Apple が MacBook Air を True Tone ディスプレイと値下げで更新し、入門レベルの 13 インチ MacBook Pro に Touch Bar を追加し、そして基本レベルの MacBook と Retina 非搭載の MacBook Air を引退させた。先週、ビデオ会議ソフトウェア Zoom にあったたちの悪い脆弱性が大騒ぎを引き起こした。順を追ってその成り行きをお伝えするとともに、どうすれば自分を守れるかを説明する。それから、Rich Mogull が寄稿記事で、今年の Worldwide Developers Conference (WWDC) を踏まえてプライバシーへの Apple の取り組みを検討する。今週注目すべき Mac アプリのリリースは、PDFpen と PDFpenPro 11.1、それに Logic Pro X 10.4.6 だ。
Apple のラップトップ製品群は長いこと少々ゴチャゴチャしていた、とりわけ低価格帯は。手頃な価格のラップトップを求めていた人は、紛らわしい (そして時には相反する) 選択肢に直面してきた:12-inch の超軽量の MacBook? 低価格の MacBook Pro で Touch Bar の付いていないもの? 最近改定されたMacBook Air?
その選択は、今やずっと簡単になった。Apple は長い間無視されてきた MacBook を製品群から外した。このモデルは、非力で、そして、不便きわまりなく、一つの USB-C ポートしか持たないことで悪評が高かった。時を同じくして、Apple は MacBook Pro と MacBook Air にも手を入れたが、主に低価格帯の購入者を意識してのものである。
非公式には "MacBook Escape" として知られていた Pro モデル - その名の謂れは、高価格帯機では Touch Bar に置き換わった Function キーと Escape キーが物理的に残っていたことにある - は消え去った。代わりに、低価格帯 MacBook Pro にも Touch Bar が付き、他のアップグレードもなされた - 学生に対する割引もある。
MacBook Pro には 58.2-watt-hour lithium-polymer 電池が付いてきて、最大 10 時間の電池寿命を提供する。
この低価格帯 MacBook Pro の他の変更は、改良かどうかの判断は見る人の価値観による。誰もが Touch Bar を好きなわけではなく、多くの人がそれを有用なツールと見るよりも、邪魔ものと見ており ("Touch Bar の何がいけないのか" 4 August 2017 参照)、物理的なファンクションキーを持つ Pro モデルが存在することを歓迎してきた人達もいる。
MacBook Pro に対するその他の変更はそれ程論争の種にはならないであろう。Touch Bar の他に、MacBook Pro には Apple の T2 セキュリティチップと共に Touch ID が付いた - ログイン認証や対応するサイトでのオンライン購入に便利である。
もう一つの潜在的限界は変わっていない:低価格帯 MacBook Pro には2つの Thunderbolt 3 ポートしかない。これに比べて、高価格帯のモデルには4つのポートが付いている。
MacBook Pro には2色の選択肢がある:シルバーとスペースグレイである。
MacBook Air
MacBook Air ラインに対する Apple のアップデートはそれ程大きなものではない。
全ての MacBook Air モデルに共通する新しいものは True Tone として知られるディスプレイ技術である。これは画面の白バランスを周囲の照明を補うべく調整し、画像がより自然に見えるようにするものである。True Tone は、もう既に MacBook Pro モデルやより最新の iPhone と iPad にも使われている。
最近 MacBook Air を買った人も、アップグレードにあまり羨望を感じる必要はない。何故ならば、True Tone はあまり目立たない機能強化だからである。このラインの機器の内部は変わっておらず、全てのモデルでは Intel dual-core 8th-generation i5 チップが走っている。それでも、MacBook Air のアップグレードを保留して来た人達にとっては、今が決断の時かもしれない。何故ならば、次の Air 更新は少なくとも一年以上先になると思えるからである。
しかし、昨年 MacBook Air の改良があって、この MacBook は生命維持装置につながれた様に見えた。今や、更新された Macbook Air と、新しい、遥かに魅力的な入門レベルの MacBook Pro の登場で、Macbook の生命維持装置は公式に電源が切られた。non-Retina MacBook Air も Apple の製品群から姿を消した。但し、教育機関向けは例外である。
Apple のアップデートは隠されたウェブサーバに対処するけれども、それをした後であってもあなたが騙されて Zoom リンクをクリックしてしまい、その結果としてあなたのウェブカメラが動き出す可能性はある。それを避けるためには次のようにすればよい。
まず第一に、あなたが持っているクライアントが最新版であることを確かめよう。Zoom アプリを開き、zoom.us > Check for Updates を選ぶ。もしもプロンプトが出れば、Update Now をクリックしてアップデートしておこう。
注意すべきは、バージョン 4.4.4 (53932.0709) がメニューバー上に Zoom アイコンを追加することだ。このアイコンを消したければ、Zoom アプリを開き、zoom.us > Preferences > General へ行って、"Add Zoom to macOS menu bar" のチェックを外せばよい。
あなたが明確に同意しない限り Zoom がウェブカメラをオンにしないようにするには、Zoom アプリを開いて zoom.us > Preferences (Command-,) を選び、Settings ウィンドウのサイドバーで Video をクリックし、"Turn off my video when joining a meeting" オプションにチェックを入れればよい。
Apple のイベントは一貫したパターンに従っていて、それぞれの回の発表内容の詳細を別にすれば変わることはまずない。この一貫性が、独自の言語となる。何度も Apple のイベントに出席していれば、Apple が伝えたいと思っているけれども直接的に表現したくはない、意図的な含意を汲み取れるようになってくる。それは、スライドやデモやビデオで表現された言葉に付随して伝えられる、身振りや表情から伝わるものだ。
5 年前に WWDC キーノートの会場を歩いて出ながら、そういう含意が Apple の進む方向の重大な転換を大声で叫び示していることを、私はひしひしと感じていた。それは、プライバシーが会社の基本原則としてくっきりと姿を現わしつつあるということであった。私の解釈による Apple のプライバシー原則を、私は Macworld 記事に書き綴った。その何年も前からプライバシーは Apple で重要性を増しつつあったけれども、5 年前のこの WWDC キーノートこそが、プライバシーが単に重要であるというだけでなく基盤となるテクノロジーの中に組み込まれつつあることを、Apple が明確に述べた初めての場であった。
それが利他主義なのか、Apple 重役たちの個人的原則なのか、それとも抜け目ないビジネス戦略なのかは分からないが、Apple の動機が何であるかに拘わらず、プライバシーに関する Apple の姿勢は独特なものであり、コンシューマ向けテクノロジーの歴史の中で重要な意味を持つ。今や本当の問題は、技術的なレベルで Apple が成功できるか否かということではなくて、プライバシーを押し進めようとする Apple の力が、政府、規制機関、裁判所、そして競合企業から今後押し寄せる猛攻に耐えられるか否かという点にある。
Apple の重役たちは、プライバシーは人権であると信じていると語る。しかしながら、振り返れば人類の歴史は、その種の権利に対する善意の擁護者たちの亡骸で満ち満ちている。
Sign in with Apple (アップルでサインイン)
戦略の転換について議論する際に、それが Apple であろうと他のどのテクノロジー会社であろうと、たいていの場合その変化はもっと何年も前から始まっていることであり、私たちが考えるよりずっと多くの段階を踏んで進んでいることが多いと考えておくべきだ。Apple の場合、HomeKit や HealthKit への参加を希望する開発者に対して Apple が初めてプライバシー保護を要件として打ち出した WWDC 2014 の、その少なくとも 2 年前から同社のプライバシー拡張への努力は始まっていた。
今年の WWDC 2019 において打ち出された最も明白なプライバシーに関する動きは、"Sign in with Apple" (アップルでサインイン) だ。これは、消費者と開発者双方に恩恵をもたらす。WWDC の別のセッションで明確化されたのは、開発者に対して Apple がアメとムチの手法を使っていることだ。つまり、開発者は Google や Facebook が提供する競合機能を含んだサービスを使おうとする際にこのサービスを使うことが要件となる代わりに、内蔵された不正検出機能を使えるようになる。すべての Apple ID は既に Apple により検査され二要素認証でセキュア化されており、Apple は開発者に対して接続が本物の人間からのものか否かを Apple の監視コードが判定した結果を、言わばサムズ・アップとサムズ・ダウンのデジタル版のような信号で知らせる。Apple は既に同様のメカニズムを iCloud での活動、iTunes、また App Store での購入などの場面で使っているので、この信号が信頼できるものである可能性が高い。
Apple はまた、Sign in with Apple が開発者自身にもプライバシーを拡張することを強調して、アプリの中で開発者がユーザーとどのようなやり取りをするかは Apple の関知するところではないと述べた。Apple は単に認証提供者の役目を果たすのみであり、ユーザーの活動についていかなるデータを遠隔収集することもない。だからと言って Google や Facebook が必ずしもそれぞれの認証サービスを乱用しているということではない。Google は疑惑を否定したし、疑わしい活動を探知する機能さえ提供している。対照的に、Facebook は二要素認証のために提供された電話番号を不正利用したことで有名だ。
Sign in with Apple が従来 Apple のエコシステムの内部にあったプライバシー要件と異なっているのは、この機能が Apple のプライバシーへのこだわりを壁に囲まれた庭の外部へと拡張することだ。従来の要件は、HomeKit のデータ利用制限から、App Store においてアプリがデータを収集し利用できる方法のルールを定めていることまで、大体において Apple のデバイスで走るアプリに適用されるものであった。Sign in with Apple においても技術的には同じことが言えるけれども、事実上はもっとずっと広い範囲にまで影響が及ぶ。
その理由は、開発者たちが iOS 用アプリに Sign in with Apple を追加する際に、自分の顧客が Apple デバイス以外のものを使うのであれば、他のプラットフォーム上のアプリにも Sign in with Apple を追加する必要が出てくる可能性が高いからだ。もしもそうしなければ混乱を招くユーザー体験を作り出してしまうことになるだろう。(言いにくいことだが、実際にはそういう状況が数多く生まれることだろうが。) ユーザーが自分の Apple ID でアプリ用のアカウントを作成した後には、別のログイン認証でそれと同じユーザーアカウントに対応するのは技術的にいろいろと複雑なところがある。だから開発者たちには、すべての異なるプラットフォームにわたって Sign in with Apple をサポートしたいと思う理由があり、結果としてこの機能に内在するプライバシーが Apple の通常の到達範囲を超えた場所にまで広がる。
Intelligent Ad Tracking Prevention (広告 ITP)
Apple がプライバシー戦略を拡張しようとする実例として、目立ったテクノロジーが他にも二つある。一つ目は、広告に対するインテリジェントトラッキング防止 (ITP) 機能への重要なアップデートだ。広告をクリックした際のプライバシー保護を施された属性は、醜悪な広告トラッキング市場の中で (少なくともいくらかの) プライバシーを提供する。二つ目のテクノロジーは HomeKit Secure Video で、こちらは独自にバックエンドのクラウドサービスを構築する手間を掛けずに競争力ある機能を持ちたいと考える監視カメラ製作会社に対してプライバシーの尊重を伴う新しい基盤を提供する。
効果的なトラッキング防止機能は、オンラインの広告主にとって、また収入を広告に依存するサイトにとって、存在そのものがリスクではあるが、Apple による (また他のブラウザメーカー各社による) 監視の目がますます厳しくなりつつある現状は、ほぼ間違いなく広告主たちによる過度に押し付けがましいトラッキングの結果だと言える。Intelligent Tracking Prevention (およびそれにブラウザの他のプライバシーやセキュリティの機能を組み合わせたもの) がムチだとすれば、プライバシーを保った状態での広告クリック属性は Apple のアメだ。クリックをモニターする Apple の方法は、ユーザーのプライバシーを侵すことなく広告主が成果率を追跡できるようにする。
このようなプライバシーを保った状態での広告クリック属性は Safari に搭載予定の機能であり (さらには新しいウェブ標準として提案されており)、ブラウザが広告クリックを 7 日間のみ記憶できるようにする。その期間内に購入がなされれば、広告の成果の可能性としてマークされる。ユーザーの特定を防ぐためにある程度ランダムに選ばれた時間の遅延を経てから、実際のユーザーをリンクして辿ることができない一連の ID のセットを使ってその成果が遅延性の一時的ポストとして検索ないし広告のプロバイダに報告される。
地上で二番目に人気のあるウェブブラウザの中で (Safari の市場シェアはおよそ 15% で、Google Chrome の 63% に続く) プライバシー保護を含んだこの広告テクノロジーを構築し、さらにそれをオープンな標準とすることにより、またその一方で多大な力を尽くして侵略的なトラッキングを防止することにより、Apple はここでも市場における自らの地位を活用してプライバシーを壁の向こう側にまで広げようとしている。このテクノロジーについて最も興味深いのは、さきほどの Sign in with Apple 機能とは違って、Google や Facebook など広告に駆動される Apple の競争相手たちのビジネスモデルを一切邪魔することなくユーザーのプライバシーを改善できることだ。それらの競争相手たちもまた、Apple のテクノロジーを使って広告の成果を追跡できるし、Apple 自身もユーザーが管理する広告識別子に応じてターゲットを絞った広告を使うことができる。
HomeKit Secure Video
さきほど書いたように、HomeKit Secure Video もまた、Apple がプライバシーの推進を拡張するためのテクノロジーだ。macOS 10.15 Catalina、iOS 13、それに iPadOS で登場予定のこの機能は、HomeKit の監視カメラにプライバシー保護のアップデートを提供する。実際に犯罪を予防するためにはそれほど役立たないとは知りつつも、私自身この種のカメラのヘビーユーザーだ。ほとんどすべての家庭用監視カメラは、私が使っている Arlo カメラも含め、録画したビデオを直接クラウドベースのストレージに保存する。(2018 年 9 月 3 日の記事“HomeKit 互換の防犯カメラ Arlo Baby はベビーがいなくても役に立つ”参照。) よくある犯罪番組でも見られるように監視カメラで撮影したものを悪漢が持ち去ってしまうリスクを避けるためにも、クラウドに保存するのは一般的に言って望ましい機能だ。また、監視カメラを製造している会社はクラウド上の処理を通じて人物や動物や自動車を識別したり、その他の便利な機能を提供したりする。多くの顧客たちと同様に、私もそういう会社が自分のビデオにアクセスできるという事実が気に入らない。そのことも理由の一つとなって、私は自宅に家族の誰かがいる間は家の中のカメラをすべて停止している。
HomeKit Secure Video 機能は、この機能に対応するカメラで撮影した映像を、それが保存される iCloud へ、暗号化した状態で送信する。しかも 10 日分の映像を無料で、iCloud のストレージ容量上限にカウントせずに保存する。もしもあなたがネットワーク上に Apple TV または iPad を持っていれば、機械学習の解析や画像認識の作業をクラウド上でなくあなたのそのデバイス上で走らせる。Apple はなかなか面白い分野に足を踏み入れようとしている。つまり、Apple は自らカメラを販売している訳ではないので、この種のことで収益をあげられるとは思えないし、顧客がスマートフォンやタブレットを購入する際に監視カメラに対応しているかどうかが動機付けとして働くとも思えない。これではまるで、Apple の重役の誰かが個人的に既存の監視カメラにプライバシー保護がないことにゾッとした気持ちになって、「直してやろうじゃないか」と腰を上げたかのように思える。
HomeKit Secure Video は、消費者のプライバシーを保護しつつ、監視カメラの市場をより広い競争相手たちに開放する。それは単なる製品でなくてプラットフォームであり、製造業者たちが独自にバックエンドのクラウドサービスや機械学習の機能を構築する必要を取り除くものとなる。このプラットフォームを利用する会社は、製品を市場に出す際の摩擦を減らすことができ、それでいてユーザーにより良いプライバシーを提供できるようになる。
Apple は今後もそのすべてのプラットフォームを横断して既存のプライバシー機能を拡張し続ける。そこには新しいオフラインデバイス追跡ツール Find My もある。(2019 年 6 月 21 日の記事“Apple の新サービス Find My がオフラインのハードウェアを見つける方法”参照。) Wi-Fi や Bluetooth のデータを乱用してその場で位置情報追跡をするアプリが現に存在しているので、今日の Apple は iOS において、核心的機能として必要とされる場合を除きその種のデータへのアプリからのアクセスをブロックするようになった。今やユーザーはトラッカーを追跡することもでき、承認を受けたアプリが自分の位置情報にアクセスした際にそれと知ることさえできるようになった。
それからまた、登場予定の Apple クレジットカードもある。これは、プライバシーを尊重する支払いシステムの選択肢として最も目標に近いものとなるだろう。音声認識機能でさえ、プライバシーに磨きがかけられた。間もなく開発者たちは自分のアプリの中で音声認識機能がそのデバイス上のみで走り、クラウドに曝されることがないように指定することが可能になる。実際、Apple は WWDC で、開発者たちが Apple の考え方を採用して自らのアプリ内でプライバシーを改善する実例のために丸々一つのセッションを割り当てた。
John Guber の番組 The Talk Show Live で、Craig Federighi はプライバシーに焦点を当てる Apple の姿勢はずっと初期の時代、つまり「パーソナル」なコンピュータを作るために Apple が設立された時にその端を発していたと語った。それはそうなのかもしれないし、そうでないかもしれないが、Apple が本物のプライバシーの文化を (あるいは実際に技術的な保護を) 構築したのは間違いなく iPhone の時代が始まって以後のことだ。Microsoft が 2002 年にその非常に成功した Trustworthy Computing Initiative (信頼できるコンピューティング) を開始してそれまでの同社の不十分なセキュリティ実績を覆した時、その基礎となった原則の一つは "Secure by Design" というものであった。今回 Apple の開発者向けの Platform State of the Union セッションの最中、プライバシーが中心的な話題となったのは Apple が "Privacy by Design" を語ったからであった。
Apple も他のテクノロジー会社も、セキュアでプライベートなデバイスを作ろうとして抵抗に遭った経験を既にしている。いくつかの国では、例えばオーストラリアでは、端末相互間の暗号化を破ってデバイスにバックドアを要件とする法律を通そうとしている。米国の法執行機関の当局者たちはは何年も前から、そのようなことをすればデバイスのセキュリティを保証できなくなることを知りつつそれと同様のアクセスを認める法律を推し進めるための下準備を続けてきた。(2014 年 12 月 10 日の記事“Apple と Google、公民権論争の口火を切る”参照。) 中国では、Apple やその他中国以外のクラウドプロバイダに対してデータセンターを中国の会社に明け渡すことを義務化して、情報を政府に供給できるようにしている。Apple の競合各社もただ手をこまねいている訳ではない。Google の Sundar Pichai は New York Times に意見記事を書いて、Google のセキュリティをプライバシーと同等化し、Apple のバージョンのプライバシーを贅沢品に過ぎないと評して論議を呼んだ。確かに Google のセキュリティは業界随一だが、そのセキュリティを Apple が提供する種類のプライバシーと同等化するのはどう見ても不誠実だ。
個人のプライバシーに対抗して立つグローバルな力は、あまりにも多勢だ。広告会社やマーケティング企業は、あなたのブラウズ履歴と購入履歴を追跡したがる。政府は何を犠牲にしても犯罪を解決しテロを予防しようとする。電気通信プロバイダが私たちのインターネットトラフィックや位置情報を監視したがるのは、とにかくそれが可能だからだ。金融サービス業界は、私たちのデータに何かの価値があるだろうと確信している。さらには食料品店でさえ、私たちの購入品のすべてと私たちの電話番号を関連付けさせることと引き換えに少額の値引きをする誘惑に勝てないでいる。その一方で、理論的に言って、私たちがこれらのトラッキングを制御できる方法はほとんどない。事実上、私たちは基本的にそのほとんどに対して何の手も下せない。ましてや、その情報がどのように使われているかを知る手段などさらにもっと少ない。プライバシーを前進させようとする Apple の努力に対して、これらさまざまの組織の多くが強く押し返してくるのは容易に予想できることだし、その延長として、自分自身のプライバシーを大切にしそれを自分で制御したいと思う私たちの誰に対してもその圧力が及ぶのは十分にあり得ることだ。
プライバシーを基本的人権と呼ぶのは、どのような会社であれ個人であれ、自ら取り得る最大限の強い姿勢だ。プライバシーを自らのエコシステムの中に組み入れるのは Apple にとって一つの重大事であったが、Apple がそのプライバシーを自らのエコシステムの外へと拡張するに至って、今や私たちはそれらのプライバシー保護が自分にとって意味あることなのか、支持するに足る価値のあるものかどうか、自分自身のために判断しなければならない。私は自分の立ち位置を知っているが、それと同時にプライバシーが高度に個人的な概念であって世界の人たちの大多数が同じ考え方であるなどとは仮定できないことも知っているし、Apple の努力が今後 10 年間の挑戦を生き延びられるという前提に立てないことも私は知っている。
Apple が Logic Pro X 10.4.6 をリリースした。このプロフェッショナル向けオーディオアプリのメンテナンス・リリースで、安定性と信頼性の改善に焦点を置いている。今回のアップデートではメモリロードが大きい場合にチャンネルストリップが消えてしまうことがあった問題を修正し、数多くのハングやクラッシュを解消し、VoiceOver の使用に関するいくつかの改善を施し、ループを Loop Browser からトラックへコピー&ペーストする機能を復活させ、Tuning Table が期待通りに動作するようにし、またプラグインの動的ロードにいくつかの改良を施している。(Mac App Store から新規購入 $199.99、無料アップデート、1.5 GB、リリースノート、macOS 10.13.6+)
CNN の Fareed Zakaria とのインタビューで、Microsoft 共同創立者の Bill Gates がかつてのライバル Steve Jobs に思いを寄せ、彼が従業員から最大限のものを引き出し顧客をあっと言わせたことを“魔法使い”という言葉にたとえた。「私自身は言ってみれば小物の魔法使いで、彼が魔法をかけると人々が魅了される様子は見えるけれど、小物の魔法使いたる私が魔法にかかることはなかったのです」と Gates は言い、悪名高い Jobs の“現実歪曲空間”にも触れた。Gates はさらに続けて、テクノロジー業界の多くの人たちが Jobs の最悪の資質のみを模倣する一方で、才能を見つけ出し意欲を起こさせる能力で彼に匹敵する人は一人もいないと語った。38 分間にわたるこのインタビューの全部 を Apple Podcasts で聴くことができる。