#1510: 新型 iPhone SE、iPad Pro 用 Magic Keyboard、Zoom のセキュリティ対応、Siri と緊急通話

先週 30 周年の記念日の報告と共に (2020 年 4 月 13 日の記事“パンデミックの時期に TidBITS が 30 周年を迎える”参照)、今年は TidBITS が少々財政的危機に陥りつつあり、SARS-CoV-2 コロナウイルスのパンデミックがそれを悪化させていると述べた。嬉しいことに、PayPal 駆動の Boost TidBITS ボタンを通じて忠実な TidBITS 読者の皆さんから寄せられた一回限りの寄付と、非会員の皆さんに私がお送りした電子メールに応じて新たに TidBITS 会員となって下さった 600 人近くの読者の皆さんとのお陰で、私たちは将来の財務にずっと明るい気持ちで取り組めるようになった。一歩踏み出して助けの手を差し伸べて下さったすべての皆さんに、感謝を申し述べたい。今回のような形で寄与しようと思われるほどに皆さんがこの仕事を高く評価して下さるのは、私たちにとってこの上なく大きな意味のあることです。

こういう形で寄付のお願いをするのは私にはなかなか難しいことではあったけれども、ほとばしるように支援のお気持ちが寄せられるのを見るのは大きな励みになった。お願いの電子メールを 21,000 人の人たちに送ったということは、その後数日間は電子メールへの返信に没頭することを意味していたのだが、私はいつだって読者の皆さんと直接語り合える機会をとても楽しみにしている。長年購読して下さり過去には始終やり取りしていた人から久しぶりにお便りを頂いたことも、Macworld Expo やその他のカンファレンス会場でおしゃべりしたことがあるのを思い出させて下さった方も、また何十年も TidBITS を読み続けてきたけれど直接便りを交わすのはこれが初めてだという方もおられた。

ある意味では、TidBITS を有料の購読サービスに変えたならば、あるいは他の多くの出版物のようにペイウォールを設けたならば、状況はもっとすっきりするのかもしれない。でも、頂いたいくつかのメッセージから、一部の読者の皆さんからの寄与に支えられつつ TidBITS をすべての人に無料でお届けする方法をなぜ選んだかをはっきり思い出すことができた。ある女性は自分は 74 歳で社会保障のわずかの給付金だけにほぼ依存して暮らしているけれども、いろいろな健康上の問題があるのでかつてのように Mac コンサルタントのところへ出かけることができなくなっていると語ってくれた。別の男性は 1994 年以来ずっと TidBITS を忠実に読んでいるけれども今は 69 歳で退職しており海軍の恩給と社会保障の給付金でほそぼそと暮らしているとのことだった。この人たちにも書いたけれど、私は TidBITS を読んでもらっていると知っただけでもとても嬉しい。

最後にもう一言、私たちのサイトでトラブルに遭遇された方々にお詫び申し上げたい。いくつかの種類の問題が起こっていた：

• 最も多かったのは新しいパスワードを要するログインの際の問題だった。どうやら一部の ISP が迷惑メールを制御するためにグレイリストを使っていて、その結果パスワードのリセットのためのメッセージの到着が大幅に遅れることがあったようだ。何時間待ってもパスワードをリセットするメッセージが届かないことほどイライラさせられるものはないが、私たちの側からそれに対処できる方法はない。
• 私は会員でない人たちのみにあてて電子メールを送ったつもりだったが、少数の会員のところに誤って届いたものもあった。その一部は技術的な不具合によるものだったが、同じ人が別の電子メールアドレスでも余分のアカウントを持っておられることもあった。混乱を招いてしまい、申し訳なく思っています！
• ある 1 人の方は、これがその人だけのことだったと願いたいのだが、WordPress の Stop Spammers プラグインのせいで一時的に会員になれない状態で放置されてしまっていた。私たちのサイトに毎週新たなアカウントを登録しに来る 20 から 50 ものスパム業者たちをブロックするために、私たちはこのプラグインをインストールしている。何ともショッキングなことだが、このプラグインのログを見ると、先月だけでさまざまな種類の攻撃が 400,000 件ほどもあったという。1993 年に私が Internet Starter Kit for Macintosh を執筆していた当時、私の脳裏に描かれていたインターネットはこんなものではなかったのに。

私たちの友人であり TidBITS のサポート関連のことを担当してくれている Lauri Reinhardt が、私と共にすべての人の問題をきちんと解決しようと努めているところだが、もしも何かトラブルに遭われたなら、どうぞ Lauri に [email protected] あての電子メールでお知らせ願いたい。

Tonya と私のために、Josh と Lauri のために、その他のライターたちのために、そして TidBITS が今後も有益なテクノロジーの情報源であり続けようとしているすべての人たちのために、皆さんがそれを可能にして下さったことに対して心からのお礼を申し上げたい。

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Apple がトラックパッドを内蔵した新しい iPad Pro 用 Magic Keyboard を発表したとき、Apple はこれを 5 月に出荷すると述べた。(2020 年 3 月 18 日の記事“世界が覆る： Apple の新型 iPad Pro がトラックパッドに対応”参照。) ところがびっくり！ 現在予約注文を受付中で、2020 年 4 月 24 日に出荷が始まる。

iPad Pro 用 Magic Keyboard には 2 つのモデルがある。片方は第１世代および第２世代の 11 インチ iPad Pro 用で、もう片方は第３世代および第４世代の 12.9 インチ iPad Pro 用だ。価格は 11 インチ版が $299、12.9 インチ 版が $349 というべらぼうなものだが、とにかく内蔵トラックパッドを備えていて iPadOS 13.4 の新しいポインティング・デバイスへの対応を活用できる。(2020 年 3 月 28 日の記事“iPad、全面的なトラックパッドとマウスサポートを得る”参照。)

この iPad Pro 用の新しい Magic Keyboard を使ってみて皆さんがどう思われたか、私たちはぜひ知りたいと思っている。また、比較すべき代替製品も検討する必要があるだろう。例えば Jason Snell は競合製品の Brydge Pro+ をレビューしたが、欠点もあるとのことだった。対象となる iPad Pro モデルを持っていない人は、Logitech から $149.99 で近日登場予定の Combo Touch ケースに注目するとよいかもしれない。これは第７世代 iPad、第３世代 iPad Air、それに 10.5 インチ iPad Pro と互換とのことだ。

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ようやく、Apple は第二世代 iPhone SE をリリースした。初代の iPhone SE は iPhone 5s のフォームファクターに基づいており、iPhone 6s に対してより小さな、より安価な選択肢となっていた。Apple は名目上同じ戦略を今回も採用して、基本的には iPhone 8 をアップデートし、この新しい iPhone SE の仕様を近代的な標準へと持ち上げた。色の選択肢は、ブラック、ホワイト、そして PRODUCT(RED) がある。Apple の PRODUCT(RED) バージョンからの対象となる収益は Global Fund の COVID-19 Response に寄付される。

価格は 64 GB が $399 からで、128 GB モデルは $449 となる。予約注文は 17 April 2020 から始まり、納品は 24 April 2020 からとなる。

認識はしているが、口に出したくない重要な問題

まず、大きさは大事である。ここ数年間の iPhone リリースの後で、私がテック業界とはほとんど無縁の友人や知人と交わす会話は殆ど決まって、"Apple はより小型の iPhone をどうして作らなくなったの？" で始まる。最初、私はそれをデザイン傾向のせいにしたが、最近では、"何故ならば、Apple はあなたとあなたの小さな手を嫌っているからだよ" とジョークで紛らすことにしている。Apple の設計者達は、現在の iPhone は彼女達の手には大きすぎるし、ポケットにも入らないとする女性達からの苦情を聞いたことはないのであろうか？ それが、Tonya, Glenn Fleishman の妻 Lynn, そして多くの女性の友人達の感想であり、それに同調する男性陣も結構いる。私の知る時点では、Keyboard Maestro で有名な Peter Lewis は未だ iPhone SE を使っていた。

ええ、その通り。新しい iPhone SE は初代の iPhone SE よりもかなり大きい。そして、以降の世代の iPhone はどんどん膨らみ続けたので未だ使っている人の多い iPhone 6s よりも、ほんのちょっと大きい。Tonya は私からのお下がりの iPhone X を断った。と言うのも、それは彼女の死にかけた iPhone 5s を置き換えた iPhone 6s よりも遥かに大きかったからである。

Apple の Worldwide Marketing 担当上席副社長 Phil Schiller は、iPhone SE のプレスリリースで次の様に言ったとして引き合いに出されている、"最初の iPhone SE は、その小さなサイズ、高性能、そして手ごろな価格という独自の組み合わせを愛する多くの顧客を得て大ヒットとなった。" 全くその通りである、とりわけその "小さなサイズ" の部分は。しかしながら、彼は続けてこう言った、"この新しい第二世代の iPhone SE は、その偉大な考えの上に作られ、そして全ての点で更なる改善を図っている。" それは違う。小さなサイズが鍵となる機能である場合、"改善された" は、さらに小さいことを意味するべきで、より大きいではない。

ごめんなさい、でも Apple はあなたとあなたの小さな手が嫌いである。そして、あなたの小さなポケットも。

価格に比べたら印象的な仕様

この期待外れの大きさを別にすれば、新型 iPhone SE はその価格に対して印象的な仕様を誇っているを誇っている。勿論、特段に新しいものは殆どない。何故ならば、それは基本的にはアップグレードされた iPhone 8 だからである。鍵となる仕様には以下が含まれる：

* **A13 Bionic:** 第二世代 iPhone SE は、iPhone 11 や iPhone 11 Pro に使われているのと同じ A13 Bionic チップが使われている。もしこれ迄の振る舞いが何らかの暗示となるのであれば、この第二世代 iPhone SE は今後何年間かの間アップデートされることはなく、現在入手可の最速のチップが使われていることでしばらく消えることないであろう。

• A13 Bionic： 第二世代 iPhone SE は、iPhone 11 や iPhone 11 Pro に使われているのと同じ A13 Bionic チップが使われている。もしこれ迄の振る舞いが何らかの暗示となるのであれば、この第二世代 iPhone SE は今後何年間かの間アップデートされることはなく、現在入手可の最速のチップが使われていることでしばらく消えることないであろう。
• 改善された写真： iPhone SE の 12-megapixel 背面、そして 7-megapixel 正面カメラは iPhone 8 のカメラと同じものではあるが、A13 Bionic チップによる更なるプロセス力により、Portrait モード、６つの Portrait Lighting 効果すべて、そして Depth Control が使えるようになる。テスト結果が報告されるのはもう直ぐであろうし、我々はその画像品質は iPhone 8 から目に見える程改善されると思っている。
• ストレージの選択肢増える： iPhone 8 には、ストレージの選択肢として 64 GB か 256 GB しかなかったが、iPhone SE には中間の 128 GB が選択肢に加わった。
• ビデオの変更： ２つのモデルの間のビデオ録画に対する仕様には幾つかの違いがあるが、それらが実際にどれ程意味があるのか判断するのは殆ど不可能である。一つ挙げるとすれば、それは iPhone SE の新しい "最大 30 fps のビデオに対する拡張ダイナミックレンジ" 仕様であろう。
• 4.7-inch ディスプレイ： スクリーン技術は iPhone 8 と同じ様に見え、1334-by-750 ピクセルの解像度、１インチ当たり 326 ピクセル、そして 1400:1 のコントラスト比を持つ。それは Retina HD スクリーンで、True Tone 及び広色域ディスプレイ (P3) を提供する。
• 触覚タッチ： iPhone 8 は感圧 3D Touch をサポートしていたが、iPhone SE は Haptic Touch (触覚タッチ) 方式に戻っている。これは押しの長さに依存するもので、異なった圧力レベルは検知出来ない。
• Touch ID： Apple は Face ID に 2018 と 2019 iPhone モデルでは移行したが、iPhone SE は iPhone 8 からの Touch ID センサーを踏襲した。Touch ID の方を好む人もおり、とりわけ今日の様にマスクを付ける機会が多くなると、Touch ID の方が Face ID よりもより効率的かもしれない。
• Qi ワイヤレス充電： iPhone 8 と同様、iPhone SE もワイヤレス充電に対応している。電池寿命も iPhone 8 と同じで、そして急速充電にも対応している。
• eSIM 対応： iPhone 8 は１つの nano-SIM に限定されていたが、iPhone SE は nano-SIM と ２つ目の番号に対応する Apple の eSIM 技術の両方を有している。

つまり、第二世代 iPhone SE は、iPhone 8 で、より良い写真を可能にするより高速のチップ、"ちょうど良い" 128 GB ストレージ選択肢、3D Touch ではなく Haptic Touch、そして２つ目の番号を可能にする eSIM を有したものと言える。

でも、iPhone SE で大事なものと言えば、その価格である。値段は、$399, $449, 或いは $549 の何かで、ストレージに 64 GB, 128 GB, 或いは 256 GB のどれを選ぶかによる。比較のために言うと、同等モデルの iPhone 11 や iPhone 11 Pro は、それぞれ $300 及び $600 高くなる。

第二世代 iPhone SE のサイズには失望させられるが、その価格 - そしてその価格に対する性能 - はとても歓迎出来るものである。$699 の値段では、iPhone 11 はどこからみても安価だとは言い難い。勿論、$999 の iPhone 11 Pro や $1099 の iPhone 11 Pro Max と比べれば話は別だが。

もし大きさを気にしないのであれば、Apple は嵩張る iPhone XR を $200 高で今でも売っている。より古いその A12 Bionic チップを別にすれば、iPhone XR は Face ID と iPhone SE より少し優れた仕様を有している。しかし、もし $200 余分に使う気があるのであれば、更に $100 出して iPhone 11 を手にすべきである。

人によっては、iPhone は彼らの生活の重要な一部分となっていて、$1000 以上の出費にもそれだけの価値があると言う人達もいる。しかし、その他の多くの人達にとっては、iPhone は素敵だが必要不可欠ではないので、第二世代 iPhone SE の値段を半額以下に抑えることで Apple の販売が増加するのは間違いないであろう。

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定期的に、Google Analytics から私に TidBITS ウェブサイト上のトラフィックに関係したさまざまの統計情報の報告が届く。そこから興味深い情報が明かされることは滅多にないが、先日私の注意を引いたのは、Siri 関係の一見奇妙な検索によるヒットが示されていたことだった。それらはすべて、Siri に向かって 14 という数を言った結果起こることのようだった。Google が人々を私たちのサイトに振り向けていたのは Scholle McFarland の記事“今すぐ使える 14 の Siri 隠し技”(2019 年 3 月 7 日) のせいだったこともあるが、その記事は多くの人々の質問に答えるものではなかった。

いったいなぜ誰かが Siri に向けて数を朗読することがあるのだろうかと知りたくなって、私は試しに iPhone で Siri を呼び出して "14" (fourteen) と言ってみた。その時の私の驚きを、想像して頂けるだろうか。突然 iPhone のスクリーンに緊急通話画面が表示され、3 秒間のカウントダウンが始まったからだ。私は慌てて Cancel をタップしたが、何が起ころうとしているのかまだ分からなかった。(その後私は Siri がここ米国では 911 に電話をかけようとしていたのだと知った。おそらく皆さんの場合はお住まいの国での主たる緊急電話番号に電話がかかるのだろう。)

少し調べてみたところ、Siri が 14 を、さらには少なくとも 15、17、18 を、一部の国における緊急電話番号と認識することが分かった。ただ、そう認識するか否かはあなたがその国にいるかどうかには関係しない。言うまでもなく、私はすべて試してみざるを得なかった。14 は、たいていの場合即座に緊急サービスに電話をかけた。15 も一度だけそうしたが、ほとんどの場合 15 や 17 や 18 はそれほどには緊張を強いないインターフェイスを表示するのみ、勝手に緊急通話をかけることはなかった。

では、他の一桁または二桁の数はどうだろうか？ 私はすべてやってみた... と言いたいが、全部やってみたのは 29 までで、それ以上はいくつか思い付いたものだけ試した。Siri の反応には多少ブレがあった。14 より小さい数では、Siri はたいてい知らん顔だったが、時には私が言った数をカレンダーイベントの作成意図だと解釈することがあった。(下の図で省かれた数はすべて下のどれかと同じ反応を示した。)

Siri が一番迷いを見せたのは 16 だったが、緊急電話番号と解釈したことはなかった。ただ、皆さんがパキスタンで火事を通報する必要に迫られないことを願いたい！ でもこれを機会に 16 が素数でない偶数であることを知れて嬉しい人もいることだろう。

同じように、19 も緊急電話番号とは解釈されなかったが、Wikipedia によればジブチで救急車を呼びモロッコで警察を呼ぶ電話番号が 19 のはずだ。興味深いことに、20 を超えたとたん、MMI や USSD 番号に電話をかけることはできませんという反応が頻発するようになった。

それは何かというと、まず USSD は Unstructured Supplementary Service Data の略で、GSM ベースの携帯電話がキャリアのコンピュータとやり取りするために使われるコミュニケーション・プロトコルだ。例えばプリペイドの GSM 携帯電話の利用可能残高をチェックするためによく使われている。MMI は一般的に Man-Machine Interface の略称で、MMI 番号とは、例えば通話を別の電話番号に転送する際に入力するコードのことのようだ。この番号はすべてのデバイスにハードコードされている。

いったいなぜ Siri と 14 という数を尋ねる Google 検索が突然私たちのサイトにヒットするようになったのかは私には分からないが、とにかくこの緊急通話機能自体は新しいものではない。いずれにしても今回のことは、Siri について、世界中の緊急電話番号について、さらにはマニア向けの通信プロトコルについて学べる楽しい機会となった。

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ビデオ会議サービス Zoom はかつてない監視の目に晒され、それが急激に大きな騒ぎとなった。監視の目を向けたのは主として無料レベルのサービスを使っているコンシューマや学校のユーザーたちであった。この 4 月の初めに、TidBITS はあらゆる Zoom のセキュリティ、プライバシー、および暗号化の欠陥と、設計の誤り、判断ミスを広範囲に挙げた私の記事を出版した。(2020 年 4 月 3 日の記事“セキュリティとプライバシーに関する Zoom の欠陥総まとめ、自衛策はあるのか”参照。)

その記事を執筆し編集している最中にも新たな攻撃や問題点が明らかになり、それと同時に Zoom は力の及ぶ限りすべての懸念に対処した。Zoom はそれ以来従業員総動員で努力を続けたが、ついに緊急を要する変更のすべてに先んじるに至り、少し落ち着いた段階に達した。以下では、既に解決された問題点と、新たな発覚について検討して、Zoom が更新した同社の将来計画にも触れたい。

高まった安全制御

この会社の最大の問題点は好ましくないインターネット文化から発生したものであったが、その中でこの会社もユーザーたちも集中攻撃に晒されることになった。“ズーム爆弾”という言葉がよく使われるようになり、荒らし者や偏見の持ち主が他人のミーティングに飛び込んでポルノ映像をストリームしたり、反ユダヤ主義のスローガンを書き込んだり、人種差別的な罵り言葉を叫んだり、その他さまざまの許されない言動をすることを意味するようになった。

これは他のシステムでも起こっている。うちの子供たちの通う公立学校のシステムは Microsoft Teams で標準化されているが、先週“Teams 爆弾”とでも呼べるものについての電子メールがある教師から届いた。けれども Zoom は群を抜いてその種の事象の最も急激な増加を経験したし、表面的には最も脆弱な予防措置しか備えていなかった。

Zoom は一連の最良実践例を公表して、公開ミーティングでもプライベートなミーティングでもホストたちが不快な参加者や不品行を避けるための役に立とうとした。実際にはそれだけではあまり役に立たず、2020 年 4 月 4 日に同社は一連の対策を始め、それがこのサービスを使う際の安全の側面に変更を施すに至った。ただし、結果としてホストにもミーティングに参加する人たちにも負担が増えることとなった。2020 年 4 月 8 日に、Zoom CEO の Eric Yuan は NPR のインタビューに応えてこう述べた。「使い勝手と、プライバシー・セキュリティとの衝突が起これば、たとえ余分に複数のクリックが必要になったとしても、プライバシーとセキュリティの方が重要です。」

それらの変更の中には前回の記事で触れたものもあるが、その記事よりも新しいものが大多数だ。主なものを具体的に挙げよう：

• パスワードが必要： すべての無料アカウントと教育機関向けにアップグレードされたアカウント、それにシングルホストの有料アカウントで、パスワードが要求されるようになった。パスワードは自動的に生成され、変更はできるが削除はできない。これにより、ミーティング ID を入手したけれどもパスワードは知らない人物からのアクセスを防止できる。また、ランダムに生成したミーティング ID を送り付けてパスワードなしのセッションに潜り込もうとするボットからのアクセスも防げる。
• ミーティング ID を隠す： ミーティング ID が Zoom アプリのタイトルバー上に表示されなくなったので、スクリーンキャプチャがソーシャルメディアなどの場所にポストされてもミーティング ID が人目に触れることはない。
• 待合室 (waiting room) を有効化： 従来このオプションをオフにしていたアカウントも含めて、すべてのアカウントで Waiting Room 機能がデフォルトで有効となった。Waiting Room 機能は、ミーティングに参加しようとする人たちをいったん待機状態に置く。ホストが許すまではミーティングに入れない。面倒な手間がかかるので、もしもこれが不必要であるような環境にいる場合には、ミーティングごと、ホストごとにこの設定を手動でオフに切り替えることができる。
• 集中化されたセキュリティ設定： Zoom アプリに新設された Security ボタンが、プライバシーとセキュリティに関係するすべての設定項目を一か所にまとめる。参加者にチャットを使えなくしたり、スクリーン共有をできなくしたりもここでできる。
  

  

• ミーティングのロック： この Security ボタンのところからクリック一つでホストがいつでもミーティングをロックでき、新たな参加者が Waiting Room に加わることも直接参加することもできなくなる。もう一度クリックすればミーティングのロックが外れる。
• 名前の変更を防止： 人々がミーティングに参加したり参加を求めたりする際に使う名前を変更できないようにホストが設定できる。望まれない訪問者にしても、ただふざけたいだけの子供たちにしても、ミーティングの最中に名前を人の名誉を傷付けたり罵倒したりするようなものに変えることがあった。

荒らしへの対策としてそれほど明白でない変更点としては、あらゆるメジャーなブラウザで利用できる Zoom のウェブアプリを使う際に Zoom アカウントへのサインインが必要になったことがある。報道によれば、カンファレンスに悪意を持って参加した者たちがウェブアプリをスクリプト化してミーティングから追放されても毎回別の名前を使って連続的にまた参加し直すことができるようにしていたという。全員がそれぞれ Zoom アカウントにサインインしなければならないという制限が望ましくないと考えるホストは、この設定を無効に切り替えることもできる。けれども、共通の目的を持つ人たちの間で繰り返しミーティングが開催されるような場合には、例えば依存症支援の人たちのグループがオンラインに移行したような場合には、この設定を使うことで乱用を防止する役にたつだろう。

セキュリティとプライバシー関係のその他の修正点

また、Zoom は他にもいくつかのセキュリティやプライバシーの問題点に修正を加えた：

• ドメイン内連絡先の可視性： Zoom はもはや同一ドメイン名を持つ電子メールアドレスの人たちが同一の組織に属しているという前提を用いない。従来、Gmail や iCloud など一部のメジャーな ISP やメールホストを除いたアドレスを持つ人はすべて、自分と同じドメインを持つ他の人たちのアカウント情報を見たり自分の連絡先に追加したりできていた。この機能は無料アカウントとシングルホストの有料アカウントで無効化され、他の有料アカウントでは手動でのみ有効化できる。
• 待合室 (waiting room) の脆弱性： Citizen Lab は Waiting Room 機能にセキュリティ問題を発見したが、Zoom に修正の機会を与えるためそれを 2020 年 4 月 3 日の報告書には含めなかった。その後このバグは Zoom がサーバのソフトウェアをアップデートした後に開示されたが、ほんの少しの技術的経験さえあればミーティングの Waiting Room のみに滞在を限定されてもそのセッションの暗号化鍵とビデオストリームを抽出できるというものであった。
• トラフィックが中国を通ってルーティング： データが通過する経路というのはただ単に技術的な問題であるだけでなく、政治的、規制的、およびビジネス的な問題でもある。Citizen Lab の報告書が、中国の参加者が一人もいなかったとしてもトラフィックの一部が中国国内にあるサーバを通過している事実を明かした。これに対して Zoom はそれがロードのバランス化を図る際の誤りによるものだったと説明したが、運用の素早いスケーリングが必要なことを考えれば当初もっともな説明に思えた。同社は既に永続的な変更を施していて、他の国からのデータが中国のサーバを通過しないようにしたと述べた。有料ユーザーのみへの新機能が 2020 年 4 月 18 日に開始され、そのユーザーはデータの通過を認める地域をいくつかの選択肢から選べるようになる。無料レベルのユーザーは自分が申し込んだ地域にあるデータセンターのみに限定される。中国に対する懸念を別としても、米国外で National Security Agency (国家安全保障局) その他の米国の諜報機関を信用していない人たちもいる。

Zoom はさらに、Chief Information Security Officer (CISO、情報セキュリティ最高責任者) たちの評議会を形成して、会社に助言させるようにしたことを発表した。加えて、元 Facebook でセキュリティ最高責任者を務めていた Alex Stamos と契約して有給アドバイザーとして働いてもらうとも述べた。

Facebook はセキュリティとプライバシーに関する慣行について徹底的な批判と政府の調査とに直面することになったが、報道によれば Stamos はこのプラットフォーム上のロシアによる偽情報の危険を強調したことで Mark Zuckerberg やその他の重役たちにとって目の上のこぶになったのだという。2018 年に、Stamos は Facebook を去り、学術的研究を追い求めるとともに有給のコンサルタント業を始めた。

継続的な進歩はあなたにとって十分か？

Zoom は継続的にバグに対処しつつ、反応を素早くすると述べてきたここ数週間の約束を履行しようとしている。Zoom の過去の過ちの結果としてトラブルに遭った人たち (控え目過ぎる表現かもしれないが) からの信頼を取り戻すために、この会社は今後も継続的にさらなるセキュリティとプライバシー、加えてより高度な透明性に向けて努力すると同時に、このパンデミックの時代の中で最も人気あるビデオ会議の選択肢へと Zoom を押し上げたその高度な品質とパフォーマンスを保ち続けなければならない。

私たちの推測では、一部の人たちの目には Zoom がその過ちを乗り越えて元通りに回復することは決してないのかもしれない。けれどもそこまで頑なにこの会社を嫌いはしない人たちの目には、この会社が今は正しいことを言っていると同時に、正しい方向へ進むための努力を注いでいると映るだろう。最近実施した TidBITS スタッフ間のビデオ会議で私たちは Skype を 5 分間ほど試してみたが、オーディオが落ちたりその他の問題に悩まされた。けれども Zoom に切り替えてみると、その後 1 時間も会議を続けたのにオーディオもビデオも極めて堅牢で何の問題もなかった。これからも他のいろいろな選択肢を試してみるつもりだが、既に Zoom が高い基準を設けてしまっていると思う。

私は現在 Zoom に関する本を Take Control Books シリーズに執筆している最中なので、皆さんからの情報や助言をコメントに書き込んで頂けるとありがたい。それから、無料の Take Control of Working from Home Temporarily もぜひダウンロードして読んで頂けると嬉しい。この本は突然自宅で仕事をしなければならなくなった人たちのために私が書いたもので、ビデオ会議のためのヒントもたくさん載せてある。多くの Take Control 著者たち、TidBITS 編集者や寄稿者たち、その他の人たちからも体験談や洞察をたくさん頂いた。

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