Apple はこのスケジュール問題を、個々のリリースにそれ程多くの機能を盛り込まないことで避けることは可能なはずだが、それは単に同社の企業文化ではない。定期的なリリース計画には乗らない製品、AirPods や噂に上った Bluetooth 追跡タイルの様な、は本当に仕上がるまで延期することは可能である。しかし、年間のリリース計画に乗った製品、iPhone やオペレーティングシステムの様な、はどの様な状況にあろうが9月には出荷されなければならない。
Apple は、非クラッシュのバグを昔ながらの方法で追跡している:人間という試験機 (QA 技術者)、自動試験機、そしてサードパーティ開発者や Apple サポートからの報告を使って。言うまでもないであろうが、この方法は科学であると同時に芸術でもあり、非クラッシュバグを特定するのも (とりわけ Apple サポートからの報告から)、技術者が追跡して捉えるのもどちらもずっと難しい。
通常、沢山の Apple Store 訪問やサポートコールの原因となるバグは修正される。結局のところ、多くのユーザーの手助けをするために十分なサポート係員を雇うのには相応の費用がかかる。バグを修正する方がずっと安い。私が Apple 製品の仕事をしていた時、我々には Apple Store 訪問やサポートコールの原因となっているバグの上位リストが与えられ、そしてそれらを解決することが期待されていた。
Apple の全てのグループがこの様に働くわけでは無いが、多くはそうである。私はこれで気が変になりそうだった。Apple の私の知っていた一つのグループは "Not a Regression (回帰ではない)" という T シャツまで作った。もしバグが回帰でなければ、直す必要はない。それが何故私が前記した iCloud 写真アップロードバグや連絡先同期バグが決して修正されることはないであろう理由である。
Apple にとって事態を複雑にしているのは、増大を続けるエコシステムの複雑さである。何年も前には、Apple は Mac しか売っていなかった。プロセッサのコアは1つしかなかった。100,000 行のコードを持つプログラムは大きなものであり、殆どのものが単一スレッドであった。
現代の Apple オペレーティングシステムは、数千万行のコードから出来ている。Mac, iPhone, iPad, Apple Watch, AirPods, そして HomePod 全てがお互いに会話し、そして iCloud とも話をする。全てのアプリはマルチスレッド化し、そしてお互いに (不完全な) Internet 上でやり取りする。
今日の Apple 製品は過去のものより遥かに複雑であり、その結果開発もテストも更に難しくなっている。テストマトリックスはただ行数が多くなっているだけでなく (機能と OS バージョンのせいで)、次元も増えている (それが試験されなければならない互換性ある製品のせいで)。更に悪いことに、複数コア上で走る複数のスレッドの様な非同期の事象、プッシュ通知、そしてネットワークの遅延が意味するのは、総合的な試験プログラムを作成するのは現実的に不可能だと言うことである。
私が Take Control of iOS 13 and iPadOS 13 の読者たちから受け取った iOS 13 に関する電子メールのうちで最も多かったのが、外付け USB ドライブを使うことについての質問であった。そこで、寄せられた中から最も一般的な質問と、また多くのユーザーが持つであろうと思われる他のいくつかの質問に対して、ここにお答えしてみたいと思う。
iPhone でも外付け USB ドライブが使えるのか、それともこれは iPad だけの機能なのか?
Apple はこの機能を主として iPad に (特に iPad Pro に) 関係して述べているが、この機能は iPhone 上の iOS 13 でも iPadOS と全く同様に働く。
iOS 13 が読めるのはどのタイプのストレージ機器か?
iOS 13 は標準的な USB ストレージ機器ならばどんなものでも、それが互換なファイルシステムでフォーマットされていて、かつ十分な電源が供給されている限り (この点については次の2項も参照)、読むことができる。要するに、ほとんどのストレージ機器が使えるはずだ。
Lightning の選択肢: そのデバイスに Lightning ポートがあるなら、Lightning-to-USB アダプタが必要になる。私は Apple の Lightning to USB 3 Camera Adapter を強くお薦めする。これは USB 3 に対応しており、電源用に Lightning のパススルー・ポートも提供しているからだ。デバイスによってはこの電源パススルーが必要となる。(2019 年 8 月 12 日の記事“iOS 13 に最適の Lightning to USB Adapter を選ぼう”参照。) もしあなたがパススルーのない旧型の USB 2 アダプタを持っているなら、電源付きの USB ハブを使ってストレージ機器に電源を供給するとよい。また、Lightning ベースのサムドライブを買ってくれば、アダプタも電源パススルーも要らなくなる。
AstroHQ は最近、自らの製品が Apple と Sidecar によって「Sherlock 化」されたと嘆いたが、それでもまだ戦えると主張した。そして実際彼らの製品 Luna は、Sidecar にはできないことができた。さらに最近になって、AstroHQ は Luna Display の Mac-to-Mac モード、つまり一台の Mac を別の Mac の第2ディスプレイにすることができる機能を発表した。これこそ私たち TidBITS が長年待ち望んでいた機能で (2007 年 2 月 5 日の記事“自分だけの 23 インチ MacBook を作ろう”と 2007 年 8 月 27 日の記事“TidBITS 御用達ツール: Teleport”参照)、私たちとしても Luna Display の Mac-to-Mac モードを近いうちに試してみたいものだと思っている。
けれども Apple の Sidecar 機能は、無料だ。(もちろんそのユーザーが必要なすべてのハードウェアを既に持っていればの話だが。) macOS に内蔵されている機能なので、いずれはサードパーティの競争相手をニッチの状態に追いやる (または Windows や Android など他の市場を追い求めさせる) ことになるかもしれない。
Sidecar によって Apple は、iPad を手軽に Mac のスクリーンに転換でき手も掛からずユニークな機能もいろいろ持つようにするという自らの約束を大体において実現した。ただし警告しておくが、Sidecar にはまだまだ少し粗削りなところがあるので、いくつか問題が起こることは覚悟しておいた方がよい。
Sidecar を取り付ける
Sidecar は万人向けのものとは言えない。厳しいハードウェア要件があるからだ。Skylake プロセッサまたはそれ以後のプロセッサを持つ Mac で、Catalina が走っていなければならない。つまり、Catalina 対応であっても対象外となる旧型の Mac がたくさんあるということだ。それに加えて Apple Pencil 互換な iPad も必要で、そちらは iPadOS 13 が走っていなければならない。
Sidecar はワイヤード接続でもワイヤレス接続でも働く。USB-C ケーブルまたは Lightning ケーブルでタブレットを Mac にテザリングすれば最良のパフォーマンスと信頼性が得られる。でも、ワイヤレス接続でもそう悪くない。もちろん、それが働くならばの話だが。
ワイヤレス接続をするためには、その Mac と iPad が共通の iCloud アカウントを使っていなければならない。双方のデバイスともが Bluetooth、Wi-Fi、それに Handoff を (Settings > General > Handoff で) 有効に設定していなければならない。ワイヤレスモードにおいては、Sidecar は当初の iPad 探知のために Bluetooth を使い、いったん接続がなされれば point-to-point 中継によりデータの転送をする。実質的な到達距離は 10 フィート (3 m) 程度だ。
さて、ここであなたはどのアプリを iPad の画面上に置くかを決めなければならない。もちろんそれは、ウィンドウを一つのディスプレイからもう一つへドラッグして移動させるだけのことだ。でも、もっと良い方法がある。多くのアプリで提供されている Window メニュー上に、クリック一つでウィンドウを移動させるオプション、Move to iPad または Move Window Back to Mac が見えるはずだ。(どちらが見えるかは現在そのウィンドウがどちらのデバイスにあるかによる。) アプリによっては Window メニューがないものもあるが、ウィンドウの緑色のズームボタンの上に Mac のポインタをかざせば、ウィンドウの移動に関する同様のオプションが現われる。
水平のストリップは Touch Bar (タッチバー) と呼ばれ、MacBook Pro の物理的 Touch Bar を使ったことがある人なら直ちに馴染みに感じられるはずだし、見栄えも動作も同じだ。MacBook Pro 上とまったく同じように、現在どのアプリを使っているかに応じてコントロールの異なる選択肢が表示される。物理的 Touch Bar はレビューであまり良い評価を得ていないし、この Sidecar 版がそれを超える人気を得るとも思えないが、人によっては気に入るかもしれない。
垂直のストリップは Sidebar (サイドバー) と呼ばれ、いろいろのことをする:
一番上にある 2 つのボタンは、Mac のアプリがフルスクリーンモードにある間に Mac のメニューバーを iPad 画面の上で表示したり隠したりし、また Dock を Mac と iPad の画面で切り替える。
ストリップの中央部には 4 つの修飾キー、Command、Option、Control、Shift が並んでいる。これらは主として特定分野のユーザーに向けたものだ。例えば、片手で Apple Pencil を使いながらもう片方の手で修飾キーを使う必要があるアーティストなどだ。Apple が例を挙げている:
ZBrush でモデルを彫り上げている間に、アーティストは Apple Pencil でモデルを描きながら、サイドバーの修飾キーを使ってあちこちズーム、回転、パンなどができる。修飾キーをダブルタップすればそのキーが押し下げられた状態のままとなり、手でキーを押し続ける必要なしに長く続けた作業ができる。その後でまたタップすればキーが解除される。
Bare Bones Software が BBEdit 13.0.1 を出した。最近のバージョン 13 へのアップグレード (2019 年 10 月 11 日の記事“BBEdit 13、パターンに基づく検索を簡素化”参照) 以後、初めてのメンテナンス・リリースだ。今回はバグの修正に集中しており、この古参のテキストエディタは Save As や Save a Copy を使おうとすると Open/Save パネルサービスがクラッシュした macOS のバグを回避し、メニューコマンド Reveal in Finder が働かなくなったバグを修正し、Control-クリックでスペルチェックをしようとすると起こったハングを解消し、Markup > Includes メニューのコマンドが正しく有効になるようにし、また Mac App Store 以外で入手したデモ版の当初ウィンドウに表示されていた誤解を招く参照を修正している。
Microsoft が月例アップデートで Office for Mac のバージョン 16.30 を出して、PDF を Word のテキストレイヤーで開いてそれを Word 書類に変換してから編集できるようにした。(元の PDF 書類は変更を受けない。) PowerPoint は Ink Replay 機能を装備して、ステップごとの手順を説明するためにインク描画を描かれた通りに再生できるようにした。Excel はデータを可視化する Visio 図表を作成するための Visio Data Visualizer アドインに対応し、また遠隔コード実行の脆弱性をパッチする 2 件のセキュリティアップデートを施した。(一回限りの購入ならば $149.99、年払い講読オプションは $99.99/$69.99、Microsoft AutoUpdate 経由で無料アップデート、リリースノート、macOS 10.10+)