2016 年型か 2017 年型の MacBook Pro で充電の際に問題が起こっていませんか? Apple が、バッテリー充電が 1% から先に進まない Mac のバッテリーを無料で交換する修理プログラムを開始した。macOS 11.2.1 Big Sur と macOS Catalina 10.15.7 追加アップデートは、充電で問題を起こすバグに対処し、sudo コマンドの脆弱性をパッチする。Big Sur へのアップグレードを考えている人は、十分な空き容量があることを必ず確認してからにしよう。そうしないと抜け出すことの難しい起動ループに陥ってしまう可能性がある。今週はいくつか楽しい機器をお見せしよう。Adam Engst は Insta360 ONE X2 ステディカムの第一印象を述べ、彼自身が雪の上を走る映像もお届けする。Jeff Porten は CES からさらにいくつか素敵なものを紹介する。今週注目すべき Mac アプリのリリースは、macOS Catalina 10.15.7 追加アップデートとセキュリティアップデート 2021-002 (Mojave)、ChronoSync 4.9.13 と ChronoAgent 1.9.9、Adobe Acrobat DC と Reader DC 21.001.20135、それに Default Folder X
2012 年に出した iOS 限定のセキュリティ書類からスタートして、Apple は少なくとも毎年、セキュリティに向けた自らの取り組みを公表してきた。年によっては複数回出したこともあった。従来は iOS 用と Mac 用に別々のガイドを出していたが、Apple 2019 年 12 月に両者を統合した。この Apple Platform Security ガイドは、高度に専門的な開発者向け技術書類と、読みやすい消費者向け概説との間の、いわば中間的位置に属する。実際これは、Apple が情報とデバイスをどのように保護するのかを理解したいと思うどんな人にとっても信じられないほど有用な助けの手となる。
Apple Platform Security ガイドは情報源としても素晴らしいが、これを紹介する記事を書くのは辞書に施された最新の更新について手早く紹介記事を書くの同じくらいに楽な作業だ。確かに、このガイドには更新された点も新しい内容も数多く含まれるけれども、本当に大切なのはそんな細かなことではなくて、Apple のセキュリティプログラムが大きく見てどちらへ向かおうとしているのか、それが Apple の顧客にどんな影響を与えるのか、そしてそれがテクノロジー業界全体に対して何を意味するかといったことにあるからだ。
そのような大局的な観点に立てば、すべては サイバーセキュリティの未来は垂直統合にある という一言に集約される。垂直統合とは、ハードウェア、ソフトウェア、それにクラウドベースのサービスをすべて組み合わせて包括的なエコシステムを構築することを意味する。垂直統合を使ってセキュリティーを増そうとしているのは Apple だけに見られる傾向ではなくて、今やこの業界全体にわたって広く見られる。例えば Amazon Web Services もその中心的存在の一つだ。セキュリティが本当に重要であれば、ハードウェア、ソフトウェア、サービスをまとめて完璧に制御せずに競争を続けることは難しい。
垂直統合こそがセキュリティへの鍵
Apple はそのセキュリティ戦略全体をガイドの概要の第2段落で次のようにまとめている:
すべての Apple デバイスでは、ハードウェア、ソフトウェア、およびサービスを連携して機能するように統合することで、個人情報の保護という究極の目的を果たすために、最高のセキュリティと透過的なユーザ体験を実現しています。例えば、Apple がデザインしたシリコンとセキュリティ・ハードウェアが重要なセキュリティ機能を強化しています。ソフトウェア保護によって、オペレーティングシステムと他社製 App の安全性が保たれます。サービスによって、適切な時期にソフトウェアを安全にアップデートするためのメカニズムが提供され、App のエコシステムの安全性が高まり、通信や支払いが保護され、より安全なインターネットの利用体験を実現します。Apple デバイスはデバイスやデータのみを保護するのではなく、エコシステム全体を保護します。これにより、ローカル上、ネットワーク上および主なインターネットサービス上でのすべてのユーザ操作が保護されます。
これこそ垂直統合だ。ハードウェアとソフトウェアとサービスの組み合わせ全体をコントロールすることによって、信用できるエコシステムを構築し、理想的には各部分の総和を超えた全体を作り出す。セキュリティのための垂直統合は信じられないほど強力だが、顧客がセキュリティのためにそのコントロールの一部を手放す結果としてそれなりの懸念も生まれる。この Apple Platform Security ガイドには垂直統合がどのようにして Apple エコシステムにおけるセキュリティの土台を形成しているかを示す実例が豊富に取り揃えてある。
ハードウェア: Apple silicon コンピューティングデバイスの核心にあるのがセキュリティに特化したハードウェアだ。特に Secure Enclave は、暗号化鍵の管理やパスコードと Face ID/Touch ID データの保護といった高度に機密を要する機能を処理する。Secure Enclave は Apple エコシステムにおけるハードウェアの“信頼の起点 (Root of Trust)”であって、すべてのデバイスが可能な限り本質的にセキュアであり、Apple サービスにセキュアに接続できることを保証する。
ソフトウェア: Apple のオペレーティングシステムとアプリは、ハードウェアのセキュリティ機能に緊密に統合されている。この統合のお陰で、例えばハードウェアの信頼の起点と CPU に組み込まれたセキュリティ機能を利用した高度なメモリ保護やデータ保護が可能となる。
サービス: Apple はますますそのクラウドサービスをエコシステムのセキュリティモデルに統合しつつある。例えば Apple のサーバは App Store の中でアプリを暗号学的に署名し、それは Secure Enclave の中にあるハードウェアの信頼の起点によってのみ認証ができるようになっている。
このプロセスは、読み出し専用のブートメモリから始まり、最後にユーザーがログインしてデータの暗号化が復号されるまで、ずっと次々に繋がったセキュアな信頼の連鎖を構築することにより実現される。ローレベルのソフトウェアコンポーネントは個々に異なるものたちがすべて、それぞれ Apple によって暗号学的に署名され、工場から出荷されるより前に Secure Enclave ハードウェアの中に焼き付けられた暗号鍵に結び付いている。次に Apple は埋め込まれたデジタル証明書とデバイス上のセキュリティ方針を利用して、Apple のオペレーティングシステムのみがインストールでき、それがそのオペレーティングシステムの最新バージョン (ただしそれはそのデバイスと設定とに依存する) であり、しかも Apple から入手したものに限り利用できることを保証する。
言い換えれば、ハードウェアの信頼の起点がセキュアな起動プロセスを可能にし、そのプロセスが Apple のクラウドサーバに依存して正しいオペレーティングシステムを提供するとともに、古いバージョンや認可外あるいは改変を受けたバージョンのオペレーティングシステムがインストールされることを防止する。事実上、このことにより攻撃者が Mac に古くて弱点を持つオペレーティングシステムをインストールしたり、ハードウェアデバイスを繋いでブートの最中に Mac に侵入したり、あるいはブートの最中に忍び込むようにルートキットをインストールしたりといったことが極めて困難になる。Apple はさらに、オペレーティングシステムだけを取り出して特別の読み出し専用ボリュームの中で走らせ、そのボリュームも暗号学的に署名して変更を防止すしている。
セキュリティ強化のために垂直統合を使っている会社は Apple だけではない。多くの Android デバイスはそれ独自のバージョンの Secure Enclave を含んでいるが、同じ程度に徹底的なセキュリティを提供するのは難しい。なぜなら、メーカー各社がオペレーティングシステム全体をもサービス全体をもコントロールできていないからだ。また、ゲーミングシステムも、やはり垂直統合が実地に働いている良い実例だ。Microsoft と Sony が、膨大な投資を注いでそれぞれ Xbox と PlayStation のプラットフォームをロックダウンしゲーミングのエコシステムを防衛しようとしている。(もっともこちらは主としてユーザーたちによる海賊版の使用を防ぐことが目的だろうが。)
Amazon Web Services (AWS) も、私が注目している新しい実例だ。AWS は自らの Nitro アーキテクチャの展開を続けてきた。これは、セキュリティチップを AWS サーバに埋め込んでから、それを Amazon のソフトウェアスタックや API に結び戻す。Nitro にはセキュアな処理のための Nitro Enclave さえ含まれており、これもまた Amazon の Key Management Service と統合される。その結果として、AWS の従業員でさえ顧客の仮想マシンの中を覗き見ることができず、顧客は極秘データの処理のための高度にセキュアな環境を得ることができる。ハードウェア、ソフトウェア、サービスが、すべて緊密に統合され、連携して働くように設計されている。
私の考えでは、垂直統合こそが今日の、そして将来の脅威に対する防御の要だ。今日の攻撃者たちはあまりにも進化し特化しているので、オペレーティングシステムとハードウェアの間の完璧な統合なしにセキュアなデバイスを構築するのは極めて困難になった。あるカンファレンスのプレゼンテーションで、講演者がチップの X線写真と電子顕微鏡画像を使って直接操作による攻撃を実行するところを私は見たことがある。iPhone、iPad、あるいは Mac のような魅力あるデバイスにおいては攻撃者を退けるために必要なセキュリティの設定基準がものすごく高く、そのことは攻撃者がターゲットのデバイスに物理的に手を触れられないという前提の下でも変わらない。
けれども強い力には強い囲い込みが伴う。特定のベンダーのクラウドサービスに依存するということは、つまりもしもそのサービスがダウンしたりそのベンダーがそのサービスを打ち切ったりすればたちまちあなたのデバイスは何の役にも立たないプラスチックと電子部品の塊になりはててしまうということを意味する。Apple が今すぐ破綻するという状況は考えにくいけれども、つい最近にも Apple の認証サーバの負荷が上がったため整合性チェックへの応答が遅れ、結果として多くのユーザーがアプリを起動できなくなるという事態が発生した。(2020 年 11 月 13 日の記事“Apple ネットワーク障害、半日世界中の Mac 生産性を破壊”参照) 垂直統合はまた、より多くの顧客がそのベンダーのデバイスやサービスを使うよう仕向けることとなり、それが売り上げを伸ばす働きをすることも明らかだろう。
セキュリティの名の下でのこのような統合は、柔軟性を減らし、機能を減らすことにも繋がる。ドライブのブート可能な複製を作るという単純なことについて、macOS 11 Big Sur の署名付きシステムボリュームがバックアップの開発者たちには大きな障害となった。M1 ベースの Mac でブート可能な外付けドライブを作成することさえ、さまざまの問題をはらむようになった。つまりこれは「トト、私たちもうカンザスにいないみたい」ということであり、もはや 1939 年のセキュリティ慣行に従ってはいられないということだ。[訳者注: 映画“オズの魔法使”は 1939 年に公開されました。]
この Apple Platform Security ガイドは、セキュリティに興味のある人すべてに必読の読み物だ。全部で 200 ページ近くもあって、MacBook のマイクロフォンのハードウェア遮断から、iOS の Ultra Wideband のセキュリティ、Apple Security Research Device、さらには自動車のキーのセキュリティまで、多種多様な話題を扱っている。この記事では Apple がハードウェアとソフトウェアとサービスを統合しているやり方に焦点を合わせたけれども、そこを強調するあまりに個々の分野における数多くのセキュリティの大きな進歩を紹介することはできなかった。
Apple の iOS デバイスは、かつて製造されたものの中で最もセキュアな消費者向けデバイスだ。M1 ベースの Mac もまた、私たちがこれまで目にした中で最もセキュアな汎用の消費者向けコンピュータかもしれない。「最もセキュア」というのは決して無敵ではないし、Apple はこれが決して終わらない開発競争であることを認識し続けるだろう。Apple が何か進歩する度に、プロの犯罪者や敵意ある政府が (いや、あらゆる国の政府が) 次の侵入口を探し始める。けれどもこの先何年も、きっと Apple は手持ちのあらゆるツールを駆使して、ハードウェアと、ソフトウェアと、サービスの統合に基づく、セキュアなエコシステムを構築し続けて行くに違いない。
1984 年はコンピューティングにおける重要な年であった。勿論、それは Macintosh が登場した年でもあるが、もう一つの時を超越したコンピュータハードウェアも生み出した:IBM Model M キーボードで、Matt Neuburg は史上最も優れたキーボードであると論じている (史上最高のコンピュータ・キーボード?" 27 February 2009 参照)。
この Model M は、タイプライターの利用者を満足させる事を狙って設計されたもので、十分なクリック感のある座屈バネを持つキーを搭載している。1992 年には、IBM は殆どのキーボード製造を Lexmark に出してしまうが、同社は Model M キーボードを Big Blue のために製造し続けた。しかし、業界は次第にラバードームの様なより安価でより軟感触の機構へと移行し、そして Lexmark と IBM の両社とも 1990 年代後半には Model M 事業から撤退してしまった。しかしながら、Lexmark 従業員の一部が Lexington, Kentucky の工場を買い取り、そして Unicomp を結成した。
クリック感のあるキーボードは、かつては隙間商品であったが、最近になりまた流行り始めた。それは今やとても人気があり、大手の企業も多くの店先で、Walmart ですら、買える機械的な "ゲーム用" キーボードを提供している。一方で、Unicomp は古典的なクリック感のある Model M キーボードを、Apple の危機が明らかな時代から量産し続けている。
Unicomp は Mac 専用モデルである Spacesaver M も作っているが、私はそれをお薦めする気になれない。その理由は、年月と共に、時代物の Lexmark 金型は劣化が進み、信頼性の問題や組み立て不良の報告が多く見られる様になってしまったからである。最近、Unicomp は新しい金型に投資をし、この四半期で初めてとなる新しい Model M を、そのまま New Model M を名付けて売り出した。
私は最近新しいキーボードが必要な状況に立ち至った。Model M は私の初めてのキーボードではなかったが、それは高校のタイピング教室で使ったものであり、長いこと私はあのクリック感のある、跳躍感のあるタイピングの感覚を待ち焦がれてきた。
私は、Windows キーと PC キーボードの証となる諸々を備えた在庫の New Model M を注文する寸前であった。結局の所、私はキーボードに目をやることは殆どないので、私の Command キーに Windows のロゴである Saint Hannes の十字や Linux のペンギンが付いていても余り気にならない。いずれにしても、キートップを換えるのは簡単であり、そして Unicomp は色々なキートップを売っている。
私が気になったのは、上部に並ぶ Mac 専用のキーで、明るさ、音量、Mission Control、等々の機能を制御させてくれるものである。加えて、基本モデルには Apple キーボードにある Function キーがない。確かに、それに換えて別のものを再プログラムすることは可能だが、Mac 配列のキーボードを持てたら、私の人生は遙かに楽になるのではと思った。
私は 12 月中旬に Unicomp サポートに連絡を取り、Spacesaver M と同じ配列を持つ New Model M を私のために作って貰えるかどうか尋ねた。私は Unicomp が COVID-19 のせいでとても苦境に追いやられており、March 2020 に予定されていた次期モデル Mini M キーボードも延期されていることを知っていたので、余り大きな期待はしていなかった。しかしながら、彼らは直ぐに反応し、1月中旬ならカスタムのキーボードをやれるかもしれないので、その頃になったらもう一度連絡して欲しいと言ってくれた。
1月中旬になり、私は Unicomp サポートに再び連絡を取り、私のカスタムの New Model M を作って貰えるか聞いた。彼らはイエスと答え、注文の仕方を教えてくれた:
私が今タイピングしているキーボードは極めて特別かもしれない:Mac 配列の New Model M である。
New Model M Mac 配列
この New Model M の実用本位の工業デザインは、とても如何なるデザイン賞も受けられないであろう。本体は単純な黒で、キーは白と灰色の混合である。この Mac 版は必要最小限しか備えていない。そこにはフルサイズの Mac キーボードに期待される全てのキーが含まれるが - Command, Option, Function, 明るさ, 等々 - キートップ上に Susan Kare デザインのアイコンは期待しないように。Command や Exposé の様な特別なキーは単純なテキストラベルが付いているだけだが、明るさ、音量、そしてメディアキーには一般的な視覚記号が使われている。
大きさから言うと、New Model M は獣である。幅は 17.9 インチ (45.5 cm)、奥行きは 7.5 インチ (19 cm)、そして高さは 1.96 インチ (5 cm) で、重量は 11 オンス (約 1.7 kg) である。数字パッドのお陰で、キーボードは特に幅広となっていて、キーボードとポインティング機器を横に並べて置く人は邪魔に感ずるかも知れない。私はキーボードを膝の上に置くので、それは問題にはならない。
New Model M は、そのまま何もしないで状態で私の iMac と働いた。音量、明るさ、そしてメディアキーは完璧に働いたし、Exposé も同じであった。Dashboard キーで Launchpad が立ち上がるようにするためには、System Preferences > Keyboard > Shortcuts でプログラムしなければならなかった (興味深いことに、Dashboard キーは F12 に登録されている)。
一つ奇妙な点は、Unicomp は Insert キーを Eject で置き換えたことで、これは私が ThinkPad 上でタイプ中に Insert を押したら DVD トレイが開いたことで気付いたものである。もう一つの奇妙な点は、フルサイズの Mac キーボードでは当たり前なのだが、数字パッド上には Num Lock キーが無いことである。代わりに、それは Clear キーで置き換えられている。また、私は、Delete キー上の "a" 文字を殺している指銃の小さな視覚記号を面白いと思った。
標準配列にするか、$20 余分に出して Mac 配列にするかで迷っている場合、そのキーボードと一緒に使う主たるコンピュータが Mac なのであれば、その余分の支払いの価値は十分にあると私は思う。
New Model M でタイプする
本当に大事なものは何かを取り上げよう:New Model M 上でタイプするのはどんな感じか? その様な経験を言葉で伝えるのは難しいが、挑戦してみたいと思う。
Model M はメカニカルキーボードではない事を知っておくことは大事である! それは代わりに座屈バネ機構を使っていて、伝統的なメカニカルキーボード機構よりももっと古い技術である。この二つの間の主な違いはバネの大きさである。座屈バネキーボードでは、キートップを押すと、それはバネを押し、そのバネはキーが押されたことを伝えるレバーの上に直接乗っている。メカニカルキーボードでは、小さなプラスチック部品がキーの押し下げを伝え、バネはキーを元の位置に戻すだけの役目しか果たさない。
機能的な違いは、座屈キーのバネはメカニカルキーにはない微かな "弾力性" を有していることである。お伝えするのは困難だが、そのキーはタイプすると微かな "ポーン" と言う様な音を出す。だからと言って、隣の部屋で寝ている子供を起こしてしまう心配をする程ではないし、Adam Engst の古い信頼性のある Das Keyboard よりは静かな気がする。Adam のは、我々が Slack 通話をしている時には、馬の群れが突進している様に聞こえた。New Model M を使ってタイプしているビデオも撮ったので、その感じを掴んで欲しい。
座屈バネは力を要するという定説がある。私はこれが気になった。と言うのも、私の前腕の筋肉は、ボタンを繰り返し押すと、痛いほど張ってくる傾向があるからである。それが、私は縦型のマウスを使い、コンピュータ上ではゲームを殆どやらなくなった理由である ("Anker の縦型マウスが RSI の痛みを安価に緩和" 7 December 2018 参照)。しかしながら、New Model M を動かすに必要な力が気になる様なことはこれ迄の所全くない。
実際に、私はこれらのキーは軽い力で押せると感じている。バネの力は十分な抵抗力を持っているので、キートップに触っただけで間違ってキーが反応する事も無いし、一旦キーを押すと決めたら、あの満足感に満ちたクリック音を発する前にほんの少しだが動く。実際の移動距離は Apple の Magic Keyboard とほぼ同じだと感じられる。
クリックとキーが最下点に達する迄の間の更なる移動が指に対するクッションの役目を果たしている。私が Apple キーボードでタイプする時、時として指先が常時キーボードに打ち付けられる所から痛みを感じることがあった。それが New Model M では起こらない。
キーボードの間を行き来している時、私は超格安の Walmart キーボードを使ったことがあるが、それは余りにも反力が無くまるでマッシュポテトの上でタイプしている様な感じであった。私の指は泥の中で働いている様に感じ、それが前腕への負担となっていた。私は New Model M が私の前腕の痛みを解消したとは言えないが、これ迄使ったキーボードの中では一番悪化の度合いが少ない。
あら探し
私はこのキーボードを使ってタイプするのが好きだが、欠点が無いわけではない。一つ挙げれば、美学は主観的だが、私はこの New Model M は醜いと感じる。しかし、全体の美学よりも気になると言えるのは、Caps Lock と Function の表示灯に対して使われている明るい青色 LED である。ひょっとすると、それは私の目が敏感すぎるせいかもしれないが、青色 LED は明るすぎと思うし、昨今ではコンピュータ部品として使われ過ぎている。
もし N-キーロールオーバーが気になるならば、New Model M はお薦め出来ない。多くのキーボードは、余りに多くのキーが同時に押された場合、キーの押下をかなりの確率で認識しない。皆さんのキーボードでも両方の Shift キーを小指で押しながら次の様にタイプすることでそれを試験することが出来る:
N-キーロールオーバーを搭載するキーボードには、どれだけ多くのキーを同時に押せるかに関する制限はない。N-キーロールオーバーはしばしばゴースティングと間違えられる。後者は、複数のキーが押下された時幻のキー押下が起こることを指す。例えば、タイプ中に "n" と "k" を同時に押すと "i" が現れる現象である。多くの場合、キーボードメーカーが "反ゴースティング" を宣伝する時、実際には何らかのキーロールオーバーを意味している。Linus Sebastian が違いをこのビデオで説明している。
延期が長引いている Mini M は、もし出荷までこぎ着けられれば、New Model M にあって欲しいと願う一つの機能を有している:取り外し可能な USB ケーブルである。私の経験からすると、この様な長い期間に亘って使うもので最初にやられるのはケーブルなので (2007 年以来の私の Sony MDR-V6 ヘッドフォンの様に)、簡単に交換出来ることが望ましい。
New Model M が、私が高校で使っていた古い Model M よりも劣っている所も幾つかある。このキーボードの片側を強く押すと微かなきしみ音がする。元祖の Model M は極めて堅固であったが、それは恐らく石から削り出されたからであろう。しかしながら、それはタイピングには何らの影響も与えない。他の質の低下に、一体型のキートップの使用がある。古い Model M モデルにはキーを覆う外部シェルがあり、それは容易に着脱出来たので、キー全体を外し場合によってはバネ機構を痛めてしまう恐れ無しにキーの外観を変更出来た。New Model M では、キー全体を取り外さなければならない。再度、それはあら探しである。
New Model M を好きになれなかったとしても、小さな、まず地元と言える企業に、なにがしかのお金を使うことが出来たことに私は少なくとも安らぎは見いだせたであろう。しかし、私はそれが大好きである! それは美人コンテストやビデオゲームの試合で勝つことは無いであろうが、それでタイプするのは喜びでもある。そして、私は一日中タイプしている、それも毎日。
Lindy 効果と呼ばれる理論がある。耐久消費財は長く持てば持つほど、それは更に長く持つ可能性があると言うものである。例えば、ある本が 50 年間出版されていれば、次の 50 年間も出版されているだろうと考えるのは筋が通っている。それからすると、この 37 才になる Model M は実際に "lindy" である。それは時を超越したデザインであり、Unicomp がその伝統を継承していることを私は喜びたい。
今年の CES 記事の締めくくりとして、少し趣向を変えて毎年恒例の CES Innovation Awards の今年の受賞作品を紹介してみたい。この賞はこれまで毎年与えられてきたが、私の記事に載せるほどのものではないという気がしていた。ショウのフロアでは少なくとも特別賞以上を受賞したブースに賞のロゴがペタペタ貼り付けられていたが、そんなブースは既に何が展示されているかに応じて私の中で取捨選択が済んでいた。(Innovation Award の受賞製品は専用の展示区域にも展示されていたが、そこでは展示物が文字通りガラスケースの中に納められて、説明してくれる人も誰もいなかったので、やはり何の役にも立たなかった。)
でも今年は違っていた。賞や特別賞を受けた者たちが CES から特別の仮想ブースを与えられるようなこともなかったので、どんなものか知るためにはそれぞれをレビューするしかなかった。やってみると実際それは興味深いものの大豊作であった。なので、来年もぜひ Innovation Awards にもっと注目してみたいものだと思っている。もちろんそれは、もしも CES が 2022 年 1 月に従来通りに Las Vegas での狂乱の開催に戻ればの話だが。
Apple Watch を頻繁に使っている人なら、ちょっと魔法のような Wearable Devices の Mudra Band を考えてみるとよいと思う。Mudra Band は腕時計バンドの内側に 8 個のセンサーを備えていて、あなたの手の動きを感知する。なので、もう片方の手を使って Apple Watch の画面を操作しなくても、手首に着けているその手のジェスチャーのみで操作ができる。空中でひょいと動かせばかかってきた電話を切り、親指から人差し指の方へつまめばアラームを止める。付属のアプリを使ってジェスチャーをカスタマイズしてウォッチのアクションに割り当てることができる。Mudra Band の価格は $179 で、ブラックとホワイトがあり、2021 年 3 月に出荷予定だ。この会社は実際に出るかどうか分からない製品にお金を出すリスクがあると感じられるのを予期したのだろうか、 紹介ビデオの中で「ちゃんと動いています!」と何度も言っている。
C-Command Software の Michael Tsai が EagleFiler 1.9.3 を出して、さまざまの出版社のウェブページから読み込む機能に改良を加え、多数の小さなファイルを読み込む際のパフォーマンスを最適化した。この書類整理およびアーカイブ作成用アプリは Reeder 5 でキャプチャキーが正しく働くようにし、部分的にダウンロードされた Outlook メッセージを正しく読み込めるようにし、Import From Apple Mail (Plain Text) スクリプトを追加し、メッセージのデータを改変してしまうことがあった Mail のエンコーディングのバグを回避し、読み込みの最中にタグを同期するとハングが起こることがあったのを修正し、レコードのコンテナを読み込んでいる最中にコンテナを移動させるとメタデータが失われた問題を解消し、壊れた Microsoft Word ファイルが EagleFiler に悪いメタデータを読み込ませることがないようにした。(C-Command Software からも Mac App Store からも新規購入 $40、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、32 MB、リリースノート,、macOS 10.12+)
The Omni Group が OmniFocus 3.11.4 をリリースして、このタスク管理アプリの Pro 版にオートメーションの改善を施した。OmniFocus Pro は今回から Omni Automation 用の認証情報をキーチェーンに保存してアクセスする機能に対応し、Omni Automation Plug-In にキーボードショートカットを設定できるようにし、Perspectives ウィンドウのレイアウトの問題を修正した。Standard 版と Pro 版の双方とも、プロジェクトピッカーでプロジェクトのタイトルが途中で切れてしまうことがあったバグを修正し、macOS 11 Big Sur での Quick Open のレイアウトの問題に対処し、Big Sur で View ポップオーバーのチェックボックスやボタンの見栄えを改善し、Omni Automation スクリプトの評価作業中に起こっていたクラッシュを解消した。(Omni Group ウェブサイトでの新規購入は Standard 版が $39.99、Pro 版が $79.99、Mac App Store では Standard 版が $39.99、アプリ内購入で Pro 版にアップグレード可、70.7 MB、リリースノート、macOS 10.14+)
The Omni Group が OmniOutliner Essentials と OmniOutliner Pro のバージョン 5.8.2 をリリースして、これらのアウトライン作成および情報整理アプリの Pro 版にオートメーションの改善を施した。OmniOutliner は今回から Omni Automation 用の認証情報をキーチェーンに保存してアクセスする機能に対応し、プラグインのアクションにもキーボードショートカットを設定できるようにし、Omni Automation スクリプトを走らせてエラーが起こった場合にクラッシュを招くことがあったバグを修正した。OmniOutliner Essentials はペーストしたテキストが非対応のスタイルを使っていた場合にファイルを Pro 書類と認識してしまった問題に対処するためのバグ修正を施した。(Essentials の新規購入 $9.99、Pro の新規購入 $59.99、40.5 MB、リリースノート、macOS 10.14+)
Australia のニュース出版者達は、Facebook と Google が彼らのコンテンツへリンクを張ることで彼らを食い物にしていると苦情を言った。そこで、Australia 政府は "リンク税" を提案した。この税制下では、Facebook と Google は Australia のニュース出版者に対して、自分のサービス上での彼らへのリンク全てに対して支払いをせねばならないことになる。Facebook は September 2020 に、もし Australia 政府がこのリンク税を実施するようなことになったら、同社は Australia の出版者に対するリンクの許可を止めるであろうと警告した。そして同社は今やその通りの事をした。従って、出版者達は Facebook が彼らのコンテンツへのリンクを張ることでもはや彼らを食い物に出来ないことで喜んでいるだろうと皆さんはお思いになるであろう。
でも、彼らは喜んではいない。そして、米国の政治家までもが Facebook に対して、Australia と民主主義そのものを脅かしていると厳しい非難を浴びせている。TechDirt の Mike Masnick は、このややこしい状況とそれに対する同じくらいややこしい反応を説明するのに全力を投じている。そこには、人々は何故 Google が News Corp とリンクを張ることに関する合意をしたこと (Australia から完全に撤退すると脅した後で) に対して怒っているかも含まれる。そもそも、News Corp はこの "税" の発端だったのである。
Australia のニュースサイトに対するリンクだけでなく、数多くの他のサイトに対しても遮断したことに対して多くの人が怒っている。そこには政府のウェブサイトや、そして一時的には、自らのサイトまでもが含まれる。それは、Facebook と Google に全てのサイトを同等に扱うことを課する無差別規則のせいかもしれないが、ひょっとすると、Facebook はただ単にサイトを阻止するのにひどい仕事しただけなのかもしれない。
World Wide Web の発明者である Tim Berners-Lee は、このリンク税に対して、それは Web に対する根本的な脅威であると呼んで、最大限の強い言葉で反対している。
詳細な報告書の Mac 部分には、とても気になるものが含まれている。例えば、奇妙な ThiefQuest マルウェアの記述で、それは身代金攻撃を装いながら Mac から個人データを引き出そうとするものである。また、心配になるのは、macOS 10.15 Catalina で導入された Apple のセキュリティ対策がユーザーに一部の PUP を System Integrity Protection を不能にしないとアンインストールさせてくれない事をどの様に記述しているかである。報告は次の様に結論づけている:
Apple の日和見主義の時代は終わった。システム拡張権利付与に関わる保護が必要となり、もはや中立の立場など存在しない。これを起草している時点では、Apple は暗黙の内に PUP の側に立っていて、削除を妨げる保護を提供している。Apple がこれらの PUP に反対の立場をとる人達の側に立ち、彼らの権利を取り消すかどうかは時間がたってみないと分からない。