多数の Apple オペレーティングシステムアップデートがどっと出る時がまた巡ってきた。iOS 14.6、iPadOS 14.6、macOS 11.4、watchOS 7.5、tvOS 14.6、それに HomePod Software 14.6 だ。これらは主として有料ポッドキャスト購読や Apple Card Family への対応を提供するためのものだが、セキュリティアップデートもちゃんと加えられている。AirTags のさまざまな利用や不正利用のシナリオを述べた Glenn Fleishman の記事を読んだ読者たちから Find My 機能と Apple の Find My ネットワークの違いに混乱したという反応が届いたので、Adam Engst が両者の違いを説明する。それから _Take Control of Apple TV_ の著者 Josh Centers が、第二世代 Siri Remote をレビューするとともに、アップデートされた Apple TV 4K の購入を検討中の人のための買い物案内を提供する。今週注目すべき Mac アプリのリリースは Carbon Copy Cloner 6.0、Hazel 5.0.7、Moneydance 2021.1、それに Twitterrific 5.4.6 だ。
6 月の Worldwide Developer Conference を控えて以前から続けている片付け仕事の一環として、Apple は iOS 14.6、iPadOS 14.6、macOS 11.4 Big Sur、watchOS 7.5、それに tvOS 14.6 をリリースした。全体的に言えばこれらのアップデートは Podcasts アプリに有料購読への対応を追加するとともに、Apple Card Family への対応を追加して Family Sharing グループ内の 13 歳以上かつ iOS 14.6 かそれ以上を走らせている人たちで Apple Card へのアクセスを共有できるようにするためのものだ。7 月に、既存の Apple Card アカウントを持つ家族がアカウントを統合できるようになる。
リリースノートには触れられていないが、Apple は以前、6 月に Apple Music に登場予定の Apple Lossless、空間オーディオ、および Dolby Atmos 対応のための基礎となる対応を iOS 14.6 とそれに関連したアップデートで追加すると示唆したことがある。
私たちの印象では今回のアップデートの大部分は決定的な重要性を持つほどのものではないと思えるので、ポッドキャスト購読か Apple Card Family を待ちかねていたという人でない限り、インストールせずに一週間程度待つのが賢明だろう。ただし例外は macOS 11.4 で、これは実際に攻撃が報告されていると Apple が言うセキュリティ脆弱性への対処を含んでいるので、都合がつけば早めにインストールするのがよいだろう。
Glenn Fleishman の "AirTag 追跡をめぐる 13 通りの状況" (15 May 2021) に続く会話の中で、Apple の用語の選択とユーザーインターフェースデザインが、正確に何が "Find My" を構成しているかについて混乱を引き起こしていることが明らかになった。すなわち:Find My は二つのサービスが一つに折り込まれそしてほぼ同じ様に名付けられている。これらの全く異なった、絡み合った Find My サービス間の違いを理解するのは価値がある。何故ならば、個々のユーザーは - Glenn の架空の人物の一人の様な - 地球全体に広がるクラウドソース化された Find My ネットワークに哲学的な理由から参加したくないと思うかも知れないからである。
(我々はここではその問題に踏み込むつもりはない。敢えて言うなら、我々が知る限り、Find My ネットワークはあなたのプライバシーを十分に保護しており、他の人にあなたについての何かを暴露する懸念は全く無い。しかし、あなたの機器が他の人の遺失物を見つける手助けをすると言う様な Find My ネットワークの一部に関わるのはイヤだというのであれば、それはそれ、あなたの判断である。)
鍵は、Find My には二つの異なった様相があることを認識することである:
Find My 機器 (Internet):もし皆さんの Apple 機器の一台でその機器に対する Find My を有効にしておけば、その機器を失った場合、それが Internet にアクセス出来ている限り、それを見つけ出し、ロックし、そして消去する事が出来る。Find My アプリは、iOS, iPadOS, 或いは macOS の中で、又は iCloud.com 経由で使える。Find My 機器 は双方向である:あなたの機器はその位置を報告出来るし、あなたはそれに上記のコマンドを送れる。加えて、Find My iPhone をオンにする事で、Activation Lock が有効になり、あなたの Apple ID パスワード無しでは誰もその機器を消去したり再アクチベートしたり出来なくなる。Find My 機器 を有効にしない唯一の理由は、試験用機器を使っておりそれをしょっちゅうリセットする場合であろう。(私も経験がある、やったことがある - "Extracting Data from an Old iOS App Broken by iOS 14.5" 20 May 2021 参照のこと。) Find My 機器 は、iPhone, iPad, iPod touch, Apple Watch, そして Mac と共に働く。
Find My ネットワーク (クラウドソース): Find My 機器 を使う機器は Internet 上にある Apple のサーバーに接続することに依存する、それとは対照的に、Find My ネットワークを使う機器は、直接の Internet 接続を必要としない。代わりに、それは Bluetooth 信号をブロードキャストするが、暗闇で鳴き声を発している迷子の猫のように、その信号が聞かれているかどうかは知らない - それは情報の一方向伝達である。もし近くに iPhone, iPad, 或いは Mac があり、そしてそれらが十分に最新のバージョンのオペレーティングシステムを走らせており、そして Internet につながっておれば、その Bluetooth 情報を検知し、併せてそれが引き出せる位置情報と対にしてリレー出来る。Find My ネットワーク設定は Find My 機器 を使える全てのハードウェアに対して任意であるが、AirTag やサードパーティの Find My アクセサリを見つけ出すには必要であり、そしてそれらに対して不能とすることは出来ない - それはそれらの電源を落としてしまう様なものである。もし AirTag は使わないし、そして自分の Internet に接続された機器が Find My ネットワークに参加して欲しくないと言うのであれば、それらの機器上でこの設定をオフに出来る。そうすることの唯一の不都合な点は、誰かが隠れた AirTag を使ってあなたの動きを追跡しようとしているかを警告して貰えなくなることである。もう一つの違い:Find My ネットワーク経由で自分のハードウェアを追跡するのは、セキュリティ上の理由から、ネイティブの Find My アプリを使ってしか出来ない;iCloud.com の Find iPhone Web アプリは使えない。
混乱の一部は、Apple がこれらの設定を (例えば) Settings > YourName > Find My > Find My iPhone の下に纏めている事にも起因している。もし Find My iPhone 選択肢は純粋に自分の iPhone を見つけ出す事に関係していると思っているのであれば、Find My iPhone を使うには Find My ネットワークに参加することが必須だと思うかも知れない。Find My ネットワークへの参加を終了するには、設定の同じレベルにある Find My ネットワークを不能にしなければならない。(Mac 上では、その選択肢は System Preferences > Apple ID/iCloud であり、Find My サービス名の隣にある Options をクリックして初めて出てくる。)
混乱に輪をかけているのが、Find My アプリは、iPhone の様な機器、AirTag の様な物、そしてあなたと位置を共有している人々を探すのを一緒にしていることである。ユーザー体験を重視すれば、それは正しいやり方かもしれないが、それにより Find My 機器と Find My ネットワークの区別がはっきりしなくなっている。
混乱の最後の一つとして挙げると、AirPods と幾つかの Beats ヘッドフォンもまた Find My アプリの機器リストに出てくるが、それらは単に近場での Bluetooth 経由で接続しているだけであり、そしてその位置をブロードキャストするのはそれがペア付けされた機器に対してだけである。従って、それらを見つけられるのは、それが紐付けされた iPhone か iPad の近くにある時に限られる。
我々が望みたいのは、Apple が Find My ネットワークサポートを AirPods 充電ケース、或いは AirPods 自身に対しても使えるよう機能強化することである。それらは、我々が最も失いやすい Apple 機器である ("AirPods 対 AirPods Pro:Apple のイヤーパッド使い比べてみた" 3 July 2020 参照)。また、Apple が美しく再設計された Siri Remote を、Find My アプリを使った超広帯域位置検出に対するサポート無しに、AirTag と時を同じくして、出したのは馬鹿げているとしか言いようがない ("Apple、Apple TV 4K をアップデート、新型 Siri Remote を導入" 20 April 2021 参照)。
告白しておかなければならない。私は 2014 年に Take Control of Apple TV を執筆し、その後もメンテナンスを続けてきたけれども、最近は Apple TV をあまり使っていない。今はもうテレビをあまり観ないし、家族のみんなも今はわが家の TCL TV に内蔵された Roku ソフトウェアを気に入っているからだ。
わが家で Apple TV が打ち捨てられるようになった大きな要因は、Apple が 2015 年以来同梱してきたあのひどいデザインの Siri Remote だ。はっきりと嫌いだという訳でもないが、長年経つうちにだんだんと使わないようになった。多くの場合、それはこのリモコンがなかなか見つからないからで、これよりも Apple の Remote アプリの方を使うようになり、後には iOS Control Center に内蔵されたリモコンを使うようになった。
それは、第二世代と第三世代の Apple TV に同梱されていたアルミニウム製のリモコンとははっきり対照的であった。確かにソファのクッションの隙間に滑り落ちてしまいやすかったが、私自身テレビを観ながらその滑らかなアルミニウムを指で撫でていることが多かった。感触が良く、使って満足できた。
初代の黒い Siri Remote の最大の難点は、八方美人であろうとしたことだった。これはテレビのリモコンであり、ゲームコントローラであり、床のワックスであり、デザートのトッピングでもあった! その結果、結局誰も満足させられないデバイスとなった。タッチパッドの表面はビデオの中で行き来しようとすると反応し過ぎで、最も気軽なもの以外のゲームをプレイするに必要な精度さえ欠いており、その気軽なゲームでさえもフラストレーションを起こした。その上何より、作りが安っぽくて、Apple の標準に達していなかった。ボタンはぐにゃっとした感じで、多くの部分がガラス製だったため、いつもヤギ革の手袋をはめて使うか、ゴム製の袋に入れて使うかしていた。この初代の Siri Remote は間違いなく最悪の Apple デザインのトップテンに入ることだろう。
これほど明らかな過ちを修正するのにどうしてこんなに長い時間がかかったのかは知らないが、Apple はやっとのことで新しいリモコンを出して... それを Siri Remote と呼んだ。きっと Apple は第二世代の Siri Remote に同じ名前を与えることで、過去の醜態を検索エンジンからも、また工業デザインの歴史を綴った本からも、上書きして消し去ろうとしたのではなかろうか。
次世代のデザイン
第二世代の Siri Remote は過去の二つの Apple TV 用リモコンを合併させたもののように見える。Apple は初代 Siri Remote の前の時代のリモコンにあったアルミニウム製の筐体と、方向リング、クリック感のあるボタンを復活させた。けれども今回の新型 Siri Remote には一種のタッチパッドも付いていて、公式に Clickpad と呼ばれ、方向リングの中央に置かれてタッチパッドと選択ボタンの両方の働きをする。(技術的に言えば、方向リングとその中央のタッチ面を合わせた全体が Clickpad だ。)
新しいところもある。この Siri Remote には新たに電源ボタンが付き、Apple TV を動かすにはこのボタンが必須になった。他のどのボタンも Apple TV をオンにできない。HDMI-CEC 互換なテレビがあれば、この電源ボタンでテレビ本体の電源オン/オフもできる。人にもよるだろうがさらにもっと嬉しいのが新しい Mute ボタンで、これを使って HDMI-CEC テレビをミュートしたり、あるいは音量ボタンをプログラムしてテレビやサウンドバーの音量をコントロール (Settings > Remotes and Devices > Volume Control) できる。あともう一つ、Apple は Siri ボタンを側面へ移したので、うっかり呼び出してしまうことが減る。
実際、この第二世代 Siri Remote は私に意外な懐旧の念を呼び起こした。古いアルミニウム製の Apple TV リモコンと同様、私は自分が映画を観ながらずっとこれを持っていることに気付いた。持つのも使うのも本当に心地良い。Roku のインターフェイスを回避して、入力を切り替え、それから何を観るか探すという手間をかけても使う価値はあると思える。(ただし、新しい電源ボタンと HDMI-CEC の組み合わせのお陰で、テレビと Apple TV の電源を入れるのも入力を切り替えるのもボタン一押しでできる。) サイドボタンが押しやすいので、私はいつも Siri に命じて字幕をオンにしたり、輝度を落としたりしている。
前回のモデルと同様、この新型も底部の Lightning ポートから充電する。Apple はバッテリー寿命を公表していないが、前回のモデルを参考にすればそれほど頻繁に充電する必要はないと考えてよいだろうし、充電にもそれほど時間はかからないだろう。初代の Siri Remote ではバッテリー寿命や充電のしやすさに関する苦情をあまり聞いたことがなかった。
第二世代 Siri Remote のペアリング
ごく小さな取扱説明書にさらにもっと極小の文字で書かれていてとても読みにくいけれども、ペアリングの方法は Apple らしくこれ以上ないほど簡単で楽だ。単純に Siri Remote を Apple TV 本体から数インチ以内の近くに置いて、Back と Volume Up のボタンを同時に押す。たとえ Apple TV がスリープ中であっても、魔法のように働く。
Clickpad は素晴らしい
第二世代 Siri Remote が出るという Apple の発表を聞いた当初の興奮が収まった後の私は、こんなに小さなタッチパッドが何の役に立つのかと疑いの気持ちを持っていた。でも使ってみると小さい方が大きな効果を得られると分かった。
初代の Siri Remote のタッチパッドはサイズが大きく感度も強かったので、かえって不安を誘発する結果になった。けれどもこの Clickpad はもっとずっと正確に働く。それは盛り上がった方向リングが誤ったスワイプとタッチ面との間に立つ緩衝装置の役割を果たしていることによるところが大きい。初代の Siri Remote や iPhone アプリとは違って、私はこの第二世代 Siri Remote の上で Apple TV インターフェイスをスワイプして移動することに楽しさを感じるようになっている。
物理的な方向ボタンに囲まれた中央にタッチ面を置くというのは天才的発想だ。左へスワイプしてもまだ望みのものが選択できなかったならば、ただ左矢印を押せばよい。ちょうど親指がそこにあるのだから。両者は素敵な具合にお互いを補完するが、もし厳密に物理的なコントロールの方が好みなら、Settings > Remotes and Devices > Clickpad へ行けばタッチ面の機能を完全に無効化することもできる。
面白いことに、Apple TV で気軽なゲームをプレイする場合、例えば Oceanhorn のようなゲームでは、むしろ第二世代 Siri Remote の方がうまく働くことに私は気付いた。なぜなら、タッチパッドの感度が控え目だからだ。そうは言っても、テレビ用のリモコンを使ってビデオゲームをプレイすることはお勧めできない。シャベルの代わりに肥料用の鋤で穴を掘るようなものだからだ。どちらも庭仕事用の道具だが、やはりその仕事に適した道具というものがある。
初代の iPod を思わせる
以前、古い Apple TV で夜遅くまでテレビを観ていた頃、私の親指はよく方向リングに沿ってくるくるとこすりつつ、その昔の iPod のクリックホイールでコンテンツをスクロールするのと同じ動作をするのが癖のようになっていたものだ。きっと私と同じことをしていた人たちも多いだろう。
確かに機能はするけれども、ソフトウェアがまだ対応していない。Apple TV アプリの中で映画を観ながら方向リングに沿って指を走らせると、押して上へスワイプする動作として受け取られる。つまり、タイムラインを表示して Picture-in-Picture ボタンを表示する。実際にコンテンツをスクロールするためには、まず映画を一時停止しなければならない。
例えば YouTube のようなサードパーティのアプリは、方向リングで混乱に陥ることが多い。YouTube ビデオのタイムラインの中で方向リングをこすっても、反応するまでに一秒か二秒かかることがあって、それからランダムな場所に飛ばされる。一方、Amazon Prime Video アプリでは働きが逆で、右から左へ回すと早送りし、左から右へ回すと巻き戻しする。
Siri Remote に施した変更、とりわけ以前よりかなり厚みをつけたことでソファのクッションの間に滑り落ちにくくなっていますので、他のこの種のネットワークデバイスで探し出す必要性は少々低くなったように思われます。
何よりもまず言っておきたいのは、この第二世代 Siri Remote がやはり簡単にソファのクッションの間に滑り込んでしまうということだ。ただしわが家のようにソファにカバーを掛けている場合は別で、子育てを 8 年もしていれば少しだけ知恵もつくというものだ。そして第二に、リモコンというのはソファと無関係な理由でしょっちゅう見失うものだ。雑誌の下に隠れていたり、娯楽用の家具の背後に落ちたり、いたずらな子供に持ち去られたりする。私は以前から、Apple の指導陣の中には小さい子供を持つ人が一人もいないのではないかと疑っている。Find My 対応が省かれてしまったのもやはりそのことに結び付くのではなかろうか。
確かにこれは先進国ならではの問題かもしれないが、それでも Find My を組み込めば良い製品が真に卓越したものとなることだろう。
もう一つの腹立ちの種は、従来のモデルにあったジャイロスコープと加速度計が省かれてしまったことだ。結果として少数の Apple TV ゲームが新型リモコンと互換でなくなる。Twerdahl はこの点について今は Apple TV で Xbox や PlayStation のコントローラが使えるのだからと言い逃れをした。それはその通りだ。それでもやはり、私には Apple がそのほんの些細な後方互換性を維持できなかった技術的理由が思い当たらない。
この第二世代 Siri Remote は決して完璧ではないが、初代の Siri Remote をクロゼットの奥に放り込んで万一のためだけに取っておくための十分な理由になる。これが Apple TV 用の最高のリモコンだと言うのは無理だが、最も大幅に改良されたものだとは言える。
従来の Siri Remote から買い換えるには $59 かかる。また、新型 Apple TV HD (これは $149 もするので今は買うべきではない) や、アップデートされた Apple TV 4K (価格は $179 から) を買えば付属品として手に入る。
もしも既に Apple TV 4K を持っているなら、その Apple TV の使用体験をもっとずっと楽しめるものにするためのものとして $59 を払う価値は十分以上にある。もしも Apple TV HD を問題なく使っているなら、第二世代 Siri Remote を買って後悔することはないだろうが、それよりもあともう $120 足して思い切って Apple TV 4K にジャンプすることを考えてもよいかもしれない。
唯一の問題は、新しい Apple TV を買うか、或いは別のプラットフォームに乗り換えるかである。その得失については、下記の "Apple TV を持っていないならば" を参照して欲しい。
Apple TV HD を使っているならば
元々の第四世代 Apple TV は、今や Apple TV HD と言う名前になり、引き続きサポートされている。テレビ側での対応が必要となる 4K 解像度や HDR カラーを切望するのでない限り、アップグレードする必要は無い。
しかしながら、もし元々の Siri Remote を再設計された第二世代モデルに入れ替えることに興味があるのであれば ("第二世代 Siri Remote レビュー" 24 May 2021 参照)、もう既に $59 の新たな出費を考えている事になるので、そうなのであれば、更に $120 を追加して新しい Apple TV 4K を買えば、少々の将来対策にはなる。
第二世代 Siri Remote を除けば、それ以外のもので全体的な視聴体験を大きく変えられそうなものは何もない。しかし、自分にとっては重要なものが一つでもあるならば、アップグレードする価値はあるかもしれない。
そうではあるが、アップグレードする事に興味がある人も、少し待った方が良いかもしれない。HDR 60 fps コンテンツも未だ殆ど出回っていないし、Apple は tvOS 15 で新しいハードウェアの方がより有利になる魅力的な新機能を発表するかも知れない。そして、Apple TV が安売りされることは殆ど無いが、時間を掛ければ運良く再生モデルが見つかるかも知れない。
Apple TV を持っていないならば
つい最近まで、テレビで Apple DRM (デジタル著作権管理) 保護の掛かった映画やテレビ番組を観たいと思ったら、基本的には Apple TV が必要であった。それが、最近では事情が変わった。Android TV, Fire TV, そして Roku の様な多くの大手のテレビプラットーフォームは Apple TV アプリを含んでおり、それを使えば手持ちのライブラリや Apple TV+ コンテンツにアクセス出来る。多くのテレビプラットフォームは、AirPlay 入力すらもサポートし、そして HomeKit とも統合する。
厳密に言えば、Apple TV は恐らく 必要 でない。しかし、買ってもいいと思わせる理由は幾つかある。
画質と音質: Apple は Apple TV 4K の $179 と言う値段を正当化しなければならず、そして Apple TV は、手間をかけずに高品質のオーディオとビデオを楽しむという隙間商品になり得た様に見える。他のメディアプレイヤーの方がより良い画質を提供するかもしれないが (ストリーミングボックスは 4K Blu-Ray に太刀打ち出来ない)、Apple TV は扱いが簡単である。Apple TV を映画の元々のフレームレートやダイナミックレンジに合わせるのは簡単であり、それに、新しい Color Balance 機能は較正を簡単にした ("tvOS 14.5 のカラーバランス機能を使う方法" 28 April 2021 参照)。
年に数回、私は映画に没入することがあるが、そんな時には Apple TV を使う。Roku の Apple TV アプリでも映画は問題なく見られるが、Apple TV 経由の方がより良く見える。
HomeKit: HomeKit をお使いならば、Apple TV は HomeKit ハブの役割を十分に果たせる (もっとも HomePod の方がずっとマシだが、それは常時オンの Siri コントローラーとして働くからである)。加えて、HomeKit オートメーションを tvOS Control Center と Apple TV の Siri を使って作動させられる。そして、第二世代 Siri Remote を使ってやるのはとても楽しい。
プライバシー: 私の Roku TV は数秒毎に本部に報告すると言うのは誇張ではない。私は我が家のネットワーク上の Raspberry Pi に AdGuard をインストールしているが、Roku TV によって生成される非常の多くのリクエストは馬鹿げている。見て分かるように、Apple も沢山本部に連絡をするが、それでも一桁少ない。
Apple TV は皆さんのプライバシーを保証は出来ないかも知れないが、苛立たしいオープンソースのメディアソフトウェアや Raspberry Pi の圏外では最善の策かもしれない。
アプリ: Apple TV に対する最も説得力の無い論議は App Store だが、一つのセールスポイントであることに変わりは無い。そこには気の利いたアプリやゲームもあるが、人々はそれらに余り関心がある様には思えない。例外は Hulu や YouTube の様なビデオアプリだが、それらはどんなスマートテレビ上でも手に入るものである。
Apple TV には核となる弱点が幾つかある:
複雑さ: Apple は物事を簡単にする、そうですよね? でも、テレビに焼き込まれたソフトウェアの統合に対抗するのは困難である。Apple TV を使う場合、HDMI ポート (品質の良い高速ケーブルを買うこと、さもないと問題に直面する), HDMI-CEC の気まぐれに対応し、そして Apple TV の設定もいじくり回さなければならない。それは、多くのホームシアター機器よりも遙かに扱いやすいし、初期設定が終了すれば問題の多くは消え去るが、テレビ内蔵のソフトウェアよりは面倒なことには変わりない。
バグっぽいソフトウェア: Apple は相応の資源を tvOS に投入している様には見えず、それが結果にも表れている。それは今でも奇妙な振る舞いだらけである。例えば、大宣伝の元に登場した TV アプリは、私が見たものを、私の Apple ライブラリからのテレビ番組や映画ですら、きちんと追跡して覚えられない。
コスト: $99 で、第二世代 Apple TV は、低コストとストリーミングに焦点を当てる事で、革命的であった。$179 の Apple TV 4K は、ただ高すぎて、Apple エコシステムに全面的に投資してきていない人には薦めづらい。もっと安い値段で、完全に機能する 4K ストリーミングボックスを変えるし、それ程の金額を追加する事無く、本格的なゲームコンソールが買える (見つけられると仮定して)。Apple TV はそのクラスの中では最も高価なメディアプレイヤーであり、正当化するのは必ずしも易しくない。
どのモデルの Apple TV が最適か?
Apple TV を買う、或いはアップグレードすると決めたと仮定した時、どれを買うべきか? 答えは簡単である:$179 の 32 GB Apple TV 4K である。$149 の Apple TV HD を買う理由はもう存在しないし、Apple が未だにそれを売り続けている理由が私には理解出来ない。ハードウェアは能力が遙かに劣り、そして $30 安いだけである。その余分を支払うことで、将来どの様なテレビを買っても最適の互換性を担保するのは理に適う。
同様に、$199 の 64 GB Apple TV 4K モデルも多くの人にはお薦めできない。それだけ価値のあるアプリやゲームは出回っておらず、32 GB のストレージを一杯にするのは至難の業であるし、たとえ一杯にする事があったとしても tvOS は不要なアプリを解放するのにまずまずの仕事をする。64 GB モデルを考慮すべき唯一の理由は、低速やデータ使用上限の様な帯域制約がある、或いは沢山のアプリをダウンロードする場合である。その様な場合、64 GB のストレージは、アプリが解放されそして再度ダウンロードされる機会を減らしてくれる。32 GB はほぼ誰に対しても問題ない。
SignTime: この新しいサービスにより、American Sign Language (アメリカ手話)、British Sign Language (イギリス手話)、または French Sign Language (フランス手話) をウェブブラウザで通じて使って Apple サポート担当者とコミュニケーションできるようになる。物理的 Apple Store 店頭では、事前の予約なしに SignTime の手話通訳が利用できる。
Apple Watch 向けの AssistiveTouch: 腕や手首の動きを使って、ディスプレイやクラウンに触れなくても Apple Watch をコントロールできる。
iPad での視線追跡: iPad が、サードパーティの Made for iPhone (MFi) 視線追跡デバイスと連携できる。
VoiceOver での画像探索: Apple の VoiceOver テクノロジーはこれまでインターフェイス要素を読み上げることができたが、これが画像を説明できるようになり、画像の中の人、テキスト、表データ、その他のオブジェクトについての詳細を説明する。
Apple Music がロスレスオーディオに対応するという Apple の発表は歓迎すべきものであったが、どのデバイスで使えるのかという点で混乱を引き起こした。(2021 年 5 月 17 日の記事“Apple、Apple Music のオーディオ品質を次のレベルに上げる”参照。) Apple は今回、さらなる詳細を説明したサポート記事を公開した。
Apple TV 4K はロスレス再生に対応するが、48 kHz を超えたサンプルレートには対応していない。
HomePod と HomePod mini は今後ソフトウェアアップデートでロスレス再生に対応する予定だ。
ロスレスオーディオを Bluetooth 接続で再生することはできるが、ロスレス再生にはならない。その理由は、一部のテクノロジーおたくが指摘していたように、Bluetooth が本質的に不可逆なものだからだ。悲しいことに、この制約は AirPods、AirPods Pro、AirPods Max にも当てはまる。