2015 年型の 15 インチ MacBook Pro を使っている人は、今すぐ使用をやめて、Apple のリコール対象になっていないか調べるべきだ。バッテリーが爆発して火事を起こす危険があるからだ。対象となる MacBook Pro を持っている場合は、Best Buy 店へ持って行けば無料でバッテリーを交換してもらえるかもしれない。Apple はつい最近になって、米国国内のすべての Best Buy 店が今回 Apple Authorized Service Provider となったと発表したからだ。最先端で暮らすのが好きな人には、Apple が macOS 10.15 Catalina、iOS 13、iPadOS 13、それに tvOS 13 の公開ベータ版をリリースしたことをお知らせするが、ただしインストールする前に必ず私たちからの警告をお読み頂きたい! 同輩の達人たちと親しく語り合いたい Apple プロフェッショナルたちには、MacTech Conference がお薦めだ。今年は 10 月に Los Angeles で開催される予定だが、私たちは毎年参加している。さて、あなたは Netflix、Amazon Prime Video、その他に囲まれて、良いテレビ番組や映画がなかなか見つからないで困っていませんか? そこで Josh Centers が、Reelgood と JustWatch という2つのサービスを検討する。いずれも、数多くのストリーミングサービスの中からビデオを探し出す作業を大幅に改善できると謳っている。最後にもう一つ、Glenn Fleishman が、Apple が出す予定の Find My サービスを調べ、それがどのようにしてオフラインのデバイスを追跡するのか、その際にどうやってあなたのプライバシーを守るのかを説明する。今週注目すべき Mac アプリのリリースは、Typinator 8.0、Cardhop 1.3、CorelDRAW 2019.2、AirPort Base Station ファームウェアアップデート 7.8.1、Microsoft Office for Mac 16.26、Moneydance 2019.3、Airfoil 5.8.5、それに Transmit 5.5.1 だ。
Apple が、主に 2015 年 9 月から 2017 年 2 月までの間に販売された一部の 15 インチ MacBook Pro ユニットを対象に自主回収のリコールを発表した。これは旧世代モデルの MacBook Pro であって、Apple が現在出荷している Thunderbolt 3 搭載モデルよりも前のものだ。
Apple によれば「限られた数の旧世代 15 インチ MacBook Pro が搭載するバッテリーが過熱し、安全面のリスクをもたらす恐れがある」と判断したという。Apple が言っていることの実例が知りたければ、Cory Andersen が Reddit postにあるビデオや、彼の tweet をご覧になるとよい。ビデオには彼の MacBook Pro が煙を噴き出しているところが写っており、木製の机には焼け焦げた個所がはっきりと見える。Apple が Cory にトラブルへのお詫びとして新しい 15 インチ MacBook Pro をくれることを願いたい。
そういう理由なので、Apple はリコール対象に該当する MacBook Pro を持っている人に対して、直ちに使用を中止して Apple または Apple Authorized Service Provider に引き渡し、無料でバッテリーを交換してもらうようにと言っている。あなたの 15 インチ MacBook Pro がリコール対象に該当するか否かを確認するには、その MacBook Pro のシリアル番号を Apple のリコールページで入力すればよい。
Apple が、Best Buy との修理提携関係を拡張して米国国内にある Best Buy 店 (1000 店舗近くある) すべてを Apple Authorized Service Provider とすると発表した。これは、Apple が修理の必要なデバイスの数の多さに対応できていないという苦情に応えることを狙ったものだ。
でも、壊れた Apple デバイスを Best Buy 店に持って行って修理してもらうのが、はたして賢明なことだろうか? Apple は発表の中で、Best Buy が正規の部品を使用し、Apple がすべての修理を支援すると述べた。一方 Best Buy はスクリーン修理やバッテリー交換その他の修理が可能で、多くの場合は同日サービスだと述べているが、Best Buy のプレスリリースの中に細かな活字で書かれた部分に「一部のサービスは郵送のやり取りを要するためもっと長い日数がかかります」とある。おそらくは Apple へ郵送されるのだろう。そのような場合、自分で直接 Apple へデバイスを送った方が良いかもしれない。
そうは言っても、以前私がデバイスを修理してもらおうとして Apple Support から Best Buy 店を紹介された際にも、その店の場所が遠過ぎて即座にノーと答えたことがあるし、他の TidBITS 寄稿者たちからは Best Buy の Geek Squad にいた技術者が修理のよくある問題点さえ解決できなかったという話を聞いたことがある。開発者 Michael Tsai は、Best Buy が社内で MacBook Pro キーボードの交換ができるのか、きっと無料であるはずのサービスから料金を取ろうと試みるんじゃないか、と思案する。Tsai の記事には、他の人たちからも Best Buy の Geek Squad に関する良くない話が寄せられている。
いずれにしても、もしもあなたの近所に Apple Store がないのならば、Best Buy が早く修理してもらえるための最良の方法となる可能性はある。けれどもどうしてもその日のうちに修理してもらいたいというのでなければ、Apple のメール・インのサービスを使う方が良い結果が得られるかもしれない。
Apple は macOS 10.15 Catalina, iOS 13, iPadOS 13, そして tvOS 13 に対する公開ベータテストへの扉を開いた。(watchOS 6 は含まれなかったが、Apple は AppleSeed プログラムに対して watchOS テストのために私的な招待状 を送り始めた。) 誰でもこのベータをダウンロードしてインストールすることが出来るが、無料の Apple Beta Software Program に登録していなければならない。気をつけて欲しいのは、これらはベータであり、まず間違いなく問題が含まれていることである。Apple はこの点についてははっきりしており、次の様に言っている:
気に留めておいて欲しいのは、公開ベータソフトウェアは Apple によって未だ商業的にはリリースされてはいないものであり、間違いや不正確なものを含んでいる可能性があり、商業的にリリースされたソフトウェアと同等には機能しないかもしれないことです。ベータソフトウェアをインストールする前に、必ず皆さんの iPhone, iPad, 或いは iPod Touch を、そして Mac は Time Machine を使ってバックアップして下さい。Apple TV で購入したものとデータはクラウドに保存されていますので、 Apple TV をバックアップする必要はありません。ベータソフトウェアは、仕事に支障をきたさない実務に使用されていない機器上にのみインストールして下さい。我々が強くお薦めするのは、二次的なシステムか機器上に、或いは Mac の二次的なパーティションにインストールすることです。
カンファレンスの主催者 Neil Ticktin は当初予定の講演者リストを公開したが、過去に大いに人気を得た人たち何人かの名前も並んでいる。OWC の Tim Standing (Apple 以外で彼以上に APFS について知っている人は他にいないだろう)、MacObserver の Dave Hamilton (昨年彼はメッシュ・ネットワーキングのハードウェアについて素晴らしいセッションをした)、Disney の Greg Neagle (Munki で有名)、Ruckus の Jeanette Lee (彼女は Wi-Fi についてたいていの人が知っている以上のことを既に忘れた)、Malwarebytes の Thomas Reed、Jamf の Charles Edge、Strong の Jack-Daniyel、それにコンサルタントでマジシャンの Phil Goodman といった面々だ。Tonya と私は今年も Apple トリビア・ゲームショウのホストを務める。聴衆の中から専門家たちを選んで一対一で戦わせ、Apple に関係する知識をテストするのだ。
あと一か月か二か月経てば、セッションの議長たちも Apple の Worldwide Developer Conference (WWDC) で発表された内容を消化できて、具体的なセッション内容が発表されるだろう。また、追加の講演者たちも発表されて、開催時点までには既に出荷されているはずのオペレーティングシステムやサービスについてカバーしてくれることだろう。講演をしたいとご希望の方は、講演者申込フォームを使って申し込んで頂きたい。
ストリーミングサービスからビデオコンテンツを得ている人は日に日に増えている。しかし、"古き良き昔" とは違って、どんな TV 番組や映画が放送されているかを見るのに TV Guide を見るだけではもう十分ではない。(もはや 19-inch TV のウサギ耳のアンテナを調整したり、屋根に登ってアンテナを動かしたりする必要もないので、苦情を言うのは当たらない。) 勿論、これらのサービスは、少なくともブラウズしたり検索したりするそこそこに使える能力は用意している (ユーザーに攻撃的なインターフェースで汚染されてはいるが - "#DeathToAutoPlay - 自動再生するオーディオとビデオを廃絶しよう!" 6 February 2019 参照)、しかし、見たい番組がどのサービスにあるかは分からない。
Apple はこの問題を Apple TV アプリで解決しようと試みたが、全てのサービスが参加しているわけではないので (とりわけ Netflix)、それは、もう一つの、単なる役立たずの層に過ぎない。そして Netflix 自身も、コンテンツを探しやすいようにはしていない。Netflix は、あなた が見たいものでは無く、 Netflix があなたに見てもらいたいものを示している様にすら見える。それは、ある程度は理解出来る。Netflix が望むのは、あなたが、Friends の様に 年に $100 million も支払わなければならず、結局のところ儲からないものでは無く、自らのオリジナルの番組の虜になってくれることである。
私は以前は、コンテンツを探すのに Can I Stream It? Web サイトを使っていたが、これはどうも無くなってしまったようである。分かったことは、この様なサービスは今や沢山あることである。その中で我々に推薦されたものが二つある:Reelgood と JustWatch である。どちらも無料で使え、iOS アプリもあり、そしてアカウントを必要としない。もっとも、登録した人には更に多くの機能が提供される。
TV シリーズをあなたの Reelgood リストに追加すると (マウスポインターを題名の上に導き、Track Series をクリックする)、このサービスは、シリーズの All, Some, 或いは None を見たかどうか聞いてくる。もし Some をクリックすると、Reelgood はあなたが見た最後のエピソードを選択するよう促す。こうしておけば、次に TV 番組リストでそのシリーズを選択した時、次のエピソードから視聴を開始するのがやりやすくなる。どちらのサービスも、追加した項目があなたのサービスに現れた時、或いは追跡している TV 番組に新しいエピソードが登場した時に通知してくれる。
間も無く期限切れとなる題名を Reelgood で探す
Reelgood は、あなたのストリーミングサービス群に対する変更をその New, Coming, Leaving 機能を使って知らせ続けることが出来る。ある題名が一つのストリーミングサービスにあることを知る前にそこから離脱してしまうことはよくあることであり、この機能はそれらの宝石が消え去る前に捕まえる手助けとなる。同様に、何が最近到着したかを New On で、将来楽しみにするものを Coming To を使ってフィルター出来る。私は映画がストリーミングに出る直前にそれを借りる才があるので、このリストはとりわけありがたい。JustWatch に同等のものは無い。
JustWatch で値下がりを追跡
"お互いさま" の部門では、JustWatch iOS アプリは、iTunes, Amazon, そして Google Play の様なサービスから購入したり、借りたりしたものの値下がりを追跡するタブを持っている。結果を見るには、最上部でそこから買いたいサービスを選択しなければならない。Reelgood に同等のものは無い。
もしもあなたが Mac か iPhone か iPad を紛失したことがあるなら、あるいは盗まれたことがあるなら、Find My を有効にしてみても何の反応もなかった時のフラストレーションを覚えておられるだろう。デバイスがネットワークに戻ったことを示す ping も来ないし、コマンドを送った後にデバイスが消去されたことの確認も届かないので、何もできないからだ。
そんな状況を改善することを狙って、Apple は今年の後半に Find My iPhone サービスを改訂し、近くにある Apple ハードウェアを中継ビーコンとして利用できるようにする。Find My 機能で追跡しているデバイスに、それがなくなったというマークを付けた場合、たとえそのデバイスが Wi-Fi にもセルラーネットワークにも接続されていなくても、Apple には同輩の Apple 製品の受動的な助けを得てそのデバイスの位置情報を特定できる可能性がある。
その秘訣は、iOS 13 または macOS 10.15 Catalina の走る Apple デバイスでインターネットに接続されているものならばどんなものでも、近くにあってインターネットに接続されていない Apple デバイスに内蔵された Bluetooth アダプタからの信号を識別して、その情報を Apple へ送ることができるという点にある。このレポート機能はたとえそのなくした Mac、iPhone または iPad がスタンバイ状態にあっても、スリープ中であっても働く。ただし電源が入っていないデバイスでは働かないし、Bluetooth が無効化されていたり、デバイスが Airplane Mode に入っていたりする場合も働かない。
このテクニックにより、インターネットに接続されていないデバイスをどうやって見つけるかという問題が解決する。物理的にその近くにあってインターネットに接続されているデバイスに依存して働くのだ。(公平を期して言えば、このやり方を Apple が発明した訳ではない。Bluetooth 対応の位置情報追跡装置、例えば Tile のようなものがかなり以前からこれに似たクラウドソースの手法を使っている。)
プライバシーを重視する Apple の方針に従って、この機能の説明に際して Apple は、なくしたデバイスを追跡中であることも、それがどこで見つかったかも、あなた以外の誰にも明かされることはないと約束した。この機能のお陰でユーザーが車の座席の下から、あるいは盗人から、デバイスを取り戻すために実際に役立つのか否かはさておき、Apple は非常に興味深いやり方で暗号化アルゴリズムとプライバシー保護方針とを組み合わせている。
Apple はこれまで、デバイスの位置を見つけるこの機能に首尾一貫した名前を付けてこなかった。せいぜい、アプリの名前を Find My iPhone と呼び、そこに現われるデバイスの種類によってその名前を Find My Mac や Find My iPad のようにカスタマイズする程度であった。けれども iOS 13 と Catalina において Apple は Find My iPhone をアクティブで意図的な位置情報共有サービス Find My Friends と合体させたので、新しいアプリおよびサービスは単純に Find My と呼ばれるようになる。
新しい Find My サービスはどのように働くか
Apple は 2010 年に Find My iPhone を導入した。それから丸一年以上かけて同社はより多くのデバイスへとサービスを拡張し、その後遠隔にあるハードウェアの位置をこの機能が割り出し、追跡し、消去する方法を改良した。このサービスはアプリを通じても、また iCloud のウェブサイトを通じても使え、iOS デバイス、Mac、Apple Watch、および AirPods を見つけることができた。ただし Apple TV や HomePod を見つけることはできないが、これらはなくしてしまう可能性も盗まれる可能性もかなり低いだろう。
Find My iPhone iOS アプリまたは iCloud ウェブアプリを使ってハードウェアの現在位置を特定し、そのなくしたデバイスに対してさまざまの機能を使える。デバイスの種類にもよるが、内容を消去したり、ロックしたり、復帰メッセージを表示したり、大音量でサウンドを鳴らしたり、追跡したりできる。
けれども Find My iPhone は常にそのデバイスがインターネットに接続されていることに依存してあなたの命じるコマンドを実行してきた。それは妥当な要件であった! ハードウェアにもよるが、セルラーデータネットワークまたは Wi-Fi ネットワークにアクセスできる状態ということだ。
Apple が新しい Find My サービスで使った技は、他の人々が持ち歩いているお陰でいたるところにある Apple 機器と、常時利用できる Bluetooth ネットワーキングを組み合わせることであった。Apple はその上に注意深くプライバシーの構築を追加して、デバイスをなくした本人だけがそれがどこにあるかを見つけられるようにした。Apple でさえ、特定のデバイスがどこにあるかを読み取ることはできない。
セキュリティ研究者 Matthew Green は長年にわたってテクノロジー製品の中にある脆弱性や暗号化の欠陥を記録してきた人物だが、Apple の概要説明やコメントをもとに、概して肯定的な見解を述べている。彼はいくつかの重要な問題点を指摘しつつ、Apple がそれを解決できるかもしれない方法も述べた。いつも言えることだが、悪魔は細部に宿るものだ。
Apple は Find My サービスで動作方法をどのように改訂したかの技術的詳細をまだ発表していないし、ブリーフィングを開催して欲しいという私の要望にもまだ反応していない。けれども、現時点で判明している概要は次の通りだ:
あなたが少なくとも 2 台の Apple デバイスを同一の iCloud アカウントにログインした状態で持っている必要がある。
Find My を有効化した時点で、あなたの 2 台のデバイスが暗号化情報を交換する。
Apple はこの交換を何の知識のない人でもできるよう容易化しており、その暗号化鍵に Apple がアクセスすることはできない。
すべての iOS、iPadOS、および macOS デバイスで今年後半以後にリリースされたオペレーティングシステムのアップデートを走らせているものは、オフラインのデバイスから届いた Bluetooth メッセージを識別し、その情報を探知したそのデバイスの現在の位置座標と共に Apple へ継続的に送信する。
それらのメッセージが消費するバンド幅とバッテリー電力は無視できる程度だと Apple は約束する。
デバイスがなくなったとあなたがマークすると、Find My に登録してあったデバイスであなたの手元に残されたもののうちどれか一つから Apple に要求を送信できるようになり、そのなくなったデバイスに関係する情報を暗号化したものを受け取ることができる。.
WWDC 基調講演の最中に示された数少ないスクリーンキャプチャ画像を除いて、私たちはまだこれがユーザー側にどのように表示されるのかを知らない。表示される位置情報と追跡情報は現行の Find My iPhone アプリと同じものであるのかもしれないし、なくしたデバイスを見つけた別の Apple デバイスの位置すべてをピンを立てて示すのかもしれない。
Apple によれば、アップデート後の Find My サービスは「完全に匿名で端末相互間で暗号化されているので、すべての人のプライバシーが保護される」という。Apple は既にこれと類似のやり方で動作するいくつかのサービスを構築し終えており、それらの中では最初のセットアップさえ終われば端末相互間の暗号化がなされているので、これは妥当な言明に思える。
例えば、iMessage はログインに iCloud を使うが、いったんそのデバイスが接続されれば、Messages はあなたのデバイスの内部のみに保存された (従って Apple からはアクセスできない) 情報に依存して、送信するメッセージを暗号化し、受信するメッセージを復号化する。同じことが FaceTime オーディオやビデオ通話にも言える。Apple はこれと似たテクニックを Health データ、支払い情報、Screen Time モニタリング、Siri、さらには Wi-Fi ネットワークのパスワードや接続にも使っている。
また、報道によれば Apple は写真の中で人々の顔を識別するために使った情報を同期する際にも端末相互間の暗号化を使っているという。Apple はこれについて詳しく文章化していないが、Apple の Software Engineering 担当上席副社長 Craig Federighi は 2017 年のライブインタビューの中で、いくらかの情報を John Gruber に明かしている。個々のデバイスは、保存された写真をそのデバイス上で分析し、どの顔とどの顔が同じかを独自に推測した上で、その結果をあなたが確認したか否定したかを記録する。あなたの確認を得た顔と顔の対応のみが、端末相互間の暗号化を使ってあなたのすべてのデバイスに同期される。このやり方により、あなたがどの顔にどの名前を対応させたかを Apple が知ることは決してないし、顔認識のどの結果も一切見ることはない。その点が、他のテクノロジー大会社のいくつかと違うところだ。
暗号化の細かいことへは深入りしないでおくが、Apple は雑誌 Wired に対して Bluetooth で送信されるものが公開鍵となると述べた。公開鍵暗号化は公開鍵と秘密鍵を組にして使う。公開鍵は自由にかつ安全に配布できるので、他の人たちもそれを使ってメッセージを暗号化でき、それに付随した秘密鍵を持っているあなただけがその暗号を解くことができる。
Facebook や広告追跡会社によるとんでもない挙動に汚染されてしまったこの世界の中では、マーケティング会社や政府機関があなたを追跡するために、この公開鍵が また新たな 手段となり得るのではないかと心配になるのも無理からぬことだ。けれども Apple は、公表はしないがある一定間隔で公開鍵を変更するので時間が経てば追跡を防げると述べた。また、同社の声明によれば、公開鍵が Bluetooth 上で送信されるのはデバイスがインターネットに接続されていない場合だけだという。
iOS 13 または Catalina が走るどんな Apple デバイスも、その近くにあるあらゆるデバイスのために Bluetooth で転送された公開鍵を一般的な片方向暗号化的変換 ("hash") したものを添えて、自らの位置情報を暗号化して Apple に報告する。この hash 変換は逆変換ができないので、Apple にはどの公開鍵が記録されているかを知ることができない。けれども元の公開鍵を持っているどんなデバイスでも、同じ片方向 hash を実行してマッチを作成できる。
結果として、Apple は毎日何十億件というデータ点を蓄えることになるが、そのいずれも Apple がそれを利用してデバイスと位置情報を結び付けられるようなものではない。当然ながらそのデータは一定期間の間しか保存されないが、それは (暗号化されているとしても) 情報の機密性のためでもあり、含まれているデータの純粋な量のためでもある。
例えば、もしもあなたが iPad を使って iPhone がなくなったとマークすれば、その iPad は Apple のデータベースにクエリーを送ってマッチする関連情報を取り寄せる。すると、その iPad 上でその記録が復号化され、その iPhone が見つかる位置情報が判明する。このシステムの中にある唯一の弱点は、一見したところ Apple が個別の hash/位置データについてそれがどのデバイスあるいは iCloud アカウントからクエリーが送られたものであるかを知っているらしいことだ。私の推測では、このデータをどのように記録ないし削除しているかについて Apple がプライバシー開示を提供するのではないかと思う。
この機能に関するいくつかの報道を見ると、なくなったとマークされたデバイスのみがその Bluetooth 鍵と見つけているデバイスの位置情報をアップロードされると書かれているようだ。けれども私はそのようなシナリオは考えにくいと思う。なぜなら、そのためには探索中のデバイスが Apple のデータベースに問い合わせて見つかったそのデバイスが盗まれたものであるか否かを尋ねる必要が生じ、それはプライバシー侵害になる可能性があるからだ。その代わりに、これらの記事には一点混乱があると私は思う。Find My を有効にしたデバイスがオフラインになる度に自らの鍵を送信し始めるのか、それとも探している方のデバイスがそれをアップロードするか否かについて決断をしなければならないのかという点だ。
例えば、あなたが立ち寄ったカフェに 100 台の Apple デバイスがあったとしよう。その大多数はインターネットに接続されているだろう。でも中には接続されていないものもある。Apple の説明を読んで私が理解した限りでは、あなたのデバイスはそれらのデバイスの Bluetooth 鍵を受信してそれをあなたの位置情報と共に送信する。たくさんある他のインターネット接続のある Mac、iPad、iPhone も、最新のソフトウェアを走らせているものはすべて同じことをする。私が思うに、Apple は何らかの方法でコミュニケーションに抑制をかけて、個々の公開鍵と位置情報ごとにあまり頻繁に情報が送信されないようにするのではないだろうか。
ともあれ、これはどの程度価値があるのか?
現行の Find My iPhone サービスによってどの程度多くの人たちが恩恵を受けたのか、私は知らない。ほぼ間違いなく私たちは皆なくしたハードウェアの話を一度は聞いたことがあるだろうが、Apple が具体的な統計数字を公表したことは一度もない。はたして Find My iPhone は、毎年百万回使われているのか、それとも一千万回か? はたして何十万台ものデバイスがこの機能のお陰でソファのクッションの下から見つかったのか、それとも何百万台なのか? 何台くらいの盗まれたデバイスがこの機能のお陰で見つかり持ち主の手に戻ったのか? 私たちはこれらの疑問の答を知らないし、Apple は何も言っていない。
そのただし書きを述べた上で、Apple が計画している改善は、デバイスをどこかに置き忘れたような場合に特に便利だろうと思う。とりわけ、Wi-Fi のみに依存するデバイスについてそれが言える。私の子供の一人は古い iPhone をなくしたが、これは非常に強い制限のある T-Mobile のプリペイドプランを使っていて、データなしで料金は月額 $4 程度だった。子供たちはバスの中でなくしたと思うと言っていたが、シアトル地域のバスにはたいてい Wi-Fi があるのに、どうやらその iPhone は接続されていないようだった。もしも Apple の新しい Find My サービスが整っていたならば、取り戻せたかもしれない。
このサービスによって盗まれたものが取り戻せるかどうかの方に、私にはより多くの疑問点がある。盗人たちは、おそらく iPhone や一部の iPad がセルラーネットワークを通じて位置情報を送信し合えることを知っているだろうから、盗んだものの電源を直ちに切るか、または信号を遮ろうと安物の金属メッシュのバッグに入れることだろう。もちろん犯罪者たちは必ずしもそれほど賢くないので、Find My iPhone のお陰ですぐに警察が盗人の自宅の前に到着したという話も何度も報道されている。けれども、知恵のある盗人ならばこの新しい Find My サービスに変わっても何ら新たな問題を突きつけられることはないのではないかと私は思う。
より重大な意味を持つのはおそらく Wi-Fi 専用モデルの iPad や Mac だろう。その場合、デバイスがスタンバイ状態にあって盗人がデバイスの電源を落とすべきだと知らない場合には、Bluetooth 信号が送信し続けられるだろう。その場合には、例えば警察が位置情報をもとに監視カメラの映像を調べるかもしれないし、さらにはデバイスが移動中でもリアルタイムで警察が追跡できるかもしれない。そうは言っても、新聞記事を読む限り、法執行機関が実際に乗り出すのはたいていの場合その盗人が犯罪組織に関係していたり、あるいは暴力事件に結び付いていたりした場合のみというのが実情のようだ。
Apple が多額の投資を注ぎ込んで Find My の新しいやり方を実現する価値があると考えたのだろうと判断するのは、妥当なことに思える。それは、顧客たちからの要望に応えるためかもしれないし、将来の売り上げを促進するためのマーケティングの視点からのものかもしれない。理由はどうあれ、この機能は近いうちに実現されようとしている。時が経てば、いずれ私たちもそれがどの程度有用なものか知ることができるかもしれない。