先週の Peek Performance イベントで、Apple は iPhone SE と iPad Air にスペックを大幅に向上させたアップデートを出すとともに、Mac の風景を永遠に変えてみせた。27 インチ iMac に別れを告げて、Mac Studio を迎えたのだ。これは独立したボックス型のコンピュータで、基本的に Mac mini を M1 Max と新しい M1 Ultra チップによって大幅にパワフルに変えたものだ。この Mac Studio と共に Apple は $1600 の 27 インチ Studio Display を導入した。これは $5000 もする Pro Display XDR よりも安価なモニタの選択肢として出されるものだ。これらの新しいハードウェアに対応するためと、Universal Control 機能を有効化するため、またマスクを着用したユーザーが Face ID を使えるようにするために、Apple は iOS 15.4、iPadOS 15.4、macOS 12.3 Monterey、watchOS 8.5、tvOS 15.4、それに HomePod Software 15.4 を出した。今週注目すべき Mac アプリのリリースは Audio Hijack 3.8.11、ScreenFlow 10.0.5、Lunar 5.4.3、macOS Big Sur 11.6.5 とセキュリティアップデート 2022-003 Catalina だ。
Apple 体験に対するこれらのアップデートからの最も目につく追加は、Universal Control であるが、Apple は未だそれをベータだと称している。Universal Control は、複数の Mac や iPad を同じキーボードとポインティング機器から制御させてくれ、機器間の切替えは切れ目無く行われる。少なくとも、理論上はそうである。 我々も間もなくその性能を試すつもりだ。
何時アップデートすべきか? もし Universal Control を試したい、或いは iPhone 上の Face ID がマスクをしたままでも働く様にしたいというのであれば、予期しない不具合が無いことを確かめるため数日待つ事をお勧めする。それ等の機能は何が何でもという程で無いのであれば、Apple はセキュリティ修正のどれも積極的な標的にされているとは認識していないので、1,2週間は待っても良いのでは無かろうか。
何れにしろ、これらは恐らく Apple の 2021 オペレーティングシステムに対する最後の機能リリースであろう。Apple は次のメジャーリリースを6月に WWDC で発表し、一般向けにはそれ等を9月にリリースすると思われるので、それ迄は、殆どはセキュリティアップデートと時たまのバグ修正となるであろう。
iOS 15.4
iPhone 12 かそれ以降を使っている人達に対する iOS 15.4 の目玉は、Face ID が今やマスクをかけていても働くことであろう。この機能は、Face ID を再設定することが必要で、更にもし眼鏡をかけているのであれば、眼鏡の有り無しの両方で Face ID を訓練することが求められる。何種類もの眼鏡を使い分ける人は、それ等をその訓練に付け加えることが出来る。
このアップデートは又、新しい絵文字と新しい性的に中立な Siri の声を提供し、そして 対応するアプリから SharePlay を直接始めさせてくれる ("FaceTime の画面共有と SharePlay の使い方" 8 November 2021 参照)。ようやく保存したパスワードに対してメモを付け加えられるようになり、Apple 内蔵のパスワードマネジャーの能力向上につながっている。ヨーロッパのユーザーは今や Health アプリを使って自分の EU Digital COVID Certificate をダウンロードし、そしてそれを Wallet に表示させることが出来る。
Apple は節約志向の消費者を他のもっと安価なモデルでなくこの 10.9 インチ iPad Air に呼び込むために説得力ある理由を必要としている。2020 年における理由としてこれは iPad Pro モデルの工業デザインに近付けた物理的デザイン変更を受け、当時は iPad Air 専用であった A14 Bionic チップを搭載した。(2020 年 9 月 15 日の記事“Apple、iPad Air を再設計、基本モデル iPad を更新”参照。)
今年の iPad Air は、見栄えは従来と変わらず、引き続き第2世代 Apple Pencil と互換だ。けれども内部において、とりわけ M1 チップで、Apple は説得力ある一手を放った。従来の iPad Air と同一の価格で iPad Pro と肩を並べるパフォーマンスが手に入る。言うまでもなくそれは MacBook Air、13 インチ MacBook Pro、Mac mini、そして 24 インチ iMac とも同等、これらすべてが M1 プロセッサに依存する。(ただしそのパワーを使いこなす能力について iPadOS が macOS と同等だとは言わないが。)
従来の iPad Air の A14 Bionic と比較して:
M1 の 8 コア CPU は最大 60% 高速のパフォーマンスを提供する。
M1 の 8 コア GPU は最大2倍速いグラフィックスパフォーマンスを出す。
Apple は今回の新型 iPad Air を、従来のモデルでは困難であったようなものをも使いこなせるようにしようと意図している。例えば複数の 4K ビデオストリームを編集したり、グラフィックスを駆使したゲームをプレイしたり、部屋の 3D モデルを設計し直したり、超現実的な拡張現実 (AR) を楽しんだりといったことだ。
Apple が Peek Performance イベントでお披露目したのは全く新しい Mac モデルだった。それはヘッドレスの Mac Studio で、M1 Max チップまたは新しい M1 Ultra チップで駆動され、新しい 27 インチ Studio Display と組み合わせて使うことを想定している。このスクリーンは Apple が似た名前を付けて 1990 年代末期から 2000 年代初期にかけて出したどのスクリーンともほとんど似たところがない。
この Mac Studio と Studio Display との組み合わせによって、これまで非常に人気を博してきた 27 インチ iMac は廃止となり、Apple は既にこれを製品ラインアップから削除している。また、Apple はこれから Apple silicon へ移行させるモデルはたった一つ、Mac Pro のみであると明言したが、そのモデルの発表は“また後日”とのことだ。
これらの動きにより、幅広い用途に合わせて Mac システムを組み立てるための計算式が根底からの変更を余儀無くされる。記事“Apple: 他の種類のプロのためにも Mac をデザインせよ”(2022 年 3 月 5 日) に述べた要望のすべてを Apple は満たしてはいないけれども、iMac シリーズを 24 インチモデルのみにしてしまったことにより、プロフェッショナルたちが 27 インチ iMac から離れて、自分の必要に最も適した Mac に Studio Display を組み合わせて使うようにせざるを得ないことが明確になった。
M1 Ultra は M1 Max の2倍
M2 チップを搭載した Mac が出るはずだという噂が以前から行き交っていたが、Apple は今回もまたインターネット上に書かれたものすべてを信用してはいけないということを実証してみせた。M2 チップでなく、M1 ファミリーの最後のもの、M1 Ultra チップを発表したのだ。
ただし、M1 Ultra が必要だと思う必要はない。圧倒的大多数の Mac ユーザーはこれまで M1 のパフォーマンスに十分満足してきたし、オーディオ、ビデオ、写真などの仕事をする人たちには M1 Pro と M1 Max がより多くのパワーを提供できる。その上にある M1 Ultra は、タスクの種類によっては Mac にパワーが足りないなどと誰にも言わせないだけの十分な余裕を提供するだろう。
Mac Studio は Mac mini を拡張する
でも、チップの話だけをしていても仕方がないので、M1 Ultra が使われる場所、すなわち Apple の新しい Mac Studio に話を移そう。見栄えは Mac mini を大きく膨らませた感じで、真上から見ると Mac mini と同じ 7.7 インチ (19.7 cm) 平方の正方形だが、Mac mini の高さが 1.4 インチ (3.6 cm) であるのに比べてこの Mac Studio の高さはずっと大きい 3.7 インチ (9.5 cm) だ。これほど背が高くなった理由の大部分は、M1 Max または M1 Ultra のチップを冷やしておくために必要なファンで占められているからだ。ただし Apple によればこの Mac Studio は最小限の騒音しか出さないという。
接続の面でも Mac Studio は Mac mini より進歩している。背面には 4 基の Thunderbolt 4 ポート、1 基の 10-gigabit Ethernet ポート、2 基の USB-A ポート、1 基の HDMI ポートと 3.5 mm ヘッドフォンジャックがある。802.11ax Wi-Fi 6 と、Bluetooth 5.0 を内蔵する。同時に最大 5 台のディスプレイ、つまり Thunderbolt 経由で最大 4 台の 6K Pro Display XDR と、HDMI 経由で 1 台の 4K ディスプレイを駆動できる。とは言ってもそれだけディスプレイを取り揃えるには $20,000 もかかる上にそんなに多数の大きなモニタの上でコントロールに目を配ることの困難を考えれば現実にはありそうもないが。
Apple はついに前面にもポートを設けてくれた。M1 Max モデルの Mac Studio は 2 基の USB-C ポート (最大 10 Gbps) を持ち、M1 Ultra モデルではその代わりに 2 基の Thunderbolt 4 ポートが付く。いずれのモデルにも 1 基の SDXC カードスロットが付く。
Mac Studio は現在予約注文受付中で、2022 年 3 月 18 日に出荷が始まる。ただし、Apple のイベントが終了したほんの数分後には既に出荷予定日が 4 月にずれ込んでいた。
Mac Studio にはキーボードもマウスもトラックパッドも付かないが、注文の際に Apple は既存の入力デバイスを買い換えませんかと促してくる。また、Apple は今回新しいシルバー&ブラックの Touch ID および Numeric Keypad 付き Magic Keyboard ($199)、Magic Mouse ($99)、それに Magic Trackpad ($149) を Studio Display に合わせたデザインで販売している。
Studio Display は高価だが素晴らしい
私たちの多くのために、最良のものを最後に残しておいた。長年にわたって、多くの Mac ユーザーたちが Apple デザインの 5K ディスプレイが欠落していることを嘆いてきた。27 インチ iMac には 2014 年以来高品質の 5K Retina ディスプレイが搭載されてきたからだ。Apple が 2019 年に導入した 6K Pro Display XDR の存在はこの会社が依然としてディスプレイの製作に関心を失っていないことを示していたが、最低価格が $5000 である上に Pro Stand が別売で $1000 もかかることを考えれば、そこまでお金を出せるのはハイエンドのビデオプロフェッショナルに限られていた。他方、今回新たに出た Studio Display も $1599 と決して安くはないけれども、Pro Display XDR と比べてはるかに多数のユニットが売れるのは間違いないだろう。
ポートについては、この Studio Display は 1 基の Thunderbolt 3 ポートを使って Mac に接続し (96 ワットの充電可)、周辺機器の接続のために 3 基の USB-C ポートを持つ。
多くの意味で、この Studio Display にどの M1 ベース Mac を組み合わせても私が記事“Apple: 他の種類のプロのためにも Mac をデザインせよ”で述べたリクエストの多くに対処がなされている。Studio Display は (かろうじてかもしれないが) 手頃な価格の独立 Retina ディスプレイをという要望に応えており、より良い人間工学を提供、特にスクリーンを回転させて縦向きにして使える。ポートがもっと多ければより素敵だろうが、少なくとも 96 ワットの充電ができる。それに、Face ID 対応はないけれども、ビデオ会議用に大幅に向上したカメラを持ち、Center Stage 機能まで付く。私は感銘を受けたし... 興味を惹かれた。
Mac Studio と同じく、この Studio Display も現在予約注文受付中で 2022 年 3 月 18 日に出荷が始まるが、特にあまり一般的でない受注生産オプションについては既に出荷予定日が 4 月にずれ込んでいる。
計算式を変える
27 インチ iMac はこれまであまりにも大きな地位を Mac ラインアップの中で占めてきた。私も、ほとんど 8 年間にわたって休みなくこのコンピュータを使ってきたので、Apple がこれを打ち捨てたなどとは想像すらできないくらいだ。それでも Apple はこれを打ち捨てて、Studio Display と、人によってよりどりみどりの M1 ベース Mac との組み合わせをその代わりとした。では、どの Mac を組み合わせるべきか? Mac Studio が最も明快な選択肢かもしれないが、MacBook Air なり Mac mini なり、あるいは MacBook Pro のどれかでさえ、パフォーマンスでは最も新しい 27 インチ iMac をも軽々と上回る。
だから、27 インチ iMac がもはやパフォーマンスとスクリーンのサイズ・画質との交わるスイートスポットにないのだとすれば、私のこれまでの戦略、すなわち安価なラップトップ Mac と、デュアルディスプレイを持つハイパフォーマンスのデスクトップ Mac を組み合わせるやり方を、今後は考え直さなければならないのかもしれない。現有の機器を今すぐ売り飛ばして新しい構成に移行しようとは思わないけれども、2 台の Studio Display に 14 インチの M1 Pro 搭載 MacBook Pro (これが 2 台の外付けディスプレイを駆動できる最も安価な、最小のラップトップ機だ) を組み合わせれば総費用は税込みで $5612 だ。確かに大金に見えるけれども、現行の構成、つまり 2020 年型 27 インチ iMac と M1 ベース MacBook Air、加えて 2014 年に買った Thunderbolt Display を合わせれば、何とも驚くことにそれとほとんど同じ $5587 になる。(私が最初に買った 2014 年型 27 インチ iMac はそれよりさらに $620 高かった。) 要するに、スクリーンにより多くお金を出してコンピュータに出すお金を減らしても、全体的な機能性は同レベルだということだ。ただしそれは、私が同時に一つの Mac しか使わないという前提での話だが。
でも、それは私に限っての話だ。Studio Display に M1 Ultra ベースの Mac Studio を組み合わせれば、古い iMac Pro のみならず現行の Mac Pro でさえ勝負にならない。Mac とディスプレイを分離させるのが好きな人には、Studio Display に Mac mini を組み合わせても良い選択肢となるだろう。ただし 24 インチ iMac を選ぶことで相当にお金を節約することもできる。そしてもちろん、Studio Display は最も古典的な組み合わせ、すなわちハイパワーのラップトップ Mac を仕事机に向かって作業するときのみ大画面のモニタに接続するというやり方のためには最適だ。Apple silicon 駆動の 27 インチ iMac がまだ出ないのかと待ち続けてきた人のためにあらゆる選択肢を網羅したガイドが欲しい方は、私のもう一つの記事“Which Mac Will Replace the 27-iMac for You?”(2022 年 3 月 12 日) をお読み頂きたい。
結局のところ、私は Studio Display こそが今回最も興味深い Mac 関係の発表であったと思う。いや、おそらく今年1番の興味深い発表なのかもしれない。このディスプレイで、Apple はあらゆるタイプのプロフェッショナル Mac ユーザーのためにはるかに多くの可能性を開いてくれた。
Apple が macOS Big Sur 11.6.5と、macOS 10.15 Catalina 用のSecurity Update 2022-003">セキュリティアップデート 2022-003 をリリースして、Big Sur で 19 件、Catalina で 16 件のセキュリティ脆弱性をパッチした。いずれのアップデートも複数個の AppleScript 関係およびカーネル権限関係の問題点に対処するとともに、プラグインがアプリのアクセス権を継承してユーザーのデータにアクセスできてしまう可能性があった QuickTime Player の問題を解消している。Big Sur アップデートはまた、デバイスに物理的にアクセスできる人が Lock 画面から位置情報の一部を獲得できてしまうのを防ぐために Siri 検証を改良した。これらのアップデートは Big Sur または Catalina の走る Mac 上で Software Update を使ってダウンロードできる。新たなバグが導入されていないかが判明するまで一・二週間程度待つ方がよいかもしれない。もしアップデート後に何か問題に気付かれれば、ぜひコメントで教えて頂きたい。(無料、サイズはいろいろ、macOS 11 および 10.15)
Apple の先週の Peek Performance イベントにおいてハードウェア以外で最も興味深かった発表は、Major League Baseball が Apple TV+ に登場するというものだった。野球シーズンを通じて毎週金曜日の夜に、Apple TV+ が 2 つの試合を中継する。このサービスは MLB Big Inning も提供し、MLB アーカイブコンテンツも含む。Six Colors で Apple 関係の記事を書いている Jason Snell は野球ファンでもあって、彼は今回のことが Apple TV+ にとって大きな転換点になると論じる。