Mac ツールボックスの中であまり知られていないけれども実は最も便利なショートカットと言えるものの一つは、ウィンドウのプロキシアイコンを使える機能であった。つまり、ウィンドウのタイトルの横に表示される小さなアイコンで、Finder ではこれを他の普通のアイコンと同じように使いこなすことができる。
悲しいかな、macOS 11 Big Sur において、Apple はこのプロキシアイコンをデフォルトで隠し、ウィンドウタイトル上で 1 秒間ポインタをかざせば左側からプロキシアイコンが出てくるようにしてしまった。下記の Terminal コマンドを使えば待ち時間を短くできることは発見されたけれども、それでもやはりポインタをかざすことが要求された。
私はプロキシアイコンを頻繁に使うのだが、この Terminal コマンドを紹介したオンラインのおしゃべりを見逃していた。なので、私はプロキシアイコンが出てくるまで待ちながら静かに Apple への不満を呟くのが習慣になってしまった。さらにもっとフラストレーションが溜まるのが、macOS 12 Monterey になって Apple がひっそりとプロキシアイコンを完全に復活させるオプションを提供していたという事実にも全く気付かなかったことだった。最近になってある TidBITS 読者とやり取りしながら System Preferences > Accessibility > Display に Reduce Transparency (透明度を下げる) オプションがあることを教えてあげようとしていて、私はふとそこに、初めて見るオプションがあることに気付いた。Show Window Title Icons というオプションだ。(Reduce Transparency をオンにすることで、背景から色がにじみ出て見えることがなくなり、壁紙画像に関係なくメニューバーがグレイのままになる。これは私にとってとても重要だ。)
おお何たることか、この Show Window Title Icons チェックボックスを選ぶだけで、Finder ウィンドウ (最初の画像) にも書類ウィンドウ (下の画像) にも、どちらにもプロキシアイコンが復活した。もう、ポインタをかざす必要はない! 私の生活はぐっと改善されたし、もしもこのオプションを知っていたなら、もっと早く Monterey にアップグレードする気になったのにとも思う。
Apple がこの Accessibility オプションを追加してウィンドウのプロキシアイコンを再び見えるようにしてくれたのは嬉しいけれども、デフォルトでこれを隠しているのはやはり間違いだと私は断固として思う。プロキシアイコンはそのウィンドウのコンテンツがどんなタイプのものであるかを示しており、書類についてはその書類とそのアプリとのリンクを視覚的に示している。Pages 書類のプロキシアイコンは TextEdit 書類のプロキシアイコンとも、他のアプリのものとも違って見える。これはユーザーにとって価値ある視覚的情報だ。
John Gruber が指摘するように、1998 年に Apple が Mac OS 8.5 で設けた書類のプロキシアイコンは、単なる視覚的補助ではなくて、そのファイルに対するほどんど完全機能の表現であった。同様に、Finder のプロキシアイコンも、それが代表するフォルダの完璧な代理となって、各種の操作の手軽なターゲットを提供する。クラシック Mac OS においては、プロキシアイコンがその書類の変更状態も表示していた。(BBEdit は今でもそのように動作して、macOS の設定とは無関係にプロキシアイコンを表示し、未保存の変更があればそれを薄暗くしている。) 形態と機能の両方が、場所を取らないこのアイコンに包み込まれている。
公平を期して言えば、プロキシアイコンを隠してそれを見せるにはユーザーがウィンドウタイトルの上にポインタをかざすことを強要した、そのことだけを除いて、Apple が書類ウィンドウのタイトル部分に機能性を埋め込む方法を考え直したやり方はそれほど悪くない。タイトルの脇にある下向き矢印をクリックすればポップオーバーが出て、そのファイルの改名・タグ付け・移動・ロックができる。書類に未保存の変更があれば、タイトルのすぐ下に Edited という単語が表示される。(赤いクローズボタンにはその真ん中に黒い点が出る。) だから、ひょっとすると Apple のデザイナーたちはプロキシアイコンが微妙過ぎて不要だと思ってしまったのではなかろうか。
保存ダイアログでナビゲートする: Finder のプロキシアイコンを保存ダイアログの中へドラッグすれば、ダイアログをそのフォルダへ直接ナビゲートできる。(書類アイコンを Finder ウィンドウから保存ダイアログへドラッグしてもそのフォルダへナビゲートでき、さらにそのファイル名が Save As フィールドにあらかじめ記入される。これは、不要なファイルを置き換える目的や、そのドラッグしたファイルの一つのバージョンとして新たなファイルに名付けする目的に理想的だ。)
書類を電子メールに添付する: 書類のプロキシアイコンを電子メールメッセージの中へ (あるいは Dock 上のアプリアイコンへ) ドラッグして、その書類をそのメッセージに添付する。たいていの場合、このやり方の方が Finder で書類を探したり Open ダイアログをナビゲートしたりするよりも簡単だ。また、このやり方は書類を他のアプリ (ただしその書類タイプを扱うことができるもの) で開く際にも使える。
大きな表紙をアイコンとして見られることはとても役に立つ。例えば、私の持っているのは 1997 年版の Joy of Cooking であって、その前でもその後でも無いことを指定しておきたい場合などである。
但し、Eat Your Books ライブラリにある全ての本がインデックス化されている訳では無い。自分の本棚に加えることは出来るが、そこからの検索結果を見ることは無い。それは、"十分な [数の] Bookshelves には無いため、EYB によってインデックス化されそうに無い本" に関して起こる。その場合、Request Index リンクをクリックし Eat Your Books にそれをインデックス化のやることリストに追加するよう頼むことも出来るし、その本を自分でインデックス化することを頼むことも出来る。
インデックス化されたブログはある意味で Eat Your Books の最も興味深い部分である。何故ならば、それらは Recipe Online リンクを含んでおり、そのサイトで公開された実際のレシピへと誘ってくれるからである。監修された一連の食のブログの中を検索出来るというのは素晴らしいことである。一般的な Google 検索から出てくるのは恐らく何十万にも及んでいて (しかも、その殆どは実際のレシピに行き着く前にその家族がどれ程それ等のレシピの事を思ってくれているかを長々と話している) 圧倒されてしまう。一方で Eat Your Books だと、検索の対象をその好みや専門をあなたが評価する食のブロガーだけに限定出来る。
自分の本棚にあるレシピに対しては、メモや感想を追加出来、そしてそれらをより大きな Eat Your Books コミュニティと共有することも出来るし、或いは自分のアカウント内に密かにしまっておくことも出来る。公開されたメモはこれ迄作ったことのないレシピを求めてスキャンする時には役立つこともあるが、大幅に材料を変えておきながらそのレシピはうまく出来なかったと苦情を言う人達からのコメントが時には散見される。勿論、好みのレシピをブックマークしておいて後で手早くそこへ戻る手助けとすることも出来る - 或いは、少なくともそれ等のページ番号へは。
もしオンラインレシピで好きなものに出くわしたら、ブックマークレットを使って自分の本棚に追加する事も出来る。それはそのサイトから情報をかき集めようとし、そしてウィンドウをポップアップして掴めなかった情報はあなたに追加して貰おうとする。しかしながら、レシピはライブラリに入る前に、Eat Your Books によって承認されなければならない。私はレシピを保存するのに長いこと AnyList というサービスを使ってきたが、それはとても良い仕事してくれる。TidBITS の他の人は Paprika が好きである ("FunBITS: iPhone、iPad、および Mac 用 Paprika Recipe Manager" 14 March 2014 参照)。
料理本の食欲を満たす
自分の持っていない料理本に対してブラウズすることも出来る。Eat Your Books ホームページは、本、材料、そして食に関するニュースにスポットライトを当てる。例えば、ウクライナの料理や人々を祝福する料理本の特集のようなものである。Eat Your Books はまた、新刊本のレビューや多くの独立系書店からのベストセラー本のリストも特集する。そこには私の大好きな料理本専門店である Seattle の Book Larder も含まれる。
Eat Your Books に関する批判も無い訳では無い。昔のレシピ (2015 年以前) の中にはページ番号が無いものがあり、料理本の題名だけが含まれている。それは大した問題では無い。と言うのも、実際にその本を開く時には、目次や索引を見られるからである。
少し気になるのはナビゲーションである。ログインした時、ホームページに My Bookshelf > Recipes に対する検索フィールドが表示されれば嬉しいのだが。しかし、My Bookshelf ページに対してブックマークを作成し使うのはそう大変な話ではないし、そのページの検索フィールドは Recipes に対してデフォルトとなっている。
でもそういう不満は細かなことだ。Eat Your Books は究極的にはデータベースであるが、その心はメンバーによって共有された料理本に対する愛である。そのサイトは、料理人の人生をより容易でそして実際の世界とより一体化されたものにしようとはしているが、良い料理本の美しさと物語を語ってくれるという属性を取り込もうとはしていない。一方で、それは私が覚えられそして手が届く料理本から限られた数の料理を繰り返す悪習から抜け出す手助けとなっている。
Universal Control は Apple の 2021 年のオペレーティングシステムで最も先延ばしされた機能かもしれず、やっと今になって、macOS 12.3 Monterey と iPadOS 15.4 で登場したものだが、同時にこれは最も興味深い機能だとも言える。Universal Control を使えば、1 台の Mac に接続した 1 つのキーボードとポインティングデバイスで、複数の Mac や iPad をコントロールできる。この機能は macOS 12.3 と iPadOS 15.4 で登場しているけれども Apple はこれをベータ版だとしており、それはユーザーがまだ不具合に遭遇するかもしれないことを意味する。
たとえベータ版だとしても、使ってみた体験はほぼシームレスだ。いったん Universal Control を System Preferences > Displays でセットアップしておけば、ポインタを Mac から別の Mac または iPad へ移したりまた戻したりでき、まるでそれぞれが外付けモニタであって全体として拡張された Desktop になっているかのようだ。キーボードのフォーカス (つまりキーをタイプするとどのデバイスに送られるか) はポインタに従うので、ポインタを別のデバイスへ移してからそこでアプリをクリックすれば、まるでそれを直接使っているかのような感じの挙動になる。iPad ではトラックパッドとハードウェアキーボードを使っているのと同じに挙動する。(2020 年 3 月 28 日の記事“iPad、全面的なトラックパッドとマウスサポートを得る”参照。) さらに嬉しいことに、ファイルやその他の項目をデバイス間でドラッグすることもできる。
Universal Control と Sidecar をはっきり区別しておくことは重要だ。Sidecar は、iPad を Mac の補助ディスプレイとして使えるようにする Apple のテクノロジーだ。(2019 年 10 月 21 日の記事“Catalina の Sidecar 機能で iPad を Mac の第2モニタにする”参照。) Sidecar も引き続き存在しており、実際 Displays 環境設定枠の中で Universal Control と同じメニューに並んでいる。同様に、Mac では AirPlay を使ってスクリーンを見ることと Universal Control を使ってスクリーンをコントロールすることを区別する必要がある。この点についてはあとで詳しく述べる。
Universal Control の起源がどこにあるのかは知らないが、これは決して新しいアイデアではない。少なくとも、Mac を別の Mac からコントロールする手段は昔から存在している。今から 15 年前、Adam Engst は Teleport という名前のユーティリティを使ってまさにこの機能を実現していた。(2007 年 8 月 27 日の記事“TidBITS 御用達ツール: Teleport”参照。) さらにもっと興味深いことに Teleport の開発者 Julien Robert は当時 Apple で働いており、報道によれば今もまだ働いているという。かすかに聞こえてきたところでは、その後も Teleport は Apple 社内で内輪のアップデートさえ受けていたらしい。それからまた、何年か前に Teleport はオープンソース化され、John Britton が維持しており、すべてのマシンで macOS 12.3 を走らせているのでない人たちのために Mac 専用のオプションを提供している。
Universal Control のシステム条件
始める前に、お持ちのデバイスが Universal Control に対応していることを必ず確認しておこう。ハードウェアのサポート対象は数年前のものまで遡るが、Universal Control は必ずしも Monterey を走らせられる Mac や iPadOS 15 と互換な iPad のすべてに対応している訳では ない。さらに、次のことが満たされる必要もある:
すべてのデバイスが同じ iCloud アカウントにサインインしていること
Bluetooth と Wi-Fi がすべてのデバイスで有効になっていること
Handoff が Mac 上では System Preferences > General で、iPad 上では Settings > General > AirPlay & Handoff で有効になっていること
Apple ID が2ファクタ認証でセットアップされていること
各デバイスがお互いに 30 フィート (10 メートル) 以内にあること
Mac も iPad もインターネット接続を共有していないこと
Universal Control では、Mac から一度に最大 3 台までの追加のデバイスに接続してコントロールできる。その 3 台は好きなように混ぜることができ、3 台の他の Mac でも、3 台の iPad でも、2 台の Mac と 1 台の iPad でも、あるいは 2 台の iPad と 1 台の Mac でもよい。それだけの数のデバイスを割り当てて使いこなせるだけでも困難だろうから、おそらく台数はこれで十分以上だろう。忘れないで頂きたいが、Universal Control は Mac から動かす必要があるので、少なくとも 1 台の Mac は必要だ。
Universal Control のセットアップ
Universal Control のセットアップは簡単だ。すべての Mac 上で System Preferences > Displays を開き、Universal Control をクリックする。そこにあるチェックボックスを3つとも選択しておく。最初のチェックボックス「カーソルとキーボードを近くにあるすべての Mac または iPad 間で移動することを許可」が、Universal Control のメインスイッチだ。
iPad 上では、Settings > General > AirPlay & Handoff へ行き、Cursor and Keyboard を有効にしておく。
必要なことはこれで全部かもしれない。それは「ディスプレイの端を通過させて近くにある Mac または iPad に接続」チェックボックスのお陰だ。これが選択されていると、ポインタを Mac から他のデバイスへ移動させて接続することができる。ちょうど、外付けディスプレイを使っている場合と同じ感じだ。どの Mac や iPad が利用可能かは System Preferences > Displays を見れば分かる。
Displays 環境設定枠で、ディスプレイのサムネイルをドラッグすることで机の上の現実の位置関係とできるだけマッチするように配置することができるし、そうしておくべきだ。そうしないとデバイスからデバイスへと滑らかにポインタを動かすことができなくなる。補助ディスプレイは Mac の主ディスプレイにぴったり隣接するけれども、Universal Control デバイスを示すサムネイルは少し間隔を空けて置かれる。下の図をご覧頂きたい。
もしも望んだ Mac や iPad が Displays 環境設定枠に自動的に表示されなければ、Add Display ポップアップメニューから "Link Keyboard and Mouse" の下のところでコントロールしたいデバイスを選ぶ。「近くにある Mac または iPad に自動的に再接続」チェックボックスを選択している限り、この手順を繰り返す必要はないはずだ。
Add Display ポップアップメニューの "Mirror or Extend to" セクションに注目して頂きたい。ここで Apple は Sidecar へのアクセスを提供する。これによって iPad を Mac の補助ディスプレイとして使うことができ、Mac の Desktop をミラーしたり拡張したりできる。また、Monterey の走る Mac (AirPlay 受信機として挙動できる) や Apple TV もこのメニューにリストされる。iPad や Mac は、それぞれこのメニューの2つのセクションのうち片方でしか選択できない。言い換えれば、iPad や Mac を Universal Control 経由でコントロールしつつそれと同時に Mac の補助ディスプレイとして使うことはできない。Universal Control ではそのデバイスのネイティブなインターフェイスを使うが、Sidecar/AirPlay ではそのネイティブなインターフェイスを Mac の補助ディスプレイの背後に隠してしまうので、これは当然のことだ。Universal Control と Sidecar/AirPlay との間で切り替えて行き来しても何ら害はない。
もし自動接続が働かなければ、Mac の Control Center で Display をクリックして "Link keyboard and mouse to" の下のところでデバイスを選んで別の Mac や iPad に接続することもできる。それぞれのデバイスのアイコンは、単に利用可能なだけの状態であればグレイに表示されているが、選択すれば青く変わる。
Universal Control がまだベータ版の段階にある以上、荒削りな点があっても驚くには当たらない。ある時点で、2番目の iPad を追加することができなくなって、2 台のはずのデバイス数が上限に達しているからと言ってきた。そこで既に接続されていた MacBook Pro をスリープさせてみると、今度は2番目の iPad が追加でき、それから MacBook Pro をスリープから目覚めさせると 3 台のデバイスがすべて問題なく使えた。
Universal Control を使う
Mac で複数モニタを使ったことがある人なら、即座に Universal Control がお馴染みのものに見えることだろう。Displays 環境設定枠でスクリーンをどのように配置したかにもよるが、ポインタをスクリーンの外へ、別のデバイスの方向へ動かせば、ポインタがそのデバイス上へジャンプする。Mac でも iPad でも働き方は同じだ。ポインタがいったん別のデバイスのスクリーン上に来れば、あたかも直接操作しているかのようにそのデバイスを使うことができる。
ご想像頂けると思うが、Mac から iPad へ移るのは少々ぎこちない。ポインタが矢印から小さな丸に変わるし、iPadOS のポインティングデバイスのパラダイムは伝統的なポインタとタッチスクリーンの両方を混合したものだからだ。とりわけ、ポインタが Home アイコンやその他多くの他のコントロールに引き寄せられるので、それが選択されて強調表示になりがちだ。いずれにしても基本的な使用の範囲内でならば Universal Control はちゃんと動作する。
あと2つの機能を Universal Control は提供していて、これらを使ってデバイスからデバイスへと手軽にデータを動かすことができる。まず1つ目として、デバイス上で Command-C を使ってデータをコピーしてから、ポインタを別のデバイスへ移し、そちらのデバイス上のアプリの中へ Command-V でペーストすることができる。コピー&ペーストが基礎的なテクノロジーであることを考えれば、この上なく歓迎すべき機能だ。Universal Control が実際どのようにクリップボード共有を実装しているのか私たちはまだ知らないが、感じとしては従来の Apple の Universal Clipboard テクノロジー (こちらもデバイス間でクリップボードを共有する) よりも高速で、信頼できるようだ。
2つ目の方法として、2 台の Mac の間で、さらには Mac と iPad の間で、項目をドラッグ&ドロップすることができる。最も分かりやすいのは Mac から Mac へファイルを移すことだが、Apple はスケッチしたものを iPad から Mac へドラッグしたり、Mac から写真を iPad 上の Messages の会話の上へ移したりすることもできると述べている。でも、Mac 上の Messages の中へドラッグする方が簡単なので、この Messages の実例はあまり意味があるとも思えない。
Universal Control で設定されている個々の Mac はそれぞれ別々に動作しているのであって、追加した Mac は決して補助ディスプレイでは ない ので、Mac に外付けモニタを取り付けた場合と違って Mac から Mac へウィンドウをドラッグすることはできない。
Universal Control の予期せぬ挙動
Universal Control は非常にうまく働くけれども、実際に使ってみると奇妙なことが起こるのは避けられない。
すべてのデバイスは (ほとんど) 同等の参加者となる: Universal Control をいったんオンにすれば、どれが主デバイスでどれが補助デバイスだとかいう区別はもはやない。例えば iMac と MacBook Pro を並べて使う場合、iMac のキーボードやマウスを使って MacBook Pro をコントロールできるけれども、MacBook Pro のキーボードやトラックパッドを使って iMac をコントロールすることもできる。同じように、接続された iPad のトラックパッドやキーボードを使って Mac をコントロールすることもできる。
ポインタを見失う: 複数個のスクリーンを使っていると、ポインタを見逃してしまいやすい。Mac 上では、ポインタを「シェイク」してサイズを大きくすれば見付けやすくなる。けれどもこの機能は iPad 上のポインタには使えない。この問題を解決するためのちょっとした技がある。別の Mac を使ってポインタを動かせば、ポインタがその Mac のスクリーンの中央に出現するのだ。例えば iMac と MacBook Pro を一緒に使っていたとして、ポインタを見失ったけれども MacBook Pro 上で何かをクリックしなければならなかったとしよう。その場合、単に MacBook Pro のトラックパッドに触るだけで、ポインタがそのスクリーンの中央に来るので、それを好きな所へ動かせばよい。
キーボードショートカットの衝突: Mac のキーボードを使って iPad をコントロールする際に細かな混乱の種となるものの一つが、同じキーボードショートカットがそれぞれのプラットフォームで異なる働きをする場合があることだ。例えば、iPad を使っていて Command-H を押すと、Home ボタンを押すことになる。けれども Mac 上で Command-H はウィンドウを隠す。現在どちらのデバイスがキーストロークを受け取っているのかを確実に知っていないと、予期せぬ挙動に驚かされるかもしれない。
クリックして Mac のポインタのフォーカスを得る: フォーカスの問題は Mac 同士の間でのマウスクリックにも影響する。まず最初のクリックでクリックされたアプリがアクティブになって、それからその次のクリックでボタンやリンクが押されるからだ。けれどもこれは Mac 上であっても必ずしも常にそうなる訳ではなく、私たちが iPad でテストした限りでは一度もそうならなかった。私たちの想像だが、Universal Control を使う人たちは新しいデバイスへポインタを移す度に必ずクリックする習慣を身に付けることになるのではなかろうか。
iPad を使う場合はキーボード中心のスリープに: 例えば Mac を 1 分間使わないとディスプレイをオフにする設定にしていたとしよう。それから Universal Control を使って iPad 上で作業していたとしよう。キーボードを使っている限り、問題はない。けれどもただ読書をしていて、トラックパッドかスクロールホイールでスクロールしているだけならば、1 分が過ぎれば Mac がディスプレイをオフにし、Universal Control の接続が切れてしまう。それからキーを押しても、Mac が目覚めてログイン画面を出すだけだ。どうやらこの問題は iPad を使っている場合にのみ起こるようだ。別の Mac を使っているだけでは、スクリーンのスリープ設定に関係なく両方のスクリーンがコントロールされ続ける。だから、Universal Control を頻繁に使うつもりがあるのなら、iPad をコントロールする予定のある Mac 上では System Preferences > Energy Saver/Battery で「ディスプレイをオフにするまでの時間」を長くしておくことを考えた方が良い。
すべてのドラッグが働く訳ではない: 私は Mac 上の Photos アプリから iPad 上の Files アプリへ写真をドラッグすることができたが、iPad 上の Files から Mac 上の Signal へ写真をドラッグしようとしてもうまく行かなかった。私の想像だが、これは個々の開発者がそれぞれのアプリに調整を加えて、別のデバイスからドラッグされた項目を受け入れられるようにしておく必要があるからなのだろう。そのような状況でもコピーしてからペーストすればうまく行くかもしれないし、どんな場合でも AirDrop や iCloud Drive を使うことは可能だ。
ここでも、これがベータ版であることを忘れてはならない。遠隔の Mac や iPad が突然クリックを受け付けなくなったり、Universal Control から完全に抜け出してしまったりということも何度か経験した。iPad については、いったんスリープさせてから目覚めさせればたいてい問題が解決した。それがうまく行かなければ、Displays 環境設定枠に戻り、Add Displays ポップアップメニューでその扱いにくいデバイスを選択し直すことになる。この種の問題点は Apple が macOS と iPadOS をアップデートすることでいずれ消え去ると願いたい。
Universal Control は宇宙の間隙を埋める
Universal Control はとてつもなくクールな機能だ。たとえそれが、ただ単に Teleport を大衆の手に取り戻し、さらに iPadOS にまで拡張しただけのものであったとしても。単純な事実を言えば、Teleport は長年にわたってよく知られたソリューションにはなり得ず、複数の Mac で同じキーボードとポインティングデバイスを使いたいと思う人たちは (その機能に応じて) $50 から $500 もするハードウェアスイッチを使うことを余儀なくされていた。
Universal Control によって、Apple はそのエコシステムに一つの基本的な機能を追加しようとしており、その機能が異なるデバイスの間にさらなる統合をもたらすことになる。Apple はあなたが Mac に代わって iPad を使うようになることを望んでおらず、あなたが iPad と Mac の両方を買うことを望んでいる。そして今や、その両者を一緒に使うことが従来よりもっと手軽にできるようになる。多くの人たちにとって、Mac と iPad の間を手軽に行き来できるだけでもとてもありがたいことになるだろう。それこそが、今後最も一般的な使用事例となるに違いない。
複数の Mac を同時に使うことでスクリーンの面積を増やすことができる、それこそが Universal Control の価値だと思う人たちも多いだろう。その目的のために新しい Mac を購入するのはたぶん無駄だろうが、例えば新しい Mac Studio を買った際に古い MacBook Pro を便利に使うためには最適の方法かもしれない。当然ながらその際の難点は、双方の Mac を最新のものにし続けて、両者の間でデータを同期するためのベストな方法を見つける必要があることだ。
あともう一つ言い添えると、もしあなたが iPad を多く使うタイプの人ならば、Mac には存在しない、あるいは Mac ではあまりうまく動作しないアプリを選んで、仕事机の上で iPad をそのアプリ専用のものとして使うのも良いだろう。また、Universal Control は iPad にしかないコンテンツ、例えば Apple Pencil で描いた図面のようなものをうまく Mac へ持って来られる手段ともなるかもしれない。
皆さんはどんな風に Universal Control を使おうと思っておられるだろうか? どうぞコメントに書き込んで頂きたい。
Mac Studio の初期購入者たちのところにユニットが届き始めるや否や、早速この Apple の最新の Mac をばらばらに分解して中に何が入っているか調べる人たちが現われた。その多くが Mac Studio の SSD が物理的に取り外しできるようになっていることに気付いて唖然としたが、SSD を交換すると Mac Studio が起動しなくなることを知ってがっかりした。ドライブをソフトウェア内でロックしている、さらにはコンピュータを文鎮化していると Apple を非難する人たちもいた。
けれども Ars Technica の Andrew Cunningham が説明するように、それは事実ではない。あらゆる SSD には2つのコンポーネントがある。マシンへのインターフェイスとして挙動するコントローラと、フラッシュストレージ自体との2つだ。Apple は今回、SSD コントローラを自社独自のチップの中に内蔵した。M1 ファミリーのチップすべてと、Intel ベース Mac で使われる T2 セキュリティチップだ。そして、Mac Studio の中にある SSD は単なるストレージそのものであって、コントローラを含んでいない。その後 iFixit は Mac Studio のドライブを交換することに成功したので、それはつまり Mac Studio のストレージは修理可能であるということだ。必要なのは Apple の SSD ハードウェア設計に合わせることだけだとすれば、いずれ OWC その他のベンダー各社が互換な Mac Studio 用 SSD を出してくれるだろうと期待できる。しかしながら、Apple 独自仕様のチップがその種の製品を妨げるという可能性もある。
私たちは 2 台のベースモデル Mac Studio のユニットでそれぞれのドライブを入れ替えることができましたので、ストレージの交換は可能です! ただ、両方のドライブを片方のユニットで動かすのはまだできていません...幸運を祈って下さい。 pic.twitter.com/i2wcbppluf