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#1525: Apple の記録的 Q3 2020 業績、議会と巨大テクノロジー企業の対決、QuarkXPress の恐怖物語、最新更新版の Apple Style Guide

世界経済は惨めな状態にあるかもしれないが、Apple は依然としてフル回転で動いている。iPhone とウェアラブルの売上の伸びが鈍化する一方で、異常なほど力強い iPad と Mac の収益のお陰で Apple は四半期の記録更新を達成できた。Josh Centers は、Apple が議会と対決した一日についてまとめる。この日 CEO の Tim Cook 他の巨大テクノロジー企業の責任者たち、Jeff Bezos、Sundar Pichai、そして Mark Zuckerberg と共に厳しい尋問に直面する激しい闘いを経験した。今週は Charles Maurer が寄稿記事で、Mac 用 QuarkXPress が今も存在していると指摘しつつ、このようなものは忘れられたままにした方が良いと彼が心底思った苦い経験を語る。それからもう一つ、Adam Engst が最近 Apple Style Guide に施された変更を要約しつつ、これがウェブで利用できるようになったことを紹介する。今週注目すべき Mac アプリのリリースは MarsEdit 4.4.2 と Ulysses 20.2 だ。

Michael E. Cohen  訳: 亀岡孝仁  Josh Centers

世界が燃えさかる中 Apple Q3 2020 業績は最高を記録、次期 iPhone は粋な遅刻

異常にニュースの詰まった年の、異常にニュースの詰まった四半期投資家電話会見で、Apple CEO Tim Cook は、故人となった公民権運動の指導者であり下院議員でもあった John Lewis への弔意を述べ、そして、人種平等プログラム ("Apple、歴史的黒人大学との提携を拡張" 17 July 2020 参照) 及び Apple の目標である 2030 年迄に完全にカーボンニュートラルとなることへのサポートを誓い、それから、次期 iPhone は通常の9月の発売よりも "数週間遅れて" 到着することになるであろうことを明かにした。これら全ては、驚きの記録破りの四半期業績と株式分割に加えてのことであった。

他に類を見ない年における 2020 会計年度第三四半期の業績報告で、Apple は、純利益 $11.25 billion (希薄化後一株当り $2.58) そして売上げ $59.7 billion を発表して評論家達を赤面させた。多くのアナリストが Apple の業績は昨年実績よりも少し落ちるであろうと予測していた。同社の売上げは前年同期の $53.8 billion よりも 11% 増加し、純利益は 18% 増えた ("Apple の Q3 2019、iPhone 下落、Services と Wearables 上昇、Apple Card は8月に" 30 July 2019 参照)。Apple はまた、4対1の株式分割が 31 August 2020 に実施されることも発表した。

同社の売上増加は、全ての販売地域と全ての製品部門に渡っている。"不確実な環境下で、Apple は歴史的業績となる四半期を持てた" と Apple CEO Tim Cook は言った。

Q3 category revenue over time

皆さんは、米国の GDP が三分の一近くも縮小し、Apple も世界中で店を閉めなけらばならない状況下で、Apple がどの様にしてこれ程うまくやれたのかと思われるかも知れない。理由は幾つかある:経済刺激策により人々の懐にはより多くのお金が行き渡った、突然自宅から働いたり勉強したりしなければならなくなった人達は新しい機器を必要とした、そして Apple Music や Apple TV+ の様な娯楽製品を欲したことである。Apple はまた、出張や会議の減少で経費の節減にもなったと言っていた。

iPhone

iPhone の売上げは 1.7% の漸増で ($26.4 billion 対前年同期 $25.98 billion)、第二世代 iPhone SE の人気と経済刺激策に支えられた。

Q3 iPhone revenue over time

しかしながら、今年は新型 iPhone を9月に期待してはいけない。Apple CFO Luca Maestri は、2019 年の iPhone 11 は9月後半に到着したが、次期モデルに関しては、供給の都合で、"数週間遅れ" となると思って欲しいと言った。Apple のこれ迄の遅れの発表の事例からすると、10 月前半から 12 月中旬の何処かでということになるのであろう。

iPad

iPad 販売の $6.58 billion は、昨年の $5 billion の売上げを凌いで、前年比で 31% の増加となっている。これは 2012 年以来で二番目に高い第三四半期 iPad 売上げとなる。繰り返しになるが、この成長は最近リリースされた iPad Pro モデルへの顧客需要と COVID-19 時代に於ける在宅勤務と遠隔教育機器に対するビジネスと教育需要の両方のお陰だと言える。

Q3 iPad revenue over time

Mac

家で仕事をする専門家や学生用のコンピュータに対する需要が Mac の売上げを $7 billion に押し上げ、昨年の $5.8 billion からほぼ 22% の増収となった。Apple にこれらの素晴らしい Mac 販売をもたらす手助けとなったのは、3月後半の新型 MacBook Air、そして5月の MacBook Pro のリリースである。Apple は Mac 販売で、これ迄で最高の四半期販売を Japan で、6月四半期での最高を Americas と Greater Europe で記録している。

Q3 Mac revenue over time

Apple はこれ迄 Apple シリコンを搭載した最初の Mac を今年末前には出荷すると言っていたが、Cook もそれを再確認した。Apple は何故 Mac の Intel チップを切り替えるのかと尋ねられた時、Cook は Apple シリコンは "我々が製品の中で出来る興味深いもの与えてくれる;言ってみれば、もう一つの革新の波を解き放ってくれる" と表現した。Cook が将来 Apple は Apple シリコンを他社にライセンスすることを考えるか聞かれた時の答えは、皆さんには想像がつくであろう:彼はその技術をライセンスすることを完全に除外することは拒絶したが、彼曰く、"我々は物作りの会社であり、我々は全てを作りたいと思っている。その理由は、その様にすることでユーザー経験を所有出来るからである。"

Wearables

Apple の Wearables 部門は、昨年の $5.5 billion に対して $6.45 billion を達成し、17% に近い増収となった。これらの数字はとても印象的に聞こえるが、Cook はウェアラブルの成長はこの四半期に鈍化したと言った。COVID-19 パンデミックのせいだと思われるが、ホリデーシーズンを含まない四半期としては最高を記録した。

Q3 wearables revenue over time

Cook は、Mac と iPad の急成長の多くは在宅命令のお陰だと言える、より多くの人が家から働きそして遠隔学習や在宅教育をしたと言ったが、一方で、在宅命令は、Apple Store の閉鎖と相俟って、iPhone や Wearables には反対の影響があったとも言った。それでも、どちらもしっかりした四半期実績を残した。

Services

Services の売上げは、ほぼ 15% 伸び、昨年の $11.45 billion に対して $13.2 billion となった。Cook は、その成長を Apple Music や Apple TV+ の様な娯楽サービスに対する記録的な興味のお陰だとし、更に時間を取って Tom Hanks の映画 Greyhound のストリーミングの成功やノミネートされていた Apple TV+ プログラムから数多くの Emmy 賞を受賞したことを自慢した。そして勿論、Apple Card の成功も忘れることは出来ない。"Apple Card を所有している人の数には満足している" と Cook は言い、更に、これはクレジットカード史上最速の展開だと信じていると付け加えた。驚くべきことに、Apple は 2016 会計年度の Services 売上げを倍増する目標を予定より半年早く達成した。

Q3 services revenue over time

Apple の四半期業績は驚く程良いものであったが、世界経済の混乱と多くの場所で制御不能に拡大するパンデミックの元で、同社は近い将来多くの課題に直面している。不確実な経済情勢を理由に、Apple は次期四半期に対する詳細な予測を提供するのを再度辞退した。提供された断片的な情報は功罪半ばしたものであった:Cook は、iPhone の最近の販売状況は余り変わらないであろうと言ったが、新たな Apple TV+ 番組の制作は遅延されており、再開時期の見通しは立っていないとも言った。

いずれにしろ、現在の経済環境下での Apple の業績は息をのむものであり、そして変化する環境に素早く適応するその能力は素晴らしいものであった。次期四半期の業績は現時点では誰にも分からないことであるが、この伝説の果物会社が再度、今年のレモン (余り役に立たないもの) の記録となる収穫からおいしいレモネード (役に立つもの) を作り出しても我々は余り驚かないであろう。

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Josh Centers  訳: 亀岡孝仁  

概要報告:ビッグテック対米国議会

29 July 2020 に、Jeff Bezos (Amazon), Tim Cook (Apple), Sundar Pichai (Alphabet/Google), そして Mark Zuckerberg (Facebook) の CEO 達は、表面的にはビッグテックに対する反トラスト懸念についてのヒアリングのために House Judiciary Committee (下院司法委員会) の前に(仮想的に)座った。しかしながら、この5時間以上に及ぶ出し物は、ほぼ直ぐに不満をぶちまける茶番と化した。下院議員達はビッグテックの CEO 達に対し、弱小のウェブサイトからコンテンツを盗み市場から弱小の競争相手を排除することから、保守的な見方や公然とした背信までをも検閲していることまでに及ぶ非難を投げかけた。The Washington Post の Heather Kelly はいみじくも言った:"彼らは血を求めていた。"

ビッグテックの CEO は彼らの証言は彼らの記憶する限り真実で相違ないと宣誓。

もし一日の大半を暇つぶしに使えると言うのであれば、このヒアリング全体を YouTube で見られる。でも、私はお薦め出来ない。と言うのも、午後の時間全てに渡っての張り詰めた、高速の質問と非難の後では、私は頭を繰り返し金槌で叩かれ続けた様に感じたからである。しかし、他の多くの政府ヒアリングとは違い、これが退屈だったとは言えない。

テック規制は不可避の様に見える

数時間ほど見た後で、私はこのヒアリングは実際の証拠集めを意図したものではなく、一種の人民裁判だと結論づけた。それは Chairman David Cicilline の事前に書かれた(彼は文字通り一枚の紙を読み上げた) 締め括りの言葉からも窺える:

このヒアリングは私に一つの事実を明解にしてくれた;これらの会社は、現在存在しているままで、独占力を有している。解体されなければならないものもある。全ては正当に規制されそして責任を負わなければならない。

彼の結論はヒアリングよりも遙か以前に到達されていたもので、それを変えるものについては何も語られていないのは明らかであった。

ワシントンでは民主党員と共和党員が合意することは殆ど無いが、一つ共有する点があり、それはビッグテックは問題だと言う観点である。実際の法規制につながることを妨げている障害は、互いに正反対の理由でそれぞれの党がテックは問題だと思っていることである。

例えば、共和党 Jim Sensenbrenner は Zuckerberg に Donald Trump Jr. は何故ヒドロキシクロロキンを COVID-19 治療薬として薦めるビデオを共有することを阻止されたのか質問したが (これには Zuckerberg も驚いた。何故ならば Trump が一時的に止められたのは Twitter からであり、Facebook からではなかったからである)、民主党下院議員 Cicilline は後になって Facebook は COVID-19 の間違った情報を阻止するために何故もっと努力をしなかったのかのか質問しただけであった。The Wall Street Journal はこの相違を探求した

もし 11 月に、一つの党が下院、上院、ホワイトハウスを制することになれば、テック規制は優先順位リストの一番上に近づくのは間違いなさそうだが、一党が確実に制するようになる迄は、そうはならないと私には思える。

ヒアリングでは何が起こったのか

始めに、4人の CEO は一人ずつ長い冒頭発言を行った。それら全てはヒアリングの前に PDF で公開されていた。Politico は、これらの PDF を一つの Web ページにまとめる下働きをしてくれていた。Daring Fireball の John Gruber は分析と Cook の冒頭発言の分析を掲載した。Rob Pegoraro はこの4人の発言に対する彼の分析を Forbes に書き、Cook の発言に照準を合わせ次の様に言った、それは "あからさまなもう一つの事実を提供するのに匹敵する"。(もう一つの真実とは、勿論のこと、嘘に対する今日の婉曲的な言い回しである。)

Cook は比較的簡単に逃げられた。聞かれた質問は数えられる程しかなかった - the New York Times は、彼が受けた質問は他の人より遙かに少なかったことを報じている。しかしながら、Apple はそれでも幾つかの攻撃を受けた。例えば、召喚されたメールに関係してである。このメールの中で Eddy Cue は、出版社 Random House からのアプリを拒絶することがその出版社が最終的には (当時の) iBookstore に参加することにつながったとはっきりと言っていた。我々はこの先、Apple に対する非難と、そして Apple の反応についてもっと取り上げるつもりだ。.

The Verge の Adi Robertson がこのヒアリングの概要をよく纏めている。そこでは、鍵となるやり取りがすっきりした小さな箱の中に要約されている。

もっと短く纏めたものが欲しければ、BBC が5時間に及ぶ試練を5つの要点に要約している:

The New York Times は4人の経営者それぞれとどの様に振る舞ったかに焦点を当てた。高得点を得たのは、Bezo のオフィス設定と Apple が COVID-19 パンデミックから不当な利益を挙げているとの告発のやり取りであった。

良い時代は続く、少なくとも今は

4人のテック巨人にとっては "酷" としか表現しようのない一日ではあったが、その直後には4社全てが好調な利益を示す一日が続いた。Apple は記録となる Q3 2030 業績を、iPhone 販売の減少、サプライチェーンの苦闘、そして店舗の閉鎖を余儀なくされたにも拘わらず引き出した ("世界が燃えさかる中 Apple Q3 2020 業績は最高を記録、次期 iPhone は粋な遅刻" 30 July 2020 参照)。

Facebook は、経済の惨事や主要広告主による集団ボイコットにも拘わらず、売上げを 11% 伸ばした。Google は少々の痛手を受けたが、それでもアナリストの予測を上回り四半期利益 $7 billion を計上した。恐らく、全ての中で最も衝撃的だったのは、Amazon の前年同期比 40% の増収であろう。その結果、一株当りの期待利益を開いた口が塞がらない程の $8.80 も上回った。(それがどれ程すごいことかを言うと、通常一企業が EPS 予測を 10 数セント上回ったら大変なことである。)

少なくとも 2008 年以降では最悪の経済破綻にも拘わらず、これらの4社全てで金がうなっており、そして米国議会の膠着状態からして、彼らは米国の法規制から現時点では逃れられるのは実質的に保証されている。でも、ヨーロッパでは事情は異なっており、我々も言及した通り、11 月の選挙以降には米国でも変わる可能性はある。

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Charles Maurer  訳: Mark Nagata   

マゾヒストでない限り、QuarkXPress を買うのはやめよう

編集者注: 2019 年 5 月に、トロントで開催された Collision カンファレンスに参加するため、私は Charles Maurer と彼の妻 Daphne の家に泊めてもらった。当時、Charles は夫妻で共著した本 Pretty Ugly: Why we like some songs, faces, foods, plays, pictures, poems, etc., and dislike others のレイアウト作業で最終段階の激痛に耐えているところだった。毎日、私がカンファレンスから帰宅する度に、Mac の前に座った Charles が QuarkXPress の生み出した新たな問題に罵りの言葉を浴びせているところを目にするのが常であった。私は QuarkXPress について何も知らないが、数多くの本のレイアウト作業を Adobe InDesign でしたことがあり、PDF の電子ブックを制作する作業には長年の経験がある。そんな私が自分の経験から言えるのは、この記事で Charles が物語るものは彼がくぐり抜けてきた辛い体験の氷山の一角に過ぎないということだ。結局のところ、数限りないトラブルシューティングと実験を重ねた後で私が Charles に言えた最良の助言は、思い切って損切りをして InDesign に乗り換えなさいということだったが、それは出版の締め切りが迫っていた彼には到底手の出ない贅沢であった。 -Adam Engst

もしもあなたがページレイアウトのアプリケーションを必要とすることがあっても、これだけは言っておこう。QuarkXPress を買ってはいけない。

今から 18 か月前、私は挿絵入りの本をレイアウトする必要に迫られた。過酷な使用に耐え得る選択肢として入手可能なものが、当時は QuarkXPress と Adobe InDesign しかなかった。いずれもデモ版が出ていたので、私は両方とも試した。機能的にもその制約についても、両者はほぼ同等に見えた。ただ、私には InDesign の方が分かりにくい印象が強かったし、そもそも私は Adobe が好きでない。Creative Cloud を利用するには料金の高い購読が必要だったし、たくさんのファイルにドライブを占領されるのも嫌な気がした。そこで、私は QuarkXPress を購入した。

Pretty Ugly book in QuarkXPress

何という間違いをしてしまったのだろうか! 私が Mac を使ってきた 36 年間の経験の中で、QuarkXPress ほどバグに満ち満ちたアプリケーションは他にないと思う。

私が見つけた欠陥の事例はあまりにも多過ぎて、それをここで全部披露しても皆さんをうんざりさせるだけだろうし、そもそも私だって全部を覚えている訳でもないので、ここではほんのいくつかの問題点だけを紹介することで、私が耐えなければならなかった苦行の感覚だけでもお伝えできたらと思う。

QuarkXPress の中で制作する本は、個々の章や節ごとに別々のファイルを作って集めておく必要があり、加えてその本のコンテンツとページ番号を管理するための特別のファイルが別途2つ必要だ。QuarkXPress があまりにも頻繁にクラッシュするので、私は自分の仕事を 5 秒か 10 秒に一度ずつ保存することと、現在作業中の章のみを開いておくことを習慣とするようになった。この戦略のお陰で章のファイルは大体において保持されていたけれども、2つの特別のファイルが壊れてしまうのを防ぐことはできなかった。例えば、一度など私が本を開こうとすると、次のような理解不能の警告が出た:

選択された Job Jacket は欠落している Job Jacket ではありません。以前にリンクされた Job Jacket を選択されたもので置き換えるには OK を押してください。警告しておきますが、一旦 Job Jacket を置き換えれば、あなたの本の構造ほとんど削除されます [原文のまま]。

私がデフォルトの OK ボタンをクリックすると、今度は次のようなメッセージが出た:

これは Job Jacket ファイルではありません。

そこで Cancel をクリックすると、次はこうだ:

この本を開くことはできません。Job Ticket の情報が壊れているからです。

そこで私は QuarkXPress を終了し、そのキャッシュを削除し、アプリケーションを開き直し、2つの特別のファイルのバックアップコピーを使おうと試みたが、やはり同じ一連のメッセージが出た。そうこうするうちに(どうやったのか覚えていないが)何とかこれらのダイアログを通過することができたのだが、その間に引き抜いてしまった私の髪の毛は今もまだ生え替わっていない。

次はまた別の時の話だが、いくつものダイアログが開いて、個々の章を別の名前で保存し直して本を再作成することで2つの特別のファイルを新たに作り直す必要があると言ってきた。言われた通りにしたところ、QuarkXPress は正常に働き出した... ほんの2分間ほどだけ。それからまたクラッシュして、またもや特別のファイルが壊れてしまった。

この時点に至って、私は Quark のサポート担当にメールを書き送って援助を求めた。私は彼らに、この特別のファイルが有効化するはずの自動化機能、つまり相互参照、目次の管理、索引などの大多数はもう諦めたけれども、すべてのページに手でページ番号を付け直すことだけはやりたくないと言った。個々の章の最初のページだけページ番号を手で入力するのはできるので、それで章を手動で集められる方法はないのかと尋ねてみた。彼らの返事は、私の質問に答えるには私が料金を支払う必要があるというものだった。

もしアプリケーションが自らのファイルを壊さずに管理することができないのならば、自尊心のある開発者は原因を見つけだすか回避策を提供するかするだろう。サポート料金を課したりしないはずだ。私に言わせればこれはある種のランサムウェア (身代金要求マルウェア) ではないのか。

結局、私は特別のファイルをバックアップから入れ替えるのを諦めて、本そのものを丸ごとその前夜にミラーしておいたものに取り替えることにした。含まれるのは 171 項目、サイズは 2.6 GB だ。これでうまくいくようになったが、それも QuarkXPress が次にファイルを破壊するまでの話だった。

信頼性を持って普通に機能するコントロールや機能は非常に少ない。章を印刷するというだけの作業でさえ、困難なことが多かった。例えば、印刷しようとすると次のようなメッセージが頻繁に出た:

透明性を含んだ領域に偽のボールド書体が適用されています。そのため、最終的な出力でフォントの表示が正しくなくなる恐れがあります。出力の問題を避けるには、この書体のボールド版を使ってください。続けますか?

このエラーのトラブルシューティングには長い時間がかかった。問題がどこに存在するかがメッセージの中に書かれていなかったからだ。それに、エラーメッセージの内容とは違って、実際の問題はフォントにも、テキストにさえ無関係なところにあった。私は写真を含んだボックスを作ろうとしていて、ボックス(つまり細い線で囲まれた長方形)を定義してから、その中に PNG ファイルをペーストした。これはページをレイアウトする際の普通のやり方だが、どうやら QuarkXPress は私が写真を先にペーストしてその後でボックスを描くことを期待していたらしい。私がようやくこの解決法にたどり着いた後は、印刷しようとする際にフォントのエラーが出なくなった。

私が使っていたのは QuarkXPress 2018 だ、それ以来、Quark は新しいバージョンを2つ出して、それぞれにさらなる新機能を追加した。機能が多くなれば有用かもしれないが、それはアプリケーションがきちんと動作するという前提の下での話だし、私が使ったバージョンがあまりにも悪い出来だったので、新しいリリースを試してみる価値があると考える気持ちにさえなれなかった。

本の制作のために QuarkXPress に代わって使えるものとして何かをお薦めできるほどの知識は私にはないが、InDesign を使っている友人たちは十分にうまく働くと言っている。最近登場した安価な代替製品 Affinity Publisher ($49.99) というものも、なかなか面白そうだ。パンフレットやポスターの作成には Apple の Pages でも十分使えるはずだが、私はそれより柔軟性の高い EazyDraw ($95) を使っていて、これはお薦めできると思う。

もしもこの記事の情報がお役に立ったのなら、Charles はあなたが国際援助団体 Doctors Without Borders(国境なき医師団)に少しでも寄付してくださるようお願いしています。

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Adam Engst  訳: Mark Nagata   

最新更新版の Apple Style Guide、ウェブと Apple Books で利用可能

読む価値があると言える出版物はすべて、スタイルガイドを持っている。スタイルガイドとは、コンテンツ作成の作業の手引きとなり正確さと一貫性を保障するための、一連のルールだ。ただ、スタイルガイドが通常階層的に適用されていることを知らない人は多いだろう。TidBITS においては、綴り、句読点、または大文字か小文字かなどの問題が生じる度に、私たちはまず社内用のスタイルガイドを見るようにしている。もし過去に社内でスタイルのルールを確立する必要を感じていなかった場合には、次に Apple Style Guide を見ている。そして Apple が答えていない疑問、少なくとも私たちに満足がゆく程度には答えていない疑問については、私たちは The Chicago Manual of Style を参照する。そのどれからも助言が得られなければ、あるいは助言に私たちが同意できない場合には、私たち自身の手でその話題について調べてみた上で、ルールを考え出して、それを TidBITS スタイルガイドに追加している。(申し訳ないが TidBITS スタイルガイド書類を公開することはしない。これまで何十年間も TidBITS と Take Control で使い続けてきて有機的な進化を遂げているので、公開のためにクリーンアップする手間がかかり過ぎるだろうからだ。)

注意すべきは社内用のスタイルガイドはあくまでも社内用、文字通り社内で使うための指針であって、その組織の外にいる人がスタイルガイドに書いてある見解に従う必要はないことだ。例えば、Apple は通常商標登録された製品名を記事に使わない。例えば「iPhone は最も人気ある電子メール標準に対応しています」といった文章は大企業ぶって聞こえてしまうからだ。私たち一般人ならばその文章の冒頭に“The”という単語を追加することで文章の堅苦しさを減らそうとするだろう。

こういったことをここで述べている理由は、Apple がつい最近同社の公開用スタイルガイドを更新したからだ。この更新は一年に一度か二度しか起こらない。その上、Apple がこのスタイルガイドをウェブ上で利用できるようにしていることを、私は最近になって知った。これまで、私は Apple Books からダウンロードして Books アプリで読む電子ブック版しか知らなかった。

Apple Style Guide Web interface

すべてのコンテンツが含まれてはいるけれども、Books アプリがページ単位でブラウズすること、検索が遅いこと、まるで隠れん坊のようなインターフェイスもあり、参照用の本としてやり取りしようとするとフラストレーションが溜まる一方だ。例えば目次を見るというだけの単純なことでさえ、タイトルバーの上にマウスを持ってきていつもは隠れているコントロールを出し、それから Table of Contents ボタンをクリックするという手間がかかる。

Apple Style Guide ebook version

ウェブ上の Apple Style Guide

ウェブ版の Apple Style Guide は電子ブック版に比べてはっきりと使いやすい。それに、項目への内的リンクが見つかれば、それを外的にリンクすることもできる。例えばさきほど私は「Apple Books からダウンロードして Books アプリで読む」と書いたが、あれは正しい表現だったのか?

Apple の電子ブックアプリを考える際に未だに真っ先に私の頭に浮かぶ名前は iBooks だが、その項目を見ると、代わりに "Apple Books" を使いなさいと書いてある。結構なことだが、「Apple Books からダウンロードして Apple Books で読む」と書くのは具合が悪い。幸いにも、Apple Books のところを見るとその代わりに "Books" あるいは "the Books app" を使っても構わないとある。いずれにしても私はそうするつもりだった。なぜなら、私のドライブ上にある実際のアプリの名前は "Books" であって "Apple Books" ではないからだ。ただ、Apple が私の直感を追認してくれたのは良いことだ。

Apple がウェブ上のスタイルガイドの項目へのリンクをもっと楽に作れるようにしてくれたらありがたいのにと思う。私の知る限り、Safari の中でそれをするには項目を Control-クリックして、Inspect Element (要素の詳細を表示) を選び、Web Inspector からそれに付随する element ID をコピーして、それから sub query パラメータを持つ頭文字の URL の中に手でそれを組み込むしかない。

Inspecting an element in Safari for the Apple Style Guide

例えば Home screen へのリンクを作るには次のようにする:

それからまた、検索結果を例えばサイドバー上などに残して欲しいとも思う。助けを求めようとする際に、私は多くの場合まず検索を実行してからそれぞれの結果を調べようとする。Apple Books はそういう結果を保持してくれるので、この種の検索のやり方については電子ブック版の方が優れている。それでもやはり、タイトルバーの上にマウスを持ってきて隠されていたコントロールを出し、それから検索アイコンをクリックする手間が毎回必要だ。

Style Guide の変更点からいくつか厳選

私がこれまで電子ブック版のスタイルガイドで気付いていなかったことがもう一つある。おそらくその理由は私がスタイルガイドを開くとすぐに検索を走らせていたからだろうが、Apple が冒頭のところに Changes to the Guide セクションを含めていることだ。このセクションは本当に素晴らしく、 Apple が新しいテクノロジーについてどう考えているか、世界のイベントについてどう反応しようとしているかが見て取れる。

例えば 2020 年 7 月のアップデートで、Apple が民族性や文化的アイデンティティを意味する Black という言葉を必ず大文字で始めるようにし、ブラックリストとホワイトリスト、あるいはマスターとスレーブといった言葉には代替用語を使うよう勧めていることが分かる。人種的偏見に基づくそれらの言葉を Apple が使用しないようにしているのは良いことだ。

TidBITS にもっと関係のある他の変更点には、私たちが以前から苦労させられてきたものがいくつかある:

これらの決断にまつわる細心の注意の必要な考察を楽しいと思ってくださった方には、ぜひ一度 Apple Style Guide に目を通してみて頂きたい。Apple で働く少なくとも執筆者たちや編集者たち、書き言葉に明確さと一貫性を気にかける人たちの頭脳の中を垣間見ることのできる、有益な一暼となることだろう。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

訳: Mark Nagata   

MarsEdit 4.4.2

MarsEdit 4.4.2

Red Sweater Software が MarsEdit 4.4 をリリースしてブログの再描画のパフォーマンスを改善し、今回からロード中にもできる限り早くポストが表示されるようにした。今回のリリースでは Micro.blog プラットフォームを公式のサポート対象出版システムに追加し、Page および Post タイプの項目を編集できるようにし、Draft 状態のポストもサーバへ送信するようにし、ポストの全履歴をダウンロードするようにした。このブログエディタはまた、Media Manager のアイコン表示で文字をタイプして項目を選択できる機能を復活させ、Media Manager の Published タブからドラッグ&ドロップする機能も再登場させ、出版済みのブログ記事が選択されている場合に View on Web メニュー項目が必ず有効となるようにした。

そのリリースの後間もなく Red Sweater は2回のメンテナンス・リリースを出して、既存の WordPress ポストを編集する際にカテゴリーの設定などの変更を施せなくなっていたバグを修正するとともに多数のポストを含んだブログに出版する際に起こることのあったパフォーマンスの問題に対処 (バージョン 4.4.1) し、さらに新規ブログを追加する際のクラッシュに対処 (バージョン 4.4.2) した。(Red Sweater Software からも Mac App Store からも新規購入 $49.95、15.9 MB、リリースノート、macOS 10.12+)

MarsEdit 4.4.2 の使用体験を話し合おう

Ulysses 20.2

Ulysses 20.2

Ulysses が会社名と同名の執筆アプリ Ulysses のバージョン 20.2 をリリースして、いくつかの有益な調整を加えた。今回のアップデートでは HTML および DOCX ファイルの読み込みを改善し、テキストをダッシュボードへドラッグして新規ノートを作成できるようにし、ダッシュボードの中のナビゲーション項目のプレビューテキストを改良し、スクロールバーを常時可視に設定した場合のダッシュボードのレイアウトを修正し、長いテキストをチェックする際の詳細不明の問題に対処し、またスペル修正提案が膨大な数の選択肢を提供しないようにしている。(Mac App Store から購読年額 $39.99、月額 $9.99 の Mac アプリ購読サービス Setapp の一部としても利用可、無料アップデート、20.5 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

Ulysses 20.2 の使用体験を話し合おう