[Tonya と私はシアトルに住んでいた頃にはテクノロジー関係の友人の一人として John Baxter と付き合っていたし、2001 年に二人で Ithaca に戻ってからも彼とやり取りを続けていたけれども、長年 TidBITS 記事を書いている Geoff Duncan の方が John をずっとよく知っていると思った。 -Adam]
長年の TidBITS 会員であり、より広く Apple コミュニティーの一員であった John W. Baxter が、心臓病により 2020 年 10 月 4 日に亡くなった。81 歳であった。通常 TidBITS がコミュニティーの一員の逝去をお伝えすることはあまりないが、John だけはほとんどのルールの例外であったし、今もそうだ。
極度に人見知りの男だった John は、パーソナル・コンピューティングの守旧派の一人であった。初期のメインフレームシステムで仕事を始めたあとで、彼は Apple II で初めて Apple の世界に足を踏み入れた。1989 年になって、彼は南カリフォルニアからワシントン州に移り、シアトル地域の Apple ユーザーグループ dBUG で活動を始めた。dBUG を通じて、John は Adam と Tonya が自宅で毎月主催した "TidBITS Shindigs" パーティーの常連となった。私が彼と会ったのもこのパーティーの場だった。私たちは NCR 390 エミュレータという意外な話題で話を交わした。そして話題は無線遠隔測定について、さらには Apple II のビデオメモリの余剰バイトの中に指示書を隠す話へと移った。1990 年代前半の Mac 世界にそんな話題に興味を持つ人がいると知って私は驚いたし (当時はみんな、馬鹿げたフォントとかアイコンとかの話で盛り上がっていましたよね?)、John の方はきっと長髪の若造にそういう知識があることに驚いていただろう。
John は私より 30 歳ほど年上だったので私もあまり詮索しようとは思わなかったが、彼が全額支給奨学金をもらって MIT に行ったことは知っていた。たぶん驚くには当たらないのだろう、彼の両親は Caltech と JPL で働いていて、彼の母親は数学で博士号を取った最初のアメリカ人女性の一人だったのだから。
本人も認めたように、John は MIT 在学中に「ちょっとばかり長過ぎる」時間をカフェやコーヒーハウスで過ごして、1960 年代のフォーク音楽リバイバルが生み出されるのを見届けた。私自身はテクノロジーの人であるよりもミュージシャンであった時代の方が長かったので、彼の口から Jackie Washington、Joan Baez、Taj Mahal、Judy Collins、Pete Seeger、Reverend Gary Davis その他の人たちの話を聞き出すのがとても楽しかった。私が演奏しているショーに John が魔法のように顔を出すことも時々あった。彼がどう感じていたかは知らないが、とにかくこれが私の John との体験だ。彼がどこにひょっこり登場するかは予想がつかなかった。TidBITS Talk に (このフォーラムの初期の頃にはずっと頻繁に書き込んでいた)、Unix サーバソフトウェアの討論リストに、地震や地震計についての話題で Twitter に、また Xcode とか電子メールプロトコルとかについて頭を悩ませているメッセージをどっと続けて書いていたこともあった。私にとって John の大好きな思い出の一つは、その後サイコビリーという名前で定着した音楽を私と数人の仲間がぶち上げていたバーの中で、何となく並以上に居心地の悪そうな感じで座っていた彼の姿だ。私は彼を他のみんなに紹介して、彼は微笑んでくれた。
それから数年後に、John は「引退」してワシントン州 Port Ludlow に移ったのだが、その後も彼は地域の ISP/ホスティングプロバイダで働き、サーバと社内運用の処理を担当していた。彼は自慢話をするようなタイプの人間ではなかったが、MIT 在学中に Vannevar Bush と一緒にバスケットボールのレフェリーをしたという話を何度かしていた。多くの方面で有名な人物である Bush は、いわゆる情報化時代の重要な側面を予想していた。彼が 1945 年に書いた論説 "As We May Think" を一読されたい。
その話は、John が現代のコンピューティングの土台と繋がりがあったことを示すのみならず、彼がスポーツを愛していたことも浮き彫りにする。John はあまり多くの人に語らなかったが、MIT を卒業してからアンパイア養成学校へ行って、その後しばらく Minor League Baseball の審判として働いていた。また、プロテニスの職員として働いたこともあった。John は特に列車での旅行が好きで、一時期 Amtrak の車掌をしていたこともある。セーリングも好きだった。自分のスクーナー船を長年所有していて、それを売った時には自分で操縦して (Port Ludlow から) ハワイまで航海して新しいオーナーに届けに行ったものだった。
M1 Mac を発表したイベントのタイトルは "One More Thing" (あともう一つ) であったけれども、Apple はさらにまだあともう一つのものを 2020 年のために隠し持っていた。それが、AirPods Max だ。新しいオーバーイヤー型のヘッドフォンで、AirPods 製品シリーズをイヤーバッド以外のものへと拡張する。AirPods Max は、とても興味をそそる製品だけれども、まあちょっと待って、まずは値札を見よう。$549 だ。現在予約注文受付中だ。
この AirPods Max は Apple の H1 チップを2つ搭載する。第2世代 AirPods、AirPods Pro、そしてさまざまの Beats ヘッドフォンを駆動するものと同じ、カスタム・シリコンだ。従って AirPods Max には AirPods Pro が持つ機能のすべてが含まれており、Transparency (外部音取り込み) モードの付いた Active Noise Cancellation、Adaptive EQ、空間オーディオ、最新の Apple オペレーティングシステムの走るデバイスの間での自動切り替えも働く。
他の AirPods と同様、AirPods Max も Bluetooth に基づいており、そこにいつもの Apple ならではの装飾が付く。直接に接続することも可能だが、そのためには $35 で別売されている Lightning to 3.5mm オーディオケーブルが必要だ。残念ながらこのケーブルはホワイトとブラックしか販売されておらず、そのどちらも AirPods Max 本体のカラー、つまりシルバー、スペースグレイ、スカイブルー、ピンク、グリーンの5色のどれともマッチしない。
AirPods Max は、皆さんが Apple 製品に期待するに至った種類のデザインのタッチを提供する。左右のイヤーカップは磁力を使って取り付けられ、それぞれ独立して調節できるので頭の上でずれたりせずにきちんと良い位置に収まる。AirPods や AirPods Pro と同じように、AirPods Max も光学センサーとポジションセンサーを使って頭に装着されたことを自動的に検知する。
エンジニアたちにホリデーの休みを取らせるために計算されたものに違いない気がするのだが、Apple がまたもやすべての OS リリースを一気に出す日を迎えた。今回は macOS 11 Big Sur への最初のアップデートとしてさまざまの新機能やバグ修正がもたらされ、iOS 14 と iPadOS 14、さらには watchOS 7 と tvOS 14 にも他の機能中心のアップデートがなされた。
モバイルデバイスについては、今回のアップデートは新しい Apple Fitness+ サービスへの対応と、その他多くのことが加わり、一方で Big Sur については AirPods Max への対応と、Apple ProRAW 画像フォーマットへの対応、さらには多くの細かな諸機能とバグ修正がある。
これらのアップデートが信頼できるものであるかどうかを判断するにはまだ時期尚早だ。今すぐ Apple Fitness+ を購読したい人や、今回のアップデートで対処が施されたバグに苦しめられている人以外の人たちには、少なくとも1週間ほど待って、即座に取り入れた人たち (例えば私たち) がどんな具合で使っているかを見てからにすることをお勧めしたい。
Apple Fitness+
Apple Fitness+ は iPhone、iPad、それに Apple TV にスタジオスタイルのワークアウトをもたらすもので、今回のアップデートの目玉機能だ。ストリーミングビデオによってワークアウトを提供しつつ、それがあなたの持つすべての Apple デバイスと統合され、Apple Watch を使ってフィットネスの測定値と進捗具合を追跡する。[訳者注: Apple Fitness+ の日本での提供は未定のようです。]
Apple Fitness+ サービスは最大 6 人までの家族で Family Sharing を通じて共有でき、料金は月額 $9.99 または年額 $79.99 だ。Apple Watch Series 3 またはそれ以降を現在持っている人は 1 か月間無料で試用でき、新しい Apple Watch を購入した人には Apple が 3 か月間の無料試用期間を提供する。
いずれのタイプの試用も期間が終われば自動的に月額 $9.99 の購読に移行するので、続けたくない人や、年額購読に切り替えたい人は、リマインダーをセットしておいて試用期間が終わる前に手続きするようにしよう。Apple は今回のリリース時期の設定として多くの人たちが家に閉じこもっているホリデー期間のタイミングを選んだのだろうし、ホリデーギフトとして新しい Apple 機器を手にする人も多い時期だろう。
macOS 11.1 Big Sur
一年前に 10.15 Catalina のバグ修正アップデートが次から次へと出たことを思えば大違いであることに注目したいが、今回 Apple が Big Sur への最初のアップデートとして出したのは機能を追加するリリースだ。(ちょっと面白い情報として、この記事を執筆していた時点での Apple の Big Sur アップデートページへのリンクの末尾には #macos1102 というアンカー名が付いていた。これはつまり、Apple の中の少なくとも誰かはマイナーアップデートを予期していたということなのだろう。)
macOS 11.1 Big Sur はいくつかのバグ修正も含んでいるけれども、新機能もいくつか提供する。主な新機能を挙げよう:
もう一つの変更点は、Home 画面上の Shortcuts アイコンが Shortcuts アプリを起動したりせずに直接起動するようになったことだ。iOS 14 ではショートカットをアプリとして作成して独自のカスタムアイコンを持たせることができるようになったので、人々は競って自分の Home 画面をカスタマイズするようになった。これまでは、アイコンのカスタマイズはアプリを開くのに時間がかかり、扱いにくい手順となることを意味していたのだが。他方難点もあって、個々のショートカットを起動するごとに確認バナーが表示されるようになったので、ほとんどすぐにうんざりした気持ちになってしまう。
iOS 14.3 には写真家向けのワクワクさせられるような新機能もある。iPhone 12 Pro と iPhone 12 Pro Max では Apple ProRAW フォーマットの写真が撮影できるようになった。ProRAW の写真は、プロの写真家が raw フォーマットで撮影できる (それによりあとで編集する際に最大限の柔軟性が得られる) 一方で、iPhone のマルチフレーム計算写真学の利点も失われないというものだ。PetaPixel が良い概観記事と、たくさんの実例を並べて比較したレビュー記事sを出している。どうやら ProRAW は Night Mode で使うと最も有用であるようだ。ProRAW フォーマットで撮影するには、まず Settings > Camera で有効に設定してから、Camera アプリでオンにしなければならない。
Xebec には、二つの USB-C to USB-C ケーブル、二つの USB-C to USB-A ケーブル、そして二つの Mini HDMI to HDMI ケーブルが含まれる。これらを使えば、Tri-Screen は5年前に遡る殆どの Apple ノートブックに対応出来る (場合によっては、Mini DisplayPort-to-HDMI アダプタが必要になる事もある)。
The Omni Group が OmniFocus 3.11 をリリースして、従来このタスク管理アプリの iOS 版に追加されていた新しいウィジェットを macOS 11 Big Sur の中でも導入した。今回のアップデートでは過去・現在・近日中に起こる項目を一覧できる Forecast Widget を追加し、選択された視点の下で次に来る項目を示す Perspective Items Widget も追加した。今回からユニバーサル macOS アプリとなって M1 ベースの Mac でも Intel ベースの Mac でもネイティブに走るようになった OmniFocus 3.11 は、カスタム視点のデフォルトカラーをティールからパープルに変更し、Notice バーの見栄えを Big Sur のツールバーのものに近くし、アウトラインの中の項目に新たなタグを割り当てることができなくなっていたバグを修正した。(Omni Group ウェブサイトでの新規購入は Standard 版が $39.99、Pro 版が $79.99、Mac App Store では Standard 版が $39.99、アプリ内購入で Pro 版にアップグレード可、45.1 MB、リリースノート、macOS 10.14+)
Ian Page が Mactracker 7.10 をリリースして、macOS 11 Big Sur 用の新アイコンを備えた。もっと重要なこととして、この Apple 製品データベースは最近のメジャーな Apple ハードウェアのアップデートとリリースに関する詳しい情報を含めており、そこには M1 ベースの Mac mini、MacBook Air、および 13 インチ MacBook Pro、それから iPhone 12 mini と 12 Pro Max、さらには HomePod mini も含まれる。また、macOS 11 Big Sur の情報も含められ、最近の Mac モデルでの起動チャイムを追加し、Big Sur のシステム要件に基づいて Maximum OS 項目を更新し、Apple の最新の Vintage および Obsolete 製品の Support Status を更新している。(Mactracker ウェブサイトからも Mac App Store からも無料、149 MB、リリースノート、macOS 10.12+)
C-Command Software が SpamSieve 2.9.41 をリリースして、macOS 11.1 Big Sur のバージョンの Mail への対応を追加するとともに、このアプリの Mail インストーラを改良して新しい macOS バージョンが新しいバージョンの SpamSieve を必要とする場合にそれをより良く探知できるようにした。このスパム電子メールフィルタリングユーティリティは Mail で使う際に以前より素早く起動するようになり、M1 ベースの Mac で診断レポートが正しく動作しなかった Big Sur のバグを回避し、M1 ベースの Mac で Mail のトレーニングメッセージが正しく受信されるためにさまざまの変更を施し、SpamSieve と Small Cubed の MailSuite の両方が使われていた場合に Mail がハングすることがあったバグを修正している。(新規購入 $30、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、18 MB、リリースノート、macOS 10.9+)
Cocoatech が Path Finder 10 をリリースした。macOS の Finder に代わるファイルブラウザの、メジャーなアップデートだ。他にも機能は非常に多くあるけれども、Path Finder は隠されたファイルをユーザーが見られるようにし、フォルダ同士で比較・合併・同期ができ、ファイルをバッチ選択してバッチ改名でき、一つのウィンドウの中で二つのブラウザ枠を作って表示とナビゲートができる。
macOS 11 Big Sur のためにフルに再設計されるとともに M1 ベースの Mac への対応も追加した Path Finder 10 は、AirDrop 対応 (現時点では "Everyone" によって発見可能なデバイスのみ) と Mail、Messages、Notes など共有サービスへの対応を追加し、USB 経由で接続した iOS デバイス上のファイルのブラウズとファイル操作ができるようにし、Batch Renamer 機能に改良を施し、Drop Stack をデザインし直して改善し、また Dark モードを改良している。Path Finder の価格は新規ライセンスが $36、過去のライセンスからのアップグレードは $18 だ。(新規購入 $36、アップグレード $18、Setapp からも入手可、19.9 MB、リリースノート、macOS 10.12+)