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#1505: COVID-19 と Apple、自宅で仕事する、WWDC、クロスワードアプリ Black Ink、Mac のウィンドウ位置決め自動化

多くの人たちと同じように私たちは今週の大半を SARS-CoV-2 コロナウイルス蔓延と COVID-19 症例増加のニュースを見ながら過ごした。TidBITS 記事もそれに従うものが多く、まず COVID-19 について全般的に述べた記事と、Apple によるこの流行への対応を伝える記事、それに Apple が WWDC をオンラインのイベントにしようとしているというニュースがある。加えて、思いがけなく自宅で仕事をしなければならなくなった人たちのために、Take Control Books が無料の Take Control of Working from Home Temporarily を出版した。楽しいことをして時を過ごしたいと思っている人たちのためには、新しい寄稿者 Connie Laubenthal が Mac 用のクロスワードアプリ Black Ink をレビューする。それから、Julio Ojeda-Zapata が macOS 内蔵の機能やいろいろなサードパーティのアプリを使ってウィンドウの位置決めを自動化するやり方を検討する。今週注目すべき Mac アプリのリリースは Tinderbox 8.6、CorelDRAW 2020、SoundSource 4.2.2、それに VMware Fusion 11.5.2 だ。

Adam Engst  訳: Mark Nagata   

"Take Control of Working from Home Temporarily" を無料で入手しよう

Take Control of Working from Home Temporarily coverTake Control of Working from Home Temporarily coverTake Control of Working from Home Temporarily cover

SARS-CoV-2 コロナウイルスの蔓延は、多くの人たちに自宅で仕事をせざるを得ないようにした。社会的距離戦略を促進して、感染率を失速させるためだ。自宅で仕事をするというのは魅力的に聞こえるかもしれないが、それと同時に一連の難題をも伴う。それらの難題に対処するお役に立てないかと考えた Take Control Books のわが友人たちが、構想を練り上げ扱う話題の草稿を作り、それをもとに Glenn Fleishman が新しい、無料の本 Take Control of Working from Home Temporarily を書き上げた。

この 55 ページの本は、在宅勤務 (テレワーク) という新しい現実に突然直面させられた人たちのために作られている。自宅に仕事用のスペースを確保するところから始めて、ある程度以上のエルゴノミクスを提供できる家具を備え付け、オーディオ通話やテレビ会議のために必要な機器やアプリを取り揃えることを説明する。必要なものを入手するのは既に困難かもしれないが、近い将来にそれが今より容易になるとは思えない。

これまで自宅で仕事をしたことなどなかった人たちにとって、大きな困難は普段の家庭生活からの心理的な隔離が必要になるという点にある。とりわけ、配偶者、ルームメイト、あるいは広い意味の家族がいる場合には重要なことだ。在宅勤務しながらの子育ても難しいが、この話題については Tonya Engst が実質的に一つの章の大部分に寄稿した。それは、TidBITS Publishing を運営しながら私たちの息子 Tristan を育て上げた 20 年の経験に基づくものだ。

最後にもう一言。在宅勤務をしていると、ともすると時間が過ぎるのを忘れて長時間机の前に座り続けることになりがちだ。そこでこの本では、休憩時間が来ればちゃんと自分自身に優しくし、通勤時間がなくなった代わりにより多くの仕事をしようとはせず、体を動かす時間も作ることをお勧めしている。

この本のために力を貸して下さったすべての方々に感謝したい。とりわけ、この本をこれほど素早く書き上げてくれた Glenn と、この本を編集して出版し、無料で配布する決断をしてくれた Joe Kissell に、大きな賛辞を送りたい。

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Adam Engst  訳: Mark Nagata   

Apple、WWDC をオンラインへ完全移行

何週間も続いた憶測の日々を終わらせるかのように、Apple は今年の Worldwide Developers Conference を 6 月に... 完全にオンラインで開催すると発表した。熟練の PR の技を発揮しつつ、Apple は次のように述べた:

WWDC 2020 は、これまでにない完全に新しいオンラインでの開催を採用し、個人ユーザー、プレス関係者、ソフトウェア開発者、それぞれの皆さまにコンテンツ満載でお届けする予定です。今回のイベントは、創造的かつ革新的な何百万人もの開発者の皆さまが、iOS、iPadOS、macOS、watchOS、tvOS の未来にいち早くアクセスし、Apple のエンジニアたちとの交流を通じて、Apple の製品を愛用する世界中のお客様の生活を豊かにするアプリケーションの体験作りに励むことを可能にする絶好の機会となります。

WWDC promo image

もちろん、この発表の裏に隠されているのは Apple が San Jose での開催を予定していた物理的な Worldwide Developers Conference が Google が I/O をキャンセルFacebook が F8 をキャンセルしたのと同じようにキャンセルされたという事実だ。これら 3 社はいずれもオンラインでセッションやトレーニングを提供するけれども、Google と Facebook の発表にどこか悲観的な調子が感じられたのとは違って、Apple はこのことがあたかも素晴らしい成功であるかのような印象を与えることに成功した。

実際、それは成功に終わるかもしれない。これまで WWDC に直接参加できたのはたった 6000 人程度の開発者に過ぎず、彼らは抽選の結果 $1599 のチケットを購入することができていた。つまり、Apple 開発者たちの大多数が参加の機会を得られていなかったということだ。ここで「大多数」と言ったのは本当にそういう意味で、何しろ Apple によれば全世界に 2,300 万人の開発者たちがいるというのだから。抽選に応募した開発者たちの人数を Apple が公表したことはないが、6000 枚のチケットではとうてい需要を満たすことなどできなかったことは確実だろう。

WWDC の会場で人々が直接会って話をするという側面が消え去ることで、カンファレンス周辺のビジネスは大きな打撃を受ける。Apple によれば、San Jose 現地の各種団体に対して収益の喪失を埋め合わせるために Apple は百万ドルを委託するつもりだという。Facebook もまた、San Jose の各種団体に $500,000 の寄贈をするという。

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Adam Engst  訳: 亀岡孝仁  

COVID-19 (新型コロナウィルス感染症) にまつわる考えと進言

最近は COVID-19 以外のことを考えるのは難しくなっている。それは単に、とりわけひどい痛手を負っている Seattle に数多くの TidBITS 寄稿者が住んでいることだけでは無く、当地 Ithaca にある Cornell University も、他の大学と同様、向こう3週間は全ての授業を中止し、春休み後は全てのことをオンラインでやることにしたからである。Cornell はまた 100 人以上が関わるイベント全てを中止し、そしてそれは私が運営の手伝いをしている大きなレースにも影響が出ている。もっとも、これはその後に出た New York State の 500 人以上の参加者のあるイベントの禁止にも引っかかってもいた。カンファレンスは次々に中止となったり延期となったりしているし、企業は従業員にテレワークをさせ、そして、スーパーには空の棚が目立ち始めている。明日は今日と余り変わらないであろうが、来週も果たしてそうだろうか? 来月は?

この記事は、何かを言う必要があるという所に端を発している。勿論、他の人たちと同様、我々も同程度の不確実性と向き合っているのだということを認めることになることは十分承知の上でである。それは小さな貢献ではあるが、もし皆さんが、TidBITS が独自の有益な情報を提供出来る他のやり方について考えをお持ちなら、コメントで知らせて欲しい。取り敢えず今は、幾つかの考えとリンクを。

専門用語

最初に思いつくのは専門用語である。と言うのも、我々 TidBITS においては、言葉の使い方には細心の注意を払っており、そして使い方は千差万別である。私の様な物書きにとって、この病気を正しくは何と呼ぶのか知っておくのは大事である。

World Health Organization によれば、この病気の公式名は コロナウィルス病 で、省略形では COVID-19 である。この病気の原因となっているウィルスは severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 略して SARS-CoV-2 と名付けられている。[SARS: 重症急性呼吸器症候群]

Apple と WWDC

COVID-19 がどの様に Apple に影響を与えているかについては、過去数ヶ月の間にかなりの量の報道がなされている。現在まで、我々はこれ迄これらの問題を取り上げてこなかったが、それは Apple だけの問題ではないし、多くのユーザーに影響を及ぼすものでもなく、誰かが何かを出来るというわけでもなく、そして内輪ネタだけというのもあったからである。

例を挙げれば、Apple の業績は、中国での製造と販売の低下で短期的には悪化するであろう。Apple は中国の販売店や事務所を閉鎖し、そして再開した。同社はまた、 イタリアでの店の幾つかを閉鎖し、そして旅行を制限した

他の報道によれば、Apple は 交換用の iPhone や部品の不足に悩まされていると言う。Apple は従業員に自宅からテレワークさせており、そして同社は、COVID-19 に関係するアプリを、それが公の保健機関や政府からのものでない限り、誤った情報が拡散するのと闘うため、拒絶している。

中でも注目すべきは、Apple がその Worldwide Developer Conference そのものがオンラインで開催されると発表したことである ("Apple、WWDC をオンラインへ完全移行" 13 March 2020 参照)。これは、中止されてしまった多くのカンファレンスよりも良いと言える - 我々は、Apple 関連のカンファレンス全部をリストアップした通常の下書きも準備済みであるが、それを今出版しても意味がないと判断した。

まあ、取り敢えずは、こんなところである (少なくとも、この記事が書かれる時点迄は)。Apple 関連の COVID-19 ニュースは、今後も間違いなく現れるであろう。

品質の高い情報源を頼る

職業著作者そして報道者として、私は情報を求めて頼る情報源については真剣に考える。COVID-19 に関しては、情報源の地理的な体系を考えてみた。

よく書かれそして有益な COVID-19 に関する記事は沢山出ているが、読んでいるものはここ1両日中に更新されたものであることを確認すべきである。事態は急速に動いており、1、2週間前の記事は興味を引くものであるかもしれないが、その著者達は今は異なった進言や結論に至っているかもしれない。私は分析ダッシュボードや頻繁に更新されるページが好きである。それらを幾つか挙げてみると:

この立ち位置は天に向かって唾を吐くの部類に属することは認識するが、私は情報を Facebook や Twitter のつながりから、或いは行き当たりばったりの YouTube ビデオから得ないよう強くお勧めする。そのリンクは真っ当なものかもしれないが、そこには余りに多くの誤った情報が溢れており、その情報源を精査するのに、保健機関の専門家に直接行くよりも多くの労力を費やす羽目となるであろう。直接保健機関からでないものを読んで評価する時には、次の3つの質問を自分に問いかける:

と言うことで、健康には十分留意されてお過ごし下さい。それが意味することが、こまめに手を洗うことであっても、或いは自分の情報から危険な誤情報を排除することであっても。

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Adam Engst  訳: 亀岡孝仁  

COVID-19 に対応して Apple は中国以外の全ての店舗を休業

COVID-19 パンデミックの患者数が中国以外で急増している中、Apple は CEO Tim Cook からの声明を発表し、Apple が何をしているのかを説明した。同社の行動は全て前向きで、地球上で最も金持ちの会社の一つがなすべき類のものそのものである。そこに含まれるのは:

Cook はこの声明を、現実的でかつ前向きな言葉で閉めた:

このような状況が困難な課題であることは間違いありません。Apple ファミリー全体が、新型コロナウイルス感染に関して、全世界で、その初動対応に当たる人々、医師、看護師、研究者、公衆衛生の専門家、公務員といった方々が取っていただく対応から恩恵を受けています。彼らは皆、世界中の人々がこの難局を切り抜けるのを助けるべく、あらゆる努力を傾けてくれています。そして、この最大脅威のリスクを脱する時期について明言することはできないのです。

しかしながら、私たちのグローバルコミュニティのあらゆる場所で見受けられる人間愛や(人類の脅威に立ち向かう)決意のようなものに私は感銘を覚えています。リンカーン大統領は大きな逆境にある時にこう述べました ――「困難が次々に重なって高い山となっても、我々はこの状況とともに立ち上がらなければならない。私たちが直面する状況は新しいものだ。だから、新たに考えねばならない。新たに行動しよう。」

もう一度言います、どうか安全でいて下さい。そして手洗いをこまめにすることもお忘れなく。CDC によれば、昔からある普通の石鹸が一番の選択肢であり、水の温度は関係ないとのことです。

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Connie Laubenthal  訳: Mark Nagata   

Black Ink を使って Mac の上でクロスワードパズル

Black Ink は、Red Sweater Software が出している Mac で使うクロスワードパズルのアプリだ。Across Lite フォーマットの (通常は拡張子 .puz を持つ) ものならばどんなクロスワードパズルにでもアクセスできる。提供されるデフォルトの供給源は Wall Street Journal のクロスワード、Chronicle of Higher Education、New York Times Premium Crossword、American Values Club だ。

今挙げたうち最後の 2 つは購読を要する。New York Times は月額 $6.95、American Values Club は月額 $20 だ。Red Sweater は、明確な説明を付けて 、追加のパズルを得る方法 (File > Open Web Puzzle > Get More Puzzles) と、有料アクセスの壁があるか否かが分かるようにしている。また、あなたが自分でウェブからダウンロードしたり電子メールで受け取ったりした Across Lite フォーマットのパズルを開くオプションもある。

Black Ink

クロスワード愛好家のために、Black Ink はさまざまの便利な機能を提供する。まず一つ目に、パズルのカギの答を文字レベル、単語レベル、あるいはパズル全体レベルで、チェックする機能 (Solution > Check) がある。私がいつもするやり方は、まずヨコのカギを順々に解いて、チェック機能を使って間違った答を見つけ、それから間違った答を削除したり訂正したりするというものだ。間違った答は文字ボックスの中に赤い "x" 印で示される。

Red x'es showing a wrong answer

Black Ink では、あなたがどの単語をチェックしたかをパズルが記憶している。なので、たとえあなたが間違った答を消しても、過去にチェックを受けたことのあるボックスにあなたが別の文字を入力すれば、その文字が再チェックされる。もしその文字が正しければ、ボックスの中に緑色のチェックマークが付く。最初のうちはこの機能に当惑してしまうかもしれない。なぜなら、チェックした時点で何も文字がなかったボックスには、現時点でそこに文字があろうとなかろうと赤い X と緑色のチェックマークのいずれも表示されないからだ。言い換えれば、タテの答の中の 1 つの文字だけに緑色のチェックマークが示されてそれが正しい文字だと分かっても、その単語のそれ以外の文字はまだチェックされていないので正しいかどうか分からないということがあり得る。でも、これが Black Ink のやり方だと理解できれば、もう問題ではなくなるだろう。

二つ目の特に重要な機能は、答を見る (Solution > Reveal) 機能だ。行き詰まった時にはとてもありがたいし、特にカギに登場する人物が自分に馴染みのない分野、例えば映画や音楽のジャンルの有名人であったりする場合に、この機能が頼りになる。数多くあるクロスワードパズル解答ウェブサイトのどれかをいちいち開いたりせずに済む。

この機能を不正行為だと非難する人もいるけれども、私は楽しみのためにクロスワードパズルをしているのであって、競技としてしているのではない。行き詰まった単語の正解を見つけるために他のカギを調べてもどうにもならないこともある。この Black Ink の Reveal 機能の素敵な点は、この機能が明かした文字のボックスが青い目の印で示されることだ。そのお陰で、パズルの中のどの部分に援助が必要だったかが分かる。私にとってはそれが、このオプションを最後の手段としてしか使わないための動機となる。

An eye denotes revealed letters
Reveal 機能で明かされた文字は青い目の印でマークされる。ウィンドウの一番下にはパズルタイマーがある。

私などよりもずっとクロスワードパズルを解くことに真剣に向き合っている人たちのために、Black Ink はあなたがパズルを解くのにかかった時間を計測することができる。ウィンドウの一番下にタイマーが表示され、必要に応じてタイマーを一時停止したりリセットしたりも簡単にできる。

留意しておくべきこととして、パズルの供給源を一つ開くと、そこから取り寄せたその日のパズルが開く。けれどもその後でまた同じ供給源からパズルを開くと、その前日のパズルが届く。抜かした日の分のパズルも、この機能を利用して開くことができる。New York Times と Wall Street Journal のクロスワードはいずれも月曜日のパズルが非常に易しく、週の中で日ごとにだんだん難しくなり、土曜日に一番難しいパズルになるように作られている。なので、ごくたまにしかパズルをしないしできるだけ易しいパズルが欲しいと思えば、月曜日のパズルを狙うのが賢明かもしれない。難しさのレベルを最適化するためにパズルの供給源を選ぶこともできるし (Red Sweater ウェブサイトには他のいろいろな選択肢を紹介した素敵なガイドのページがある)、同じ供給源から週を通じて易しいものから難しいものへと入手し続けてもよい。

全体的に見て、Black Ink は使いやすく、初心者から上級者までどんなパズラーにも向いているが、それは主に Reveal 機能のお陰だ。既に New York Times を購読している人には、紙面のクロスワードパズルを Mac の上でデジタルに解ける素敵な手段となる。

Black Ink は 14 日間のみ全機能を無料で使うことができるが、その期間が過ぎた後に全機能のロックを外すには $29.95 支払う必要が生じる。高度な機能があることを考えれば、日常的に使う人には妥当な価格に思える。私は根っからのクロスワードパズラーなので、このアプリのファンだ。


Connie Laubenthal は引退した医学研究所科学者だ。彼女はかつて米国内科学会 (ACP、American College of Physicians) で Medical Laboratory Evaluation プログラムの Director を務めたことがあり、ACP Services の Executive Vice President であったこともある。彼女は、趣味としてクロスワードパズルを楽しんでいる。

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Julio Ojeda-Zapata  訳: Mark Nagata   

macOS やアプリを使ってウィンドウの位置決めを自動化

Mac のウィンドウを何度も何度も手作業で位置替えしたりリサイズしたりして貴重な時間を浪費してはいけない。そのような単調作業はかなりの程度自動化することができる。

macOS が、いくらかの援助を提供している。フルスクリーンモードで 2 つのウィンドウを隣り合わせて並べる Split View はたぶん皆さんご存知だろう。それ以外にも Apple はいくつかの機能を内蔵している。サードパーティのユーティリティを使えばさらにもっとウィンドウの制御ができる。その種のアプリは多数出ているし、また Keyboard Maestro などの汎用ユーティリティでさえウィンドウを動かすために役立たせることができる。

ウィンドウ位置決めユーティリティの一つに Magnet がある。これは、ユーザーがどんなプリセットを望むかを予測して働く、設定の一切要らないツールだ。私は長い間これを気に入って使っていた。以前見た時には、Mac App Store の仕事効率化カテゴリーの最上位にランクされた $1.99 のアプリであった。

もう一つのユーティリティ Moom では、ウィンドウの挙動をカスタマイズできる。私は Magnet から一度離れたいと思って、それ以後 Moom の柔軟性に魅せられてこれをずっと使っている。Moom は開発者 Many Tricks から直接にも、また Mac App Store からも $10 で購入できる。

Magnet と Moom はいずれも、私が Microsoft Windows や Google の ChromeOS にあってうらやましいと思っていた「ウィンドウ・スナップ」機能を提供する。ウィンドウをドラッグしてスクリーンの端に持ってくると、ウィンドウが特定の位置と形にはめ込まれるのだ。

Magnet と Moom についてはすぐ後でもっと説明するが、まずは macOS の内蔵機能でどんなことができるかを見ておこう。

macOS のウィンドウ位置決め機能

macOS 10.11 El Capitan 以来、Apple は Split View を内蔵させている。ウィンドウ左上にある緑色のフルスクリーンボタンをクリックする。そのボタンを押し続けると、ウィンドウが縮小し、それをスクリーンの左右どちらかの端にドラッグできる。そこでボタンを離してから、スクリーンの反対側で別のウィンドウをクリックすると、それが Split View に追加される。

10.15 Catalina で、Apple はこのインターフェイスを簡素化した。フルスクリーンボタンの上にポインタをかざすとメニューが出て、そのウィンドウをディスプレイの左右どちら側にタイル表示するかが選べる。そのどちらかを選べば、macOS は他のウィンドウのうちどれを画面の残り部分に開くか尋ねてくる。このメニューからは一つのウィンドウをフルスクリーン表示にすることもできる。メニューでタイル表示のオプションを選んでも、他に何もウィンドウがなければ一つだけでフルスクリーン表示になる。

Catalina tiling options

奇妙なことに、Split View を説明する Apple のヘルプ記事にはフルスクリーンモードを呼び出さずにウィンドウの位置決めをするこの Catalina の隠し機能については一言も触れられていない。

Option キーを押しながら緑色のボタンの上にポインタをかざして数秒間待つと別のメニューが出る。このメニューのコマンドを使うと、ウィンドウはタイル表示になるのでなくただ左右方向に 移動 する。つまり、フルスクリーンにならず横方向に画面のどちらか半分の側へ移る。

Option を押したままかざして出るメニューからは、ズームボタンの動作もできる。つまり、ウィンドウがスクリーン全体 (から Dock とメニューバーを除いた部分) に広がる。(古いバージョンの macOS では、フルスクリーンボタンを Option-クリックするとウィンドウが最小化する。)

Catalina alternate window options

この機能に気付いた人たちが非常に少なかったにもかかわらず著書 Take Control of Catalina にこの情報を載せてくれた Scholle McFarland に敬意を表したい。

スクリーンの端を磁化 (Magnet 化) する

Magnet は、あっという間に使い始めることができる。メニューバーにあるそのメニューにあらかじめセットされたコマンドには、それぞれアイコンとテキストでの説明とが付いているので一目で理解できるだろう。Magnet のキーボードショートカットは私には覚えにくかったが、皆さんには分かりやすいかもしれない。

いずれにしても、これを使って Mac のウィンドウをリサイズしてスクリーンの左半分、右半分、上半分、下半分、あるいは4分の1、あるいは3分の1や3分の2、その他を占めるようにでき、いずれも決してフルスクリーンモードにはならない。たいていの場合、これが私の好みにあっている。なぜなら Dock とメニューバーが常に見えているからだ。複数個のディスプレイがある場合にには、Magnet は Next Display と Previous Display のコマンドも用意していてウィンドウをスクリーンからスクリーンへと移すことができる。

もっと楽に使いこなしたければ、Magnet はマウスを使ったウィンドウ位置決めもできる。これは、ウィンドウをいくつかの決められた位置とサイズにはめ込む機能だ:

ドラッグして使うこれらの操作では (Windows や ChromeOS と同じように) ウィンドウの外形を描いたプレビューが表示されるので望みの位置決めへのガイドとして使える。

好みに合わせて Moom を調整する

もっと強力なウィンドウ位置決めの能力を手にしたいパワーユーザーならば、Moom を検討してみるとよい。ただしこちらは自分でいろいろ試してみる気のある人でなければ使えない。なぜなら、Moom が初期状態で提供するのはほんの少数の基本的機能のみであって、使いこなすにはあなたの必要に応じてカスタマイズしなければならないからだ。

Moom は Dock からもメニューバーアプリとしても使えるが、後者の方が使いこなしやすい。なぜなら、その方がカスタマイズしたウィンドウ位置決めプリセットへのアクセスが容易だからだ。

まず手始めに、Moom の環境設定を開いて Custom をクリックする。たくさんのオプションがあるが、Move と Zoom から取り掛かることをお勧めしたい。

ここに、極小表示したスクリーンとして機能するグリッドが示されている。グリッドの上でポインタをドラッグして、仮想的なウィンドウの形と位置を示す正方形か長方形を作る。そうすれば、そのプリセットを Moom メニューから選べばどんなウィンドウでもその指定された位置とサイズになる。もっと精密な位置決めが必要ならば、グリッドの水平方向と垂直方向のセル密度を調整してからプリセットを作ることもできる。

Moom grids

私はこの機能を使って、それぞれ横幅を指定してウィンドウをスクリーンの中央に置くプリセットをいくつか作った。ウェブをブラウズする際には横幅を狭く、他の人たちとの共同作業で Google Doc を使っていて右側にチームのコメントを表示させる余地を確保したい場合には横幅を広くする。また、スクリーンの右側や左側の3分の2を占めるようにウィンドウを位置決めするプリセットも作っておいた。

Moom presets in the menu bar

それからまた、Moom を使って複数個のウィンドウを一度に位置替えすることもできる。私がよく使うのは、幅広の Google Chrome ウィンドウを左側に、幅の狭い Google Chrome ウィンドウを右側に並べる配置だ。セットアップは簡単で、まず 2 つの Chrome ウィンドウを手動で、望みの配置に並べておく。それから、Moom メニューで Save Window Layout Snapshot を選べばよい。そうすれば、スクリーン上のどこにでも 2 つの Chrome ウィンドウがある状態でそのメニュー項目を選べば、即座にその 2 つの Chrome ウィンドウが望みの配置に並ぶ。これとは別に、2 つの Chrome ウィンドウを同じ大きさで左右に並べるプリセットも作っておいた。

Repositioning windows with Moom from the menu bar

その上 Moom は、複数のアプリを含んだシナリオにも対応できる。私がよく使うのは、横幅の狭い1カラムの Twitter クライアント、例えば Tweetbot や Twitterrific などをディスプレイの左側に置き、スクリーンの残りの部分を Chrome ウィンドウが占めるようにする配置だ。この配置も、Save Window Layout Snapshot を選ぶだけでメニュー上に設定される。そうすれば、Twitter クライアントや Chrome のウィンドウの位置がずれてしまっても容易に望みの配置に戻る。

加えて、Moom はウィンドウ左上の緑色のフルスクリーンボタンも Catalina の Split View と同じようなやり方で乗っ取ることができる。ただ違いは、現われるメニューにもっと多くのオプションが提供されることだ。ポインタをフルスクリーンボタンの上にかざせば、左右の半分、上下の半分、そして最大化、という選択肢を示したアイコンが並び、どれかをクリックして選べる。

Calling Moom from the green window button

Option キーを押しながらポインタをかざせば、Moom は4分の1ウィンドウの選択肢も示す。もしも Catalina のデフォルトのメニューが欲しいというのならば、Command (あるいは Command を押してから Option) を押しつつかざせば本来の Catalina のメニューが出る。

でも待って、まだ他にもある! Moom はポインタをかざして出るメニューに、ウィンドウの「描画」オプションも提供している。つまり、ドラッグして長方形を描くことで、その場でウィンドウを好きなようにリサイズできるのだ。この機能は、Moom の環境設定をどのように設定したかに応じて 2 つの方法のうちどちらかを使って呼び出せる:

Moom hexagons

ボーナス機能として、Moom はマウスをドラッグしてウィンドウをスナップすることもできる。ただし Magnet ほど位置決めの選択肢は多くない。Moom はスクリーンの半分、スクリーンの4分の1、それに最大化の選択肢しか提供しない。

複数個のディスプレイがある場合にディスプレイからディスプレイへとキーボードショートカットでウィンドウを移動する Magnet のような機能は、Moom にはない。

その他のユーティリティいろいろ

この記事で Magnet と Moom だけを紹介してきたのは、ウィンドウをリサイズするユーティリティのうちで私が主に使ってきたのがこの 2 つだからだ。それに、私が調べた限りでは、機能を最良に取り合わせて最大限の多彩さを実現しているのはこの 2 つだと私は思う。

けれども、他にもいくつか選択肢を挙げておかないのは怠慢と言うべきだろう。

至極のウィンドウ位置決め

macOS 用のウィンドウ・リサイズ用ユーティリティは非常にたくさん出回っているので、いつも手だけを使って macOS のウィンドウを動かしたりリサイズしたりするのはもはや意味を成さない。あらゆるウィンドウをピッタリ正しい位置に落ち着かせようとひっきりなしにいじくり回しているのが現状ならば、macOS に内蔵された制御機能を使うか、またはこの種のユーティリティのどれかを使うのが、まさにうってつけの解決となるかもしれない。

macOS のネイティブなウィンドウ位置決め機能は、とりわけ Apple が Catalina で改善を施したので、これで十分だと感じる人もいることだろう。けれどもそれよりもっと踏み込んだ機能が欲しい人には、私としては Moom をお薦めしたい。なかなか良い機能の取り合わせを提供している上に、たっぷりカスタマイズできるからだ。あまり手間をかけていじくり回すのは気が進まないけれどもそれでもある程度の多機能性は欲しいという人には、Magnet が最適な、しかも安価な、選択肢と言えるだろう。

ともあれ、あなたの Mac の効率を改善するためのツールは、すぐ手の届く所にある。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

訳: Mark Nagata   

Tinderbox 8.6

Tinderbox 8.6

Eastgate Systems が Tinderbox 8.6 をリリースして、このノート取りアシスタントおよび情報マネージャにリンク付けの拡張を加えた。今回のアップデートでは、ノートの名前をタイプするだけで Tinderbox がその名前の新規ノートか、またはその名前のノートへのインスタントリンクを作る Ziplink 機能を導入した。Tinderbox 8.6 ではまた、Tinderbox ウィンドウの一番下からスライド出現して内向きリンク、外向きリンク、およびリンク先の提案を表示する Links 枠を新設した。さらに、この新バージョンでは思い付いたことを Iconfactory の付箋アプリ Tot に書き留めそれを直接に Tinderbox の適切な書類へ供給させる機能に対応し、Find ポップオーバーに表示された結果をテキスト枠の中へドラッグできるようにし、Agents が多数のノートを検索してそれらに見栄えの変更を適用する際のパフォーマンスを改善し、地図でドラッグしてスクロールする際に以前よりスムーズかつ正確にできるようにしている。(新規購入 $249、TidBITS 会員には 25 パーセント割引、35.6 MB、リリースノート、 macOS 10.10+)

Tinderbox 8.6 の使用体験を話し合おう

CorelDRAW 2020

CorelDRAW 2020

Corel が CorelDRAW 2020 をリリースした。このベクターイラストレーションアプリのメジャーなアップグレードで、新たに AI 駆動のツールと拡張されたコラボレーション機能を搭載している。今回のリリースでは AI 補助付きの PowerTRACE 機能を更新してトレースする際のビットマップの品質を向上させ、画像を拡大する際の AI に基づくアップサンプリングのオプションを導入し、いろいろのアーティストやジャンルのテクニックを取り入れて新たに AI で強化された Art Style 効果のプリセットを追加し、Mask Transform ツールを改良して一つのマスクの中でピクセルごとの変換を適用できるようにし、また前バージョンに比べてパフォーマンスを最大 6 倍向上させている。その他の新機能としてはベクターフェード、内側のシャドーツール、JPEG アーチファクトの除去、OpenType バリアブルフォント対応、コメントインスペクターなどがある。

Mac 用 CorelDRAW Graphics Suite 2020 の価格は、恒久ライセンスが $499、年額払いの購読が $249 だ。CorelDRAW Graphics Suite 2019 で Upgrade Protection を購入している人は自動的に 2020 版の恒久ライセンスを受け取れる。独立動作の CorelDRAW アプリ (Graphics Suite に含まれる追加機能が付かない) は Mac App Store から月額 $34.99 または年額 $249.99 で購読でき、1 週間の無料試用期間が付く。(購読年額 $249.99、2 MB、リリースノート、macOS 10.12+)

CorelDRAW 2020 の使用体験を話し合おう

SoundSource 4.2.2

SoundSource 4.2.2

Rogue Amoeba が SoundSource 4.2.2 をリリースして、内蔵の Lagutin Equalizer をアップデートしてそのアニメーションを調整するとともにそれがユーザーのプリセットを保存し編集するやり方を改善した。このサウンドコントロールユーティリティはまた、Audio Capture Engine をバージョン 11.1.3 にアップデートして数多くのバックエンドの拡張を加えた。具体的にはデバイス追跡の修正や、デフォルトでないステレオペアを使っているデバイスに関係した修正が施された。SoundSource 4.2.2 ではまた、アプリ全体を通じて音量インジケータにアニメーションを追加し、起動し直した後もメインウィンドウのピン留めされた状態が保持されるようにし、AirPods への接続を改善し、VoiceOver に関係したいくつかの問題点を修正し、macOS 10.12 Sierra の下で Equalizer のプリセットウィンドウが正しく閉じるようにし、各種さまざまのメモリリークを塞いだ。(新規購入 $29、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、13.9 MB、リリースノート、macOS 10.12+)

SoundSource 4.2.2 の使用体験を話し合おう

VMware Fusion 11.5.2

VMware Fusion 11.5.2

VMware が仮想化パッケージ VMware Fusion の標準版と Pro 版の双方にバージョン 11.5.2 をリリースして、macOS 10.15 Catalina、Windows 10 v19H2、および Oracle Linux 8.0 への対応を追加した。(このリリースをもって、VMware Fusion も Catalina の中で 10.14 Mojave を仮想化するツールとして使えるようになった、2019 年 9 月 18 日の記事“Catalina への移行: 手持ちの 32-Bit Mac アプリは Parallels で動かす”参照。) 今回のリリースから Dark Mode Synchronization が有効であれば Dark モードに切り替わるようになり、仮想マシンの第2ディスプレイとして iPad を使う機能に対応し、PVSCI デバイス対応を導入して Fusion と vSphere 間の仮想マシン移行の際の互換性を拡張し、また use-after-free および denial-of-service の脆弱性に対処している。(新規購入 $79.99/$159.99、無料アップデート、518 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

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ExtraBITS

訳: Mark Nagata   

Apple の Mac Pro サポート態勢が欠落しているとの報道

AppleInsider の記事によれば、Apple による Mac Pro のサポートに関してトラブルが起こっているという。同社が使っている制作用の Mac Pro であらゆるワイヤレス接続が不安定になるという問題が起こり、AppleInsider が Apple Support のサポートにそれを伝えたところ、Mac Pro の修理は特別チームが担当しているとの返事だった。ところがその Apple Support 担当者でさえその特別チームに連絡を取ることができず、AppleInsider に対して Apple Store の Genius Bar に行くようにと言ってきた。けれども Genius Bar にいた Apple のサポート担当者もまた、Mac Pro に対処する用意を何も持ち合わせていなかった。彼らは適切な電源ケーブルさえ持っていなかったのだ。結果としてその Mac Pro は未だに修理を受けることができず、何の解決も見えていない。(とりわけ中国以外の Apple Store がすべて 2020 年 3 月 27 日まで休業しているのだからなおさらだ。) そもそも Mac Pro はパワーの劣る Mac に切り替えることが不可能かもしれないプロフェッショナルたちを直接の対象としているのだから、このように修理の態勢が整っていないとすれば大いに問題だ。

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Backblaze’s 2019 Hard Drive Reliability Statistics

Backblaze の 2019 ハードドライブ信頼性統計

長年にわたり、オンラインバックアップサービス Backblaze はハードウェア故障の統計を発表し続けているが、同社は今回 2019 年の統計数字を公表した。2019 年には回転するハードドライブが 125,000 台近くも動いていたが、それに関する統計数字として Backblaze のデータ以上のものはなかなか見つからない。残念ながら、ドライブの容量が増加し続けるに伴って、Backblaze が好むドライブは日常的な Mac ユーザーが必要とするものとはますます乖離しつつある。

意外でもないが、Seagate ドライブがまたもや最も高い故障率を示したが、これは従来から続いている傾向の通りだ。HGST と Toshiba のドライブは故障率が 1% よりずっと低かったが、Seagate の多くのモデルは 1% より高く、4TB ST4000DM000 は 2.00%、12 TB ST12000NM0007 は 3.32% という結果だった。

Backblaze's 2019 hard drive failure rates

Backblaze は十分な情報を表に含めなかったが、各メーカーの 16 TB ドライブでは良好な結果が出た。けれども Backblaze は自社で使っている 12 TB Seagate であまりにも多くのトラブルに遭ってきたので、Seagate と共同で交換作業を進めているところだ。

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