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#1502: Mac の起動チャイムを有効に、iPhone の緊急連絡先、Larry Tesler 追悼、iPhone 用歩数計アプリ、watchOS 6.1.3

新しい Mac で起動チャイムが鳴らないのを残念に思いませんか? それを有効にする方法があるのでお読みください! もしもあなたが事故に遭ったら、簡単に緊急応答であなたの大切な人に連絡できるだろうか? Adam Engst が、iPhone 上で Medical ID をセットアップする方法を説明するとともに、緊急連絡先の電話番号が最新のものであることをチェックしておこうと呼びかける。アイスランド在住の Apple Watch ユーザーのために Apple は watchOS 6.1.3 アップデートを出したが、それ以外の人たちも時間のあるときにインストールしておくとよいだろう。Adam はまた、先週亡くなった元 Apple 副社長の Larry Tesler の思い出を語り、1997 年に彼と交わした電子メールの会話を披露する。Tesler はコピー&ペーストを発明したことで知られ、彼の仕事は HTML とペインに分割された現代のインターフェイスその他多くのものに大きな影響を与えた。それから、Julio Ojeda-Zapata が iPhone を歩数計として使う方法を考え、使い勝手を良くしてくれるアプリをいくつか紹介する。今週注目すべき Mac アプリのリリースは BusyCal 3.9、DaisyDisk 4.9、ChronoSync 4.9.9 と ChronoAgent 1.9.7、それに Tinderbox 8.5 だ。

Adam Engst  訳: Mark Nagata   

TipBITS: 新しい Mac で起動チャイムを有効にする

最近私はいくつかの非常に古い Mac やエミュレータをいじる機会があって、その際に Mac の起動サウンドが長年かけて進化し、2016 年になって起動時にサウンドが鳴らなくなったことを改めて思い出した。Computer Clan の Ken が、この起動時サウンドの歴史を語り、実際に時を経て起動サウンドがどう変わってきたかを実演する素敵なビデオを作ってくれた。

2016 年に Apple が起動時サウンドをデフォルトでオフにしたとき、Terminal コマンドを使えば起動時サウンドを復活させることができると気付いた人がいた。次のコマンドだ:

sudo nvram BootAudio=%01

残念なことに、このやり方は 2017 年に Mac の各モデルで働かなくなった。おそらくこれは、Apple が macOS アップデートを通じてそのオプションを取り去ったのだろうと思われた。それ以来、新しい機種の Mac は沈黙のうちに起動するようになった。けれども今、Twitter ユーザー DylanMcD8 が新たな NVRAM パラメータを発見して、これを使えば最新機種の Mac でさえも起動時サウンドが復活することを見つけた。

sudo nvram StartupMute=%00

TidBITS Talk のメンバーたちが試してみたところ、2017 年型 iMac、2018 年型 Mac mini、2018 年型 13 インチ MacBook Pro、それに 2019 年型 16 インチ MacBook Pro で期待通りに動作することが分かった。けれども AppleInsider の記事によれば、このコマンドが働かないマシンもいくつかあるとのことだ。なぜなのかははっきりしない。

今の Apple が起動時サウンドをなぜ嫌うのか、私には理解できない。確かに、Mac を常時無音にしておきたい人のためにオプションがあるのは良いことだが、起動時サウンドは Mac が期待通りに動作していることを示す手掛かりとして役に立つ。少なくとも起動プロセスのその時点までは。たぶん Apple は Mac が iPhone や iPad と同様に常時使える状態にあるべきものだという考え方を奨励しようとしているのだろうが、現実はその考え方と一致していない。

設定を元に戻したければ、もしもそうしたいならばの話だが、次のコマンドを使えばよい:

sudo nvram StartupMute=%01

Howard Oakley に感謝したい。私がこのことを初めて目にしたのは、彼の Eclectic Light Company ブログの記事だったのだから。ただしその後、この件はいろいろなところで広く伝えられている。

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Josh Centers  訳: Mark Nagata   

watchOS 6.1.3、アイスランドで不規則な心拍の通知を修正

Apple は世界の大国のうち一つで起こっていることの影響を見て業績予想を下げなければならなかったかもしれないが、それでも小国のユーザーたちのことにも注意を払い続けてくれている。Apple は watchOS 6.1.3 をリリースして「改善およびバグの修正」を施したが、具体的にはアイスランド在住の Apple Watch ユーザーのために“不規則な心拍の通知”機能が正常に働かないバグを修正したとだけ述べた。

watchOS 6.1.3 release notes

Apple Watch Series 4 で 48.1 MB のこのアップデートをインストールするには iPhone の Watch アプリを使う。Watch > General > Software Update へ行けばよい。アイスランドに住んでいない人は、特に急ぐ必要もないだろう。

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Adam Engst  訳: 亀岡孝仁  

あなたの iPhone の Medical ID 緊急連絡先の再チェックを

皆さんは、自分の iPhone 上の Medical ID を設定したことがありますか? Mike Matthews はこの機能について我々のために "iPhone で財布は置き換えられるか?" (30 June 2017) で書いてくれたが、この世には、万が一重傷を負った時に命を救ってくれる可能性を持つほんの少しの情報を入力することに時間をかけたことのない人が余りに多過ぎる。そこで、私が最近学んだ緊急連絡先についての情報も付け加えて、繰り返して取り上げてみようと思う。

Medical ID を設定する

Apple は、最近のバージョンの iOS で Medical ID を作成し編集するのをより楽にした。それにアクセスする方法は二つある。Health アプリを開き、自分のアバターをタップ、そして Medical ID をタップするか、或いは Settings > Health > Medical ID に行くかのどちらかである。そこに行ったら、下記の手順を踏む:

  1. 右上にある Edit をタップ。
  2. 自分の個人情報の詳細を記入する。そこには、病状、病気に関するメモ、アレルギーとその反応、そして定常的に摂取する薬が含まれる。これは大切な情報である - 拒絶反応の原因となる薬物の使用を避けるために治療に当たる人がこの情報を持つことは必須である。
  3. 底部にある Add Emergency Contact をタップし、連絡先を選択、そして - これは紛らわしくなることもある - 電話番号を選択する。この番号は、緊急時に通知を受け取ってもらいたい相手の電話番号である。また、間柄も記入する - これは緊急対応要員には有用であろう。これを、連絡して欲しい人の分だけ繰り返す。
  4. Done をタップして情報を保存する。

How to edit your Medical ID info

もし緊急連絡先だけ追加したいのであれば、もっと簡単な方法もある。

  1. Contacts (或いは Phone > Contacts) を開き、追加したい人の連絡先カードをタップする。
  2. 底部までスクロールして Add to Emergency Contacts をタップする。
  3. もしその人が電話番号を一つ以上持っているのであれば、緊急時に使って欲しい番号を選択する。

注:選ぶ電話番号は、それが緊急対応要員や医療関係者のためだけのものであれば何でも良い。しかしながら、iPhone や Apple Watch 上の Emergency SOS 機能を使う事態まで想像するのであれば、選択したものがテキストメッセージを受け取れる番号であることを確認する必要がある。何故ならば、Emergency SOS は、テキストメッセージを使って緊急連絡先に伝えるからである。

Medical ID を使う

Medical ID にアクセスするには、サイドボタンとボリュームボタンのどちらか片方の二つを数秒間長押しして Emergency SOS を呼び出し、そして Medical ID スライダーをスライドさせる。注意すべきは、これをすると Touch ID 及び Face ID は不能化されることである;次に iPhone を開錠したい時には、あなたのパスコードを再入力しなければならない。

他の誰かの Medical ID にアクセスするには - その人が事故に遭い、あなたが助けている - 以下の手順を踏む:

  1. Lock 画面から、Home ボタンを押すか、或いはスワイプアップして Passcode 画面を出す。ここでは Touch ID や Face ID に働いて欲しくない - 目標はパスコードキーパッドを見ることである。
  2. 左下隅にある Emergency をタップする。
  3. Emergency Call 画面で、Medical ID をタップする。

How to access Medical ID on a locked iPhone

緊急連絡先を確認する

最近友人の一人が指摘した問題がこれである。Medical ID に緊急連絡先を追加する時、そこに追加する電話番号は特定の電話番号であり、一概にその人の連絡先カードではない。では、その緊急連絡先の電話番号を変更したら何が起きるか? 少なくとも iOS 13 では、 Medical ID 連絡先情報は正しくアップデートされる;以前のバージョンの iOS ではこうならなかったことは想像出来る。

しかしながら代わりに、もしその緊急連絡先の電話番号を変更するのに、古い番号を削除し、新しい番号を追加したら - 必ずしも理に叶っていないやり方とは言えない - その連絡先と Medical ID の間のリンクは壊れてしまい、以前の番号が Medical ID に残ったままとなる。それを解決するには、Medical ID からその緊急連絡先を削除し、それからその人を再度追加する。

これから引き出せる現実的な結論は、もしあなたの Medical ID を設定したのはかなり前だというのであれば、あなたの緊急連絡先の電話番号は正しく載っているか再チェックしてみる価値があるということであろう。

勿論、これらの人は Medical ID 上でリストとしても見られるが、Contacts アプリをを見れば、緊急連絡先の名前の隣に太字体の赤色の星印が見られる。その人達の連絡先カードには、Emergency Contact が上部に表示され、赤の星印がその対応する電話番号の隣に現れる。(もしこの赤星印があるべきと思われる所に現れないのであれば、恐らく、その電話番号と Medical ID 緊急連絡先との間のリンクが壊れていて、Medical ID は最後に見た番号を保持している状況にあると思われる。)

How to identify emergency contacts in Contacts

と言うことで、ここは少しだけ時間をとって、自分の iPhone の Medical ID は設定されており、緊急連絡先には正しい電話番号が示されていることを確認すべきである。あなたが救う命はあなた自身のものかもしれない。

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Julio Ojeda-Zapata  訳: 亀岡孝仁  

歩数計アプリが iPhone を歩数計に変える

歩数計測は何十年にも亘る由緒ある健康指標の一つである。10,000 歩という目安は、科学とは似ても似つかない日本の販売戦略に基づいているとは言ってもである。我々の中でも少し歳のいった人たちは、1日に歩く歩数を計測するためにベルトに装着する機械式の歩数計を覚えておられるであろう。今日では、Apple Watch の様なデジタルウェアラブル機器がその役目を担っている。

でも iPhone はどうであろうか? お気づきでない方もおられるかもしれないが、iPhone もまたフィットネス計測機器の一つであり、未だ Apple Watch を買っていない人には役に立つであろう。

歩数計測は iPhone に既に組み込まれており、M-series モーションコプロセッサと Health アプリを利用する。追加のサードパーティアプリは必要ではないが、それらのアプリは使い易さと有用な機能を付け加えてくれる。私は取り敢えずその内の二つを試してみた - 他のものももう直ぐ試すつもりだ。しかし、まずは、基本的な iPhone 機能を掘り下げてみよう。

歩数計測の準備をする

iPhone を歩数計にするには、少々の設定をいじらねばならないかもしれない。

最初に、あなたの身体測定値が正しく Health アプリに設定されていることを確かめる。身長はとりわけ大事な項目である。と言うのも、それは iPhone があなたの歩幅をより正確に計測することを可能にするからである。底部にある Browse をタップし、Body Measurements > Height > Add Data に行って自分の身長を入力する。

The steps to set your height in Health

Health の次には、Settings > Privacy > Motion & Fitness に行き、Fitness Tracking が有効になっていることを確認する。また、下記の様に並んだアプリの中でも Health を有効にしておく必要がある。試してみるサードパーティの歩数計アプリに対しても同じことをすること。

Enabling fitness tracking in iOS

これで Health アプリは歩数を計測する準備完了である! 毎日の歩数を手早く見られるようにするには、Health の中で歩数データを前面にそして中央に持ってくる。Health アプリの Summary 画面に行き、右上隅にある Edit をタップする。現れたリストの中で、Steps に対応する星印をタップする。Done をタップ。これで、歩数データは Summary 画面の中のよく使う項目の一つとして表示される。ここには、経時的な Steps の傾向も表示される。

Adding your step count to Summary

他に見やすさを改善しておいた方が良い項目としては、Exercise Minutes, Flights Climbed, そして Walking + Running Distance が挙げられる。こうやっておくと、これらの項目はカードとして Summary 画面に現れる。

Apple の Health アプリはきちんと働くので、サードパーティの歩数計は必ずしも必要ではないが、あなたのユーザー経験を色々な方法で強化する良いものがいくつか出されている。私のお気に入りのものを二つ挙げる:ActivityTracker Pedometer と Pedometer++ である。

ActivityTracker Pedometer

ActivityTracker Pedometer は無料であるが、一回限りの $4.99 の支払いで、追加の Pro 機能が使えるようになる。これはこの類のものの中では一番のお気に入りであるが (私が試したものは沢山ある)、それは主としてそれの、色彩豊かで、優雅で、創意に富んだ、そして使いやすインターフェースの故である。

ActivityTracker Pedometer のホーム画面は、その日の歩数と、あらかじめ設定した日毎の目標にどれだけ近いかを示すリングとを表示する。その下には、燃焼カロリー、エクササイズ時間、歩いた距離、そして登った階数が表示される。

更なるデータにもスワイプかタップでアクセス出来る。ホーム画面の上部をタップ、或いは右にスワイプすることで以前の日のものに繰っていくことが出来る。メインの歩数表示をタップすれば、Hourly Activity チャートが見られる。底部の日付ボタンをタップすれば Daily Activity チャートが - そしてその日のどのバーでもタップすればその日の時間データが見られる。

ActivityTracker Pedometer

追加の機能には Daily Reminder 通知、そして Today ウィジェットがある。また、Health アプリの過去のデータをインポートするアプションもあり、今後主として ActivityTracker Pedometer に依存する積りだったり、或いは古い Health データをサードパーティアプリの中に保存しておきたいという場合に使える。

ActivityTracker Pedometer は GPS に依存せず電池寿命を伸ばすので、そこが主なセールポイントとなっている。

もし Pro に行くのであれば、提供される追加機能には以下が含まれる:

Pedometer++

この無料の Pedometer++ は単純さが特長であり、私の好きな理由でもある。また、これには私が他の歩数計アプリでは見たことのない幾つかの機能が含まれる。

このアプリの主となるインターフェースは、日毎の歩数を示す大きなグラフである。その上にあるのは現在日の歩数と、歩いた距離と登った階数である。

Pedometer++

右上にあるリボン形のボタン経由で到達する Achievements セクションは、色々な目標を達成する手助けをする (連続継続日の様な)。これは、特徴的な達成バッジを持つ Apple Watch を持たない iPhone ユーザーには嬉しいものであろう。

左上の設定アイコンをタップすると、下記を含む色々な選択肢に出会える:

多少不満が残るのは、少々古臭いインターフェースのスタイル (黒のインターフェースではギラギラして見える) や、主画面の底部にある広告である (無料でダウンロード出来る歩数計アプリでは、避けがたいことであるのは理解出来るが)。この広告はアプリ内支払いで $1.99 を払えば無くせるが、私が見る限り余分に得られる機能は何もない。

iPhone 対 Apple Watch

前述したように、世の中には他にも数多くの歩数計測アプリが出回っている。もし、私の選択が皆さんに合わないと言うのであれば、App Store で "歩数計" で検索してみて、どんなものがあるのか感触を得てみて欲しい。ただ、気をつけて欲しいのは、押しの強い全画面広告を持つ、Facebook ログインを勧誘する、プレミアム機能を有効にするのに一時金では無く購読費用を要する、等々のアプリがあることである。

どのアプリを使うかにかかわらず、iPhone を歩数計測として使う鍵は、常にそれを身につけていることである。皆さんの腕に何時も縛りつけられている Apple Watch と違って、歩きに行こうと立ち上がった時、iPhone をソファーの上や職場の机の上に置いたまま出かけてしまうのはよくあり得る話である。従って、それを手にする習慣をつけよう。

私は iPhone を忘れやすいので、スマートウォッチが自分のフィットネス活動を正確に記録する唯一の現実的な選択肢である。もし Apple Watch を買う余裕があるのであれば、決断されることをお勧めする;それはより便利な健康記録機である (ついでに言うと、多くの iPhone 歩数計アプリの多くは Apple Watch 機能を有している)。

しかし、もし経済的に余裕はないとか、或いは iPhone をフィットネス記録に使うのに不便は感じていないというのであれば、Health アプリが十分にその役目を果たすであろうし、然もなくば、ActivityTracker Pedometer や Pedometer++ は異なるインターフェースを無料で提供する。

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Adam Engst

私が Larry Tesler と交わした最後の会話

Larry Tesler の逝去をお知らせしなければならないのは大きな悲しみだ。コンピュータ科学者の彼は、コピー&ペーストを発明した人物として一般に知られている。(または少なくとも、デジタルなテキストをある場所から別の場所へ移すというアイデアをこの特定の手法と名称に結びつけたのは彼の業績だ。) 私はこの事実を今になって知って、ますます悲しい気持ちが増した。なぜなら、私はコピー&ペーストがこの半世紀のテクノロジー的革新のうちで最も重要なものの一つだと考えているからだ。現実の世界の中で、私たちは自分が言ったりしたりすることを何度も何度も繰り返すことが多いものだ。だから、データを簡単に複製して更新できることは、生産性を高めるためにこの上なく強力な推進力となる。もしも私がこの事実を 1990 年代に、私と Tesler の間に交流があった時代に知っていたとしたら、彼に向かって直接感謝の言葉を述べる機会もあったろうにと思う。

Larry Tesler
Yahoo! Inc. による Larry Tesler の写真.CC BY 2.0 の下のライセンスによる

私たちはそれ以外にも多くの Larry Tesler によるテクノロジー的革新の恩恵を受けている。Xerox PARC で働いていた頃の Tesler は、(ユーザーインターフェイスの使い易さを推し進める努力の一環として)「ユーザーフレンドリー」という用語を生み出し、よく使われた頭字語 WYSIWYG (what you see is what you get、見た通りのものが結果に出る) の着想も彼から生まれた。いくつかの分野では、彼はソフトウェアはモードレスであるべきだという考え方の伝道者として最もよく知られていて、彼の自動車のナンバープレートには NO MODES という番号が記されていた。(モードレスなソフトウェアでは、あらゆるアクションが一貫していつでも利用可能な状態にあるはずだ。これに対してモーダルなソフトウェアではユーザーがいったん特定のモードに入ってからでないとアクションを実行できない。) 皆さんにはぜひ、New York TimesCult of Mac の追悼記事と、Twitter 上の Chris EspinosaMartin Haeberli による回想の言葉をお読み頂きたい。

1980 年に、Tesler は Xerox PARC の職を辞して Apple に移り、1997 年までそこで働いた。その間彼は Newton Group を率い、Apple の Chief Scientist となり、また AppleNet の副社長として Apple のインターネット戦略を開発し宣伝する仕事をした。私が彼とやり取りしたのは彼が Apple で働いていた時期の終わり近くで、当時彼も私も Net-Thinkers というプライベートなメーリングリストに参加して、Apple とインターネットに関係するさまざまの問題について議論していた。

思い返せば、物事はどうしてこうも大きく違ってしまったのだろうか。Apple の副社長がプライベートなメーリングリストに参加して自由に発言し、私のような単なるライターと会話していたのだから。(当時、TidBITS を出版する以外に、私の著書 Internet Starter Kit for Macintosh がおよそ 40 万部の売り上げを達成し、私は MacWEEK に「帝王には戦略がない」と題したコラム記事を書いて Apple の重役たちの機嫌を損ねたばかりだった。)

Larry Tesler の人物像を皆さんに感じて頂くために、ここに彼と私がその昔の 1997 年 2 月に Net-Thinkers メーリングリスト上で交わした電子メールの会話をそのまま転載したいと思う。思い返せば、それは彼が Apple を去ったよりそれほど前のことではなかった。ただ、私の電子メールのアーカイブをいくら探ししても、そのことの記録は見つからなかった。

Tesler が配置換えになるという報道について私が触れる

件名: Re: Internet changes at Apple
差出人: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
日付: February 21, 1997 at 1:40:50 PM EST
宛先: Multiple recipients of <net-thinkers@thumper.vmeng.com>

やあ、皆さん

Stephen Howard による MacWEEK の記事に次の言葉があるのに気付きました:

http://www.macweek.com/mw_1108/nw_exodus.html

Tevanian のソフトウェアエンジニアリンググループは Mac OS と Rhapsody、インタラクティブメディア、そしてインターネットを含む。インタラクティブメディアグループは従来の代表 Carlos Montalvo が引き続き運営するが、新たな組み合わせとなるインターネットとエンタープライズのセクションはまだ誰がボスになるか検討中だ。

Apple の Chief Scientist である Larry Tesler は、現在 Hancock が運営している新しい Technical Office に加わった。この、元インターネット部門の帝王は、もはや Apple のインターネット製品の開発には参加していない。

興味深い動きです。そうすると、いったい誰が Apple のインターネット部門の仕事を率いていくことになるのでしょうか?

cheers... -Adam

批判されたと受け取って憤慨し、Larry が防衛的に反応する

件名: Re: Internet changes at Apple
差出人: Larry Tesler <cs@apple.com>
日付: February 22, 1997 at 5:27:47 PM EST
宛先: Multiple recipients of <net-thinkers@thumper.vmeng.com>

1997/02/22, 12:09 PM -0800, Adam C. Engst のメール:

この状況では、ネットワーキングのコミュニティーを知っている人と、インターネットのコミュニティーを知っている人との間に実際かなりの違いがあると考えてしまいます。ネットワーキングとはハイエンドの技術的なものであり、もちろんそれは素晴らしいものなのですが、現在の Apple にとってのインターネットに重要なものではありません。Apple は、電気回線にではなく、人々に集中するべきです。

Garry は、インターネットについて知っていることを示してみせたことがありますし、さらには (何たること!) 電子メールの討論グループや Usenet にさえ参加できる人です。

Garry は経験を積んだ経営者でもありますし、開発者の間でも、また企業顧客の間でも、非常に人気ある人物です。

非難モード開始。

報道の虚偽の記載とは違って (こんなことが起こったのは初めてだ)、今日この今もまだ、私は Apple のれっきとしたインターネット部門責任者だ。でも、皆さんの中の幾人かと同じように、私にも在職期間の終わりが近づきつつある。私が ARPAnet ユーザーになったより後に生まれたくせに、私とは狭い話題でしか会話したことがないのに、私が下してきた Apple の決断や私には権限のなかった Apple の決断についてこれっぽっちも知らないのに、私のインターネットの知識について知ったような話をする、そんな連中はもううんざりだ。

確かに、私は君や Richard Ford や Chuck Shotton がインターネットについて何を知っているかなんて知らない。でも、その反対もまた真実だ。私たちはそれぞれに、インターネットの広大さについてごく浅い理解しかしておらず、自分たちが最も興味ある部分のみについて深い理解をしている。

私がインターネットを知っているかって? AppleNet ウェブサイトは実際役に立つ。私のグループはこれを最新に保つためになかなか良い仕事をしている。それに、私の本業とは全く別に、私は個人的にネットを多用している。ネットからたくさん買い物をするし、いくつもの趣味と、友人関係と、資産をネット上で管理している。

十数個ものインターネットのメーリングリストをフォローしているし、そのほとんどにポストしている。しばらくの間、そのメーリングリストの一つを運営さえしていた。今は自分が運営するもう一つ別のものを始める準備をしているところだ。

私が 2 年前に始めたメーリングリストは今や 80 個のリストに成長し、2 万人の「コンシューマ」購読者がいる。これらのメーリングリストの主題は、この Net-Thinkers リストと違って、インターネットではなく、プロトコルでもなく、ましてや電気回線でもない。これらのリストの主題は人々と、人々が情熱を注いでいる趣味だ。

私はスパムメール送信者たち、著作権侵害者たち、いがみ合うリストオーナーたち、不在になったリストオーナーたち、残忍な管理担当者たち、訓練を受けていない運営担当者たち、ロード過多のハードウェア、その他ありとあらゆる事柄、80 個ものサイバースペース・コミュニティーと、互いに共通したところは何もなくそれぞれ自分のごく狭い話題の中だけに過剰なまでの関心を持った人々がいれば避け得ない膨大な事柄に、対処しなければならなかった。それでも私はそれが大好きだ。ホモ・サピエンスの最初の種族があまりにも大きくなり過ぎて群れを分かち、互いに声の届かないほど離れた場所にさまよい出て以来ずっと、インターネットこそ人類が憧れ望んできたものだからだ。

でも、私がこんな風に防衛的になったからといって、公開のメーリングリストで私を批判するのは止めないでもらいたい。私はたいていの批判を面白おかしい気持ちで受け取るけれど、時には、辛辣なコメントから私が学べることもある。それに、自分の名前が文字になって出ているのを見るのはいつでも楽しいことだ。たとえそれが、指名手配のポスターであっても、あるいは追悼記事であったとしても。

非難モード終了。

幸いにも、Adam、君はとても感じのいい人だから、私もそんなに長く君に腹を立てたままでいるのは難しいです。

Larry

私は彼を批判していた訳ではないと説明し、それから (ちょっとだけ) 彼を批判する

件名: Re: Internet changes at Apple
差出人: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
日付: February 22, 1997 at 7:28:42 PM EST
宛先: Multiple recipients of <net-thinkers@thumper.vmeng.com>

1997/02/22, 2:27 PM -0800, Larry Tesler のメール:

報道の虚偽の記載とは違って (こんなことが起こったのは初めてだ)、今日この今もまだ、私は Apple のれっきとしたインターネット部門責任者だ。

うむ。あなたの配置換えについての報道は、大幅に誇張されていたのですね。🙂

[...Larry のインターネット利用に関する個人的説明は簡潔を期して割愛させて頂きます...]

まさにおっしゃる通り!

あなたが建設的な批判をお望みなら、Larry、言わせて頂きますが、このことを今までおっしゃらなかったのはあなたです。このメーリングリストにいる人たちの大多数がどの程度あなたを個人的に知っているのかは知りませんが、私の推測ではたいていの人たちが、私と同じように、あなたにお会いしたこともなければ、あなたのお仕事のこと以外であなたとやり取りをしたこともないでしょう。(そして、あなたが個人的にインターネットをどう利用しておられるかということはその範疇の中です。) このメーリングリストの過去のメッセージを繰ってみれば、私の目につく名前の多くは私が参加しているリストの常連か、私が Macworld Expo で毎回会う人か、Mac のインターネット関係のイベントで会ったことのある人です。私たちは皆、他の人たちが何をしているかを、少なくともある程度は知っています。

けれどもあなたについては、あなたのメッセージを読むまでは、私はほとんど何も知りませんでした。あなたは肩書きを持っておられるし、あなたの名前は Apple 関係の記事に頻繁に登場します。けれどもその二つの事実のどちらも、インターネットの観点から重大なことは何も語っていません。ユーザーとしても管理者としても経験がおありになることは大きいですが、まだ欠けている主要な点とは、あなたにショウの際に開かれるインターネット・パーティーに来て頂いて、直接 (私にも、まだその機会が持てないでいる他の誰とでも) 会って頂くことです。これは決して企業の PR の話ではありません。インターネット・パーティーというのは大体において、ネットギークたちが集まって、ネットギークが最も得意とすることをする、つまり人脈を作って、大言壮語をぶつけ合い、その両者を組み合わせることでクールに育つ可能性を秘めたプロジェクトを生み出そうとするところなのです。

インターネットは、人々についての話です。たとえ直接に面と向かって会えなくても、友人たちのネットワークは遠くあまねく広がります。私の理論は、この世界でならいくら大勢の友人を持っても多過ぎはしないということです。

でも、私がこんな風に防衛的になったからといって、公開のメーリングリストで私を批判するのは止めないでもらいたい。私はたいていの批判を面白おかしい気持ちで受け取るけれど、時には、辛辣なコメントから私が学べることもある。それに、自分の名前が文字になって出ているのを見るのはいつでも楽しいことだ。たとえそれが、指名手配のポスターであっても、あるいは追悼記事であったとしても。

つまるところ、あなたも私も根本は同じ側にいるのではないでしょうか。細かい点では異なる視点からものを見ていますが、それはただ、私たちにはお互いに相手から学ぶ点があるということでしょう。ここのようなメーリングリストで私が最も興味深いと思うのは、議論が始まれば、それが私に新しいアイデアや、問題点を見据えるための新たな方法を与えてくれるかもしれないことです。

幸いにも、Adam、君はとても感じのいい人だから、私もそんなに長く君に腹を立てたままでいるのは難しいです。

🙂 ありがとうございます、Larry。私はあなたがこのメーリングリストを読んでおられることを知っていますし、あなたが週末に読んでおられることも知っています。そして、あなたがインターネット部門の中心人物の地位から辞任するのではないかという報道がたとえ正しくても、あなたが今すぐ手仕舞いなさるなどと思ったことはありません。事実を言わせて頂ければ、私はあなたを批判してなどいませんし (感情に訴えた攻撃はネットにはふさわしくないです)、私が書いたことをもう一度読んで頂けば、そもそも私は何かを批判してさえいなかったことがお分かりになると思います。私はただ単に、もしも Apple が新しいインターネット部門のボスを探しているのならばどんな人を探すべきかという点について自分の意見を述べただけです。私の考えではたとえあなたがご自分の今後についてどのような決断をなさろうとも、私が述べたことは依然として事実を言い当てていると思います。(もちろん、インターネット部門のボスを終身雇用の地位にすると Apple が決断しなければの話ですが。🙂

cheers... -Adam

Larry が防衛的な態度から戻り、さらなるギーク経歴を明かす

件名: Re: Internet changes at Apple
差出人: Larry Tesler <cs@apple.com>
日付: February 23, 1997 at 3:03:26 AM EST
宛先: Multiple recipients of <net-thinkers@thumper.vmeng.com>

Adam、

あなたの意図を明確化して下さってありがとうございます。誰にでも言えることですが、防衛的な気持ちになった人の言うことは、たいていは正当な理由のない思い込みです。

私がギークのパーティーでもっと時間を過ごした方がいいというのは本当です。良い助言をありがとう。

誤解のないように言っておきますが、私は今もインターネット部門の帝王です。それは他に担当する人がいないからですが、でもたぶんこの状態はもうそれほど長くは続きません。現在進行中の再編が終了すれば、ちゃんと広報担当者が公表するはずで、私は広報担当者になるつもりはありません。言い換えれば、この計画について新聞記事に書かれたことは間違っていませんでしたが、ただタイミングだけが違っていたのです。

私は決して、ただ面白がってメーリングリストを始めた訳ではありません。いや、まあ、大体は面白かったからですが。でも、私は本当に、Apple がこのサイトをもとに収益のあがるビジネスを始めることができると考えていたのです。ところが Apple の財務業績はついにこのサイトに投資できるだけの資金を残すことができず、それについて話をしても、Apple のビジネスに寄与するところはこれっぽっちもありませんでした。話をすればインターネットの人々にもっと私を知ってもらえたかもしれませんが、でも私の職務はギーク仲間に自分自身を売ることではなくて、顧客に Mac を売ることです。ただ、この一年に私が学んだことの一つとして、後者をするためには、まず前者をすることが必要なのかもしれません。

こういうことを私に考えさせてくださり、ありがとうございます。個人的成長の場として、良い機会となりました。16 年間 Apple で働いて、51 年間この地球上にいても、まだまだたくさん学ぶことがあるということです。

そうそう、自分のギーク資格を白状するついでに...

ここに HTML と呼ばれる言語があります。それは元を辿れば SGML に基づいていて、それが ... に基づいていて、と順々に辿れば、ごく初期のマークアップ言語、例えば "Runoff" とか "PUB" とかいったものに行き着きます。テキストの中に埋め込まれるタグの拡張可能なセットに初めて対応したのが PUB でした。'70 年代の多くの大学院生たちが博士論文を書くのに PUB を使ったものでした。PUB はまた、TeX に、そして Scribe に直結する原型でもあります。私は Stanford で働いていた 1971 年に、独力で PUB を設計して実装し、他の大学にも FTP で配布したのです。

私はまた、Xerox PARC で働いていた 1976 年ごろに Smalltalk ブラウザを設計して実装しました。これは私の知る限りブラウザと呼ばれた最初のウィジェットであり、ペインに分割されたウィンドウを持っていました。

だから、マークアップタグ、フレーム、そして“ブラウザ”という言葉に関して、ウェブは私に借りがあるのです。

私はユーザーインターフェイスの人であって、プロトコルの人ではありません。もちろん私はいくつかのプロトコルを実装してきました。一つは 1977 年ごろに Smalltalk のために作った遠隔メソッド呼び出しのインターフェイスで、もう一つは 1978 年ごろに作った Commodore Pet から BBS への信頼できるファイル転送のためのものです。けれどもプロトコルは私の得意技ではありません。

実際、私は 1980 年に Apple に移って以来、仕事でコード書きをしたのはほんの少数の機会があったのみです。プログラミングをするのは主に休暇中だけで、しかもたいていの休暇中にはもっと他のことをしたいです。

“私のことはこれくらいにして”と世に言う通り、この辺で私は Net-Thinkers の皆さんのアイデアを読みつつ Apple のインターネット部門のより良い将来に考えを巡らす仕事に戻りましょう。

では、パーティーで会いましょう。

Larry

私がスレッドを畳み、議論を別の方向に向ける

件名: Re: Internet changes at Apple
差出人: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
日付: February 23, 1997 at 1:16:52 PM EST
宛先: Multiple recipients of <net-thinkers@thumper.vmeng.com>

1997/02/23, 12:03 AM -0800, Larry Tesler のメール:

誤解のないように言っておきますが、私は今もインターネット部門の帝王です。それは他に担当する人がいないからですが、でもたぶんこの状態はもうそれほど長くは続きません。現在進行中の再編が終了すれば、ちゃんと広報担当者が公表するはずで、私は広報担当者になるつもりはありません。言い換えれば、この計画について新聞記事に書かれたことは間違っていませんでしたが、ただタイミングだけが違っていたのです。

そういうことならば、私たちは皆、あなたが次にどんな方面に進まれるのか、楽しみに待ちたいと思っています。それにまた、Apple が次にどんな人を探すべきかという議論も、どうやらまるきり正当な理由のない思い込みという訳ではなかったようですね。

Apple のインターネット部門に、(ただ単に決断を下したり、ゴーサインが出れば物事をきちんと実行したりする人がいるだけでなく) 広報担当者がいてくれたならばそれは何を意味するだろうか、と私は考えざるを得ません。私の最初の直感は、私たちが考えているようなタイプのことに当てはまらない人が担当になるならそれはあまり良くないなあ、というものでしたが、ただ、その時点でその人が経験を積んだ経営者である必要はないと思います。実際のところ、よく考え直してみれば、目に見える度合いが高く、知識の豊富な広報の人がいて、その人が Apple のインターネット関連の努力に通じていると信頼できるのなら、それは必ずしも悪いことではないでしょう。もちろん、その場合にはその人と Apple 経営陣との間にしっかりした本物のコミュニケーションが存在していなければなりません。そうでなければその人は何も意味あることをしていないと感じて、あっという間にその仕事に燃え尽きてしまうでしょうから。

こういう風に考えてみてはいかがでしょうか。アメリカ合衆国の大統領は、理論的にはあらゆる驚くべき特質を具現化して備えています。残念ながら、そうした特質の一つとして選挙運動のスキルがとてつもなく優れていることが含まれていなければなりません。けれどもそれは、大統領その人自身がどれほど優れた人物かということを現実には反映していません。多くの人たちは、選挙運動を大統領の職務から切り離した方が理に適っていると指摘してきました。素晴らしい大統領であっても、選挙運動の長旅ではとてもまずい姿を見せるかもしれません。もしそうなら、それは私たちにとって良くないことです。

こういうことを私に考えさせてくださり、ありがとうございます。個人的成長の場として、良い機会となりました。16 年間 Apple で働いて、51 年間この地球上にいても、まだまだたくさん学ぶことがあるということです。

悩みの種ですよね? 私はまだ 29 歳ですが、例えば、自分が 22 歳で TidBITS を始めた時に比べれば遥かに多くのことを知っていると自覚しています。でも、あの当時の私が自分はいつでも答が分かっていると勝手に思っていたのが思い出されます。それに比べて今の私が知っているのは、どんな問題にも複数の答があるということです。腹立たしいことこの上ないです。

だから、マークアップタグ、フレーム、そして“ブラウザ”という言葉に関して、ウェブは私に借りがあるのです。

それはすごい!

実際、私は 1980 年に Apple に移って以来、仕事でコード書きをしたのはほんの少数の機会があったのみです。プログラミングをするのは主に休暇中だけで、しかもたいていの休暇中にはもっと他のことをしたいです。

いろいろな意味で、残念なことに思えます。私は思うのですが、多くの会社は、経営陣の職務と対等な立場にある技術陣の職務が存在していないことで会社として不利益を被っているのではないでしょうか。偉大なプログラマーたちの多くが、会社の中で昇進し続ける道がそれしかないという理由で、経営の仕事に吸い込まれてしまうのです。

“私のことはこれくらいにして”と世に言う通り、この辺で私は Net-Thinkers の皆さんのアイデアを読みつつ Apple のインターネット部門のより良い将来に考えを巡らす仕事に戻りましょう。

それならば、メーリングリストをお読みのすべての皆さんに質問です。皆さんは、Apple のインターネット部門の将来が、Apple 自体か、それとも外部の開発者たちか、どちらにどの程度依存しているとお思いでしょうか? このことを、じっくり時間をかけて考えてみてください。Macintosh の上でインターネットを使うことの将来は、Apple のインターネット部門の将来とは大きくかけ離れたものになるかもしれません。両者は過去には同じものだったかもしれませんが。

では、パーティーで会いましょう。

約束ですよ。

cheers... -Adam

追記

さて、Larry Tesler、あなたが今どこにいらっしゃるのだとしても、あなたのお名前がこうして文字になったことを、面白がってくださっていると願います。たとえあなたのおっしゃった通り、これが追悼記事であるとしても。コピー&ペーストと、NO MODES と、HTML の原型たる PUB と、ブラウザと、そして好人物でいらっしゃることに、感謝の気持ちをお捧げします。ギークパーティーの場でご一緒に時を過ごせる機会があったらなあと思わずにはいられません。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

訳: Mark Nagata   

BusyCal 3.9

BusyCal 3.9

BusyMac が BusyCal 3.9 をリリースして、ある時間帯だけアラームが出るのを延期できる新しい Do Not Disturb モードを追加した。また、このカレンダーユーティリティは Notification Center アラートを (長いクリックで) スヌーズするオプションを追加し、Alarm ウィンドウのデザインとレイアウトを更新してアラームの詳細情報を表示する際にスペースを有効利用できるようにし、アラームがイベントの中にクリック可能な URL リンクを表示できるようにし、複数日にわたるイベントを継続期間に応じたバナーとして表示する機能を追加し、不要なカレンダーを隠したり見えるようにしたりできるようにし、日付範囲に関する自然言語解析を改良し、アプリを切り替えてもメニューバーのクイック入力が入力されたテキストを維持できるようにした。(BusyMac からも Mac App Store からも新規購入 $49.99、月額 $9.99 の Setapp Mac アプリ購読サービスから利用可能、無料アップデート、22.9 MB、リリースノート、macOS 10.11+)

BusyCal 3.9 の使用体験を話し合おう

DaisyDisk 4.9

DaisyDisk 4.9

Software Ambience が DaisyDisk のバージョン 4.9 をリリースした。ディスク容量をビジュアルに分解表示して不要なファイルを見つけて削除しやすくするためのユーティリティだ。(2020 年 2 月 17 日の記事“iCloud、Google、Dropbox で空き容量不足にどう対処するか”で簡潔に触れられている。) 今回のアップデートは macOS 10.15 Catalina で Data ボリューム、Virtual Memory ボリューム、(マウントされていれば) Recovery および Preboot ボリュームの中の firmlink されていない項目をスキャン報告に含めることで隠れた容量の発見を改善した。また、安全ルールを更新して /private フォルダの中の重要でない一部のファイルを削除できるようにするとともに、FUSE マウントされたドライブへの対応を追加している。(DaisyDisk ウェブサイトからも Mac App Store からも $9.99、無料アップデート、6.1 MB、リリースノート、macOS 10.10+)

DaisyDisk 4.9 の使用体験を話し合おう

ChronoSync 4.9.9 and ChronoAgent 1.9.7

ChronoSync 4.9.9 と ChronoAgent 1.9.7

Econ Technologies が ChronoSync 4.9.9ChronoAgent 1.9.7 をリリースして、この同期およびバックアップ用ツールとそのヘルパーアプリでディスクイメージをマウントする際の信頼性と互換性を改善した。また、ChronoSync は OAuth コードを書き直して Google の最新の認証要件に適合するようにし、Background Scheduler に他のインスタンスが走っているか否かを調べるロジックを追加し、ボリュームのマウントに対応していない接続ではボリュームをアンマウントする試みをしないようにし、AWS S3 サーバが利用可能か否かをテストする際のエラーログを改良している。(ChronoSync は新規購入 $49.99、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、67.1 MB、リリースノート、macOS 10.11+。ChronoAgent は新規購入 $14.99、26.6 MB、 リリースノート、macOS 10.10+)

ChronoSync 4.9.9 と ChronoAgent 1.9.7 の使用体験を話し合おう

Tinderbox 8.5

Tinderbox 8.5

Eastgate Systems が Tinderbox 8.5 をリリースした。新機能を追加し、速度を向上させ、バグを修正した、かなり大きなアップデートだ。このノート取りアシスタントおよび情報マネージャは今回 Crosstabs 機能を装備した。選択した 2 つの属性を基準に書類同士の間で関連を調べられるようにするものだ。その際データが表の形に表示され、この機能は個々のノートを表示することも、またスプレッドシート、統計パッケージ、あるいはワードプロセッサに書き出すこともできる。

今回のアップデートではまた、Tinderbox マップに地理的地図装飾を追加する機能に対応し、複数個の書類でプロトタイプのノートを共有できるようにし、ノートを Tinderbox 表示からドラッグして他の Tinderbox 書類の中へ、他のアプリケーションへ、あるいは Desktop へドロップする機能に対応し、Dark モード対応を改良し、macOS 10.15 Catalina でキー属性の表を変更する際に起こったクラッシュを解消し、DEVONthink 3 からの読み込みをカスタマイズできるようにした。(新規購入 $249、TidBITS 会員には 25 パーセント割引、38.4 MB、リリースノート、 macOS 10.10+)

Tinderbox 8.5 の使用体験を話し合おう

ExtraBITS

訳: Mark Nagata   

Apple は iOS をアドウェアにしようとしているのか?

四半期ごとに Apple は Services ビジネス部門への依存度を増しつつあるが、Services からの収益を伸ばすことに集中するあまり、それが iOS の使い勝手に悪影響を及ぼすようになっていないだろうか? この疑問を持ち出したのが開発者 Steve Streza だ。フレッシュにインストールしたばかりの iOS 13 と新規に作成した iCloud アカウントで、彼は Apple の内蔵アプリを分析した。

Streza が見つけたのは Apple のサービス、つまり Apple Arcade、Apple Card、Apple Music、Apple News+、そして Apple TV+ の、いつ果てるとも知らない広告の集中砲火であった。「もしもこれらのサービスを購読していなければ、現在使っているアプリの中で、あるいはデフォルトでオンになっている push 通知で、ひっきりなしにその広告を見せられることになる」と Steza は語った。取り去ることのできない広告で一杯であることから、彼は iOS 13 が「アドウェア」であるとさえ言ってのけた。

私も先月このことについて記事“なぜ Apple TV は絶えず広告を出し続けるのか?”(2020 年 1 月 16 日) で、Apple がサービスに集中し過ぎてユーザーの使い勝手が悪くなっているという趣旨のことを書いた。ユーザーの使い勝手が良いことこそ長年来の Apple の強みであったことを考えれば、サービスをプッシュしようとするこの傾向は、もしもユーザーたちの気持ちをそっぽ向かせるようなことになれば思わぬしっぺ返しを食らうことになるかもしれない。

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