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#1573: Apple の記録的 Q3 業績報告、なぜ Apple は「antifragile」か、watchOS 7.6.1 がセキュリティ脆弱性を修正

今週はちょっとやむを得ない事情があって、ごくスリムな TidBITS 号となったことをお許し願いたい。Apple は一連のオペレーティングシステムアップデートの締めくくりとして先週 watchOS 7.6.1 を出し、他のアップデートで修正されたものと同じ深刻な脆弱性に対処した。ぜひともインストールしておこう! また Apple が素晴らしい Q3 2021 業績発表をしたので、Michael Cohen と Josh Centers が発表された数字をまとめてチャートに示し、Apple がどれほど凄い結果を出したかを伝える。このパンデミックの中でも Apple が好業績を達成したことを受けて、今や Apple は「antifragile」な会社、つまり困難に直面してもますます強くなれる会社になったという分析記事を Josh が書き上げた。「APPLE の運はもはや尽きた」と言われていた時代から、何と遠くまで来たことだろうか! 今週注目すべき Mac アプリのリリースは一つだけ、ScreenFlow 10.0.3 だ。

Josh Centers  訳: Mark Nagata   

watchOS 7.6.1 が深刻なセキュリティ脆弱性を修正

Apple が watchOS 7.6.1 をリリースして、iOS 14.7.1、iPadOS 14.7.1、および macOS 11.5.1 におけるものと同じ脆弱性に対する修正を施した。このカーネル脆弱性は実際に攻撃に使われた可能性があるとのことだ。(2021 年 7 月 26 日の記事“Apple、iPadOS 14.7.1 と macOS 11.5.1、および最近の OS アップデートへのセキュリティノートをリリース”参照。)

watchOS 7.6.1

watchOS 7.6.1 アップデートは Apple Watch Series 4 上で 64.2 MB あり、iPhone の Watch アプリで My Watch > General > Software Update からインストールできる。Apple Watch が充電器に接続されていて、かつ少なくとも 50% 充電されていることが必要だ。

脆弱性の深刻さと、実際に攻撃されているかもしれないことを考え合わせれば、できる限り早く watchOS 7.6.1 をインストールすることをお勧めしたい。

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Michael E. Cohen   訳: 亀岡孝仁  Josh Centers

Apple の Q3 2021:荒稼ぎ続く

世界的にパンデミックが長期化する中、Apple は急ピッチでの金儲けを続けている。Q3 2021 決算で、同社は純利益 $21.7 billion (希薄化後一株当り $1.30)、 そして売上げ $81.4 billion を報告した。売上げは前年同期比で 36% の増収だが、利益は不謹慎とも思える 93% も上昇した (世界が燃えさかる中 Apple Q3 2020 業績は最高を記録、次期 iPhone は粋な遅刻, 30 July 2020 参照)。Apple は、事業を展開している全ての地域で史上最高記録を打ち立て、そして報告している全ての製品分野で大幅な進展を見せた;CFO Luca Maestri の四半期説明の中では、"史上最高" の言葉が繰り返し使われた。この様な結果があれば、Ted Lasso ですら "信じ" させるのに大して苦労する必要もないであろう。

Q3 2021 category revenue

Apple CEO Tim Cook は、Q3 2021 が6月四半期売上げの新記録になったと言った。彼は、米国民間での強まる楽観主義は将来の業績に対しては良い前兆だとしたが、デルタ株による COVID-19 感染の新しい波は失速をもたらす可能性もあると警告した。加えて、彼は、外国為替相場や供給上の制約もまた将来の売上げ増を脅かしかねないとの懸念も表明した。これらの懸念材料を埋め合わせるのは、Brazil, Chile, Mexico, Poland, India, Thailand, そして Vietnam と言った発展途上国における健全な成長の兆しである。

iPhone

Q3 の iPhone 売上げは、前年比で印象的な 49.8% の増となり、Q3 2020 の $26.4 billion から今四半期の $39.6 billion へと上昇した。iPhone のアップグレード売上げも6月四半期で (あの表現をもう一度) 史上最高を記録した。Cook は、5G 能力の導入は新型 iPhone に対する需要をかき立てるのに貢献したと言い、そして世界的に見れば 5G の採用は未だ初期段階にあり、今後の四半期に対してもこの製品には良い兆しであると言った ("5G とは何か、なぜこれがモバイルコミュニケーションの (現在でなく) 未来なのか" 11 November 2020 参照)。

Q3 2021 iPhone revenue over time

iPad

iPad は、売上げ $7.4 billion で、前年同期の $6.6 billion を軽く越え、11.9% の増収となった。6月四半期で、iPad が今年以上の売上げを記録した時期を捜すには2012 年迄遡らなければならない。新型 iPad が投入されたのはつい最近であり (最新の Mac と同じ M1 チップを共有する高級機 iPad Pro も含めて) そして新たな投入機も続いていることに加え、未だ収まらないパンデミック関連のロックダウンによるリモートワークのための機器に対する需要は引き続き喚起されうることを考えると、 iPad の業績の将来は明るい様に見える。

Q3 2021 iPad revenue over time

Mac

Apple の Mac 製品群もまた強い成長を示し、前年同期比約 16% の増で、Q3 2020 の売上げは $7.1 billion で、今四半期は $8.2 billion であった。Cook は、これは Mac に対する新しい Q3 記録だと言った。新しい M1-based iMac のお陰である。

"ここ4四半期は Mac にとってこれ迄で一番の四半期であったことは注目に値する" と CFO Luca Maestri は言った。その後 Maestri は、iPad と Mac の売上げを合わせると Fortune 50 会社の大きさに匹敵し、両者に対する顧客満足度は 90% を越えると付け加えた。Maestri はまた、企業顧客の間での MacBook Air 採用の増加は目覚ましいとも言った - M1-based MacBook Pro には M1-based MacBook Air に比べると勝る物が余りない事を思えば、驚きには値しない。

Q3 2021 Mac revenue over time

Services

Services は売上げで印象的な前年比 32.9% の成長を見た。今四半期の売上げは $17.5 billion で、前年同期には $13.2 billion であった。Cook は、これは Services の史上最高の記録だと言い、この部門の成功への寄与の一つとして、Apple TV+ と Emmy への 35 のノミネーションを挙げた。事実、多くの Apple サービスが、四半期毎か史上最高の売上げ記録を破った:ここには AppleCare, Apple Music, そして App Store が含まれる。

Maestri は、各種の Apple サービスは今や 700 百万を超える定期購読者を持ち、昨年より 150 百万増えたと自慢した。彼は、この部門の成長の多くはパンデミックロックダウン中の娯楽に飢えた顧客のお陰だとした。

Q3 2021 Services over time

Wearables

Wearables 部門の売上げ成長は、Services よりも大きく、この部門の前年同期の結果よりも約 36% 増となった。Apple Watch, AirPods, そしてその他のウェアラブルは昨年 $6.5 billion を稼いだが、この四半期には $8.8 billion となった。Cook は、これは Wearables に対しては新たな Q3 記録となったと言ったが、これには新しい AirTag の様なアクセサリも含まれる。年内には Apple Watch の新しいモデルが予定されており、この部門はその増収路線を継続しそうである。

Q3 2021 Wearables over time

Q3 2021 地域毎の成績

Apple は、その5つの販売地区全部で印象的な前年比成長を記録し、そして Greater China では新しい6月四半期記録を打ち立てたが、それは主として iPhone 12 のお陰である:

これに前述した発展途上国での成長の兆しを加えると、Apple は今後も引き続き健康的な全世界での売上げを計上しそうに見える。

Apple Q3 regional revenue over time

不確かな未来

Apple は楽観的なままでいようとしており, そして確かに、同社には悲観的になるべき理由はない - 少なくとも、その健康状態に関しては:Apple は記録を打ち砕き、そして銀行には $194 billion がある。しかし、今四半期の投資電話会見では、COVID-19 の不安が大きく影を落としていた。

正常状態に少し戻って、Maestri は9月四半期への見通しを提供した。見通しの提供はこのパンデミックの始まり以来 Apple がやってこなかったことである。Apple は次の四半期にも二桁の増収を見込んでいるが、一部には外国為替相場の影響もありその度合いは Q3 よりは少なくなるとしている。Services の成長も減速すると見込まれる。何故ならば、Q3 2020 のロックダウンがこの四半期の成長率を押し上げたからである。最後に、会見中に示された最も警戒すべき将来の売上減少の兆しは、予期される供給上の制約であった。

Cook は供給制約について次の様に言った:

制約の大部分は、他の人達も見ているのと同様である。私は、それを業界全体の品薄状態と位置づけたい。需要が我々の予測を遙かに超える程高く通常のリードタイムの中では到底揃えきれないと言うものの他にも不足は生じていて、それも少しは関係している。前にも言った様に、サプライチェーンの中で我々の製品の幾つかで使っている最新ノードは余り問題ではないのだが、問題は従来のノードにあり、供給制約が起こっている、とりわけシリコンに。

平易な言葉で言うと、全サプライチェーンに影響を与えているチップ不足 が Apple の頭上にものしかかっている。Apple はこれらの問題を Q3 では何とかしのげたが、Q4 ではそれ程上手くいかないかもしれない。しかし、もし誰かがサプライチェーン問題に取り組まなければいけないとしたら、Apple CEO Tim Cook の右に出るものはないであろう。彼には足りないものはあるかも知れないが、彼は供給ライン管理の実績豊かな達人である。

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Josh Centers  訳: Mark Nagata   

Apple は今や Antifragile な会社

二十年以上にわたって、"APPLE IS DOOMED" (Apple の運はもはや尽きた) という言葉がインターネット上の議論に繰り返し登場してきた。もともとこれはその文字通りの意味で使われていた。けれども Apple がいったん軌道に乗って今日のようなテクノロジー巨人への道を歩み始めるやいなや、この言葉は皮肉に満ちた、批判論者を撃退するための決まり文句として語られるようになった。けれどもそうした肩肘張った拒絶の言葉の裏には、Apple が iPhone に依存し過ぎているのではないか、いつの日か世界が次の段階へ進んで、Apple のビジネスが崩れ落ちることになるのではないかという、非常に現実的な懸念が隠れていた。

2010 年代の終わりに向かう頃 、中国での iPhone の売り上げが振るわず Apple が財務指針を見直したのを受けて 、この悲惨な予言が現実になるのではないかと思われた。Apple が最初に失速の気配を見せたのは Q1 2016 であった。(2016 年 1 月 26 日の記事“Apple の Q1 2016、過去最高だが、辛うじて”参照。)その次の四半期からは Tim Cook 率いる Apple の最も不安定な時期に突入し (2016 年 4 月 26 日の記事“Apple、Q2 2016 で 13 年ぶりの売上げ減少を記録”参照)、その後は上がったり (2017 年 1 月 31 日の記事“Apple、Q1 2017 の記録的業績で外見上成長に復帰”参照) 下がったり (2019 年 4 月 30 日の記事“iPhone 販売、沈んだまま:Apple の Q2 2019 業績”参照) が続いた。

そして 2020 年の雪だるま的な危機がやって来た。小売店は閉店し、Apple 本社も扉を閉め、サプライチェーンはずたずたになった。これこそ、Tim Cook の統率力を明らかにすべき究極の試練であった。結果を一言で言えば、Apple はただ単に生き延びたのみならず、ここでもまた記録を塗り替えた。(2021 年 7 月 27 日の記事“Apple の Q3 2021:荒稼ぎ続く”参照。) Mac の売り上げはかつてないほど大きく、この 4 つの四半期連続で記録を更新した。iPad の売り上げも、十年近くにわたったスランプを経て、2012 年のピークを除いて最も良い成績を記録した。iPhone 12 はその製品サイクルの終わりに近付いた今でもまだ大成功を続けている。サービスやウェアラブルの分野も、いずれもとんでもない成長が続く。

Tim Cook は、困難な状況の下でもますます強くなる、つまり真の antifragile な会社へと Apple を変貌させたのだ。

Fragile と Robust と Antifragile

この antifragile という言葉が何を意味するかを理解するために、哲学の分野に少し分け入る必要がある。ここで考えるのは Incerto シリーズの著者 Nicholas Nassim Taleb で、シリーズの中で最も注目すべきは The Black SwanAntifragile だ。Taleb の中心的なテーマは悪いことは予想もしないときに起こるというもの(いわゆるブラックスワン事象)で、彼はたとえ予想外の災厄が襲っても生き残り、さらにはより強く成長できるためのシステムを社会が構築すべきだと提言する。

Taleb はあらゆるシステムを次の三つに分類する:

重量のある、鋳鉄製のケトルベル(取っ手の付いたダンベル)を想像してみよう。これを紙コップの上に置けば、コップは潰れる。コンプリートブロックの上に置けば、何の問題もなくケトルベルを支えてくれる。けれども、もしあなたが(良い体勢で)ケトルベルを繰り返し持ち上げれば、あなたが強くなれる。ここでは紙コップが fragile (脆弱)、コンクリートブロックが robust (頑丈)、あなたの体が antifragile だ。(まあ、必ずしもいつもそう感じられるとは限らないが。)

Robust な Apple

まず第一に、Apple がどんな風に robust (頑丈) かを検討しよう。多くの人たちが疑問視し、今でも疑問の声が止まないのは、いったいなぜ Steve Jobs が、心の底からアーティストであった彼が、Apple を率いる後継者として Tim Cook のような経理畑のサプライチェーン専門家を選んだのかという点だ。けれども去年起こった出来事を見れば、Jobs に先見の明があったことが決定的に証明される。

皆さんは PlayStation 5 か Xbox Series X を買おうと試みたことがあるだろうか? それは運次第で、いずれもまだ入手困難な状態が続いている。十分な数のチップを製造できる者がいないからだ。同じことが自動車産業にも言える。自動車メーカー各社は、機能を削減した自動車を生産するか、それとも生産を止めるかの二者択一を迫られてきた。

でも Apple はこの種の問題に見舞われていない。今すぐにでも Apple の店舗に歩いて入れば、iPhone 12 も M1 ベース Mac も手に入れられる。Apple CFO の Luca Maestri は Q2 業績発表の場で Apple は今後サプライチェーンの供給不足に直面するかもしれないと警告したが、Q3 業績発表では Apple がその事態を回避したとだけ簡潔に述べた。Q4 になれば供給不足が深刻化するかもしれないと彼は警告したけれども、約束は少なめ、供給は多めという Apple の習性を知っている私は大きな問題は起こらないだろうと確信している。たとえ私の予想が間違っていたとしても、シリコンに依存する他のメーカー各社に比べれば Apple の状況はそれほど悪くならないと請け合ってもよい。

Apple にそれができるのは、あらかじめ何十億ドルもの資金を注ぎ込んで必要なパーツを確保しているからだ。それこそまさに、自動車業界がしなかったことだった。Apple はこの四半期に製品購入義務のため 380 億ドル以上を支払う予定だと報告しており、これは前四半期に比べて 26% の増額となる。アナリストの Ben Bajarin は、これは Apple が自社のチップの供給を確定させるためのものだと述べた。他のメーカー各社が不意打ちを食らっている一方で、Apple はチップ供給を保証している

チップ供給の囲い込みだ。私たちが耳にした事実を Apple は知っている。チップの制約はまだ当分解消されないだろう。Apple が将来に向けて予約していること、しかもそれを大量にしていることが、今後もサプライヤーから優先扱いを受けられる理由だ。https://t.co/fduKdp4zDM

— Ben Bajarin (@BenBajarin) July 28, 2021

大胆で将来を見通した動きがもう一つあった。Apple が Intel を捨てて自社独自に ARM ベースのプロセッサを作る決断をしたことだ。Apple silicon への切り替えはまだまだ進行中だが、Apple はもはや Intel のなすがままではなく、CPU を巡って他の PC メーカーと競争する必要もない。Apple は自らのデザインを TSMC などの半導体製造工場に直接持ち込んで、あらかじめその製造能力を買い占めることができる。M1 チップが Intel の製品に比べてほとんどあらゆる意味で優れていると既に判明していることもまた、記録的な Mac 売り上げの駆動力となっている。

こうしてサプライチェーンを制御している結果として、Apple は自らの運命を自ら決めることができる。でもそれに加えて、この会社にはともすれば見落とされがちなもう一つの秘密の武器がある。それは、ほぼ 2 千億ドルにも達しようとする現金を手元に置いていることだ。金融の“専門家”たちはしばしば、Apple の巨額の現金資産を嘲笑ったり、時には声高に抗議したりして、そのお金をどこかへ投資するか、あるいは株主に分配するかせよと主張する。けれども製品パイプラインを確保しておくために Apple が 380 億ドルを必要とするこの時代に、いつでもテーブルに広げておける現金を Apple は用意しているのだ。(Taleb は専門家というものを毛嫌いしており、著書 The Black Swan の中で「専門家たちの抱える問題は、自分たちが何を知らないかを知っていないことだ」と記している。)

最後にもう一つ、Apple は競合各社の大多数を大きく引き離す規模で全世界展開をしている。とりわけ、中国に大きく展開している。Apple があの国で製品を販売することについてあなたがどう考えるかはさておき、中国が COVID-19 から早期に回復したことが最近の数四半期の Apple を支える役割を果たした。それと同時に、中国での売り上げが不振となれば (2019 年 1 月 3 日の記事“Apple 減収を警告、中国での販売不振を原因に”参照)、他の地域における Apple の力が緩衝の役割を果たした。

Antifragile な Apple

Apple はサプライチェーンを緊密に制御し、そのために現金を備蓄し、さらに全世界的に展開しているという点で robust (頑丈) だと言える。だがここでは、Apple の多角的な製品品目がこの会社を antifragile なものとしている状況を見て行こう。

四半期ごとに開催される Apple の投資家会議はかなり退屈だ。ただ一つだけ例外として興奮を感じるのは (それは誤った理由によるものだが) Apple が良くない四半期を経験した場合だ。けれども今週の Q3 2021 会議では大いに魅力を感じた。なぜなら、Apple の COVID 関係の難問を巡る議論が非常に多く交わされ、Apple がどう反応しようとしているかが議論されたからだ。

鍵となるやり取りが Morgan Stanley の Katy Huberty と Apple CFO の Luca Maestri の間で交わされた。Huberty はパンデミックによって Apple は助けられたのか損害を受けたのかと尋ねた。(会議の文字起こしをしてくれた Six Colors の Jason Snell に感謝したい。)

Maestri の返答と、会議の中での他の発言が、Apple の antifragile な側面を浮き彫りにした。500 店舗以上ある Apple のリテール店の大多数と、提携会社の多くの店舗が 2020 年のほとんどを通じて閉店していた。Maestri は店舗の閉店によって iPhone と Apple Watch の売り上げは落ちたと述べた。なぜなら、これらの製品ではより多くの助力を顧客が必要とするため複雑な取引となりがちだからだ。他方、自宅で仕事をしたり学習したりする人たちが増えた結果として iPad と Mac の売り上げは急増した。(2020 年 10 月 29 日の記事“Apple の Q4 2020、Mac と iPad 好調、売上げは記録更新だが、減益となる”の中で私たちの方が先にこの傾向を指摘している。) 言い換えれば、パンデミックの結果として売り上げが下がった Apple 製品もあった一方で、かえって恩恵を受けた製品もあったということだ。

店舗が閉店したことにより、Services ビジネスの AppleCare 部分も悪影響を受けた。また、広告が減ったことでサービス収益も減少したところがあった。けれども Services 部門のエンターテインメント側面 (Apple Music、Apple TV+、その他) が、ロックダウンや、エンターテインメントの他の選択肢が減った結果としてその減少を補うに余りある増加を見せた。ここでも、収益が減ったサービスもあった一方で、大幅に上昇したサービスもあった。

Apple はただ単に多様な製品品目を揃えているのみならず、物理的販売とオンライン販売の両面で裏打ちされた強力な製品品目を多様に揃えることで、困難な時にさえもバランスの取れた収益を確保できる。例えば Dollar General のような従来型の小売店ならば閉店によって大打撃を受けるだろうが、Apple は店舗での売り上げ低下をオンラインストアで簡単に吸収することができる。Netflix の生き死には購読者数にかかっているが、Apple には保証期間延長の購読者数の減少を埋め合わせるものとして音楽サービス、オリジナルビデオコンテンツ、フィットネスサービス、さらにはクレジットカードさえも揃っている。HP は PC やプリンタの売り上げがなくなれば会社として成立し得ないが、Mac の売り上げが落ちたとしても必要に応じて Apple の他の製品のお陰で問題なく事業が継続できることだろう。

Apple の復興の根幹を成していた iPhone でさえ、それのみでこの会社の運命を左右する訳ではない。そのことは大きな動揺のあった Q2 2020 が実例となる。他のすべてのカテゴリーが低下した一方で、サービスとウェアラブルの力で Apple はほんの少しだが成長をみることができた。(2020 年 4 月 30 日の記事“Apple の Q2 2020、予想とは“かなり異なる四半期”となる”参照。) この会社は、何百万台もの既存の iPhone に対するサービスやアクセサリーを収益化することができ、Mac と iPad の売り上げによって財務成績を強化することができる。

Apple Q2 product revenue 2018-2021

図表は嘘をつかない。COVID-19 のストレス要因は Apple をますます強くすることとなった。(2021 年 7 月 27 日の記事“Apple の Q3 2021:荒稼ぎ続く”参照。) これは決して Apple が Q3 2020 に急降下し Q3 2021 がそれとの比較で良くなったということではない。図の棒グラフはほんの少しだけ Q3 2020 で上昇し、Q3 2021 には爆発的に上昇して、過去のすべての Q3 を見下ろしそびえ立っている。

Apple Q3 product revenue 2018-2021

Apple は未来へ

Apple はサプライチェーンを確保しているゆえに robust (頑丈) であり、強力な製品を多様に備えているゆえに antifragile でもある。では、この強大な Apple を脅かすものはあるのだろうか? いくつかの懸念が考えられる:

そうは言っても、2020 年から 2021 年にかけての Apple の実績を見れば、私は Apple の未来をそれほど心配する気にはなれない。私に関する限り、"APPLE IS DOOMED" (Apple の運はもはや尽きた) という冗談は、皮肉として言われるものでさえ、既に死に絶えた。Apple は必ずしもいつも私たちの望む通りにはしてくれないかもしれないが、会社が生き残るため、そして繁栄するために、必要となることをするだろう。たとえ、最悪の状況下においても。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

訳: Mark Nagata   

ScreenFlow 10.0.3

ScreenFlow 10.0.3

Telestream が ScreenFlow 10.0.3 を出した。最近出されたメジャーアップグレードに続く、メンテナンス・アップデートだ。このスクリーンキャスト録画およびビデオ編集アプリは今回、カメラ録画用の AVFoundation フレームワークを追加し、欠落していたビデオフィルターを元に戻し、ユーザーが選択したものと違うスクリーンが示されていたバグを修正し、複数ポートのハブやドングルに接続されていると USB ウェブカメラの録画映像がぎくしゃくした問題を解消し、ループ録画に緑色のアーチファクトが残った問題に対処し、補助スクリーンの録画ができなかった問題を解消した。(新規購入 $149、アップグレード価格あり、85.4 MB、リリースノート、macOS 10.15+)

ScreenFlow 10.0.3 の使用体験を話し合おう

ExtraBITS

訳: Mark Nagata   

Wall Street Journal のビデオが TikTok の厄介なアルゴリズムを調査

ビデオ中心のソーシャルメディアサービス TikTok は、Facebook や Twitter のように個人と個人の結び付きを扱ったりはしない。その代わりに、TikTok はその秘密のアルゴリズムが下した判断に基づいて、ユーザーが観たいと思われるビデオを次から次へとユーザーに見せる。TikTok ユーザーたちの証言によれば、驚くほど短時間のうちに恐ろしいほど的を絞った内容のビデオを見せられるようになるという。いったいどうやってそのアルゴリズムはこれほど素早く判断を下せるのか? Wall Street Journal の調査チームが、その判断が主としてユーザーが特定のコンテンツをどれだけ長い時間観ていたかに関係していることを明かす。当然ながらそこでの問題は、人々に迷いを起こさせたりもう一度見直したいと思わせたりするコンテンツだとしても必ずしもその人がそれを観たいと思っているとは限らず、それは単にそのコンテンツがその人の注意を引いたということに過ぎないという点だ。高速道路の反対車線で交通事故があれば、誰もが思わず見つめてしまうけれども、それは決して交通事故を見たいと思っている訳ではない。この Wall Street Journal のビデオは非常に興味深く、アルゴリズムが私たちの行動を解釈するやり方が私たちにとって不健全な道に繋がりかねないという警告を与えるものとなっている。

Wall Street Journal video about TikTok algorithm

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