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#1522: Apple の公開ベータ版が利用可能、Apple が Find My をサードパーティに拡大、Apple のバージョン番号とビルド番号を解読

テスターたちよ、エンジンをかけよ! Apple が iOS 14、iPadOS 14、tvOS 14 の公開ベータ版を出した。macOS 11 Big Sur と watchOS 7 のベータ版も間もなく出るはずだ。いつも言っていることだが、日々使っている重要なデバイスにインストールしてはいけない。また、バグを見つけたら必ず報告しよう。さて、近いうちに実現される変更点の一つとして、さまざまなタイプの電子機器をなくしても見つけるのが簡単になる。その、Apple が Find My サービスをサードパーティ製のデバイスにも拡張しようとしているというニュースを Glenn Fleishman が検討する。それからもう一つ、Apple で長く働いた David Shayer が今回も寄稿記事を書いて、Apple のオペレーティングシステムのバージョン番号とビルド番号をどうやって解読するか、それが何の役に立つかを説明する。今週注目すべき Mac アプリのリリースは Bookends 13.4.3、Pages 10.1, Numbers 10.1, Keynote 10.1、1Password 7.6、それに Alfred 4.1 だ。

Josh Centers  訳: 亀岡孝仁  

Apple、iOS 14, iPadOS 14, そして tvOS 14 の公開ベータをリリース

その日がやってきた。公開ベータが幾つかの Apple の次期オペレーティングシステムに対して出された:iOS 14, iPadOS 14, そして tvOS 14 である (macOS 11 Big Sur と watchOS 7 に対する公開ベータは間もなくと表示されている;macOS Public Beta Access Utility は今ダウンロード可能で、必要なプロファイルをインストールすることが出来、そして Big Sur 公開ベータが出荷されたら提供を受けられる)。

これらのベータは公開されていて誰にでも開かれているが、これらを皆さんの主たるマシンに入れることは賢明ではないことを指摘しておきたい。別の言い方をすると、オペレーティングシステムのベータを機能するべく依存している機器に入れることは、真に愚かなことである。これらのベータは、我々がこれ迄に見てきた中では最も安定したものではあるが (恐らく、昨年の度重なる不手際だったリリースの後の Apple による開発プロセスの見直しのお陰であろう、"iOS 13 と Catalina がバグだらけな6つの理由" 21 October 2019, 及び "iOS 13 のバグを受け Apple がソフトウェアのテストを見直し" 25 November 2019 参照)、ベータサイクルでは如何なる時点でも、クラッシュや不正動作は可能である - いや、起こりやすい。

ベータの一つを試すには、Apple の公開ベータのページに行きサインインするかサインナップし、自分のオペレーティンググシステムを選択、そして指示に従う。これは通常自分のマシンに特別なプロファイルをインストールしそしてそのオペレーティングシステムをアップデートすることを伴う。(もし望むなら、Guide for Public Betas ページに直接行けば、ダウンロードにアクセス出来る。)

Big Sur の公開ベータが出たら、APFS は macOS 10.15 Catalina ベータを macOS 10.14 Mojave と並べてインストールするのを容易にしてくれたが、Big Sur ではこのやり方は大きな問題に直面することになることに注意して欲しい。開発者ベータリリースノートの奥深くに以下の警告が埋め込まれている:

もし macOS Big Sur 11 ベータが、以前のバージョンの macOS と同じ APFS コンテナにインストールされると、システムソフトウェアアップデートは以前のバージョンの macOS 上には最早インストール出来なくなる。

言い換えれば、もし Big Sur ベータを Catalina と並べて同じコンテナにインストールすると、Catalina をアップデート出来なくなる。そうではなく、テスト用Mac 上に Big Sur のための別のパーティションを作成すべきであり、或いはそのマシンが犠牲となっても構わないものであれば、現行のオペレーティングシステムに上書きしてインストールするのも良い。

そして、公開ベータを試験する主たる理由はバグ報告が出来ることであるので、David Shayer の "修正が実現するように Apple にバグ報告する方法" (17 June 2020) に書かれた進言を再読されたい。

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Glenn Fleishman  訳: 亀岡孝仁  

Apple、"Find My" クラウドソーシングをサードパーティアクセサリに開放

Apple の Find My サービスは、あなたの iPhone, iPad, そして Apple を使っている友人や家族迄をも追跡させてくれる。将来、Find My を使って、鍵、眼鏡、そして猫までも - それはちょっと現実離れしていて、せいぜい犬止まりかも - 探せるようになるかも知れない。

2020 年内には、無線を備えたアクセサリメーカーは、紛失したり或いは盗まれたりしたハードウェアを探すために Apple のクラウドソースによる Find My システムを使えるようになるであろう。iOS 13 と macOS 10.15 Catalina での Find My アップデートは、Internet に接続出来ない Apple ハードウェアに暗号化された識別子を場所情報を一緒にして、近くの Apple ラップトップ、iPhone そして iPad に Bluetooth を使い Apple サーバーに安全にリレーさせることを許した。このアップデートはまた、macOS に対する独立したアプリも追加した;それ以前には Mac ユーザーは iCloud Web サイトを使わねばならなかった。("Apple の新サービス Find My がオフラインのハードウェアを見つける方法" 21 June 2019 参照。)

サードパーティアクセサリを Find My システムに参加させることに関する FAQ の中で、Apple は最終仕様は 2020 年末迄には出すと言っている。メーカーは色々なハードウェア要件を満たすだけでなく、iPhone, iPad, そして iPod touch 互換性に関する Apple の MFi プログラム に参加する必要がある。

Find My を何故開放するのか?

多くの詳細は未だ公には答えられていない。Apple は仕様の草稿を守秘義務契約の裏で提供しており、そこにはハードウェア要件や開発者が実現出来る機能への更なる情報が提供されているのかも知れない。例えば、Apple は現在の Find My で Bluetooth を使って Mac, Apple Watch, iPhone, iPad, 或いは iPod touch にその身元をブロードキャストするのを許しているが、iPhone 11 及び iPhone 11 Pro はまた ultrawideband (UWB) 超広帯域無線も有している。それは、同社が一つの空間の中で正確な方向性を提供するために使用している短距離技術である。(これらの iPhone の一つがあれば、何らかの Share シートから AirDrop を開き、別の iPhone 11 か 11 Pro に向けてやると、その電話の持ち主は AirDrop リストの一番先頭に現れる。)

どれだけ多くの人が Bluetooth イヤフォンやイヤバッドを、Apple の AirPods や各種の Beats 聴取機器を含んで、使っているか (そして紛失する) を考えると、Find My サポートが使える機器が増えれば、人々が置き忘れたり、盗まれたりする比較的高価な機器を簡単に見つけ出す手助けとなるであろう。(Apple は AirPods に対する Find My を現在でもサポートしているが、セットの片方または両方がケースから出ており、ペア付けされた iPhone, iPad, 或いは iPod touch の近くにある場合にしか働かない。)

サードパーティサポートはまた、Apple が Find My が使える独自の追跡タグを導入することに対する痛手も和らげるであろう。その様な追跡手段はだいぶ前から噂されていた - 最も新しいのは AirTags と言う名前で - それらの噂は、一部には、同社の画面キャプチャやソフトウェアの痕跡に基づいていた。どうもそれは Apple チップを使った UWB に依存し、電池効率やデータ交換を可能にしているようである。

Apple の噂の AirTags は Tile からの製品と直接競合することになるであろう。Tile は Bluetooth に基づいた追跡子を長年製造している。Tile は、付属の Tile タグを使って行方不明のものを見つけ出す独自のクラウドソースされた追跡システムを作り上げた。Tile の副社長で法務顧問である Kirsten Daru は、米国議会で January 2020 に Apple が、Tile が必要とする場所と連続追跡機能へのアクセスを難しくし、そして UWB へのアクセスを拒絶している一方で競合品も出してこないと証言した。Daru 曰く:

Apple は、自らの利益を優先するやり方で、アプリケーションと技術に対する門衛として行動している。

どんな会社でも自らの利益のために行動するが、勿論例外はあるが、Apple の巨大なユーザーと機器の集合へのアクセスに関する抜け目のない管理は、同社にモバイルの世界においてとりわけ不公平な強みを与えている。競争は、製品の改良を促し、そして多くの場合価格低下やより多くの機能をもたらす健全な方法である。現在の Find My に対するアップデートされた Apple が "数億台" と表現する Apple 機器へのアクセスを Tile に与えることは、如何なる反競争的な行動に対する懸念も減じるであろうし、それに、Apple 機器所有者に対する Tile の価値も高めることになるであろう。

Find My はどの様に働くか

現在の Find My システムは、同じ iCloud アカウントにログインしている機器の間で働く。これらの機器間で伝達される暗号化情報に対して、Apple はその何れに対しても解読してのアクセスは出来ない。機器が Internet に接続出来ないと、それは暗号論的に生成された Bluetooth ID をブロードキャストし始めるが、周りにいる誰にも情報を提供しないし、その所有者のアカウントにも結びつけられない。(Apple は、これらのブロードキャストがどの様に開始されるかについて説明していないが、同社の文書に基づいて、私が勝手にこのシステムがどの様に働くのか推論したのが上記である。と言うのも、機器に紛失したとか盗まれたとかの印を付けるのは Internet に接続していないと出来ないからである。)

最新のオペレーティングシステムを搭載した如何なる Mac, iPhone, iPad, 或いは iPod touch でも、この形式の Bluetooth ID を認識し、それを自身の現在位置 (GPS, Wi-Fi, セルタワー、或いはそれらを結合したものから) と共に Apple にアップロードする。

Find My アプリで機器を紛失したと印を付けると、その iCloud アカウントセットに属する全ての機器に保存されたアカウントベースの暗号化データのアップロードが始まり、Apple に同じ様に暗号化された Bluetooth ID を見つけることを許可するが、この時如何なる秘密も暴露されない。一致した Bluetooth ID は、ユーザーがハードウェアを紛失したと印を付けたその機器へとダウンロードされる。もしこれが、Apple と Google の匿名化した COVID-19 通知システムと似ていると感じられたら、それはそれも同じ概念の上に構築されたからである ("Apple と Google、プライバシーを守った COVID-19 接触追跡&通知で協業" 10 April 2020 参照)。

Apple がそのエコシステムを開放するのは、殆どの場合良いことである。同社は通常プライバシーとユーザー経験の改善を促す実施詳細に細心の注意を払う。この場合、Find My ネットワークを開放することは、多くの人が紛失したハードウェアの費用を節約し、競争を促進することを、システムの有用性やプライバシーを損なうことなしに。可能とする。

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David Shayer  訳: Mark Nagata   

Apple のバージョン番号とビルド番号を解読する方法

Apple のオペレーティングシステムにバージョン番号、例えば iOS 13.5.1 や macOS 10.15.5 のような番号が付いていることは、誰でも知っている。でも、Apple のオペレーティングシステムにはそれ以外にビルド番号も付いていることを、皆さんはご存知だろうか。例えば iOS 13.5.1 のビルド番号は 17F80 だ。これは、何を意味しているのか?

Mac で macOS のバージョンおよびビルド番号を知るには、Apple > About This Mac を選んでから、バージョン番号をクリックする。iOS や iPadOS では、Settings > General > About へ行って Software Version をタップする。watchOS では、iPhone の Watch アプリで General > About へ行って Version 行を見る。

Finding build numbers in Apple operating systems

あなたがどのオペレーティングシステムを走らせていてもビルド番号をチェックするのは簡単だが、今の Apple はもはやその基準リストを公表していない。その情報を知るには、Wikipedia の iOS Version HistorymacOS Version HistorywatchOStvOS それぞれの記事を読むか、あるいは MacTracker アプリを見ればよい。 (macOS ビルド番号を見るには、バージョン履歴記事から個々のリリースごとの記事を開いて見る必要がある。)

Apple は個々のオペレーティングシステムごとに少なくとも毎晩新たなビルドを作って、エンジニアたちが毎朝フレッシュなバージョンを使えるようにしている。それらのビルドの大多数は決して会社の外へ出ることがないので、例えば 13.5.1 のような公式のバージョン番号が付けられることはない。それでも、エンジニアたちにとっては個々のビルドを区別する手段が必要だ。ビルド番号はまさにそのためにある。Apple のビルド番号を解読する方法をいったん理解すれば、どのリリースについてもさらなる情報を引き出すことができる。

Apple のバージョン番号とビルド番号を理解する

Apple のオペレーティングシステムの主たる2つの系列である iOS と macOS はそれぞれ独立したバージョン番号とビルド番号を持っている。それに対して iOS、iPadOS、watchOS、tvOS は共通の番号付けシステムを使っているが、これはそれらすべてが共通の iOS コードベースから派生したものだからだ。(ビルド番号を使うのは macOS、iOS、iPadOS、watchOS、tvOS など Darwin から派生したオペレーティングシステムのみであって、クラシックな Mac OS や iPod OS はこれと同じビルド番号システムを使っていなかった。)

ご存知の通り、すべての Apple オペレーティングシステムのリリースには公式のバージョン番号が付いており、それは3つの部分から成っている:

公式バージョン番号の構造をはっきりさせるために、簡単な表にしておこう。

OS メジャー マイナー パッチ
iOS 13 5 1
macOS 10 15 5

Apple のビルド番号も3つの部分から成っている:

一点の曇りもなく明らかにしておこう。iOS 13.5.1 に注目すると build 17F80 であり、macOS 10.15.5 に追加アップデートを施したものは build 19F101 だ。

OS メジャー マイナー Daily
iOS 13.5.1 17 F 80
macOS 10.15.5 19 F 101

少し関係あることを一つ注意しておこう。macOS Big Sur で Apple はメジャーバージョン番号を 11 に更新し、マイナーバージョン番号を 0 にリセットする。このことにより、オペレーティングシステムのバージョンをもとに機能の利用可能性を判断している一部のアプリに問題が起こる可能性がある。macOS のメジャーバージョン番号があまりにも長い間 10 のままであったため、手を抜く癖のある一部の開発者たちがマイナーバージョン番号のみをチェックするようになってしまったからだ。言うまでもなく、その種のずさんなコードは Big Sur で正しく働かないだろう。幸いにも、Howard Oakley が説明している通り、Apple は多少の努力を費やして、いくつかの状況で Big Sur が 11.0 の代わりに 10.16 を返すことで問題を緩和するようにした。これこそ、アプリが特定の機能の存在を知るためには macOS の API を直接チェックすべきであることの理由であって、Apple がそのバージョンまたはそれ以前に含めたからといって特定のバージョンに機能が存在していると思い込んではならない。

メジャーなビルド番号

近年は、iOS のメジャービルド番号が毎年変わる。iOS 13 のメジャービルド番号は 17 で、iOS 14 のメジャービルド番号は 18 だ。

iOS、iPadOS、watchOS、tvOS の Build Train
iOS iPadOS watchOS tvOS メジャービルド番号
iPhone OS 1 1–4
iPhone OS 2 5
iPhone OS 3 7
iOS 4 8
iOS 5 9
iOS 6 10
iOS 7 11
iOS 8 watchOS 1 12
iOS 9 watchOS 2 tvOS 9 13
iOS 10 watchOS 3 tvOS 10 14
iOS 11 watchOS 4 tvOS 11 15
iOS 12 watchOS 5 tvOS 12 16
iOS 13 iPadOS 13 watchOS 6 tvOS 13 17
iOS 14 iPadOS 14 watchOS 7 tvOS 14 18

macOS では、メジャービルド番号はやはり大きなリリースごとに変わリ、今はそれが毎年起こるが、過去にはそれほど頻繁でないこともあった。

macOS Build Train
macOS バージョン メジャービルド番号
Mac OS X Public Beta 1
Mac OS X 10.0 Cheetah 4
Mac OS X 10.1 Puma 5
Mac OS X 10.2 Jaguar 6
Mac OS X 10.3 Panther 7
Mac OS X 10.4 Tiger 8
Mac OS X 10.5 Leopard 9
Mac OS X 10.6 Snow Leopard 10
Mac OS X 10.7 Lion 11
Mac OS X 10.8 Mountain Lion 12
Mac OS X 10.9 Mavericks 13
Mac OS X 10.10 Yosemite 14
Mac OS X 10.11 El Capitan 15
macOS 10.12 Sierra 16
macOS 10.13 High Sierra 17
macOS 10.14 Mojave 18
macOS 10.15 Catalina 19
macOS 11.0 Big Sur 20

マイナーなビルド文字

iOS では、マイナービルドバージョンは通常 X.1 のオペレーティングシステムリリースごとに変わる。これは1文字であって、数字ではなく、通常アルファベット順に変わる。ただし例外もあって、iOS 13.1 はマイナーバージョンを B に変えずに A を使い続けた。また、iOS 13.3 のマイナーバージョンは C で、iOS 13.4 のマイナーバージョンは E、つまり D が飛ばされた。これらの奇妙な点についてはあとでまた触れる。

iOS 13 マイナーバージョン
iOS バージョン ビルド
iOS 13.0 17A577
iOS 13.1 17A844
iOS 13.2 17B84
iOS 13.3 17C54
iOS 13.4 17E255
iOS 13.5 17F75

macOS の世界では状況が少々異なる。ご覧の通り、マイナービルド文字は macOS パッチリリース番号に対応している。

Catalina マイナーバージョン
macOS バージョン ビルド
macOS 10.15.0 19A583
macOS 10.15.1 19B88
macOS 10.15.2 19C57
macOS 10.15.3 19D76
macOS 10.15.4 19E266
macOS 10.15.5 19F96

Daily Build 番号

さて、Daily Build 番号でいろいろと面白くなる。Apple エンジニアたちは新しいビルドが作られる度に、つまり通常は毎晩、この番号を1つずつ増やすが、時にはもっと頻繁に増やすこともある。Apple が iOS 13 のエンジニアリングビルドを初めて作った際に割り当てられたビルド番号は 17A1 で、その次のビルドが 17A2、という風に続いた。

最初に出荷されたバージョンの iOS 13.0 は 17A577 であった。それはつまり、Apple がユーザーに初めて出荷するより前に iOS 13 のビルドを 577 個作ったということを意味している。2番目に出荷されたビルドは iOS 13.1 で、そのビルド番号は 17A844、つまり iOS 13.1 を作るためにさらに 267 回のビルドがあったということだ。さらにもっと面白いのはパッチリリースに対応したビルド番号だ。

iOS 13 パッチリリース
iOS バージョン ビルド
iOS 13.0 17A577
iOS 13.1 17A844
iOS 13.1.1 17A854
iOS 13.1.2 17A860 と 17A861
iOS 13.1.3 17A878

ご覧の通り、Apple はパッチリリースをかなり素早く出している。iOS 13.1 と iOS 13.1.1 の間にはたった 10 個のビルドしかなく、13.1.1 と 13.1.2 の間はたった 6 個か 7 個、その後 iOS 13.1.3 のリリースまでにもたった 17 個か 18 個しかない。iOS 13.1.2 がなぜ2つのビルド番号を持っていたのか、私は知らない。iPadOS 13.1.2 は前者と同じビルド番号なので、おそらく後者は特定の iPhone モデルあるいは特定の地域のみを対象にしたものだったのかもしれない。

macOS では Daily Build 番号がさらに重要になる。きっとお気付きのこととは思うが、Apple がすべてのオペレーティングシステムに素早いバグ修正アップデートを出さざるを得なくなった場合、macOS では動きが取れないことがある。例えば、iOS 13.5 は 13.5.1 へ進んだけれども macOS 10.15.5 は公式のバージョン番号を変えずに「追加アップデート」が出された。

幸いにも、ビルド番号にはそのような制約はない。下の表でお分かりの通り、追加アップデートでも Daily Build 番号は変わるので、番号を見ればお持ちの macOS がアップデートされているか否かが分かる。なぜそれが役にたつかを言えば、Apple は通常追加アップデートをそれが対処しようとするアップデートに遡って適用するからだ。だから、あなたが macOS 10.15.5 のインストールをせずに一週間控えていたとして、その後あなたがインストールしようという気になった時点では、既にそれが macOS 10.15.5 追加アップデートに含まれていたということもある。(2020 年 6 月 1 日の記事“カーネル脆弱性が Apple に全ての OS のアップデートを強制”参照。) そのような状況下で自分が何を持っているかを確実に知るにはビルド番号を見る以外に方法がない。

Catalina 追加アップデート
macOS Version Build
macOS 10.15 19A583
macOS 10.15 追加アップデート 19A602
macOS 10.15 修正版追加アップデート 19A603
macOS 10.15.4 19E266
macOS 10.15.4 追加アップデート 19E287
macOS 10.15.5 19F96
macOS 10.15.5 追加アップデート 19F101

ビルド番号から意味を引き出す

お分かりのように、ビルド番号からは役に立つ情報が分かる。例をあげれば、 watchOS 1 (12S506) のメジャービルド番号 12 で、これは iOS 8 (12A365) と同じだ。なぜなら、watchOS 1 は iOS 8 のコードベースに由来したものだからだ。

また、iOS と iPadOS が同じソースからビルドされたものであることが、両者が同一のビルド番号 (17A577) を持っていることから分かる。その一方で、tvOS 13 と watchOS 6 は同一のメジャービルド番号を持っていることから共に iOS 13 のコードベースに由来することは分かるけれども、両者のマイナービルド文字が違い、iOS で使われているものとも違うことから、別々の分枝であることが分かる。tvOS は J で始まり、watchOS は R で始まる。

OS ビルド
iOS 13.0 17A577
tvOS 13.0 17J586
watchOS 6.0 17R575

Apple は必ずしもこれらのルールを厳格に守っている訳ではなくて、別の言葉で言えば、時には状況に応じて止むを得ずルールを逸脱することもある。もしも Apple がルールに従っていたならば iOS 13.1 は 17B267 であったはずだが、実際には 17A844 であった。これはおそらく、Apple はもともと iOS 13.1 を iOS 13.0.1 にしようと考えていたのだが、あまりにも重要な変更点が含まれていたので、結局パッチバージョン番号でなくマイナーバージョン番号を増やす決断をしたからなのだろう。

去年の iOS リリースが大いに混乱を招いたのも、この種の決断が関係していた。Apple は iOS 13.0 のリリースに伴い、その時点ではまだ開始の用意が整っていなかった機能を備えて iOS 13.1 を近日中に出すと約束した。(2019 年 9 月 30 日の記事“Apple、iOS 13 を 9 月 19 日に、iOS 13.1 を 9 月 30 日に出荷”と 2019 年 9 月 29 日の記事“iOS 13.1 での追加機能: 個人用オートメーション、運転の到着予定時刻その他”参照。)

同じように、iOS 13.3 は 17C54 で iOS 13.4 は 17E255 だが、その間のマイナーバージョン D はどうなったのか? それは iOS 13.3.1 に割り当てられていて、ビルド番号は 17D50 であった。おそらく、Apple は結局 iOS 13.3.1 となったリリースを iOS 13.4 に盛り込まれた機能の多くを含めて出すことを予定していたのだが、その前に手早いバグ修正リリースをしたいと感じたのだろう。この場合、最大の要因は iPhone 11 の超広帯域技術に関係するプライバシーの懸念に対処するためであった。(2020 年 1 月 28 日の記事“Apple、iOS 13.3.1、iPadOS 13.3.1、macOS 10.15.3、watchOS 6.1.2、tvOS 13.3.1 をリリース”参照。)

ビルド番号がジャンプしたりビルド番号が足踏みしたりすることの背後にある物語は間違いなく他にも多数あるだろう。欠落しているかのように見えるビルドは、HomePod 用のものかもしれないし、まだリリースされていない製品のためのものかもしれないし、あるいは Apple 社内のみで使われる製品のためのものかもしれない。けれども将来に向けて重要なのは、これであなたがどのオペレーティングシステムリリースに際してもそれに割り当てられたビルド番号を見つけて解読することができるようになったという事実だ。その情報を知っていれば、そのリリースについてさまざまの結論を引き出すことができる。どれほど多くの労力がそれに注がれたか、Apple が何らかのバグ報告に不意打ちされたか否かといったことも、あるいは単にあなたが特定の追加アップデートを本当に受けたのかどうかも分かる。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

訳: Mark Nagata   

Bookends 13.4.3

Bookends 13.4.3

Sonny Software が Bookends 13.4.3 をリリースして改良された Bookends ブラウザを導入し、変則的な URI を持つウェブページや PDF を表示できるようにするとともに、Google Scholar に誤ってロボットと判断されるのを防ぐための対策を増やし、Google Scholar の reCAPTCHA をより良く解決できるようにした。この文献参照管理ツールは読み込みフィルターを使って PDF 添付ファイルの名前を読み込めるようにし、PDF ダウンロードがタイムアウトした場合のエラー処理を改良し、別のアプリから来たハイパーテキストリンクに反応する際に参照物の現在のリストの検索を開始するようにし、また PDF の外部リーダーとして PDFpenPro を追加している。(新規購入 $59.99、TidBITS 会員には 25 パーセント割引、71.0 MB、リリースノート、macOS 10.10+)

Bookends 13.4.3 の使用体験を話し合おう

Pages 10.1, Numbers 10.1, and Keynote 10.1

Pages 10.1, Numbers 10.1, Keynote 10.1

Apple が 3 つの iWork アプリをすべてバージョン 10.1 にアップデートして、Pages、Numbers、Keynote にさらなるビデオ機能を導入した。ビデオの URL をコピーし、Media ボタンをクリックして Web Video を選択し、URL をペーストすれば、YouTube や Vimeo のビデオを書類やスプレッドシートの中に追加できる。また、Pages と Numbers ではオブジェクト (ウェブビデオ、画像ギャラリー、描いた絵、テキストボックス、チャートなど) にタイトルやキャプションを追加できる。Pages は今回から iBooks Author のブックを読み込んで作業できるようにし、Numbers は新しい関数を使ってパターンを照合したり、テキストを操作したり、柔軟性の高い数式を作成したりできるようにした。

Keynote はスライドの切り替え中もムービーやオーディオの再生を (連続したスライドに同じファイルを追加することにより) 続けられるようになり、Play Slideshow in Window オプションを追加してローカルまたはビデオ会議でのプレゼンテーション中に他のアプリケーションにアクセスできるようにし、オブジェクトポインタを改良してモーションパスを辿る最中にも常に正しい方向を指すようにした。(無料、Pages は 299.9 MB、リリースノートNumbers は 215 MB、リリースノートKeynote は 435.5 MB、リリースノート、macOS 10.14+)

Pages 10.1, Numbers 10.1, Keynote 10.1 の使用体験を話し合おう

1Password 7.6

1Password 7.6

AgileBits が 1Password 7.6 をリリースして、通知に関するさまざまの改善を加えた。このパスワードマネージャの Watchtower 機能は 1Password のロックを外した後にサイトが攻撃を受けた場合に通知を出すようにし、またヴォールトの追加や削除、一回限りのパスワードのコピー、攻撃を受けたサイトなどの際に通知を出すか否かの環境設定項目を追加した。

今回のアップデートではまた、Dark モードで 1Password mini ウィンドウが開くのにかかる時間を短縮し、さまざまのウェブページへの書き込みを「新しい書き込み頭脳」を使って改良し、All Vaults の上へ項目をドラッグするとドラッグがキャンセルされてしまったバグを修正し、メモリ使用とパフォーマンスを改善し、コピー後に 1Password mini を自動的に片付けるようにし、1Password mini からクレジットカード番号をコピーした際に空白文字が含まれないようにし、読み込みや同期の際に不正な形式のデータの処理を改良している。(AgileBits または Mac App Store から独立動作のアプリ購入の場合 $64.99、講読の場合は月額 $2.99 または $4.99 (新規にアカウントをセットアップする TidBITS 会員は 6 ヵ月間無料)、無料アップデート、55 MB、リリースノート、macOS 10.12.6+)

1Password 7.6 の使用体験を話し合おう

Alfred 4.1

Alfred 4.1

Running with Crayons が Alfred 4.1 をリリースした。このキーボード駆動のランチャーのメジャーなアップデートで、一つのホットキーを異なるコンテクストに基づいて複数のアクションに使えるようにする機能と、スニペットのプレースホルダーを別のスニペットの内部に埋め込める機能を追加している。一つのホットキーを複数の機能に割り当てることができ、同じキーボードショートカットが異なるアプリでそれぞれ別のタスクを実行できるようにした。今回のアップデートでは 3 つの新しいワークフローオブジェクトを追加してファイル統合を改善し、連絡先のフィールドタイプに修飾キーを追加してカスタマイズしたアクション (例えば Option-Return でその番号に電話をかけるなど) を作成できるようにし、代替用の Command-Return アクションを追加して Open and Fill の代わりに 1Password の中で選択された 1Password ブックマークを開くようにし、Alfred の Help 環境設定にインタラクティブなトラブルシューティングを組み込んでよくある問題を修正する役に立てるようにした。(基本的機能は無料、Powerpack は 23 ポンド、3.1 MB、リリースノート、macOS 10.9+)

Alfred 4.1 の使用体験を話し合おう

ExtraBITS

訳: Mark Nagata   

Apple、Swift 学習教材を拡張

長年にわたり、Apple は生徒たちや教師たちに無料の教材を提供して、プログラミング言語 Swift の使い方を学ぶための役に立とうとしてきた。Apple は今回、その提供物を拡大するとともに内容を一から見直した。Apple Books アプリの中で、Swift を学ぶための無料のプログラムが2つ提供される。Everyone Can Code は小学4年生から中学2年生までの生徒を対象、Develop in Swift は高校生と大人を対象としている。

Everyone Can Code には新たな教材として Everyone Can Code Adventures という本が追加され、Apple は Everyone Can Code Puzzles を終了した生徒に読んで欲しいとしている。また、Apple は教師たちや生徒たちからのフィードバックをもとに Develop in Swift プログラムを再設計して、Develop in Swift ExplorationsDevelop in Swift AP CS PrinciplesDevelop in Swift Fundamentals の3冊から成る構成とし、それぞれに教師向けの版と生徒向けの版を取り揃えている。

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Mint、最小限の Apple Card 統合を追加

9to5Mac の記事で紹介 され、TidBITS 読者 Al Varnell が確認したのは、財務サービス Mint が Apple Card に対応したというニュースだ。少なくともある程度はという話だが。Mint の中で自分の Apple Card アカウントに接続して、残高、利用可能なクレジット枠、クレジット総額、年率、手数料総額を表示させることができる。残念ながら Mint は Apple Card の取引データを読み込めない。これはおそらく Apple Card ウェブポータルから利用できないからだろう。(2020 年 7 月 3 日の記事“Apple、Apple Card ウェブポータルを提供”参照。) そもそも Mint の存在意義は取引を自動追跡できるところにあるので、現状の Apple Card 対応ではほとんど意味がないとも言える。いずれは Apple が取引データを Apple Card ウェブポータルに追加して、実際に役に立つレベルの統合が可能になることを願いたい。

私たちがクレジットカードとやり取りする仕方を考え直そうという Apple の目標は立派だが (2019 年 3 月 28 日の記事“Apple Card: 単なるクレジットカードではない”参照)、Apple は少なくとも現状程度のものを出発点としてスタートすべきであった。ユーザーたちが期待する風に他のクレジットカードとテクノロジー的に同等となるようにと、Apple Card が止むを得ず後付けで機能を追加するような状態は望ましくなかった。

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