多くの人たちと同じように私たちは今週の大半を SARS-CoV-2 コロナウイルス蔓延と COVID-19 症例増加のニュースを見ながら過ごした。TidBITS 記事もそれに従うものが多く、まず COVID-19 について全般的に述べた記事と、Apple によるこの流行への対応を伝える記事、それに Apple が WWDC をオンラインのイベントにしようとしているというニュースがある。加えて、思いがけなく自宅で仕事をしなければならなくなった人たちのために、Take Control Books が無料の Take Control of Working from Home Temporarily を出版した。楽しいことをして時を過ごしたいと思っている人たちのためには、新しい寄稿者 Connie Laubenthal が Mac 用のクロスワードアプリ Black Ink をレビューする。それから、Julio Ojeda-Zapata が macOS 内蔵の機能やいろいろなサードパーティのアプリを使ってウィンドウの位置決めを自動化するやり方を検討する。今週注目すべき Mac アプリのリリースは Tinderbox 8.6、CorelDRAW 2020、SoundSource 4.2.2、それに VMware Fusion 11.5.2 だ。
SARS-CoV-2 コロナウイルスの蔓延は、多くの人たちに自宅で仕事をせざるを得ないようにした。社会的距離戦略を促進して、感染率を失速させるためだ。自宅で仕事をするというのは魅力的に聞こえるかもしれないが、それと同時に一連の難題をも伴う。それらの難題に対処するお役に立てないかと考えた Take Control Books のわが友人たちが、構想を練り上げ扱う話題の草稿を作り、それをもとに Glenn Fleishman が新しい、無料の本 Take Control of Working from Home Temporarily を書き上げた。
もちろん、この発表の裏に隠されているのは Apple が San Jose での開催を予定していた物理的な Worldwide Developers Conference が Google が I/O をキャンセル し Facebook が F8 をキャンセルしたのと同じようにキャンセルされたという事実だ。これら 3 社はいずれもオンラインでセッションやトレーニングを提供するけれども、Google と Facebook の発表にどこか悲観的な調子が感じられたのとは違って、Apple はこのことがあたかも素晴らしい成功であるかのような印象を与えることに成功した。
実際、それは成功に終わるかもしれない。これまで WWDC に直接参加できたのはたった 6000 人程度の開発者に過ぎず、彼らは抽選の結果 $1599 のチケットを購入することができていた。つまり、Apple 開発者たちの大多数が参加の機会を得られていなかったということだ。ここで「大多数」と言ったのは本当にそういう意味で、何しろ Apple によれば全世界に 2,300 万人の開発者たちがいるというのだから。抽選に応募した開発者たちの人数を Apple が公表したことはないが、6000 枚のチケットではとうてい需要を満たすことなどできなかったことは確実だろう。
WWDC の会場で人々が直接会って話をするという側面が消え去ることで、カンファレンス周辺のビジネスは大きな打撃を受ける。Apple によれば、San Jose 現地の各種団体に対して収益の喪失を埋め合わせるために Apple は百万ドルを委託するつもりだという。Facebook もまた、San Jose の各種団体に $500,000 の寄贈をするという。
World Health Organization によれば、この病気の公式名は コロナウィルス病 で、省略形では COVID-19 である。この病気の原因となっているウィルスは severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 略して SARS-CoV-2 と名付けられている。[SARS: 重症急性呼吸器症候群]
Apple と WWDC
COVID-19 がどの様に Apple に影響を与えているかについては、過去数ヶ月の間にかなりの量の報道がなされている。現在まで、我々はこれ迄これらの問題を取り上げてこなかったが、それは Apple だけの問題ではないし、多くのユーザーに影響を及ぼすものでもなく、誰かが何かを出来るというわけでもなく、そして内輪ネタだけというのもあったからである。
出版者は誰か? New York Times, Atlantic, そして Washington Post と言った大手のメディアは質の高い報道をし、そしてファクトチェッカーも擁している。もしそのサイトについてこれ迄聞いたことがなければ、それは健康や科学に焦点を当てている様に見えますか?
その著者はどんな資格を有しているか? 世の中には、沢山のグラフを持ち分別のあることを言っている様に見えるものを流布する注目を集める Medium ポスト(ここは誰でも投稿出来る) もあるが、その著者はマーケティングの人間である。彼の分析は間違っていないかもしれないが、信用するのは医療関係者、当該分野の科学者、そしてその他の専門家とすべきである。
定評ある出版物への参照はあるか? これは Web である - 元の情報源にリンクを張れない理由は何もない。もしおかしいと思えたら ("New England Journal of Medicine が本当にコロナウィルス感染は 5G 無線が原因だと仄めかすであろうか?")、参照を辿ればそれらが正当に使われていることを確かめられるし、そうすべきである。
COVID-19 パンデミックの患者数が中国以外で急増している中、Apple は CEO Tim Cook からの声明を発表し、Apple が何をしているのかを説明した。同社の行動は全て前向きで、地球上で最も金持ちの会社の一つがなすべき類のものそのものである。そこに含まれるのは:
店舗の休業: 中華圏以外の Apple 直営店を 3 月 27 日まで休業する。通常、百万人を超える人々が毎日何処かの Apple 小売店舗を訪れることを考えると、この前例のない動きは COVID-19 の拡大を遅らせることに役立つであろう。Apple のオンラインストアは引き続き営業する。Apple が世界のどこかで、その場所での COVID-19 感染率に応じて、この休業を延長するかどうかは興味のある話である。
寄付: Apple は、COVID-19 の患者の治療及び地域経済に及ぼす影響を和らげるため世界中で $15 million の寄付を約束した。Apple はまた、世界中での COVID-19 取り組みを支援する従業員の寄付に対して1対2にあたる金額を寄付する。
従業員プログラム: 中華圏を除く全世界の Apple の事業所はすべて柔軟な働き方に体制を移行している。多くの従業員は、リモートワークで対応する。オンサイトで働くことを求められる従業員は、健康検査と検温を受ける。時給ベースの従業員は引き続き報酬を受け取ることが出来、そして同社は休暇規約を拡張し、COVID-19 に由来する当人や家族の健康状態に対応する。全ての Apple 施設では、徹底的な清掃が実施される。
Apple News: News アプリでは、サイドバーに COVID-19 特集セクションが設けられ、信頼出来るニュースソースからの記事が見られる。一般論として、私はこの追加を支持するが、読みすぎて事態についてくよくよと心配する羽目に陥らないよう警告しておきたい。
WWDC: "Apple、WWDC をオンラインへ完全移行" (13 March 2020) で報じた様に、Apple は Worldwide Developer Conference への直接参加の様態を中止し、代わりに新しいオンラインフォーマットを作り出した。これにより世界中にいる 23 百万人を超す Apple 開発者が一堂に会する道が開ける。
Apple Card COVID-19 顧客支援プログラム: このパンデミックで経済的に打撃を受けた人達は、Wallet から Messages で Apple Card Support に (... を、それから Messages ボタンをタップする) "Customer Assistance Program に申し込みたい" と告げる。こうすることで、利息課金無しで3月分の支払いを先延ばしさせてくれる。
Black Ink は、Red Sweater Software が出している Mac で使うクロスワードパズルのアプリだ。Across Lite フォーマットの (通常は拡張子 .puz を持つ) ものならばどんなクロスワードパズルにでもアクセスできる。提供されるデフォルトの供給源は Wall Street Journal のクロスワード、Chronicle of Higher Education、New York Times Premium Crossword、American Values Club だ。
今挙げたうち最後の 2 つは購読を要する。New York Times は月額 $6.95、American Values Club は月額 $20 だ。Red Sweater は、明確な説明を付けて 、追加のパズルを得る方法 (File > Open Web Puzzle > Get More Puzzles) と、有料アクセスの壁があるか否かが分かるようにしている。また、あなたが自分でウェブからダウンロードしたり電子メールで受け取ったりした Across Lite フォーマットのパズルを開くオプションもある。
クロスワード愛好家のために、Black Ink はさまざまの便利な機能を提供する。まず一つ目に、パズルのカギの答を文字レベル、単語レベル、あるいはパズル全体レベルで、チェックする機能 (Solution > Check) がある。私がいつもするやり方は、まずヨコのカギを順々に解いて、チェック機能を使って間違った答を見つけ、それから間違った答を削除したり訂正したりするというものだ。間違った答は文字ボックスの中に赤い "x" 印で示される。
Black Ink では、あなたがどの単語をチェックしたかをパズルが記憶している。なので、たとえあなたが間違った答を消しても、過去にチェックを受けたことのあるボックスにあなたが別の文字を入力すれば、その文字が再チェックされる。もしその文字が正しければ、ボックスの中に緑色のチェックマークが付く。最初のうちはこの機能に当惑してしまうかもしれない。なぜなら、チェックした時点で何も文字がなかったボックスには、現時点でそこに文字があろうとなかろうと赤い X と緑色のチェックマークのいずれも表示されないからだ。言い換えれば、タテの答の中の 1 つの文字だけに緑色のチェックマークが示されてそれが正しい文字だと分かっても、その単語のそれ以外の文字はまだチェックされていないので正しいかどうか分からないということがあり得る。でも、これが Black Ink のやり方だと理解できれば、もう問題ではなくなるだろう。
留意しておくべきこととして、パズルの供給源を一つ開くと、そこから取り寄せたその日のパズルが開く。けれどもその後でまた同じ供給源からパズルを開くと、その前日のパズルが届く。抜かした日の分のパズルも、この機能を利用して開くことができる。New York Times と Wall Street Journal のクロスワードはいずれも月曜日のパズルが非常に易しく、週の中で日ごとにだんだん難しくなり、土曜日に一番難しいパズルになるように作られている。なので、ごくたまにしかパズルをしないしできるだけ易しいパズルが欲しいと思えば、月曜日のパズルを狙うのが賢明かもしれない。難しさのレベルを最適化するためにパズルの供給源を選ぶこともできるし (Red Sweater ウェブサイトには他のいろいろな選択肢を紹介した素敵なガイドのページがある)、同じ供給源から週を通じて易しいものから難しいものへと入手し続けてもよい。
全体的に見て、Black Ink は使いやすく、初心者から上級者までどんなパズラーにも向いているが、それは主に Reveal 機能のお陰だ。既に New York Times を購読している人には、紙面のクロスワードパズルを Mac の上でデジタルに解ける素敵な手段となる。
Black Ink は 14 日間のみ全機能を無料で使うことができるが、その期間が過ぎた後に全機能のロックを外すには $29.95 支払う必要が生じる。高度な機能があることを考えれば、日常的に使う人には妥当な価格に思える。私は根っからのクロスワードパズラーなので、このアプリのファンだ。
Connie Laubenthal は引退した医学研究所科学者だ。彼女はかつて米国内科学会 (ACP、American College of Physicians) で Medical Laboratory Evaluation プログラムの Director を務めたことがあり、ACP Services の Executive Vice President であったこともある。彼女は、趣味としてクロスワードパズルを楽しんでいる。
いずれにしても、これを使って Mac のウィンドウをリサイズしてスクリーンの左半分、右半分、上半分、下半分、あるいは4分の1、あるいは3分の1や3分の2、その他を占めるようにでき、いずれも決してフルスクリーンモードにはならない。たいていの場合、これが私の好みにあっている。なぜなら Dock とメニューバーが常に見えているからだ。複数個のディスプレイがある場合にには、Magnet は Next Display と Previous Display のコマンドも用意していてウィンドウをスクリーンからスクリーンへと移すことができる。
私はこの機能を使って、それぞれ横幅を指定してウィンドウをスクリーンの中央に置くプリセットをいくつか作った。ウェブをブラウズする際には横幅を狭く、他の人たちとの共同作業で Google Doc を使っていて右側にチームのコメントを表示させる余地を確保したい場合には横幅を広くする。また、スクリーンの右側や左側の3分の2を占めるようにウィンドウを位置決めするプリセットも作っておいた。
それからまた、Moom を使って複数個のウィンドウを一度に位置替えすることもできる。私がよく使うのは、幅広の Google Chrome ウィンドウを左側に、幅の狭い Google Chrome ウィンドウを右側に並べる配置だ。セットアップは簡単で、まず 2 つの Chrome ウィンドウを手動で、望みの配置に並べておく。それから、Moom メニューで Save Window Layout Snapshot を選べばよい。そうすれば、スクリーン上のどこにでも 2 つの Chrome ウィンドウがある状態でそのメニュー項目を選べば、即座にその 2 つの Chrome ウィンドウが望みの配置に並ぶ。これとは別に、2 つの Chrome ウィンドウを同じ大きさで左右に並べるプリセットも作っておいた。
BetterTouchTool ($6.50): Apple トラックパッドと MacBook Pro ラップトップの Touch Bar を強化するユーティリティとして最もよく知られているが、BetterTouchTool もウィンドウのスナップ、リサイズ、移動制御を提供する。これは月額 $9.99 のアプリ購読サービス Setapp を通じても利用できる。
Corel が CorelDRAW 2020 をリリースした。このベクターイラストレーションアプリのメジャーなアップグレードで、新たに AI 駆動のツールと拡張されたコラボレーション機能を搭載している。今回のリリースでは AI 補助付きの PowerTRACE 機能を更新してトレースする際のビットマップの品質を向上させ、画像を拡大する際の AI に基づくアップサンプリングのオプションを導入し、いろいろのアーティストやジャンルのテクニックを取り入れて新たに AI で強化された Art Style 効果のプリセットを追加し、Mask Transform ツールを改良して一つのマスクの中でピクセルごとの変換を適用できるようにし、また前バージョンに比べてパフォーマンスを最大 6 倍向上させている。その他の新機能としてはベクターフェード、内側のシャドーツール、JPEG アーチファクトの除去、OpenType バリアブルフォント対応、コメントインスペクターなどがある。
Mac 用 CorelDRAW Graphics Suite 2020 の価格は、恒久ライセンスが $499、年額払いの購読が $249 だ。CorelDRAW Graphics Suite 2019 で Upgrade Protection を購入している人は自動的に 2020 版の恒久ライセンスを受け取れる。独立動作の CorelDRAW アプリ (Graphics Suite に含まれる追加機能が付かない) は Mac App Store から月額 $34.99 または年額 $249.99 で購読でき、1 週間の無料試用期間が付く。(購読年額 $249.99、2 MB、リリースノート、macOS 10.12+)
AppleInsider の記事によれば、Apple による Mac Pro のサポートに関してトラブルが起こっているという。同社が使っている制作用の Mac Pro であらゆるワイヤレス接続が不安定になるという問題が起こり、AppleInsider が Apple Support のサポートにそれを伝えたところ、Mac Pro の修理は特別チームが担当しているとの返事だった。ところがその Apple Support 担当者でさえその特別チームに連絡を取ることができず、AppleInsider に対して Apple Store の Genius Bar に行くようにと言ってきた。けれども Genius Bar にいた Apple のサポート担当者もまた、Mac Pro に対処する用意を何も持ち合わせていなかった。彼らは適切な電源ケーブルさえ持っていなかったのだ。結果としてその Mac Pro は未だに修理を受けることができず、何の解決も見えていない。(とりわけ中国以外の Apple Store がすべて 2020 年 3 月 27 日まで休業しているのだからなおさらだ。) そもそも Mac Pro はパワーの劣る Mac に切り替えることが不可能かもしれないプロフェッショナルたちを直接の対象としているのだから、このように修理の態勢が整っていないとすれば大いに問題だ。