本日開催されたスペシャルイベントで Apple はさまざまの新しいサービスを発表した。Apple TV+、Apple News+、Apple Arcade、Apple Card とずらりと並んだもののうち、現時点で既に利用できるのは Apple News+ だけ (ただし当面は米国とカナダのみ) だ。Julio Ojeda-Zapata がこの問題について概観する。登場予定のゲーミングサービス Apple Arcade については今週号で Josh Centers が検討するが、Apple TV+ と Apple Card (いずれも今年中に登場すると Apple は約束した) については私たちのウェブサイトで近日中に詳しい記事を出す予定だ。期待通り Apple は iOS 12.2、macOS 10.14.4、tvOS 12.2 もリリースしたので、Adam Engst がそれぞれの主要な変更点を概観する。そして最後に、今日の発表に先立って Apple が先週リリースした新型の iMac と AirPods について、何が変わったのかを解説する。今週注目すべき Mac アプリのリリースは、PopChar X 8.6、MarsEdit 4.3、Mail Archiver X 5.0、BBEdit 12.6.2、Final Cut Pro X 10.4.6, Compressor 4.4.4, Motion 5.4.3、TechTool Pro 11.0.1、Firefox 66.0、CleanMyMac X 4.3、Things 3.8.2 だ。
あなたが iOS デバイス上で何かを視聴していて、もっと大きなスクリーンで見たいと思ったなら、Siri に "play this on the bedroom Apple TV" と命じればよい。さらにもっと興味深いと思われる使い方として、Siri を使って ("Hey Siri" でも呼び出せる) 現在再生中のものの制御ができる。Apple が挙げた実例には次のようなものがある:
“Pause the bedroom Apple TV.”
“Play the bedroom Apple TV.”
“Skip 30 seconds on the living room Apple TV.”
“Turn on subtitles on the bedroom Apple TV.”
もちろん、Apple TV Remote の Siri ボタンを使って Apple TV 上の Siri を呼び出すことも従来通りできるけれども、"Hey Siri" でアクセスできるようになった点が以前より便利だろう。暗い部屋で黒くて小さなリモコンを手探りしなくても済むからだ。
これらの機能が使えるのはオーストラリア、カナダ、英国、米国の四ヵ国のみで、使える言語は英語のみだ。
Screen Time
Screen Time の Downtime 機能を使っている人は、iOS 12.2 で Downtime がそのデバイスを使えなくする時間帯を曜日別にカスタマイズして指定できるようになったことを歓迎するだろう。最初のリリースでは欠落していたことだ。
Mac 側では、カスタムカラースキームに対応するウェブサイトにおいて Safari が Dark モードへの対応を追加し、push 通知の送信を許可するかどうか尋ねるパネルをサイトで操作をした後にのみ表示するようにし、またセキュアでないウェブサイトをロードすると警告を出すようになった。
最後にもう一つ、いずれのオペレーティングシステムでも Do Not Track 標準への対応が削除された。(2019 年 3 月 19 日の記事“"Do Not Track" の悲劇的なる死”参照。) 今後は Safari の Intelligent Tracking Prevention テクノロジーがクロスサイトのトラッキングに対する保護を提供するのがデフォルトとなる。クッキーに対して新しいアクセス権の要件を定め、長期間にわたる追跡に対して新たな上限を設ける。これらはすべてユーザーにとって良いことだが、広告主たちにとってどうなのかについて Digiday が解説記事を書いている。
AirPlay
AirPlay 経由でビデオを Apple TV に送信する際、iOS 12.2 は Control Center と Lock 画面上とに専用の TV コントロールを置くようになった。Lock 画面と Control Center の双方とも再生コントロールは一目瞭然だが、Control Center 上にある Apple TV リモコン用のアイコンが Apple TV ロゴでなく Apple TV リモコンらしく見えるようになったことに注意しよう。iOS デバイスから Siri を使って Apple TV をコントロールできる新機能と合わせて使えば、これらの変更点のお陰で Apple TV リモコンを一切使わずに済むかもしれない。
iOS 12.2 のリリースノートには「ビデオ用 AirPlay マルチタスク機能によりその他のアプリを閲覧可能、また AirPlay を中断せずにデバイス上の短い形式のオーディオ・ビデオファイルを再生可能」と書いてある。けれども試してみて分かったのは、そのことが適用されるのは例えば YouTube のようなビデオアプリの内部から AirPlay を指定して使った場合のみであって、Control Center から Screen Mirroring を有効化した場合には適用されないことだった。適合する方法でビデオを Apple TV へ AirPlay し始めた場合には、そのストリームを中断せずに iOS デバイスを普通に使える。
最後にもう一つ、Apple によれば iOS 12.2 は AirPlay 先をコンテンツ内容に応じてグループ化し、再生先のデバイスをより速く見つけることが可能だという。まあ、人によってはたくさんの AirPlay デバイスを持っているのかもしれないが、たった一台の Apple TV と二台の HomePod しか持っていない私には、何のトラブルも起きたことがない。
Apple Pay
Apple Pay Cash と Visa デビットカードを持っている人は瞬時に銀行口座に送金できるとのことで、iOS 12.2 の Wallet アプリがカードの下にクレジットおよびデビットカードの最近の利用履歴を表示するようになったという。
Apple が、噂されていたゲーミングサービスを発表した。名前は Apple Arcade だ。これは Netflix や Setapp と似た有料の講読サービスで、App Store から 100 個以上集めた新作ゲームのライブラリへのアクセスを提供する。Apple によれば 2019 年秋に (ということはおそらく 9 月に、iOS 13 と新型 iPhone と共に登場するのだろう)、150ヵ国以上で利用できるようになるとのことだが、価格について同社は何も明かさなかった。
Apple Arcade は iPhone、iPad、Mac、それに Apple TV でも動作し、あなたの進捗状況がこれらのプラットフォームの間で同期される。広告やアプリ内課金などはなく、最初から Family Sharing に対応しているので、同じ料金で最大 6 名までの家族がサービスにアクセスできる。Google とその登場予定のゲームストリーミングサービス Google Stadia を意識したのだろうか、Apple は Apple Arcade のゲームはオフラインでもプレイできると述べた。
Apple は、参加している開発者たちと緊密に協力しつつ彼らが作るゲームを Apple デバイス用に最適化できるようにし、開発者たちには最高の仕事をできるようにするための自由を与えていると述べた。ビジネスの観点からは、この Apple Arcade で最も興味深いのは Apple がゲームサービスを始めるということではなくて、Apple 自身がゲーム出版社となり、Activision Blizzard や Electronic Arts といった業界の巨人たちと競争しようとしていることだ。
Apple Arcade と協力して働いている開発者たちは大体において独立系の会社であって、例えば ustwo games (Monument Valley を作った会社、2014 年 4 月 25 日の記事“FunBITS: iPhone および iPad 用 Monument Valley”参照) のように Apple 世界ではお馴染みだけれどもより広範なゲーム業界では基本的に無名のところが多い。Apple は Konami (Castlevania と Metal Gear) や Sega (_Sonic the Hedgehog_) とも提携したが、この両社とも残念ながらとっくに盛りを過ぎている。(私は提携会社のリストに Konami の名を見つけて驚いた。この会社は大体においてテレビゲームを放棄してパチンコマシンに集中したのではなかったのか?)
Apple Arcade の開発者たちは第一級の有名どころではないかもしれないが、いくつかのゲームは興味深いものに見える。例えば Oceanhorn 2 だ。これはもともと Nintendo の Zelda ゲームの見事な模造品であった (2014 年 1 月 31 日の記事“FunBITS: Oceanhorn が iOS に Zelda をエミュレート”参照) のだが、確かに 8-bit や 16-bit の時代の Zelda ゲームによく似ているとしても、Oceanhorn 2 の見栄えは本格的な 3D アドベンチャーで、むしろ 2017 年の大ヒット作品 The Legend of Zelda: Breath of the Wild の方に似ている。
あと二つ、とても興味深いのが、1994 年の古典的なサイバーパンクのアドベンチャーゲーム Beneath a Steel Sky の意外な続編として発表されたばかりの Beyond a Steel Sky と、Lego を使った格闘ゲーム Lego Brawls だ。でも、こういったゲームが、気軽にゲームをしたい人たちの気持ちさえも掴むことができるだろうか? それは、始まってみなければ分からない。
これらの変更のどれにも難癖をつけるのは難しい - 同じ値段でより速くなるのは良いことである。しかし、これらの改善のどれもが、現行の Retina iMac をアップグレードするに値するだけの意味があるとは言い難い。Apple がこれらのモデルをアップデートし、そして iMac Pro にも幾つかの高性能オプションを追加したと言う事実からすると、同社は近々に、この製品群により意味のあることをしようとは考えていないと思われる。
勿論、ある人々にとっての認識はしているが触れたくない問題は Mac Pro に対するアップデートであろう。これは Apple が今年中にはと約束しているものである。これは、旧型の Mac Pro や 27-inch iMac から iMac Pro に今すぐ移行するか、或いは Apple が次にリリースする Mac Pro を、それがどんなものであれ、待つか思い悩んでいる人にとっては大事な話である。
しかし、かなり昔の Mac から新しい iMac にアップグレードするのを留保してきたのであれば、今が一番良い時である。
Apple News+ はスクリーン上で雑誌を読めるようにし、アニメーション化された表紙、写真やインフォグラフィックのカスタマイズ、複数個のタイトルにわたる検索、賢いユーザー推薦、雑誌内および複数個の雑誌にわたっての手軽なナビゲーション、iPhone、iPad、Mac それぞれのスクリーンにシームレスに適合する動的レイアウトなどを提供する。そのいずれも別に革新的なものではない。Texture がその大部分を既に実装していたのだから。
Apple は、あらゆる種類のコンテンツを提供できるもっと包括的な有料ニュースサービスを目指していたが、まだすべきことが残っている。雑誌 (30 のカナダの雑誌もある) を除けば、Apple News+ は当初の時点では Los Angeles Times と Wall Street Journal、それにカナダの新聞 The Star、そして theSkimm、Vox、New York Magazine、TechCrunch などほんの少数のウェブサイトしか含んでいない。さらに Wall Street Journal に関しては注意点がある: どうやらこの新聞のコンテンツすべてにはアクセスできず、一般的関心のためのニュースいくつかを精選して提供しているに過ぎないようだ。
けれども Apple デバイスを使っている人には、Apple News+ が独特の魅力を発揮する。Apple が細かいところまで注意を払い、使いやすさを追求しているからだ。また Apple は、あなたが何を読んでいるかを広告主が (そして Apple 自身さえも) 知ることができないようにして Apple News+ があなたのプライバシーを保護すると強調する。
より大きな疑問点として、出版社にとって Apple News+ がどの程度うまく働くのかという問題がある。New York Times は最近発表した声明の中でこのサービスに対する不満を表明し、参加する意志がないと述べた。他のいくつかの報道関係各社も、参加と引き換えに Apple が取り分として徴収する収益割合に異議を唱えていると言われる。
まだ懐疑的なそれらの出版社を Apple が説得できるか否かによって、Apple News+ が成功するか否かが決まるだろう。なぜなら、読者たちが好みの出版物のために別途講読を余儀なくされるのであれば、Apple News+ の魅力がぐっと落ちてしまうだろうからだ。
あなたの見解は?
あなたが定期刊行物を消費するやり方を、Apple News+ は変えることになるだろうか? あなたは現在どれくらいのお金を定期刊行物に使っていて、もしも Apple News+ を使えばどれくらいの節約になるだろうか、あるいはもっと多くのものを読むようになるだろうか? 質問 4 個の手早いアンケートを実施中なので、どうぞ皆さんも投票して、さらにもっと踏み込んだ回答をコメントにも書き込んで頂きたい。
Apple が Final Cut Pro X 10.4.6、Compressor 4.4.4、Motion 5.4.3 をリリースし、三つのアプリのいずれも、YouTube にビデオを共有する際の信頼性を向上させるとともに、10.14 Mojave より後のバージョンの macOS と非互換の可能性のあるメディアファイルを検出・変換できるようにした。また、Final Cut Pro 10.4.6 は終了した後に共有先が共有メニューから消えることがあったバグを修正し、インターフェイスをサイズ変更した際にワークフロー拡張ボタンが消えることがあった問題を解消し、Select Clip コマンドで再生ヘッドの下のクリップが誤って選択された問題を修正し、再リンクしたメディアがブラウザとタイムラインに黒いサムネールで表示されることがないようにしている。(いずれも無料アップデート。Final Cut Pro X 新規購入 $299.99、2.97 GB、リリースノート、10.13.6+; Compressor 新規購入 $49.99、401 MB、リリースノート、10.13.6+; Motion 新規購入 $49.99、2.33 GB、リリースノート、10.13.6+)
2004 年に Steve Jobs とミュージシャン John Mayer が GarageBand をお披露目した際には、それがどんな影響を音楽業界に及ぼすかなど誰にも見えていなかった。そして今日、もしあなたが音楽業界にいなければ、Rolling Stone の Amy Wang が物語る状況に、きっと驚くことだろう。もはや GarageBand はアマチュアたちだけのものではない。プロフェッショナルなレコーディングに GarageBand を使ってきたアーティストたちの名前を挙げただけでも、Duran Duran、Haim、Nine Inch Nails、Rihana、St. Vincent、T-Pain、Usher など錚々たる面々が並ぶ。人気のある楽曲の中には、Apple が GarageBand に含めたループの上にボーカルを乗せただけのものもあるし、有名楽曲の中から GarageBand ループを聴き分けることを趣味にしている人たちさえいる。もちろん、GarageBand を使えば音楽の才能のあまりない人でも手早く楽曲を作ることができる。それが素晴らしいことなのか困ったことなのかは読者の皆さんの判断に任せよう。
Stanford 大学医学部と Apple が大規模な調査 Apple Heart Study の結果を発表した。400,000 人以上の Apple Watch (Series 1、2、または 3、ただし 4 は含まず) ユーザーを追跡して、ウォッチの心拍センサーから取得したデータをアプリが使うことによって心房細動 (AFib) を見分けることができるか否かを調べることが目的だ。アプリが不整脈を探知すれば、そのことをユーザーに通知し、その場合にユーザーは必ず医者との間で遠隔医療の診察を受けることになっていた。その後、そのユーザーには携帯式の ECG (心電計) パッチが提供され、それ以後に Apple Watch が読み取ったデータと心電図との比較が行なわれた。
ブラウザのオプション Do Not Track (トラッキング拒否機能) が 2009 年に初めて作られた時、それは広告に依存するビジネスモデルを持つ出版社へのダメージを最小限に抑えつつクリック一つでプライバシーが守れる方法として注目を浴びた。けれどもその作業グループが 2013 年以後活動を止め、Apple が 2019 年 2 月にこれに対応するオプションを Safari から削除するに至って、今や Do Not Track はほとんど死んだようなものだ。Fast Company の記事で、Glenn Fleishman がいったいなぜすべてがおかしくなってしまったのかを解説する。皮肉にも、Apple が Do Not Track を Safari から外した理由の一つは、この設定を有効にすることで実際にはかえって追跡者たちがあなたを見つけやすくなってしまうからだ。また、もともと Do Not Track のアイデアは US Federal Trade Commission (米連邦取引委員会) の Do Not Call 制度から来ているのであるが、Glenn の考えでは法律にきちんと従うのはごく良心的な会社のみなので制度として失敗であった。もっと大幅に強力な強制力を持ったプライバシー法制がない限り、私たちとしては広告ブロックテクノロジーや追跡防止テクノロジーに頼って広告主たちと競い合って行くしかない。