Thoughtful, detailed coverage of everything Apple for 32 years
前週号 | 日本語版ホーム | 次週号

#1614: 2022 年版 OS のシステム要件、WWDC 2022 で困惑した機能、カナダ旅行の技術ノート

macOS 13 Ventura、iOS 16、iPadOS 16、および watchOS 9 を走らせることができるのは、それぞれどの Apple ハードウェアなのか? 基本的な答は単純だが、個々の機能ごとに見るとそれぞれ特定の新しいハードウェアを要するものがいろいろある。そこで Josh Centers が Apple の長々しい脚注をじっくり調べて、分かりやすいリストにまとめ上げた。新しい機能の多くは歓迎すべきものだが、中には困惑して頭を掻きたくなってしまうものもある。Adam Engst が、登場予定の機能の中から問題あるものをいくつか検討するとともに、最近カナダへ旅行した経験から技術的な洞察を提供する。今週注目すべき Mac アプリのリリースは Fantastical 3.6.5 と Bookends 14.0.9 だ。

Adam Engst  訳: 亀岡孝仁  

Canada への国境越えの旅からの技術ノート

数週間前、我々はパンデミックが始まって以来初めての本格的な旅をして、Vancouver にいる息子の Tristan を訪ねた。旅はうまく行き、空港と飛行機の中 (Canada では義務)、そして避けることの出来ない室内での公の活動中にもマスクをしていたお陰で感染はしないで済んだ。4回の COVID-19 ワクチン接種も役立ったに違いない。

TidBITS にとってもっと興味深いのは、我々の前回の旅以来の旅関連の技術の変遷であった。我々は、App Clips を初めて実際に使ってみる経験をし、レンタカーの中で CarPlay を使うのを楽しみ、違法な U ターンに関して Apple Maps と格闘し、そして我々の T-Mobile の国境越えでも使えるプランのお陰で簡単にオンラインでいられた。

実際に目にした App Clip

二年前、Apple は App Clips を導入した。それは、アプリ全部をインストールすること無しにアプリ経験を与えてくれる。"iOS 14 と iPadOS 14 は Android と Newton を思わせる" (22 June 2020) で、Josh は書いた:

App Clips ではアプリをダウンロードせずにその機能のほんの一端を利用できる。Safari の中のウェブページや、iMessage や、Maps の中の場所や、さらには NFC タグや QR コードからも App Clip を起動できる。例えばあの打ち捨てられたかのようなキックスクーターを借り出すためだけにフルのアプリをインストールする必要がなくなる。個々の App Clip はサイズが 10 MB 以下と決まっており、もう要らなくなれば自動的に削除される。

それが私が App Clips について考えた最後である;私はそれに出会ったこともないし出会ったことがあるという人も知らない。しかしながら、Toronto に向けてドライブ中に給油のため Exxon Mobil の給油所に立ち寄った時、我々は支払いの方法の一つとして App Clip を宣伝するステッカーを見た。手順を追うのはちっとも面倒ではなかったが、アカウントを作るよう誘うしつこさには辟易させられた。そして、それは全く必要の無いことであった。と言うのも、その給油機は同じクレジットカードからのまっとうな Apple Pay 支払いも受け付けていたからである。従って、App Clip 経験自体は問題なかったが、普通に支払いをすること以上の改善ではなかった。実際に有用であった App Clip に出会ったことはありますか?

ExxonMobil App Clip experience

レンタカーでの CarPlay は素晴らしい

Vancouver に着いた時、我々は Budget からレンタカーを借りた。実際にどんな車が割り当てられるかは分からないので、Hyundai Kona を受け取った時には良い意味で驚いた。一番良かったのは、それが CarPlay をサポートしている事で、iPhone と車内蔵のディスプレイを使ってナビさせてくれた。レンタカーは比較的新しいモデルである傾向にあり、レンタカーでの CarPlay 対応は今後一般的になるであろうし、私は今後レンタカーする時はそれを具体的に求めようと思う。

CarPlay を使う車に iPhone 13 Pro をペア付けするのは簡単であった。それは画面上に示されたヒントのお陰だ - 他のやり方を考える必要があれば使っていなかったかも知れない。それが接続を試みている間、私はミラーと座席の位置を調整し、それから Maps に目的地を与えて、出発した。

CarPlay pairing in Hyundai Kona

それは素晴らしい体験で、運転中も画面が見えるよう iPhone をダッシュボード上に何とかもたせかけようとするよりは遙かに良いものであった。皆さんも、次にレンタカーする時は、それが CarPlay をサポートするか見てみられたい。

Apple Maps は改善したが、今でも違法な U ターンを押しつける

Apple Maps は進化し続けており、その現在の状態は xkcd comic 漫画にも掲載される程まで来ている。私は旅の殆どでそれを使い、そしてそれはよく働いた。特に良かったと思うのはその文脈対応型の方向指示であった。例を挙げると、"次の信号を通り過ぎ、二つ目の信号を左折" と言ったものである。(言葉そのものは少し違うかも知れない;私はその場で書き留めなかったので。) その後は、最初の信号を通り過ぎた後、"Hastings Street を左折"の様になる。これに比べて、Google Maps は、こちらも CarPlay で同じ様に使える、距離と通りの名前に依存しており、行き先案内は、"600 メートル先で、Hastings Street を左折" の様になる。もうすぐ左折する必要があることは分かっていても、それは二つ目の信号でと分かっていればもっと分かり易い。どちらの場合でも、画面上では曲がるのは二つ目の信号だということは表示されるであろうが、Apple Maps の表示の方が読みやすかった。

事実、Apple Maps での不愉快で危険な間違いがなかったら、私はきっと CarPlay 経由での Google Maps を試してみることもなかったであろう。私が所定の道順を外れると何時も、それは U ターンして元の道に戻るよう指示してくる。不幸にも、British Columbia Ministry of Transportation and Infrastructure が言うように、"一般旅行者に対して U ターンが合法な状況は殆どない。" そこには信号機付きの交差点も含まれ、そこで Maps は繰り返し法を破れと私に言ってきた。

Apple Maps U-turn directions

率直に言って、これは恥ずかしいし、不必要である。地図アプリの要は、現在いる場所で適切な行き先案内を与えることであり、そこにはその道路の地元のルールも含まれるべきである。 U ターンに関わる法律は地域によって変わるのは理解出来るが、それ等の場所で違法な指示を与えるのを避けるために特定の地域の周りに地理上のフェンスを Apple が作れない理由があるとは私には思えない。もしそれが余りにも難しいのであれば、Setting > Maps > Directions > Driving で Avoid U-Turns に対するスイッチを設ければ、ユーザーはその様な違法な動きを手動で停止させられるであろう。

Google Maps に切り替えた時、それは違法な U ターンをしろとは一度も言わなかったが、私は同じ場所で同じ運転の過ちをする事が出来なかったので公平なテストとは言えない。(申し訳ないが、私は休暇中だった!) 私は幾つかの物理的な GPS 機では Avoid U-Turns 設定を見たことがある様な気がするが (我々は、何年も前に Find Yourself with GPS シリーズの記事で色々なものをレビューした)、裏付けとなるものを見つけるのに苦労したが、少なくとも一つの機器ではそれが選択肢であることを Garmin iQue に対する Travis Butler のレビューが確認していた ("iQue で地図 IQ をアップ" 9 January 2006 参照)。と言うことで、U ターンを避けるのは思ったより難しいのかも知れないが、それは追加すべき一つの重要な機能だと思う。

(日本語)GPSy で木立の中のドライブを | 迷いの予感? GPS 概論 | GPSy 3.0 新機能を披露 | インターネットで体を動かそう: みんなで宝探しを! | 宇宙からの指示:GPS カーナビ | NYC のカオスに秩序を: Garmin StreetPilot c330 | Garmin Forerunner GPS と走る | Magellan RoadMate 700 でドライブに出る | Magellan RoadMate 760 GPS、おもむろに口を開く | Garmin StreetPilot 2720、カーナビの好感度を上げる | Magellan RoadMate 3000T/6000T 下り坂に向かう | 2006 年末ギフト提案: Macintosh 指向の人向け | TomTom Go 720 GPS を乗せて、いざ鞍の上へ | Garmin nuvi 255W、ナビゲーションに焦点を絞る | 出始めの iPhone GPS ナビゲーションアプリ2つをレビュー

Apple が追加出来るもう一つの役に立つ機能は、新しい場所で Maps を開く度に、道路に関する鍵となる地元の規則を集めた画面である。Right-on-red (赤信号でも右折可) 規則は一番明らかなものであろう。何故ならばそれは土地によって大きく変わるからである。我々も Vancouver で幾つかの地元特有のもの (我々にとっては) に出会った。例を挙げると、点滅する青信号で、それは信号は歩行者によって始動されたことを示し、交差する道路上の車に対しては一時停止の標識しかない。Ontario での点滅青信号は歴史的に保護された左折 (日本での矢印青信号と同等) を意味するので、これは結構混乱する。我々を本当に面食らわせたのは黄色の交通信号の意味であった。 British Columbia では、黄信号下では停止するのが危険でない限り交差点に入るのは違法である。同じことが米国の幾つかの州では当て嵌まるが、ここ New York では、黄色は間もなく赤に変わるということしか意味しない - 赤に変わる前であれば、交差点に入っても反則切符の対象にはならない。私が黄信号を無造作に (しかし安全に) 通り過ぎた時、対向する左折車は私に腹立てている様に見えた。と言うのも、彼らは左折を開始出来るはずだというタイミングで妨害されたからである。

T-Mobile は国境越えの旅でもよく働く

最後に、これは昨年の8月に AT&T から T-Mobile に切り替えてから初めての Canada への旅行であった。我々がこの切替えをしたのは Tristan が Vancouver に引っ越す直前であったが、それは T-Mobile の Canada と Mexico に対する内蔵のサポートのお陰で、彼の iPhone を追加費用無しでそのまま使えるからであった。我々は、パンデミックが許せば、Canada へはもう少し頻繁に訪問出来るのではないかと思っていたし、AT&T の場合だと、我々の iPhone を引き続き使うには何時も何か特別なことをしなければならなかった ("カナダへの旅行でデータ量超過を防ぐ方法" 31 July 2015 参照)。我々のこの前の 2020 年の旅では、日額 $10 の International Day Pass が必要であった。今では AT&T はもっと良いローミングプランを出しているかも知れないが、一週間の旅でセルラー接続のために余分に $140 を払うというのは気持ちの良いものではなかった。

T-Mobile は完璧に働いた。Toronto へ向かう途中で国境を越えた時、私の接続は引き続き働くというテキストメッセージを受けたし、帰宅するため Vancouver 空港で待っている間には 5 GB の高速データの 80% を使い切ったという別なメッセージを受け取った。もし残りも全部使い切っていれば、2G の速度へと帯域制限されていたであろう。何れにしろ、一週間の通常の旅で 4 GB を使ったと知るのは悪いことでは無い - もっと長い旅行では、私はもっと注意深くなろうと思う。もし米国から Canada や Mexico へしばしば行き来するのであれば、T-Mobile を検討されたし。

T-Mobile international messages

全体としてみれば、旅は成功裏に終わった、休暇としても技術の観点からしても。旅行がもっとストレス無しで行えるようになり、私も旅に関連した技術をもっと試せる日が来ることを望んでいる!

討論に参加

Adam Engst  訳: Mark Nagata   

WWDC 2022 で登場したが困惑してしまう機能 7 個

もしも Apple の WWDC キーノートが対面で開催されていたとしたなら、プレビューされた機能のいくつかに対してライブの聴衆が一斉に拍手喝采した様子も容易に想像できる。私たちも、記事“WWDC 2022 で“やっとのことで”登場した機能 10 個”(2022 年 6 月 6 日) に書いた機能に対しては拍手喝采したことだろう。でも、講演者の台本に「拍手を聞くため小休止」と書かれていたにもかかわらず、困惑した表情で沈黙した聴衆に迎えられた個所もきっとあったのではなかろうか。

これから紹介する機能のすべてが必ずしも悪いものではないけれども、確実に悪いものもいくつかあって、それ以外のものは単純に不可解だ。言ってみれば WTF... いや、何という機能 (f...eature) を Apple は考えてたんだ?

Apple Pay Later

アメリカ人の3分の2がギリギリの生活をしていると言われる今、Apple は Apple Pay Later という機能で彼らに支払い能力以上のものを買わせようとしている。この機能は、購入価格を無利息の4回分割払いにするというものだ。完済するまでに6週間の余裕がある。その通り、あなたは読み間違いなどしていない。つまりは、Apple Pay Later での買い物は必ず6週間以内に支払いを済ませなければならない。じゃあ何のためのものなんだと言いたい。例えば iPhone や Mac といった高額購入をして、それを 12 か月の分割払いにするというならば話は分かる。とりわけ、緊急にマシンを交換しなければならないような場合には必要な方法だ。でも、Apple が Buy Now, Pay Later (今買って支払いは後) の業界に足を踏み入れることでユーザーが賢明な財務決断をするためにどう役立つのか、私たちにはどうしても合点が行かないし、Apple の印象を良くするとも思えない。次に起こるのは何だろう? Apple 消費者金融か?

Apple Pay later intro

Focus (集中モード) フィルタ

Focus (集中モード) は iOS 15 の最も混乱を招く機能であったので (2022 年 1 月 20 日の記事“Apple の新しい Focus (集中モード) 機能 - これはやり過ぎかも”参照)、iOS 16 ではその複雑さを減らすための見直しを望みたいところだ。Apple は、最初はうまくできなくても、その次の年にちゃんとやり直してくれることが時にはある。でも今回の Apple は、さらなる努力を注ぎ込んだ挙句、Focus 機能をさらにもっと複雑なものにしてしまった。iOS 16 では、Focus フィルタを追加することができる。フィルタを使って、関連あるコンテンツのみを表示するようにして、カレンダーも、電子メールアカウントも、Mail アカウントも、Messages の会話も、Safari のタブグループも隠すようにできる。きっとサポート担当者にはこんな電話が殺到することだろう:

Focus filters intro

事態をさらに悪化させているのがセットアップの体験をカスタマイズできることで、関連するアプリ、壁紙、ウィジェットの提案が表示され、さらにはアプリや人々からの通知を非表示にできる新しい設定もある。平均的なユーザーは今でも既に自分のデバイスが特定の挙動をする意味を測りかねているのだから、このような Focus 機能は Apple 体験をますます予測不可能なものにするだけではなかろうか。Focus 機能のせいで重要な通知を受け取れなくなったり、データが隠されたりしても責任を取る用意があるという人にはどうぞご自由にと言っておくが、大多数の人に対しては Focus 機能の設定を睡眠中と運転中の Do Not Disturb 設定のみにしておくことをお勧めしたい。

Freeform

Apple は Freeform という新しいデジタルホワイトボードアプリをプレビューした。Apple によればこのアプリは年内に登場するという。(言い換えれば、macOS 13 Ventura、iOS 16、iPadOS 16 の当初リリースに含まれていなくても驚いてはいけないということだ。) デジタルホワイトボード自体に悪いことは何もない。既に Google、Microsoft、その他多くの会社が製品を出していて、巨大なカテゴリーを形成している。でも、いったいなぜ Apple がそこに参入する必要があるのか? グループの共同作業のための生産性ツールでは既に GoogleMicrosoft の製品が支配的な存在なのだから、それよりも Apple 製のツールを使いたいと思うのは Apple 中心の性格を最も強く打ち出したビジネスや学校などに限られることだろう。標準的なツールでできる範囲を超えたものを求める人は皆、代替製品の選択肢が幅広くあることを知っている。Apple が示してみせたデモ用のホワイトボードは確かにかつて他のどの競合社やユーザーが作り出したものよりはるかに美しいけれど、Apple はそれ以上の何を提供するつもりなのか?

Freeform intro

次世代の CarPlay

キーノートの中で、Apple はかなりの力を注いで CarPlay の大幅なアップデートを実演しようとした。Apple が思い描くシナリオは、未来の自動車のスクリーンが今日のようなただ単なる情報システムだけでなく、計器群や環境コントロールも含むあらゆるものを提供するために使われることだ。そのために、次世代版の CarPlay ではどの情報がどのスクリーンに表示されるかをユーザー自身が設定したり、見栄えをカスタマイズしたり、その他多くのことができる。

Next-generation CarPlay intro

たった一つの注意点は何かって? その機能に対応する自動車が市場に登場するのは 2023 年末ごろ以降なので、そこまでのレベルの CarPlay 対応が一般的になるまでにまだまだ数年、あるいはそれ以上かかるだろうということだ。いったいなぜ Apple はこれが現実になるより何年も前からこんなに大々的に語ろうとするのか? そもそも人々はごく稀にしか自動車を買い換えないというのに。私たちの推測だが、Apple は広く噂されている Apple Car をいずれリリースする時に備えて、自動車市場に信用を確立しておきたいと思っているのではなかろうか。ひょっとして、Apple は自動車メーカーにフル機能の carOS をライセンスすることで自動車業界に乗り入れようと企んでいるのか?

加えて、この CarPlay 構想には自動車のインターフェイスを巡る重要な疑問点が伴う。自分でカスタマイズしたインターフェイスを自動車から別の自動車へ(特にレンタカーへ)持ち込めれば素晴らしいだろうが、果たして CarPlay はその自動車のネイティブなインターフェイスができることのすべてを取り込めるのだろうか? (ここでは、自動車がそれぞれネイティブなインターフェイスを備えているのを前提としている。たとえそれが、同じようにスクリーンベースのものだったとしても。) それに、最悪の状況を想像してみれば、もしも運転中にスマートフォンが壊れたり電源が切れたりしたらどうなるのか? CarPlay はアドオンとしては素晴らしいけれども、安全にかかわる重要機能についてそれに全面的に依存するのはどうかと思う。

TrueDepth カメラで空間オーディオをカスタマイズ

これはごく手早く発表されただけだったが、私たちはすぐに頭を掻きたくなってしまった。どうやらそのアイデアは、リスナーの身体的特徴がその人の空間認知に影響を与えるので、その要素を取り入れることで空間オーディオのサウンドがより真に迫ったものになるという点にあるらしい。聞いたところでは、これが Head-Related Transfer Functions (HRTF、頭部伝達関数) と呼ばれるもので、iPhone の TrueDepth カメラを使ってデータを取り込むことで、Apple は通常ならば何万人もの人々のデータを組み合わせた平均的な HRTF が使われるところをパーソナライズできるのだという。それが可能か否かを論じるつもりはないが、空間オーディオは本当にそんなに大事なことなのだろうか? そのパーソナライズの機能は、iPhone を訓練しなければならないほど (ましてや Apple が開発に多大な努力を注がなければならないほど) の違いを生み出すものなのか? もっと多くのユーザーにより大きな影響を与えるような事柄で Apple が努力を注ぐべきものが、まだまだたくさんあるのではないか? (2022 年 5 月 19 日の記事“将来の Apple オペレーティングシステムに対する5つの改善策”参照。)

Spatial Audio intro

FaceTime の Handoff

FaceTime の通話中に Apple デバイスから別の Apple デバイスへ切り替えられるというこの機能は簡単に実装できるものであったことを願いたい。そもそも、そんな機能があまり使われるとは思えないからだ。Apple の宣伝文句では魅力的に聞こえるけれども、よく考えてみればあまり意味を成さない。家の外にいて FaceTime 通話を受けて、それから鍵束を探って玄関のドアを開けて、荷物を下ろし、靴とコートを脱いで、ドタバタしながら Mac の前に来て、スリープから目覚めさせ、質の悪いカメラを備えたコンピュータに通話を切り替えるって、一体誰がわざわざそんなことをするだろうか? (もしも iPhone が自動的に連携カメラ機能を呼び出してそのまま Mac のウェブカメラとなってくれたならばほんの少し受け入れたい気持ちになるかもしれないが。) 普通の人は、いったん通話を切ってから改めてかけ直すだろう。主たる利点は何だろうかと考えてみれば、ソファに座りながら iPhone で受けた FaceTime 通話を仕事机の Mac や iPad に切り替えれば人間工学的に良い姿勢で通話ができるだろう。確かにちょっと素敵だが、世界を変えるような進化ではない。

FaceTime Handoff intro

Safari の共有タブグループ

Safari のタブグループが私たちの役に立ったことは今まで一度もなかった。ブラウザのタブというのは一時的なもので、私たちは毎日何百ものタブを開いたり閉じたりしている。だから、それらを整理しても何の良いこともない。さらに悪いことに、タブグループはきちんと動作することすらしない。タブグループを一つ選択した状態で別のアプリで URL をクリックすると、Safari は現在のウィンドウの未整理のタブの一つとしてそれを開くのでなく、新規ウィンドウで開いてしまう。その上、私の Mac の一つで、うっかりと Safari タブグループの中の一つのタブを閉じてしまったので即座に Command-Z を押して元に戻そうとしたところ、ほんの一・二秒だけ元に戻ってから、すぐにまた消えてしまって、その後は Undo コマンドを使うことさえできなかった。これでは自信を持つことができない。

この記事の第一稿をリリースして以後、タブグループを使っていてちゃんと役に立っているという人たちの意見を聞くことができたので、誰もが私たちと同じ意見ではないことは確かだ。でも、もしもあなたが私たちと同意見で、一連のウェブページをまとめて使えるように設定しておきたいと思われるなら、ブックマークをまとめて Favorites フォルダに入れておき、Command-クリックでまとめて開く方法をお勧めしておきたい。

今年のオペレーティングシステムアップデートで Apple は語ったところによれば、Safari のタブグループを友だちと共有できて、共同作業の最中に誰でもそのグループにタブを追加できる (おそらく閉じることもできるのだろう) という。何人かの人々が一連のウェブページを一まとめにしたいと思うような事例を構築することは可能だけれども、それほどの努力を注ぐのならばある程度の不変性を確保して、誰かが勝手にクリックしたり Command-W を押したりすると他のすべての人のところでもタブが消えてしまうことのないようにするべきではなかろうか?

Safari Shared Tab Groups intro

私たちは決して気難しくしたいと思っている訳ではない。Apple が macOS 13 Ventura、iOS 16、iPadOS 16 に予定している新機能の多くは素晴らしいものに思える。ただ、明らかにまだ多くの穴ぼこが残っていて修正を必要としているというのに、しっかり練られてもおらずあまり使われるとも思いにくい機能の数々に Apple が時間と労力を集中させているところを見ると、もどかしさに苛立ちが募るのだ。

討論に参加

Josh Centers  訳: Mark Nagata   

Apple の 2022 年版オペレーティングシステムにおける本当のシステム要件

Apple は同社のオペレーティングシステムの新バージョンを開発者向けにリリースした。公開ベータ版は 2022 年 7 月に予定されており、公式リリースは今年の 9 月か 10 月に出ると思われる。残念ながら、古いデバイスの一部ではこれらのアップグレードを経験できない。Apple は今年、多くのモデルを切り捨てようとしており、ピカピカの新機能の多くは最新の最もパワフルなデバイスを必要とする。

ではまず、それぞれのオペレーティングシステムごとに基本的な要件をまとめ、その後でどのモデルがどの機能に対応しているかを見て行くことにしよう。

macOS 13 Ventura の要件

macOS 13 Ventura が動作できる Mac と macOS 12 Monterey に対応するモデルの比較表を作ってみた。ご覧の通り、Apple は 2017 年より前にリリースされたすべての Mac を切り捨てている。

Mac Ventura 対応 SMonterey 対応
iMac 2017 かそれ以降 Late 2015 かそれ以降
iMac Pro 2017 かそれ以降 2017 かそれ以降
MacBook Air 2018 かそれ以降 Early 2015 かそれ以降
MacBook Pro 2017 かそれ以降 Early 2015 かそれ以降
Mac Pro 2019 かそれ以降 2013 Mac Pro かそれ以降
Mac Studio 2022 N/A
Mac mini 2018 かそれ以降 Late 2014 かそれ以降
MacBook 2017 かそれ以降 Early 2016 かそれ以降

iOS 16 の要件

iOS 16 が動作できる iPhone モデルも、状況はよく似ている。2019 年の第7世代 iPod touch を除いて、2017 年以後にリリースされたすべてのモデルが対応する。Apple が iPod touch を最近切り捨てたのはご存知の通りだ。(2022 年 5 月 11 日の記事“Apple、正式に iPod touch を製造中止に”参照。) いくつかの機能は特定の世代のチップを必要とするので、それぞれの iPhone を駆動するチップも表に含めておいた。

iPhone 導入年 チップ
iPhone 13/mini/Pro/Pro Max 2021 A15 Bionic
iPhone 12/mini/Pro/Pro Max 2020 A14 Bionic
iPhone 11/mini/Pro/Pro Max 2019 A13 Bionic
iPhone SE (第2世代とそれ以降) 2020 A13 Bionic
iPhone XR/XS/XS Max 2018 A12 Bionic
iPhone X 2017 A11 Bionic
iPhone 8/8 Plus 2017 A11 Bionic

iOS 15 に対応するけれども iOS 16 とは互換でないモデルは次の通りだ:

iPadOS 16 の要件

iPad のシステム要件はずっと複雑だが、今回 Apple が切り捨てたモデルはたった 2 つだけだ。下の表には iPadOS 16 が動作できる iPad をリストしてある。iPad Pro についてはサイズごとに項目を分けて、どのチップが関係するのかが分かりやすいようにしたが、基本レベルについてはすべての iPad Pro モデルが iOS 16 に対応する。

デバイス 導入年 チップ
iPad Pro 12.9-inch (第1から第5世代) 2015, 2017, 2018, 2020, 2021 A9X, A10X Fusion, A12X Bionic, A12Z Bionic, M1
iPad Pro 11-inch (第1から第3世代) 2018, 2020, 2021 A12X Bionic, A12Z Bionic, M1
iPad Pro 10.5-inch 2017 A10X Fusion
iPad Pro 9.7-inch 2016 A9X
iPad Air (第3から第5世代) 2019, 2020, 2022 A12 Bionic, A14 Bionic, M1
iPad (第5から第8世代) 2017, 2018, 2019, 2020, 2021 A9, A10 Fusion, A10 Fusion, A12 Bionic, A13 Bionic
iPad mini (第5および第6世代) 2019, 2021 A12 Bionic, A15 Bionic

iOS 15 に対応するけれども iOS 16 には対応しない iPad モデルは次の通り:

watchOS 9 の要件

watchOS 8 が動作できる Apple Watch モデルのうちで、Apple が watchOS 9 対応モデルのリストから外したのは Apple Watch Series 3 のみだ。これには少々反感を覚える。なぜなら Apple は今もまだ Series 3 の販売を続けているからで、それはつまり今から数か月後にその Apple Watch を購入しても、そのほんの数週間後には watchOS 9 にアップデートできなくなる可能性があるからだ。

watchOS 9 の機能のうち 2 つは特定のモデルの Apple Watch を必要とする:

Mac、iPhone、iPad の機能ごとの互換性

アクセシビリティ

あらゆるオーディオで自動的に文字起こしをしてテキスト表示する ライブキャプション 機能 (2022 年 5 月 17 日の記事“Apple、登場予定のアクセシビリティ機能をプレビュー”参照) が必要とするのは:

Magnifier アプリの検知モード はドアなどのオブジェクトを識別できる機能だが、次のものを必要とする:

Camera と Photos

Photos、Quick Look、Screenshot、Safari その他のアプリで機械学習を使って 写真の被写体を背景から抜き出す 機能は、少なくとも A12 Bionic 以上のプロセッサを備えた iPhone または iPad を必要とする。Ventura 互換な Mac はすべてこの機能に対応する。

ビデオで Live Text (テキスト認識表示) を使えるようになり、クイックアクションにも Live Text 機能が新設される。これも、iPhone や iPad では少なくとも A12 Bionic 以上を要し、Ventura 互換な Mac はすべて対応する。

iOS 16 の Camera アプリは Portrait 写真の前景をぼかすことができる ようになり、Cinematic モードのビデオの画質が向上するが、いずれも iPhone 13 シリーズでの話だ。

連携カメラ

これは iPhone をウェブカメラとして使う 機能だが、iPhone XR かそれ以降を必要とする。

また、Center Stage や Desk View (後者は散らかったデスクの上を他の人に見せるためのもの) は iPhone 11 かそれ以降を必要とする。

もう一つの新機能 Studio Light は背景を暗くして顔を明るくすることで外部照明をシミュレートするものだが、これは iPhone 12 かそれ以降でないと動作しない。

Health

iPhone の Health アプリに新しい服薬追跡機能が付き、watchOS 9 の Medications (服薬) アプリと協力して働く。その機能の一つ 薬のラベルをスキャン は iPhone XR かそれ以降を必要とする。

Home ハブ

Apple が今年の後半に出荷する新しい Home アプリでは、外出中に HomeKit アクセサリーに接続する目的のために iPad を Home ハブとして使えなくなる。 つまり、ハブとして挙動できるのは Apple TV または HomePod のみとなる。がっかりする HomeKit ファンはいるかもしれないが、これは最善の結果が得られるようにするためだ。電源に接続され、持ち運ぶことのないデバイスのみにハブを限定することは理に適っている。

画像検索

iOS 16 や iPadOS 16 の Spotlight 検索が、より多くのアプリ、例えば Files、Messages、Notes の中にある画像を検索できるようになる。画像を場所、人々、シーン、テキスト、コンテンツで検索 する機能は、A12 Bionic かそれ以降を搭載した iPhone または iPad を必要とする。

口述の改善

音声入力とオンスクリーンのキーボードを一緒に使える 新しい音声入力体験 は、iPhone や iPad では A12 Bionic プロセッサまたはそれ以降を要する。

iPhone 11 かそれ以降、A12 Bionic かそれ以降を搭載した iPad、または Apple silicon を搭載した Mac では、音声入力で 自動的に句読点を追加する ことができる。

また、A12 Bionic かそれ以降の iPhone や iPad、あるいは Apple silicon を搭載した Mac で 音声入力を使って絵文字を挿入する こともできる。

iPad の表示スケーリング

iPadOS 16 では ユーザーインターフェイス要素を縮小する (つまりディスプレイのピクセル密度を増やす) ことでスクリーン上により多くのものを詰め込むことができるが、この機能は M1 プロセッサを搭載した iPad を必要とする。つまり iPad Air (第5世代)、iPad Pro 12.9-inch (第5世代)、iPad Pro 11-inch (第3世代) だ。

iPad の仮想メモリスワップ

仮想メモリスワップはデスクトップのオペレーティングシステムではもう何年も前から標準的な機能であった。メモリの内容の一部をローカルなストレージに一時的に移すことで RAM を解放しようとするものだ。iPadOS 16 では仮想メモリスワップに対応することでメモリ要求の強いアプリに最大 16 GB のメモリを分け与えることができるが、これは M1 搭載の iPad でしか働かず、最低限 256 GB のストレージを持つ iPad Air (第5世代)、あるいは iPad Pro 12.9-inch (第5世代)、iPad Pro 11-inch (第3世代) が必要となる。

Metal 3

Apple は WWDC キーノートの中で Mac のゲーミングについて大きく取り上げて、ハードウェア加速されたグラフィックスのための Metal 3 API を紹介した。Mac 上では、Metal 3 は Apple silicon、AMD Radeon Pro Vega シリーズ、AMD Radeon Pro 5000/6000 シリーズ、Intel Iris Plus Graphics シリーズ、あるいは Intel UHD Graphics 630 を必要とする。現実的に、今後いろいろなゲームが Metal 3 を採用するにつれて、それがどの Mac に対応しているかを明確に述べる必要が生じるだろう。

リファレンスモード

ビデオのプロは、Liquid Retina XDR 搭載の 12.9 インチ iPad Pro を 正確なカラーを保証するためのカラーグレーディング用ディスプレイ として使うことができる。Sidecar 機能を通じて Apple silicon Mac とペアリングしてリファレンス用モニタとして活用することもできる。

Siri

アプリの中で Siri がどんなアクションを実行できるのか知りたくなった場合には、Siri に "What can I do here?" と尋ねる ことができる。Siri を使って電話を切ったり、あるいは テキストに絵文字を挿入したり することもできる。また、Apple は オフライン対応 機能も充実させており、インターネットを通じたやり取りをせずに HomeKit アクセサリーをコントロールしたり、Intercom 機能にアクセスしたり、Voicemail のやり取りをしたりもできる。これらの機能には A12 Bionic を備えた iPhone か iPad が必要であって、macOS 13 Ventura には登場しない。

Stage Manager

iPad 用のウィンドウ管理機能である新しい Stage Manager に期待している人も多いかもしれないが、これが最近の iPad モデルでしか働かないことに注意しよう。もともとは M1 (および M2) 搭載のモデルでしか動作しなかったけれども、その後 Apple は以下のモデルにも対象を拡大した:

Mac 上では、Ventura 互換な Mac のすべてがこの機能に対応する。

Visual Lookup の改善

Visual Look Up (画像を調べる) は 鳥、昆虫、彫像などの識別 機能を追加する。これは Ventura 互換なすべての Mac と、少なくとも A12 Bionic 以上のプロセッサを備えた iPhone または iPad で動作する。

討論に参加

TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

訳: Mark Nagata   

Fantastical 3.6.5

Fantastical 3.6.5

Flexibits が Fantastical 3.6.5 をリリースして、ビデオ会議の自動作成機能への対応を追加して Zoom、Google Meet、Microsoft Teams、Webex における Openings 予約に対応した。このカレンダー管理アプリはまた、Openings 予約同士の間に必要となる休憩時間への対応も追加し、Openings を設定可能な時間帯を示す詳細表示を導入し、Butter 会議サービスへの対応を追加し、ラトビア語を使っている際に起こったクラッシュを解消し、タイムゾーンが割り当てられていない提案項目を更新することに関係したバグを修正し、ツールチップがスクリーン上に残ってしまった問題に対処し、Microsoft Exchange 連絡先の誕生日が一日遅れて表示された問題を解消した。Fantastical は連絡先管理アプリ Cardhop とバンドルされた Flexibits Premium 購読を通じて利用できる。(Flexibits からも Mac App Store からも購読年額 $39.96、無料アップデート、57.2 MB、リリースノート、macOS 10.13.2+)

Fantastical 3.6.5 の使用体験を話し合おう

Bookends 14.0.9

Bookends 14.0.9

Sonny Software が Bookends 14.0.9 をリリースして、グループやフォルダにカラーラベルを付けるとともに、インターフェイスに細かな調整を加えた。この参照文献管理ツールはスキャン中に引用を区切るメタ文字を無視する際の挙動を変更し、macOS 11.2 Big Sur およびそれ以降では Papers 3 からの読み込みができない旨の警告を追加し、Mendeley から書き出された号番号を EndNote XML として読み込むようにし、参照リストの空白部分で右クリックするとエラー警告を出していたバグを修正し、ライブラリウィンドウの右側枠でのスクロールバー表示の問題に対処し、フルスクリーンを呼び出すと参照リストが見えなくなった問題を解消し、編集枠に誤った参照項目が表示されたバグを修正した。(新規購入 $59.99、TidBITS 会員には 25 パーセント割引、101 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

Bookends 14.0.9 の使用体験を話し合おう

ExtraBITS

訳: Mark Nagata   

2022 年 Apple Design Award の受賞者を発表

毎年の WWDC で Apple は Apple Design Awards の受賞者を発表していて、今回は「革新的で独創性に富み、高い技術力を持ち合わせた卓越した App とゲームに贈られる名誉ある賞」と銘打っている。今回 Apple はかなり奇妙な 6 つのカテゴリーに分けて 12 のアプリを選んだ。インクルージョン部門、喜びと楽しさ部門、インタラクション部門、ソーシャルインパクト部門、ビジュアルとグラフィック部門、そしてイノベーション部門だ。残念ねがら、これはここ数年来の傾向だが、大体において Mac は無視されており、12 のアプリのうち Mac で使えるのはたった 3 つだけ、しかもその 3 つのいずれも iPhone や iPad でも動作する。さらに、受賞者の半数がゲームだ。もしも Apple Design Awards の選考を担当するとしたら、あなたならどんなカテゴリーを設定するだろうか?

元記事を読む | 討論に参加