iFixit と、反抗的な Mac 修理工 Louis Rossman とによって文書化されたこの問題は、デザイン上の欠陥によって起こるものだ。欠陥はディスプレイに、正確に言えばディスプレイの「フレックス」(柔軟性) ケーブルが短くて壊れやすいことにある。問題をさらに深刻化させるのが、このケーブルがディスプレイそのものと一体化されていることで、必然的に修理は高価なものとなる。何より悪いことに、iFIxit も Rossman も、故障は避けられないと言っている。あなたがどんなに丁寧に MacBook Pro を扱ったとしても、このケーブルはいずれ必ず壊れる。2018 年のモデルで、Apple は黙ってこの問題に対処し、フレックスケーブルを長いものに取り替えた。
もしもあなたが 2016 年型の 13 インチ MacBook Pro を持っていて、それが上記のどちらかのディスプレイの症状を示しているならば、Apple Authorized Service Provider を探すか、Apple Retail Store で予約をするか、あるいは Apple Support に連絡して Apple Repair Center への配送修理の手配を依頼するかするとよい。
どんなデバイスでも、修理のために Apple に渡す前に、まずあなたのデータをバックアップしておくことを忘れないようにしよう。修理の際にはストレージの交換が伴うことがあるからだ。Mac については、ブート可能な複製と Time Machine バックアップの両方を作っておくことをお勧めする。
13 インチ MacBook Pro は昨年と同じ Intel Iris Plus Graphics 655 を搭載する。15 インチモデルは節電用統合型グラフィックスと高速用単体グラフィックスの間で自動切替をするが、これもベースモデルでは昨年と変わらず、ただ Apple は新たにハイエンドのオプションを二つ追加した。
$2399 の 15 インチモデルには単体グラフィックスとして 4 GB の GDDR5 メモリの付いた Radeon Pro 555X が含まれ、$100 を追加すれば 4 GB の GDDR5 メモリの付いた Radeon Pro 560X にアップグレードできる。上級モデルの $2399 の 15 インチモデルには Radeon Pro 560X が含まれ、$250 の追加で 4 GB の HBM2 メモリの付いた Radeon Pro Vega 16 に、または $350 の追加で同量のメモリの付いた Radeon Pro Vega 20 にアップグレードできる。
入手可能性
13 インチモデルと 15 インチモデルのいずれも、シルバーとスペースグレイから選ぶことができ、現在 Apple のオンラインストアから、Apple リテール店から、または独立の Apple 認定再販業者から入手できる。
ほとんどいつでも言えることだが、これらの更新はすべて歓迎すべきものばかりだ。だから、もしもあなたが MacBook Pro の購入を検討していたなら、今こそその好機だろう。最近二週間以内に従来のモデルを購入したばかりの人は、それを返品した上で新しいモデルを同じ価格で入手できることを覚えておこう。購入してから二週間を少しだけ過ぎてしまった人も、ひょっとすると Apple Store の担当者に直接交渉すれば何とかなるかも知れないが、その点は保証の限りでない。
さて、ここでの大きな問題は、はたして Apple が今度こそ本当にバタフライ型キーボードの欠陥を修正したのか否かだ。さきほども述べたように、もしもあなたがキーの押し込みの深さや、キーとキーの間隔、あるいや矢印キーの配置などに不満を抱えているのなら、その答は絶対的なノーだ。どうやら Apple には現在の工業デザインを変更するつもりはないようだからだ。けれども信頼性の問題の修正では、はたしてこれが四度目の正直になったのだろうか? その答を知るためには、早期に購入した人たちが実際に使ってみて、問題が起こり始めるかどうかを報告してくれるまで待つしかない。
だからと言って、Apple が Mac を iOS で置き換えようとしているとか、Mac を特別なものとしているその比類なき機能を取り去ろうとしているとか言っている訳ではない。Mac と macOS は今後も Apple のハードウェアとソフトウェアのプラットフォームの中で第一級の、力強いメンバーであることに変わりはない。ただ、今後私たちは、少なくとも Apple の手からは、iOS の同胞たちから Mac をより遠く引き離すような新しいテクノロジーが現われることを期待できないだろう。オペレーティングシステムに関して言う限り、一人は皆のために、皆は Apple のために、と言って間違いないだろう。
Federighi はまず、Apple が iTunes に組み込もうと考えた機能としてちょっと信じられないような反復言葉を積み重ねた。カレンダー! メール! さらにはドック! そうしておいて彼が言ったのは、iTunes は死んだよ、Jim 君、という言葉だった。(ここで Wizard of Oz の音楽でも流れるところだ。) いや、正確に言えば Mac 上では死んだ。iTunes は、まるでゾンビのように、Windows 上では生き続ける。
その代わりに、iOS とマッチさせるために, Apple は iTunes の機能を3つの新しいアプリに分割した。Music, Apple Podcasts, Apple TV だ。(実際、Federighi は Music を "Apple Music" と呼んだが、Apple の Catalina プレビューページには単なる "Music" という名前で載っている。そうあって欲しいものだ。そうでないと、Apple Music の中で Apple Music を購読するとか言う羽目になって具合が悪い。)
この足早のプレゼンテーションから判断できる限りで言えば、これら3つのアプリは iOS でそれぞれ対応するものとよく似ている。ただし、Federighi は十分な性能を持つ Mac 上では Mac 上の Apple TV アプリが HDR10 と Dolby Vision と Atmos の 4K HDR ビデオに対応すると述べた。新しい機能が一つある。Music アプリのプレイヤーは、曲を再生すると同時にリアルタイムで歌詞を表示できる。この機能は iOS 版と tvOS 版にも拡張される。
では、iTunes の同期機能はどうなるのか? macOS Catalina は、その機能を Finder の中に組み込む。iOS デバイスを Mac に取り付ければ、Finder ウィンドウのサイドバー上にそれが現われる。それを選択すれば、iTunes の標準的な同期設定画面に似たものがウィンドウの中に現われる。iOS アプリの同期や設定はできないが、Mac 上からデバイスのバックアップ、アップデート、リストアができる。
iTunes とは関係ないが「あともう一つアプリを」と言いつつ紹介されたのが (そしてこれも iOS 上のものを反映しているが) 新しい Find My アプリで、Find My iPhone と Find My Friends の機能を組み合わせて、デバイスと人々両方の位置を表示する。位置情報に基づく通知は、今回から曜日ごと別々にスケジュールを組めるようになり、より役立つ場所の名称を提供するようになる。最も興味深いのが、どこにあるか分からなくなった Mac が現在スリープ中であっても、Bluetooth 経由で (完全に暗号化され匿名化された手法を使って) 近くにある Apple デバイスから場所が分かることだ。
アプリの拡張
Catalina は Apple 製の組み込みアプリの多くに (重大なものも、そうでないものもあるが) 拡張をもたらす。ここでも、大体においてそれらの変更点は同じように iOS 版にも存在する。
Photos
Apple は引き続き Photos に手を加えているが、今回は機械学習の基盤を大幅に活用した新しいブラウズ体験を試みている。プレビュー画像が大きくなって写真を見分けやすくなり、新しい Day、Month、Year の各表示が他の似たような写真を排除し重要な写真のみに焦点を当てることでその時間枠にあなたがしたことを集約して示す。
Live Photos とビデオはあなたが画面をスクロールするにつれて自動的に再生を始めるようになり、見分けやすくなるとともに、ライブラリに生き生きとした感じをもたらす。また、Mac 上で Memory ムービーを観つつ、その継続時間、ムード、タイトルを編集でき、iCloud Photos を使用していればその編集結果が他のデバイスにも同期される。
Messages の会話の中で計画を立てる際に Siri がリマインダーを提案でき、リマインダーの中で誰かをタグ付けすれば次にその人と Messages で会話した際にリマインダーが知らせてくれる。
複数のリストをグループ化でき、トップレベルのリマインダーに付随したタスクをキャプチャできる。
見栄えを引き立たせるため、12 の色と 60 の記号を使ってリストをカスタマイズできる。
Notes
Apple の Notes アプリは、メモをサムネイルとして表示する新しいギャラリー表示を装備し、特に主としてグラフィック的なメモでこれは便利だ。またチェックリストのオプションも新設され、チェックリストの項目を手軽に並べ替えたり、個々の項目のチェックを外したりせずにチェックリスト全体を再利用することもできる。
iPad で Apple Pencil を使っている場合には、タブレット機能に対応した Mac アプリで Apple Pencil を使うことができる。それ以外のアプリでも、Apple によれば PDF に書き込みをしたり押し広げたり、書類をマークアップしたりといった作業が Apple Pencil ででき、これを Continuity Markup 機能と呼ぶとのことだ。また、Continuity Sketch 機能を使えば、Apple Pencil で絵を描いて、それを Mac のどんな書類の中にでも挿入できるという。
標準的な Multi-Touch のジェスチャーが、Mac のアプリからテキストを表示している iPad スクリーンの上で使え、iPadOS で新たに加わったテキスト編集のジェスチャーも使える。それからまた、Touch Bar に対応したアプリは iPad 画面の一番下のところに Touch Bar のコントロールを表示するので、Touch Bar を持たない Mac でも Touch Bar が使えるようになる。
Mojave で、Apple は私たちに Mac 版の Home、News、Stocks、Voice Memos の各アプリを提供してくれた。それは、iOS アプリを macOS に変換する作業を容易にしたコードネーム "Marzipan" というテクノロジーのお陰であった。これは Apple の基本計画の第一段階に過ぎず、Catalina で計画は第二段階に入る。ここに至ってこのテクノロジーの本当の名前が明かされた。Project Catalyst だ。[訳者注: catalyst は「触媒」という意味です。]今年になって、開発者たちは iOS アプリの Mac 版を作成するため、この Catalyst テクノロジーへのアクセスを得つつある。
基調講演の壇上には何人かの著名なサードパーティの開発者たちの言葉が引用され、一つのコードベースを同じ開発チームで維持することで、いかに素早く簡単に iPad アプリの Mac 版を作ることができたかをそれぞれに述べた。まあ、基調講演とはそんなものだろう。
けれども、まだ分かっていないのは、Apple がこの Catalyst テクノロジーを十分に拡張して、それで作成した Mac アプリが人を満足させられるものになる段階に至っているか否かだ。現状の Home、News、Stocks、Voice Memos は確かに動作はするけれども、これらは今のところまだ質の悪い Mac アプリだ。
大体においてそれが実際に問題となるのは生産性アプリ、きちんとした Mac アプリに見え、動き、語り、鳴くと私たちが期待する、そういうものについての話だ。他方、ゲームやウェブアプリなどについては、わざわざデバイスを取り替えたりブラウザのタブを開いて走らせたりする必要のない、Mac 上ネイティブなアプリが存在するだけでありがたいので、それほど問題にならない。
セキュリティと安全
Apple は自らのプラットフォームのセキュリティを改善し続けており、Catalina はその分野でもいくつかの拡張を受けた:
私が最も興味深いと思う機能は、Catalina では Mac のログインパスワードを求めるどんなダイアログが開いても Apple Watch のサイドボタンをダブルクリックして承認を得られるようになることだ。ようやく実現する!
音声コントロールによるアクセシビリティの改善
記事“Nuance が Mac 音声認識を断念。Apple はその空白を埋められるか?”(2019 年 1 月 23 日) の中で、私は Nuance 社が Dragon Professional Individual for Mac を廃止した後に Mac ユーザーたちが直面する問題について書き、TidBITS 読者の Todd Scheresky が Apple に対して、カスタム語の追加、話者依存の連続音声認識、カーソル位置決めとマウスボタンイベントのサポートを実現するよう求めていると書いた。
幸いにも Apple は耳を傾けていたと見えて、Catalina にはアクセシビリティの改善がたくさん盛り込まれる。Scheresky が求めていたこともすべて含まれる。新しい Voice Control 機能は、Mac も、どの iOS デバイスも、フル制御ができる。音声だけを使って、ナビゲーションコマンドと、アクセシビリティラベルの名前、コントロールを示す数字、グリッドを通じてアプリをナビゲートできる。
タイプする量を減らしたい人なら誰でも、Voice Control の拡張されたディクテーション (音声入力) を歓迎するだろうし、そこにはテキスト編集コマンドも豊かに組み込まれていて、単語を修正したり、語句を名前で置き換えたり、テキストを選択したり、テキストの中でナビゲートしたりできる。さらに嬉しいことに、音声コマンドを使って Mac をコントロールしたい場合には、テキスト入力とコマンドの間をシームレスに移行してくれる。
率直に言って、Voice Control こそが Catalina と iOS 13 で最も重要な改善点の一つかもしれない。
この二つは将来更に大きく離れて行くかもしれないが、現時点では、iPadOS は基本的には iOS 13 の一つの上位集合であり、30% 速い Face ID 認識、50% 小さなアプリダウンロードと 60% 小さなアップデート、そして最大2倍速いアプリの起動と言った iOS 13 の利点は全て享受出来る。しかしながら、iOS 12 とは違い、iOS 13 は基本的には性能アップデートではない。
年内に予定されている新しい良さそうなものを幾つか挙げてみる。
ダークモード
macOS 10.14 Mojave から1ページ貰って、iOS 13 は、生産性を阻害するかもしれないが、Dark Mode を手にする - "The Dark Side of Dark Mode" (31 May 2019) 参照。Dark Mode は iOS 13 の看板機能ではあるが、説明することは余りない:それはアプリを暗くする、少なくとも Apple の内蔵のものは。サードパーティ開発者達は、彼らのアプリにこれに対するサポートを加えることにこの夏を使うであろう。これをオンにするのはControl Center から手動で、或いは夜には自動的にオンになるよう設定出来る。
Dark Mode は Mac ではより論議に対象となるのかもしれないが、iOS では、暗い部屋で iOS 機器を使う人達からは歓迎されるであろう。また、iPhone X の様な OLED-based iPhone では、電池寿命を延ばす利点もあるかもしれない。
Apple が約束していることの一つは、この新しい Reminders アプリは、Calendar や Messages の様な他のシステムアプリとの統合を良くすることである。例えば、Reminder の中の連絡先にタグを付けておくと、その人と iMessage 会話をしている時に、そのリマインダーのことを教えてくれると言う具合である。
キーボードの上にある新しい QuickType ツールバーは、時間、日付、場所、そして写真やスキャンした書類までをもリマインダーに追加させてくれる。そして、機械学習はリストを理知的に整理する手助けをしてくれると言うが、我々は単純なソートをさせて貰えば十分だと思っている ("Bad Apple #4: リマインダーの並べ替えはお粗末" 3 May 2019 参照)。
マップ
Apple はその Maps アプリとその下にあるデータベースを、Google Maps に追いつこうとして基礎から再構築している。同社は、米国中を走り回る車を送り出しており4百万マイル以上走って、2019 年末迄には、そして他の幾つかの国については 2020 年内には完了したいと願っている。新しい地図は現在のものよりも更に詳細であり、その結果がもっと信頼性のあるナビゲーションにつながることを願いたい。
Apple の地図再構築努力の一つは、Look Around と呼ばれる "新" 機能で、地図上の場所のストリートレベルの写真を提供する - ただ Street View と呼ばないだけである。Apple が提供するのであるから、Look Around は Google の Street View よりも滑らかに動作するのであろう。
Maps はアプリレベルでの改善も提供する。Search バーをタップすると、Favorites が出て来て、探しやすくなる。また、お気に入りを集めてコレクションにすることも出来、更にこれを友人と共有することも出来る。Apple はまた、目的地に向かっている途中で更新された ETA (到着予定時間) を共有させてくれる新機能についても触れた。
カメラと写真
我々の多くは古い写真を見ない。何故ならば、それは手のつけようもない大仕事だからである。Apple はこれ迄もこの問題に Memories で対処しようとして来たが、これは Apple が願う程には役に立っていないと我々は思っている。今回、Apple は Google Photos から1ページを拝借し、単に一連の写真をあなたの膝の上に放り投げるのではなく、Photos は、日、月、そして年に基づいてコレクションに知的に整理する。機械学習もまた、重複、乱雑なものを取り除く手助けをし、そして最善のショットをハイライトする。
キーノートでの大きな発表の一つは、新しい Sign In with Apple 機能である。これは Facebook や Google からのシングルサインオンと競合することとなる。考え方は簡単である:その機器に関連した Apple ID を使ってアプリにログインすることが出来る。しかし Facebook や Google とは異なり、Apple はあなたが明示的に許可しない限りあなたの個人情報を共有しない。事実、Apple はそのアプリのためだけに、一時的な、匿名のメールアドレスを作らせてくれる。唯一疑問なのは、開発者がそれを使う選択をしてくれるか (或いは Apple が選ばせてくれるかどうか) である。また、Sign In with Apple が Web サイトにも使えるのかどうかは良くわからなかった。これが出来れば、大歓迎である。
iOS 13 はまた、場所追跡についても改善がなされている。アプリに自分の位置を一度しか見られないようにすることが出来、場所を追跡しているアプリについて通知を受けられ、そして Apple は Wi-Fi や Bluetooth データへのアクセスを制限するので、開発者はこれらの技術を使ってあなたの場所を推測出来ない。
Animojis と Memojis: これらのアニメ化された iPhone ステッカーは 今や Apple Watch でも使え、メッセージに付け加えられる。
盤面、チャイム、そしてコンプリケーション
多くの Apple Watch ユーザーは長いこと Apple は何故時計盤面をサードパーティに開放しないのかと不思議に思って来た。これは Google の Wear OS が昔から許して来たことである。しかし現時点では、新しい watchOS 盤面は Apple の領域のままである。新しいオプションもある、例えば:
Gradient 盤面は時間と共に滑らかに動く
大きな Numeral 盤面は色々な言語で現在時刻を表示する
現代的な Digital 盤面には様々な色がある
丸みを帯びた、まろやかな California ダイアルは、多様なコンプリケーションでカスタマイズ出来る
最後に、LGBTQ 運動に対する Apple の変わらぬ支持を具現化し、新しい Pride Edition Sports Loop も提供している。売上げの一部は、Encircle, Gender Spectrum, GLSEN, ILGA, PFLAG, the National Center for Transgender Equality そして The Trevor Project の様な擁護団体に寄付される。このバンドとマッチした盤面はアニメ化されている。
watchOS 5 と同様、watchOS 6 は Apple Watch Series 1 から Series 4 で動作する (初代 Apple Watch は含まれない)、しかし、より旧型のモデルでは全ての機能が働く訳ではない。
私たちは昨年知ったことだが、Apple は大失敗に終わった円筒形の Mac Pro から離れて、実際のプロのユーザーたちの意見を取り入れつつ、プロフェッショナルユーザー向けの Mac とはどんなものであるべきかを根本から考え直した。(2018 年 4 月 6 日の記事“新型 Mac Pro は 2019 年に登場予定、モジュラー化されるかも”参照。) そして、その努力の結果を、Apple は WWDC 2019 の場で新型 Mac Pro としてお披露目した。これは、その昔の「チーズおろし器」Mac Pro と似ている。つまり、もしも地球外生物がチーズをおろしていたと仮定しての話だが。
ステンレス・スチール製の枠に囲まれ、ハイテクで、極めて多くの穴の空いた着脱式のアルミ製カバーで覆われたこの新しい Mac は、最大限の拡張性とカスタマイズの選択肢を望む本格的な、しかもたっぷり資金のあるユーザーたちのためにデザインされている。この Mac Pro のカバーを外すと、ユーザーは Mac のどちら側にもアクセスでき、その豊富な拡張能力を利用できる。
拡張性
そう、何と素晴らしい拡張性を持つことか! この新型 Mac Pro は 8 基の PCI 拡張スロットを誇る。4 基のダブル幅スロット、3 基のシングル幅スロット、加えて 1 基のハーフ幅スロットが Apple I/O カード用にあらかじめ設定されて付く。
これらのダブル幅拡張スロットに装着するコンポーネントが足りなくて困るなどということはない。Apple は数種類の Radeon Pro 装備の MPX (Mac Pro Expansion) モジュールを出してこの Mac の 64 PCI Express レーンを利用できるようにしており、その中には GPU 集約度の低いアプリケーション用のシングル GPU Radeon Pro 830X から、数テラバイトのメモリバンド幅と 28 テラフロップスを超える単精度数値演算コプロセッシングが可能な Radeon Pro Vega Duo II Duo まである。さらに興味深いことに、そして間違いなくそれは価格にも反映されるだろうが、これらの MPX モジュールは 2 個ずつ組にして装着することもでき、Mac に集約度の高いグラフィックス処理を可能にするとともに、データをいわゆる "Infinity Fabric Link"、つまりモジュールたちの GPU 間でデータ転送速度を 5 倍にするテクノロジーを通じて送れるようにする。組にしたハイエンド GPU は組み合わさって 128 GB の HBM2 メモリも提供する。
新型 Mac Pro のシングル幅スロットについても、おそらく装着されずに済むことはないだろう。このスロットは、例えば Apple の新しい Afterburner ハードウェアアクセラレータカードのようなカードをサポートするよう設計されている。この重宝なちょっとしたアドオンは、ビデオのプロフェッショナルたちに 8K ProRes RAW のストリームを最大 3 個同時に、あるいは 4K ProRes RAW データのストリームを最大 12 個同時に再生する能力を与える。
メモリ、CPU、ポート
メモリの話をすれば、この Mac Pro には標準で 32 GB の RAM (4 基の 8 GB DIMM) が付くが、24 コアまたはそれ以上のハイエンドの Mac Pro は何と最大 1.5 TB の RAM を 12 基の 128 GB DIMM という形でサポートできる。
今私が「24 コアまたはそれ以上」と言ったのにお気付きだろうか? その通り、これは冗談ではない。この Mac Pro はさまざまの CPU の選択肢を提供し、ローエンドの 3.5 GHz Intel Xeon W 8 コアのプロセッサでは一度に 16 個のスレッドを処理できるが、最高度のハイ・パフォーマンスを求めるなら 28 コアの 2.5 GHz Intel Xeon W を選択すれば一度に最大 64 個のスレッドを処理できる。
これだけ数々の驚嘆すべき高速なテクノロジーに電源を供給するため、この Mac Pro には 1.4 キロワットの電源が供給される。そのうち 300 ワットは CPU と Mac Pro のメモリを駆動し、残りがその PCI モジュールに供給される。例えば、この Mac Pro は一つの MPX モジュールに 500 ワットも供給できる。
そして、それだけ多くの電力は大量の熱も発生するので、それらすべてを冷却するため、この Mac Pro には片側に 3 台の羽根ファンがあって CPU と GPU を冷却し、その反対側では一台の送風機が RAM、ストレージデバイス、電源装置全体を通して空気を吸い込む。
では、あなたがこの新型 Mac Pro を一台買おうと考えているとしよう。そうすると、それにどんなモニタを接続することになるのだろうか?
Apple はその答も出している。新しい 32 インチ Pro Display XDR ("Extreme Dynamic Range") が、リアルタイムの自動制御画像処理を採用し、きめ細かく調整された LED ディスプレイが可能にするコントラスト比 1,000,000 対 1 を提供できる。このモニタは nit 値 1000 のフルスクリーンで持続的に高輝度を出すことができ、最高の状態では nit 値 1600 にも達する。このディスプレイは 10-bit カラーで P3 ワイドの色域を誇り、十億色以上を正確に表示する能力を持つ。
でも、いったいなぜこのディスプレイ 1 台で満足するのか? (まあ、自宅を三度目の抵当に入れる必要があるのを別にすればと言えるかもしれないが。) あなたの Mac Pro を十分な MPX モジュールで飾り立てれば、最大 4 台の Apple の新しいワイドアングル 6K ディスプレイを同時駆動できる。Mac Pro を 4 台のディスプレイでフル装備すれば、シネラマなんか何でもない。
価格と入手可能性
Mac Pro のさまざまの構成ごとに価格がどうなるのか、まだはっきりしない。今の時点で Apple が発表しているのは、ベースモデルの Mac Pro が今年のうちにリリースされれば、あなたの財布から $5,999 持って行くことだけだ。
それから Pro Display XDR もまた、予算を気にする人が手を出せるものではない。価格は $4,999 からで、それに取り付ける Pro Stand もまた (それ自体ハイテクの驚嘆すべき製品だが) 別売で $999 する。幸いにも、取り付けしやすい Pro Display XDR 向け VESA マウントならばたったの $199 だ。
そういう訳で、Apple がモニタ市場に帰還してくれたのは素晴らしいことだけれども、Mac mini や MacBook Pro に Pro Display XDR を追加しようとする人たちが次々と現われるとは思えない。以前から超高価な参照用モニタを考えていた人でもない限り、とにかくこれでは高価過ぎる。
コンパクトさのために能力を犠牲にしていた従来世代の Mac Pro モデルと違って、この新しい Mac Pro は幅広いプロフェッショナルユーザーたちの必要に合わせて構成でき、また再度の構成し直しもできるように作られている。確かに価格は「その他の私たち」にとっては高いけれども、非常な高速度でデータを噛み砕き行き来させることのできる Mac を必要とする人たちのために、今回 Apple はようやく相応しい Mac Pro を作ることができたのかもしれない。
(そうそう、重さが 40 ポンド (18 kg) 近くもあるこの Mac Pro にキャスター (車輪) が付くことを、お伝えしただろうか? そんなこと言ってないって? まあ、いずれにしても、キャスターはオプションだ。)
C-Command Software が SpamSieve 2.9.36 をリリースして、Office 365 が走っている場合に Outlook のルールを使ってメッセージをフォルダに分けられるようにし、スパムと色付けされた Apple Mail のメッセージの一部が Dark モードで白く表示されたままになっていた問題に対処した。このスパムフィルタリングユーティリティは SpamSieve に Full Disk Access が認められていない場合に Apple Mail プラグインをアンインストールする際のエラーメッセージを改良し、Apple Mail にメールボックスのリストを問い合わせると起動時にハングすることがあった問題を回避し、このアプリの全体的な正確度を向上させている。(新規購入 $30、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、14.3 MB、リリースノート、macOS 10.7+)