健康はますますハイテクになりつつある。最近 Adam Engst は COVID-19 にかかったのではないかと心配になったが、iPhone を使って抗原検査をする Ellume COVID-19 Home Test のお陰で安心することができた。ペースメーカーその他の埋め込み型医療機器を使っている人たちのために、Apple は今回 Apple 製品からの磁気干渉に関係した指針を更新した。現在は 4 つの Mac モデルが同じ M1 プロセッサを共有しているが、あなたの机の上に最もふさわしいのはどれだろうか? Julio Ojeda-Zapata がいろいろな選択肢を調べて、あなたに最も適した Mac を選ぶための助言を述べる。Jeff Carlson は写真愛好家のための有能な RAW 画像エディタ RAW Power 3 を詳しく検討する。今週注目すべき Mac アプリのリリースは Lightroom Classic 10.3、Microsoft Office for Mac 16.50、Little Snitch 5.2.1、Timing 2021.4、BBEdit 13.5.7、Zoom 5.7、Tinderbox 9.0、ScreenFlow 10.0、SoundSource 5.3.4、PDFpen と PDFpenPro 13.1、それに Final Cut Pro 10.5.3, Compressor 4.5.3, Motion 5.5.2 だ。
それからまた M1 ベースの MacBook Air もあって、価格は $999 からだ。もちろんこれはラップトップ機だが、ディスプレイに繋いで、外付けの入力デバイスを取り付けて、少なくとも時々にはデスクトップモードでこれを使っている人たちは多い。M1 ベース 13 インチ MacBook Pro の価格は $1299 からだが、予算の制約がある人にはあまりお薦めできない。理由はあとで説明する。
読者の皆さんはこれらすべての Mac の選択肢について少なくとも表面的にはご存知だろうと思っているのだが、以下では皆さんがご存知でないかもしれない細かなことのニュアンスをお伝えできれば嬉しい。私自身はまだ何を買うべきか決断できていないので、この記事を書くことが自分のためにも役立つのではないかと思う。
モジュラー Mac
私が最も新しく購入した Mac はスペースグレイの Mac mini だ。これは 2018 年に発表され、第8世代の Intel i5 プロセッサ、8 GB のメモリ、256 GB のストレージを搭載して価格は $799 だ。ずっと調子良く使っていたが、去年私はこれを Apple の下取り提携会社 Phobio に $460 で売り渡した。
この Intel ベース Mac mini の代わりに M1 ベースのモデルを $699 で購入するつもりだった私だが、新型 iMac が出たので購入をちょっと保留にしている。でもやっぱり Mac mini で行くことになるかもしれない。Mac mini にはいくつか利点がある。好きなディスプレイを選べること、将来の取り替えが簡単なこと、旧型のポートにもアクセスできることだ。
好きなディスプレイを選べる。 Mac をスクリーンと分離することで、選択肢の世界が開ける。もしも予算の制約が厳しければ、$200 そこそこで十分な能力を持つディスプレイを付けて合計 $1000 以下の出費で済み、これなら入門レベルの iMac よりもかなり安い。その上、使えるディスプレイをあなたが既に持っているかもしれず、その場合には Mac そのもの以外に大きな費用はかからない。
Mac mini の素晴らしい点の一つは、例えば Apple Store の Genius Bar へ持って行かなければならなくなった場合に、持ち運びがこの上なく簡単なことだ。ディスプレイから取り外して、そのまま持って行ける。その点、iMac ではディスプレイが統合されているので、あらゆる種類の運搬が大仕事だ。
Mac mini は交換が簡単。 私はオール・イン・ワンの Mac を何十年も使ってきて、Mac Classic や Color Classic から各種の iMac までさまざま使ったが、初めて Mac mini に乗り換えた時には非常に違和感があった一方で 理にかなったことにも思えた。十分良いディスプレイを買ってくれば、少なくとも2世代か3世代の Mac を通じて同じディスプレイを使い続けられるだろう、と私は考えを巡らせた。Mac mini だけを交換すればよいということは、言わば脳移植のようなもので、お金の節約になる。
Mac mini には旧型のポートが付く。 M1 ベース Mac の多くはポートの選択肢に制約があって、ユーザーはやむなくドングルやドックに投資せざるを得なくなる。その点 Mac mini は例外で、2 基の USB-A ポート、1 基の HDMI ポート、1 基の Ethernet ポート、それに標準的な 2 基の Thunderbolt ポートが付く。
二つ折り Mac
私は Mac のラップトップ機を自分で買ったことはないが、レビュー用に Apple から送ってもらったどのラップトップ機にも私は LG UltraFine ディスプレイを差し込んで使った。ラップトップ機を開いたまま Twelve South の Curve スタンドに乗せて、そちらを第二ディスプレイとして使ったこともある。また、ラップトップ機を閉じたままにして“貝殻”モードで使ったこともある。
もう一つのラップトップ機の選択肢として 13 インチ MacBook Pro もあるが、Touch Bar 搭載モデルをお持ちでない限り (そのモデルを持っている人はあまり多くないようだ)、私はお薦めできない。スクリーンは MacBook Air に比べてほんの少し明るいだけだ。MacBook Air にはないファンを搭載しているお陰でほんの少しだけパフォーマンスが優れているに過ぎず、日常的な使用でその恩恵を得られることはまずない。なのに MacBook Air に比べてかさばるし、重い。そしてもちろん、値段も高い。
デザインが古臭いという理由で M1 ベースの MacBook Air や MacBook Pro を買う気になれないという人もいるかもしれない。(Intel ベースの前モデルと見た目にはほとんど同じだからだ。) けれどもデザインを一新したコンシューマ向け MacBook が出るまでにはまだしばらく時間がかかるかもしれない。噂によれば、フレッシュな見栄えを備えた Pro レベルのラップトップ機が先に、おそらく今年中に出るらしいとのことだし、コンシューマ向けのデザイン改訂は年末か、それとも 2022 年に入ってからではないだろうか。もしも私がコンシューマ向けラップトップ機を購入予定だったとしたら、私なら出るまで待つだろうが、誰もがそんな余裕を持てる訳でもないだろう。
重さは 10 ポンド (4.5 kg) 以下で、この iMac は簡単に持ち運べる。それは Mac mini や MacBook Air よりは扱いづらいかも知れないが、統合されたディスプレイを持つ如何なる Mac よりも動かしやすいのは間違いない。
より良いウェブカム。 iMac を Mac mini に切り替えて以来、私はビデオ会議に苦闘している。これは、パンデミックでその重要性が増す中では不幸なことであった。内蔵カメラを持たない私のディスプレイの上に外付けのウェブカムを取り付けるのは不格好だし、それに私はケーブルの乱雑さも嫌いである。もっと悪いことに、私が試した色々なサードパーティウェブカムは、私の照明が一様でないホームオフィスで安定した画像品質を保つのが難しく、ソフトウェアユーティリティを使って対処することが必要となったが、満足出来る結果は得られなかった。皆さんも、似た様な問題に直面したことがあるかも知れない;ウェブカムは扱いにくい獣となる場合もある。
Touch ID サポート。 最近の Apple ラップトップ上に見られる Touch ID センサーは、Mac のロック解除 (そしてロック) にそしてパスワードの自動記入に便利である;Apple Pay 取引;そして Apple の iTunes, App Store, そして Books 店頭での購入に。更に、ユーザー切り替えを手早くやるのにも便利である。
しかしながら、Touch ID はこれ迄デスクトップ Mac ユーザに対しては選択肢でなかった。今や、Apple は Touch ID をデスクトップに対して Touch ID Magic Keyboard の形で提供している。でも、裏がある:それは M1-based 24-inch iMac の購入が前提である。Apple はそれをより高級な構成に対してはバンドルしているが、入門レベルではオプションである。しかし、それはどんな M1-based Mac でも使え、いずれは単独でも買えるようになるべきである。
Touch ID Magic Keyboard は、iMac と色合わせされており、タッチセンサーは右上隅に配置され、期待通りに働いた。
Mac を自動的にロック解除することに興味があるのであれば、覚えておくべきことが一つある - Apple Watch でも同じ事が出来るので、Touch ID は必要ないかもしれない。
音質。 24-inch iMac に組み込まれているスピーカーは iMac としてはこれ迄で一番のもので、とてもよく聞こえる。外部スピーカーを買う手間は省ける。M1-based Mac mini, MacBook Air, そして 13-inch MacBook Pro からの音はこれ程には良くないので、HomePod mini や他の外部スピーカーが欲しくなるかもしれない。
結果的に、私のものは文書にも十分記録されている物理的欠陥を持っているものであることが分かった: スクリーンがベースに組み立てられる時少し傾いて取り付けられというのである。私が見た報告では、その傾きの度合いは、1 mm から数 mm の間にばらついていると言う。私のものの場合、それは 1 mm ズレており、私の気を変にさせるには十分であった - もう見てしまったので、見なかった事には出来ない。何れにしろ、私の iMac は他の全ての面で欠陥なく機能しているので、購入を控えるように言う積もりはない。しかし、購入品を包装から出したら、まず iMac を定規で測り、もし水平でなかったら、交換か返金を強く主張すべきである。(Apple には 14 日間の無条件返金制度がある。)
これが、極度に注意深い Apple ユーザーが真新しいハードウェアデザインにお金を使う前に少し待つ理由でもある。Apple の全体的な実績は良いが、この様な不備は出てくる。従って、注文する前に他の人が何らかの問題を報告しているかを見るために少し待つのは価値があることである。Apple がこの問題を認識し、そしてそれに対処するための修理プログラムを始めるかを我々は見定めなければならない。
どの Mac?
M1-based 24-inch iMac の登場で、デスクトップ Mac を物色するのはより興味のわく - そして難しい - ものになった。しかし、Apple は決定要素の一つを簡単にした:全ての Mac は同じ M1 プロセッサを使っているので、性能面ではどれも似た様なものとなっている。従って、Mac の選択は他の要素に基づくことになる。
新しいモデルが出たら簡単に入れ替えられ、好みと予算に応じたディスプレイや複数ののディスプレイと組み合わせられる小型のデスクトップ Mac を使ったデスクトップコンピューティングのためのモジュラー方式に心が動く? Mac mini がお似合いかもしれない。
外付けディスプレイや入力機器を使って、共有環境下でも、快適さと生産性を向上させたいが、外に出る時には引き抜いて単体でも使うことが出来るデスクトップコンピューティングの考え方に惹かれる? MacBook Air がぴったりかもしれない。
Mac 生活に色が欲しい、ひょっとすると初代 iMac を思い起こさせる Bondi ブルー、そして一体型マシンのすっきり感とより良いウェブカムと2台目のモニターをつなぐ選択肢も欲しい? Apple の 24-inch iMac がドンピシャかもしれない。
私は、モバイルコンピューティングには iPad を使うのを好んでいて、ラップトップは求めていないので、Mac mini と 24-inch iMac の間で揺れ動いている。難しい判断である。Mac mini 方式は、より経済的だが、2台目のディスプレイのために更にお金を出さない限り単一ディスプレイとなってしまう。iMac の方はもっとお金がかかるが、二つのディスプレイ、それに真新しいデザインと Touch ID を手に出来る。しかし、もし iMac を買うなら、画面は水平でなければならない。
全自動デジタルカメラからもっと高機能なものへ飛び移る決断をした時、私は新たな選択に直面した。画像の撮影を RAW か JPEG か、どちらのフォーマットでするかという選択だ。それ以前には、私のカメラはいずれも JPEG で撮影していた。これは素晴らしい見栄えだけれども、実は大幅に圧縮された写真だ。RAW の方が良いという助言の声は聞こえていた。その理由は、このフォーマットがセンサーが捉えた生のデータをそのまま封入していて、カメラ内での処理を一切施していないものだからだ。その上、プロたちはこちらを使っているのだし (もちろん私はできるだけプロ風の人でいたい)、私も思い切って高いところから深い写真の世界へと飛び込みたい気分だった。(明確化のために言っておくと、RAW は頭字語ではない。これは普通の形容詞 raw であって、ただ JPEG、TIFF、PNG その他、頭字語で作られた他のフォーマットの名前と並べられるようにわざと大文字にしてあるだけだ。)
RAW 写真は、JPEG 写真に比べて良いものになり得る。場合によっては劇的に良くなる。ただしそのためには多少の作業が必要で、どうすれば良くできるかのノウハウを知っている必要がある。ここで紹介する RAW Power は Gentlemen Coders が出している macOS、iOS および iPadOS 用のアプリで、RAW が写真編集に持ち込んだオプションを十分に使いこなせる機能を備えている。加えてこのアプリは iPhone 12 Pro と iPhone 12 Pro Max の ProRAW フォーマットをも正しく処理することができる数少ないツールの一つであり、Apple の Photos アプリさえも凌ぐものだと言える。
RAW Power について語るためには、RAW フォーマットについて、それが一般的な全自動デジタルカメラの撮影する画像の大多数とどのように違うかについて、最初に手早く説明しておかなければならない。JPEG (Joint Photographic Experts Group の省略形で、この組織がこの方式を作った) は、小さなサイズで良い画像を作るために設計されたファイルフォーマットおよび圧縮スキームだ。カメラのメモリカードがメガバイト (MB) 単位で測られていた時代、今のようなマルチ・ギガバイト (GB) のカードなど存在しなかった時代には、ファイルサイズが小さいことが特に重要な点であった。
中間的な可能性もある。Apple ProRAW は RAW 画像のダイナミックレンジを Apple が HEIF や JPEG 画像の処理の際に適用する計算写真学と組み合わせる。これもサイズは大きめで、一枚 25 MB 程度だ。
iPhone や iPad で RAW 画像を撮影することも可能だが、そのためにはサードパーティのアプリ、例えば Halide、Adobe Lightroom、 Manual などが必要だ。iOS 14.3 以降では、iPhone 12 Pro と iPhone 12 Pro Max の Camera アプリがオプションとして Apple ProRAW フォーマットでの撮影も提供する。
RAW 画像が JPEG 画像よりも優れているのは、まさにそのサイズの違いの中にある。つまり、それを編集しようとする際にずっと多くのデータを相手にすることができる。
対照的に RAW ファイルには、厳密に言って、ピクセルなど含まれていない。その画像が処理された段階でピクセルにどんな色が対応するかについての情報が含まれているだけだ。フィルムに撮影した写真が化学薬品に通して現像することで初めてどの領域が光に晒されたかを目に見えるようにするのと同じことで、RAW ファイルの中の画像はソフトウェアがそのデータを読み取ってからその情報に基づいて個々のピクセルの色を割り当てる“現像”の作業をしなければ目に見えるようにならない。
それは一見表面的な違いに聞こえるかもしれない。JPEG と RAW のファイルはどちらも私たちには画像として見えるのであって、RAW ファイルをネイティブな形で私たちが目にすることはないからだ。例えば私たちがそれを Photos アプリで開くと、私たちの目には色のついたピクセルが見えるが、それは単に Photos が RAW データを解釈して画像を作成し、私たちに見せてくれるだけだ。
そういうことがいったいなぜ重要なのか? RAW ファイルには、ただ単に「このピクセルは黒でこちらのピクセルは青だ」ということ以上の、もっと多くの情報が含まれている。カメラのメーカーが新しいモデルのカメラを作る際には、そのカメラやセンサーの特性を利用する、あるいは特性を補うためにその生のフォーマットに調整を加える。例えば、高い ISO 設定でノイズが増してしまうセンサーを使っているならば、その RAW ファイルには編集アプリがその種のノイズを最小化または除去できるようにするためのデータが含まれる。
とりわけ厄介なのは、メーカー各社が RAW ファイルの仕様を公開しないという事実だ。ソフトウェアの開発者は、個々のモデルのフォーマットをリバース・エンジニア (解析) することによって対応しなければならない。この状況への対応として、Adobe が DNG RAW フォーマットを作成した。これは、よりオープンなフォーマットだが、どのカメラ会社にも採用されていない。しかしながら、Apple の RAW および ProRAW フォーマットは写真を DNG ファイルとして保存する。
RAW Power での編集作業
画像編集アプリの大多数は RAW 写真を扱うことができるが、概してそれらは一般的なアプローチを用いる。例えば、明暗と色調の調整は RAW の拡張されたダイナミックレンジを利用するけれども、そのためのコントロールはあらゆる画像で共通の Exposure や Sharpening と同じものを使っている。
その点、RAW Power は RAW をデコードする処理の一環として、特定の RAW 設定にターゲットを絞った追加のコントロールを含めることで画像編集にニュアンスを加える。RAW 画像を編集する際に、一連の RAW Processing コントロールが表示される。例えば、もし画像が露出オーバーならば、Boost スライダーを下げることで露出を下げて細部を取り戻すことができる。下の図では、建物の壁が日光に当たってまだらになった部分に質感と変化が追加され、空の雲がより鮮明になっている。
別の例として、多量のデジタルノイズを含んだ写真を見てみよう。この旧式のトラックの写真は暗い納屋の中で撮影したので、それを補うため私は ISO を 12,800 に上げ、結果としてノイズが出た。(ISO を高く設定すればセンサーの光感度が上がるので、誤った色を記録するピクセルが出てくる。) 300% にズームすればノイズのためザラザラした写真に見えるのだが、ここで右にある RAW Processing コントロールを見てみよう。Luma Noise と Color Noise のスライダーは既にそれぞれの場所に設定されている。これは RAW Power がその RAW ファイルから読み取った情報に基づいたものだ。
Color Noise のデフォルト設定がこの万華鏡のような色を除去しているのだが、私は Luma Noise のスライダーを上げることで色以外のノイズの多くを最小化することができた。
ノイズ補正の副作用として、画像がソフトな、水彩画のような見栄えになる傾向がある。ここで覚えておくべきなのが、RAW Power の有用なツールチップに目を向けることだ。コントロールのどれかの上にポインタをかざせば、ツールチップが出る。Detail スライダーのツールチップを見ると「ノイズ補正によって失われた粒子感を復活させる」と書いてある。おや、これは私がツールの名前から受けた第一印象とは違っている。それでも Detail スライダーを少し上げてみると鮮明度が増した (ノイズもいくらか増した) が、これと Luma Noise を両方調節することで私はまずまずの妥協点を見つけ、写真がかなり自然に見えるようになった。確かにこの写真はかなり極端な例であって、ノイズの多い写真を旧式のカメラ (Canon EOS M) で撮ったものだ。最近のカメラならばもっとうまくノイズを処理できるだろうが、それでもこの種の調整によって恩恵を受けることはあるはずだ。
それ以外の RAW Processing コントロールとしては鮮明化、コントラスト、それから画像ファイルの RAW 固有の情報に基づく 2 つの黒レベルがある。実用的には、それぞれ通常の Sharpen、Contrast、および Levels または Curves ツールとは独立に精緻な調整をこちらのコントロールを使って施すことができる。Gamut Map オプションは、過飽和のカラーがクリッピング (100% の飽和度に達して、例えば不自然に強烈な明るい赤が現われたりする現象) を生じるのを予防する。
Apple ProRAW と RAW Power
そこで登場するのが Apple の ProRAW フォーマットだ。ProRAW がユニークなのは、Apple の計算写真学を RAW 撮影に組み込んでいる点だ。iPhone を使って普通に写真を撮ると、数ミリ秒の間に数回の撮影をしてそれらを混ぜ合わせることで全体的に満足のいく仕上がりにしてくれる。露出オーバーになりがちな明るい部分は暗い部分とのバランスを取ることで細部を取り戻す。このことが、小型のセンサーが直面する困難を克服する役に立つ。
RAW Power は、ProRAW ファイルを適切に処理できる初めてのアプリの一つだが、それは Local Tone Map スライダーを追加したお陰だ。Apple の画像処理はできる限りあらゆるもののバランスを取ろうとするが、その結果として平べったい見栄えになってしまうことがあり、必ずしもそれは望ましいことではないかもしれない。Local Tone Map はその効果を低減する。下の画像では、近くにある木々がくっきりと写っているけれども、私としてはそちらにあまり注目が集まって欲しくない。フレームの中央に見える雪を頂いた山々はぼやけてしまって、私が撮影した時に見た感じとは違っている。
そこで Local Tone Map スライダーを 1.0 から 0.3 へ下げることで、すぐ前にある部分が暗くなり、木々が構図の要素となって雪を頂いた山々が引き立つ。
広範囲の RAW カメラ対応
RAW Power がどのように編集を施すのかと同じくらいに重要なのが、何に対して編集を施せるかだ。さきほども触れたようにカメラのメーカー各社は個々のカメラモデルごとに新たな RAW ファイルフォーマットを作っており、さらに状況を厄介にしているのが各社がそれらのフォーマットを自社独自仕様と見なして仕様を公開しないことだ。リリースされたばかりのカメラを購入したけれども大多数の写真エディタがその RAW ファイルを開くことさえできないという経験をしたことがあるかもしれないが、その理由がこれだ。エディタの開発者たちは、新しいフォーマットを正しく読み取るために必要な情報を手に入れられないでいるのだ。結果として新型カメラへの対応が実現するまでに何週間も、場合によっては何か月もかかることがあり、近年では Apple デバイス上で問題が悪化しつつあった。
Apple はシステムレベルで RAW デコードのためのデータを保持しており、新型カメラへの対応はどうやら Apple にとって優先度の高いことではないようだ。Fujifilm X-E4 カメラを 3 月に発売されてすぐに購入した人は、今もなお Photos が対応していないので待ち続けている。GoPro カメラには一度も対応したことがない。それに、Photos も RAW Power も (他の多くのアプリも) Apple の内蔵 RAW エンジンを利用しているので、まさにそこに障害がある。
けれども RAW Power 3.3 の Extended RAW 対応がその行き詰まりを打破して、さまざまの新しい Fujifilm、GoPro、Olympus、Pentax、Panasonic、Sony カメラへの対応を追加する。Fujifilm 版は (ファイルがディスク上に占める容量を減らすため) 圧縮された RAW 画像への対応も含んでいる。
Apple の Photos ライブラリとの統合
RAW Power は (Adobe Lightroom などのアプリがするようには) あなたの写真ライブラリを管理しようとはしない。その代わりに、あなたの既存の Photos ライブラリに連結する。あなたが iCloud Photos を使っていれば、iOS や iPadOS デバイスで走る RAW Power アプリでもライブラリ内の写真が使える。
Photos ライブラリにある画像を編集した後に、RAW Power は変更後の写真をライブラリに保存するかどうか、あなたの許可を求めてくる。編集後のバージョンが気に入らなければ Photos の中でいつでも元に戻れるのだが、ここではさらに良いことに、画像を RAW Power で再編集した場合、すべての編集が保存されるのでいつでも好きな所に戻れる。従来、Photos は編集後の最終バージョンしか保存しなかった。つまり、画像を再検討したければ一からやり直すしかなかった。(サードパーティ製アプリにもまだこのやり方で働くものがある。)
Photos は使っていないって? RAW Power は画像を直接に、macOS では Finder から、iOS/iPadOS では Files アプリから開くこともできる。iPhone や iPad 上の RAW Power は SD カードを取り付けてそこから直接画像を読み込むこともできるので、かつてのようなファイルをいったん Camera Roll に保存してからという行きつ戻りつの手間は必要ない。
でも、RAW Power が Photos ライブラリと統合されていることこそ、最も便利なやり方だ。また、Photos アプリは星によるランク付けでどの写真が他より良いかを見分ける役に立たせるやり方をずっと以前に放棄してしまった。その代わりとして、今は画像に Favorite フラグを割り当てることしかできない。星によるランク付けの柔軟性の方を好む人のために、RAW Power はまさにその機能を持っていて、それをデバイス間で同期することもできる。私は常日頃からこの機能を便利に使っていて、ライブラリやアルバムの中で例えば星が 2 つ以上付いている写真は RAW ファイルだと見分けられるようにしている。
RAW Power にはさらなるパワーが
ここでは主として RAW Power の RAW 編集機能について語ってきたが、それはこのパッケージの中の一部分に過ぎない。他にも例えば水準や曲線を微調整したり、個々の色について HSL (色相、彩度、輝度) を操作したり、モノクロ変換、トリミング、その他のツールもある。また、プリセットの見栄えを適用するための一連の LUT (参照テーブル) もあり、 Lutify.me による映画シミュレーションや他にはない見栄えもある。他の LUT を読み込むこともできる。
Microsoft が Office for Mac のバージョン 16.50 をリリースして、Microsoft Information Protection で暗号化された書類の共同編集と自動保存ができるようにした。共同編集ができる設定にしておくと、Word、Excel、PowerPoint のデスクトップアプリで秘密度ラベルを使用してラベル付けされ暗号化された書類を複数のユーザーが編集できる。また、PowerPoint ではアプリ内で利用可能な質の良い無料のビデオ映像のライブラリを利用できる。Microsoft は Outlook をアップデートして他のユーザーの勤務時間を表示できるようにし、ピン留めしたメッセージの機能を新設し、新しい WkWebview 閲覧ウィンドウでコンテキストアドインへの対応を追加した。(一回限りの購入は $149.99、年払い講読オプションは $99.99/$69.99、Microsoft AutoUpdate 経由で無料アップデート、リリースノート、macOS 10.14+)
今回のアップデートではまた、macOS 11 Big Sur でのユーザーインターフェイスを更新し、YouTube に章マーカーを出版する機能を追加し、タイムラインのアイコンキャッシュを改良してメモリと CPU の使用量を減らし、Sidecar デバイスからスクリーンを録画できる機能への対応を追加し、テキストボックスや注釈、背景コンテンツなどの間でのカラーマッチングの正確度を改善し、タイムライン再生を中断した際に起こることのあった安定性の問題を解決し、読み込みの際に AAC および MP3 ファイルが途中で切れてしまったバグを修正している。
Apple が Final Cut Pro 10.5.3、Compressor 4.5.3、Motion 5.5.2 をリリースして、これらのプロフェッショナル向けビデオ編集アプリに改良とバグ修正を施した。Final Cut Pro は新しい列エディタでカスタムの列表示を作成・編集できるようになり、Finder からクリップをコピーしてタイムラインにペーストする機能を復活させ、オーディオキーフレームの調整の際の問題を解消し、Color Mask での問題を修正し、外付けハードドライブが接続されている状態でアプリを Final Cut Pro に切り替える際の信頼性を向上させた。
Compressor はソースクリップやオーディオファイルの開始タイムコードの変更ができるようにし、カラーパレットとディザリングアルゴリズムを選択して PNG や GIF のファイルサイズを縮小する機能を追加し、ソースメタデータのパススルーを無効にしてオーディオファイルや MOV、MP4、M4V、MXF のビデオフォーマットを出力できるようにし、AVCHD ディスクイメージをファイルシステムに書き込む機能を追加し、iTunes Store や IMF Packages タイプの新規バッチを作成するキーボードショートカットを導入した。
Motion へのアップデートは M1 ベース Mac で 3D オブジェクトが間違った輝度でレンダリングされた問題を修正し、HDR プロジェクトで絵文字が間違ってレンダリングされたバグに対処し、またいくつかのクラッシュ (プロジェクトの書き出し後に閉じた場合や、オンスクリーンコントロールを使ってグラデーションの不透明度を調整した場合など) を解消した。(いずれも無料アップデート。Final Cut Pro 新規購入 $299.99、3.1 GB、リリースノート、10.15.6+。Compressor新規購入 $49.99、319.2 MB、リリースノート、10.15.6+。Motion 新規購入 $49.99、2.3 GB、リリースノート、macOS 10.15.6+)
ニュースでお読みになったかもしれないが、米国下院の立法府議員たちが大手テクノロジー企業の力を抑制することを意図した一連の法律案を提起した。対象となる企業名を具体的に挙げれば Amazon、Apple、Facebook、Google、それからまた Microsoft も影響を受ける可能性がある。これはまだ始まりに過ぎないし、これらの法案が実際に法律として成立するという保証もない。しかしながら、議会の反トラスト小委員会議長の David Cicilline は抜け目ないやり方でこれらの法案を導入した。すべての法案は民主党が提出し共和党が共同提出したものであり、交渉の過程で相手方の立場を尊重して一部を断念してもよい形となっている。Stratechery の記事で、Ben Thompson がこれらの法案について思慮に富んだ概観を述べており、どの会社が最も大きな影響を受けるかについても論じているが、中でも Apple はリストの上位にある。まだ何かをすべき段階には至っていないけれども、偏見のない心で状況を注視しておくべきだろう。たとえあなたが規制に反対する意見を持っていても、臆面もなく論議の的になる行為を続けてこのような監視の対象となる立場に自らを追い込んだのは他でもないこれらの会社なのだ。