普通の冷蔵庫が変えるのに $1000 も出してスマート冷蔵庫を買う意味がよく分からない。なぜなら、スマートフォン用のアプリをいくつか使うだけで、十分にスマートなキッチンが提供されるからだ。それにスマートフォンのアプリの方が、ずっと手軽にアップデートしたり取り替えたりできる。

戻るところはいつもテレビ

それよりもっと成功を収めたのが、止むことなく拡張し続けるテレビのインチ数と解像度だ。平均的なテレビのサイズは 1997 年には 22 インチだったが今や 48 インチになった。多くのメーカーが今年は 8K テレビを発売するだろう。それらは必ずしも技術的には 8K (7680×4320 の標準) でないかもしれないが、それでもあなたの眼前に 3,300 万個のピクセルを置くものだ。実際には画面サイズが 65 インチかそれ以上にならないと 4K と 8K の違いは目で見て分かるようなものではなく、リビングルームに (いわんやベッドルームに) そんな大きなテレビを置く人はまずいないだろうから、そこまで手を伸ばす気にならない人が多いのではなかろうか。

もちろん、プロバイダが 8K のビデオを提供することも必要だ。現時点ではまだ実現されていないが、たった一つの例外は日本で、NHK が 2018 年 12 月に 8K サービスを開始しており、2020 年の Tokyo Olympics をすべてそのフォーマットで放送する予定だという。CTA は米国において 2022 年に 1,500 万台の 8K テレビが売られるだろうと予測するが、私としてはその市場が飽和した後で何が起こるかと考えざるを得ない。CES 2024 は、誰もがアップグレードしたいと思う 何か を必要とするに違いない。でも、3D は既に決定的要因とはなれないことを露呈してしまった。

現実: 仮想あるいは拡張

さて、飽き飽きする二次元の現実を超えたところを見れば、拡張現実 (AR) と仮想現実 (VR) のテクノロジーが引き続き向上しつつあるけれども、広く採用されるための決定的理由がまだ見つかっていない。VR は、互いに競合する標準やデバイスによってひどく細分化されてしまった。それに、高価な Windows コンピュータを持っていなければ市場に参加することすらできない。それだけの馬力を得るためには VR をあなたの家の中の専用の部屋に置く必要があり、ケーブルが届く程度に近いところにコンピュータを置く必要がある一方で、仮想現実を彷徨いつつ歩き回っても足を骨折せずに済む程度に広い物理的空間も必要だ。

今年は全身の触覚を利用するスーツを実演している会社があったが、CTA による説明「Red Dead Redemption 2 を着たあなたの腹に誰かがパンチをお見舞いすれば、あなたはそれを感じる」を聞いても、私はあまりワクワクしなかった。そりゃ素敵だね。サインアップはしておこうか。それよりもっと有望だったのは、人々がさまざまなことを体験できる VR テーマパークへの期待だ。そしてもちろん、それが最初に登場するのは日本に違いない。

The Tesla Suit

一方、実際にあなたの視野にあるものの上にヘッドアップディスプレイで直接情報を映し出す拡張現実 (AR) の方はもっと役立つことが明白で、頭全体を覆ってまるで Darth Vader のように見えた不格好なヘッドギアの代わりに、今年はむしろサングラスに近いような AR ヘッドセットが数多く展示されていた。また、体に取り付けずに独立して使う AR、例えば小売店の店頭に AR ミラーの姿見を設置して実際に試着せずとも服を選べるようなものもあった。

個人使用の AR として私が一番期待するものは去年と変わっていない。いずれ、Apple は $1000 の AR 眼鏡を販売することだろう。それは、あなたのポケットの中にある $1000 の iPhone で駆動される。両方が必要な理由は、画期的な見た目と、CPU の馬力と、必要なバッテリーを兼ね備えたヘッドセットなどあり得ないからだ。そう、それは Apple が切り開いた新たなカテゴリーのデバイスとして、博物館の棚に PowerBook、iPod、iPhone、iPad と並んで展示されるものとなるだろう。

たとえそれが Apple でなかったとしても、誰かは必ず出してくるだろう。なぜなら AR こそ将来の私たちが世界とやり取りする方法であることが、あまりにも明らかだからだ。博物館に足を踏み入れれば、あなたが見たものの上にその歴史的データが映し出される。目の前にあるレストランを見るだけで、そのメニューをチェックできる。あるいは「X 線透視機能」を使って通りの向こうの方にあるレストランと見比べられる。どんなスポーツスタジアムにもこの種のデバイスを扱う売店があって、飛ぶような売れ行きを誇ることだろう。

ロボット自動車 (そしてついに空飛ぶ車)

自律走行の自動車は、数年後には実現するといつまでも言い続けられる「次のテクノロジー」だが、いつかはきっと私たちを驚かせることだろう。CTA は、おそらく 2020 年には大多数の自動車が「条件付きで自律走行する」と予想する。あなたが依然として自動車を運転するのだが、自動車自身も注意を払っていて、あなたの気が散っていて前の車がブレーキをかけたのに気付かなければ、自動車自身が運転を代わって、ブレーキ、ステアリング、その他を操作してくれる。あなたが二度とハンドルを持たなくてもよい時代が来るのは 2030 年だと CTA は予想する。

でも、そのことはつまり、私たちがもうすぐいわゆる「不気味の谷」に到達するであろうことを意味する。あなたの自動車は何も考えずあなただけが頭脳であるのが当然の今の時代と、自動車がすべてを引き受けるのが当然に見える時代との間には、私たちが板挟みになる時代が存在する。もしもあなたの運転が良くないかどうかを自動車が監視しているのなら、あなたは自分が思うほど良い運転者でないという具体的な証拠を本当に欲しいと思うだろうか? 自動車が保険会社に告げ口しないことを信用できるか? 人々が自動車に自分の命を守ってもらえるとのんきに考えるようになるだろうと思ったなら、飛行機に乗るのは怖くてできないけれども (統計的にそれよりずっと危険な) 道路で運転するのは何も怖くないと思う人たちがどれほど多いかを思い出して頂きたい。

Information on self-driving vehicles.

その一方で、これまで私たちが言い続けてきた、約束された未来が実現しないという苦情を、ついに引っ込める日が近いかもしれない。つまり「もう 21 世紀なのに、空飛ぶ自動車はまだか?」という苦情だ。三つの会社から私に電子メールが届いて、まさにそれを今年のうちに実演できると言ってきた。実は、最大の問題は空飛ぶ自動車の自律操縦であって、もしもそれがうまくデザインできたならば、人間の顧客が操縦して山に衝突した場合の責任の問題の深刻度が大きく緩和されるのだという。三社のうち一社は、Uber をモデルとしてマーケティングする予定だとさえ知らせてくれた。利用者が空飛ぶ自動車を所有することはないが、いくつかの都市で旅行用に多数の空飛ぶ自動車が使えるようになるのだという。

私の印象では、地上を走る自律自動車にも同程度に混乱を招く可能性があると思う。誰も自動車を運転しなくなれば、自動車を所有する人の数が減り、都会で自動車を所有する人の数が大幅に減れば、現在アスファルトに覆われた信じられないほど貴重な不動産が、突如として他の目的に使えるようになる。この私の予想が正しいかどうかの前兆は、2019 年のうちに San Francisco、San Jose、Washington, DC の3都市で自律運転のタクシーが実際に街を走るようになれば見えてくるだろう。

医療テクノロジーと、強靭なインフラ

このプレゼンテーションの結びに二つの魅力的なカテゴリーについて触れられたが、いずれも詳しいことは語られなかった。まず、この週にはたくさんの医療関係のテクノロジーが発表され、それらは Apple Watch が心臓の状態を識別できることに関するものか、現状では医師の訪問を要する在宅医療が医師の訪問なしにできるようになることに関するものかのいずれかであった。CTA は今回初めて、医師たちがライセンスを更新するために毎年受講できる継続的な医学教育コースをスタートさせた。

それからまた、強靭 (レジリエント) なインフラのために特化したプログラムもあった。つまり、政府が災害に際してコミュニケーションを維持し、深刻な状況の下でも被害を修復して人々により良い情報を提供できるようにするテクノロジーに関することだ。消費者の側では、ライフラインがダウンしていても他のデバイスに電源を供給し接続を保つためのデバイスを購入できる。

以後の記事で私が紹介する個々の製品の発表はもっとずっと現実的なものばかりだが、これからショウのフロアを歩いていて、CTA が語ったことや、新しい製品の実演などを通じて、もしも何か新たなトレンドに気付いたら、またそれについても書いてみたいと思う。

討論に参加

Jeff Porten   訳: Mark Nagata   

CES 2019: CES Unveiled は今年も恒例のガジェット祭り

数字を見るだけで CES がどれほど大規模なものかが分かる。これは Las Vegasで最大の毎年恒例のショウであり、今年は 180,000 人以上の人たちが訪れると思われる。私は 4500 の展示者たちと 6500 人の同僚たちとともにこの会場にいる。同僚の記者たちは皆、コンベンションセンター内の Starbucks で私の前に並んでいる。

メインのショウの前の二日間はメディア向けの期間であったが、その初日の小規模のイベントにメディア関係者たちが招待された。実はその種のショウは三つあり、そのうち二つは CES と直接関係したものではなかった。私は例年それらのショウをメインのフロアと切り分けて別の記事でお伝えしている。これらのショウでは素敵な食事とオープンなバーがジャーナリストたちに提供され(メインのフロアで得られるものとは大違いだ)、見られるブースの数も少ないので、ここで出展している会社はその製品がより良いものかどうかは別にして報道関係者からより多くの注目を得るものだということを知っておいて頂きたい。いつもと同じく、その会社が私に何か値段の張るものを私に提供してくれた場合には絵文字 🎁 を付けて示しておいた。

Nahimic Mac サウンド増強器

CES の会場で Mac 専用のソフトウェアを見ることは稀なので、Nahimic アプリ 🎁 が Mac のサウンド品質を向上させると聞いて、私は二重の意味で興味を持った。私の聴力は並以下 (2011 年 2 月 8 日の記事“iOS 補聴器... 或いは、スーパーマンの耳の買い方”参照) だからだ。私が試したことのある他の同種のソフトウェアでは波形や周波数のスライダーを調整する必要があったけれども、Nahimic のインターフェイスはごく単純な文章で書かれていて、選びたいものをクリックするだけでサウンド環境がセットアップできる。私のMacBook Pro の内蔵スピーカーでは音量が増大すると具合が良いし、そうしておくと音声の明瞭さが聞いていてはっきり違ってくる。でも私はこれをほんの数分間テストしただけなので、いろいろなヘッドセットで試してみたいものだと思っている。既に出荷中で、料金は年額 $34.99 で、15 日間無料の試用版を App Store から入手できる。

Nahimic

Nuheara サウンド増強イヤーバッド

もしもあなたの耳がソフトウェアで得られるよりもっと力強い音を必要としているなら、かつ多少の出費は厭わないというなら、Nuheara のイヤーバッド 🎁 が良いかもしれない。これは AirPods とよく似たワイヤレスのイヤーバッドだが、デジタル信号処理機能を内蔵していてあなたが自己管理できる聴力検査の結果に応じて可聴周波を増幅する。大体において私が2年前の記事に書いたEven のワイヤード・ヘッドフォンと似ている。(2017 年 1 月 10 日の記事“CES 2017: CES 展示会場でのガジェット探し (1 日目と 2 日目)”参照。)Nuheara のイヤーバッドはデバイスから来る Bluetooth オーディオでも、また周囲音に対しても使える。今回の会場で初登場したのは次世代の IQbuds Max イヤーバッドで、これは去年の IQbuds Boost モデルを改良してアクティブな雑音消去機能を装備し、あなたがカスタマイズした可聴周波の必要に合わせて動作できるようにしている。同社はまた IQstream TV も販売しており、こちらは別売のハードウェアデバイスで、自動的に IQbuds に接続して追加の処理を施し、見えるものと聞こえるものの間に時差が生じないようにする。いずれも 2019 年後半にリリース予定で、価格は未発表だ。ただ、Max イヤーバッドが現在 $499 で売られている Boost イヤーバッドよりも高価になるのは間違いないだろう。

Nuheara

POW Audio Mo Bluetooth スピーカー

POW Audio の Mo Bluetooth スピーカー 🎁 は私が以前 CES で見たことがある巧妙な機能をいくつか組み合わせるものだが、価格がずっと魅力的になっている。手の平サイズのこのスピーカーは拡張可能なコンパートメントを備えている。広げれば、スピーカー内の残響音により音質が良くなる。下の写真のように押さえて平らにすれば、ポケットにも入る。オプションのスマートフォンケースと磁力マウントが付属するので、スマートフォンの背面に取り付けて持ち運べる。(当然のことだが、そうすると iPhone の厚みは Jony Ive が頭を抱えるほど分厚くなってしまう。) 予約注文が来週開始され、価格は $99、出荷は 2019 年 2 月だ。二台買えば、双方を接続してステレオサウンドが楽しめる。

POW Audio Mo Bluetooth Speaker

Catalyst 防水ケース

CES で私が大好きなカテゴリーの一つが「自分のためにかゆいところに手を届かせようと設立された会社」で、Catalyst はそれに該当するようだ。彼らは、地球上で最も強力な防水機能を持つ iPhone、Apple Watch、および AirPods用のケースを作っていると主張する。会社を設立した本人が、極端な環境下のスポーツをしながら使うところをソーシャルメディア上で実演している。(その少なくとも一つの実例で、彼のユーザ名のミドルネームが "danger" となっている。) 彼が私に語ってくれたところによれば、Apple Watch ケースは水深100 メートルでも安全だと分かったが、水深 22 メートルのところでウォッチが圧力を感知して自動的にシャットダウンしてしまったそうだ。彼はウォッチを壊してしまったかもしれないと思ったが、水面に戻るとちゃんとまた動き出したという。Catalyst では出荷の前にケースの一つ一つを防水テストにかけていて、当然ながら限界値も明示している。CES で発表された値は次の通り:$89.99 の iPhone XR ケースは水深 10 メートルと 2 メートルの落下に耐え、AirPods 充電器を収納する $29.95 のゴム引きケースは落下と防水の双方とも1 メートルだ。どちらも現在入手可能だ。44mm 版 Apple Watch Series 4 用に発売予定の $69.99 の防水ケースおよび一体型バンドは現在予約注文受付中だ。Catalyst はそれ以外にも他の iPhone モデルや各種アウトドア機器のためのケースを販売している。

The Catalyst in action.

Helite B'Safe 自転車用エアバッグ付きベスト

滝の懸垂下降が嫌になったとしても、もう一つ別の種類の危険があなたを襲う。それは、自転車に乗っていて、ニュートン力学の運動の第1法則をテストする羽目に陥る事態だ。Helite の B'Safe ベストが、そのような場合でもあなたを救ってくれるかもしれない。このベストには内蔵の CO2 キャニスターを使って 80 ミリ秒で膨らむエアバッグが装備されていて、前方と後方を保護してあなたの胸と首と背中を守る。ベストと自転車のサドルの両方に取り付けられたセンサーが、あなたが異常な方向に向けて加速していることを 60 ミリ秒で判断し、転倒と衝突の両方を探知できる。出荷はこの夏の予定で、Kickstarterで 2019 年 3 月に予約注文受付が始まる。私が聞いた話では価格は 600 ユーロとのことだったが、それが標準小売価格なのか予約注文用の割引価格なのかは分からなかった。このベストは再利用可能で (何回も膨らませる必要が生じないことを願いたいが)、交換用 CO2 カートリッジの価格は 50 ユーロだ。

Quell 疼痛緩和バンド

Quell は疼痛緩和デバイスの 2.0 モデルをリリースしようとしている。付属の伸縮自在バンドを使って足に取り付けるように作られている。その原理は、経皮的な電気的神経刺激だ。つまりあなたの足を感電させるようなものだ。この刺激で脳内エンドルフィンの自然放出が促され、身体に感じる慢性的な痛みが和らぐ。新型の Quell はクレジットカード程度の大きさで、服の下に装着していても目立たない。同社は一日あたり 15 分間のセッションを 3 回という使い方を推奨しており、報道用資料によればバッテリー寿命は 25 時間だという。本当に一月に一回の充電で済むなら、予想を遥かに超えた長持ちだと思う。Quell は FDA (米国食品医薬品局) の認可を受けており、資料には査読調査が実施された都市の名前が挙げられているが、疑わしいと思う人には (そう、CES の場でこの種の健康器具の効能を謳う製品は、すべてまず疑いの目を忘れず見るべきだろう)、60 日間の返金保証がある。今年中に、ソフトウェアアップグレードを通じてこのデバイスに AI 機能が追加され、出力を調整できてその変更を通じてあなたを指導しあなたの必要に応じた最大限の疼痛緩和ができるようになるという。このデバイスは現在 $299 で入手可能で、毎月 $50 で電極を交換する必要がある。$349 のスターターキットには一月分の予備電極と携帯用ケースが付いている。

The Quell pain relief band.

WELT スマートベルト

残念な名前の付いた[訳者注: welt という単語には鞭で打たれた跡とかみみずばれとかいう意味があります] WELT Smart Belt には興味深いいくつかの機能が組み合わされている。既存のモデルでは、ウエストサイズ、身体活動性と動きを測定してスマートフォン上のアプリにデータをフィードバックし、もっと運動しなさいとか、ひょっとすると食べる量を減らしなさいとかをあなたに助言する。査読研究の結果によれば、WELT を使った人たちは平均して 12 週でウエストサイズが 1 インチ (1.9 cm) 減ったという。今年中に新型モデルが登場して、あなたの動きを監視するセンサーが追加されてあなたが転倒しそうになると警告するようになる。(思うに、これは CES でよく見る健康器具にある転倒探知機能とは違っていて、転倒の早期警戒機能なのだろう。それならCES であまり見たことがない。) 私の主観を一言: 私は CES でたくさんのスマート衣服を見てきたが、着ていて奇妙に見えないものは少なく、これはそういうものの一つだ。現在 WELT は $199 で販売中で、同社によれば 2019 年後半に次期モデルが発売になれば、まずは Kickstarter で $99 となり、その後$199 まで上がるという。

The WELT belt.

Nomadplug 全世界向け電源アダプタ

外国を旅行する人たちは、国によってプラグ形状や電圧が異なるのでいくつもの電源アダプタを持って行かなければならない苦痛を知っている。荷物を少なくするために開発されたオール・イン・ワンのモデルを私も数多く見てきたが、Nomadplug が素敵な解決法を出してきた。一連のモジュール式の組み立て部品が集まっていて、希土類磁石でくっ付けて一つのユニットに組み立てることができる。新たな国に降り立って違うプラグが必要になったら、部品を取り替えるだけで入力側も出力側も望みのものにできる。さらに素晴らしいことに、この種のアダプタの大多数がせいぜい 130ヵ国程度でしか使えないのに対して、Nomadplug のプラグ部品は種類が多くて 195ヵ国で使える。2019 年後半に入手可能となり、予定価格は $129、オプション部品として直列 5000 mAh バッテリーを購入することもできる。

Nomadplug

Huepnos いびき対策付きアイマスク

いびきをかけば、睡眠の妨げとなり得る。あなた自身にも、また近くで寝ている人にも。Huepnos の睡眠用アイマスクは、あなたのためにこの問題を解消すると謳っていて、内蔵の加速度計が iPhone にあなたの睡眠中の姿勢を知らせる。あなたがいびきをかき始めれば、マスクに内蔵のバイブレータが、あなたを起こさない程度の強さで、あなたに寝返りを促す。ブースにいた担当者によれば、横で寝ているパートナーに脇腹を肘打ちされるのを自動化したものなのだそうだ。それでもいびきが続けば、シリコン製の鼻あてを調整して空気の流れを増やす。このアプリはまた「親切にも」あなたが寝ている間のオーディオを録音してくれるが、おそらくあなたのパートナーが朝になってあなたのスマートフォンを指差すことで嘘を言っていないと証明できるようにするためなのだろう。アイマスクを購入するか決める前に、アプリだけを無料でダウンロードすることもできる。注意すべきは、Huepnos が FDA (米国食品医薬品局) による認可を受けておらず、臨床治験も実施されておらず、医学的効果は何も主張しないと明言されていることだ。つまりこれは睡眠時無呼吸症候群の治療を目指すものではない。このアイマスクの通常価格は $179 だが、現在 Indiegogoで $125 で販売中だ。

Hüpnos Snore-Reduction Sleep Mask

Aveine ワイン用エアレーター

私は去年も Aveine 製品の巧妙さに感心した。(2018 年 1 月 18 日の記事“CES 2018: Eureka Park、CES を締めくくる”参照。) これはワインの瓶の口に取り付けて使うもので、飲む何時間も前から「ワインに空気を吸わせる」手間などかける必要もなしに自動的にワインの曝気処理をしてくれる。今年はこの製品が更新され、今回の新バージョンは温度の読み取りもできる。ワインの瓶のラベルをスキャンすれば、付属のアプリがそのワインに最適の曝気量と温度を知らせてくれる。ただし、プレスリリースによれば空気の流れをいじることで同じ瓶から違う風味を得ることもできるという。2019 年 1 月末まで Indiegogo にて $175 で販売されているがそれ以後は $249 となり、出荷予定は (ウェブサイトには 3 月と書いてあるが) 6 月だ。

Aveine Wine Aerator

Ispace HAKUTO-R 月面着陸

私は CES の会場で聞く突飛な主張には慣れているけれども、文字通り月へ行くつもりだと語る人に出会えるとは思っていなかった。Ispace は HAKUTO-Rミッションで 2020 年に月を周回し 2021 年に着陸する予定だという。ほんの一週間ほど前に中国が Chang'e 4 を月の裏側に着陸させることに成功したばかりだが、もし Ispace も成功したならば月面の兎のトレンドが生まれるだろう。Chang'e 4 の月面車 Yuto 2 (玉兎2号) は中国語で玉の兎という意味だし、HAKUTO は日本語で白い兎という意味だからだ。でも、いったいなぜ Ispaceが CES に出展したのか私には分からない。PR 資料を見ても何も販売していないようだし、驚いたことに同社の報道関係者向けウェブサイトにはこのサイトの使用には許可が必要だと書いてある。ひょっとすると彼らは、同じことを目指している他の民間会社に先んじてできるだけ多く報道してもらいたいだけなのかもしれない。

Hakuto-R

BlackBerry

BlackBerry (BlackBerry という名前を覚えていますか?) が出展している。どうやら主として、この会社がまだ存在していること (誰か知っていましたか?) を知らしめたいというのが目的のようだ。それにまた、メディアキットを 3.5 インチフロッピーディスクで配布したいらしい。(実際のところ、現在BlackBerry は携帯電話用のセキュリティ基盤構造 B2B を提供している。)

結びに、私がこの会場で一番欲しいと思ったテクノロジーは何かというと、それは、もっと優れた顔マスクだ。ここ数年、CES カンファレンスに来る度に、何か悪いものをうつされて帰ったものだ。特に去年はひどかった。でも今年は、私の方が風邪をひいた状態でここに来たので、過去数年間に私が他の人たちをまるで Typhoid Mary (チフスのメアリー) に接するかのような厳しい目で見たのを思い出して、居たたまれない気持ちになった。でも今は CVS で買ったマスクと手指消毒剤で武装したので、さあ行こう!

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ExtraBITS

訳: Mark Nagata   

The Original Voice of Siri Speaks Out Again

Siri の元の声の主、再び語る

もう 5 年以上前も、声優 Susan Bennett が CNN のインタビューに答えて、もともとの Siri の声は彼女であったと明かした。(2013 年 10 月 4 日の記事“Siri の声の主が語る”参照。) Apple はその後 iOS 11 で彼女の声を別の声に置き換えたが、今回 The Hustle の Zachary Crockett がまた彼女にインタビューして、さらに詳しい話を聞き出し、その声を何百万人もの人たちが聞いた彼女の人物像を豊かに描き出した。

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The Apple TV Remote Is a “Nightmare Horror-show”

Apple TV Remote は「ホラーの悪夢だ」

Ars Technica の記事で、Steve Brykman が Apple TV は大好きだけれどもそのリモコンは大嫌いだと述べる。それに同感という方は、Apple TV Remote を徹底的にけなした (彼自身暴言と認めている) 悪口雑言を痛快に思われるかもしれない。機能性より形式を強調しているところが最も彼の怒りに触れるようだ。でも、彼の言うことは全くその通りで (2016 年 4 月 14 日の記事“Siri Remote を使いこなす”参照)、そもそも Apple がこれほどお粗末な工業デザインを当初出荷したことも、Apple TV 4K に至ってもまだ (単に Menu ボタンのまわりに白い輪を付けたのみで) それを修正できていないことも、驚きだという以外にない。

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Insights into User Behavior Surrounding Smartphone Apps

スマートフォンアプリを巡るユーザー挙動への洞察

分析会社 Creative Strategies の Ben Bajarin が、独立のアプリ開発者たちの協力を得てスマートフォンアプリを巡るユーザー挙動の調査をした。典型的なユーザーは アプリを 50 個以下しか持っておらず、毎日使うアプリはそのうち 6 個から 10 個までの間だ。その人がアプリをダウンロードするか否かの決断の際の最も重要な要因は顧客レビューだが、支払う段になれば価格以外に重要な要因はない。この記事を読んで、人々がどの程度頻繁にアプリストアをブラウズするか、検索がどの程度うまく行くか、どの程度多くのアプリに料金を支払っているかなど、さらなる情報に触れて頂きたい。

では、あなたはどうだろうか? あなたが毎日使うアプリはどのくらいの数で、あなたがダウンロードしたり料金を支払ったりする際に判断材料とするのは何だろうか? あなたはどの程度頻繁に App Store をブラウズして新しいアプリを探すだろうか? ぜひコメントに書き込んで頂きたい。

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