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#1537: iOS 14.1 その他のアップデート、iPhone 12 レビュー、watchOS 7.0.3 修正、Apple Watch Series 6 血中酸素センサー

iPhone 12 と iPhone 12 Pro が先週出荷され始めたので、いろいろ出ている初期レビュー記事の中から良いものを選んでまとめて紹介することで、皆さんがアップグレードする際の判断の参考にして頂きたい。iPhone 12 mini と iPhone 12 Pro Max についても数週間以内に同じことをするつもりだ。Apple が iOS 14.1、iPadOS 14.1、HomePod Software 14.1、それに tvOS 14.02 をリリースした。HomePod Software 14.1 は HomePod を iOS 14 の時代へと導くとともに、新しい Intercom (インターコム) 機能を導入する。また、Apple は watchOS 7.0.3 をリリースして Apple Watch Series 3 が予期せず再起動する問題を修正した。それからもう一つ、Rich Mogull が救急医療隊員としての観点から Apple Watch Series 6 の血中酸素センサーを検討する。今週注目すべき Mac アプリのリリースは Lightroom Classic 10.0、KeyCue 9.8、SpamSieve 2.9.40、Airfoil 5.9.2、TripMode 3、Moneydance 2021、EagleFiler 1.9、Audio Hijack 3.7.4、それに Piezo 1.6.7 だ。

Adam Engst  訳: Mark Nagata   

watchOS 7.0.3、Apple Watch Series 3 の予期せぬ再起動を修正

最近出たメンテナンス・リリース watchOS 7.0.2 はほんの2件のバグ修正のみのためのものであった。(2020 年 10 月 11 日の記事“watchOS 7.0.2 がバッテリー寿命と ECG バグに対処”参照。) TidBITS 読者の David Redfearn が、それをインストールした後で彼の Apple Watch Series 3 が理由もなしに突然勝手に再起動するようになったと報告してくれた。彼と同じ目に遭った人たちは多くいたらしく、Apple はその問題に対処するため watchOS 7.0.3 を Apple Watch Series 3 専用に出してその問題を解消した。そのモデルのユーザーは、おそらく直ちにインストールするのが賢明だろう。他のモデルを使っている人にはアップデートの存在さえ見えないはずだ。

watchOS 7.0.2 または 7.0.3 にアップデートした後で Apple Watch に何らかの他の問題が起こっている人には、その Apple Watch とそれにペアリングされている iPhone を再起動することをお勧めする。もしそれで解決しなければ、Apple Watch のペアリングを解除してからペアリングし直すとよい。それでもまだ解決しなければ、iPhone の方も消去してバックアップから復元するという方法もあるが、一般的に言ってそこまでするのはやり過ぎだ。

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Josh Centers  訳: Mark Nagata   

Apple、iOS 14.1、iPadOS 14.1、HomePod Software 14.1、tvOS 14.0.2 をリリース

iOS 14 と iPadOS 14 に対して新機能を導入する最初のアップデートとして、Apple は iOS 14.1 と iPadOS 14.1 を出し、それに合わせて HomePod に対するこのリリースサイクルでの最初のアップデートと、tvOS に対するごく小さなリリースも出した。いくつか新機能があることに加えて、今回のそれぞれのアップデートでは少数のバグも修正されている。今回のアップデートには CVE エントリに公開されたセキュリティ修正はない。

iOS 14.1

iOS 14.1 には新機能が一つある。iPhone 8 かそれ以降の Photos アプリで 10-bit HDR ビデオの再生と編集に対応したのだ。間もなく登場する iPhone 12 Pro モデルで HDR ビデオの撮影が可能になるので、これは重要だ。

iOS 14 リリースノート
いったいなぜリリースノートがこんなに極小の文字で表示されるのかは謎だ。

それ以外の変更点はバグ修正に関するものだ。具体的には特にイライラする問題、iOS 14 で Home 画面のウィジェットがフォルダからアプリを削除してしまった問題が解消された。穏当な表現で言っているが、TidBITS 出版者の Adam Engst は数え切れないほどフォルダを吹っ飛ばされたあげく、放り出されたアプリの集まった余分の Home 画面が 5 つか 6 つできたのをいちいち手でクリーンアップしなければならない羽目に陥った。(結局彼はそれらの Home 画面を蹴り出して隠すことになった。実演ビデオと説明を 2020 年 9 月 9 日の記事“iOS 14 の App Library についてよくある質問”でご覧頂きたい。) あともう一つウィジェットに関係した修正として、一部のウィジェット、フォルダ、アイコンが Home 画面上で縮小表示されてしまった問題が解消された。

それ以外の変更点で修正されたバグを挙げておこう:

このアップデートではまた、Ubiquiti ワイヤレス・アクセス・ポイントとの互換性が改善され、もう一つだけ極めて特定的なバグに対処が施された。(私たちは賭けてもよいが、このバグを報告した人以外ほとんど誰もそんなことを経験しなかったに違いない) それは「一部のデバイスで拡大表示モードと英数字のパスコードを選択すると Lock 画面の緊急電話ボタンがテキスト入力ボックスと重なってしまうことがある問題の修正」だ。

iPhone 11 Pro 上で 499.9 MB というサイズのこのアップデートのダウンロードは Settings > General > Software Update で、macOS 10.15 Catalina では Finder の中で、それ以前のバージョンの macOS では iTunes を使ってできる。

iPadOS 14.1

予想して頂けるとは思うが、iPadOS 14.1 アップデートは iOS 14.1 と極めてよく似ている。第2世代 12.9 インチ iPad Pro、11 インチ iPad Pro、10.5 インチ iPad Pro、第3世代 iPad Air、第5世代 iPad mini およびそれら以降で、10-bit HDR ビデオの再生と編集に対応する。

iPadOS 14 リリースノート

10.5 インチ iPad Pro 上で 308.1 MB というサイズの iPadOS 14.1 は、それ以外の点では iOS 14.1 について上に記したもののうち適用可能なものすべてを含んでいる。このアップデートのダウンロードは Settings > General > Software Update で、macOS 10.15 Catalina では Finder の中で、それ以前のバージョンの macOS では iTunes を使ってできる。

HomePod Software 14.1

HomePod Software 14.1 はこのリリースサイクルで最初の HomePod アップデートだ。新しい HomePod mini への対応を追加するとともに、初代 HomePod と HomePod mini の双方で新しい Intercom (インターコム) 機能を導入する。私たちのテストでは、Siri に "tell" または "intercom" と語りかけることでこの機能を呼び出せるようだ。"tell" を使えばメッセージをすべての利用可能な HomePod に送り、"intercom" を使えば特定の HomePod を指定できる。

Intercom 機能は iPhone、iPad、Apple Watch、AirPods、CarPlay に対応しているため、家族の誰もが Intercom の通知を受信したり、庭からでも帰り道でも Intercom のメッセージを送信したりできます。

しかしながら、これはまだ現実とはなっていないようだ。私たちは iOS 14.1 の走る iPhone から Intercom メッセージを送信しようと試みたが、いくらやっても Siri からはそれは不可能だという返事が返ってくるだけだった。どうやら実際に Intercom 対応が広く使えるようになるのは将来の iOS 14.2 で予定されていることらしく、スクリーン上で Intercom メッセージをコントロールする機能もその時からになるようだ。

Siri on iPhone saying you can only Intercome between HomePods

今回の HomePod Software 14.1 アップデートではさまざまの検索への Siri の対応が改善され、Siri が「HomePod から答が得られません」と答える回数が減るはずだ。Apple によれば、HomePod に道案内を尋ねるとその結果が次に iOS 14 で Maps を開いた際に提案として表示されるというが、私たちのテストではその機能はほんのたまにしかうまく働かなかった。

もっとうまく働いた機能としては、HomePod にウェブ検索を尋ねると、その結果が iPhone に送られて、最初から iPhone で尋ねた場合と全く同じやり方で表示された。いずれもっと多くの人たちが複数の HomePod を持つようになれば、家庭内のどの HomePod でも Siri を使ってアラーム、タイマー、メディアを停止することが可能となる。それから、Siri が家庭内の複数のユーザーの声を聞き分けてポッドキャストのリクエストを受けることができるようになったので、個人ごとにポッドキャストの購読と再生場所を Siri が追跡できる。

さらに別の改善点として、好きな曲やプレイリスト、または Apple Music のラジオステーションを HomePod のアラームに指定することがようやくできるようになった。今回のアップデートではまた、ステレオペアの HomePod で同期しない状態で再生することがあった問題が修正され、Siri を使って複数のスピーカーを操作する際の信頼性が向上し、全体的な Siri のパフォーマンスを最適化している。

この HomePod Software 14.1 アップデートのサイズは 758.6 MB だ。インストールするには、Home アプリを開き、もしも Update Available ボタンが見えればそれをタップする。そうでなければ、HomePod タイルをタップして押さえ続け、それから歯車アイコンをタップして設定画面に入り、スクリーンの上の方にある Install をタップする。デバイス自体にすべて任せることもできる。放っておけば HomePod が自分自身を勝手にアップデートするはずだ。

HomePod Software 14.1 リリースノート
ここでもリリースノートがとてつもなく小さな文字で表示される。iOS 14 でも同じことを目にしたことがあるが、何が原因なのかよく分からない。

tvOS 14.0.2

Apple は tvOS 14.0.2 リリースについて「パフォーマンスと安定性が全体的に向上しています」以外に何も言っていない。

アップデートをインストールするには Settings > System > Software Update へ行くか、またはただ放っておいて将来どこかの時点で自分で勝手にインストールするのを待ってもよい。

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Josh Centers  訳: Mark Nagata   

iPhone 12 と iPhone 12 Pro: レビュー記事総まとめ

レビュー記事が出揃った! いや、いくつかは出た。Apple から特別待遇を得ている評論家たちは早期レビュー用のアクセスができて、彼らが iPhone 12 と iPhone 12 Pro の第一印象を記事にし始めているのだ。一方、iPhone 12 mini と iPhone 12 Pro Max のレビューが出るまでにはまだ数週間ある。そちらのモデルは 2020 年 11 月 13 日に登場する予定だからだ。

ここでは、そういうレビュー記事の主要部分のいくつかをまとめて紹介したい。そこには驚くほどの意見の一致が見られる。新型 iPhone の重要な側面だけに話を絞って、それぞれについてのレビュー筆者たちの意見をお伝えしよう。

全体的なデザイン

当然ながら、たった一つの機能が iPhone 体験を決めるのではない。素材、形状、その他の要素の組み合わせが、それぞれの iPhone の形態を作り上げる。

The Verge で基本モデルの iPhone 12 をレビューした Dieter Bohn は次のように述べた:

けれども全体的に、このデザインは過去数年間の iPhone に比べてもエレガントで自信に満ちた感じがする。そう、あの大型の iPhone X での再デザインに比べてさえもそれが言える。 ... iPhone 12 は、ここ数年間のうちで本当に新しいものと感じられた初めての iPhone だ。ただ、私にそう感じさせた特定の一つの機能を挙げよと言われてもそれはできない。5G は素敵だ。MagSafe も便利だが本物のエコシステムが出来上がるか否かは時間が経つまで分からない。OLED スクリーンは素晴らしいが、今日のスマートフォンの世界では最低限必要なものでしかない。新しいデザインはエレガントでモダンだが、美しいからという理由だけで購入を勧める訳にはいかない。

TechCrunch の記事で、Matthew Panzarino はこう書いている:

iPhone 12 Pro が宝石みたいなのに比べて、iPhone 12 は楽しく、明るく、実用的だ。 ... iPhone 12 のイカしたアルミニウム製のサイド面はパッと掴んだ感触が嬉しい ... 12 Pro の方はたぶん私が触ったことのあるコンシューマ向けエレクトロニクスのうちで最高のフィーリングを生む手触りではないか。

新モデルの工業デザインに対する最大の批判的意見は、指紋が目立ってしまうという点であった。先進世界ならではの贅沢な悩みというべきだろうか。

Panzarino は特にステンレススチール製のコーティングでそれを指摘した:

Pro モデルのステンレススチールの PVD コーティングは深くて豊かだが、まるで証拠採取の仕事をしているのかと思わされるほどはっきりと指紋が付く。

Daring Fireball の John Gruber も同じ意見だった。Gruber はこう述べた:

12 Pro の光沢のあるスチールバンドは指紋を吸い寄せる磁石だ。拭けば簡単に取れるのだが、12 のアルミニウムバンドの方には触った跡が何も残らない。

Bohn もやはり同意見だった。

残念ながら、背面のガラスはもの凄く艶があって、もの凄く指紋が付きやすいし、これまで通りに細かな傷が付きやすいのではないかと思う。まあ、たいていの人はケースの中に入れるのだろうが。

5G とバッテリー寿命

新型 iPhone の新しい 5G 機能については多くが語られてきた。全体的に意見が一致しているのは 5G の最高速度が驚くべきものだという点だが... それは利用可能なほんの一握りの場所を正確に見つけられればの話だ。

Bohn はこう述べた:

とにかくそのネットワークはまだ構築されていないし、キャリア各社が高遠な約束をするのは構わないけれども、それが実現するまでにどれだけの時間がかかるのか私は知らない。 ... 実際に 2,400Mbps が達成されて Netflix の一シーズン分が丸ごとダウンロードされるのを見ていると畏敬の念を感じるほどだ。でも半ブロック先まで歩いてダウンロード速度が通常の LTE 速度に落ちるのを見ればそうも思っていられない。

Matthew Panzarino が状況をうまく要約した。

最高速タイプの 5G が得られるのは現時点ではほんの一握りの大都市の中のほんの少数のブロックにおいてのみだ。その場所でならば速度はまさに信じられないほどだが、そのことは今後 6 か月間に購入者たちが体験するであろうものとはほとんど関係がない。それにもちろん、ミリ波 5G は米国以外の顧客には手の届かないところにある。現時点では。

Daring Fireball の John Gruber は 5G サービスを見つけるのにかなり苦労したが、いったん見つかればその速度に驚嘆させられた。

基本的に、Verizon は'5G Nationwide' (別名 Sub-6GHz 5G) をフィラデルフィアの都市部全域に、ただし都心の最も人口密度の高い地域を除いて、提供すると主張している。ちなみに私はその都心に住んでいる。私は Verizon の地図で赤く塗られている地域まで歩いて行ったのだが、きちんと 5G サービスが得られる場所を見つけられなかった。LTE だけだ。私は生活のほとんどを、この Verizon のビンクに塗られた領域で過ごしている。

そして、繰り返して言うが、Verizon の 5G Ultra Wideband の何と速いことか。Ookla の Speedtest アプリでテストしてみると、ここフィラデルフィアで私が普段使っている LTE サービスは通常下り 50-120 Mbps、上り 10-20 Mbps といったところだ。そう悪くはない。でも 5G Ultra Wideband では、多くの場合下り 1,200-1,800 Mbps、上り 25-70 Mbps が出た。場所によっては下り 2,300-2,700 Mbps がコンスタントに出た。すげえ。

欠点を言えば、5G を使うことでどうやらバッテリー寿命に大きな影響が出るようだ。Tom's Guide がテストを走らせて、憂慮すべき結果を出した。

通常モデルの iPhone 12 は AT&T の 5G ネットワーク上でたった 8 時間と 25 分しか保たなかった。去年の iPhone 11 は 4G 上で何と 11 時間と 16 分も保った。比較のために iPhone 12 を 4G のみに切り替えてみたところ、10 時間と 23 分保った。

このテストで、5G をオフに切り替えてさえも iPhone 12 のバッテリーが iPhone 11 に比べて 1 時間近くも早く空になったことにも注目すべきだろう。これは、バッテリーが小型になったからなのかもしれない。

Dieter Bohn は去年の iPhone 11 と比較してそれほど劇的ではないもののバッテリー寿命の減少に気付いた。

バッテリー寿命は良いけれども iPhone 11 (これこそ絶対的なバッテリーの王者だ) に比べて少し悪化しているようだ。ひそかに 5G をオフにする特別モードを設ける必要を Apple が感じたという事実は、バッテリー寿命の観点からは少々心配だ。幸いにも、私の感じでは iPhone 12 のバッテリー寿命は全然悪くない。特に大した問題なく一日中使える。その一方で、丸一日これを徹底的に使い倒せば死んでしまう可能性が iPhone 11 に比べて高いということは認めなければならない。

The Verge で iPhone 12 Pro をレビューした Nilay Patel は、バッテリー寿命がどれだけ減るかはどの程度 5G を使うかに依存するだろうと考えている。

結局のところ、iPhone 12 Pro のバッテリー寿命はその人がどの程度 5G を使うか、とりわけ mmWave 5G (ミリ波 5G) をどれだけ使うかに依存して大きく変わるはずだと私は思う。だから、これは時間をかけて追跡する必要のある問題だ。ただ、通常版の iPhone 11 にあったような「止められるものなら止めてみろ」レベルのバッテリー寿命は期待できないだろう。

しかしながらすべての人がバッテリー寿命の低下を目にした訳ではなかった。Panzarino は iPhone 11 Pro と同等の結果を得た。

バッテリーの使用度は iPhone 11 Pro とほぼ同等に思えた。私はいつもテスト用のデバイスをすべて私の現行デバイスのクローンにして、索引付けが落ち着き次第パフォーマンスをテストするようにしている。私は毎日 15 時間ほど iPhone 12 Pro を大いに使った。iPhone 12 もほぼ同等に思えたが、やはりメインのデバイス一台に集中しなければならなかったので厳密な答は出せない。

それからもう一つ、Gruber は 5G がデータ量上限にどう関係してくるかに懸念を持っている。

データ量上限ももう一つの実際的な懸念だ。この常軌を逸した速度を利用できるものなら何でも、あっという間に 15-30 GB のデータを吸い込んでしまう。Xcode を一度ダウンロードしたら、ほら 11 GB だ。でも 5G は、あっという間にデータ量上限を突き抜ける役目を果たすに違いない。

しかしながら、Bohn によれば iOS はユーザーのデータプランに基づいて使用度の調整を試みるといい、これが問題を予防する役に立つかもしれない。

iPhone もまた、あなたのデータプランを認識していようと試みて、もしもあなたが無制限プランを持っていると分かれば、特定のことについてもっと自由に 5G を使おうとする。Apple は、無制限プランの場合には iOS アップデートを丸ごと 5G でダウンロードすることを許すはずだ。もしもあなたがプランを変更すれば、あるいはそれをさせたくなければ、さまざまの設定の中へ分け入る必要があるかもしれない。

また、Bohn は iPhone 12 上での 5G に関係するいくつかの興味深い技術的な側面にも触れた:

カメラ

いつもと同様、Apple は新型 iPhone のカメラの改良に膨大な労力と重要視を注いでいるが、実際にどれだけ違いが出たかを見ればアップグレードの価値に見合うものとはならないかもしれない。Dieter Bohn は iPhone 11 との違いは感じたけれどもアップグレードを正当化するには十分でないと思った。

私にとってこのカメラについての結論は、iPhone 11 に比べてはっきり進歩しているとは分かるがアップグレードしたい気持ちにさせるには十分でないというものだ。だからと言って iPhone 12 がとてつもなく良いカメラでないと言っているのではない。とてつもなく良いカメラだ。パフォーマンスと簡素さ、とにかく高品質であることはいつもと同じく印象的だ。

同じように、Nilay Patel も iPhone 12 Pro での改善点は iPhone 11 Pro に比べてマイナーだと感じた。

去年の iPhone 11 Pro について私はスマートフォンで最高のカメラだと書いたし、iPhone 12 Pro も決して後退している訳ではない。でも、これは小さな一歩の前進でしかない。競争相手のほんのすぐ前側にようやく留まったという程度だ。改善点のほとんどはまあまあマイナーなものだ。

AR のからくり仕掛けとか、ナイトモードのポートレート写真とかに熱中している人でない限り、iPhone 12 の LIDAR センサーから大きな恩恵を得ることは難しいと思う。通常の光量の下で写真を撮る場合には、カメラはいつもと全く同じにフォーカスする。LIDAR センサーは動作すらしない。多くの意味で、この LIDAR を設置した主たる意義は Apple や他の人たちが将来これを使って何をするか考え出せるようにというものではないかと思える。

けれども Matthew Panzarino は進化したポートレートモードに感銘を受けた。

iPhone 12 と iPhone 12 Pro のポートレートモードは一つの大きな側面で大幅な進化を遂げている。木の葉、髪の毛、毛皮、その他の細かな部分で、境界に沿って画像を区分する際にずっと良い結果が出せるようになった。

では、iPhone 12 Pro の新しい HDR ビデオ撮影機能についてはどうか? Panzarino はほとんどのユーザーにとって恩恵を受けられるほどではないと思っている。

ここでは徹底的に正直になろうと思う。圧倒的大多数の iPhone ユーザーは、HDR 撮影やワークフローにアクセスできることすら一度もないだろうし、必要とすることもないだろう。ビデオ撮影を主として iPhone で撮影してから直接ソーシャルネットワークに送ったり Messages で送ったりしているのならば、HDR が大きな恩恵をもたらすことはほぼあり得ない。iPhone 12 のカメラでも 4k 撮影が 30 や 60 fps でできてかなり素晴らしい撮影が可能だ。

Patel も同意見だが、時が経てばもっと有益なものになると考えている。

iPhone 上の Dolby Vision ビデオは少々複雑で、当初のうちは訳の分からない互換性の問題があるだろう。けれども時が経てば、問題は次第に消え去ると思う。考えてみれば、テレビの制作者たちもソーシャルプラットフォームも、人々が撮った iPhone ビデオをどうすればより良く再生できるかを見出すことに大いなる動機を持っているのだから。

iPhone 12 Pro の HDR ビデオ撮影に対するサポートについて詳しく知りたい方には、Patel の記事全文を読んでみることを強くお勧めする。技術的な詳細についても詳しく解説されている。

MagSafe

MagSafe は iPhone 12 の新しい磁力による充電およびアクセサリー装着システムだ。Dieter Bohn にとって、MagSafe こそが iPhone 12 の新機能のうちで最も興味深いものであった。

けれども、MagSafe 充電は Lightning ケーブルでの充電に比べてどうなのか? Qi 充電は速度が遅くて効率が悪いことに定評があるが、Bohn は Qi に比べてはっきりと進歩している点を指摘した。

それは、ワイヤレス充電がイライラするほど遅いか、それともまあまあ我慢できるかの違いだ。私のテストでは一時間で 40 パーセントほどの充電ができた。これは、世に出ている最高速のワイヤレス充電システムよりは遅く、ケーブルによる充電よりずっと遅いが、その反面手軽であり便利だと言える。

Bohn はそれ以外にも MagSafe が Qi より優れている点を指摘した。

NFC もまた、アクセサリーが取り付けられたことを感知した際にスクリーンに光の輪を描くなど、Apple がちょっとした工夫をこらすことを可能にする。例えば青いケースの場合は青い輪が出る。

Qi 充電器で iPhone を正しい位置に置こうとしてフラストレーションを溜めてきた人向けに、Matthew Panzarino は MagSafe ではずっと簡単だと言った。

この手順は Qi 充電器をいじくり回すよりずっと早いし、フラストレーションがずっと少ない。私は直立式の Anker 充電器ではある程度幸運だったが、パッド型の充電器ではいつもどうにもならなかった。正しい場所に置こうと散々苦労しても、朝になってみればちゃんと中央が揃っていなくて全く充電されていなかったと気付かされることがよくある。

John Gruber は MagSafe が Qi よりもむしろ Lightning に近いと指摘した。

私は MagSafe 充電が好きだ。これは卓上用の Qi 充電器によくあるドックや充電マットのようなものとははっきり違う。iPhone にしっかりくっつくので、充電中に iPhone を手に取っても MagSafe のパックは背面にくっついたままだ。これは磁力充電パッドというよりも、むしろ Lightning ケーブルの磁力方式代替品と考えるのがよい。

これが兆候となるのは、いずれは Apple が Lightning を放棄して MagSafe に乗り換えるのではないかという考えだ。Panzarino は単刀直入にそれを言ってのけた。

そしてその通り、この MagSafe 充電器がポートを一つも持たない iPhone に向けた道を開くものとなることはもはや明白だ。Apple は今後 Qi 規格に多くの「強化」をコンソーシアムに提唱しようとしており、将来には位置合わせ機能の付いた磁性体スタンドがもっと多く登場するだろう。これは決して「このテクノロジーのライセンスを得るためにお金を払って下さい」という状況ではない。Apple はこの標準が普及することを望んでいるのだ。

Bohn は今回の新しい MagSafe の重点化こそ、Apple が Lightning から USB-C へ切り替えなかった理由だろうと推測する。

私は充電で Lightning ポートの使用にこだわることには賛成できない。大きなデザイン改訂こそ、より普及している USB-C ポートへの切り替えの機会となる。これは Apple 自身のコンピュータやタブレットでも、他のすべての Android フォンでも、また数えきれない他の多くの機器でも使われているものと同じポートだ。Apple があえてそれをしなかったという事実は、私が思うに Apple の長期的な計画が他の何より MagSafe に関係していることを示しているのかもしれない。私は Lightning が好きではないが、ワイヤードの充電に関して言えば文字通り何もないよりはマシだと認めなければなるまい。

ディスプレイと Ceramic Shield

最後にもう一つ、レビュー筆者たちは iPhone 12 の OLED スクリーンをべた褒めした。ただし一点、Android の競争相手たちに後れを取った 60Hz のリフレッシュレートを除いて。

Dieter Bohn はリフレッシュの遅さについてくどくどと述べたが、iOS のスムーズさのお陰で基本モデルの iPhone 12 では許せるとした。

Apple が iPhone 12 のサイズを小さくできた理由の一つは、OLED スクリーンに切り替えたからだ。そのお陰でベゼルの幅を狭くでき、全体を完璧に平らに保つこともできる。それでいて実際の視認可能なスクリーンの広さを iPhone 11 と同じ 6.1 インチに保つこともできている。

同価格帯の Android フォンの多くは (そしてもっと高価格のもののほとんどすべては) 90 または 120Hz のリフレッシュレートを持っており、スクロールやアニメーションがスムーズだ。iPhone はいつもと変わらず 60Hz のままだ。

これはテクノロジー仕様の議論になるが、実際に画面の上でスクロールしたりナビゲートしたりしていても感じられる。Apple は iPad Pro でそのようなスクリーンを出荷している。私が思うに、iPhone 12 がそれを採用しなかった理由は二つある。一つは iOS が既にネイティブに十分なスムーズさと速度を感じさせていること、もう一つはこれが低価格版の iPhone なので標準的なリフレッシュレートでも驚きではないことだ。iPhone 12 Pro モデルに 120Hz が実現されていないことの方が私にはもっと困ったことに感じられる。

Nilay Patel は iPhone 12 Pro に 120Hz が欠けていることにずっと批判的な意見を述べた。

Apple の販売台数と利用可能なディスプレイの供給量とかいったことで弁解はできるだろうが、結局のところ、60Hz のディスプレイではどう見ても... プロとは言えない。実際、Apple 自身の iPad Pro は高リフレッシュレートの ProMotion ディスプレイを備えている。これまで iPhone しか持ったことのない人には、違いは感じられないだろう。なぜなら、従来と全く同じだからだ。でも、120Hz のディスプレイを使ったことがある人には、スクロールする際のスムーズさの違いが間違いなく感じられるだろう。

新しい Ceramic Shield スクリーンについては、ちゃんと機能しているように見える! Bohn は偶然にもそれをテストする羽目になった。

これはガラスの内部にセラミックのクリスタルを使っていて、落下への耐性が iPhone 11 に比べて強化されている。Apple によれば4倍強いとのことだが、スクリーンの修理費用が今年値上げされたことを考えれば良いことだ。レビュー用のユニットでテストすることは (少なくとも故意には) できないが、私は本当に予期せず 3 フィート (90 cm) の高さからコンクリートの上に落としてしまった。私の心臓は止まりかけたが、アルミニウムにほとんど見分けられない程度のへこみができただけで済んだ。引っかき傷への耐性については去年とほぼ同じはずだ。

iPhone 12 と iPhone 12 Pro の比較

iPhone 12 と iPhone 12 Pro はサイズが同じで、カメラを除けばそれほど違っていない。iPhone 12 の方が iPhone 12 Pro よりも楽しいというのが、ある程度一致した意見のようだ。

John Gruber は iPhone 12 のブルーの方が iPhone 12 Pro のブルーより好ましいと述べた。

主観的に、私は艶のあるガラスの iPhone 背面の方が見栄えも良いと思う。ブルーの iPhone はどちらも素晴らしいし、どちらの色も大いに人気を得るとは思うが、私の目にはブルーの iPhone 12 の方がパッと目立って見え、落ち着いたパシフィックブルーの iPhone 12 Pro にはそんな感じがしない。

Matthew Panzarino は腕時計と比べてみた。

全体的に、iPhone 12 の感じを Timex に例えるとすれば、iPhone 12 Pro の感じは Rolex だ。こちらは日々使うもので、明るく楽しい感覚だ。一方 iPhone 12 Pro は洗練の度をカテゴリー分化の段階にまで引き上げ、“プロ”の名に相応しいしっかりした存在感を与える。

Nilay Patel は iPhone 12 Pro が高い価格に見合う価値を持つかという疑問に直接答えて、iPhone 12 の方を支持する結論に至った。

だから、iPhone 12 Pro についての真の疑問点は、少しばかりの余分の機能が標準版 iPhone 12 との $200 に近い価格差を正当化できるかどうかというところにある。それに、もしそれだけ余分に払う余裕があるのなら、もうしばらく待ってさらにあと $100 追加すれば iPhone 12 Pro Max が手に入る。こちらはもっと大きなディスプレイと、もっと大きなメインカメラセンサー、それに非常に興味深い新機能のセンサーシフト光学式手ぶれ補正システムが付いて、写真の画質がとてつもなく跳ね上がるのかもしれない。

すると、12 Pro は奇妙な立ち位置に取り残されることになる。実際のところ、その評価はあなたがどの程度望遠レンズを使ったり夜中にポートレート写真を撮ったりするかというあたりに行き着くのではないかと思う。

レビュービデオもある

今年はかなり多くの初期レビューがビデオ映像で出ている。そこで、新型の iPhone 12 各モデルについて精査したいと思っている方々のために、観る価値のあるレビュービデオを 3 つ紹介しておこう。

Wall Street Journal のいつも愉快な Joanna Stern が、MetLife スタジアムのど真ん中で彼女のレビューを撮影して、大規模な公共の会場で 5G に想定される用途について語った。彼女のビデオはたった 7 分以下という短いもので、既に 12 万回以上視聴されている。

元 iMore にいて現在は独立の YouTuber である Rene Ritchie は、iPhone 12 と 12 Pro のレビューを長編の 45 分間ビデオにした。視聴数は 40 万回を超えている。観る前にまずポップコーンを用意しよう。

Marques Brownlee はまず iPhone 12 を箱から取り出して MagSafe を実演してみせるビデオを出した後で、改めて iPhone 12 をフルレビューするビデオを出した。このビデオの継続時間は 18:17 で、YouTube 界のスターがどれほど凄いか感じて頂くために言えば、視聴回数が既に 5 百万回を超えている。

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Rich Mogull  訳: 亀岡孝仁  

血中酸素と Apple Watch Series 6 への救急医療隊員のガイド

我々は黒いアスファルトの駐車場の真ん中に設置されたビニールのテント内に座っていた事を考えれば、過酷な使用に耐える可搬型のエアコンは見事な仕事をしていた。

歴史上最も甚大な被害をもたらしたハリケーンの一つが襲った後、医療専門家からなる私のチームは Puerto Rico の病院の隣にいた。工業用真空掃除機や排水ポンプを賢明に使ったことで、集中豪雨の後、前の晩には冠水していた事など分からない程であった。私は涼しい風をありがたく思っていたが、私の患者の血中酸素の測定値が安定して得られないことに苦闘していた。

彼女は、年老いた糖尿病の持ち主で、重度の認知超も煩っており、更にはっきりした理由も無く飲食を止めてしまい脱水症状に見舞われていた。糖尿病と脱水症状のせいで、彼女の指先の末梢循環はとても弱く、そして硬質プラスチック製の指挟み型のセンサーは単純に働いていなかった。O2 の計測値は現れたり、消えたりしていて、私が彼女の血流の強さを測る波形を見た時、それは弱くそして余り当てにならない信号を示していた。

私は使い捨て型のセンサーに切り替えてみた。こちらは接着剤が使われており、指にもっとしっかり密着して測定も改善するのではと思ったのだが、それでも十分には改善せず、彼女のつま先に換えてみてもダメであった。我々の患者の容体は良くなかったし、彼女の様な状態では連続した監視が必要なのに、我々は彼女のバイタルサインを記録する一回のきちんとした測定値も得られないでいた。

私は、このミッションでは第二波応答者に位置していたので、我々のテントの装備状態は良く分からなかったが、あちこち探し回って、使い捨ての耳たぶセンサーを見つけた。これは、患者が動き回ると外れてしまう危険があるが、耳たぶの組織はより薄く、赤色と赤外の光をより通しやすいので、そこそこの信号が得られる場合が多い。しかし、それさえも我々が必要とする仕事はしてくれなかった。結果的には、我々は彼女に対する点滴が彼女の血液量を増やしそして彼女の血の巡りを改善する迄、不満足な測定値で我慢せざるを得なかった。

救急医療隊員として、私はこれ迄 30 年に亘って、消毒の行き届いた病院から山頂や道路脇の側溝まで色々な所でパルスオキシメータ(酸素濃度計)を使って来た。また、それが大型の病院内機器から可搬型の救急車装置へ、そして Amazon で $30 以下で買えポケットに突っ込める機器へと変化する様も見てきた。私は、想像出来るほぼあらゆる場面に於いて数百人に及ぶ患者に対してそれらを使って来た。その中には、時にはとても信じて貰えないであろう様な場面も含まれている。

恐らくこれが、私が Apple Watch Series 6 の新しい血中酸素センザーが、興味深くそして驚く程正確だと思った理由であろう。常時使用可能なパルスオキシメーターからのデータを記録する使用事例は、心拍数測定や心不整脈を見つけることに対するほど明白ではない。

酸素飽和について知っておくべきこと

びっくりする人もおられかも知れないが、酸素にはとても毒性がある。酸素は反応性が高く、体内に有りすぎると色々な種類の細胞の損傷の原因となり得る。一方で、それが無いと、我々は数分以内に死に至る。我々の身体は、大気から呼吸を通じて酸素を取り込み、血流を通して細胞にそれを運び、そしてそこでは細胞呼吸に使われる。酸素は、細胞呼吸で最後のそして大事な仕事をする。細胞が機能するためのエネルギーを供給するプロセスである。(バイオおたくのために付け加えると、酸素は、我々の細胞がエネルギーのために使う殆どの ATP を作り出す電子伝達網における優先電子受容体である)。

医療専門家にとって、身体がどの様に酸素の使うかを測定することは健康全体について多くの情報を提供出来る。体内の酸素が足りない状況は色々な外部要因によって引き起こされ得る。例えば、空気圧の不足 (環境に十分な酸素が無い)、呼吸器系の問題 (肺によって十分な酸素が移動されない)、循環系の問題 (血が、肺から酸素の取り込む、或いは十分な組織にそれを放出するのに適切な速度でポンプされない)、或いは代謝の問題 (赤血球が酸素分子を受容、或いは放出するのが困難である) 等である。我々の身体は酸素を大量に使用するので、血中酸素のレベルを測定するのは、患者の何処が悪いのか、どれぐらい悪いのか、そして彼らは良くなっているのか、悪くなっているのかを推測するのを助ける強力なツールである。それで全てが分かるわけでは無いが、沢山のことを教えてくれる。

酸素計測には幾つかの種類があるが、我々が主として焦点を当てるのは、動脈血酸素飽和度 (SaO2) である。これは我々の動脈内で現在酸素を運んでいるヘモグロビン受容体の百分率である。これはとても良い測定で、我々の細胞が使える酸素がおおよそどれぐらいあるかを教えてくれる。だからといって、完全とは言えない。何故ならば、そもそも十分なヘモグロビンがあるのかどうかは教えてくれないからであるが、その情報は血液検査のために採血した時に、ヘモグロビンの数は数えられる (検査室で) ので、より完全な全体像を把握出来る。

しかしながら、SaO2 には問題がある。その値を得るには、動脈血を採取し、検査室に送らなければならない (静脈血にある酸素は、それ迄に使い果たされており、殆ど残っていない)。このデータは有用であるが、ある時点での像しか提供しない。もし私が喘息の患者や目の前で心臓発作を起こしている人を担当している場合、私が本当に必要とするのは、彼らがどの様な状態なのかの連続した像である。酸素レベルは驚く程急激に変化することがあるので、1分、2分が生と死の間の違いを意味することがある。採血すること無く SaO2 を測定することは出来ないが、幸いにして、ほぼ同じものをパルスオキシメトリを使って測定出来る。これは特定の波長の光を身体を通して通過させ、どれ位が吸収され、どれ位が反射されるるかを見るのである。我々はこの数字を SpO2 と呼んでいるが、それはほぼ何時も SaO2 と同じである。技術的に言えば、SpO2 は SaO2 の推測値であるが、それは即時的で、非侵襲性で、そして殆どの条件下でとても正確である。

医療専門家はパルスオキシメトリをどの様に使うか

患者の酸素飽和度測定は (我々は SpO2 の代わりに、ただ "O2 sat" と言う)、心拍数、呼吸数、そして血圧と並ぶ核となるバイタルサインの一つである。COVID-19 の報道のお陰で、皆さんの多くは、健康な人の酸素飽和度は凡そ 95-99% である事をご存じであろう。それは高地では少し下がるが、私が主として働いているのはその様な場所である。私が低高度や中高度で患者を診ている時には、傾向として、その値が 95% だと注意を向け始め、O2 sat が 93% を切る様になると治療について考え始め、そして 90% 以下に下がれば間違いなく行動を起こす。通常は酸素補給をする。酸素補給で問題は解決しないが、私が根本的原因を理解しそして緩和しようとする時間を稼いでくれる。

我々は大抵の場合指先センサーを使うが、それは直ぐに装着出来そして直ちに結果が分かるからである、医療現場では、正確な結果を提供すると認定されたより大型のモニターに付属したセンサーを使う。それでも、私の知る医療のプロは殆ど誰でも、恐らく Amazon やドラッグストアで買った独立型の指先センサーを持っている。これらのセンサーは心拍数と O2 sat を提供し、そして通常は小さな波形も示す。それは良い測定値が得られているかどうかを判断する助けになる (より大きな波形はより強い信号を意味する)。でも、使うのはとても厄介である。もし患者が冷たかったり、マニキュアを塗っていたり、或いは床一面出血していたりしたら、まず正常な読みは得られない。これ迄、私が良い値を得ようとセンサーをいじり回したり、装着位置を変えたりにどれ位時間を掛けてきたかは説明してもしきれない。飛び跳ねる救急車? 寝返りを打って腕を下に眠っている患者、血液循環は妨げられる? これら全ては結果を台無しにし、そして警報を鳴らす。

問題は脇に置いて、血中酸素を測ることは必須である。それが低ければ、問題があり、直ぐに対処しなければならない場合も多い。病院に到着する前の環境や緊急処置室では、私は患者全員にパルスオキシメーターを装着する。それは通常、呼吸器や心臓の問題、或いは薬物の過剰摂取や呼吸や血流に影響する糖尿病急患の様な問題にはとれも有用である。麻酔医も麻酔下にある患者を健康に保つためにそれらを使う。睡眠センターも睡眠時無呼吸を見つけるためにそれらを使う。何故ならば、睡眠中に呼吸が止まれば、それは酸素飽和度に現れるからである。

消費者グレード血中酸素測定の限界

医療現場でパルスオキシメーターがどれ程素晴らしいかは言うまでもないが、健康な人については殆ど何も使えてくれない。それは例えば心拍数測定のようには行かない。心拍数はワークアウトや激しい運動を追跡するにはとても適している。それは、我々がどれ程健康的か (安静時心拍数)、どれ程良く回復しているか (心拍変動)、そして十分に運動しているか或いは運動しすぎかについて色々なことを教えてくれる。

では、血中酸素は? それは運動については何も言ってくれない。運動しても通常より下がることはない。何故ならば、我々は身体を適度なバランスに保つために呼吸や血流を増加させるからである。それは、回復についても、健康度についても、或いは他の事に関しても何も言っていくれない。それは、何らかの状態に苦しんでおり直ぐに医者に診て貰う必要があるどうかの総体的な健康の一つの指標に過ぎない。

覚えておいて欲しいのは、一人の医療専門家として、私は、多くの場合、酸素飽和度をその人がどれ程悪いのか、そして直ちに介入する必要があるのかを判断するために使う事である。例えば、喘息の発作が深刻で、吸入器が働いていないのかを判断するためにそれを使う。慢性の肺の病気が悪化していて、酸素を増やしたり、医者に見て貰う必要があるかを判断する。そして、その通り、それは COVID-19 患者にはとても重要なもので、多くの病院は多くの患者を指先センサーと共に家に帰し、数字が 90% を下回ったら戻ってくるように指示している。

個人の酸素飽和度測定が役立ちそうな "ウェルネス (健康)" 状況は4つ考えられる:

Apple Watch 6 は驚く程正確であるが、何の役に立つか

では Apple Watch 6 上の血中酸素センサーはどうであろうか? 腕の上で SpO2 を測るのは簡単ではない。と言うのも、調べているのは反射光だけだからである。光のビームは、指先や耳たぶ上のパルスオキシメーターでの様には腕を透過出来ない。反射光だけに頼るのと、装着位置、周囲の光、そして動きの差異との両方の理由から、問題はもっと難しくなる。私の冒頭の話が明らかにしている様に、SpO2 は、最新の医療グレードの指先センサーをもってしても測るのが難しい場合がある。

私は、Apple Watch Series 6 の血中酸素センサーを色々な状況下でここ数週間に亘って試験してきた。私は、私の結果を、普段の救急バッグに入れている二つの消費者グレードの指先センサーに対して比べてきた。妻と私の両方とも時計をアップグレードしたので、我々両者間での違いも測定出来る。そして、週末の旅のお陰で、私は Apple Watch が高地ではどの様に働くのかも評価出来た。我々は終日身に付け、測定した。運動中に、ハイキングの最中に、睡眠中に、そして屋内、屋外での色々な明るさの状況下で。

Blood Oxygen on the Apple Watch

大抵の場合、Apple Watch Series 6 は、装着位置が良く、動きが無ければ、正確である。その計測値は私の指先センサーとぴったり同じか、或いは 1% ポイント以内の違いであった。Apple は、腕が水平な表面上にある時にだけ計測をするよう推奨しているが、バンドは心地よい締め付け状態にあり、腕は地面に水平に動かないよう保っておけば、まあまあの結果が得られる。

Comparing Apple Watch O2 against a finger sensor

逸脱した計測値は常識で判断出来る。もし 100% とか 95% 以下の数字が出たら、私は装着位置を再調整し測り直す。Apple Watch は、動きすぎたり、とんでもない計測値が出るとエラーを発するが、限界状況下ではエラー判定は一定していない。妻も同じ様な結果を見ている。そして、我々の肌の色合いは同じだが、時計との間にある私の腕毛はより濃く、彼女の腕はずっと細い。

時計バンドをきつく締めるのは、緩めすぎるのと同じくらい悪い結果をもたらす傾向にある。もし周囲光が強い場合、Arizona の日光の下での様に、時計を嵌める位置にはより注意が必要であったが、良い計測値は得られる。ハイキングトレイルの途中で立ち止まって、指先センサーを装着して Apple Watch の計測値と比較している時に奇異の目を向けられることはあったが、私は趣味として Star Wars のストームトルーパーの格好をしているので、行き違う人からの二度びっくりの顔は余り気にならない。

我々の睡眠中の計測値は同様ではなかった。私の計測値は安定して 90% 以上であり、夜間の自動の測定値は通常の 96-98% の辺りで、異常な測定値が得られる夜も何回かあった。妻の方は、それ程安定していなかった。夜に 95% を下回る事も結構あり、88-90% を示すことも何回かあった。それは睡眠中無呼吸の兆しでもあり得るが、腕を下にして寝るからかも知れないし、バンドが緩かっただけなのかも知れないし、或いは... 言いたいことはお分かりですよね。Apple Watch だけに基づいて、そのデータを如何なる健康診断にも用いることは出来ない。

Oxygen readings in the Health app

これは何も Apple だけが直面する問題ではなく、Garmin, Fitbit, 等々のフィットネス測定機に血中酸素センサーを組み込んでいる他の会社全てに当て嵌まる。彼らは、この情報をどの様に顧客に役立つものにするか? 自分の血中酸素を知って、どの様な健康とウェルネスの判断が出来るのか? 今どう使うべきかと将来何処に向かうのかに付いての私の考えを述べてみる。

O2 history in Health

現時点では、もし病気だったり、既知の呼吸器問題を持っているのであれば、Apple Watch Series 6 は、専用のパルスオキシメーターを引っ張り出すべきである事を示すには十分な精度を持っている様に見える。それは簡便さの問題である - 私は、殆ど常時時計を身に付けているが、私のパルスオキシメーターは鞄の中か戸棚の中にある。もし Apple Watch Series 6 の血中酸素センサーを沢山使って、そしてそれが自分にどの様に役立つかを理解しているのであれば、その数字に依存しても不安はないかも知れないが、私ならば慎重に、そして複数回の測定をするであろう。他のツールと同様、病気かも知れない時に依存する前に、それが良い状況下で自分のためにどの様に働くのかを知っておく必要がある。COVID-19 に罹患した人達と定期的に接する者として、必要とする時にこれ程簡便なものを持っているのは嬉しい事である。しかし、私が病気になったとした時に、如何なる確たる医学的判断をするためにもそれを使うことはしないであろう。

もしあなたが健康であれば、血中酸素センサーからのデータは、ただ... 興味深いものであるだけである。自分の健康とウェルネスに関する如何なる結論を引き出すためにも、それを使うことは出来ない。私は札付きのフィットネス狂であるが、健康でいる限り、自分の血中酸素レベルを測ることで自分自身について学べることは何一つない。

やがては説得力を持つようになり得ると思える一つの分野は、睡眠中無呼吸を見つけ出す手助けをする事である。現時点では、そのデータは十分ではないが、モーションセンサー、心拍数センサー、そして血中酸素センサーの組合せは、いつの日か改善して、数百万人の健康を害しているが浸潤的な睡眠検査無しでは診断が難しい問題を発見する手助けとなるかも知れない。

Apple Watch の心拍数センサーと ECG が心房細動を見つけ出す手助けとなるように、睡眠中に血液酸素化を測定することで睡眠時無呼吸が分かるかも知れない。私が思うに、これが Apple が目指している所であろう。何故ならば、この時計は既に夜間に背景での計測をしているからである。問題は、良い計測値は本当に良いのだが、悪い計測値と弱い計測値の間の区別が付かないことである。これは Apple が改善出来るものだと私には思える。例えば、連続で何回か測って、心拍数センサーとの相関を取れば、装着位置が正しいかどうかの推測は出来るのではなかろうか。

COVID-19 のお陰で、世界中がパルスオキシメトリや血中酸素濃度を以前よりも遙かに良く認識するようになった。血中酸素センサーを組み込んだ Apple Watch 6 をリリースした Apple のタイミングは、無意識であろうが完璧であった。しかし、Apple Watch Series 6 はその装着位置にちょっとした注意を払う限りは正確であるが、ウェルネスの改善に対して更なる価値を提供出来ることを示す必要がある。健康であれば、自分の血中酸素濃度を知っても何も分からない。それは重病を診断するためには大切なツールであるが、多くの場合、もしそれ程気分が悪いのであれば、あなたの時計が何と言っているかに拘わらず病院に駆けつけるべきである。これらの限界はあるが、時計ベースのパルスオキシメトリには睡眠時無呼吸を見つけ出す手助けとなる可能性があると思うし、そして、常時見られる測定値は、呼吸器系の病気があり更に深く調べて貰うタイミングを知りたければ、役に立つであろう。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

訳: Mark Nagata   

Lightroom Classic 10.0

Lightroom Classic 10.0

Adobe が Lightroom Classic 10.0 をリリースした。パフォーマンスの拡張と新機能の追加を盛り込んだ、メジャーなアップグレードだ。このデスクトップ中心の写真カタログ・編集アプリケーションは新しい Color Grading ツール (従来の Split Toning に代わるもの) を導入してシャドウ、中間調、ハイライトに制御された調整を加えられるようにした。今回のアップデートではまた、ブラシやグラデーションを使って編集する際のパフォーマンスを改善し、Canon カメラ用のテザー撮影ライブビュー機能を追加し、ルーペ表示、比較表示、参照表示でズームレベルをきめ細かく制御できるようにした。Lightroom は月額 $9.99 で (1 TB のクラウドストレージ付きで) 利用できるが、月額 $9.99 (20 GB のストレージ付き) または月額 $19.99 (1 TB のストレージ付き) の Adobe の Photography プランの一部として Photoshop と共にアプリを入手することもできる。また、月額 $52.99 の Creative Cloud All Apps プランにも含まれている。(月額 $9.99/$19.99/$52.99 の Creative Cloud 購読、購読者には無料アップデート、リリースノート、macOS 10.14+)

Lightroom Classic 10.0 の使用体験を話し合おう

KeyCue 9.8

KeyCue 9.8

Ergonis が KeyCue 9.8 をリリースして、macOS 11 Big Sur への対応を追加した。このキーボードショートカットおよび絵文字用早見表ユーティリティは今回からフォルダ表示でファイルやフォルダを (名前の先頭にダッシュ文字を付けるか、または Finder "-KeyCue" を付けて) 隠すことができるようになり、テーマ定義の中でグループやメニューの見出しに左揃え、中央揃え、右揃えの整列属性を指定できるようになり、Trello でメニューショートカットが表示されなくなった問題を回避し、Big Sur の半透明のメニューバーで KeyCue アイコンの視認性を改善した。(新規購入 19.99 ユーロ、TidBITS 会員には 25 パーセント割引、無料アップデート、4.0 MB、 リリースノート、macOS 10.7+)

KeyCue 9.8 の使用体験を話し合おう

SpamSieve 2.9.40

SpamSieve 2.9.40

C-Command Software が SpamSieve 2.9.40 をリリースして、macOS 11 Big Sur の Mail への対応を追加するとともに、このスパム電子メールフィルタリングユーティリティの正確度を向上させた。今回のアップデートではまた、Big Sur で SpamSieve の Apple Mail プラグインをインストールする際に Option キーを押さえ続けることでアクティブなプラグインファイルをすべて一掃できるようにし、Big Sur におけるウェブバグ保護を復活させて 10.15 Catalina でそれを無効化する必要があった問題を修正し、Apple Mail プラグインが重複してインストールされた場合にそれを示すようにし、macOS のプライバシーのパフォーマンスバグに対する回避策を追加し、SpamSieve が起動の度に不必要に Mail プラグインをアップデートしていた不具合に対処している。今回からは macOS 10.9 Mavericks かそれ以降を要するようになった。(新規購入 $30、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、17.7 MB、リリースノート、macOS 10.9+)

SpamSieve 2.9.40 の使用体験を話し合おう

Airfoil 5.9.2

Airfoil 5.9.2

Rogue Amoeba が Airfoil 5.9.2 をリリースして Audio Capture Engine をバージョン 11.2 にアップデートし、バックエンドの拡張を数多く施すとともに、Mac Catalyst アプリにフル対応した。(2019 年 6 月 13 日の記事“Catalyst と SwiftUI はアプリ開発をどう変えるか”参照。) このワイヤレスオーディオ放送アプリはまた、Effects ウィンドウをアップデートして他の Rogue Amoeba アプリに合わせ、オーディオデバイスが存在しない場合に起こり得たクラッシュに対処し、今回から macOS 10.13 High Sierra かそれ以降を要するようになった。また、Rogue Amoeba は Airfoil がまだ macOS 11 Big Sur と互換でなく、Big Sur に対応した新リリースを「ごく近いうちに」出す予定だと述べた。(新規購入 $29、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、19.8 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

Airfoil 5.9.2 の使用体験を話し合おう

TripMode 3

TripMode 3

Alix Sarl がデータ使用量制御ユーティリティ TripMode のバージョン 3 をリリースした。これは、不必要なインターネットトラフィックをブロックすることによりその Mac のデータ使用を最適化するものだ。(2015 年 7 月 22 日の記事“TripMode、テザー接続した Mac で不要なインターネットデータ使用を阻止”参照。) このメジャーなアップグレードではすべてのアプリをリアルタイムで監視する Live Monitor を新設して、予期せぬ過剰なデータ転送を識別できるようにした。今回のリリースではまた、サードパーティのサーバとの間でのデータ転送活動を調べる App インスペクタを追加し、アプリごと、また全体としてのデータ使用量を一覧する Historical Reports 機能を加えた。TripMode 3 は macOS 11.0 Big Sur を必要とするが、10.10 Yosemite から 10.15 Catalina までを使っている人のために TripMode 2.3 も引き続き利用可能だ。価格はシングルライセンスが $15、2ライセンスに後方互換性のため TripMode 2 ライセンスを付けたものが $20 だ。TripMode は月額 $9.99 の Setapp Mac アプリ購読サービスの一部としても利用できる。(新規購入 $15、TripMode 2 からのアップグレード $7.50、最近 6 か月以内に購入した場合は無料アップグレード、10.3 MB、リリースノート、macOS 11+)

TripMode 3 の使用体験を話し合おう

Moneydance 2021

Moneydance 2021

The Infinite Kind が Moneydance 2021 を出した。この個人用財務管理アプリのメジャーアップデートで、見栄えを一新するとともに改良された同期エンジンで終端間の暗号化を提供する。今回のリリースでは埋め込みブラウザを改良してより多くの銀行で使えるようにし、ブラウザから取引ファイルの自動読み込みを有効にできるようにし、ダウンロードされたすべてのアカウントタイプからの読み込み処理をスムーズにし、ダウンロードされたファイルの中にある無効な値に対する許容度を高め、デフォルトの小切手印刷フォーマットを改良し、未来の日付を持つ変更の処理その他ローレベルでの同期に修正を加えた。Moneydance 2021 の価格は $49.99 だが、既に Moneydance 2020 のライセンスを持っている人は無料でアップデートできる。 Mac App Store ではまだ利用可能になっていないが、近日中に入手できるようになるはずだ。(The Infinite Kind から新規購入 $49.99、TidBITS 会員には 40 パーセント割引、Moneydance 2020 ライセンスからは無料アップデート、131 MB、リリースノート、macOS 10.11+)

Moneydance 2021 の使用体験を話し合おう

EagleFiler 1.9

EagleFiler 1.9

C-Command Software の Michael Tsai が書類整理およびアーカイブ作成用アプリ EagleFiler をバージョン 1.9 にアップデートして、macOS 11 Big Sur への対応を追加するとともにユーザーインターフェイスを拡張した。EagleFiler は Big Sur の新しいインラインタイトルバースタイルを使い、ツールバーのデフォルトをアイコンのみのモードにするとともに新しい大アイコンスタイルにも対応した。今回のアップデートではまた、テキストとアイコンにシステムのサイズを用い、フォルダとメールボックスのラベルを色付きの円で示し、Big Sur の Mail でも Microsoft Edge でもキャプチャキーが働くようにし、Open Source URL コマンドで Mail にある元のメッセージを開けるようにし、Discourse フォーラム、Stack Overflow、Twitter、その他ポップアップを含むさまざまのウェブサイトからのウェブページの読み込みを改良している。EagleFiler は今回から macOS 10.12 Sierra かそれ以降を要するようになった。(C-Command Software からも Mac App Store からも新規購入 $40、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、28.5 MB、リリースノート、macOS 10.12+)

EagleFiler 1.9 の使用体験を話し合おう

Audio Hijack 3.7.4 and Piezo 1.6.7

Audio Hijack 3.7.4 と Piezo 1.6.7

Rogue Amoeba が Audio Hijack 3.7.3Piezo 1.6.6 をリリースして、双方のアプリで Audio Capture Engine (ACE) をバージョン 11.2 にアップデートし、バックエンドの拡張を数多く施すとともに、Mac Catalyst アプリにフル対応した。(2019 年 6 月 13 日の記事“Catalyst と SwiftUI はアプリ開発をどう変えるか”参照。) これらのオーディオ録音ユーティリティはまた、VoIP ソースとして Jamulus および Jami アプリへの対応を追加し、Chrome ウェブアプリ (progressive なウェブアプリとも言われる) からのオーディオのキャプチャへの対応を追加し、今回から macOS 10.13 High Sierra かそれ以降を要するようになった。

そのリリースの後間もなく、Rogue Amoeba は Audio Hijack 3.7.4 と Piezo 1.6.7 をリリースして ACE をバージョン 11.2.1 にアップデートすることでキャプチャされたオーディオ入力が不適切にミュートされていた問題を修正した。また、Rogue Amoeba はこれら2つのアプリがまだ macOS 11 Big Sur と互換でなく、Big Sur に対応した新リリースを「ごく近いうちに」出す予定だと述べた。(新規購入 $49、無料アップデート、20.9 MB、 リリースノート、macOS 10.13+)

Audio Hijack 3.7.4 と Piezo 1.6.7 の使用体験を話し合おう

ExtraBITS

訳: Mark Nagata   

米国司法省、Google を反トラスト訴訟に提訴

米国司法省は、司法長官 William Barr の権限下で Google に対する反トラスト訴訟を提訴し、例えば Apple に対価を支払って Safari でデフォルトの検索エンジンにしてもらうなど、反競争的な行動を取ったと訴えた。司法省は Google が自らの資金と影響力を使って競争相手を遮断したと非難する。訴状によれば Google は米国においてインターネット検索エンジンのおよそ 80% を支配しているという。

この訴訟が広く超党派の支持を得ていることは注目に値する。この国の党派分裂の両極端にいるとさえ言えるテキサス州上院議員 Ted Cruzマサチューセッツ州上院議員 Elizabeth Warren が二人ともこの訴訟を支持している。しかしながら、早い決着を期待することはできない。反トラスト訴訟は何年間も続くことがあり、とりわけ上訴によっていくつもの裁判所を経ることになればなおさらだ。

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君はブロードバンドを持ってるかい、Charlie Brown!

Charles Schulz, の漫画 Peanuts が登場するテレビのホリデースペシャル、例えば It’s the Great Pumpkin, Charlie Brown といった番組は、アメリカンフットボール、落ち葉掻き、七面鳥のディナーといったものと並んで、アメリカ人にとって秋の伝統と言える。もう何十年もの間、Peanuts はテレビで放映されてきた。当初は CBS で、最近 20 年間は ABC が放映してきた。そして今、Vulture の記事によれば、Apple がこれを Apple TV+ 独占番組とする契約を獲得したばかりでなく、Earth Day、Mother's Day、New Year's Eve の3つの祝日に合わせて新しいスペシャル番組として提供するという。

嬉しいことに、Apple は期間限定でこれらのスペシャル番組を誰もが無料で視聴できるようにするらしい。It's the Great Pumpkin, Charlie Brown の無料ストリーミングはは 10 月 30 日から 11 月 1 日まで、A Charlie Brown Thanksgiving は 11 月 25 日から 11 月 27 日まで、A Charlie Brown Christmas は 12 月 11 日 から 12 月 13 日までとのことだ。これらの時間枠の中ではスペシャル番組の視聴に Apple TV+ アカウントは必要でなく、これは Apple の側での素敵な好意と言えるが、ブロードバンドを持たない何百万もの家庭にとってはテレビからストリーミングへの移動は悲しいニュースだ。[訳者注: この話はまだ Apple からの発表がなく、Vulture 記事のみが情報源です。噂によれば無料視聴の対象となるのは米国とカナダのみらしいです。]

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Apple、Big Sur で一部の自社アプリのトラフィックを隠す

速度の遅い、または料金の高価なネットワークで Mac のデータ使用量をコントロールするためのユーティリティ TripMode のメーカー Alix の共同創設者 David Dudok de Wit が Medium に記事を投稿して、Apple が macOS 11 Big Sur で施すある変更と、その重大な帰結の概要を述べた。(Hacker News でも膨大な議論が進行中だ。) Big Sur において、Apple は 50 以上の Apple 製アプリを除外リストに入れて、それらのアプリがアプリケーションレベルのファイヤウォールによる監視と制御を迂回できるようにする。このリストは 10.15 Catalina で初めて登場したが、ネットワークカーネル拡張を持つアプリ、例えば TripMode や Little Snitch その他には適用されなかった。Big Sur ではその点が変わり、それらのアプリは異なる API を利用することを強制されて、結果として Apple の除外リストが適用されるようになる。Catalina でも Big Sur でも、リストは次の場所にある:

/System/Library/Frameworks/NetworkExtension.framework/Versions/A/Resources/Info.plist

これが TripMode なり Little Snitch なりを台無しにするための大規模な陰謀であるとは私は思わない。私の推測では、これは Apple がいつもよくあるように (おそらく全体的なセキュリティのため、おそらくただ単に開発者たちやユーザーたちが何を望むかなど考えもしないで) 施したただの変更であって、意図せず好ましからぬ帰結を引き起こしてしまったのではないだろうか。ちょうど、Apple が Catalina でひっそりと BusyContactsHoudahSpot のようなアプリがどのようにアクセス権を設定しても Mail の電子メールアーカイブを索引付けできなくしてしまった、あの事態を思い起こさせる。とは言うもののこれは残念なことで、もしこの変更を困ったことだと思うなら、ぜひ Apple に Feedback Assistant を使ってそれを伝えて頂きたい。

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コード署名のゴタゴタが多くの HP プリンタを止める

コード署名に不幸な取り違えが起こったことで、macOS 10.14 Mojave や 10.15 Catalina のユーザーのところで多くの HP プリンタが印刷できなくなってしまった。HP が一部の古いプリンタドライバのためのセキュリティ証明書を意図せず無効にしてしまったため、macOS がそのドライバはマルウェアであるという警告を出して印刷を止めるようになったからだ。これは Apple の責任だと非難する人もいたが、HP の広報担当者が The Register に対して実際 HP が証明書を無効化したと述べた。HP は Apple と共同で証明書を元に戻すべく作業中だが、当面の対策として、HP は HP ドライバをアンインストールしてその代わりにネイティブな AirPrint ドライバを使う方法を勧めている。ある TidBITS 読者は System Preferences > Printers & Scanners からドライバを削除して HP のサポートサイトから新しいドライバを再インストールすることで問題が解消されたと言っている。

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Insiders Explain Apple’s Unusual Organizational Structure

Apple の独特な組織構造を消息通が説明

Steve Jobs は史上最高の事業再生、つまり業績不振の Apple を世界最大かつ最もパワフルな、市場を支配する製品を作る会社へと転換させた功績を認められている。いったいどうやって彼はそれができたのだろうか? 彼が最初にしたのは、Apple の general manager を全員解雇して、会社の編成を作り直すことであった。

Harvard Business Review の記事で、Apple VP であり Apple University の学長である Joel Podolny と、Apple University とカリフォルニア大学 Berkeley 校の双方の教授である Morten Hansen とが、Jobs が Apple への復帰に際してどのように会社を再編成したか、そして Apple がそれ以来どのようにその編成の上に築かれてきたかについて、詳細な分析記事を書いた。Jobs が Apple に復帰した時点で、Apple は従来型の会社と同じように製品を中心として組織されていた。一つの部門が Macintosh に専念し、もう一つの部門が Newton に専念し、という具合であった。Jobs は、このやり方が Apple の革新能力を阻害すると判断した。彼は会社を職能別構造へと切り替えた。ハードウェアとソフトウェアそれぞれに部門を作り、個々の製品マネージャーが短期的な市場圧力から隔離されるようにした。また、仕事が不必要に重複しないための対策もなされて、600 人から成るカメラ・ハードウェアのグループが提供するテクノロジーが複数の製品ラインに行き渡るようにした。

このやり方が実現されるため、二つの鍵があった。一つは Jobs がマネージャーに汎用の経営能力を求めるのでなく製品の専門家がマネージャーを務める点を強調したことであった。(マネージャーが担当する製品について深く知っているべきという考え方は、今もまだ実業界では主流でない。) もう一つは、研究開発担当の上席重役がその部門の製品のみにでなく会社全体の成績に基づいてボーナスを受けるやり方だ。このことにより、Apple では iPhone のみに集中するのでなく Apple TV や HomePod のようなあまり人気のない製品にも努力を試みることが可能となった。

この記事は、Apple のビジネスに興味のある人にとって非常に魅力的な読み物になるはずだ。

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