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#1566: WWDC で発表された最重要の新機能、iPadOS 15、watchOS 8、AirTag の危険防止アラートを解説

2021 WWDC の基調講演が終わった。Apple が発表したものをすべて語ろうとしても到底ここには収まらないので、今週号では iOS 15、iPadOS 15、macOS 12 Monterey、watchOS 8 で登場するはずの最も興味深い 20 の新機能だけを紹介することにした。そのうち 10 個はとっくの昔に登場しているはずだったもの、残りの 10 個は予期しなかったものたちだ。それから、Julio Ojeda-Zapata が iPadOS 15 と watchOS 8 を詳しく検討する。最後に Glenn Fleishman が AirTag があなたと一緒に動いているという警告が出た場合にどうすべきかを解説し、Apple が既に AirTag の危険防止パラメータに調整を加えていると説明する。今週注目すべき Mac アプリのリリースは 1Password 7.8.5、Firefox 89、Pages 11.1, Numbers 11.1, Keynote 11.1、Simon 5.0、それに SoundSource 5.3.3 だ。

Adam Engst Josh Centers  訳: Mark Nagata   

WWDC 2021 で“やっと実現!”した機能 10 個

watchOS 8 と、iPadOS 15 の iPad 専用の諸機能 (2021 年 6 月 7 日の記事“iPadOS 15、マルチタスキングを改善、iPhone 機能を加える”参照) を除けば、今回の WWDC キーノート(基調講演)で Apple が議論したことのほとんどすべてが複数あるオペレーティングシステムに広がるものであった。Apple が iOS を優先して macOS を軽視しているのではないかという懸念は根拠のないものだと分かったが、Apple は明らかに機能を可能な限り多くの同社のオペレーティングシステムに広げようとしている。かつてないほどに Apple は全体的な Apple エコシステムのパワーを強調している。それは壁に囲まれた庭なのかもしれないが、その中にいるのはとても快適だ。

そういう訳で、iOS 15 の新機能は何かとか、さらには macOS 12 Monterey (その通り、それが名前だ) の新機能は何かとかの記事を書いてもあまり意味を成さない。その代わりにこの記事では、あらかじめ録画されていた Apple の WWDC キーノートを SlackBITS で数多くの TidBITS 読者たちと共に視聴しながら繰り返し脳裏に浮かんだ言葉、“やっとの事で!”に集中してみたい。

FaceTime のグリッド表示、Mac で AirPlay、Apple Watch で複数の同時進行タイマーなど、ここでは私たちが長年望み続けて今回やっと登場した機能のトップテンを紹介しよう。くどくど言うつもりはないが、ここに挙げる一つ一つを読まれたら、どうぞ私たちと声を揃えて“ようやく出たのか!”と言ってみて頂きたい。(そう、私たちが記事の構想を練っていた時のように、言葉の前に4文字語を挿入して下さってもよいかもしれない。)

FaceTime が Zoom の機能を取り入れる

この前のブレインストーミングの会議? あれを Zoom でやったのは、Zoom が高速で手軽で、とにかく使えるからだ。FaceTime はずっと以前からビデオ会議の面では弱かった (2020 年 4 月 2 日の記事“パンデミックの時代におけるビデオ会議の選択肢”参照) が、Apple は次のような機能で FaceTime を挑戦者の地位に押し上げようとしているのかもしれない。これらは、他のビデオ会議アプリにおいては一般的な機能だ:

アカウント復旧連絡先と遺産連絡先を指定

もしもあなたの知っている誰かが Apple ID パスワードを忘れてしまったら、その時点であなたにできることはあまりなく、アカウント復旧の手順を教えてあげられるくらいしかできない。けれども、いったん 2021 年版の Apple のオペレーティングシステムが出たならば、誰もが一人かそれ以上の人を自分の Account Recovery Contact に指定できるようになる。あなたを誰かがその人の Account Recovery Contact にリストしたなら、もしもその人が自分のアカウントにアクセスできなくなった場合、あなたの助力を得てその人はパスワードをリセットしてアカウントへのアクセスを取り戻せる。この機能が使えるようになったら年老いた親戚に使ってもらおうと考えているのは私たちだけではないだろう。

また Apple はこの機能をさらにもう一歩先へ進めて、他の人を Legacy Contact に指定できるようにする。すると、自分が死んだ際に、その人が自分のアカウントと個人情報にアクセスできるようになる。以前私たちが Take Control Books を運営していた頃、Joe Kissell が Take Control of Your Digital Legacy を書いてこの問題を議論したし (2017 年 1 月 30 日の記事“Agatha 伯母さん、デジタル遺産について思案する”参照)、さらにもっと後になって記事“死亡した家族の Apple アカウントへのアクセスをリクエストする方法”(2020 年 6 月 17 日) でも説明した。最近友人が亡くなった夫のアカウントにアクセスする手伝いをした経験から言っても、すべての人ができるだけ早く何人かの Legacy Contact を指定しておくことを強くお勧めしたい。

Recovery and Legacy contacts

オーディオとビデオの AirPlay を Mac へ

もう十年近く前から、AirPlay を使って Mac へオーディオやビデオを送れないのは不便だと思っていた。その点が macOS 12 Monterey で変わる。コンテンツを iPhone、iPad、または別の Mac から Mac へ送信できるようになるからだ。Mac を AirPlay 2 スピーカーとして機能させることもできるようになるので、それを第二スピーカーとして使ってマルチルームのオーディオを実現することもできる。

AirPlaying to an iMac

これで、次のようなことが可能になる:

もちろん、こういったことには他の解決法もあるし、サードパーティのアプリを使えば Mac を AirPlay 受信機に変えることは今でも可能だが、公式の対応はとっくに実現されているべきだったことだ。そもそもの初めから、Mac を AirPlay 受信機として使っていけない理由は何もなかった。

AirPods Pro と AirPods Max が Find My ネットワークに対応

AirPods をなくした場合に Find My アプリを使って探すのはしばらく前からできていたが、その機能には制約があった。AirPods は iPhone を通じてしか位置情報を送信できなかったので、地図上に表示されるのは AirPods が最後に iPhone と接続した位置であった。かつて Josh はポケットから家族のソファの隙間に落ちてしまった AirPods をこの機能で見つけたことがあったが、それは単なる幸運のお陰に過ぎなかった。

今回、AirPods Pro と AirPods Max が Apple の広範な Find My ネットワークを利用することができるようになる。これは AirTag を駆動するものと同じ、Apple デバイスによるネットワークであって、なくした AirPods の位置をこれで把握できるようになる。おおよその位置情報しか提供できないけれども、Bluetooth 到達範囲にまで近づくことができさえすればあとはサウンドを鳴らして見つけられるのではなかろうか。悲しいことに Apple は旧型の AirPods については何も語らなかったが、こちらについてもこの機能や他の新機能を加えた新バージョンを準備しているという可能性はあるかもしれない。

デジタル ID を Wallet に保存

Scanning driver's license in Wallet

今では多くの人たちが Wallet アプリの中にクレジットカードやチケットなどを入れておくことに慣れているが、今回 Apple は運転免許証や state ID (州発行の身分証明書) も Wallet アプリに入れられるようになると約束する。少なくとも、米国のいくつかの州でそれが実現するという。Wallet アプリが本当の意味で財布 (wallet) の代わりとなったならば素敵ではないか? Apple によれば、空港の TSA (米国運輸保安局) チェックポイントでも iPhone あるいはそれにペアリングされた Apple Watch の画面にデジタル版の ID を表示してみせればよくなるのだという。

でも、はたしてそれで私たちは物理的なカードを二・三枚常時携帯せずに済むようになるものだろうか? あなたの車を停止させた州警察官に、iPhone を気軽に手渡すことができるだろうか? で、彼らはそれを受け取るのだろうか? その上、今でもあらゆる店が Apple Pay に対応している訳ではない。例えば Home Depot では使えない。確かに Apple は正しい方向へ進みつつあるし、この会社の影響力を考えればいずれはそこに到達するのかもしれないが、iOS 15 が出たらすぐにカードを携帯する必要がなくなるとは到底思えない。記事“ウォレットケース2つ: Twelve South BookBook Vol. 2 と Ekster iPhone 11 Pro ケース”(2019 年 12 月 12 日) とその (英語版記事への) コメントで述べられたウォレットケースに対する要望をお読み頂きたい。

Siri の音声認識がデバイス上で稼働

iOS 15 では、Siri が Voice Control のように動作して、従来のようにすべてのクエリーを (音楽の再生を一時停止するなどごく単純なものでさえ) Apple のサーバへ送るのでなく、そのデバイス自体の上で言語処理を実行するようになる。この変更の結果として、Apple のサービスとやり取りする必要が除去されてパフォーマンスが増すはずだ。また、セルラー・インターネットアクセスが必ずしもどこでも利用できる訳ではない地域に住んでいる人にとっては信頼性が増すことだろう。そして、Siri に関する最大のプライバシーの懸念がこれで取り除かれる。かつて Apple は Siri の音声録音を請負業者に聞かせていたことで散々メディアに叩かれ変更を施したことがあった。(2019 年 8 月 29 日の記事“Apple, Siri プライバシー改革を発表”参照。) 残る大きな疑問は、Siri による口述が Voice Control からも何かを学んでいるかどうかだ。ずっと以前から、Voice Control 口述の方が良い結果を出していた。(2020 年 8 月 31 日の記事“iOS と macOS の口述が Voice Control の口述から学べること”参照。)

Notes がタグとメンションに対応

Notes はなかなか良くできたノート取りアプリだが、他のノート取りアプリのほとんどが長年備えている機能の一つをずっと欠いていた。タグだ。人によってタグ機能を使いこなしている人とそうでない人がいるが、使いこなしている人にとってはいちいち手間を掛けてフォルダに分けたりせずにノートをグループ分けできる便利な方法となる。例えば、いろいろな店での買い物リストを作る場合、#Shopping というタグを付けておけば一挙にすべてを見られる。

Tags in Notes

Notes アプリのもう一つの便利な新機能で他の共同作業システムでは一般的なのが @mention だ。ノートを他の人たちと共有している場合、テキストの中に @mention を追加することで他の人たちの注意をそこに向けることができる。

@mentions in Notes

Launch Content on Apple TV with Siri on a HomePod mini

HomePod mini 上の Siri で Apple TV のコンテンツを起動

tvOS 15 と、来たるべき HomePod アップデートによって、HomePod mini に命じてテレビ番組を再生させられるようになる。例えば "Hey Siri, play Game of Thrones season 2, episode 3" と HomePod mini に話しかければよいということだ。Apple は初代の HomePod については触れなかったので、そちらも対応するのかどうかは分からない。また、Netflix で使えるのかどうかも分からない。Apple TV アプリは Netflix の番組を操作できないからだ。ケーブルテレビのプロバイダ各社が出しているアプリの番組で使えるのかどうかも分からない。

競合するストリーミングメディアプレイヤーは、かなり前からこの線での機能を提供してきた。例えば Google Home スマートスピーカーはコンテンツを Chromecast ドングルに再生できるし、Amazon は Alexa を内蔵した Fire TV セットを販売している。確かに、直接 Apple TV で Siri を使ったり、iPhone 上の Siri に命じて AirPlay コンテンツを Apple TV に送ったりすることはできるけれど、やはり空中に向かってコマンドを話すだけでテレビで番組が始まるというのは何か魔法のような魅力がある。

二要素認証コードの自動補完

Apple はキーノートの中でこのことに触れなかったが、これは私たちのお気に入りの一つだ。ウェブサイトが二要素認証を提供した場合、iOS 15 や iPadOS 15 では Settings > Password で、あるいは macOS 12 Monterey では System Preferences に新設される Passwords 枠で、あらかじめ認証コードをセットアップしておけるようになる。いったんそうしておけば、そのサイトにサインインしようとする際に必要な認証コードが自動補完される。

一時的 iCloud ストレージで新規デバイスのセットアップが楽に

新しいデバイスを購入した際に、もし iCloud のストレージ容量の空きが十分でなければ iCloud Backup を利用してデータを新しいデバイスへ移すことができないかもしれない。これはどうにも厄介な Catch-22 状態だ。そこで iOS 15 と iPadOS 15 では、iCloud が最大 3 週間に限り、一時的なバックアップを完了させるに必要なストレージ容量を無料で使わせてくれる。そもそも iCloud アカウントに無料ストレージがたった 5 GB しか付いていないのが困ったことで、そのため多くの使用目的で使い物にならないのだが、今回の変更のお陰でこれまでは追加の iCloud ストレージ費用を払わなければならなかった多くのユーザーにとってセットアップ体験がより良いものになるはずだ。

討論に参加

Adam Engst Josh Centers  訳: Mark Nagata   

WWDC 2021 で登場したクールな新機能 10 個

記事“WWDC 2021 で“やっと実現!”した機能 10 個”(2021 年 6 月 7 日) では何となく Apple をからかうような口調で、ただ競争相手に追い付くためだけ、あるいは長年ぽっかりと欠けていた、そんな風に感じられる機能の多くを紹介した。けれども WWDC 2021 キーノート(基調講演)で発表された他の多くの機能はもっとずっと革新的なものに感じられた。この記事では、そのような機能の中から私たちが特に気に入ったものを紹介したい。(言っておくと、Apple は将来の Apple silicon チップについて何も言わなかった。もちろん、私たちもその点ではがっかりした。)

Apple の新しいオペレーティングシステムにおける機能の完全なリストが欲しい方は、Apple がプレビューページをiOS 15iPadOS 15macOS 12 MontereywatchOS 8 それぞれに出しているのでそちらをご覧頂きたい。

SharePlay とスクリーン共有

Apple は FaceTime の会話にメディアと画面共有を持ち込むことのできる SharePlay という名前の新テクノロジーを大いに宣伝した。そんなもの欲しいと思ったことなんかないという人も多いかもしれないが、ティーンエイジの世界では、特にこのパンデミックの時代、一緒に音楽を聴いたりビデオを観たりできるというのは今や大きなこととなった。SharePlay ではメディアを共有して、誰もが同じビデオを同時に視聴でき、誰もが再生をコントロールできて、終始その結果が他のすべての人のところでも同期される。これは Apple エコシステムを活用するので、iPad 上の FaceTime で他の人たちと接続しながら同時にビデオを Apple TV で観たり音楽を HomePod で聴いたりもできる。

SharePlay in use

年配の人たちにとってもっと興味深いのは、画面を共有する SharePlay のオプションだ。技術的な問題が起こった場合に友人や親戚に助けてもらうためのツールは既にいろいろあるが、これもまた嬉しい追加となるだろう。若い人たちは、お互いにゲームをプレイしているところを見られるのが嬉しいだろう。

タップして解錠

HomeKit のスマートロックはしばらく前から存在しているが、かなり使いづらいものだ。解錠するには鍵で苦闘するか、または iPhone 上でアプリのボタンをタップしなければならないが、両手に買い物袋を下げている状態ではどちらも苦行だ。けれども iOS 15 と watchOS 8 と互換なスマートロックがあれば、Wallet アプリに“鍵”を入れておいて、iPhone または Apple Watch でそのスマートロックに触れるだけで解錠できる。また、ホテルのチェーンもこのテクノロジーに対応することを計画しており、まずは Hyatt がこれを始めるという。いずれは、当てにならないカードキーともおさらばできるだろう。

Tap to Enter

Live Text が写真からテキストを読み取る

長年活躍している開発者 Alco Blom による Photos Search というアプリを、私たちは Mac と iOS の双方で試してみていた。このアプリは、写真ライブラリ全体をスキャンして、画像の中のテキストを探し出し、その結果を検索できるようにする。それ以外の機能もある。悲しいことだが、iOS 15 と macOS 12 Monterey が出荷されるやいなや彼の Photos Search に Apple の Live Text 機能という強力な対抗相手が登場することになる。Live Text 機能は画像の中のテキストを他のどのテキストとも同等に扱って、コピーとペースト、検索、翻訳などの機能が使えるようにする。おそらく Spotlight 検索にも含まれるのだろう。しかしながら、これが使えるためには A12 Bionic チップを備えた iPad か、または M1 ベース Mac が必要となる。(iPhone についてはおそらく iOS 15 にアップデート可能なすべての iPhone が対応するだろう。) きっと Alco Blom なら、Live Text を活用することで Photos Search を写真の中に埋め込まれたテキストを調べるためのより良いフロントエンドへと作り変えてくれることだろう。

Text recognition in iOS 14

Conversation Boost が軽度の聴覚障害者の支援に

Apple が AirPods Pro をアップデートして Conversation Boost 機能に対応するようにしさえすれば、高校生だけでなく年配の人も耳に AirPods を入れているのが当たり前の光景になることだろう。軽度の聴覚障害を持つ人たちのために、Conversation Boost は AirPods Pro 内蔵のマイクロフォンを前にいる人の声に集中させ、声を聞く妨げとなる周囲の騒音を減らす。

Conversation Boost

Apple には既に Live Listen 機能がある。これは、すべてのバージョンの AirPods のために iPhone をマイクロフォンとして使い、会話を聞こえやすくするものだ。このテクノロジーを AirPods Pro 自体にすべて組み込んで拡張したものが Conversation Boost のようだ。

認めるべき功績は認めなければということで、今から 10 年以上も前に Jeff Porten が、iPhone とヘッドフォンを使って聴覚障害を回避した体験を述べた記事“iOS 補聴器... 或いは、スーパーマンの耳の買い方”(2011 年 2 月 8 日) を書いている。

App Privacy Reports がアプリの挙動を要約

iOS 14 で、Safari によるウェブサイトのプライバシーレポート機能が導入され、App Tracking Transparency 機能がアプリによるユーザー情報のサードパーティ共有を予防するようになった。そして今回 Apple はそれをもう一歩進めて (そして間違いなく Facebook のはらわたを煮えくり返らせるだろうが)、入念な App Privacy Reports を Settings に追加する。このレポートはそのアプリがどのシステムリソース (例えば写真や位置情報) にアクセスしたか、そのアプリがそのデータを誰と共有しているかを表示する。

Privacy Report

おそらくこの App Privacy Reports は、Facebook アプリが iPhone のマイクを通じてあなたの会話に聞き耳を立てているかどうかをきっぱりと告げてくれることだろう。

Private Relay が盗み聞きされないやり取りを約束

Apple の iCloud+ オンラインサービスの一環として、Private Relay と呼ばれるテクノロジーにアクセスできるようになる。このテクノロジーは、あなたのインターネットトラフィックのすべてを 2 つの暗号化されたリレーを通してリダイレクトする。Apple によれば、そのいずれも、また最終的な目的地以外にいる誰も、あなたのインターネット活動を見ることができないという。私たちが知る限り、Private Relay は仮想プライベートネットワークというよりも、むしろカスタム実装された“オニオンルーティング”(Tor により有名になったもの) と言うべきものでないかという気がする。怪しげな Wi-Fi アクセスポイントに接続したり、詮索好きの ISP が気になったりする場合には役に立つだろう。けれども、プライベートな通信は良い目的だけでなく悪い目的にも使われる可能性がある。FBI は Apple の iMessage の暗号化に不満を表明していたのだから、きっと Private Relay にも激怒することだろう。

Universal Control が Mac と iPad の統合を提供

はるか昔のこと、私は Teleport というユーティリティを使って一組のキーボードとマウスを 2 台の Mac で共有していたし (2007 年 8 月 27 日の記事“TidBITS 御用達ツール: Teleport”参照)、現代的なものでは 1Keyboardというアプリがあって複数のデバイスで同様の機能を提供している。そして今回 Apple もこの分野に進出して、Universal Control というものを出す。これは、一つのキーボードとポインティングデバイスを複数の Mac や iPad で使えるようにすると約束する。Apple はまず、MacBook Pro のキーボードとトラックパッドがその近くに置かれた iPad を動かすところを見せてから、そこに iMac を追加して、グラフィックを iPad から MacBook Pro へ、それから iMac 上のアプリへとドラッグしてみせた。かなり印象的なデモであったが、このような機能については細部が肝心であって、現実世界でもこの出来合いのデモのようにスムーズに働くのかどうかはやってみなければ分からない。

Universal Control

Shortcuts を iOS から Mac へ移行

Apple は Mac のオートメーションツールを現代化することにかけてはなかなか重い腰を上げなかった。AppleScript と Automator は長年放置され、とりわけオートメーションの導師 Sal Soghoian が会社を去ってからは停滞そのものであった。(2018 年 6 月 7 日の記事“Sal Soghoian は自動化の伝説”参照。) Peter Lewis の Keyboard Maestro は長年 Mac ユーザーたちにとっての頼みの綱であったし、そのことは今後も変わらないだろうと思うが、ここに新しいツールが登場する。Shortcuts だ。その通り、Apple は Shortcuts アプリを iOS から macOS 12 Monterey へもたらそうとしている。

そのエディタは Mac の大きなウィンドウの利点を活用しているようで、複雑なショートカットを編集する作業が現在 iPhone でしているよりもずっと楽になるに違いない。Mac を iPhone 上のショートカットのためのエディタとして扱うことも可能なのかもしれない。なぜなら、これは自動的にすべてのデバイスにわたって同期されるからだ。Shortcuts アプリはクロスプラットフォームとなり、M1 ベース Mac はそのネイティブなアプリの中で iPhone や iPad のショートカットを走らせ、Intel ベース Mac はそれらを Mac Catalyst アプリに送る。iPhone のショートカットのすべてが Mac で走るとは考えにくいし、その逆も同様だが、いずれにしても別のプラットフォームではもともと意味を成さないものもあるだろう。

Shortcuts Mac

既存の Automator ワークフローをショートカットに変換することもできるし、熟練のユーザーならば AppleScript やシェルスクリプトとの互換性も実現できるだろう。

タブグループ

Apple は Safari のルック&フィールをしっかりデザインし直したとしきりに強調したが、その変更点が実際にユーザー体験の向上に役立つものかどうか、私たちもよく見届けなければならない。けれども、私たちのように常習的に多数のタブを開いている者たちにとって歓迎すべきものになるはずの新機能がある。タブグループだ。調査プロジェクトのために多数のタブを開いているような場合、それらのタブを一つのグループに入れて、必要な時にそれらに集中できるようにする。さらに、おそらくこちらの方が重要な点だが、その際に現在のタブグループに属していないタブは隠されて、あなたの気を散らしたり、その時点での Safari ウィンドウを雑然とさせたりしないようにする。タブグループはあなたのすべてのデバイスにわたって同期され、どこからでもアクセスできる。

タブグループの問題点は、その管理のために余計な労力がかかり過ぎないかどうかだ。そもそもタブというものは一時的な存在であるはずで、コレクションを作りたいのならばいつでもブックマークを作成できる。はたしてこのタブグループが整理と集中化のための歓迎すべき機能となるのか、それともタブの存在価値を超えた余計なやり取りを要するものとなるのか、どうだろうか?

ウォッチの健康情報を共有

Apple Watch を購入する動機としてよく言われるのが、大切な人のための健康管理用デバイスとしてというものだ。(2020 年 10 月 28 日の記事“私は Apple Watch を贈り物として買ったが、テックサポートの悪夢と化した”参照。) けれども iOS 15 と watchOS 8 で、Apple Watch はもっとより良い贈り物となる。それは、あなたの大切な人が自分の健康状態のデータをあなたと共有できるようになるからだ。具体的には心拍数亢進、心拍リズムの異常、心拍数低下の警告などだ。このようなデータ共有で、年配の親戚の世話をするのが楽になるだろう。あるいは、その人に世話をしてもらうこともあるかもしれない。

Sharing Health data

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Julio Ojeda-Zapata  訳: 亀岡孝仁  

iPadOS 15、マルチタスキングを改善、iPhone 機能を加える

多くの人にとって必須のコンピューティング機器ではあっても、iPad は長い間ユーザーを立腹させてきた。と言うのも、機能が期待通りに働かないとか、存在すらしていないからであった。主な問題はマルチタスキングであった。Slide Over や Split View は、全く直感的でなくそして使いづらかった。

更に、昨年の Worldwide Developer Conference は、多くの iPad ユーザーを激怒させた。それは iPadOS 14 が、iOS 14 の看板機能の一部を手にしなかったからである。最も目立つ欠如は、App Library とウィジェットをサイドバーに隔離するのではなくどの Home Screen ページにでも配置出来る柔軟さであった。

WWDC 2021 キーノートで、Apple は修正をした。iPadOS 15 では、マルチタスキングは大幅にアップデートされる。そして、iPad はついに、それらの iOS 14 機能を、一部には iPad 固有の微調整を伴って、手にする。

マルチタスキングがついに目に見える様になる

iPad 上で複数のウィンドウを制御するのはより簡単そうに見える。Apple は、画面の頭頂部にマルチタスキングの制御手段を追加した。それは、如何なるアプリでもタップ一発で、全画面、Split View 又は Slide Over ビューにさせてくれる。

Multitasking in iPadOS

Split View をタップすると、iPadOS はそのアプリを一時的に脇に追いやり、分割画面を完成させるため、第二のアプリを何処からでも (Dock も含んで) 選べる様にする。これは、Split View で置き換えるために、一つのアプリ上で上から下へスワイプすることでも起こる。

iPadOS 15 での Split View はまた、三番目のウィンドウを開く選択肢も手にした - 例えば Mail アプリが示されている時の Mail メッセージである - 場所は真ん中で、フロートの状態である。もしそのウィンドウを Slide Over か Split View に入れたければ、上記のマルチタスキング制御手段が使える。

Single window in Split View

別のやり方として、そのフロートウィンドウを小さくすることも出来、それは、画面の下部に位置して、アプリ固有の Dock の様に見える Shelf と呼ばれる新しいインターフェース要素の中に入れられる。Shelf は、例えば、開いた複数の Safari や Pages ウィンドウを見つけられる所で、それらの間で切り替える事も出来る。Shelf からウィンドウを取り除くには指フリックを使う。

iPad Shelf

App Switcher は更なるマルチタスクの魔力を提供する。そのビューに表示された複数のウィンドウを使って、一つを別なものの上にドラッグすることで Split View グループが作成される。

それらの新しい機能全てを使うのがどれ程簡単かは、見てみなければ分からないが、目に見えるマルチタスキング制御手段を提供するという簡単な動きは、ユーザーが今よりも多くそれを使いこなす手助けをする上で大きな役割を果たすであろう。

ウィジェットと App Library

ここで言う事は余りない。iPad ユーザーは自分のウィジェットを好きな所何処にでも置ける、iPhone での様に。ウィジェットギャラリを開いて、ウィジェットをどの Home Screen ページにでもドラッグするだけである。

iPadOS 15 は、新しいより大型のウィジェットフォーマットを提供しているが、それはより大型の iPad 画面上でのみ意味を持つであろう。このより大型のウィジェットフォーマットをサポートするアプリには、Apple TV, Files, Game Center, そして Photos が含まれる - サードパーティアプリは、まず間違いなく、直ぐにこれを利用する様になるであろう。

Widgets in iPadOS 15

App Library の働きは予想通りだが、iPad 特有の強化が一つある - Dock の右端にある App Library アイコンをタップすると App Library に跳べる。

iPhone 上でと同様、アプリを Home Screen ページに App Library から追加出来るし、ページからアプリを取り除くとそれは App Library にしか存在せず、そして Home Screen ページは並べ替えたり、隠したりも出来る。"iOS 14 の App Library についてよくある質問" (9 September 2020), "手軽に iOS アプリを並べ替えるための5つのヒント" (22 September 2020), そして "iPhone の Home 画面のアプリを iOS 14 の App Library で一挙に管理" (19 April 2021) を参照の事。

Notes における iPad 固有の機能

Apple は、その何処にでもある Notes アプリに、新しい整理機能をもっと使いこなせるようにしようとしてきた、その中にはソーシャルメディアからインスピレーションを受けたものもある。それらの多くは Apple のオペレーティングシステムに亘って広がったが、Quick Note は iPad のために設計された様に見える。

Quick Note は、Notes アプリを開く事なくメモを取らせてくれる。やる事は、iPad の右下隅から指か Apple Pencil で上方に対角線にドラッグすることでメモが作れる。メモを閉じるには、反対方向にドラッグする。

Quick Note in iPadOS 15

Quick Note はどのアプリが画面上にあるかを認識している。例えば、もし Safari ページが示されている時にメモを作ろうと思ったら、メモはそのページの URL を含んでいる。その URL をタップすれば、そのサイトはメモに絵と共に埋め込まれる。後で、その URL を訪問すると、それに関係したメモが右下隅に再びポップアップしてくる。

また、Safari ページ上のテキストをハイライトすると、そのテキストへのリンクがメモの中に作られるので、後日そのページのその場所に戻る事が出来る。Quick Note リンクはサードパーティアプリに対しても作成する事が出来る。例えば、Yelp のレストランリンクに対しての様に。

以前作られた Quick Notes に目を通すためには、今表示されているメモを左か右にスワイプすると他のものが表示される。或いは、ただ単に Notes を開けば、集められた Quick Notes はそこにある。

Quick Notes に加えて、Apple は幾つかの整理機能を追加した:

結論

iPadOS で、Apple は革新的な iPad 変更はしてこなかったが、これらの内の幾つかは、不明確なインターフェースと機能の欠如によって長い事不満に思っていたユーザーから感謝の言葉を導き出すかも知れない。マルチタスキングの改善は、このタブレットをより直感的にそしてイライラのより少ないものにするのに大いに役立つであろう。多くの iPad ユーザーは、ウィジェットを好きな所に置けることを歓迎するであろう。App Library は魅力的と迄は行かないかもしれないが、綺麗好きの人は、それが Home Screen を整頓させ、そして殆ど使わないアプリを隠させてくれる姿を愛するであろう。この Notes に対する改善で、他のメモアプリからの転向者が増えるとは思えないが、献身的な Notes ユーザーには大歓迎されるであろう。

結論を言えば、月曜日は iPad ユーザーにとっては良い日であった、勿論、変更の大部分はこれ迄の限界に対処するだけのものではあったが。

討論に参加

Julio Ojeda-Zapata  訳: 亀岡孝仁  

watchOS 8、多様な改善が特色

Apple の watchOS 8 は、仮想 Worldwide Developers Conference で披露され、各種の改善が、健康、通信、写真、ホームオートメーション、等々でなされている。他の WWDC 発表で影は薄くなっているかも知れないが、これらは集合的に Apple Watch を前進させるのに役立つであろう。

watchOS 8 features tile

睡眠

Apple は、睡眠追跡機能を watchOS 7 で昨年登場させたが ("watchOS 7、睡眠追跡、手洗い検出、等々を導入" 22 June 2020 参照)、この基調は watchOS 8 にも受け継がれた。睡眠時間、心拍数、そして血中酸素の様な追跡項目に加えて、Apple Watch は今や“睡眠時呼吸数”即ち、毎分の呼吸数を計測する。Apple Watch はこれを内蔵の加速度計を利用して行い、そして結果は Health アプリの中で見られる。睡眠時呼吸の分野で何かがおかしく見えたら警告を受け取る。

watchOS 8 Sleep app

マインドフルネス

心の健康におけるマインドフルネスの有用性を強調するため、Apple は名前を呼吸アプリからマインドフルネスに変え、そして強化された Breathe エクササイズを加えた。このアプリに新しく登場したのは Reflect エクササイズで、これは短いテキストを提示してくるが - "最近落ち着いた気持ちを感じた時を思い出し、その感じを今に持ってきましょう。" と言うようなもの - 狙いは前向きな気持ちにさせることである。この Breathe と Reflect エクササイズには心静めるアニメーションが付いてくるが、その綺麗なグラフィックスを見る時に手を腰に当てて1分かそこらの間じっとしているより目を閉じている方が余程心の平静を保てると我々は思ったりもする。

watchOS 8 Mindfulness app

フィットネス

Apple Watch は色々な運動を始めるのに適しているが、Apple は更に二つを追加した:Tai Chi (太極拳) と Pilates (ピラティス) である。Apple Fitness+ にお金を払っても良いという人達になは、新しい Jeanette Jenkins (いいえ、我々は彼女が誰か知らないが、人気者だという事は知っている) との運動が追加された。Lady Gaga, Jennifer Lopez, Keith Urban, そして Alicia Keys の様な人達からの運動プレイリストもある。

写真

Apple Watch のちっぽけな画面は写真を見るには理想的とは思えないが、Apple はそれを最大限生かそうとしている。恐らく、注目に値するのは、watchOS 8 には新しい Portraits 文字盤が含まれていることで、これは友人や家族の顔写真を "没入型の、重層化効果" に変える。Digital Crown を回すと、それは Facebook フィードに出てくる 3D のアニメ化された写真の様に見える ("Google と Facebook、iPhone の Portrait モードを使って楽しさ効果を" 13 December 2018 参照)。

watchOS 8 Portraits face

Apple はまた Photos アプリを見直し、クールな Mosaic レイアウトに加えて、Memories ハイライトと Featured Photos が追加された。更に、もしそのちっぽけな画面で操作出来るのであれば、写真を Messages や Mail 経由で共有出来る。Apple Watch の所有者は iPhone も持っていて、それは写真を使ったやり取りには遙かに効率的なプラットフォームである事を考えると、これらの変更に興奮しすぎるのは現実的ではないであろう。

メッセージ

Apple Watch は簡単なメッセージを送る手段を幾つか提供している:手書き、口述、そして絵文字である。今や、Apple は口述したメッセージを編集する時に、Digital Crown を使ってカーソルを移動させてくれる。それは何もないよりはマシだが、どうしようも無い口述間違いを正す以外に、それを使う人が実際にいるとは到底思えない。

また、ソーシャルメディアの時代に合わせて、watchOS 8 の Messages は、感情や意見を表現するために (#facepalm の様な)、静的な絵文字の代わりに、一つの動く画像を持つ流行のアニメ化された GIF のライブラリも提供する。

ホーム

watchOS 8 の再設計された Home アプリは HomeKit ユーザーに更なる選択肢を提供する。もし監視カメラを設置しているのであれば、玄関にいるのは誰か、路地をうろついているのは誰かを腕を上げるだけで見られる。Intercom 機能を使えば、口頭でのメッセージを家中の、或いは個別部屋の HomePod や他の機器に一斉に送り出すことも出来る。最後に、新しい Home アプリは、iOS 14 の Home がする様に、機器の状況表示も提供し、そして watchOS 8 はその日の時間に応じてシーンも進言してくる。

Apple が HomeKit 機器、シーン、そしてオートメーションにより手が届きやすくしているのは歓迎出来るが、我々の体験からすると、ホームオートメーションを操作するのに、HomePod にかなう機器はない。

その他の機能

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Glenn Fleishman  訳: Mark Nagata   

AirTag があなたと一緒に動いているという警告が出た場合

Apple の位置情報追跡デバイス AirTag の使用目的のほとんどすべては正当なものだ。鍵束、バックパック、放浪癖のあるペットなどを見つけるためだ。ただ、ストーカーや、その他のゾッとする連中に悪用される可能性があるという事実を、決して無視してはならない。その種の問題を軽減し、良くない意図を阻止するために、Apple はいくつかの機能を AirTag エコシステムに組み込んで、もしも追跡されていればあなたに警告できるようにしている。

Apple は追跡抑止のための 2 つの異なる機能を提供する。それと気付かず AirTag を持ち運んでいる人に通知するセーフティ通知と、少なくとも 8 から 24 時間持ち主から離れていた AirTag が鳴らすサウンドだ。セーフティ通知を巡る詳細は、いくらかの混乱を巻き起こした。それは、Apple の AirTag サポートページに書かれた説明が、Apple の代表者がインタビューで語った内容に比べて詳しさで劣るものだからだ。私たちは明確化を求めて Apple に連絡を取り、さらなるもう少し詳しい情報を得た。Apple は 2021 年 6 月 3 日に新たな声明を公開して、変更点の追加を発表するとともに、Android ユーザーのためにも通知アラートアプリを出すと述べた。

対ストーカー防止策

AirTag は、その AirTag が他の Apple デバイスが近くにあって、かつそのデバイスで iOS 14.5、iPadOS 14.5、または macOS 11.3 Big Sur かそれら以降が走っており、Find My ネットワーク設定が有効になっている限り、非常に詳細かつほとんど連続的な位置情報を提供する。だからこそ、Apple は人々が秘密裏に追跡されていればその人にそれを知らせたいと思っているのだ。けれども、Find My ネットワークの性格そのものが、一見明らかに思えるある種のアラートを出すことを不可能にするとともに、別の種類のアラートではあまりにも頻繁に人々の iPhone や iPad にポップアップしてしまいがちにしている。(2021 年 5 月 23 日の記事“Find My の二つの顔”と 2021 年 5 月 15 日の記事“AirTag 追跡をめぐる 13 通りの状況”参照。)

Apple の設計は、望まれない追跡の通知を次の2つの種類のみに限定している:

いずれの場合にも、AirTag は自らの身元を送信し続け、その近くにあって条件を満たすすべてのデバイスがその信号に自らの位置情報と付けて中継する。AirTag に送信を止めさせるにはバッテリーを取り外すしかない。(底面のプレートは上面のカバーから自由に回り、AirTag の CR2032 ボタン電池を取り外すことができる。)

内部の働き

でも、いったいどうやって iOS や iPadOS は、あるいは将来登場する Android アプリは、AirTag があなたと共に移動中だと知ることができるのだろうか? Find My ネットワークは Apple のデバイスと Bluetooth ID を送信する Find My 項目とに依存して働く。Bluetooth ID は識別可能なパターンで送信され、それを送信しているハードウェアに関する暗号化された情報を含む。この Bluetooth ID は定期的に変更されるので、(たとえ暗号化されていても) 固定された Bluetooth ID で誰かに識別され追跡されるおそれはない。Apple はこの Bluetooth ID の変更周期を公表していないが、私は一日に 1 回か 2 回程度だろうと思う。これは、この会社が他の持続するものについて使っている現状からの推測に過ぎないが。

AirTag による望まれない追跡について記した Apple のサポート書類には単に「知らないうちに追跡されることのないように、自分のものではない AirTag をしばらく持ち歩いていることがわかると、Find My が教えてくれます」としか書かれていない。けれども今回問い合わせに応じて、Apple は TidBITS にもう少し具体的なことを教えてくれた。

「あなたが所持中の AirTag が見つかりました」という通知が出るためには、あなたがいくつもの場所をある時間 (詳細は明かされない) にわたって動いた間にあなたの iPhone または iPad が同一の Bluetooth ID を受け取っており、それに加えて次の条件のうちいずれかが満たされていなければならない:

登場予定の Android アプリがどのタイミングでアラートを出すかについては Apple からの説明は何もなかった。

利用頻度の高い場所

その「利用頻度の高い場所」とは何か? あなたの iPhone や iPad は、あなたに何らかの関係があると思われる位置情報を追跡しており、それはあなたがそこを毎日訪れようと月に一回しか訪れなかろうと変わらない。(私は何週間も前にたった一度だけ寿司レストランへ行ってテイクアウトをしたが、私の iPhone は それ を「利用頻度の高い」と解釈した。) この情報は Settings > Privacy > Location Services > System Services > Significant Locations へ行けば確認できる。その画面で、個々の項目を削除することも、全部を一度に削除することもできる。ただ、どうやらこの「利用頻度の高い場所」は多く持っているに越したことはないようだ。

これらの場所の情報は、Find My ネットワークが AirTag のセーフティ通知を表示するための評価点として利用する以外にも、Apple は予測交通情報サービスを提供するためや、Photos アプリでより良い Memories を構築するためにも利用している。別に大したことではないが、知っている価値はあるだろう。

iOS と iPadOS は利用頻度の高い場所をそのデバイス上ローカルに保存し、デバイス間で終端間暗号化を使って同期する。Apple によればこの位置情報データに Apple が直接アクセスできる方法はないという。許可なくあなたを追跡している人も、推測による以外にこれらの位置情報を知ることはできない。

良い点と悪い点

おそらく皆さんも、これら一連の選択がなされた理由とそれらの持つ難点との両方とも推測できるだろう。もしも人々が同一の Bluetooth ID が自分と共に動いているというだけの条件で一定時間後に Apple がその人々に通知を出したなら、バスや電車や飛行機の中で持ち主からはぐれた AirTag が、いきなり何十台もの iPhone や iPad や、今年の後半になれば Android フォンにも、一斉にアラートを出すことになってしまうだろう。誤判定があまりにも多くなれば、ただ単に迷惑なだけでなく、多くの人がセーフティ通知をオフにしてしまう結果を招くだろう。

けれどもそのことはまた、もしもあなたが AirTag を使った監視を受けていたならば、追跡の警告があなたに出るよりも前にあなたの自宅や利用頻度の高い場所の位置情報が既に伝えられてしまっているということをも意味する。私たちが知る限り、そして Apple はこの点についてそれ以上の説明をしてくれなかったが、AirTag の位置情報は警告を出した後も AirTag が電源を持っていて近くにインターネット接続を持つデバイスがある間はいつまでも送信され続けるのだろうと推察される。

以前にも述べた通り、この Find My ネットワークシステムにはまだまだ調整と改良の余地が残されている。幸いにも、Apple は私たちが以前読んだことのあった点を確認してくれた。すなわち、Apple は AirTag ハードウェアに変更を施すことなくこのシステムの挙動に調整を加えることができる。実際、この記事を執筆している最中にも、Apple は AirTag 内蔵のタイマーに変更を加え、また Android アプリをリリースする予定を明かした。このことからも、Apple がさらなる変更を施すことで位置情報とタイミングに基づく望まれない追跡を阻止するための努力を続けていると受け取ってよいのではないか。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

訳: Mark Nagata   

1Password 7.8.5

1Password 7.8.5

AgileBits が 1Password 7.8.5 をリリースして、1Password アカウント上のヴォールトを削除する機能を復活させるとともに、最近削除した項目に 1Password アカウントからアクセスできるようにした。このパスワードマネージャはアーカイブした項目が項目リストの中でアーカイブしていない項目と共に表示されていた問題を解消し、項目を Finder 上へドラッグするとそれが使用済みと記録されることがあったバグを修正し、アーカイブまたは削除をした際に項目への編集を維持するようにし、1回限りのコード・フィールドの認識を改善し、ヴォールト削除プロンプトの文言を改良してアーカイブ内の項目がヴォールトと共に削除されることを明確化した。(AgileBits  または Mac App Store から独立動作のアプリ購入の場合 $64.99、講読の場合は月額 $2.99 または $4.99 (新規にアカウントをセットアップする TidBITS 会員は 6 か月間無料)、無料アップデート、75.2 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

1Password 7.8.5 の使用体験を話し合おう

Firefox 89

Firefox 89

Mozilla が Firefox 89 をリリースして、デザイン改訂をして見栄えを現代化し、クリーンで使いやすいデザインにした。このウェブブラウザはブラウザの見た目とツールバーを簡素化して最も重要なナビゲーション項目に集中できるようにし、メニュー内容に使用度に応じた優先順位を付け、情報バーやパネルのデザインと文言をクリーンなものにし、ブラウザのフローティングタブ (例えばオーディオコントロールのビジュアルインジケータ) に浮いて見える工夫を加えた。

Firefox 89 interface

macOS 上では、Firefox は穏やかなアニメーションを使った弾力のあるオーバースクロール効果を示してページの終わりに達したことを伝えるようになり、スマートズーム (トラックパッドを2本指でタップまたは Magic Mouse を1本指でタップしてコンテンツをズームして見やすくする) への対応を追加し、コンテクストメニューを Dark モードに対応させている。今回のリリースではまた、広色域ディスプレイでカラーがサチュレーションされないようにし、フルスクリーンモードを改良してマウスをスクリーン上端に動かしてもタブがシステムメニューバーに隠されないようにした。(無料、126 MB、リリースノート、macOS 10.12+)

Firefox 89 の使用体験を話し合おう

Pages 11.1, Numbers 11.1, and Keynote 11.1

Pages 11.1, Numbers 11.1, Keynote 11.1

Apple が 3 つの iWork アプリをすべてバージョン 11.1 にアップデートして、オブジェクトにリンクを付ける機能を Numbers と Pages に追加した。2 つのアプリはいずれも、図形、線、イメージ、描画、テキストボックスなどのオブジェクトからウェブページ、メールアドレス、電話番号にリンクできるようになった。Keynote には標準的な安定性およびパフォーマンスの向上のみが施された。また、iOS 版の PagesNumbersKeynote にも新しいリンク機能が付き、Apple の iPad 用 Schoolwork アプリを使っている教師に単語数や費やされた時間など生徒たちの進捗状況が表示されるようになった。(無料、Pages は 294.4 MB、リリースノートNumbers は 260.9 MB、リリースノートKeynote は 347.9 MB、リリースノート、macOS 10.15+)

Pages 11.1, Numbers 11.1, Keynote 11.1 の使用体験を話し合おう

Simon 5.0

Simon 5.0

Dejal Systems が Simon 5.0 をリリースした。長らく要望のあった機能、つまり iCloud を経由して複数の Mac の間でデータを同期する機能を導入した「極めて大きなアップデート」だ。ウェブページやその他のオンラインサービスをチェックして変更や故障を調べるために作られたこのサーバ管理ツールは、あなたがデータ同期を有効にするように求め、それ以後はテストを特定のコンピュータでチェックできる一方で、同期されたどの Mac からでもテストの編集ができるようになる。複数のコンピュータの間で Simon データを同期する際には、新しい Simon Status サービスがこの機能を備えてあらゆる Simon インスタンスの状況チェックを有効化し、何をチェックしてテストエディタに出力するかのカスタマイズもできる。

今回のリリースではまた、複数のリンクの有効性をチェックする新しい Link Checker フィルターを追加し、Find Regular Expressions フィルターにカスタム出力のオプションを提供し、新しい通知ツール Speak Error と iMessage を追加し、Script エディタで一部の不正な形式の AppleScript の読み込みを修正し、Setup Assistant に Safari と Chrome のブックマークを読み込む機能への対応を追加し、Dark モード対応を改良した。

今回から Intel ベースおよび M1 べース Mac 双方に対応したユニバーサルアプリとなった Simon 5.0 は最低限 macOS 10.12 Sierra を必要とする。Simon 5.0 の価格は依然として $99 で、バージョン 4 からのアップグレード料金は $49 だ。2020 年 9 月 1 日またはそれ以降に Simon 4 を購入した人は自動的にバージョン 5 のライセンスを入手できる。(新規購入 $99、アップグレード $49、Setapp からも入手可、17.1 MB、リリースノート、macOS 10.12+)

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SoundSource 5.3.3

SoundSource 5.3.3

Rogue Amoeba が SoundSource 5.3.3 をリリースして、このオーディオコントロール・ユーティリティが AirPlay デバイスを処理する方法を修正するとともに AirPods Pro と AirPods Max への対応を拡張した。今回のアップデートではまた、M1 ベース Mac 上で走る iOS アプリのオーディオ調整を改善し、起動し直した際に Volume Overdrive 設定を正しく保持するようにし、新しい標準の "pressed" 見栄え状態で Mute ボタンを改良した。(新規購入 $39、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、26 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

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ExtraBITS

訳: Mark Nagata   

Amazon デバイスがあなたの家庭のバンド幅 (の一部) を共有する

Ars Technica の記事が、2021 年 6 月 8 日に Amazon が Amazon Sidewalk のスイッチを入れると伝える。これは実験的なメッシュネットワークであり、Amazon デバイスを使って少量のバンド幅を互いに共有する。自分の Amazon デバイスが Sidewalk に参加するか否かは選べるけれども、互換な Amazon デバイスは自動的にオプトインされている。

  • Echo (第 3 世代かそれ以降)
  • Echo Dot (第 3 世代かそれ以降)
  • Echo Dot for Kids (第 3 世代かそれ以降)
  • Echo Dot with Clock (第 3 世代かそれ以降)
  • Echo Flex
  • Echo Input
  • Echo Plus (全世代)
  • Echo Show (全モデル、全世代)
  • Echo Spot
  • Echo Studio
  • Ring Floodlight Cam (2019)
  • Ring Spotlight Cam Wired (2019)
  • Ring Spotlight Cam Mount (2019)

多くの報道はまるで Amazon Sidewalk があなたのインターネット接続をすべて共有するかのような表現でこれを伝えているが、実際には小さなバンド幅に制限されている。通信速度は 80 Kbps、使用量は毎月 500 MB までだ。けれども、もともとバンド幅に制約があったり上限が課されていたりする人にはこれでも多過ぎるかもしれない。

もう一つの懸念はプライバシーだ。Amazon は Sidewalk のプライバシーおよびセキュリティ機能の概要を記したホワイトペーパーを公開しているけれども、そもそもこの会社は顧客のプライバシーを保護することに関してあまり良い評判を得ていない。(例えば 2019 年 11 月 21 日の記事“Amazon の Ring ドアホンが Wi-Fi パスワードを暗号化なしで送信”参照。) その上、Amazon は売り上げを伸ばすために必ずしもいつも公明正大な方法を使ってきたとも言えない。(2019 年 7 月 29 日の記事“Amazon、警察を利用して Ring カメラを販売”参照。) それからまた、これはちょっと脱線した懸念かもしれないが、言われている Sidewalk の使用法の一つは Tile トラッカー用にネットワークを拡大することだという。Apple は AirTag がストーカーのための道具として使われないように多大な努力を注いできたが、それよりかなり能力が高いと思われる Tile ネットワークで問題が起こることはないのだろうか?

Amazon Sidewalk からオプトアウトしたければ、iOS で Alexa アプリを開き、More > Settings > Account Settings > Amazon Sidewalk へ行って、Enabled をオフにすればよい。ただしこの方法はあなたが既に互換なデバイスを持っている場合にしか使えない。

The Sidewalk setting in the Alex app

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John Gruber が Apple のセキュアインテントを分析

最近改定された Apple の Platform Security Guide には同社の Secure Intent テクノロジーが記述されている。これを使って、パスワードもパスコードも入力することなくセキュアにアクションの承認ができる。これは何らかのハードウェアトリガー、具体的には Touch ID センサー、Face ID 対応の iPhone や iPad のサイドボタン、または Apple Watch のサイドボタンを通じて働き、Secure Enclave に接続される。たとえ root 権限またはカーネル内で実行されているソフトウェアであってもなりすましができないように設計されている。MacBook Pro に Touch ID を使ってサインインしたり、Apple Watch のサイドボタンを2度押しして System Preferences のロックを外したり、iPhone 12 のサイドボタンを2度押しして購入意図を確認したりといった風に使う。

System Preferences Apple Watch approval

Daring Fireball の John Gruber が、Apple の書類を分析することによっていくつかの結論を導き出した。例えば、Face ID への移行が当然と思えるのに Mac が依然として Touch ID のままである理由が Secure Intent で説明できる。Secure Intent への対応のために何らかの物理的ボタンが Secure Enclave に接続されることが必要だからだ。Apple による生体認証の未来は Face ID と Touch ID を組み合わせたマルチセンサー型のものになるのではないかと Gruber は予想する。

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