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#1455: USB 3.2 と USB4、Eject キーの再利用、MacBook に iPad を取り付け、Palm フォンと iPhone nano を考える

USB を担当する業界団体が USB 3.2 の新しい命名規則を発表したが、これが大いなる混乱を起こす可能性が高い。さらには USB4 の草案リリースもあったが、これも混乱に輪を掛けることだろう。今週号では他に三つのレビュー記事がある。まず、キーボードの Eject キーにもっと使い道があったらなあと思う方は、Ejector を試してみるとよい。Eject キーを再利用して、マウントされたボリュームのどれでもイジェクトできるようにする。MacBook に第2ディスプレイがあったらいいのにと思う方のために、Jeff Porten が MacBook のスクリーンの横に iPad や iPhone を取り付ける Mountie クリップを検討する。それから、もっとずっと小さい iPhone が欲しいと思う方には、Julio Ojeda-Zapata が極小サイズで欠陥の多い Palm フォンを調べつつ、空想を飛躍させて Apple なら iPhone nano を作れるのではと思いを巡らす。今週注目すべき Mac アプリのリリースは一つだけ、Carbon Copy Cloner 5.1.8 だ。

Adam Engst Josh Centers  訳: 亀岡孝仁  

USB 3.2 の名称変換は何かがおかしい;USB4 発表される

来るべき USB 3.2 標準は、年内にそれをサポートする製品が出回ると、最大速度 20 Gbps を提供するようになるが、USB 産業グループである USB-IF からの紛らわしい名称付けのせいで、ある特定の機器がどの速度をサポートするのかを知るのは難しくなりそうである。その理由は、USB-IF が遡及的にこれ迄の USB 3.0 と USB 3.1 標準を新しい USB 3.2 の名前に纏めようとしているからである。新名称は次の様になる:

仕様 速度 新仕様名 通称
USB 3.0 5 Gbps USB 3.2 Gen 1 SuperSpeed USB
USB 3.1 10 Gbps USB 3.2 Gen 2 SuperSpeed USB 10Gbps
USB 3.2 20 Gbps USB 3.2 Gen 2×2 SuperSpeed USB 20Gbps

公平を期すために言うと、USB-IF は何時も紛らわしいままである。と言うのも、USB 3.1 の初期リリースは USB 3.1 Gen 2 と呼ばれ、次に USB-IF は遡及的に USB 3.0 を USB 3.1 Gen 1 と呼び変えた。単純な USB 3.0, 3.1, そして 3.2 という名前では、何が悪いのであろうか?

これらの名称変更の実際的な結末は、"USB 3.2" と名乗る機器が必ずしも自分が期待する速度を提供しないかもしれないということであり、仕様を注意深く読む必要がある。

我々がこの記事を出す直前に、USB Promoter Group は 2019 年の半ばに予定されている USB4 の仕様草案を発表した。USB4 は、USB 2, USB 3.2, そして Thunderbolt 3 とも後方適合性を持つとなされている。事実、それは Thunderbolt 3 を下敷きとしたもので、USB 3.2 の 20 Gbps のスループットを 40 Gbps に倍増し、複数のデータとディスプレイプロトコルを同時にサポートすることを可能にする。明確でないのは、USB4 が Thunderbolt 3 とどう違うかである。分かっているのは、後方適合性、USB-C コネクタ、そして 40 Gbps 認証の新しいケーブルが必要であることである。

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Josh Centers  訳: Mark Nagata   

Ejector、影の薄い Eject キーに存在理由を与える

Apple が光学ドライブを内蔵する Mac を出荷しなくなってからもう何年も経つが、それでも同社の正規のキーボード Magic KeyboardMagic Keyboard with Numeric Keypad のいずれもまだ Eject キーを備えている。また、旧型の MacBook で Eject キーの付いたものを使っている人たちもまだまだ多い。でも、Apple USB SuperDrive のようなものを使っているのでない限り、その Eject キーはただそこに静かに控えているまま、悲しく、寂しく、ほぼ触れないままになっている。(もちろん、あなたが日常的に Control-Eject を押して Restart/Sleep/Shut Down のダイアログを出したり、Control-Shift-Eject を押してスクリーンをスリープさせたりしているのならば話は別だが。) そこで、 残りの大多数の私たちに役立つのが Dave DeLong の巧妙なアプリ Ejector だ。

Ejector の働きは信じられないほど単純だ。このアプリはバックグラウンドで走り、あなたが Eject キーを押すと、イジェクト可能なボリュームすべてを表示したウィンドウを開く。リストの中からあなたが一つを選んで Eject ボタンを押せば、あるいは矢印キーを使って一つを選んでから Return キーを押しても同じことだが、そのボリュームがイジェクトされる。その間、あなたの手をキーボードから離す必要は一切無い!

Ejector

MacBook Pro なので Eject キーなんかないって? 心配ご無用、Ejector は Touch Bar にも対応しているので、Control Strip の中にイジェクトボタンを表示する。残念ながら、もしもあなたの Mac に Eject キーも Touch Bar もなければ、今のところあなたの好きなキーをイジェクトのアクションに結び付ける手段はない。けれども、もしもあなたが例えば Keyboard Maestro のようなマクロユーティリティを持っていれば、あなたのお好きなキー組み合わせを Ejector アプリに割り当てることができる。

Ejector's eject button on the Touch Bar

では、どんなものをイジェクトできるのか? DeLong によれば「パーティション、ディスクイメージ、ネットワークドライブ、または外付けドライブ」だ。要するに、あなたの起動ドライブ以外のボリュームで現在マウントされているものならば何でもイジェクトできる。いつも通りに、イジェクトしようとするボリュームの上に現在開いているファイルがあれば (たとえそれが不可視ファイルであっても) macOS はそれをイジェクトさせてくれない。その場合には、Option キーを押せば強制的イジェクト (Force Eject) ができる。

Force ejecting a volume with Ejector

このアプリにはそれ以外に何もない。だから、$9.99 という値札を見て尻込みする人もいるだろう。ただし 7 日間の無料試用ができる。でも、誰も DeLong を欲張りだと非難することはできない。なぜなら、彼は Ejector のウェブページの一番下のところで Apple に対して公然と彼のアプリを "Sherlock 化" せよと要求しているからだ。彼はそこに Radar リンクさえ含めて、Apple 開発者たちがそのリンクを使って Apple に対して公式にその機能をリクエストできるようにしている。

一つ、皆さんが混乱するかもしれない点を説明しておこう。私が初めて Ejector をダウンロードして開いた時、私の High Sierra マシンでも Mojave マシンでも何も起こらなかった。そこで DeLong の Twitter フィードをチェックしてみた結果、問題点を見つけることができた。Ejector は、Downloads フォルダの中に置いたままでは正しく起動しないのだ。そこで、まず Activity Monitor を使って Ejector を強制終了してから、Ejector を Applications フォルダの中へ動かしてみると、今度は問題なく動作した。DeLong はこの問題点を認めており、アップデートを出して修正するつもりだと述べた。

もう一つボーナスヒントとして、Apple USB SuperDrive を持っているけれども Eject キーがない場合にどうすべきかを説明しておこう。たいていの場合、スクリーン上でマウントされた CD や DVD をゴミ箱へドラッグすればイジェクトできる。また、Apple が提供している menu extra を使えばメニューバー上に Eject メニューを置くことができ、そこから SuperDrive を選べばそこに入っているディスクをイジェクトできる。(トレイを使ったドライブならばトレイを開くこともする。) 残念ながら、Ejector と違ってこのメニューは他のタイプのマウントされたボリュームをイジェクトすることはできない。この Eject menu extra をインストールするには /System/Library/CoreServices/Menu Extras へ行って Eject.menu をダブルクリックすればよい。

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Jeff Porten  訳: 亀岡孝仁  

Mountie を使って MacBook に iPad を第二ディスプレイとして取付ける

多くの TidBITS 執筆者の様に、私は以前から生産性ツールとしての複数モニターの支持者であったが、モバイル MacBook のユーザーとして、自分で推奨していることを実践するのは何時も困難であった。私は iMac を Starbucks に持って行くことはしないが、かつて 17-inch PowerBook をより新しい MacBook の2番目の画面として使ったことはある。それには、バックパックを背負って歩くことでしっかりした運動が出来るという追加の "特典" も付いてきた ("自分だけの 23 インチ MacBook を作ろう" 5 February 2007 参照)。

もっと最近の話だが、私は第二画面として iPad を使うことにした。こちらはお陰様でとても肩に優しい。私は Duet Display に依存し、それを推奨しているが、同僚の Julio Ojeda-Zapata は、同じ様なハードウェアベースの Luna Display を推奨している ("Luna Display を使えば iPad が反応の良い Mac スクリーンに" 7 December 2018)。私は、13-inch MacBook を 1440-by-900 解像度で、そして iPad Air 2 を 1280-by-800 の解像度で走らせるのが好みである。これだと、21.5-inch non-Retina iMac 上の 1920-by-1200 モニターとほぼ同じ画面サイズが得られる。勿論、二つのより小さな画面は一つの大きな画面と同じではないし、一つの大きな画面の方が一般的には好ましい - しかし、二つの画面はワークフローによってはより適している場合もある、とりわけ Mission Control を使う場合は。

このやり方には小さな問題がある様に思えた:画面をくっつけて横に並べるには、机の上に十分な場所が取れる場合に限定される。混雑したコーヒー店の狭いテーブル上で、或いは:座り心地の良い椅子で仕事しようと思っても、iPad を置く場所など見つからない。と言うわけで、私は Ten One Design の Mountie を買った。これはクリップ型のもので、iPad (或いはより小型の機器) を MacBook 画面の横に固定させてくれる。私は、得られるものは便宜性だけだと思っていた。

The Mountie in real life.

ところが、結果的には、Mountie には変革を生み出す力があることが分かった:私が複数モニター設定で過ごす時間の割合は、凡そ 20% から 80% へと増え、そして、私の仕事のやり方までも完全に変わってしまった。Mountie が必要とするのは、机の場所ではなく、空間での場所である - コーヒー店のカウンターで iPad をスタンドに乗せて設定するのは隣の人の場所に割り込んでいく様な感じがするが、iPad を空間に浮かせて配置すれが、通常人々が自然に受け入れる個人的空間に収まる。そして、Mountie は、MacBook Pro を膝の上に置いた状態でもうまく働き、足を上げたままで仕事をさせてくれる。もっとも、エコノミークラスでは、隣人を幸せにする様なものではないことは自覚しておいて欲しい。

Ten One Design は Mountie を 9.7-inch iPad かそれより小さな機器用に設計している。(代わりに iPhone を固定するためにも使え、第二画面としては働かないであろうが、Mac の画面上で場所取りすることなく、ビデオを再生したり、Messages を見たりするのに使える。) より大型の iPad Pro 用には、Mountie+ があり、こちらは同じことを一つではなく、二つのクリップを使って実現している。

Mountie の説明書はお粗末で、そして、もどかしいことに、Ten One Design はその Web サイトに如何なる文書も載せていない。IKEA のテーブルを組み立てている間に家を焼け落ちさせてしまえる様な人間の一人として言うと、正しく設定できるようになる迄に1時間もかかった。下記の写真では、色のついたクリップは、iPad と MacBook スクリーンの 背面 に付いている。私は、最初に試した時、これを前面に置き、そして画面の隅が覆われてしまうのは仕方がないものと我慢するものかと思った。その反対側はより狭くなっていて、こちらが本来の Mountie の正面なのだが、モニターの縁は覆うが本体は覆わない。もっと機械的な技能に優れた人ならもっと早く気づくであろうし - 或いは、もっと観察力のある人でもそうであったろう。と言うのも、私は後になって、この Web サイトにはデモビデオがあって見ることもできたはずであることを知った。

The back of the Mountie.

Mountie には、厚さの違う6枚のゴム製のインサートが付いており、これはクリップの内側のプラスチックの棚状の所に嵌め込む。更に、Post-it ノート大の紙が一枚入っており (これが唯一の説明書)、どのハードウェアの組み合わせにどのインサートを使うかが記されている。インサートの一つは、ケース付きの iPad 用に意図されているが、私の使っている Moshi VersaCover は厚すぎて合わなないので、ケースから外して使わなければならない。他に裏に粘着テープが付いた薄いゴム製のタブが2枚入っているが、技術サポートの人がそれらはクランプの幅を微調整するためのものであると言ってくれる迄、何のためのものか見当もつかなかった。

一旦調整が終われば、クリップの表側のどちら側もしっかりと取り付く - 少々心配になる程 - MacBook スクリーンと iPad に。挟み込む力は、私がスクリーンにヒビが入ってしまうのではないかと少々気になるほど十分に強いので、何時もクランプを閉じる時はゆっくりと慎重にやっている - しかし、私が心配し過ぎであるのはまず間違いないであろう。このクランプは iPad をしっかりと保持するが、私はバスの中や飛行機の中では振動や乱気流があるので、これを使う気にはなれない。私は一度だけ iPad を落としたことがある (幸いにしてカーペットの上に)。それは MacBook を膝の上に置いている時で、急に起き上がり過ぎたためである - iPad の重さで MacBook 蓋が下がり、その勢いで iPad がクランプから外れたのである。私はこれはユーザー過誤によるものだと思っている。何故ならば、もっと注意深く立ち上がり、そして両手で両方の機器を支えていれば何の問題もないからである。気をつけて下さい。.

心配事の二つ目は iPad の重さが MacBook を傷めはしないかと言うことである。 MacBook スクリーンのヒンジは、確固たる実績を持っているわけではないので、高価な修理となる危険性を心配するのは当然であろう。Ten One Design の Peter Skinner は、同社はこれに対しての試験を行っているし、筐体の一番強い部分に負荷がかかるよう Mountie を設計していると語った。彼はまた、iPad をモニターの一番上に止めるのではなく、iPad の底がテーブルに着くように取り付けることを勧めている。それはとりわけ、より重いタブレットをより軽い MacBook に取り付ける際は、重心が安定して良い考えである。

クランプされると、iPad はあなたの方に向かって少し傾くが、調整は出来ない。プラスチックの本体は MacBook のスクリーンの側面に沿う形になり、安定しているが角度は固定されている。iPad に触ると少し動くので、固定スタンドに置いている時よりもより優しいタッチが求められる。ほんの少しだが押すとズレる感じもするし、強く押すとクランプから外れたり、或いは痛めたりしそうな感じもする。繰り返しになるが、気をつけて。

このデザインに関する私の他の大きな苦情は、複数モニターユーティリティとの関わり方についてである。Duet Display を使う場合、MacBook から iPad の間をつなぐケーブルが必要となる - Duet のワイヤレスオプションは使い物にならない - と言うことは、MacBook に向いている側はスクリーンと密着しているので、iPad の Lightning ポートは外向きになっていなければならない。私のケーブルは、届くだけの長さはあるが、Lightning ポートから USB-C ポートへと連なるダランとした弧を描く結果となり、それは、私には両方の機器を床に叩きつけてしまう原因となり得るよう見えてしまう。私は MacGyver流の創造性を発揮して、ケーブルを通すためのループを Mountie に取り付ける積もりであり、そして Ten One Design に対してもそれを機能として付け加えるよう進言済みである。もし Luna Display や Duet Display の Air や Pro サービスを使うのであれば、ワイヤレスとなるのでこの問題には煩わされない。

Mountie の値段は $24.95 で、2色の選択肢があり、緑と青だが - 私が調べた時点では、1色は売り切れていた。Mountie+ は $34.95 で、何色でも購入できるが、選択肢は黒に限られる

[訳者注:この記事で紹介されている製品は Apple store, Amazon Japan 等でも買えます。]

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Julio Ojeda-Zapata  訳: Mark Nagata   

Palm の極小スマートフォンはお粗末だが、iPhone nano ならどうか?

小型のスマートフォンを好む人たちは、Apple の iPhone SE がなくなってしまったように見えることを嘆いてきた。iPhone SE は Apple の現行の iPhone のどのモデルよりもずっと小さいので、手が小さい人にも扱いやすく、狭い場所、とりわけ女性の衣服の小さなポケットの中へも詰め込めるという利点がある。iPhone SE 2 が登場するのではないかという噂もずっとあって、テクノロジー系評論家の中には絶対に必要だと論じる人たちもいる。

でも、もしも Apple が iPhone SE よりもっと小さい、ジーンズの前面にある五番目のポケットにさえ入るようなものを出したならどうだろうか? そう、一世紀前には懐中時計を入れるために使われていた「ウォッチポケット」で、2005 年に Steve Jobs が iPod nano を取り出してみせた、あのポケットだ。

想像してみよう。Tim Cook が壇上であの派手な身振りを再現して、今度は Apple 史上最小のスマートフォン、iPhone nano を取り出してみせたらどうだろうか。(盛大な拍手と歓声が沸き上がること疑いなしだ。)

もちろん、ここで言っている iPhone nano というのは完全に空想の産物だが、私は最近になって実際に出荷されているそのサイズのスマートフォンをテストしてみて、否応無しにこの空想を燃え上がらせてしまった。

その製品は、Palm という名前だ。そう、その昔に大いに人気を博した個人用デジタル・アシスタントであり最も初期のスマートフォンとも言えた Palm のことを思い出す人も多いだろう。でも、あまり興奮し過ぎてはいけない。困難な時を経て Palm は没落し、そのブランド名は何度か所有者を変え、今や元のPalm 社とは何の関係もない人たちがこれを所有している。

けれども、彼らは自社の唯一の製品に箔を付けるために Palm の名前を使っている。これは Android フォンで、異様なほど小さいが、それでも立派に機能する。それと同時に、これは深刻な欠陥も持つ。Android を走らせているので、大体において Apple エコシステムとは互換でなく、従って TidBITS 読者や他の Apple ユーザーにとって使い道に乏しい。ネイティブな iMessage 対応がないことだけでも、この層の人々に Palm Phone を売るには大きな障害だろう。

そこで、私はこの Palm をちょっとした沈思黙考の出発点とすることにした。つまり、もしも Apple がその気になって、この線での製品を作る気になったならばどんなものができるだろうか、と考えてみることにしたのだ。結局のところ Apple の 仕事のやり口 というのは、過去を遡って考えれば、欠陥あるハードウェア製品を徹底的に調べ上げて、そこに改良を加えることだったのだから。Apple が思い付くミニ・スマートフォンとは、どんなタイプのものだろう? この Palm を、着想として、かつ教訓として、利用できないだろうか?

Palm

この Palm は、見栄えは想像通りだ。長方形の板状で、iPhone XR や Google Pixel と同じように四隅は丸められている。ただ、ずっと、ずっと小さいだけだ。右上に電源ボタン、底辺のところに USB-C ポート、背面と前面それぞれにシングルレンズのカメラ、ハードウェア的にはそれで全部だ。音量ボタンすらない。気持ち良いほどに最小主義のデバイスだ。

The Palm phone in action.

サイズが非常に小さいにもかかわらず、これはフル機能の Android フォンで、大サイズの Android フォンで走るアプリのほぼすべてが走る。

スクリーンサイズが小さいことに合わせて、Palm は一つ巧妙な工夫を施した。デフォルトの Android インターフェイスのようにアイコンをグリッド状に並べる代わりに、アイコンのクラウドとでも言うべきものを考案して、アイコンがスクロールして視野に入ると大きくなり、視野から出て行こうとするアイコンは小さくなるようにしたのだ。また、このクラウドの下側にはコンパクトサイズのグリッドがあってお気に入りのアプリを置いておける。

この Palm は普通とは違う特徴を持つ。これは独立動作のデバイスではなくて、ある意味あなたのスマートフォンの子機として使うように意図されている。スマートウォッチを伝統的なハンドセットのアクセサリーとして使うのと同じようなものだ。米国で Palm の独占的ワイヤレスキャリアである Verizon は、双方のデバイスに同じセルラー番号を割り当て、Verizon の NumberShare サービスを使ってデータを同期する。このデータ同期は Apple Watch や他のセルラー対応スマートウォッチで使うのと同じものだ。

Incoming call on the Palm phone.

いったいなぜ、まるでフルサイズの Dr. Evil の小型版 Mini-Me みたいな相棒のスマートフォンが必要なのだろうか? Palm はその答として、大きくて邪魔になるスマートフォンは家に置き、小さい方だけを持ち運びたいこともある、例えばワークアウトに行く時などは邪魔にならず便利だろう、と言う。

ライフスタイルに対するこのメッセージを後押しするため、Palm はさまざまのアクセサリーを出していて、Palm を首に掛けたり、自転車のハンドルに取り付けたり、腕からぶら下げたり、財布の中に入れて持ち運んだり、あるいは格好良い Kate Spade のレザーケースと腕輪でミニ財布に変貌させたりもできるようにしている。

The Kate Spade case for the Palm

Palm はまた、この極小サイズのスマートフォンをスマートウォッチの代わりとしても使えるように位置付けていて、Android がフル機能し、カメラも内蔵し、キーボードをフルに使ったメッセージングもできる点で、現行のどのスマートウォッチよりも優れているのだと Palm は主張する。

けれどもこの Palm には深刻な問題点があって、そのため未だに門の外をあてもなく歩き回る状態を脱することができずにいる。バッテリー寿命がどうしようもなく悪く、パフォーマンスは貧弱、カメラは二流以下だ。その上価格が $349.99 (ただし 2 年間のワイヤレス契約を結べば $299.99) とくれば、まるきり余計な機能ばかりのハードウェアに高いお金を出す羽目になってしまう。Ars Technica の記事見出しが、見事にそれを言い当てている:「Palm Phone レビュー: 楽しく、可愛らしく、すべての点で出来が悪い。

iPhone nano

スマートフォンデバイスの子機としての超小型フォンというアイデアは一部の人たちにあまりにも馬鹿げたものに聞こえたようで、Apple 界の中でさえ冗談の種となったことがある。Geek Culture の漫画 The Joy of Tech を書いている私たちの友人 Snaggy と Nitrozac も、これを笑いの種にしている。(下に示したのは 2018 年 12 月 10 日の漫画の一部だ - フルの漫画はこちら)

A Joy of Tech comic

それでもなお、この Palm を見て「もしや?」と考えたことのある iPhone ユーザーは結構多いのではないかと思わざるを得ない。私は確かにそう考えた。

この Palm 程度の大きさの iPhone というのは、Jony Ive と仲間たちにとって十分に力量の範囲内にあるだろう。あとはその意思があるかどうかだけだ。

実際、Apple は、曲がりなりにも、既にそれをやってのけている。私は自分の第六世代 iPod touch を取り出して、Palm Phone と並べて置いてみた。ご覧頂きたい! スクリーンサイズについて言えば両者はほぼ同等だ。iPod のベゼルの部分を差し引けば、iPod のディスプレイの方がほんの僅かに長さと幅が広いだけだ。

An iPod touch side-by-side with the Palm

Apple は最近になって iPhone のベゼルの幅を狭くして、おそらく Apple が初代の iPhone 以来目指し続けてきたもの、かつ何十年も前からSFの夢であったもの、すなわち前面がすべてスクリーンである携帯用デバイスに向けて歩みを続けている。だから、上下の大きなベゼルをなくしてずっと薄くなったバージョンの次世代 iPhone SE が登場しても、何の不思議もないではないか?

そのような iPhone を求める市場があるのか否かは、私には分からない。Palm が空前の大ヒットをするところは、私には想像できない。でも、少なくとも現在 iPhone SE の後継機を熱望している人たちならば、可愛らしいほど極小の iPhone nano というアイデアを聞けばハッと目が覚める思いをするのではないかと私は思う。その名前だけでも、間違いなく熱意を掻き立てられるだろう。

そこには考えるべき問題がたくさんある。バッテリー寿命はどうなるのか? そんな極小サイズの iPhone は独立動作のデバイスなのか、それともメインの iPhone のアクセサリーなのか? Palm 上の Android インターフェイスのように、極めて小さなスクリーンに合わせて iOS のインターフェイスを適合させ改変する必要があるのか? ここでも、すべては全くの臆測に過ぎないことではあるが、私の直観ではこれらの問題点が iOS でなく他のものを示唆している感じがする。

watchOS フォン

その「他のもの」とは、Apple Watch だ... いやむしろ、watchOS を走らせる機器だが、腕に巻く代わりにポケットに入れて使うために作られたものだ。

この線で興味をそそるものを見掛けたことがある。いくつかのサードパーティのアクセサリーメーカーが、さまざまな方法で Apple Watch をポケットウォッチとして、あるいはペンダント、ネックレス、スカーフ飾りなどに入れて身に着けられるような製品を出しているのだ。確かにこれらのやり方は実用性で劣る。手首に着けていない Apple Watch はパスコードをタップ入力しなければ使えないからだ。けれどもこれらの製品は、少なくとも見た目には watchOS デバイスを手首以外の場所でも使えることを実証している。

Palm のフォームファクターにもっと近づく実例として、iPod nano に似たケース風のドックの中に Apple Watch を入れて使うという概念実験的な Pod Case アクセサリーがある。この Pod Case はどうやら実用化はされないらしく、いずれにしても純粋に見栄え上の試作品のようだ。

Pod Case

でも、ここで私にお付き合い願いたいが、もしも Apple がその気になって、動作は Apple Watch のようだけれども見掛けは iPod nano に似た、そんな watchOS デバイスを作ったとしたらどうだろうか? 具体的に私が考えているのは、Apple が 2017 年に廃止する直前の、最終型フル・タッチスクリーン・モデルの iPod nano だ。

iPod nano

さらにもっと考えてみると、Apple Watch は最近ますます独立動作の性格を増やしつつある。つまり、相棒となる iPhone がなくても独自にできることが多くなりつつある。例えば、Apple Watch は今やなかなか優れた独立動作のポッドキャスト・プレイヤーだ。(2018 年 10 月 15 日の記事“Overcast と Apple Podcasts で今や Apple Watch は良いポッドキャスト再生機”参照。) この記事の本筋に沿った面を言えば、Apple Watch は親機の iPhone とは独立に電話をかけたり受けたり、音楽を再生したり、テキストメッセージを送信したり受信したりできる。

私の言いたいことはもうお分かりだろう。私は Palm フォンに対する Apple の答としての iPhone nano を心に描いている。Apple なら、必ずや Palm デバイスの欠点に対処する道を見出せるだろう。大きさも同じくらいだから。

Palm phone vs. iPod nano

そのような iPhone nano なら、こんなことが考えられる:

iPhone nano を欲しがるのは誰か?

でも、ここでもう一度問うべきは、そのような製品を求める市場があるのか否かだ。その答は、私には分からない。でも、私は欲しい。

私は腕時計があまり好きではない。少なくとも、常時着けているのは嫌だ。フィットネスの最中に Apple Watch を着けているのは気にならないけれど、何枚も重ね着する必要のある真冬に腕時計を見ようとするとイライラさせられる。誰もが日当りの良い Cupertino に住んでいる訳じゃない。何枚も袖を捲ってから、やっと画面を見てタップできるようになる。時には、腕時計を見るのが面倒で iPhone を取り出す方が楽だと思うこともある。

それでも、iPhone の方もそれ自体煩わしく感じることがある。私はずっと以前から iPhone は大きい方が良いという考えで、ミニ・タブレットとして電子ブックを読んだり、ビデオを観たり、写真を編集したり、さらには外付けキーボードを繋いでちょっとした生産性ツールとして使ったりさえしている。でも、そのような大型のハンドセットをポケットに詰め込もうとするとイライラするし、邪魔になることもしばしばだ。

でも、そんな場合に iPhone nano があれば完璧な追加機器となるだろう。そういう機器を私のジーンズの小さなウォッチポケットに押し込んだり、あるいはワークアウトの際に腕にくくり付けたりできたらどんなに素敵だろうかと思う。皆さんはいかがだろうか? すべては、Apple が自慢のハードウェア・エンジニアリングの才能を注ぎ込んでもう一度 iPhone を小さくしてくれるかどうかにかかっている。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

訳: Mark Nagata   

Carbon Copy Cloner 5.1.8

Carbon Copy Cloner 5.1.8

Bombich Software が Carbon Copy Cloner 5.1.8 をリリースして、macOS 10.14 Mojave の下でソースボリュームが APFS フォーマットである場合にディスクイメージを APFS フォーマットで作成するようにした。このドライブクローン作成およびバックアップ用ユーティリティはまた、スナップショットのディスク占有量合計を Disk Center 上にはっきりと表示するようにし、ロックされたフォルダの中にハードリンクを作成しようとする際に起こることのあったエラーに対処し、フライト前・フライト後のスクリプトの所有権と書き込みアクセス権をシステム管理者のみに設定して権限のない者による変更から保護し、保存先が 4 GB より大きなファイルに対応していないという誤ったレポートを Carbon Copy Cloner が出していたバグを修正した。(新規購入 $39.99、無料アップデート、15.7 MB、リリースノート、macOS 10.10+)

Carbon Copy Cloner 5.1.8 の使用体験を話し合おう

ExtraBITS

訳: Mark Nagata   

Apple Announces “Shot on iPhone Challenge” Winners

Apple、"Shot on iPhone Challenge" の受賞者を発表

2019 年 1 月に Apple は Shot on iPhone Challenge を開催して、iPhone の写真機能の素晴らしさを世に知らしめようとした。そして今回、Apple の審査員たちは世界中から応募された作品の中から 10 枚の受賞作品を選んで発表した。撮影に使われたモデルは iPhone 7 から iPhone XS Max までさまざまだが、いずれも印象的な作品だ。これらの写真は特別に選ばれた都市の屋外広告や Apple 直営店そしてオンラインなどに使われる。当初、このコンテストのルールには受賞作品を Apple のマーケティング活動のために利用することに対する報酬の取り決めがなかったが、反発を受けて Apple はルールを変更し、金額は非公表だがライセンス料金を 10 人の受賞者たちに支払うと述べた。

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Thunderclap Researchers Reveal Vulnerabilities Exploitable through Thunderbolt

Thunderclap の研究者たちが Thunderbolt を通じて攻撃される脆弱性を明かす

研究者たちのチームが、彼らが Thunderclap と名付けた一連のセキュリティ脆弱性を発見した。その名前の由来は、最も一般的な攻撃方法が Thunderbolt を通じてのものだからだ。(PC も同様に PCI Express デバイスを通じて脆弱性を持つ。) Thunderclap 脆弱性は、通常グラフィックスプロセッサやネットワークカードなど内蔵周辺機器との間でなされる直接メモリアクセス (最大限のパフォーマンスを得るために必要なもの) に付け入ることで生じる。しかしながら、Thunderbolt のようなテクノロジーは直接メモリアクセスを認められた周辺機器がいつでもホットプラグ可能であるようにしているので、一時的に監視の目が行き届かなくなったコンピュータに攻撃を仕掛けることが可能となる。その上、Thunderbolt は充電のために用いられるので、攻撃者が悪意ある公共充電ステーションを作ることもできてしまう。

残念ながら Thunderclap は基本的にすべてのオペレーティングシステムに影響する。研究者たちは具体的に macOS、Windows、Linux、FreeBSD の名前を挙げており、2011 年以後にリリースされた Mac で 12 インチ MacBook (これは USB-C しか持たない) 以外のものはすべて該当する。研究者たちは 2016 年にベンダー各社に対して Thunderclap について開示し、それ以来対策を研究し続けてきた。Apple、Intel、Microsoft はそれぞれにある程度の反応をした。Apple は macOS 10.12.4 Sierra およびそれ以降で特定のネットワークカードの脆弱性に対処しているが、Thunderclap の研究者たちはそれ以外の脆弱性が対処されずに残っているとしている。

普通のユーザーたちが Thunderclap を使った攻撃の標的となる可能性は現時点では非常に低いと思われる。今のところ、最良の防衛策はコンピュータを何かに接続する際に注意深くすることだ。そして、もしもあなたが何らかの理由で価値の高い標的となり得る人であるのなら、人のいない場所にあなたのコンピュータを決して放置しないことだ。

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The Secret Lives of Facebook Moderators in America

アメリカの Facebook モデレータたちの秘密の生活

Casey Newton が The Verge に重要な記事を書いて、Facebook のためにコンテンツ・モデレータとして働くとはどういうことかを暴露した。その人たちは、有償サービス会社 Cognizant の契約社員なので実際は Facebook の従業員ではないのだが、フラグの立った投稿を吟味しながら毎日過ごしていて、そこにはポルノのグラフィック、ヘイトスピーチ、暴力的な攻撃、さらには殺人まで含まれていることがある。どのコンテンツが Facebook のコミュニティ標準に違反するか、削除すべきかを判断する責任を彼らは追わされている。給与は年額たった $28,800 程度で、たいていはこの仕事を一年ほどしか続けられない。彼らの多くが PTSD やその他の精神衛生障害を経験したと Newton に語った。

Cognizant 社は Newton が社屋を訪問した際に別の語り口を彼に示したが、記事の中の Further Reading サイドバーにはアメリカや他の国でコンテンツ・モデレータとして働くことにまつわる恐怖の物語が数多く挙げられている。そこでは触れられていないが、Vice 誌が映像作家とのインタビューとして出版したドキュメンタリー The Cleaners というものもある。

こうした問題に、簡単な解決法はない。Facebook には今後も恐ろしいものが投稿されるだろうし、それを正しく識別できるのは人間しかいない。でも、もしも Facebook の最高幹部たちが一日だけでもコンテンツ・モデレータとして働いてみさえすれば、Facebook もやり方を変える気になるのではなかろうか。

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