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#1616: パスキーを解説、高齢者のために Apple が抱える難問、macOS 11.6.7 Big Sur が電子メール添付ファイルのバグを修正

WWDC キーノートで Apple は“パスキー”と呼ばれる新しい認証テクノロジーを発表し、それがパスワードに代わるべきよりシンプルな、よりセキュアなものになると述べた。そこで Glenn Fleishman がパスキーの動作方法を解説し、なぜそれがパスワードに比べてずっと良いものであるかを説明する。Adam Engst は高齢の友人たちに手を貸して彼らの Mac を扱った最近の体験をもとに、Apple が高齢者向けにもっと良い体験を提供できるはずだという意見を述べる。ネタバレになるが、そこでもパスキーが正しい方向への一歩となるだろう。また、Adam は Apple が macOS 11.6.7 Big Sur アップデートを静かに出したことを伝えるが、ここでは電子メールの添付ファイルを開けないことがあったバグが修正されている。今週注目すべき Mac アプリのリリースは Pages 12.1, Numbers 12.1, Keynote 12.1、Ulysses 27、Acorn 7.2、Zoom 5.11、SoundSource 5.5.3、EagleFiler 1.9.8、DEVONthink 3.8.4、GraphicConverter 11.6.2、SpamSieve 2.9.49、それに Quicken 6.8 だ。

Adam Engst  訳: Mark Nagata   

macOS 11.6.7 Big Sur が電子メール添付ファイルのバグを修正

お知らせするのが少し遅くなってしまったが、その理由の一つは私がメインに使っている Mac のすべてが今は macOS 12 Monterey を走らせているからだ。二週間ほど前、 Apple は他のアップデートとは別に、macOS 11.6.7 Big Sur を静かにリリースした。macOS 11.5 以来初めての珍しいことだが、今回のリリースノートには具体的な役に立つ情報が記されている。この macOS 11.6.7 Big Sur アップデートで、電子メールの添付ファイルを開こうとしてもそのファイルを開くために必要なアプリが既に動作中の場合には開かなかった macOS 11.6.6 での問題が修正されたという。この問題が起こると、必要なアクセス権がないというエラーメッセージがユーザーに示されていた。

macOS 11.6.7 release notes

TidBITS Talk ユーザーの chs は、M1 MacBook Air を macOS 11.6.7 へアップデートした後に印刷でトラブルに遭うようになった。どうやら原因はそれまでインストールされていた Rosetta がアップデートに伴って削除されてしまったことらしく、Rosetta をインストールし直すことで Brother プリンタドライバが有効化された。(ネイティブな Brother ソフトウェアにアップデートしても問題は解決したはずだ。) また、Will M も報告を寄せて、11.6.7 にアップデートした後で、彼が 4 月に 11.6.5 をインストールして以来初めて Time Machine が Time Capsule へのバックアップを完了したとのことだ。

簡単に言えば、まだ Big Sur を使っている人は、Software Update を使って macOS 11.6.7 にアップデートすれば電子メールの添付ファイルの問題が解決し、ひょっとすると Time Machine が止まってしまった問題も解決するだろう。ただし、Rosetta をインストールし直す必要が生じるかもしれないと知っておこう。または単純に Monterey へのジャンプを果たしてもよい。

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Adam Engst  訳: 亀岡孝仁  

高齢者の手助けをしたら、Apple の昔の過誤と最近の改善が見えてきた

ここ数週間ほど、私は今は亡き友人 Oliver の年配の父 JP とその妻 Gretel の手助けをするのに時間を割いてきた。彼らは、別な州にある介護付きアパートへの引っ越しの準備をしていた ("Oliver Habicht、53 歳ですい臓がんにより逝去" 26 September 2020 参照)。彼らは、栄養疫学と栄養人類学において国際的に著名な科学者であり、お二人とも加齢による不可避の身体的損傷は見受けられるものの、時には投薬や疲れのために反応が鈍くなることもあるが、心神的には全く正常でおられる。

私は、Oliver と必要な時には代役をする約束をしており、そして彼は JP と Gretel の技術サポート役を長年勤めてきたので、彼らがコンピュータの質問があると言ってきた時には喜んで手助けしようと思った。JP は 1987 年に私がまだ Cornell の3年生だった時の初めてコンサルタントをした顧客であり隣のブロックに住んでいたので、それがどんなものか、多かれ少なかれ、感じは分かっていた。当時私は、彼の家に行き、彼の Mac Plus 上の空のフォルダに名前を付けることで彼自身に残したメモを解読したり、各種のソフトウェアやハードウェア問題と向き合うのを手助けした。

彼らが引っ越しする予定の日まで数回訪問するのが精一杯であり、家中が引っ越し荷物で満杯であったので、焦点を当てるのは3つの分野とした:旧式のハードウェアを整理する、彼らのバックアップ戦略を合理化する、そしてより良いパスワード管理システムを考え出す。それぞれの場面で、私は Apple がこれらの問題に対処するために相応の努力を払ってきたという事実に気付かされたが、最近のハードウェア、オペレーティングシステム、そして技術を使っていない年配の Mac ユーザーには必ずしも役に立たないやり方になっていると思えた。

私は、70 台、 80 台、そして 90 台の人々について過剰な一般化はしたくない。何故ならば、この年齢層にいる高度に技術的で能力のある TidBITS 読者は沢山いるからである (我々の 100 才以上の人は言うに及ばずであろう - "George Jedenoff: 101 歳の TidBITS 読者" 17 June 2019 そして "102 才の George Jedenoff、自伝を出版" 26 August 2019 参照)。しかし、私が主流の一般大衆の中で観察した事からすると、高齢者がコンピュータ、タブレット、そしてスマートフォンに大きく依存する様になっているが、技術の世界での止むことの無い変化に戸惑っていることが見えてきている。でも、システムが必然的に難しすぎるという話ではない (改善の余地はあるが);学ぶべきことが多過ぎ、そして余りにしばしば変更されるという話である。加えて、技術を何十年も使って来た人達は、沢山の旧式のハードウェアを身の回りに持っている傾向にあり、アップグレードと互換性の問題を更に複雑にしている。

古い格言 "壊れていないものを修理するな" に頼りたくもなる場合もあるし、それが本当な場合もある。しかし、技術の世界では、動かずにいるのは可能でない場合が多い。アプリの中にはただ年を経ただけで壊れてしまうものもあるし (例えば macOS 10.15 Catalina における 32-bit アプリ)、アップデートには新しい最低限のハードウェアとオペレーティングシステムを必要とするものもあるし、新しいそして改訂されたアプリには人を感動させずにはおかない能力が出現したりする。ある程度の変化は不可避であるが、変化が何年も延期された場合全ての事がより難しくなる。私が遭遇したことを挙げてみる。

古いハードウェア

私が最初に訪ねた時、JP と Gretel は箱一杯の雑多な付属品を持っていた - キーボード、マウス、USB ハブ、電源 - 私の名前の入った付箋のラベル付きで。(実際、付箋は至る所にあった。と言うのも、それ等は優秀なリマインダーだし、それに JP は昔からうっかり博士そのものであった。) 彼らはまた、古い MacBook Air, Mac mini, iMac, Dell PC タワー、そして PC サブノートブックを持っていたが、全てが彼らの重荷になっていた。どれも使われてはいなかったが、彼らはそれ等をリサイクルするのではなく保存してきた。その理由の一つは、古いコンピュータを新しいもの手にした後直ぐに戦列から外すのは難しいからである。いつ何時、何らかの理由で古いものが必要になるかも知れないではないか。それに、そのマシンが他の人にとっても価値があるかどうかに拘わらず、廃棄する前に内部ドライブを消去するのは重要である。

ドライブを消去しマシンを手放すのは私の役目であった。これらのマシンの年を考えると、その作業は思った以上に難しいこととなった。2010 MacBook Air は簡単であった:macOS Recovery で起動し、SSD を再フォーマットし、そして macOS を再インストールした。それを引き受けたいという友人まで現れた。しかし、私は iMac のハードドライブを消去する事は出来たが、それは 10.11 El Capitan をインストールするためには私の Apple ID が必要だと強要し、そしてそのインスタレーションは何度となく失敗に終わった。Mac mini はブートしたように見えたが、ディスプレイをドライブする所まで持って行けていないので、スクリーン上に何があるか、或いはドライブは消去されたのか見ることが出来ない。(何人かの人が助けの手を差し伸べてくれていて Target Disk Mode を勧めてくれているので、このプロジェクトに戻った時には試したいと思っている。) 私は未だ PC には手が届いていない - それ等はドリルで穴を開けリサイクルに回されることになるかも知れない。

要は、コンピュータを廃棄のために準備することに関して、私の様な経験、知識、そしてハードウェア (そしてコンピュータやスクリーンを動かし回るのに必要な筋力と柔軟性も) を持つ誰かが必要となるのであれば、それはとても多くの高齢者の手に負えるものではないであろう。廃棄するために Mac を綺麗にする作業はコンサルタントや IT アドミン以外の人がしょっちゅうやる様な類いのものではないので、それはとりわけ真実だと言える。

幸いにして、これは Apple が正しい方向に動いている場面の一つと言える。まず、同社はユーザーに古いハードウェアを下取りに出すかリサイクルするよう勧めている。次に、macOS 12 Monterey に始まって、Apple は Mac を譲渡用に準備するのをより易しくしている、かなり隠れた形でではあるが。

Monterey を走らせている Mac を新生活のために準備する手順を述べてみる (これは M1 Mac か Intel-based Mac で T2 セキュリティチップを持ったものを必要とする)。System Preferences アプリを開いて、しかし何時もやるようにそのウィンドウの内側で作業するのではなく、System Preferences > Erase All Content and Settings を選択し Erase Assistant を始める。Continue をクリックした後、それは全てのアプリを消去しそして全てのデータを消去する作業を進める。或いは、少なくとも、私はその様に想定する。何故ならば、私はそれに私の 27-inch iMac ブートドライブを消去させなかったので。

Erase Assistant in Monterey

おっとっと、多くの高齢者はこれらの要件を満たす Mac は持っていないかも知れない。他の Mac に対しては、ブート時に Command-R を長押しして macOS Recovery を開始させ、そこから Disk Utility を使ってブートボリュームを消去し、それからクリーンバージョンの macOS を再インストールする。

より良いバックアップ

IT 専門家であった Oliver からの助言のあった長年の Mac ユーザーとして、JP と Gretel のお二人共 Time Machine ドライブをローカルのバージョン化されたバックアップとして、そして IDrive へのオフサイトバックアップを持っていた。彼らはオフサイトバックアップの重要性を理解していたが、IDrive に関しては不満があり、新しい Internet バックアップを欲しがっていた。彼らはまた、バックアップについての二つの良くある混乱の元でも苦闘していた:

話し合いの後、彼らが間もなくこの地を離れる事も考慮して、私は彼らをコンピュータ一台当たり年額 $70 でBackblaze に対して設定し、そして IDrive アカウント上の自動更新を止める手助けをした。彼らは又、Dropbox アカウントを無料レベルまで下げたが、Google One ストレージプランに関しては Gmail で十分な容量を確保するため一番下のレベルを保持した。

Backblaze は良いシステムである、とりわけ最初に設定したら後は忘れてしまえると言う意味では。それは高齢者には必須であり、彼らのバックアップを管理するためにより長い時間を費やす必要が無くなる。JP と Gretel が初めのうちに感じた主たる問題は、Backblaze の設定ペーンは Mac 上にありそして追加の管理やファイル復元のためには Web ベースのインターフェースを使わなければいけないという不連続性にあった。彼らは又、最初のバックアップでは湯沸かしポットは見つめていると中々沸かないと言う問題の犠牲となった。彼らの最初のバックアップは完了する迄数日かかった。

Backblaze preference pane

Apple はこれ迄 iOS と iPadOS に対するバックアップニーズに対しては iCloud Backup で対応してきたが、同社が Mac を有料の iCloud+ ストレージにバックアップする iCloud Time Machine を未だリリースしていない事に私は今でも驚いている ("将来の Apple オペレーティングシステムに対する5つの改善策" 19 May 2022 参照)。その様な内臓のシステムがあれば、より多くの Mac ユーザーが - 年齢に関係なく - 外付けドライブを買う必要が無くなるので彼らのデータを保護するようになるであろうし、そして、ローカルに Time Machine を既に使っている人に対してはオフサイトバックアップを提供出来る事になる。

共有パスワード

懸念の最後の分野はパスワードである。私には理由は分からないが、JP とGretel はこれ迄パスワードマネジャーに移行したことがない。それは一部には JP の特異なまでのメモ取り習慣と Gretel の卓越した記憶力のせいかもしれない (Backblaze に申し込む時、彼女は American Express のカード番号、有効期限、そして CVC コード迄全て支障なくソラで言えた)、何れにしろ、Gretel は一度限りのパスワードや事実を覚えられないかも知れないことは自覚しており、紙切れに手書きしたメモに頼っている。同様に、もっとデジタル化はしているが、JP は Word 書類を維持しており、そこに色々なサイトに対するパスワードを表現するコード化されたメモを残している。その内容は彼自身か彼を良く知る人しかそのパスワードを解き明かせないものとなっている。彼は最近その書類を家族と共有する様になったが、もっと良い解が存在することは承知していた。

高齢者をパスワードマネジャーに移行させるのは心配である。パスワードマネジャーは全ての面で優れているが - より速く、より簡単で、より安全で、より簡単に共有出来、そして複数機器の使用にも便利である - ウェブサイトにログインする全く新しい方法を学ばなければならず、それは大変そうに見える。もしパスワードマネジャーがその長所を超えてログインを大変にするのであれば、その価値以上に問題が多くなってしまう。

最初、私は彼らにバックアップに関してはより良いローテックの解決法をそして Google Chrome に彼らに代わってパスワードを保存させる方法を使って貰うよう手伝うのが良いのではないかと考えていた。しかし、JP は LastPass を設定してそれを家族と共有することを強く望んだ。我々はその様にし、そして私は彼に LastPass が新しく作成した或いはアップデートしたログインを記録する時どの様に聞いてくるかを示したが、これは長期的に見るとうまく行かないのではないかという危惧がある。Apple の Passwords と iCloud Keychain の方が現実的な選択肢だったのではないか、とりわけ Apple のアカウント復旧用の連絡先Legacy Contacts を考えればそう思えるが、Apple の解は LastPass や 1Password にある共有機能に欠けている。この共有機能は、行動不能になったり、死去したりする親類のアカウントにアクセスする必要が生じるかも知れない家族にとっては魅力あるものとなっている。

究極の解は勿論パスキーであり、それはパスワードよりもより簡単でより安全であるが、高齢者は更にもう一つの新しい認証システムに慣れるのに苦労するのではないかと私は心配になる ("パスキーがパスワードよりシンプルかつセキュアなものになる理由" 27 June 2022 参照)。もし JP と Gretel が彼らの世代のなにがしかの代表であれば、パスキーの生体認証の側面は高齢者に対しては有効な解ではないかもしれない - Touch ID は彼らのどちらでもうまく行かないし、それに私は指紋スキャンの精度は年齢と共に下がっていくという説を見たことがある。その理由は、皮膚はより平らになり弾力性を失うからである。Face ID にはその様な問題は生じないであろうが、Apple 機器の多くが Touch ID に依存し続けている。

と言う訳で、Apple は、パスワード管理、パスキー、そして復旧選択肢を携えて正しい方向に向かっているように見えるが、対応可能なハードウェアを持たない人、或いは認証の新しい形態が過度に難しく感じる人に対しては手遅れなのかも知れない。

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Glenn Fleishman  訳: Mark Nagata   

パスキーがパスワードよりシンプルかつセキュアなものになる理由

Apple が自社バージョンのパスキーを発表した。パスキーはパスワードに代わる業界標準の一つで、パスワードに比べてより高いセキュリティと乗っ取りに対する保護を提供しつつ、それと同時にほとんどあらゆる面でパスワードよりはるかにシンプルなものだ。

パスキーのコンテンツをあなたがタイプ入力したり管理したりすることは決してなく、パスワードのみ、またはパスワードと二要素認証を組み合わせたログインを使っている特定のウェブサイトのアカウントをあなたがアップグレードしようとする際に、パスキーが生成される。パスキーは、パスワードにまつわる数多くの重要な弱点を克服する:

おそらく何より素晴らしいのは、Apple がパスキーを既存の広くサポートされた業界標準である W3C Web Authentication API、つまり WebAuthn の上に構築したことだ。WebAuthn は World Wide Web Consortium と FIDO Alliance によって作られたもので、FIDO Alliance はフィッシングの有効性を減らし、乗っ取りを防ぎ、ユーザーのために認証のシンプルさを増そうとするアプローチを長年開発し続けている業界団体だ。Apple、Amazon、Google、Meta (Facebook)、Microsoft はすべて FIDO に加盟しており、大手の金融機関、クレジットカードネットワーク、半導体やハードウェアのメーカー各社も加盟している。

多くのウェブサイトやオペレーティングシステムは既に WebAuthn に対応しており、有名どころでは Yubico が作っているもののようなハードウェア鍵を通じて実装されている。あなたがウェブサイトを訪れて、セキュリティ鍵を通じてログインする方法を選べば、ハードウェア鍵を挿入するかまたは鍵の上のボタンを押すかすると、ブラウザとオペレーティングシステムとハードウェア鍵とがすべて互いにやり取りすることでログインが完了する。このようなハードウェア鍵の機能を直接オペレーティングの中へ移行させようとするのがパスキーだ。つまり、余計なハードウェアは必要でない。Apple によれば、既にハードウェアベースの WebAuthn に対応しているウェブサイトならばほとんど余計な努力なくパスキーに対応できるはずだという。

説明を始める前に、Apple がパスキーを小文字で "passkey" と書いていることに注目したい。これは、パスワードやパスコードやパスフレーズと同じような一般的な概念として受け取ってほしいという試みなのだろう。Google、Microsoft、その他の会社もこれと互換なテクノロジーを提供するはずだし、同様の総称的名称をそれぞれのパスキーに付けることだろう。新しい用語が混乱を招くことがあるのは確かだが、"passkey" ならば口にしやすく、技術用語を並べた "multi-device FIDO credentials" のような語呂の悪い表現よりずっと好ましい。

では、パスキーがどのように動作するのかを見て行こう。

パスキーは公開鍵暗号方式の利点を日々のログインに持ち込む

パスキーは公開鍵暗号方式に依存する。これはもう 30 年近く前から TidBITS の記事で扱ってきたものだ。公開鍵暗号方式では、暗号化アルゴリズムがシークレットを生成し、それが2つの部分に分割される。片方が秘密鍵で、これがあなた以外に明かされることはない。もう片方が公開鍵で、こちらは秘密鍵を晒すリスクなしにいかなるやり方でも共有することができる。この公開鍵暗号方式が、セキュアなウェブと電子メールとターミナル接続、iMessage、および他の多くの規格やサービスを支えている。

誰かの公開鍵を手にした人は誰でも、それを使ってメッセージを暗号化することができ、それに対応する秘密鍵を持っている人のみがそのメッセージを復号化することができる。秘密鍵を持っている人は、さらにそれを補う働きとして、その秘密鍵を使ってメッセージに“署名”を入れることができ、それは実質的に「私がこのメッセージを送ったことを認証します」と言っていることに相当する。決定的に重要なのは、公開鍵を持っている誰もが、その署名を作成したのがその秘密鍵の所有者のみであると確認できることだ。

パスキーは公開鍵と秘密鍵の組にいくらかのメタデータを結び付けたものだ。例えば、それが作成される対象となったウェブサイトのドメインといったメタデータだ。パスキーでは、ログインを認証するためにそれを作成したデバイスの外に秘密鍵の部分が出ることはなく、ウェブサイトの方はそれに対応する公開鍵の部分のみを取り込んで、そのユーザーのアカウントの一部としてそれを保存する。

パスキーを使うためには、まず最初の手順としてウェブサイトで、またはアプリの中で登録をする。サイトで二要素認証 (2FA) にサインアップしたことのある人は、ここの手順に馴染みがあるはずだ。つまり、既存の認証情報でログインしてから、2FA を有効にし、テキストメッセージを受け取るかあるいは QR コードをスキャンするかして、認証アプリまたは (iOS 15、iPadOS 15、または macOS の Safari 15 では) キーチェーンの中へその情報を入れて、受け取ったことを確認する。

パスキーにおいては、そこの手順が違っている。パスキー認証を提供するウェブサイトにログインすると、アカウントのセキュリティセクションまたはパスワードセクションで認証をアップグレードするオプションが提供される。そのウェブサイトがまず登録メッセージを生成し、Apple のオペレーティングシステムがそれを解釈するが、これはあなたの目には見えないところで起こる。それへの応答として、あなたのデバイスが公開鍵と秘密鍵の組を作成し、セキュアな形でローカルに保存してから、公開鍵の部分をウェブサイトに送信する。するとそのサイトはオプションとしてそれに対する“チャレンジ”を送り返し、デバイスがそのことを表示してあなたに登録を確認させることができる。

その後そのサイトを再び訪れると、あなたにログインが表示されるとともに、iPhone や iPad では QuickType バーにパスキー項目が示され、macOS の Safari ではポップアップメニューで示される。いずれの場合も、既存の状況でパスワードや認証コードを扱うやり方とよく似ている。それらのログイン補助と同様に、パスキーの使用は Touch ID、Face ID、あるいはそのデバイスのパスコードによって認証することになり、そのどれによるかはあなたの設定に応じて決まる。

Logging in with passkeys
出典: Apple

舞台裏では、パスキーによるログインを求めたあなたのリクエストへの応答として、そのサイトが保存していた公開鍵を使って“チャレンジ”リクエストを生成する。するとあなたのデバイスは保存していた秘密鍵を使って応答を構築しなければならない。そもそもあなたがパスキーによるログインを求めた時点であなたは自分の身元保証を済ませているので、チャレンジリクエストが届いた時点でデバイスはそのパスキーの秘密鍵にアクセスできるようになっており、新たな認証手順の必要なくチャレンジに応答できる。それからサーバが保存していた公開鍵と突き合わせてデバイスからの応答を認証し、あなたのみがアクセスを許すべき正しい人物だという確認を得る。もしすべての裏付けが取れれば、ウェブサイトがあなたのログインを受け入れる。

パスキーは二要素認証を置き換える存在であり、そのことの理由をここで考えておくべきだろう。一見したところ、直感に反するように見えるからだ。いったいなぜ、たった1つのコードをデバイスに保存しておくだけで決定的な確認ができるのだろうか? セキュリティ要素を複数個備えておくことの解釈は通常、「あなたが知っている何かと、あなたが持っている何かと、あなたが何か」という風に形容される。実は、パスキーにはそのうち少なくとも2つが組み込まれているのだ:

ここで少しだけ利点について考えてみよう。パスキーを使えば:

Apple は個々のパスキーをあなたのキーチェーンの中の単なる新たな項目として保存する。あなたが iCloud Keychain を有効にしている場合には、パスキーがあなたのすべてのデバイスに同期される。(iCloud Keychain は Apple ID で二要素認証 (2FA) が有効になっていることを必要とする。ユーザーアカウントで 2FA が内部使用されている状態をパスキーが置き換えることになるのか否かについて Apple はまだ何も明言していない。)

AirDrop を使ってパスキーを他の人と共有することもできる。AirDrop を使うということはその相手の人物の近くにいなければならないことを意味し、そのことがセキュリティの一つの要素となる。情報は終端間の暗号化を通じて共有されるので、秘密鍵やその他のデータが傍受されるリスクなしに渡される。Apple は AirDrop 共有のオプションがあるということ以上の詳細をまだ明かしていないので、他にも条件やセキュリティレイヤーがあるかもしれない。

パスキーはパスワードと第二要素の両方ともを置き換えるので、もしも自分の Apple ID アカウントから締め出されたり、あるいは登録されたデバイスすべてを失ったりすればどうなるのかと心配になるのも自然なことだろう。Apple は、Apple ID アカウントへのアクセスや iCloud 同期されたデータを復旧するためのいくつかの手続きを用意している。Apple ID アカウントを復旧するには、Apple のアカウント復旧手順を使うか、またはアカウント用の Recovery Key を使う。iCloud データについては、友人や家族の手による復旧システムiCloud Data Recovery Service を有効にしてある場合には、それを使ってアクセスを再有効化できる。アカウントへのアクセスが復旧したら、その後で Apple が用意した追加の手順を踏めば、iCloud Keychain の項目を取り戻すことができる。その手順の中には、登録された電話番号に SMS を通じてコードが送られることや、iCloud 同期されたデバイスの一つにデバイスのパスコードを入力しなければならないことが含まれている。

これらはすべて、インターネットにアクセス可能なあなたのアカウントに対する攻撃が成功する可能性を著しく減らすことに繋がる。でもそれだけではない。Apple は決してまたもう一つ新たな“壁に囲まれた庭”を築こうとしている訳ではない。そうではなくて、パスキーとは業界全体の広範な努力の一部であり、Apple によればその実装が互換になるものだという。

パスキーは業界標準であって、独自仕様のテクノロジーではない

Apple は自社のパスキー対応をさきほども述べた WebAuthn 標準の上に構築した。この標準が公開鍵暗号方式によってウェブベースのログインを実装するサーバ側の方法を記述している。FIDO はクライアント側の標準も作っており、自らのプロトコルと WebAuthn の組み合わせを FIDO2 と呼んでいる。Apple は自社独自のクライアント側の方式を標準的な WebAuthn と互換になるように開発しており、他の会社が運用するパスキーに相当するものとも互いに互換になるはずだと言っている。Google、Microsoft、Apple は 2022 年 5 月に共同声明を発表して、このやり方に同意すると約束した。

1) Registration begins 2) User approval 3) New key created 4) Registration complete
一般化された登録手順を示した FIDO の図式 (出典: FIDO Alliance)

Apple が開発者向けに示したパスキー入門ビデオの中で、エンジニアの Garrett Davidson は Apple が互換性を約束していると強調して、こう述べた:

私たちは FIDO Alliance 内部で他のプラットフォームベンダーと共同して働き、パスキーの実装がクロスプラットフォームで互換であり、可能な限り多くのデバイスで動作できるようにすることを目指しています。

それから彼は Apple デバイス上のパスキーを使って PC 上のウェブサイトにログインするところを実演して、QR コードを使えば既存のデバイスやエコシステムに接続されていない他のデバイスやブラウザの上でも自分のアカウントにパスキーでログインできることを示した。

あなたが自分の iPhone でパスキーによる認証を使って誰か他の人の PC 上にあるパスキー対応アカウントにログインしようと思えば、次の手順を踏めばよい。ログインの最中に、ブラウザの中でパスキーを入力したりその他の認証方法を使ったりする代わりに、デバイスを追加する方法を選ぶことができる。そのウェブサイトのサーバが QR コードを生成し、そこには一回限りのパスワード2個の組が含まれている。これはそのログインのためだけに生成され、次のステップで追加認証のために使われる。(ブラウザが開いているデバイスは、オペレーティングシステムとデバイスがパスキーに対応しているものであれば何でもよい。認証を担うデバイスの方は Apple ないし他の会社によって限定を受けることがある。例えて言えば Mac 上の Safari の中で iPhone を使って Apple Pay の確認ができるけれども Touch ID 搭載の Mac を使って iPhone からの Apple Pay を確認することはできないのと同じことだ。)

この例での PC も、サーバと直接接続して認証できるために必要な情報を含む Bluetooth メッセージを送信し始める。iPhone で QR コードをスキャンすれば、iPhone は終端間で暗号化されたプロトコルを用いて、その QR コードに示された鍵で PC のウェブブラウザとの間にトンネルを作成する。(ちなみにこの暗号化された接続は Bluetooth プロトコルではないけれども、データは Bluetooth 上でトンネルされる。Bluetooth 自体は必要な暗号化強度を備えていない。)

Scanning a QR code to use a passkey on a PC
出典: Apple

この Bluetooth 接続が 帯域外の 要素、つまり認証を提供しているデバイス (今の場合には iPhone) に向けてその PC が提供していない詳細情報を提供することによって、追加のセキュリティと検証が提供される。ウェブページはフィッシング攻撃によって欺かれることがあり得るので、この Bluetooth 接続がデバイスからデバイスへの裏ルートを通じて重要な情報を伝える:

このように幅広いデバイスとプラットフォームの互換性があることで、自分のアカウントに他の人のデバイスを使ってアクセスする際にも弱い手法に格下げすることなくパスキーのセキュリティとシンプルさを同等に享受することが可能となる。弱いログイン方法に格下げを強制されることがあったならば、必ずや悪意ある者がそこを突いて、フィッシング、ソーシャルエンジニアリング、その他の傍受手法を使ってくることだろう。(第二要素として SMS テキストメッセージを使う方法と確認コードを使う方法を比較すれば、弱い方の予備的なやり方が攻撃を招いた事実があると分かるだろう。) 実際、パスキーのみが使えるという状況に到達するまでの間はパスワードによるログインを使えるようにしておく必要があり、それが脆弱な点であり続けるだろう。

パスキーの実装が展開しつつある段階では、使い勝手の面での問題があるかもしれない。でも、広範囲にわたる問題があるとは思えない。例えば、WebAuthn サーバのコンポーネントのどれかにアップデートが必要となったり、あるいは Apple が自社のフレームワークにより多くのエッジケースへの対策を盛り込んでさまざまの事例に対処しなければならなかったりということはあるだろう。

でも想像してみよう。どんな新しいオペレーティングシステムの走るどんなデバイス上でも、どんなブラウザを使っても、わざわざパスワードを作成し記憶し保護する手間を掛けたりせずに、いつでもウェブサイトにセキュアにログインできる、そんな世界を。考えただけでもくつろいだ気分になれるではないか。

まだ答が与えられずに残っている主要な疑問点は、異なるエコシステムの間でパスキーがどの程度移植可能かということだ。iOS と Android と Windows を使っていて、そのどれかで生成したパスキーを他のものでも共有して使えるのか? Apple がパスキーの AirDrop 共有手法を開発したところを見れば、私としては FIDO の幅広い互換性がオペレーティングシステム間のパスキーの共有も含んでくれるだろうと期待したい。

近接性を通じたセキュリティへの回帰

もう何十年も前に複数ユーザーのコンピューティングシステムに保護が必要となって導入されて以来、パスワードは不安を伴うセキュリティ上の妥協を世にもたらしてきた。パスワードはそもそも不完全なものであって、物理的に近くにいることが保護の第一段階であった時代の遺物とも言える。近くにいるかどうかは、もはやインターネットによって意味をなくしてしまった。

パスワードシステムの弱点のいくつかに対処しようとする努力の中で生まれたのが二要素認証 (2FA) で、これはパスワードに加えて何かを結び付けることを要求し、あなたがコンピュータ、サービス、またはウェブサイトにログインする権利を持っていることを証明するため何らかのオブジェクトを持っていること、またはその近くにいることを要求した。けれども 2FA はそもそもアカウントのパスワードからスタートしたものであり、利用する第二の手法自体もまた攻撃やフィッシングの対象となり得るものであるので、やはり壊れた壁に一時的に継ぎ当てする手法でしかない。

パスキーはパスワードを置き換える現代的方法であり、標準的なアカウントログインを保護するセキュリティの壁を一から再構築するものだ。ここでは近接性が、パスキーを保存したデバイスという形で、アカウントの乗っ取りや傍受を減らすための強力なツールとなる。パスキーは何か恐ろしい革命的なものに見えるかもしれないが、実際には今より安全で、ある意味ではどこか旧式なところもある。ターミナルにアクセスできることがそれを使う権利を認められることの証明を提供していた、はるか昔へと逆行するようにも見えるからだ。

討論に参加

TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

訳: Mark Nagata   

Pages 12.1, Numbers 12.1, and Keynote 12.1

Pages 12.1, Numbers 12.1, Keynote 12.1

Apple が 3 つの iWork アプリをすべてバージョン 12.1 にアップデートして、Pages に差し込み印刷機能を導入し、複数の宛先向けのパーソナライズされたレター、カード、および封筒を素早く作成できるようにした。Pages 12.1 ではまた、イベントの招待状や生徒の賞状の新しいテンプレートを追加している。Keynote 12.1 はスライド間のトランジションで連続的に動作するダイナミック背景を追加できるようにし、新しいアニメーションテーマを提供し、隠されているグループ内にあるすべてのスライドをスキップまたはスキップ解除できるようにした。Numbers 12.1 では大きな表に行や列を挿入するときのパフォーマンスが改善されている。(無料、Pages は 287 MB、リリースノートNumbers は 253.4 MB、リリースノートKeynote は 351.2 MB、リリースノート、macOS 11.0+)

Pages 12.1, Numbers 12.1, Keynote 12.1 の使用体験を話し合おう

Ulysses 27

Ulysses 27

Ulysses が会社名と同名の執筆アプリ Ulysses のバージョン 27 をリリースして、表を作成したり出版したりする機能に対応させた。さまざまの作表機能がフルに利用でき、ヘッダの設定、カラム揃え、水平方向のセル統合、その他ができる。Microsoft Word (DOCX)、HTML、および Markdown から表を読み込んだり、それらのファイルタイプ、加えて PDF と EPUB にも書き出したり、また WordPress、Ghost、および Micro.blog に出版したりもできる。今回のリリースではまた、Markup Bar をより賢い提案で改良し、Markup パネルを見直して脚注や注釈の中でも動作するようにし、脚注、注釈、ノートを Markup で更新して薄色のテキストの代わりに適切な書体を使えるようにした。(Mac App Store から購読月額/年額 $5.99/$49.99、Setapp からも入手可、無料アップデート、33.3 MB、リリースノート、macOS 10.15+)

Ulysses 27 の使用体験を話し合おう

Acorn 7.2

Acorn 7.2

Flying Meat が Acorn 7.2 をリリースして、Shortcuts を使ってフィルターを適用する機能への対応を追加し、プリセット、切り取り、フリップ、リサイズ、回転、自動強化その他をフィルターできるようにした。この画像エディタはテキストボックスの縦方向揃えのオプションを追加し、Layer メニューにビットマップレイヤー用の新しい Auto Enhance 項目を追加し、Histogram フィルターに High Fidelity チェックボックスを追加し、キャンバス上でビットマップレイヤーを動かした際の自動スクロールを再有効化し、AppleScript コマンド "make new document from Clipboard" を追加し、Automator アクションにさまざまの調整を加えて macOS 12 Monterey での動作を改善し、レイヤーを Dock 上のゴミ箱にドラッグして削除することができなくなっていた問題を解消し、一部のフェルトおよびウォーターカラーのブラシが消しゴムとして使えなかったバグを修正している。(Flying Meat からも Mac App Store からも新規購入 $39.99、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、19.8 MB、リリースノート、macOS 10.14+)

Acorn 7.2 の使用体験を話し合おう

Zoom 5.11

Zoom 5.11

Zoom が会社名と同名のビデオ会議アプリをバージョン 5.11 にアップデートして、数多くの改良やバグ修正を加えた。今回のリリースではミーティング内部から他の参加者の Zoom プロフィールカードを (管理者の許可があれば) 見られるようにし、ビデオフィルターをその後のすべてのミーティングで有効に設定できるようにし、分科会の管理を改良して部屋や名前で参加者を検索できるようにし、新しいチャンネルに追加された場合には通知を表示するようにし、サイドバー上で Starred セクションを一番上の、フォルダより上に移動させ、ビデオの Waiting Room で予想待ち時間を表示するオプションを追加し、ローカルな録画とデュアルモニタモードに関する問題点を解消し、HD ビデオを有効化することに関係したバグを修正し、タイムゾーンの誤りによって Outlook との同期に問題が起こっていたのを修正した。(無料、32.9 MB、リリースノート、macOS 10.10+)

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SoundSource 5.5.3

SoundSource 5.5.3

Rogue Amoeba が SoundSource 5.5.2 をリリースして、このオーディオコントロール・ユーティリティを Audio Capture Engine 11.8.1 でアップデートすることによりオーディオキャプチャの信頼性を上げた。さらに、この Audio Capture Engine アップデートによって多くの一般的なオーディオフローでの CPU 使用量が減り、デバイス間のクロック同期が改善した。また SoundSource はサードパーティの Audio Unit でも出荷時初期設定が含まれていればそれを正しく表示するようになり、サンプルレートの高いオーディオストリームを改良してオーディオが途切れたり歪んだりするのを防ぎ、どのプロセスがオーディオを再生しているかの判断を改善し、サンプルレートの高いオーディオが処理されないことがあったバグを修正し、グローバルホットキーを使ってメインの SoundSource ウィンドウを開いた場合にウィンドウがディスプレイ間で立ち往生してしまわないようにした。

このリリースの後間もなく Rogue Amoeba はバージョン 5.5.3 を出して、Audio Capture Engine をバージョン 11.8.2 にアップデートして重大な不具合を修正し、メーターを使った際にメモリリークの問題が起こらないようにした。(新規購入 $39、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、26.6 MB、リリースノート、macOS 10.14+)

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EagleFiler 1.9.8

EagleFiler 1.9.8

C-Command Software が EagleFiler 1.9.8 をリリースして、来たるべき macOS 13 Ventura への予備的対応を追加した。この書類整理およびアーカイブ作成用アプリまた、アウトライナー Bike からのファイルを表示する機能への対応を追加し、添付されたファイルをレコードのノートや RTFD レコードから他のアプリへドラッグできるようにし、メッセージを Google Takeout 経由で書き出した場合に EagleFiler の中で Gmail ラベルを検索できるようにし、検索索引付けを改良してウェブアーカイブの中のリンクを含めるようにし、メタデータのバックアップのフォーマットを改定してメモリ内でもディスク上でもより高速かつ効率的に働くようにし、レコードを編集した後間もなくメタデータのバックアップがエラーを起こすことがあったバグを修正した。(C-Command Software からも Mac App Store からも新規購入 $49.99、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、33.1 MB、リリースノート、macOS 10.12+)

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DEVONthink 3.8.4

DEVONthink 3.8.4

DEVONtechnologies が DEVONthink 3.8.4 をリリースして、極めて多数で多彩な追加機能や拡張をこの書類および情報マネージャに施した。表示した項目を既読とマークするか否かを決められる新しい環境設定項目、マルチメディア書類を見つける新しいフィルター枠、その他いくつかのインスペクター枠に新しいオプションが加わった。今回のアップデートではまた、選択したすべての項目 (とその下位項目) の URL を HTML ブックマークファイルとして書き出すオプションを追加し、DEVONthink To Go 3.5 またはそれ以降で作成した鉛筆画を含む RTFD 書類に対応し、Markdown WYSIWYG 編集と構文解析を改良し、Markdown から PDF または HTML へ、およびリッチテキストから PDF への変換が書類のタイトルを保つようにし、PDF 注釈の見栄えを変更し、macOS 12 Monterey の下で Markdown 書類ソースの WYSIWYG 表示にみられた見栄え上のアーチファクトを修正した。

Pro 版の DEVONthink にはさらなる改良や修正が施され、OCR されたファイルの解像度を元の画像の解像度に合わせるようにし、Download Manager を改良してパフォーマンス、クッキー処理、キュー処理を改善し、読み込んだり索引付けしたりした項目にスマートルールが適用されないことがあった問題を解消した。(DEVONthink 新規購入 $99、DEVONthink Pro 新規購入 $199、DEVONthink Server 新規購入 $499、TidBITS 会員にはそれぞれ 15 パーセント割引、無料アップデート、リリースノート136 MB、macOS 10.14+)

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GraphicConverter 11.6.2

GraphicConverter 11.6.2

Lemkesoft が GraphicConverter 11.6.2 を出した。このグラフィックスプログラム Swiss Army ナイフに少数の改良やバグ修正を施した、メンテナンス・リリースだ。今回のアップデートでは新たに Anonymize Text 機能を追加し、MSP および NEO ファイルの読み込みを改良し、Dr. Halo PAL ファイル読み込みへの対応を改善し、ムービーから GPS を削除する機能への対応を拡張し、ブラウザマップ表示における検索フィールドの挙動を切り替えるオプションを追加し、位置パレットの再描画の問題を解消し、丸い枠を持つテキストオブジェクトの再描画の問題を修正した。(Lemkesoft からも Mac App Store からも新規購入 $39.95、無料アップデート、275 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

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SpamSieve 2.9.49

SpamSieve 2.9.49

C-Command Software が SpamSieve 2.9.49 をリリースして、来たるべき macOS 12.5 Monterey アップデートと macOS 13 Ventura への対応を追加した。(C-Command は macOS をアップデートする前にあらかじめ SpamSieve をアップデートしておくことを勧めている。) 今回のアップデートではまた、このスパム電子メールフィルタリングユーティリティのフィルタリングの精度を高め、Monterey の走る M1 Mac 上で書かれたルールファイルが 10.15 Catalina では読めないことがあった macOS のバグを回避し、メッセージのアドレスリストの中の特定の Unicode 文字列が SpamSieveをハングさせることがあったバグを修正し、マニュアルのいくつかのセクションを拡張した。(新規購入 $30、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、20.2 MB、リリースノート、macOS 10.9+)

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Quicken 6.8

Quicken 6.8

Quicken Inc. が Quicken for Mac のバージョン 6.8 をリリースし、Foreign Bank Accounts Report を改良してその年間の外国銀行アカウント残高のうちの最大残高を計算できるようにした。また、この財務管理アプリは最もよくある財務問題への解答に集中した Easy Answer Report を導入し (macOS 10.15 Catalina が必要)、スクリーン下端に合計を表示する方法を改良し、投資信託の最新表示価格が最も新しい取引日でない場合に情報アイコンを表示するようにし、複数の資産クラスを持つ証券を表示する方法を変更している。(講読年額 $34.99/$51.99/$77.99、購読者は無料アップデート、リリースノート、95.5 MB、macOS 10.13+)

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ExtraBITS

訳: Mark Nagata   

PCMag、2022 年の Best Mobile Network 賞を T-Mobile に授与

PCMag がテスターたち (私たちの古くからの友人 Rob Pegoraro も含む) のチームに米国各地で 10,000 マイル以上を運転させて三大セルラーネットワーク AT&T、T-Mobile、Verizon をテストし、三社のどれが最良かを調べた。(最高速のものを調べたのではなくて「最良」つまりピーク速度、平均速度、標準以上の速度、それに通話の中断などを取り入れた総合評価だ。) 意外かもしれないが、勝者は T-Mobile であった。この会社は Sprint との統合によって受信地域を大幅に拡張してきた。T-Mobile は必ずしも最高速とは言えないし、地域によっては必ずしも最良の受信範囲を確保している訳でもないが、あらゆる要素を勘案した上で PCMag は T-Mobile が AT&T と Verizon のいずれをも上回ると判断した。実は、T-Mobile の秘伝の決め手はその広範囲にわたるミッドバンド 5G ネットワークで、これが都市部でも、また地方の多くの部分でも信頼性のある高速アクセスを提供している。

この記事にはもう一つ興味深い点が述べられている。それは、今や多くの人にとってモバイルがインターネットへのアクセスのための主要な手段となっていることだ:

今やますます、モバイルインターネットこそがインターネットとなっている。Ericsson の調査によれば、2018 年と 2022 年を比較して、北アメリカにおけるモバイルデータトラフィックは 22 エクサバイトから 86 エクサバイトへ、4倍になったという。その成長の大部分がモバイルビデオの大変革に後押しされたものであって、モバイルデータトラフィック全体の 60% から 70% へと増えた。一人あたり一月あたりの使用量に換算すれば 20 ギガ近くになる。

オンラインの世界はますますモバイルになりつつある。それと同時に、私たちは確実に老年に近付きつつあって、自分の iPhone で一月のうちにそんなに大量のビデオを観るなど到底考えられなくなっている。

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