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#1633: macOS 13 Ventura とその他の OS アップデート、第 10 世代 iPad、M2 iPad Pro、第3世代 Apple TV 4K、Apple サービスの値上げ

Apple 世界にとって重要な日だ。Apple は macOS 13 Ventura、iPadOS 16.1、iOS 16.1、watchOS 9.1、その他のアップデートをリリースした。それらすべては先週発表されたハードウェア、デザインを一新した第 10 世代 iPad、新型の M2 駆動の iPad Pro、それから 2 つのモデルの第3世代 Apple TV 4K に続くものだ。また、Apple は Apple Music、Apple TV+、Apple One の購読価格を値上げする。今週注目すべき Mac アプリのリリースは macOS Monterey 12.6.1 と Big Sur 11.7.1、Safari 16.1、Firefox 106、Quicken 6.10、Mimestream 0.39、Fission 2.8.2、Lightroom Classic 12、Airfoil 5.11.2、Camo Studio 1.9、ChronoSync 10.3.1 と ChronoAgent 2.2.1、SoundSource 5.5.5、それに URL Manager Pro 6.0 だ。

Josh Centers  訳: Mark Nagata   

Apple、Apple Music、Apple TV+、Apple One を値上げ

9to5Mac の記事によれば、Apple は米国において同社のメディア購読サービスの料金を月額 $1 から $3 程度値上げしつつあり、他の国においても同等程度の値上げをするという。9to5Mac によれば:

Apple は Apple Music 購読料金の値上げがライセンス費用が増えたことによるものだと述べた。同社によれば、価格設定の変更の結果としてアーティストや作詞家・作曲家がストリームあたり以前より多くの報酬を得るという。Apple TV+ については、Apple は今回の値上げがオリジナルのテレビ番組や映画のカタログが内容を増やしていることを反映するものだと述べた。

Apple Music については、(米国での) 新価格は次の通り:

Apple Music Voice プランの価格は従来と変わらず月額 $4.99 (2022 年 1 月 3 日の記事“Siri でも大丈夫なら Apple Music Voice Plan はお買い得”参照) で、 Apple Music Student プランは今年既に月額 $5.99 に値上げされた。

Apple TV+ の (米国での) 新価格は次の通り:

Apple Music、Apple TV+、Apple Arcade、それに iCloud+ (加えて Premier プランでは Apple News+ と Apple Fitness+) を含んだ Apple One バンドルの (米国での) 新価格は次の通り:

値上げ幅は小さいし、今のインフレ状況を考えれば値上げは全く予想外のものではなかったけれども、やはり私たちとしては Apple がこれ以上値上げしないことを願いたい。

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Josh Centers  訳: Mark Nagata   

Apple、macOS 13 Ventura、iPadOS 16.1、iOS 16.1、watchOS 9.1、その他をリリース

Apple が macOS 13 Ventura と、iPadOS 16 を (iPadOS 16.1 と名付けて) リリースし、それと合わせて iOS 16、watchOS 9、tvOS 16、および HomePod Software 16 に対するアップデートもリリースした。それぞれのアップデートで何が変わったか、どの時点でアップデートを考慮すべきかを、まず iOS 16.1 から順々に検討して行こう。iOS 16.1 には Apple エコシステムに初めて登場した機能がいくつかあるからだ。記事の最後では Matter についても議論したい。これは今回のアップデートで初めて組み込まれたものだが、今の段階ではホームオートメーションにとって重要な存在とはなり切れていないと思われる。

iOS 16.1

iOS 16.1 は以前から約束されていたいくつかの機能を提供する重要なアップデートで、中でも最も注目すべき新機能は iCloud Shared Photo Library だ。第二の iCloud 写真ライブラリを作って、その中で最大 5 人までの他の人たちと共有ができる。ただし、ベータ期間中に十分なテストが可能なものが提供されていなかったので、髪をかきむしることになる厄介事が起こる可能性を考えれば、iCloud Shared Photo Library を有効にするのはもっと多くの人たちが試してみるようになるまでしばらく待つことをお勧めしたい。iCloud Shared Photo Library は iPadOS 16.1 と macOS 13 Ventura にも登場する。

iOS 16.1 release notes
悲しいことに、Apple の極小文字のリリースノートが戻ってきた

もう一つ、時間さえ経てば興味深くなると思われる新機能が Live Activities だ。これは新しいタイプの動的な通知で、ロック画面上、または iPhone 14 Pro の Dynamic Island 上に表示される。Live Activities はスポーツの試合経過、 嵐の接近、配達の状況といった情報を表示できる。

Sports score Live Activity

その他の機能の改善点を挙げておこう:

また、iOS 16.1 では次のような問題を起こしていたバグが修正された:

iOS 16.1 と iPadOS 16.1 には 19 件のセキュリティ修正が含まれており、そのうち 1 件は実際に悪用された可能性があるという。

iOS 16.1 は Settings > General > Software Update でインストールできる。予期せぬ問題が起こらないと分かるまで数日待つのは良い考えだが、私たちが使っていて iOS 16 は全体的にあまり問題ないと思えたので、それ以上長い間アップグレードを遅らせる理由もないように思う。

macOS 13 Ventura

macOS 13 Ventura は macOS 12 Monterey を漸進的に進化させたものであって、iOS 16 との同等性をもたらすための新機能が加わっている。Ventura で登場した機能のうち最も注目すべきものを挙げておこう:

デザインを一新した System Settings が、Ventura で最も議論の的となっている変更点だ。かつての System Preferences も多くの意味で問題があったが、新しい System Settings もやはりひどい状態にある。

Ventura は System Preferences > Software Update で、2017 年およびそれ以降の Mac にインストールできる。(2022 年 6 月 9 日の記事“Apple の 2022 年版オペレーティングシステムにおける本当のシステム要件”参照。) しかしながら、現時点でアップグレードをお勧めできるのは、完全なバックアップを (できれば 2 組) 作って、Ventura をインストールし、インストール後のクリーンアップを済ませて、発生するかもしれない互換性の問題に対処する、そのために必要な中断時間を許容できるという人たちだけだ。今のところは補助的な Mac にインストールするのがよい。仕事のための Mac に使うことを考慮するのは 13.0.1 か 13.0.2 が出るまで用心して待つのが賢明だろう。

iPadOS 16.1

iPadOS 16.1 は iPad を iOS 16 の新機能や拡張と同等のところまで引き上げる。最も注目すべき変更点は Stage Manager が追加されたことだが、ベータテスターたちの報告によれば Stage Manager には依然として粗削りな点が数多くあるようだ。Apple が初めて Stage Manager を発表した時点では M1 搭載の iPad に限られるとされていたが、コミュニティーからの苦情に押される形で Apple はその後サポート対象を少し広げて次のようにした:

すべての iPad ユーザーが享受できる新機能は Weather (天気) アプリだ。ようやく実現して嬉しい! 11-inch と 12.9-inch の iPad Pro モデル、および現行の iPad Air では、新しいディスプレイのサイズ調整設定を使ってピクセル密度を増やせばより多くのものをスクリーン上に表示できる。また、ビデオのプロフェッショナルは Liquid Retina XDR 搭載の 12.9-inch iPad で使える新しい Reference Mode を歓迎するだろう。これは iPad を Sidecar 機能で Mac に接続してリファレンス用モニタとして使えるというものだ。(2019 年 10 月 21 日の記事“Catalina の Sidecar 機能で iPad を Mac の第2モニタにする”参照。)

iPadOS 16.1 は Settings > General > Software Update でインストールできる。これは iPadOS 16 の初めてのリリースではあるけれども、たいていの人は早いうちにアップグレードしてよいと思う。なぜなら、iPadOS 16.1 の核心を成すコードは iOS 16 と共通であって、こちらは概ね安定していることが実証されているからだ。もしもあなたがこの上なく重要なワークフローのために iPad に依存して使っているのならば、その場合にはお使いのすべてのアプリが互換だと確信できるまでアップグレードを遅らせるのがよいだろう。

watchOS 9.1

Matter に対応したことに加えて、watchOS 9.1 では Apple Watch が充電器に接続されていない状態でも Wi-Fi またはセルラー通信を使ってミュージックをダウンロードできるようになった。加えて、Apple Watch Series 8、第2世代 Apple Watch SE、および Apple Watch Ultra では屋外ウォーキング、ランニング、およびハイキングのワークアウト中に心拍数と GPS の測定頻度を下げることでバッテリー駆動時間を延ばすオプションが備わった。

それ以外に watchOS 9.1 では次の問題を起こしていたバグが修正された:

watchOS 9.1 には 10 件のセキュリティ修正 が含まれている。

watchOS 9.1 アップデートは iPhone の Watch アプリの General > Software Update でインストールできる。ウォッチが充電器に接続されていて、かつ少なくとも 50% 充電されていることが必要だ。機会さえあればすぐに watchOS 9.1 をインストールしていけない理由は何もないと思う。

HomePod Software 16.1

HomePod Software 16.1 アップデートはホームオートメーション規格 Matter への対応を追加するとともに、詳細不明のバグ修正や安定性の向上も含んでいる。HomePod Software 16 は自動的にインストールされるはずだが、強制的に直ちにインストールしたいと思えば iOS 15 または iPadOS 15 では Home アプリを開いて、画面の左上隅の Home アイコンをタップし、下へスクロールして Home Settings をタップし、それから Software Update をタップすればよい。iOS 16 では、HomePod のアクセサリータイルにタッチして押さえ続け、Accessory Details を選ぶ。下へスクロールしてギアをタップし、Update をタップする。

tvOS 16.1

tvOS 16.1 は、実際 tvOS 16 よりも重要なアップデートかもしれない。なぜなら、新たに設計された Siri インターフェイスを導入しているからだ。スクリーン全体を占有する代わりに、右下隅にポップアップとして登場するようになる。その動作の様子を示したビデオを含むツイートがある:

tvOS 16.1 の新しい Siri pic.twitter.com/IgglyKaetv

— domenico panacea (aka cino) (@domenicopanacea) October 19, 2022

また、AirPods が Apple TV に接続された状態ならば "Hey Siri" で Siri を呼び出すこともできる。

それ以外の点では他のオペレーティングシステムの新機能に合わせたアップデートがなされている。Photos アプリでの iCloud Shared Photo Library へのアクセス、Apple Watch を必要としない Apple Fitness+ の利用、ホームオートメーション規格 Matter への対応などだ。

tvOS 16.1 には 9 件のセキュリティ修正 が含まれている。

tvOS 16.1 は Settings > System > Software Update へ行けばインストールできるし、そのまま放置して自動的にインストールされるのを待ってもよい。

Matter が実体化、まあ少しだけだが

ホームオートメーション規格 Matter について触れてきたが、これは Amazon、Apple、Google その他が提供しているホームオートメーション用エコシステムの間の隔たりをなくすことを目指すものだ。(2021 年 5 月 17 日の記事“ホームオートメーション規格に新しい公式名称が決まる”参照。) しかしながら、どうやら Apple は今年のオペレーティングシステムアップデートで Matter に対応するため Home アプリを一から書き直さなければならなかったようだ。おそらくその結果なのだろうが、HomeKit ユーザーの中にはデバイスに到達できない、オートメーションが働かない、アクセサリーがデタラメな挙動をする、あるいは全体的に調子がおかしいといった苦情を述べ立てる人たちがいた。願わくば、iOS 16.1 や他のアップデートがこれらの問題点に対処していて欲しいものだ。

iOS 16.1 と今日の他のリリースをもって、Matter は公式に稼働し始めた。それはつまり、Home アプリ上に新たなホームオートメーション用デバイスが出現するかもしれないということだ。しかしながら、どうやら古いホームオートメーション製品は動作しないかもしれないらしい。Matter のサイトに、サポート対象の製品のリストが載っている。また、Matter は Thread プロトコルに依存して動作するので、デバイスと Home ハブの双方が Thread に対応していることが必要だ。現時点では第2世代 Apple TV 4K 各モデルと、リリースされたばかりの 128 GB 第3世代 Apple TV 4K、および HomePod mini が条件を満たしているが、初代の HomePod は満たしていない。

手短に言えば、Matter はスタートしたばかりで、まだ生煮えの状態にさえ達していない。だから、大多数のユーザーにとってはまだ心配する価値すらない細々としたことだ。

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Josh Centers  訳: Mark Nagata   

第3世代 Apple TV 4K がストレージを増し価格を下げる

Apple TV ハードウェアは Apple の忘れられた継子であるかのように見えるかもしれないが、Apple は今回、2年連続で Apple TV 4K をアップデートした。デバイスの見栄えは従来と同じく黒い箱と Siri Remote だが、いくつかの微妙な違いのお陰でこれは 2015 年に Apple が再起動させて以来の Apple TV 全製品のうちで最高のものとなっている。

Third-generation Apple TV

最初の大きな違いは、新型 Apple TV が A15 Bionic プロセッサを搭載していることだ。去年、私たちは待ちに待ったアップデートが大昔の A12 Bionic チップしか搭載していなかったことでがっかりした。だから、今回は嬉しい改善と言える。A15 Bionic は iPhone 13 シリーズで導入され、iPhone 14 と iPhone 14 Plus でも引き続き使われているので、今回の Apple TV 4K はようやく最新のプロセッサを搭載したと言える。

Apple は Apple TV の価格を $50 値下げしつつストレージ容量を倍増した。第3世代 Apple TV 4K の価格は 64 GB のストレージで $129 から、これは従来の2世代が 32 GB で $179 であったのに比べれば $50 の値下げだ。これとは別に 128 GB モデルもあって価格は $149、こちらも従来の 64 GB の上位モデルに比べて $50 の値下げだ。そして、過去の Apple TV 4K ではストレージ容量の違いのみでモデルが区別されていたのと違い、今回は Gigabit Ethernet ポートが付くこととホームネットワーク用の Thread プロトコルに対応している (下位モデルは対応していない) ことが上位モデルのみの考慮すべき価値となっている。

第2世代では上位・下位の両モデルとも Ethernet と Thread に対応していたけれども、今年の上位モデルが去年の下位モデルより安価であることを考えれば何も文句を言うことはない。

もう一つ、微妙だけれども重要な変更点がある。Siri Remote が今回は第3世代になって、その唯一の変更が Lightning から USB-C への切り替わりだ。どうやらこれは、Apple が全製品で Lightning を切り捨てつつあることを示唆しているように見える。(2022 年 10 月 4 日の記事“欧州連合、電子機器に USB-C を 2024 年末までに義務付け”参照。) 新型 Siri Remote だけを $59 で購入することも現時点でできる。

また、完全に存在意義をなくしていた Apple TV HD をようやく Apple が製品一覧から外したことにも注目すべきだろう。2021 年になってもまだ Apple が 4K 非対応のホームエンターテインメント用デバイスを販売し続けていたというのは恥ずかしいことであった。しかも競争力のない $149 という値札を付けていたのだから。

今回の変更点のいずれも、大多数のユーザーにとっては全体的な Apple TV 体験を変えるようなものではないだろうが、これで Apple TV の製品ラインアップがずっと良いものになった。現代のプロセッサと、より多くのストレージ、より良い価格を備えたからだ。あなたの必要を満たしている既存の Apple TV を買い換えるべき理由はあまりないだろうけれども、ずっと古いデバイスを買い替えたいと思っている人や、これから Apple TV エコシステムを使い始めようかと思っている人には、値下げのお陰で購入決断が楽になるだろう。新型 Apple TV 4K 各モデルは現在注文受付中で、2022 年 11 月 4 日に出荷が始まると共に店頭に置かれる。

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Josh Centers  訳: Mark Nagata   

Apple、2022 年は基本モデル iPad を考え直す

長年、私たちは入門レベルの iPad を Apple の製品一覧の中で最もお買い得なものとして称賛してきた。定価は $329、多くの場合もっと安値でセール販売されており、それで大多数の人が iPad 上でしたいことの大多数、つまり読書、ウェブのブラウズ、ビデオの視聴、Apple Pencil での手書きといったことが可能な iPad が手に入る。たった一つの難点は、年々古臭く見えるようになったデザイン、例えば分厚いベゼルや、今や旧式の Home ボタンなどだ。

10th generation iPad

そして今回、Apple は第 10 世代 iPad で iPad を全面的に見直した。Home ボタンはなくなり、全体的な見た目が iPad Air や iPad Pro と調和するものになった。

けれどもあらゆる変更には良い面と悪い面がある。まず、新型 iPad のデザインと仕様を見れば従来モデルに比べて印象的なアップグレードだと分かる:

Magic Keyboard Folio

一方、難点は:

Apple Pencil dongle
Apple Pencil に接続するために余分のドングルが必要になる。

iPad の仕様

この新型 iPad はフレッシュなデザインと高くなった値札を備えているが、仕様の面では従来モデルに比べてどうなのか? そこで、新型 iPad の仕様を手早く要約しつつ、昨年のモデルと比較してみよう:

コネクタが USB-C になったことで多くの可能性が開ける。例えば USB-C サムドライブやハブに接続できる。また、USB-C コネクタは外付けディスプレイにも簡単に接続できる。この iPad を USB-C ディスプレイに直接接続でき、適切なアダプタがあれば DisplayPort、DVI、HDMI も使える。最大 4K 解像度で 30 Hz、または 1080pd で 60 Hz の外付けディスプレイ 1 台を駆動できる。

価格と入手可能性

10.9-inch iPad は現在注文受付中で、出荷は 2022 年 10 月 26 日に始まる。価格は 64 GB モデルで $449 から、256 GB モデルで $599 からだ。5G セルラーモデルにすれば追加料金の $150 がかかる。

加えて、Magic Keyboard Folio を付ければ $249、第1世代 Apple Pencil に接続したければ $9 が追加される。(第1世代 Apple Pencil の価格は従来と変わらず $99 で、今回から USB-C アダプタが付属するようになった。)

どの iPad を買うべきか?

この新しい第 10 世代 iPad には多くの歓迎すべき改善点があるが、価格が $449 となれば購入決断は以前より難しくなる。価格が何より重要と思う人のために、第9世代 iPad が引き続き $329 で販売される。Apple は旧型の iPhone でしているのと同様に、手頃な価格の選択肢としてしばらくは旧型も販売を続けるようだ。それと対極の側を考えれば、あと $150 だけ余分に払えば M1 プロセッサを備えて iPadOS 16 で Stage Manager に対応する iPad Air を購入することができる。また、第6世代 iPad mini も魅力を増して見えてくるだろう。こちらは第2世代 Apple Pencil に対応しており、たった $50 高いだけだからだ。

第 10 世代 iPad が他のモデルに比べて持つ唯一の技術的利点は、横置きに適した位置に設けられた前面カメラだ。ただ、その利点も Apple Pencil との接続がこれまでにも増して扱いにくくなったことで帳消しになっているのかもしれない。この新型 iPad は多くの意味で改良されているけれども、従来モデルに比べてホームランなのかと言われれば首を傾げざるを得ない。

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Josh Centers  訳: Mark Nagata   

新型 iPad Pro モデルは M2 プロセッサ、高速 Wi-Fi、Apple Pencil ホバーを獲得

Apple が 2022 年用に iPad Pro をアップデートして、11-inch と 12.9-inch 双方のモデルに同社の M2 プロセッサを搭載した。今回の iPad Pro は高速の Wi-Fi に対応する (ただし日本では非対応) とともに、驚くべき新機能として Apple Pencil ホバー機能を備えた。これは、Apple Pencil で実際にアクションを起こす前にそのプレビューを提供するフィードバックが出されるものだ。

M2 iPad Pro

全体として、この新型 iPad Pro は昨年のモデルと比べればマイナーなアップデートであって、M1 搭載の iPad Pro を使っているユーザーの多くはあえてアップグレードする気にならないのではないかと思われる。ただ、M1 でない iPad を使っている人たちにとってはアップグレードの魅力が大きいだろう。では、大きな変更点について見て行こう。(悲しいことに、新型の第 10 世代 iPad と違ってこの新型 iPad Pro モデルは従来のモデルと同じく前面カメラが短い辺の側にある。新型の第 10 世代 iPad では、カメラが長い辺の側に移ったのでビデオ会議の際に自然な画像が得られる。ビデオ会議ではほとんど常に iPad を横長に置いて使うからだ。)

M2 プロセッサと ProRes ビデオ撮影

看板となる改善点は M2 プロセッサで、Apple は M1 に比べて最大 15% 高速化したと言っている。けれども現実には、ユーザーは確かに M1 モデルに比べて良くなったと感じるだろうけれども、A12Z Bionic から M1 へジャンプした時ほどの違いは感じられないだろう。しかしながら映画制作のプロフェッショナルにとっては、M2 iPad Pro は直接に ProRes ビデオ撮影ができる初めての iPad となるし、ProRes 映像のトランスコードが M1 iPad Pro に比べて最大 3 倍高速になる。Apple は「これは、コンテンツクリエイターが現場で 1 台のデバイスを使って映画品質のビデオを撮影、編集、公開できることを意味します」と説明する。

Apple Pencil ホバー

この iPad Pro の最も興味深い新機能は Apple Pencil ホバー機能 (ポイント機能) だ。第2世代 Apple Pencil の先がディスプレイから最大 12 mm の距離まで近付くと検知される。

通常の使用では、Apple Pencil の先がホバーしているところに iPadOS が円形の領域を表示するので、ユーザーは高い精度で望みの場所にペン先を置くことができる。また、他の使い方もあって、例えば Apple Pencil を近付けるとテキストフィールドが自動的に大きくなったりする。サードパーティの開発者が Apple Pencil ホバー機能を利用して独自の体験を実現することもできる。

Apple Pencil hover

Wi-Fi 6E と 5G 対応の強化

新型 iPad Pro は新しい Wi-Fi 6E プロトコルに対応しており (ただし日本では非対応)、Apple は昨年の iPad Pro の Wi-Fi 6 接続性に比べて最大 2 倍高速でありダウンロード速度は最大 2.4 Gbps に達すると主張する。しかしながら、それだけの速度向上を得るためには Wi-Fi 6E ルーターが必要だ。Apple はセルラーモデルがより多くの 5G ネットワークに対応するとも言っている。

iPad 用 DaVinci Resolve

Apple は iPad 用 DaVinci Resolve の発表も巧みに滑り込ませた。これはプロフェッショナル級のビデオ編集アプリで、例えばハリウッド映画では最近の DuneThe Green Knight が実際にこのアプリを制作に使っている。

一見したところ、これは本物らしい。フル機能の NLE だ。これを自動プロキシワークフローに使って、デスクトップと iPad の間でシームレスに切り替えるところを想像してみよう。 pic.twitter.com/pwfVfOuKSD

— Jeff Benjamin (@JeffBenjam) October 18, 2022

Blackmagic Design は既に DaVinci Resolve for iPad を公式に発表している。その兄貴分と同様に、無料だけれどもアプリ内購入で DaVinci Resolve Studio にアップグレードできる。M1 や M2 は必須ではないけれども、これらのプロセッサがあれば HDR 処理など追加の機能が使えるようになる。

価格と入手可能性

新型 iPad Pro は現在注文受付中で、出荷は 2022 年 10 月 26 日に始まる。

128 GB、256 GB、512 GB の各モデルには 8 GB の RAM が付くが、1 TB と 2 TB のモデルには 16 GB の RAM が付く。価格は昨年と全く同じで、ストレージ 128 GB の 11-inch iPad Pro の $799 から、ストレージ 2 TB の 12.9-inch iPad Pro の $2199 まである。やはり昨年と同じく、セルラーモデルにすれば追加料金の $200 がかかる。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

訳: Mark Nagata   

macOS Monterey 12.6.1 and Big Sur 11.7.1

macOS Monterey 12.6.1 と Big Sur 11.7.1

Apple が macOS Monterey 12.6.1macOS Big Sur 11.7.1 をリリースして、3 件のセキュリティ脆弱性をパッチした。(これらのパッチはリリース版の macOS 13 Ventura にも含まれている。) これらのセキュリティアップデートは Monterey または Big Sur の走る Mac 上で Software Update を使ってダウンロードできる。アップデート後に何か問題に気付かれたら、ぜひコメントで教えて頂きたい。(無料、サイズはいろいろ、macOS 12 と macOS 11)

macOS Monterey 12.6.1 と Big Sur 11.7.1 の使用体験を話し合おう

Safari 16.1

Safari 16.1

Apple が macOS 12 Monterey と macOS 11 Big Sur 用に Safari 16.1 をリリースして、ユーザーの機密情報を漏らしたり、任意のコードの実行に繋がったり、インターフェイスのなりすましを可能にしたりする可能性のあった 4 件の脆弱性をパッチした。Safari 16.1 は Software Update からのみダウンロードできる。(無料、サイズはいろいろ、リリースノート、macOS 11+)

Safari 16.1 の使用体験を話し合おう

Firefox 106

Firefox 106

Mozilla が Firefox 106 をリリースして、新たに Firefox View を搭載した。これはピン留めされたタブであって、最近閉じたタブを一覧してそこから開くことができるようになっており、現在走っているデスクトップブラウザのタブも、他のデバイスで開いていたタブも扱える。このウェブブラウザはまた、18 個の新しい "Colorways" (6 色とそれぞれ 3 つずつの異なる彩度設定)、選択した画像からテキストを抽出してクリップボードへ取り込む画像内テキスト認識 (macOS 10.15 Catalina かそれ以降が必要)、PDF の編集機能 (テキストの書き込み、描画、署名の追加など) でアップデートされた。(無料、124 MB、リリースノート、macOS 10.12+)

Firefox 106 の使用体験を話し合おう

Quicken 6.10

Quicken 6.10

Quicken Inc. が Quicken for Mac のバージョン 6.10 をリリースして、Home タブの新しい Dashboard カードでデータや生産性ツールにアクセスできるようにするとともに、Add Account ワークフローを効率化してアップデートした。(いずれの機能も macOS 10.15 Catalina かそれ以降を要する。) 今回のリリースではまた、Chase eBills を復活させ、サイドバーでより多くのアカウントオプションを提供し、タブ (Bills、Income、Payees、Projected Balances、Activity) の切替やカラムの並べ替えのパフォーマンスを改善した。(講読年額 $34.99/$51.99/$77.99、購読者は無料アップデート、リリースノート、macOS 10.13+)

Quicken 6.10 の使用体験を話し合おう

Mimestream 0.39

Mimestream 0.39

Mimestream が同社の macOS 用 Gmail クライアントのベータ版 0.39 をリリースして、電子メールの原稿でメンションが参加者の優先付けをするようにした。今回のアップデートではスヌーズのショートカット ("b") が Gmail のショートカットモードで動作しなかったバグを修正し、複数個のものが選択されているとツールバー項目がグレイ表示されていた問題を解消し、メインウィンドウの Add Account シートが何度も開き続けないようにし、引用されたテキストを印刷する際の色を暗くして読みやすくし、フォルダを Favorites へドラッグするとアカウントの順番が並べ替えられた問題に対処した。(ベータ期間中は無料、11.5 MB、 リリースノート、macOS 11+)

Mimestream 0.39 の使用体験を話し合おう

Fission 2.8.2

Fission 2.8.2

Rogue Amoeba が Fission 2.8.2 をリリースして、macOS 13 Ventura に対する初期互換性を追加した。このオーディオエディタはまた、大きな MP3 ファイルの読み込み速度を向上させ、一部の FLAC ファイルの書き出し処理を改良し、2 つのウィンドウに“細々とした”仕上がりの改良を施し、今回から 10.15 Catalina かそれ以降を要するようになった。(Rogue Amoeba からの新規購入 $29、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、14.3 MB、 リリースノート、macOS 10.15+)

Fission 2.8.2 の使用体験を話し合おう

Lightroom Classic 12

Lightroom Classic 12

Adobe が Lightroom Classic 12 をリリースして、いくつかの新機能と拡張をこのデスクトップ中心の写真カタログ・編集アプリケーションに追加した。今回のアップデートでは Content-Aware Remove ツールを (Healing パネルに) 追加して写真内の不要なしみやオブジェクトを削除できるようにし、Masking パネルに Select People、Select Objects、Select Background のマスキングオプションを追加し、AI 駆動の Adaptive: Portraits 機能を追加し、自動読み込みの最中に自動前進の設定をオフにできるようにし、また iPhone 14 (およびその他のモデル) のカメラに対応した。Lightroom Classic は今回から macOS 11 Big Sur かそれ以降を要するようになった。(月額 $9.99/$19.99/$52.99 の Creative Cloud 購読、購読者には無料アップデート、リリースノート、macOS 10.15+)

Lightroom Classic 12 の使用体験を話し合おう

Airfoil 5.11.2

Airfoil 5.11.2

Rogue Amoeba が Airfoil 5.11.2 をリリースして、macOS 13 Ventura に対する初期互換性をこのワイヤレスオーディオ放送アプリとその Audio Capture Engine に追加した。(Audio Capture Engine にはそれ以外にも詳細不明だがオーディオキャプチャの信頼性を上げる改良が施された。) 今回のリリースでは Apple が加えた変更の結果として Ventura 上では Text to Speech special source が使えなくなったが、その種のオーディオはテキストが読み上げられている場所にこのアプリケーションの対象を向けることでアプリケーションごとにキャプチャできるようになっている。Airfoil は今回から macOS 10.15 Catalina かそれ以降を要するようになった。(新規購入 $29、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、40.4 MB、リリースノート、macOS 10.15+)

Airfoil 5.11.2 の使用体験を話し合おう

Camo Studio 1.9

Camo Studio 1.9

Reincubate が仮想カメラシステム Camo Studio のバージョン 1.9 をリリースして、iOS デバイスのコンピュータへの接続を (標準の USB 接続に加えて) Wi-Fi 経由でもできるようにした。この Reincubate ブログ記事に埋め込まれたビデオで新しい Wi-Fi 接続性の使い方をご覧頂きたい。Camo Studio 1.9 はまた macOS 13 Ventura にフル対応し、Studio Display のマイクロフォンが Mic ドロップダウンに表示されなかったバグを修正し、アラビア語のローカライズ版を追加している。iOS 用アプリのバージョン 1.9 も出ており、こちらはロック画面用ウィジェットを追加して手早くアプリにアクセスできるようになった。(購読年額 $39.99、無料アップデート、32.6 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

Camo Studio 1.9 の使用体験を話し合おう

ChronoSync 10.3.1 and ChronoAgent 2.2.1

ChronoSync 10.3.1 と ChronoAgent 2.2.1

Econ Technologies が ChronoSync 10.3.1ChronoAgent 2.2.1 をリリースして、これらの同期およびバックアップ用ツールに調整とバグ修正を施した。ChronoSync 10.3.1 は Amazon S3 接続プロファイルエディタを改良して大きなパートサイズを指定できるようにし、Data Volume Assistant が保存先ターゲットを正しく設定できなかったバグを修正し、シンクロナイザが呼び出したコピータスクが誤ったエラーメッセージを報告する可能性があったバグを修正した。ChronoSync と ChronoAgent 2.2.1 のいずれも、ボリューム情報キャッシュのバグの結果としてローカルボリュームの情報を収集できなかった問題を解消した。(ChronoSync は新規購入 $49.99、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、88.8 MB、リリースノート,、macOS 10.12+。ChronoAgent は新規購入 $14.99、42.7 MB、リリースノート、macOS 10.12+)

ChronoSync 10.3.1 と ChronoAgent 2.2.1 の使用体験を話し合おう

SoundSource 5.5.5

SoundSource 5.5.5

Rogue Amoeba が SoundSource 5.5.5 をリリースして、macOS 13 Ventura に対する初期互換性を追加するとともに、Audio Capture Engine をバージョン 11.9 にアップデートしてオーディオキャプチャの信頼性を上げた。このオーディオコントロール・ユーティリティは Super Volume キーに改善を加えて音量キーが繰り返し押されると稀に起こった遅延をなくし、第2世代 AirPods Pro を正しく識別できるようにし、構成を変化させる USB デバイスの追跡を改良し、Bartender などサードパーティのアプリによって施されたシステムメニューバー上のアイコン間隔の変更を尊重するようにし、アプリを再起動した際に Shortcuts で使用されたデバイスを記憶しているようにした。

今回のリリースで、Apple が加えた変更の結果として Ventura 上では Text to Speech special source が使えなくなったが、その代わりに Siri special source と VoiceOver special source が使える。Text to Speech オーディオはテキストが読み上げられている場所にこのアプリケーションの対象を向けることでアプリケーションごとにキャプチャできる。SoundSource 5.5.5 は macOS 10.15 Catalina かそれ以降を要するようになった。(新規購入 $39、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、27.7 MB、リリースノート、macOS 10.15+)

SoundSource 5.5.5 の使用体験を話し合おう

URL Manager Pro 6.0

URL Manager Pro 6.0

Alco Blom が URL Manager Pro のバージョン 6.0 をリリースして、macOS 13 Ventura への対応と Waterfox など新しいブラウザへの対応を追加した。この独立のブックマークマネージャユーティリティはまた、インストールされている他のウェブブラウザとのやり取りを促進する新しいブラウザツールバーを提供し、このアプリの中でお気に入りのウェブブラウザを変更できるようにし、新しい並べ替えオプションを追加した。(新規購入 $34.99、無料アップデート、22.1 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

URL Manager Pro 6.0 の使用体験を話し合おう

ExtraBITS

訳: Mark Nagata   

Belkin の iPhone Mount が入手可能に

iOS 16 と macOS 13 Ventura の重要な機能の一つに Continuity Camera がある。これは iPhone を Mac のウェブカメラとして使えるようにするものだ。(2022 年 8 月 6 日の記事“Continuity Camera で iPhone を Mac のウェブカメラに”参照。) この機能を使う際の役に立てるため、アクセサリーのメーカー各社は iPhone を Mac にうまく取り付ける製品を開発してきた。そして今回、その種の製品の最初のものが出た。Belkin の iPhone Mount with MagSafe for Mac Notebooks で、価格は $29.95 だ。名前の通りこれは Mac ラップトップ用に作られており、iPhone には MagSafe で取り付けるので iPhone 12 またはそれ以降 (iPhone SE を除く) が必要だ。

Belkin's iPhone mount used on a MacBook Pro

巧妙なのは、Belkin のマウントが多機能なことだ。iPhone 用のスタンドとしても、またリンググリップとしても使える。MagSafe を使っているので取り付けも取り外しも簡単だ。おひとついかが?

Belkin iPhone mount used as a ring grip

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今週は Apple TV+ で無料の“スヌーピーとかぼちゃ大王”を観よう

Apple は数年前に Charlie Brown のテレビ放映権を獲得し、その後毎年この季節に数日間だけ Apple TV+ 上で無料提供することによりホリデースペシャルのテレビ番組として放映することを伝統としてきた。今年は、Macworld の記事によれば 2022 年 10 月 28 日から 10 月 31 日まで It's the Great Pumpkin, Charlie Brown をストリーミング視聴できるという。残念ながら今年は Apple が PBS (全米ネット公共放送網) にスペシャル番組を提供することはないようだが、Apple TV+ を購読していない人もこの期間はウェブ上で、あるいは Apple TV を使って、無料で自分のデバイスにストリーミングを受けることができる。

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