Apple が追加出来るもう一つの役に立つ機能は、新しい場所で Maps を開く度に、道路に関する鍵となる地元の規則を集めた画面である。Right-on-red (赤信号でも右折可) 規則は一番明らかなものであろう。何故ならばそれは土地によって大きく変わるからである。我々も Vancouver で幾つかの地元特有のもの (我々にとっては) に出会った。例を挙げると、点滅する青信号で、それは信号は歩行者によって始動されたことを示し、交差する道路上の車に対しては一時停止の標識しかない。Ontario での点滅青信号は歴史的に保護された左折 (日本での矢印青信号と同等) を意味するので、これは結構混乱する。我々を本当に面食らわせたのは黄色の交通信号の意味であった。 British Columbia では、黄信号下では停止するのが危険でない限り交差点に入るのは違法である。同じことが米国の幾つかの州では当て嵌まるが、ここ New York では、黄色は間もなく赤に変わるということしか意味しない - 赤に変わる前であれば、交差点に入っても反則切符の対象にはならない。私が黄信号を無造作に (しかし安全に) 通り過ぎた時、対向する左折車は私に腹立てている様に見えた。と言うのも、彼らは左折を開始出来るはずだというタイミングで妨害されたからである。
T-Mobile は国境越えの旅でもよく働く
最後に、これは昨年の8月に AT&T から T-Mobile に切り替えてから初めての Canada への旅行であった。我々がこの切替えをしたのは Tristan が Vancouver に引っ越す直前であったが、それは T-Mobile の Canada と Mexico に対する内蔵のサポートのお陰で、彼の iPhone を追加費用無しでそのまま使えるからであった。我々は、パンデミックが許せば、Canada へはもう少し頻繁に訪問出来るのではないかと思っていたし、AT&T の場合だと、我々の iPhone を引き続き使うには何時も何か特別なことをしなければならなかった ("カナダへの旅行でデータ量超過を防ぐ方法" 31 July 2015 参照)。我々のこの前の 2020 年の旅では、日額 $10 の International Day Pass が必要であった。今では AT&T はもっと良いローミングプランを出しているかも知れないが、一週間の旅でセルラー接続のために余分に $140 を払うというのは気持ちの良いものではなかった。
これから紹介する機能のすべてが必ずしも悪いものではないけれども、確実に悪いものもいくつかあって、それ以外のものは単純に不可解だ。言ってみれば WTF... いや、何という機能 (f...eature) を Apple は考えてたんだ?
Apple Pay Later
アメリカ人の3分の2がギリギリの生活をしていると言われる今、Apple は Apple Pay Later という機能で彼らに支払い能力以上のものを買わせようとしている。この機能は、購入価格を無利息の4回分割払いにするというものだ。完済するまでに6週間の余裕がある。その通り、あなたは読み間違いなどしていない。つまりは、Apple Pay Later での買い物は必ず6週間以内に支払いを済ませなければならない。じゃあ何のためのものなんだと言いたい。例えば iPhone や Mac といった高額購入をして、それを 12 か月の分割払いにするというならば話は分かる。とりわけ、緊急にマシンを交換しなければならないような場合には必要な方法だ。でも、Apple が Buy Now, Pay Later (今買って支払いは後) の業界に足を踏み入れることでユーザーが賢明な財務決断をするためにどう役立つのか、私たちにはどうしても合点が行かないし、Apple の印象を良くするとも思えない。次に起こるのは何だろう? Apple 消費者金融か?
事態をさらに悪化させているのがセットアップの体験をカスタマイズできることで、関連するアプリ、壁紙、ウィジェットの提案が表示され、さらにはアプリや人々からの通知を非表示にできる新しい設定もある。平均的なユーザーは今でも既に自分のデバイスが特定の挙動をする意味を測りかねているのだから、このような Focus 機能は Apple 体験をますます予測不可能なものにするだけではなかろうか。Focus 機能のせいで重要な通知を受け取れなくなったり、データが隠されたりしても責任を取る用意があるという人にはどうぞご自由にと言っておくが、大多数の人に対しては Focus 機能の設定を睡眠中と運転中の Do Not Disturb 設定のみにしておくことをお勧めしたい。
Freeform
Apple は Freeform という新しいデジタルホワイトボードアプリをプレビューした。Apple によればこのアプリは年内に登場するという。(言い換えれば、macOS 13 Ventura、iOS 16、iPadOS 16 の当初リリースに含まれていなくても驚いてはいけないということだ。) デジタルホワイトボード自体に悪いことは何もない。既に Google、Microsoft、その他多くの会社が製品を出していて、巨大なカテゴリーを形成している。でも、いったいなぜ Apple がそこに参入する必要があるのか? グループの共同作業のための生産性ツールでは既に GoogleやMicrosoft の製品が支配的な存在なのだから、それよりも Apple 製のツールを使いたいと思うのは Apple 中心の性格を最も強く打ち出したビジネスや学校などに限られることだろう。標準的なツールでできる範囲を超えたものを求める人は皆、代替製品の選択肢が幅広くあることを知っている。Apple が示してみせたデモ用のホワイトボードは確かにかつて他のどの競合社やユーザーが作り出したものよりはるかに美しいけれど、Apple はそれ以上の何を提供するつもりなのか?
これはごく手早く発表されただけだったが、私たちはすぐに頭を掻きたくなってしまった。どうやらそのアイデアは、リスナーの身体的特徴がその人の空間認知に影響を与えるので、その要素を取り入れることで空間オーディオのサウンドがより真に迫ったものになるという点にあるらしい。聞いたところでは、これが Head-Related Transfer Functions (HRTF、頭部伝達関数) と呼ばれるもので、iPhone の TrueDepth カメラを使ってデータを取り込むことで、Apple は通常ならば何万人もの人々のデータを組み合わせた平均的な HRTF が使われるところをパーソナライズできるのだという。それが可能か否かを論じるつもりはないが、空間オーディオは本当にそんなに大事なことなのだろうか? そのパーソナライズの機能は、iPhone を訓練しなければならないほど (ましてや Apple が開発に多大な努力を注がなければならないほど) の違いを生み出すものなのか? もっと多くのユーザーにより大きな影響を与えるような事柄で Apple が努力を注ぐべきものが、まだまだたくさんあるのではないか? (2022 年 5 月 19 日の記事“将来の Apple オペレーティングシステムに対する5つの改善策”参照。)
FaceTime の Handoff
FaceTime の通話中に Apple デバイスから別の Apple デバイスへ切り替えられるというこの機能は簡単に実装できるものであったことを願いたい。そもそも、そんな機能があまり使われるとは思えないからだ。Apple の宣伝文句では魅力的に聞こえるけれども、よく考えてみればあまり意味を成さない。家の外にいて FaceTime 通話を受けて、それから鍵束を探って玄関のドアを開けて、荷物を下ろし、靴とコートを脱いで、ドタバタしながら Mac の前に来て、スリープから目覚めさせ、質の悪いカメラを備えたコンピュータに通話を切り替えるって、一体誰がわざわざそんなことをするだろうか? (もしも iPhone が自動的に連携カメラ機能を呼び出してそのまま Mac のウェブカメラとなってくれたならばほんの少し受け入れたい気持ちになるかもしれないが。) 普通の人は、いったん通話を切ってから改めてかけ直すだろう。主たる利点は何だろうかと考えてみれば、ソファに座りながら iPhone で受けた FaceTime 通話を仕事机の Mac や iPad に切り替えれば人間工学的に良い姿勢で通話ができるだろう。確かにちょっと素敵だが、世界を変えるような進化ではない。
watchOS 8 が動作できる Apple Watch モデルのうちで、Apple が watchOS 9 対応モデルのリストから外したのは Apple Watch Series 3 のみだ。これには少々反感を覚える。なぜなら Apple は今もまだ Series 3 の販売を続けているからで、それはつまり今から数か月後にその Apple Watch を購入しても、そのほんの数週間後には watchOS 9 にアップデートできなくなる可能性があるからだ。
Apple Watch Series 7
Apple Watch Series 6
Apple Watch SE
Apple Watch Series 5
Apple Watch Series 4
watchOS 9 の機能のうち 2 つは特定のモデルの Apple Watch を必要とする:
Apple Watch ミラーリングは iPhone から Apple Watch をコントロールできるようにする機能だが、Apple Watch Series 6 またはそれ以降を要する。
オンスクリーンのキーボードは現在 Apple Watch Series 7 で使えるもので、watchOS 9 ではフランス語、ドイツ語、イタリア語、日本語、ポルトガル語、スペイン語への対応が追加される。
Apple が今年の後半に出荷する新しい Home アプリでは、外出中に HomeKit アクセサリーに接続する目的のために iPad を Home ハブとして使えなくなる。 つまり、ハブとして挙動できるのは Apple TV または HomePod のみとなる。がっかりする HomeKit ファンはいるかもしれないが、これは最善の結果が得られるようにするためだ。電源に接続され、持ち運ぶことのないデバイスのみにハブを限定することは理に適っている。
iPhone 11 かそれ以降、A12 Bionic かそれ以降を搭載した iPad、または Apple silicon を搭載した Mac では、音声入力で 自動的に句読点を追加する ことができる。
また、A12 Bionic かそれ以降の iPhone や iPad、あるいは Apple silicon を搭載した Mac で 音声入力を使って絵文字を挿入する こともできる。
iPad の表示スケーリング
iPadOS 16 では ユーザーインターフェイス要素を縮小する (つまりディスプレイのピクセル密度を増やす) ことでスクリーン上により多くのものを詰め込むことができるが、この機能は M1 プロセッサを搭載した iPad を必要とする。つまり iPad Air (第5世代)、iPad Pro 12.9-inch (第5世代)、iPad Pro 11-inch (第3世代) だ。
iPad の仮想メモリスワップ
仮想メモリスワップはデスクトップのオペレーティングシステムではもう何年も前から標準的な機能であった。メモリの内容の一部をローカルなストレージに一時的に移すことで RAM を解放しようとするものだ。iPadOS 16 では仮想メモリスワップに対応することでメモリ要求の強いアプリに最大 16 GB のメモリを分け与えることができるが、これは M1 搭載の iPad でしか働かず、最低限 256 GB のストレージを持つ iPad Air (第5世代)、あるいは iPad Pro 12.9-inch (第5世代)、iPad Pro 11-inch (第3世代) が必要となる。
Metal 3
Apple は WWDC キーノートの中で Mac のゲーミングについて大きく取り上げて、ハードウェア加速されたグラフィックスのための Metal 3 API を紹介した。Mac 上では、Metal 3 は Apple silicon、AMD Radeon Pro Vega シリーズ、AMD Radeon Pro 5000/6000 シリーズ、Intel Iris Plus Graphics シリーズ、あるいは Intel UHD Graphics 630 を必要とする。現実的に、今後いろいろなゲームが Metal 3 を採用するにつれて、それがどの Mac に対応しているかを明確に述べる必要が生じるだろう。
リファレンスモード
ビデオのプロは、Liquid Retina XDR 搭載の 12.9 インチ iPad Pro を 正確なカラーを保証するためのカラーグレーディング用ディスプレイ として使うことができる。Sidecar 機能を通じて Apple silicon Mac とペアリングしてリファレンス用モニタとして活用することもできる。
Siri
アプリの中で Siri がどんなアクションを実行できるのか知りたくなった場合には、Siri に "What can I do here?" と尋ねる ことができる。Siri を使って電話を切ったり、あるいは テキストに絵文字を挿入したり することもできる。また、Apple は オフライン対応 機能も充実させており、インターネットを通じたやり取りをせずに HomeKit アクセサリーをコントロールしたり、Intercom 機能にアクセスしたり、Voicemail のやり取りをしたりもできる。これらの機能には A12 Bionic を備えた iPhone か iPad が必要であって、macOS 13 Ventura には登場しない。